BEHRINGERのXENYX 1204USBについて。XENYX X1204USBもアナログ部分はほぼ同じらしい。
重要な情報:
この記事は筆者が2011年4月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。
有効範囲というか、デメリットなく使える範囲。
まずヘッドフォン(コントロールルーム)は12時まで、トリムは3時まで。この辺はローエンドミキサーのお約束通り。
びっくり仰天なのがフェーダー(チャンネルとマスターの両方)。何も考えずノミナル(プラマイゼロ)にすると、多くの環境でホワイトノイズ(というかヒスノイズ)が耳につくと思う。実際にはノイズが「乗っている」わけではなさそうで、入力換算ノイズが単調増加しているわけでもないが、とりあえず「10」(表示は「10」だが実際には「-10」)の1つ上のラインくらいまでにしておくと無難か。
これはおそらく、ヘッドルームがやけに高いことが原因だと思われる。たとえば、28dbuの最大出力に対して-62dbuのノイズフロアなら、ダイナミックレンジを90dbくらい確保できるが、出力先機器の仕様により-8dbuでクリップするという状況では、結局差し引き56dbしか使えないことになる(対応としては、天井に合わせて床を下げれば(=フェーダーでゲインを落とせば)よいはず)。
実際問題として、トリム3時のフェーダー10でもウルトラハイゲイン(もちろん歪んだりはしない)なので、使用上の制限になることは考えにくい。また全開での入力換算ノイズはそれなりに小さいようで、たとえばPANDORA miniのようなノイズレベルが高くて出力の小さい機器をつなぐ場合や、後述するようにメインフェーダーを大きく絞る場合には、チャンネルフェーダー全開も便利である。
フェーダー全閉での遮断性能は十分なので、つなぎっぱ用途に支障はない。もちろん、フェーダーには手を触れずミュートボタンで運用する形も可能(やはり後述するように、尋常でないくらいのハイヘッドルームではあるが、外部機器のスイッチオンオフなどでミキサーに過大入力を入れないよう、いちおう注意)。
最大出力もとんでもなく大きいので、後ろに高級な機材を繋ぐ場合はメインフェーダーを-25~-30dbくらいにすると安心。-28dbの設定だと、クリップ時で0dbuの出力になってくれるはず(ミキサーはあくまでミキサーであってリミッターとして作られているわけではないが、オペアンプが入っているはずなので気休めにはなる:筆者自身は、単機のリミッターを別途導入する必要を感じない)。モノラルアンバランス出力(メインアウトとヘッドフォンアウト以外)は6dbほどゲインが低い模様(さもありなん)。
仕組みを考えたのはMACKIE(たぶんONYX1220が本機のパクリ元:2010年にオプションだったFireWireでのパソコン接続が標準装備になり、ONYX1220iにモデルチェンジした)だろうが、とにかく便利である。筆者はパソコンとのUSB接続をせず、当初はALT 3-4(ステレオセンドとして使う)とステレオラインイン(ステレオリターンとして使う)でアナログ入出力をしていた(USB接続はその後も使っていない)。
この方法の利点は、パソコンへのセンドソースをボタンひとつで選べて、かつ自動的にドライミュートでき、パソコンからのリターンをフェーダーやPAN(バランス)に通すことができる点である。パソコンでの返りを無効にすればループバックもできるし、AUXなどから出してまたチャンネルに入れればセンドリターンも作れる。
ただし、ミキサーのチャンネルに入れるということは、たとえツマミをセンターorノミナルにしてあっても、EQだのPANだのフェーダーだのといろいろ通過することになるので、出力の正確さでは劣る。これが問題になる場合は、普通にUSB接続してやればよろしかろうと思う(ライン入力用のバイパス出力ボタンみたいなもの(チャンネルフェーダーだけ有効になる)があればなおよかったかも)。
録音用でないパソコンやCDプレーヤーなど普通のオーディオ機器からの出力は、テープインやAUXリターンや余っていればステレオラインチャンネルに入れてやれば、ミキサーを中心に入出力をまとめることができる。モニタ(ヘッドフォン)バスへの入力ソースを選べるのも地味に便利。
サブミキサー(というか楽器やマイクなどの合流ポイント)として使う場合、メインアウトとALTバスとAUX2本で、都合ステレオ2系統+モノラル2系統出力が可能。Fast Track Ultra導入後はこの方法(ただし6本もいらないのでステレオ2系統だけ)で接続している。
ラインインの30dbu(0.775V@開放端で0dbuだから30dbuは約24.5V@開放端)というのは何を想定してそうなっているのかわからない・・・と思ったらメインアウトが28dbuだったというオチ。「high headroom」をウリにしている製品でも、たいていは22dbu(というか多分20dbV=10V@開放端または4dbuオペレーティング+18dbヘッドルーム)までの入力なので、本気は出さないで欲しい(セットアップ例を見ると、メーカーとしてはアクティブのPAスピーカを繋いで欲しいようだ)。ちなみに、マスターよりチャンネルの方が天井が高いので、最大入力をぶち込む場合はマスターで歪まないよう注意。
ぶっちゃけ、後段に繋ぐ機器の安全を考えると、やたらとハイヘッドルームにはしないでくれた方がありがたかったかもしれない。筆者はメインフェーダーを-25dbくらいにして使用している(ちゃんと録音したいときはミキサーを介さずFast Track Ultraに直で突っ込む)が、チャンネルで持ち上げた音量をマスターで叩き落してまたデジタル増幅というのは、実用上の支障があるとは感じていないもののやはり鈍臭い。まあ入力がハイヘッドルームな以上ミキサーとしては出力もハイヘッドルームにせざるを得ないだろうから「どうせクリップするならミキサーの中でクリップして欲しい」「汚れ役はお前に任せたい」という熱い思いは、マスターフェーダーに託すのが妥当だろうか。
音声系統もすごい最大出力だがLEDの光量もなぜか激しく、とくに電源オンを表示する青色LEDの光は目に刺さるほど。ヘッドフォントリム、レベルメーター、メインフェーダーなどが集まっている場所で光っているため嫌でも目に入る。照明装置じゃあるまいし、もう少し控えめにして欲しかった。
話を戻そう。上で出てきたレベルメーターだが、どうやったらクリップレベルまで持っていけるのか想像がつかない(いや、ヘッドアンプでクリップさせた音をチャンネルフェーダーで持ち上げてさらにメインフェーダーでも持ち上げればいいのはわかるが、そんなチャレンジをするシチュエーションが想像できない)。というか、クリップするということはメインアウトから28dbuぶっ放しているということなので、あまり想像したくない。
なんといってもストレートフェーダー(上下に動くボリュームツマミ)がついている。筆者はMTR世代(最初に購入したのはMT50)なのでとくに思い入れがあるのだが、ぞんざいな使い方をする場合にも、凝った使い方をする場合にも、ストレートフェーダーというのは本当に便利である。筆者はXENYX 1204USBをディスプレイやスピーカなどが乗ったスチールラックの最下段に置いており、たいていの操作は足でやってしまう(ちょっと慣れればミュートスイッチの操作も楽勝:屋内で靴を履かない日本文化万歳)。こういうものぐさができる効果は、筆者にとってたいへん大きい。当然ではあるが、複数チャンネルのボリュームを同時に動かすなど、高度な操作(もちろん手でやる、と断るまでもないか)をする場合にも便利。
電源オンオフのノイズも非常に小さく、フェーダー位置(物理的なストッパーをつけて動きを制限する手もある)さえ間違わなければ後段の機材にはかなり優しい。メインフェーダーが左右独立(すでに触れたように、メーカーの想定としては「アナログ出力するならパワードモニタ」なのだろう)なのは筆者好みでないが、目くじらを立てるほどのことではない気もする(PANを振り切れば間に合わせのバスも作れて、サブミキサーとして使う場合には便利:ステレオチャンネルをモノで使えば8入力で、出力はメイン左右+ALT左右(マスターボリュームは左右連動でソース選択はメインと排他)+AUXプリセンド+FXポストセンド+コントロールルーム左右(マスター連動でソース選択)の最大8出力になる)。
仕様を確認すればすぐわかることだが、USB出力(とX1204USBの場合イフェクタ部分)以外はすべてアナログである。どーせAD変換したならデジタル出力もしてくれればよさそうなものだが、そこまではサービスしてくれない模様。中の石によっては面白いことができそうな気がしないでもないが、分解した猛者は発見できなかった(まあ実用を考えたら、素直にUSB出力をパソコンでファイル化した方が100倍、メインアウトをADコンバータのある機器に繋いでも10倍は早いし、わざわざAD変換する目的を探すのも大変だが)。
2016年7月追記:常用していた一番右のチャンネルのみ、接触がなんだかおかしくなってきた。掃除すれば直るのかもしれないがチャンネルが空いているので放置している(すぐに対処しないから本格的に壊れちゃうんだよねぇ)。ずっと常用してるし設置環境も劣悪だが、これまでのところ上記以外の不調はなし。