パソコンを使って録音や音声編集をするための、買い物に関するあれやこれや。
1分でも時間が惜しい人は要約の要約から先に読み、わからないところだけ個別の記事を参照しよう。筆者のオススメ(ただし未確認情報に基づく)が知りたい人は構成例を参照。
あまり初心者向けでない説明も混じっているが、もし理解できない説明があったら多分その機器は必要ないので、読み飛ばして欲しい。
重要な注意:
買い物の結果に責任は持たないよ。急がば回れの録音のページにあるお金が絡む話題についての項も参照のこと。
重要な注意:
対応OSなどの情報変化には追従していないので、メーカーの公式発表を確認すること。また付属ソフトが動かないだけでドライバは対応しているものは「動く」と見なしている。
当初は、これこれのことをやりたいならしかじかのモノが必要で、という記事にしようと思ったのだが、筆者がそのやり方を採用すると非常に煩雑になって、書いている本人にすらとても読めたものではない。そこで、ある程度の「決め打ち」をやって(できるだけ)簡略な記事にしてみた。
筆者が実際に使っている機器については、ローコスト制作の感想コーナーで紹介している(音声サンプル)。また、一部の機器(現在は使っていない古いものや、筆者の所有でないものも含む)はローコスト制作のハードウェアのページ(とそこから辿れるリンク先)に音声サンプルを掲載している。
以下は2011年6月現在の情報を元にしている。また、筆者が実物を見たこともない機器についても、カタログ情報を鵜呑みにして取り上げている。2012年12月最終更新。
いくつかのパターンが考えられる。列挙してみよう。
だいたいの価格帯として、ミキサーは1万円台前半、USB接続の外付けサウンドカードは1万円前後、PCI接続の内蔵サウンドカードは3000円前後、FireWire接続の外付けサウンドカードは3~4万円くらいがローエンド、ミキサーとUSB接続の外付けサウンドカードは3~4万円くらいがミドルレンジで、一部例外的にコストパフォーマンスが高い製品がある。
なお、マイク以外の録音についてはラインで(ミキサーかサウンドユニットに)入れる形になる。デジピやキーボードならラインアウトからそのまま入れればよい。エレキギターやエレキベースはハードウェアのアンプシミュレータを経由する形が断然ラク。エレアコだけはちょっと微妙なのだが、アンプシミュレーターを使うのが無難か(どうせマイクで録るならエレアコよりもアコギの方がずっと有利だし、ライン直結だとクセが強く出やすい)。
ぶっちゃけた話「単純機能のライン入力」さえあればなんでもよいのだが、余計な機能をゴテゴテくっつけた機種や必要なはずの機能をなぜか削っている機種が多く、選ぶのに多少の知識が要求される。オンボードサウンド(パソコンに最初からついている音声端子)にライン入力があれば、サウンドカードの増設はとりあえず必要ない(オンボードサウンドのライン入力なら、ほぼ単純機能のものに間違いない)。
パソコンにライン入力がない場合はサウンドカードを追加する。PCIスロットが空いていてかつ自力でインストール(パーツの取り付け)ができるなら、Sound Blaster 5.1 VX(SB-5.1-VX:2000円くらい)はかなりスジがよい選択。安定したバスを使える優位性はもちろん、ライン出力が6本(ステレオ3系統分)使えるのが大きい。PCIeだとコストパフォーマンスがやや落ちSound Blaster Audigy Valueあたり。旧モデルをいくつか使った筆者の経験では音声回路も文句を言うような品質ではない。Creativeが嫌いな人は、ASUSも似たようなモデルを出しているので検討してみるとよい。USB接続のローエンドは、ミキサーと併用する前提ならU-CONTROLシリーズが無難そう。
なお、プラグインパワーをオフにできないマイク入力には、対応が明記されているマイク以外繋がないのが無難である。故障や不具合や寿命の短縮、本来の性能を発揮できなかったりといった恐れがある(数千円のマイクが壊れても痛くないかもしれないが、たとえば「パソコン内部で異常発熱」なんてことになったら、さらにそれが交換不可能で周囲に他の部品が多いオンボードサウンドだったら、まさにシャレにならない:とくに熱的に厳しいノートパソコンや小型デスクトップでは「変な接続」を避けよう)。パソコン用マイクをパソコンに繋ぐ場合を例外として、マイクはミキサーか単品マイクアンプを経由してラインで繋ぐのが原則である。
パソコンにライン入力がなければサウンドカードを追加。PCIスロットが空いていて自力でインストール(パーツの取り付け)ができるならCreativeのSound Blaster 5.1 VX(SB-5.1-VX)がも安くてそこそこのレイアウト。USBしかなければUCA222あたりか。ライン入力が最初からあれば追加しなくてよい。プラグインパワーをオフにできないマイク入力には、対応が明記されているマイク以外繋がないこと。
どこからどこまでが「オールインワン」なのか知らないが、USB接続のMIDI機器が増えMIDIインターフェイスの需要が下がったので、マイクアンプ内蔵型と言い換えてもまあ大間違いではあるまい。ここでは筆者も所有しているTASCAMのサウンドユニットUS-100(レイアウトが優秀で、マイク入力とギター入力とライン入力のジャックが別々、マイクとギターはセンター固定でライン入力音量はステレオリンク、MIDI入出力はない:繋ぎかえる必要がないって、シアワセなことです)を中心に取り上げる。
一番の強みはパソコンにつなぐだけでセッティングが終わる点だろう(ここだけは上位機種にも勝っている)。初期投資が少ないのもメリット(たとえば2000円のサウンドカードと5000円のミキサーの組み合わせに対して、ケーブルが少ない分安く上がる)。拡張性についても、ライン入力での運用に(せっかくついているマイクアンプやギター入力が予備にしかならずもったいない以外)まったく支障がない(本体でダイレクトモニタが可能な分、選択肢はむしろ広い)。
欠点は、サウンドユニットを外部機器(マイクや楽器)の入り口やモニタ環境(スピーカやヘッドフォン)への出口にしてしまうと、パソコンを起動していないときに楽器やスピーカが使えないということである(スタンドアロン動作可能な機種はたいてい高いし、動作に制限がつくことも多い)。
ということで、マイク1本とアンプ1台だけしか繋がず、パソコンの電源が落ちているときは音が出なくてもよいという使い方なら、単体運用で価格的なメリットが活きる(=将来的に機器が増えないことがわかっているなら、コストパフォーマンスが高い)。ミキサーと併用する場合も、ちょっと贅沢な選択肢として普通に機能する。
US-100独自の特徴として、マイク入力と楽器入力がそれぞれセンター固定になっている点が挙げられる(その代わり同時使用できない)。「普通に」考えると左右に振り分けて同時使用できた方が便利なのだが、きっと「マイクの音がステレオで録音できないじゃないか」という不幸なクレームを避けるための涙ぐましい工夫なのだろう。ヘッドフォン出力とライン出力、ギター入力とそれ以外の入力が排他になっているのも変わっており、これも苦心の末のことだろうと想像できる。
再生リダイレクト機能がないので、放送系の使い方でパソコンで鳴らしている音を含めて収録したい場合、ソフトウェアで返すか別のハードを併用することになる。もっとも単純なのは、ダイレクトモニタを半々で混ぜつつUS-100の出力をオンボードのライン入力に入れてやる(US-100をマイクアンプ兼簡易ミキサーとして使う)方法だろう。パソコンの音とマイクの音のバランスを本体のツマミで変えられる利点があり、実はけっこう便利な使い方である。他のサウンドカードにライン入力がない場合、結局ミキサーを導入することになるだろう。
ローエンドではTASCAMのUS-100(ただしMIDI入出力はついていない)が有望。マイク1本とギターorベース1本しか繋がず、マイクと楽器の同時録音も不要で、パソコンの電源が落ちているときは音が出なくてもよいという使い方なら、単体運用で価格的なメリットが活きる。再生リダイレクト機能がないので、オンボード(や増設済みの他のサウンドカード)にライン入力がないと放送系の使い方でちょっと面倒(ミキサーを噛ますならなんとでもなる)。
もっとも万能な(と筆者が思う)セッティングは、やはりミキサーを中心とするもの。ただし、XENYX Qシリーズの発売でゼロからの構築では費用面の優位性が崩れた。放送コーナーでもサウンドカード内蔵型のXENYX 302USBを例に取り上げているが、必要な情報さえきちんと揃っていればミキサーを活用するのはそれほど難しくない。
ローエンドの選択肢としてはBEHRINGERのXENYXシリーズがブッチギリである(1万円台前半の価格帯にはヤマハやMACKIEやローランドも顔を出してはいる)。従来のXENYXローエンドとXENYX Qシリーズの価格差がかなり埋まってきた(2014年6月現在500~1500円くらい:機能的には、TAPE IN/OUTとパラのUSB入出力と、モノチャンネルのコンプと、「USB TO MIX」を有効にしたときのTAPE/USB自動ミュートが追加されたくらい、のはず)。リバーブ内蔵のXENYX FXシリーズもあり、基本性能はFXがつかない機種と同じ(内蔵イフェクタへのセンドはFXバスとパラで、リターンをノブで調整する格好:いちおう、FXバスのマスター音量がなくなっていることに注意)。1000円くらいの価格差だし、操作の邪魔にさえならなければ正直どっちでもよい。
XENYX 1002(5000円くらい)は安くて機能が揃っている。筆者の友人マーチンがXENYX 802(性能的にはほとんど同じだが機能的には1002の方がよさそうに見える)で録音したサンプルを録音と加工のページに掲載している。下位機種のXENYX 502は12Vファンタム垂れ流しなので注意。余談だが1002と802は外形寸法が同じである。ストレートフェーダー(スライダー式ボリューム)が欲しい場合、XENYX 1002B(電池駆動も可能なポータブル機)か、XENYX 1204USB(USB接続でサウンドカードとしても振る舞える:USBバスはセンドがメインミックスとパラ、リターンがテープインと同じバス)またはXENYX X1204USB(内蔵リバーブがついているだけで中身は同じ)あたりになるだろう。ミドルレンジは3万円くらいからだが、BEHRINGERのコストパフォーマンスが相変わらずで、XENYX X2442USBはほぼ万全に近いレイアウトである。筆者自身はXENYX 1204USBをメインで使っている。
繋ぎっぱなしにする場合、ミキサーのチャンネル数は「最大同時利用数」ではなく「合計機器台数」に合わせる必要があることに注意。たとえばマイク3本とエレキギターとエレキベースとステレオ出力の鍵盤を持っている場合、これら全部を1人で同時に使う可能性は非常に低いだろうが、どうせ繋ぎっぱなしにするなら全部繋いでおくのが便利である(こういったチャンネルの「無駄遣い」ができる点も、ミキサーを導入するメリットの1つ:トリム>チャンネルフェーダー>マスターフェーダーと3段階で音量をコントロールできるのが強い)。
性能の説明を読んでも何のことかわからない人は1002(機材が多ければ1202)が無難だろうか。本格的なミキサーが欲しい場合1204USBかX1204USBだろう(メーカーが同じこともあって、どの機種も操作などに大差はない)。
例として、XENYX1002/1202系について、ルーティングチャートというかブロックダイアグラムというか、まあなんとなくそれっぽいものをデッチ上げてみた。
筆者は実機を所有しておらず、説明書や本家のView Sheetの記述を鵜呑みにしながら想像で補ったものである。2015年8月追記:いつからか知らないがオフィシャルなブロックダイヤグラムが公開されていた。筆者のなんちゃってチャートはもう必要なさそう。
ノーマルに使う場合、「CTRL ROOM OUT」または「PHONES」からモニタ機器に音を出しつつ、パソコンへは「MAIN OUT」または「TAPE OUT」で音を渡し、パソコンの音を「TAPE/CDのINPUT」にもらう接続で、「TAPE TO MIX」のスイッチをオフ「TAPE TO CTRL ROOM」のスイッチをオン「FX TO CTRL ROOM」のスイッチをオフにする。この設定だと、チャンネル入力に入れた音はパソコンにだけ流れ、テープ入力に入れたパソコンの音はコントロールルーム(とヘッドフォン)だけに流れる(ウェットモニタになる:上記から「TAPE TO CTRL ROOM」をオフにするとチャンネルに入れた音だけモニタに流れ、原始的な意味でのダイレクトモニタになる)。
「パソコンで再生している音」と「ミキサーからコンピュータに入れる前の音」をミックスしてモニタしたい(ダイレクトモニタ+伴奏など)場合、単体でのやりくりにはやや制限がある。パソコンへは「FX SEND」から送って「TAPE IN」に返す配線で、パソコンでのリダイレクトを無効にして「TAPE TO MIX」をオン、楽器やマイクなどを繋いだ全チャンネルの「FX」を0db(12時)にする。こうすると、楽器やマイクの音はモニタとパソコンに送られ、パソコンで再生した音はモニタ(とメインバス)だけに流れる(パソコンに送る音量のマスター調整は「FX SEND」で、ダイレクトモニタとパソコンの音のバランス調整はパソコン側で行う:「FX TO CTRL ROOM」をオンにするとダイレクトモニタだけになる)。
なおFXバスはモノラルなので、送った後パソコン上でPANを振らなければならない。またFXバスがない502ではこの方法ができず、802ではFXバスだけ聴くボタンがない(メインバスがパソコンに送られてしまうXenyxQシリーズは、USB接続しないで使う場合のみOK)。
別の考え方として、ダイレクトモニタとウェットをミックスする機能のあるサウンドカード(たとえばUS-100)を使って、モニタ環境への出力はサウンドカードから直接行う手もあるが、前述のとおりパソコンの電源が入っていないと音が出ない欠点がある(これを無視できる使い方or回避できる機種なら便利な方法:もっとも単純な解決方法は、ミキサ専用にヘッドフォンを1つ追加すること)。US-100についていえば、パソコンの電源が入っていなくても筆者の手元の個体はUSB給電だけで動いているが、メーカーが想定している使い方ではない(US-125Mは別売ACアダプタがある)。
拡張性がウリなので実際の構成を検討してみたい。
外部機器は、XENYX 1202クラスなら、マイク2本にギターアンプシミュレータに鍵盤(ハードウェアMIDI音源兼用)にホームオーディオ(DVDプレーヤーとか、人によってはテレビとか)にポータブルオーディオ(のドック)くらいを繋ぎっぱなしても余るので、オーディオ機器のハブとして普通に機能する。
「TAPE/CDのINPUT」は、入力をまったく無加工で出力できる貴重な端子(普通のチャンネルに入れると、EQなどをゼロに設定していても微妙に音が変わる:これが嫌なら高級機種を使うしかなく、予算の桁が変わってしまう)なので、使いたい機器が複数ある場合入力セレクターのようなものを用意してもよいかもしれない(普通のピンジャックなので民生品が使える:セレクターだと切り替え時にパソコンの音がモニタ環境まで届かないという制限があるが、サブミキサーを追加するくらいなら上位機種を使った方がラク)。
XENYX 1002とXENYX 1202はステレオライン入力にEQがついていないが、これは賢明な判断だろう(パソコンとの接続で「TAPE/CDのINPUT」が塞がることへの対策になっている:ローエンドだと左右バランスが甘い機器もあるので、バランス調整がついているのは理解できる)。
対応が難しいのはデジタル入出力で、他の機器に頼らざるを得ない(サウンドカードにちょっといいものを使うか、デジタル入力のあるミキサーやアンプと併用するか:どちらにしても高くつく)。とはいえ、ソースがマトモなオーディオ機器ならアナログで入れても大差ないので、必要になるのはポータブル機器を接続するときくらい。
ミキサーにはたいていイコライザ(EQ)がついており、音作りの基本要素として重要である。ロー、ミドル、ハイの3極EQでの音作りがしっかりできれば、凝った音作りも容易にできるようになる(4極必要な場面はかなり限定的だろうと思う:ミドルのピーク周波数が可変だと便利だが、どうしても必要なものではない)。ただしPAに使う予定がないなら2極でも困りはしない(少なくとも筆者は)。すでに触れたように、高級機種(というかデジタルミキサー)以外ではEQをゼロに設定していても微妙に音が変わる(3極EQだとしてもアナログフィルタを3枚通していることになるので、当然といえば当然)。
グラフィックイコライザ(グライコ)もあれば便利ではある。グライコを使う目的で真っ先に思いつくのはハウリング対策だが、PAならわざわざミキサーのオマケを使わなくてもよい場合が多いだろう。活躍するのは音作りで、「この辺削ったらどうかな」「この辺持ち上げたらどうかな」といった試行錯誤が手軽にできる(本格的な処理は後でパライコを使ってやればよい)。ただし奏者がエンジニアを兼ねる場合、音を出しながらEQを操作するのはけっこうツライ。
EQについで搭載されることが多い機能に、コンプとハイパス/ローカットフィルタがある。大手メーカーでは恐らくヤマハ(さすがにわかっていらっしゃる)が最初で、BEHRINGER(便利なものは即座にパクる姿勢がスバラシイ)が追従した格好だったと思う。これらは便利で筆者もよく使っているが、実は録音には必要ない機能。コンプについては、ヘッドルームを潰す(できるだけ高レベルのシグナルを送る)意味でまったく無効ではないのだが、ミキサー以降のノイズフロアは無視できるくらい低いのが普通。ハイパスについても、後からパラメータを微調整しながらかけた方がずっとよい。ではなぜ便利なのかというと、楽器を演奏して遊ぶときにポチっとボタンを押すだけで処理ができてラクなのである(とくにパソコンの電源が落ちているとき)。
リバーブを内蔵した機種もけっこうある。こちらは「豪華な音でモニタした方が気分よく演奏できる」という奏者なら(リアルタイムモニタが不正確になるというトレードオフはあるものの)録音にも有用だろう。もちろん楽器で遊ぶ場合にも活用できる(メーカーは「PA用途で機材を省いてうんたら」と説明していることが多いが、筆者は説得力を感じない)。
マイク入力にファンタムがついている機種も多い。あって困るようなものではないが、誤操作の心配が少ない実装方法だとありがたい。最近はどの機材もやたらとマイク入力やらHi-Z入力やらファンタム供給やらをつけたがる傾向があるので、普通に機器を増やしていくとそのうち余ると思う。
ローエンドならXENYX 1002が有力だが、もっと上位の機種もそれなりに便利。繋ぎっぱなしにする場合、入力チャンネルは「機器の合計台数」に合わせる。1002をノーマルに使う場合、「CTRL ROOM OUT」または「PHONES」から音を出しつつ、パソコンへは「MAIN OUT」または「TAPE OUT」で音を渡し、パソコンの音を「TAPE/CDのINPUT」にもらう接続で、「TAPE TO MIX」のスイッチをオフ「TAPE TO CTRL ROOM」のスイッチをオンにする。FXバス(ただしモノラル)で送る手もある。PAにも使うならEQは3極あると便利。
どーも、メインアウトをパソコンに送りたがる機種ばかりで、筆者はあまり好きでない(手元のXENYX 1204USBも、USB接続せずに使っている)が、機器の台数とケーブルの本数が減る(結果的に手間もかからない)のが魅力。ミキサーの設置場所が制限される(=長いUSBケーブルでの動作をメーカーが保証or推奨していない)機種もあるのでいちおう注意。ベリさんとタスカムの活躍でローエンドが充実した。
ローエンドはやはりベリさんがブッチギリで、新規導入で検討の対象になるのはXENYX 302USB、XENYX Q502USB、XENYX Q1002USBあたりだろう。Q802はQ1002と大きさが同じなので、わずかでも費用を惜しみたいのでなければQ1002だろうと思う(Q802特有の機能はステレオ入力へのEQと、レベル調整できないステレオ入力が1系統あるだけ)。Q1202は入力数とサイズ以外Q1002と同じようなので、多く必要な人が検討すればよい。これらが少し取っ付きにくそうだという人にはTASCAMのUS-125Mが1万円くらいで簡略な操作である。それぞれ特徴を眺めてみたい。
Q1002はQシリーズのフルスペックで、小型ミキサーとしては十分な機能を持っている。USB対応でない無印1002と比較した場合の優位性は、パソコンにアナログで音を送る必要がなく、入出力を1系統余せることだろう(いちおう、モノチャンネルへのコンプも追加された)。ただし、ダイレクトモニタとウェットモニタは選択制でミックス出力はできないはず(実機は未確認)。本家サイト(2012年12月現在)に「Combined 32/64-bit 3rd party ASIO driver by ASIO4ALL:」「Alternative driver for all BEHRINGER USB audio hardware (including C-1U) - except BCD2000!」とあることからASIO4ALL対応で、ダイレクトでないモニタもそんなに遅れはしないはず。
Q502はQシリーズのエントリークラス。性能的には上位機種とほとんど変わらず、機能的には入出力数が少なくFXバス(外部機器追加用の予備音声出力)がないことが大きな違い。EQが2バンド(PA用途なら必須だが、家で使うならいらないと思う)、ローカットがない(そんなの後でかければよい)、メインボリュームがダイヤル(これは好み)といった差異はそう大したものではないように思う。スペース的に手元で操作できる場合(機器が増えても普通のミキサーを追加すれば手元操作用に残せる)や、楽器やマイク以外の音響機器をつなぐ予定がないなら優位性がある。
もっとも安い302USB(放送コーナーに筆者がでっち上げたブロックダイアグラムっぽいものや接続例を掲載した)はやはり手軽さが強み。エレクトリック楽器を直結できるメリットは薄いと判断したあたり、ベリさんらしい合理化路線が見て取れる。バスパワー以外に付属ACアダプタでも動くし、ファンタムもXLR端子にだけかけることでスイッチレスの不利を解消している。安く小さい機種が欲しいならファーストチョイスだろう。
TASCAMのUS-125Mはベリさんと比べればやや高いが取り回しと手軽さを重視した面白いデザイン(値段で勝負するには相手が悪い)。多くの人はこれ以上使わないだろうという機能にキッチリ絞って、その範囲内で最大限の使い勝手を引き出す発想に見える。TASCAMがこういう「やけに冴えてる」ブツを出してくるとなぜかコケることが多い(その割にどうでもいい鈍くさい製品が人気を得たりしてわけがわからない)ため、ちょっと心配である。
なお、まったくどうでもよい話だが「US-125M アプリケーション」のページに掲載された「小型ミキサー用途」の接続例に「CDプレーヤー」のイラストがあり、よく見るとCD-500(かCD-500B)である。CD-T2シリーズでいいじゃないか、というかそんなの置いてあるハコならミキサーもM-164とかLM-8とか使おうよ(キューボックス代わりに使うなら2バス必要だし、靴や機材やキャスターに踏まれても心配ない電源ケーブルだって必要なのでムリ:USB電源を装備したイフェクタボードのようなものを使えば運用できるかもしれないが、2011年11月現在、筆者はUSB電源付きの市販品を知らない)。ちょっとお茶目さん。2012年1月追記:なぜか「CDプレーヤー」だけイラストから写真に変わった(が、依然としてCD-500)。
それなりの制限はあるが取り回しがよく、初期投資も安く上げられる選択肢が出てきた。
エレキギターやエレキベースはアンプシミュレーター(またはヘッドフォン用アンプまたはマルチイフェクタ)で音を作ってからラインで入れるのが非常にラクである。自宅でしか使わないなら、電池式よりもACアダプタ式の方が便利だろう。筆者はいろいろと所有している。
単品マイクアンプが必要になる場面はそう多くないが、ローエンドで選ぶならオーディオテクニカのAT-MA2とBEHRINGERのMIC800 MINIMICで2択ではないかと思う(どちらも5000円前後)。AT-MA2はコンシューマ機器との併用が考慮されたレイアウト(入力が標準orミニのフォンプラグ、出力はピンプラグ)で、スレテオマイクやプラグインパワーなどにも対応している。MIC800は音楽用っぽいレイアウト(入力がキャノンと標準フォンでどちらもバランス、出力はアンバランスのモノラル標準フォン)で、48Vのファンタムと可変カットオフのローカット(ハイパス)フィルタとチューブモデリング機能がついている。
どうせ5000円前後出すならマイク入力が複数ついたミキサーが普通に買えるわけで、アンプで積極的な音作りをしたいとか、出先でも同じアンプを使いたいとか、ファンタムやプラグインパワーがぜひ必要だとか、なにかしら需要がある場合がほとんどだろう。
筆者が(おもにギター用に)使っているMIC200もよいアンプ(というかイフェクタというか)ではあるのだが、真空管が入っているのでメインとして使うにはちょっとメンドクサイ。
エレキギターやエレキベースはアンプシミュレーター(またはヘッドフォン用アンプまたはマルチイフェクタ)で音を作ってからラインで入れるのが非常にラク。
ヘッドフォンアンプは、できればあった方がよい。ローエンド機器を使っているなら大音量再生がスッキリする効果も多少は期待できるが、それよりも、ヘッドフォンが1つしか使えないと繋ぎ替えが面倒だからである。
モニタ用ヘッドフォンはモニタ以外の用途を度外視して作られており、リスニングに流用するのは多くの場合ムリがある(パソコンにつなぐということは音楽以外の用途にも使うはずだろうし)。毎回繋ぎ替えるのは手間だし、プラグやジャックの寿命も気になる。反対に、もしヘッドフォンを1つしか使わないのなら、ムリに導入することもないかなと思う。
アンプを追加するとミキサー本体のヘッドフォン端子が余るが、筆者は古いヘッドフォンを繋ぎっぱなしてチェック用に使っている(普段は音量ゼロ)。ヘッドフォンアンプは「ライン出力」からの信号で動かすのが基本で、普通の機種は「ヘッドフォン出力」からの信号では正しく動作しないことに注意(ちょっと正確さに欠ける表現だが、とにかくこの接続は非標準的である)。
ローエンドだと、BEHRINGERのHA400 MicroampとAMP800 MiniAMP、オーディオテクニカのAT-HA2、SAMSONのS-AMPあたり(HA400だけ1500円くらい、他は5000円くらい)。HA400は安くてコンパクト、AMP800は多機能、AT-HA2は無難な構成だが独立ボリュームでない、S-AMPはよくわからないが見た感じ普通っぽい(回路的にはシンプル&合理化路線らしく、分解や改造が好きな人には好意的に受け止められている模様)。
機種によって出力インピーダンスが異なるのだが、仕様の書き方が不明瞭なメーカーが多くわかりにくい。希望的な立場として、スタジオ用ヘッドフォンに多い60Ω前後のもので不都合が出る機種はないと思いたい(もちろんまったくの未確認)。リスニング用に多い32Ωくらいのヘッドフォンが使えそうなものは、すでに挙げた中ではAT-HA2(インピーダンスの記述が見当たらないがスペック表記が32Ω負荷基準)とS-AMP(インピーダンスと出力の対応表に32Ωの製品が掲載されている)あたりだろうか(やはりまったくの未確認)。一般的なスタジオ用ヘッドフォンアンプは50~100Ωくらいの出力インピーダンスで、ヘッドフォンのインピーダンスカーブによるが、ホームユースのアンプよりややドンシャリ気味の出音になることがある。
スルー出力(入力と同じ信号を出力する)があると接続に幅が出る(ミキサーの「CTRL ROOM OUT」に繋いだ場合にスピーカへの出力を塞がないで済むし、サウンドカードにダイレクトモニタ機能があるならパソコンからミキサーへの帰り道の途中に挟むのも手)。上記の機種ではAT-HA2にムリヤリっぽいモノがついているのと、AMP800にパラレルリンク出力(ラインAの入力をスルー)がついている。SAMSONのS-MONITORという別製品は、キューボックス的な使い方を想定したように見えるのだが、なぜかボリューム共用のヘッドフォン端子2つとスルー端子がある。
しかしぶっちゃけ、5000円のミキサーに5000円のヘッドフォンアンプを継ぎ足すのはアホらしいので、とりあえずHA400あたりに手を出してダメだったら後で考えるくらいのノリがいいのかなぁ、という気がする。筆者自身はHP4をサブで使っている(Fast Track Ultraに独立ボリュームのヘッドフォン出力が2系統あるので、メインはそちら)。
別の考え方として、ミキサーのヘッドフォン出力とサウンドカードのヘッドフォン出力を併用する手もある。これなら機器の増設は必要ないが、サウンドカードがライン出力とヘッドフォン出力を同時利用できる仕様でないと使い分けが面倒だし、構成がダイレクトモニタ機能の有無と仕様(単純切り替えorミックスバランス調整)に左右される。
たとえばU-CONTROL UCA222を使う場合、パソコンの音と外部機器の音を混ぜて返すことはミキサーにしかできないので、ミキサーのヘッドフォン出力をモニタ用に使うことになる(スピーカを併用する場合の都合もあるので、まあ妥当だろう)。リスニングはUCA222のヘッドフォン出力(ダイレクトモニタ機能を使うとミキサの音だけ聴くこともできる)で行い、スピーカが必要な場合はCTRL ROOM出力を使う。
筆者はMT4XとオンボードサウンドやSound Blasterで似たようなことをやっていたが、とくに大きな不満はなかった(MT4Xのミキサー機能が優秀だったのも理由だと思う)。なお、US-100はヘッドフォンとラインが排他なのでこの使い方には向かない。
たとえばバッファローコクヨサプライのHAMS10Eなど、フォンプラグ対応のセレクターを使う手もある(別に、途中で変換を噛ましてピンプラグのセレクターを使うのがダメではないが、多分メンドクサイと思う)。メーカーの意図としてはヘッドフォンとアクティブスピーカを切り替えるためのものらしいが、作りとしては機械式の全回路切替だろうから、ヘッドフォンとヘッドフォンの選択に使って悪いわけではないはず(未確認だが、リバースでも使えるだろうと思う)。
タコ足タイプの単純な分配器はあまりオススメしない(どうしても同時使用する必要があるのでなければ選択器の方が無難:というか、選択でなく分配がしたいなら、HA400のようなアクティブの機種を使うのが本来)。
ヘッドフォンアンプがあるとモニタ用ヘッドフォンとリスニング用ヘッドフォンの併用がラク。サウンドカードの機能を利用すれば、機器の増設を避けられる場合もある。
筆者自身が長く使ったものについてはローコスト制作の感想コーナーで紹介している。ヘッドフォンに関する基礎的な情報は、機材コーナーのヘッドフォンのページを参照。
何回繰り返したか覚えていないが、直接身体に装着するものなので自分の頭と耳にフィットするものを選ぼう。どんなに出音が正確でも、15分で頭痛がするのでは使い物にならない(ただし、イヤーパッドの慣れorヘタリでフィット感が変化するので、新品時点でジャストフィットしていなければならないわけでもない)。また、フルオープン型でない限り耳腔の形状によって音が変わることも覚えておきたい(カナル型イヤフォンなどでは極端な影響があり、耳の形とイヤーピースの形の組み合わせで、同じドライバから出した音でもまったく異なって聴こえる)。側圧でも音が変わるため、頭の大きさやバネのヘタリなどが間接的に影響することもある(密閉型で顕著:ヘッドバンドの根元あたりを押し引きして側圧を変えてみると、どのような影響があるか類推できると思う)。
もしオープンorセミオープンのヘッドフォンを使ったことがないなら、ぜひ一度試してみることをオススメする。入門機のチョイスが狭くなってきている(普通のリスニング用ローエンドで入手性がよいのはATH-TADシリーズくらい:ATH-EP700、HPE-170、RH-A7-WHと楽器モニタならそこそこ選択肢があるし、リスニング用もポータブル機なら入手性がよくなってきた)のがちょっと寂しいが、リスニングでもモニタでも、遮音性が問題にならないならオープンorセミオープンのヘッドフォンがファーストチョイス、というのが筆者の持論である(スタジオモニタでの密閉の優位性は、マイク録音に使いやすいことと、オンマイク無加工音源をモニタしたときに不自然さが紛れやすいこと、他の人に「黙っててね」と言わなくてもそれなりに使えることくらい)。極限ローエンドにSuperluxの無印HD681とBEHRINGERのHPX2000があるが、どちらも試着できる環境に乏しいのが悩みどころ。
用途と傾向と代表機種をまとめるとこんな感じ(全部筆者の勝手なネーミングで、一部オーバーラップがある):
情報を取捨 | 情報を網羅 | 備考 | |
奏者だけが使う | 録音or楽器モニタ | 録音or楽器モニタ | 担当楽器や奏者の好みで幅が広い |
奏者とエンジニアが使う | 日本風モニタ | アメリカ風モニタ | PAモニタまたはDJモニタへの歩み寄りが見られる |
エンジニアだけが使う | オペレーションモニタ | リファレンス狙い | 英語の「live sound monitoring and mixing」は「PA業務」のこと |
2014年6月現在のラインナップを見回して、安価なクラスから筆者が購入候補として選ぶなら、録音モニタでKOSSのQZ99(ドラムスやライン録りのギターに使いやすく顔に近い位置でのマイク録音でも被りが少ない)とYAMAHAのRH5MA(返りを送るのに便利な特性だし名前が通ったメーカーの「モニタ用」なので貸し出しやすい)、それ以外用でFostexのTH-7(プレイヤーが何をしているかという情報の質と量を兼ね備えており、聴き返し用にもうってつけ:低域はざっくりとでも削った方が無難)といったあたりだろうか。プロユース専用のモニタはトガったキャラのものが多いので、自分で選べる人以外は手を出さない方が無難だろう(おもに1万円クラス以上だが、値段が下がっているK240 Studioなども含む)。またOEMなどで複数のベンダーが同じ(と思われる)製品を扱っている場合、もし価格が大きく違うなら品質も異なると考えるのが自然(ローエンドに近ければ近いほど、また生産技術が未熟であればあるほど品質はバラつく:検査にかけられる費用や時間や手間が違うので、ハイエンドのいわゆる選別品ともまた事情が異なる)。
音楽再生用の機材を一切持っていない(というのは非現実的だが仮定として)状態から機器を導入するなら、リスニング用のヘッドフォン(当然ながら機種はなんでもよい)と何かしらのスピーカ(3000円のPCスピーカでもないよりはずっとマシ)から手を付けて、リスニング用ヘッドフォンが密閉ならTH-7、開放ならSRH440を仕入れればひとまずなんとかなると思う(不幸にも頭に合わないという事情さえなければ:自分の需要をしっかり把握してモノを選べばもっと効率を上げられるかもしれないが、ゼロから始める人がイキナリそうしようとしても多分ムリ)。またもしお金が足りない場合はリスニング用の機器を優先してよい(まずは自分が気に入っている曲が自分好みの音で鳴る環境を手に入れるのが先決:それなしでマトモな音作りができるようになんて決してならない)。
コストパフォーマンスを考えるにしても限界パフォーマンスを考えるにしても、目的以外の用途を度外視すればそれだけ有利になるのは間違いなく、用途に合った使い方を心がけたい。とはいえあまり数を増やすのもナンなので、たとえばレコーディングモニタはリスニング用ヘッドフォンの使い回しで済ませるとか、重要度を考慮しつつあまりムキにならないのがよいだろう。なお「アラウンドイヤー」「耳覆い型」「オンイヤー」「耳乗せ型」などの基準がデタラメ(あるいは独自)なメーカーもあるので、カタログの表記を鵜呑みにせず、必ず試着してから購入することを重ねて推奨しておく。
自分の頭と耳の形に合うもの、用途に適したものを使おう。開放型を一度は試してみるべし。
ベーシックな構成としてはXENYX 1202を中心にするのがもっともオススメできる(入力数が少なくてよいならXENYX 802もとっつきやすい)。サウンドカードは、オンボードサウンド(ただしライン入力が必要)、Sound Blaster 5.1 VX、U-CONTROL UCA222またはUCA202あたりから利用可能なものを選べばよろしかろう。これで不満があったとしても、ミキサーは何かしらの形で使い回せるだろうし、サウンドカードはぶっちゃけ捨てても惜しくないくらいの価格なので試しやすい。
XENYXシリーズやU-CONTROLシリーズにヘッドフォンアンプとしてHA400あたりを追加すると、ベリさんお得意の同一部品大量投入(同じ部品ならたくさん買った方が安いので、ローエンドでの戦略としては正しい)で結局同じアンプを使うことになる場合があるかもしれない(まったく未確認)が、いわゆるモニタ用ヘッドフォンを使う場合は繋ぎっぱなしにできるメリットがあるので捨て切れない。前述の、ミキサーとサウンドカードのヘッドフォン出力を併用するワークアラウンドで乗り切る案も、サウンドカードの仕様によってはもちろんアリ。
ここから追加投資する場合、やはり開放or半開放のモニタヘッドフォンが最優先だろう。マイク録音モニタはリスニング用密閉の使い回しでも大問題はなさそうだが、頭に合ったものを使わないと音が漏れるので、よりいっそう相性チェックが重要。周辺機器はミキサーに繋げばよいだけなので、チャンネル数が許す限りいくらでも増やせる。機器が非常に増えた場合ミキサーを追加することになるが、サブミキサーの出力をメインミキサーのチャンネル入力に突っ込む形(カスケード)と、ミキサー2台の出力をマルチチャンネル入力の機器に入れる形(パラレル)がある(好みと都合で使い分ければよい:単純に、もっとデカいミキサーに買い換える案もある)。
オールインワンタイプのサウンドユニットだけで済ませる小規模構成(とくにマイクを1本繋ぐだけのスタイル)なら、候補としてはUSシリーズやXENYX302USBあたり。入出力などの必要性で選べばよろしかろう。後からミキサーを追加することになるとコストパフォーマンス的にちょっと劣るが、ダイレクトモニタやマイクの直接接続などを活用できるならまったくの無駄ではない(ただし、本来のコストパフォーマンスを発揮するのは小規模構成で通す場合)。
筆者自身は、MT50+ノートPC(アプリコット)のオンボード、MT4X(途中で録音のみ788に移行)+Sound Blaster 5.1(途中でSound Blaster Audigy LSに移行)+デスクトップPCのオンボード、MT4X(録音のみ788)+US-100、XENYX 1204USB+US-100、XENYX 1204USB+Fast Track Ultraあたりをメイン環境にしてきた。機材のアップグレードで出費相応の恩恵は得たが、機材の性能自体がネックになったのは最初のアプリコット時代と、MT4X(ミキサーとしては優秀)を録音に使ったときくらいである。MT4X(ミキサー利用)時代の録音サンプルはローコスト制作のハードウェアのページからリンクを辿れる。
ここまでに紹介している類の機材なら、性能なんてのは結局ある「一定のライン」を超えるか超えないかが問題(ギリギリで超えても余裕で超えてもアウトプットに大差はない)なのであって、そのラインがどこにあるかはアナログ環境(部屋の音響性能などを含む)が支配的に決定する。例示したXENYX 1202やローエンドサウンドカードのライン入力などは一般住宅での要求ラインを余裕でクリアできるスペックなので、選択の際は主に利便性を考慮するのが利口だろう。
テキトーなミキサーをライン入力があるサウンドカードに繋いで、他の機器はどんどんミキサーにぶら下げよう。性能は足りるので利便性優先で。
結局、
ついでにちょっとした心得を追加しておくと、ローエンド機種の運用においては「ヘッドフォンは12時まで」「トリムは3時まで」「ゲインが足りなければデジタル増幅」という原則(「絶対に守るべき鉄則」ではない)を覚えておくとトラブルを避けやすい。また、デフォルトで「デジタルで音量を下げた後D/Aコンバータからの小さすぎる出力をアナログアンプでまた増幅する」という鈍臭い手順になっている機種があるので、ちょっと気にしてみるとよい。
これは筆者のオススメではなく単に面白そうだと思っている製品なのだが、BEHRINGERのMON800 Minimonがちょっとステキな仕様である。入出力の名称がちょっとアレ(全部ABCじゃなく、アルファベットと数字を併用するとか、もう少しなんとかならなかったものか:おそらくパクリ元だと思われるSamsonのC-controlも全部アルファベット)で、ぱっと見「なにができるのか」わかりにくいかもしれないが、基本的な使い方は「最終段(ヘッドフォンやスピーカの直前)に置く高機能セレクター」であり、実際にはそれほど複雑な機材ではない。
まずヘッドフォン出力が2つついており、両方同じ音でボリュームも共用。説明書やスペックシートには「Impedance」が「min. 100Ω」だとあり、最大出力も100Ω負荷時のものなので多分そうなのだろう。もしHA400と同じ回路(出力抵抗80Ωで最大出力表示は100Ω負荷)なら大騒ぎするほどのことではないが、ヘッドフォン端子を両方使う場合並列になって負荷が下がる(多分)のでいちおう注意しておきたい(HA400と同じにしようと思ったら熱設計でコケたのか、100Ωを2発並列にすると50Ωだからそれ以下は勘弁してくれということなのか、日本語の説明書から読み取れるように「出力インピーダンスが100Ω以上である」意なのか、よくわからない)。
入力は4系統をオンオフスイッチ付でまとめて出力することができる(単純に合計するだけで、本体でのバランス調整機能はない)。出力はヘッドフォンを除いてもステレオで6つあり、スピーカ出力3つは独立にミュート可能でボリューム(ただしスピーカBとCは共用)付、CUEと2-TRはボリューム調整やミュートなしでほぼ同じモノだがトークバックの系統分けが違う(やはりまったくの未確認だが、ヘッドフォン以外のどの入出力も、プラグの形状以外は同じモノに見える)。
接続はたとえば、ミキサーの「CTRL ROOM OUT」を「MIX IN A」に、サウンドカードのライン出力を「MIX IN B」か「TAPE/CD IN C」に入れて、ヘッドフォンを2つと、スピーカを「SPEAKERS OUT」のどれかに繋ぐ。するとミキサーの「TAPE/CDのINPUT」が空くのでライン出力の機器を追加できるし、余った入出力を適当に使い回せばミキサーのラインチャンネルも節約できる。
この状態での機能としては、「SOURCE」ボタンで各入力の有効無効切り替えができ、ヘッドフォンとスピーカの音量調整がそれぞれでき、スピーカはボタンによるミュートもできる。なお、トークバック機能はあくまで連絡用や音声メモとしての用途を想定したもので「普通のマイク」と同様に使うことはまず間違いなくできないことを一応指摘しておく。
価格的に苦しいところなのだろうが、ヘッドフォンのボリュームが2系統共用なのが惜しい(メーカーは外部アンプの利用も示唆している:CUEから出してAMP800やHA400を使って欲しいのだろう)。ヘッドフォンの感度は機種によってけっこう違い、使い分けるたびにボリューム調整をするのはかったるい。もし実売で1000円くらいの上乗せでHA400相当くらいのもの(2出力あれば十分)がついたら・・・価格帯が上に逸れて売れなくなったりするんだろうか。