TO800


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<この記事は書きかけです>

BEHRINGERのVINTAGE TUBE OVERDRIVE TO800について。出音については音声サンプルのページを、他の機器と組み合わせた活用例についてはギターイフェクト総合を参照。

重要な情報
この記事は筆者が2011年10月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。

ちょっと変わった歪み系

この機種はチューブスクリーマーと呼ばれるイフェクタで、本来の用途は名前のとおりチューブアンプの前段に置いてアンプに悲鳴、怒号、金切り声、唸りなどを上げさせる(というか「目立つ音」を出させる)ことである。実際その使い方で本領を発揮するのだが、多くのコンパクトイフェクタやデジタルマルチが苦手としているクランチトーンを得るためにアンプシミュレータの前に置くのも効果的。オーバードライブ系のイフェクタは数多くあるが、こういった目的外利用に適する機種とそうでない機種があるようだ(少なくとも筆者が試した限り、ARTECのSE-BODなんかはアンプをオーバーにドライブさせる用途の方が無難な感じ:仕様との関連については次の項でまた触れる)。

チューブアンプの前に置く場合、ほかに余計なものは(ディレイとワウは例外としても)足さずに、ギター>TO800>アンプとすると持ち味が出るような気がする。アンプで歪ませる(モダンハイゲインチャンネルとかでなく、素朴に大信号を突っ込んで歪ませる原始的なタイプ)場合、TO800のLEVELでプリ段歪みをコントロールしつつ、DRIVEは歪み方を見ながら最小から最大まで試し、TONEはアンプのEQと連動させる(おもに、TO800でローを削ってアンプで持ち上げる)とラクだろうか。クリーントーンを落ち着かせる(チューブアンプの多くはパワー段の5極管を5極管接続で使っており、低域の制動が悪く高域が暴れる:あえてやっていることではあるが、実用上邪魔になることももちろんある)用途では、当然ではあるがDRIVEとTONEをかなり絞る。アンプとの合計でクランチ~ドライブトーンくらいの歪みを作るときは、音色の特徴をギターとペダルとアンプで分け合うような感じ。

TO800のDRIVEを上げてLEVELを下げると天井が下がる形で出力のダイナミックレンジが狭くなり(ようするに最小振幅が変わらず最大振幅が小さくなる)、結果的にアンプでの歪みの最大量が減る。反対にTO800のDRIVEを下げてLEVELを上げると天井が上がる形で出力のダイナミックレンジが広くなり(ようするに最小振幅が変わらず最大振幅が大きくなる)、結果的にアンプでの歪みの最大量が増える。TO800自体は歪み始めが穏やかで、ゲインを上げるとやや段がつく形で歪みが強まる(単体で使うと音色の段差のように感じられることもあるが、複合させると後段アンプの歪みが抑制される効果で滑らかになる)。この区切りポイントをどこに持っていくかをTO800のLEVELとアンプのゲインで操作でき、基本的には「アンプ単体だと音色が汚くなり始めるところ」に設定して通りのよいトーンが得られる範囲を広げる使い方になる(詳しくはソフト/音源/状況別の作り込みのページを参照)。

チューブスクリーマーというとフェンダーアンプと組み合わせるのが定番で、01年モデルのTwin-Amp(ギターアンプのページを参照)でクリーンチャンネルに使ったところ、暴れを抑えつつクセをつける感じでよくマッチした。ドライブチャンネルにも普通に使える。フェンダーアンプに限定する必要はもちろんなく、AC30CC2X(やはりギターアンプのページを参照)のノーマルチャンネルや、JCM2000のクラシックチャンネルのハイゲインモードでも幅広い使い方ができた。レンタル品のレスポール(エピフォン)もストラト(本家USA)も気分よく鳴った。アンプを完全なハイゲインモードにする場合、DRIVE3時のLEVEL9時(全体で微妙にブーストくらい)、TONEはリアピックアップなら最小近くフロントピックアップなら9~12時くらい(アンプによる)をスタートにするとやりやすい。

直後がチューブアンプorアンプシミュレータでない場合、ユニティゲイン(バイパスと同じ音量)かそれよりちょっと大きいくらいの出力で音色の変化を狙う使い方がメインになることを把握しておきたい(エキサイターに近い感じ)。頻繁にペダルを踏むときはとくに、ユニティゲインからあまり離さない方がコントロールしやすいと思う。パッシブピックアップのエレキギターを直結する場合、フラットピックでガリガリにストロークしても、ドライブを最小にしておけば(ピックアップの仕様やギターの鳴りにもよるが)クリップ系の歪み方はほとんどしない。

設定や後段での潰し方によっては多少ヒスノイズが出なくもない(DRIVEツマミの設定により前段から入ったノイズが増幅されるだけで、機材自体はローノイズ)のだが、ちょうど「背景ノイズが有意に増える直前」が「ユニティゲインよりもちょっとブースト」くらいになる(狙ってやったのか偶然なのかは知らない)ので、筆者はゲートが欲しいとは思わない。バキバキのブースターとしては使いにくいが、音量を大きく上げたいなら後段に別のブースターかプリアンプを置くべきだろう。

比較的地味な変化(具体的なセッティングは後述)が得意で、イフェクトをかけ始めたときには大した違いを感じないこともあるが、しばらく弾いてからバイパスすると落差にびっくりする。筆者の手元で出ている音については音声サンプルのページ、他のイフェクタとの連携例についてはギターイフェクト総合のページを参照。

仕様や特性など

正弦波を入力した場合の応答は音声サンプルのページに掲載してある。普通の入力に対しては、奇数倍音を主体に弱めの偶数倍音も加えた、矩形波と鋸波系の中間くらいの穏やかな歪み方。トーンはごく高音域にはあまり影響せず、低域の絞り方と中高域の強調加減をコントロールしている。過渡特性が素直で限界まで突っ込んでもプチノイズなどが生じにくい特徴がある。

すでに触れた「他の歪み系を通した後にも置きやすい」キャラは、入力レンジの広さによるものだと推測できる。前段の機器が出力した高域の歪み成分を丸ごと捨てるようなことがない(弱めはする)ため、味付け系のペダルとして地味な使い方をしやすい。高域が暴れる音を少し丸くしたい場合に便利。音量の常用域は、入力も出力もギターのピックアップ出力とそう変わらないレンジになる(もちろん、出力はある程度大きくできる)。本来の用途ではないのだろうが、ブースターでバコバコに叩いてやっても面白い音が出る。

本体に電源スイッチはなく、インプットジャックにプラグ(モノラル限定)が挿さっていないと通電しない。バイパスが電子式(バッファアンプは通らないような説明をどこかで読んだ気がしたのだが、CT100のINSTALLED CABLE TEST MODEで調べたところバイパス状態で出力プラグのホットをグランドに落としても入力プラグのホットはグランドに落ちておらず、バッファが入っているようだ:2012年11月現在の公式サイトには「its top-quality on/off switch gives you the highest signal integrity in bypass mode」としか説明がない)で、通電していないとバイパス出力もできない(グランドは電源オフでも浮かない)。これらはベリさんのコンパクトイフェクタで共通の模様。

また、直前の動作モードに関係なく、インプットジャックにプラグが挿さった状態で電源プラグを接続するとバイパスモードで、電源プラグを接続した状態でインプットジャックにプラグを挿し込むと有効モードで起動する。これらはベリさんのコンパクトイフェクタでもそれぞれ仕様が異なる模様(たとえばTM300は、どちらの場合もバイパスモードで起動する:もしかしたらバイパス用回路の仕様変更があったのかも)。

使い勝手など

曲の途中でペダルを踏む前提の場合、音量変化も検討しなければならない。単純に音色を変えたいならあまりブーストせず、コードストロークと単音弾きの音量差を埋める目的ならややブースト、バッキングからフロントに回ったときに踏むなら普通にブースト、ピックアップセレクターの操作と同期して使うならピックアップの出力に合わせる、といった感じだろう。

単体での音色は「穏やかでキメが細かいオーバードライブ」といったところで、DRIVEを最小にしたキレと透明感のある音色も、最大歪みでのグリっと潰された音色も筆者は好き。DRIVEツマミをイジっても低音弦の音色はあまり変化しない(似たような歪み方で音量だけ変わる感じ)。

コーラスイフェクトとの相性がやけによく、全ツマミ9時で軽く歪ませてからコーラスをかけるだけでリッチなサウンドになる。TO800>コーラス>ドライブアンプの順番も面白いし、他のアンプ(orシミュレータ)の後ろでコーラスの直前に挟むのも効果的。ショートディレイやリバーブによる音色の曇りを補う用途にも使える。

筆者はギター>GDI21>TO800>プリアンプという並びを採用している(クリスタルクリーン用にGDI21>プリアンプの直結ルートもいちおう確保)。DIにもなるGDI21との組み合わせは利便性が高く、音色も気に入っている。

設定など

一応示しておきたい情報
以下はあくまで筆者の所有するギターに合わせた設定で、とくに、DRIVEはピックアップやDIの出力に、TONEはギターの鳴りやピックアップのキャラに合わせて、それぞれ調整の必要がある。

ツマミは3つで、歪み方を調整するDRIVE、音色を変えるTONE、音量を決めるLEVELである。DRIVEを最小にしても微かには歪む。TONEは最小(LO)だと500Hzくらいから上が緩やかに落ち12KHzで-18dbくらい、最大(HI)だと2KHzくらいを中心に9dbくらい持ち上げた格好、12時だと1KHzくらいまでごく微妙に持ち上がってから高域が穏やかに(-5db/octくらいで)落ちる。LEVELはゼロにするとほぼ無音になる(実用範囲は8時~全開くらい)。中音域への作用が強いだけあって、シングルコイルとダブルコイル(ハムバッカー)でやや使い勝手が異なる。

ダブルコイルのピックアップの場合、フロント(ネック側)ピックアップなら、DRIVE12時、TONE3時、LEVEL9時くらい、リア(ブリッジ側)ピックアップならDRIVE9時、TONE9時、LEVEL12時くらいで、本来のウリである「小さな変化ながら目立つトーン」が得られる。もうちょっと地味にやるなら、フロントピックアップでは、DRIVE8時、TONE1時半、LEVEL10時くらい、リアピックアップではDRIVE最小、TONE8時、LEVEL12時くらいで、音色だけが微妙に変わる。シングルコイルの場合、TONEもDRIVEも上げめの方が合うようで、DRIVE9~12時のTONE12~3時くらいの間でバランスを取るのがよさそう。こちらはやや積極的に音色を変える使い方になるだろう。以下ダブルコイルを前提に話を進める。

後段のアンプシミュレータと組み合わせてクランチトーンが欲しい場合、まず想定する最小入力を流しながらDRIVEツマミで「歪みの最小量」を決め、LEVELツマミとアンプのゲインで後段アンプでの「本格的な歪み始めレベル」を調整し、最後にTONEで音色(後ろに送る低域の量で潰れ方が変わる)を調整するのがラクだと思う。手元の機材では、PANDORA miniのAC15に突っ込むといい感じになった(そのときの設定例(セッティング追記3)も参考までに:本家のMINI3も試したが筆者にはPANDORA miniの方がしっくりくる)。

アンプシミュレータの後ろに置いてクリーントーンにクセをつける使い方も筆者は好き。とくにクリーンアンプ>TO800>コーラスというパターンはクセになる。TONEを9時くらいに固定してDRIVEを最小~最大まで回すと、ほんのり系~クッキリ系~効きっぱなしクランチと変化する。クセの強い音色も作れるが、クリーントーンっぽさを残すならTONE10時のDRIVE12時くらいまでを上限にするのが無難。ギリギリまで太らせたトーンより、ある程度余裕を残したトーンの方が扱いやすい(GDI21ならツイードクリーンのゲイン12時くらい:筆者はローも10時くらいまで絞る)。ギリギリまで太らせたクリーントーンでは普段と反対に、クランチ(後段に置くならTONE3時~右いっぱいのDRIVE9~12時くらい、LEVELは絞っておく)を作っておいて単音弾きだけバイパスするアイディアもある。



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