筆者の手元の機材を組み合わせたトーン。出音については音声サンプルのページを参照。ダブルコイルのギターを本体コントロールフルテンで指弾きする前提。サンプル音声はミキサーでハイパスをかけている(デジタルでスパイクノイズ(というか演奏ミスで大きく入りすぎた波形)のトリミングやニコイチもしているが、音色自体はほとんど変わっていないはず)。
一応示しておきたい情報:
以下はあくまで筆者の所有するギターに合わせた設定で、とくに、ゲインレベルはピックアップの出力に、EQなどはギターの鳴りやピックアップのキャラに合わせて、それぞれ調整の必要がある。
少ないイフェクタでシンプルに作った音。ギターの鳴りやピッキングのニュアンスが素直に出るし、後段での加工も楽しい。
多数のイフェクタを組み合わせてトーンを作り、少ない調整でいろいろな音が出るようにしたもの。各イフェクタは基本的に、ユニティゲイン(バイパス時と同音量)かちょっとブーストくらいの出力で試し、気に入ったものが見つかってから受け渡し音量を見直す(バイパスするときの都合があるので)。ブースターは音色があまり変わらないものをお好みで(筆者はパソコンに接続しないUS-100を使っている)。
基本的には小変更での使い回し。コーラスだけオフにしても使えるはず。
筆者が普段使っている設定。すぐ音が出せるよう利便性と操作性を重視。
GDI21はLEVEL9時のそれ以外12時で3段スイッチはすべて下段(ツイードのクリーンをクラシカルマイキングでグランドリフトなし)が基本位置。TO800はDRIVEとTONEが両方8時でLEVELが12時。G1Nはバイパス。PANDORA miniはキャビネットとクランチ用アンプを集めた場所に移動しておく。
操作するのは基本的に、GDI21のモード切替とバイパス、TO800のバイパス、PANDORA miniのキャビネット変更で、GDI21の各ツマミ(ツイードをホットモードで使うときなど)、TO800の各ツマミ(音色を少し変えたいときなど)、G1N(歪みアップと変調系)もたまにイジる。キャビネットの詳細設定はPANDORA miniのページを参照。
クリーン音色は、ツイードクリーン(前)とローカットしたツイードホット(後)がメインで、前者の方がよく使う。クランチ音色は、GDI21バイパス(前)とツイードクリーン(後)がメインで後者の方がよく使う。ドライブ音色はTO800バイパス(前)と有効(後)くらいしか使い分けていない(気分次第)。
安定した音色を作る部分と変化を出す部分、変化に追従して調整する部分に分けた構成。
GDI21のクリーン系トーンをG1Nのツインに突っ込むと音色が安定することを利用したもの。間に挟んだイフェクタもいい感じに働いてくれることが多く、短い時間で手軽にいろいろなトーンを試せる。
以下GDI21のアンプモデル別に紹介する。
アイディアとしては、初段のGDI21がアンプシミュレータ、後段のG1NとPANDORA miniがキャビネットシミュレータのつもりなので、実機アンプのセンドリターンにTO800を噛ましてやると似たようなコントロールが可能になるかもしれない。TO800をPO300に入れ替えたパターンも試してみたが、PO300から出る使いにくい成分が都合よく落ち、パリっとした雰囲気だけ残せていい感じだった。
気に入ったトーンがみつかったら、入出力のレベルやゲートの設定などを見直してノイズを抑え、各イフェクタのツマミやミキサーのEQなどで質感を微調整する。
TO800が、大入力小ドライブできめ細かい潰れ方に、小入力大ドライブでわずかに荒い潰れ方になることを利用したもの。入力とドライブ量と後段での歪みで、短い時間で手軽にいろいろなトーンを試せる。TO800のドライブはヘッドルーム(というか最大振幅)の制御に強く関わり、小さくするとG1Nでの歪み方の幅が広くなるので高めのレベルで入れてG1Nのゲインを下げるとよく、大きくするとG1Nでの歪み方の幅が狭くなるので低めのレベルで入れてG1Nのゲインを上げるとよい。
歪みの最大量を増やす場合、GDI21のレベルを9時から10時くらい、TO800のドライブを9時から11時くらいにして、高めのレベルで高めのゲインのG1Nに入れ、2X10BLKや1X12TWDなどに出すとバランスを取りやすい。実はドライブ設定のツイード版からゲインを落としただけなので、ツマミをひねるだけでドライブトーンも簡単に出せる。もちろん、すでに触れたように、ツイード以外のトーンでもゲインを落とせばクランチトーンは作れる。また上の基本設定から、G1Nをマーシャルクランチのゲイン最大に、キャビネットを2X12BLKに変更しても面白い音色。
プリアンプでわずかな歪みを作り、チューブスクリーマー(オーバードライブ)で軽く削り、アンプで音を作るパターンに特化したもの。
最近(2012年12月現在)のお気に入りはこの2つ。
結局好みの問題でしかないのだが、筆者としては、そこそこコストパフォーマンスのよい構成になったのではないかと思っている。
まず価格的にはそんなに高くならない。2012年2月現在の実売だと、GDI21+TO800+G1N+PANDORA miniで2万円まではかからないだろう。Pocket PODあたりと比べると出費は多いが、運用の柔軟さを考えればオツリがくると思う。労力的には、最初にセッティングを決めてしまうまではやはりけっこうな手間になる。マルチを複数台使ってしかも音色のバリエーションを追求するのだから、ここは避けようがない。反面、運用の手間はあまりかからず操作性もよい。場所はけっこう取る。PANDORA miniは小さいが、GDI21とG1Nは普通のペダルイフェクタよりは大きい。ネックになるとしたらここで、スタック可能な台を用意して縦積みするのも一案だと思う。出先での使用まで考えるとさらに苦しく、全部の機材をアダプタとケーブル込みで持ち歩くのはかなりホネだろう。
2012年12月追記:ZOOMのG3がVersion2.0にファームウェアアップデート(公式サイトによると6月29日公開らしい)して11000円@サウンドハウスになっている。MS-50Gも2013年にVersion2.0と2.01のアップデートが出て2014年6月現在の実売が7000円ちょっと、カタログ上の上位機種MS-70CDRはポストドライブイフェクタとして面白そうなデザイン。いやーこれは参った。豊富なキャビネットシミュレータを単独使用できるPX5Dや、操作が頻繁なチューブスクリーマーを単体ハードで用意することの優位性はかろうじて保っているものの、スマートさでは完全に上を行かれた。アイディアで先行したLine6のSTOMPBOX MODELERシリーズ(M13が08年、M9が09年、M5が11年らしく、G3は11年:ベリさんが遅くとも2004年にはFX600を売り始めているがシングルプロセスだし、ソッチに対抗したわけではあるまい)への見事な回答だと思う。ムリヤリ難癖をつけるとしたら、44.1kHzのサンプリング周波数だけは、もう捨てた方がよいと思う(48kでやりましょうよ、ね)。重いイフェクタを多数は使えないらしいから、処理の重いアンプシミュレーションを別のマルチに任せるのはいい考えだと思う(アンプモデルやリバーブやコーラスがもったいないと思うなら後ろでもいいけど、そうするとペダルモデルがもったいないので悩みどころ)。キャビネットシミュレータが独立でないのは、バージョン1との互換性の問題もあるし仕方ないか。架空のクリスタルクリーンアンプ(EQだけ有効になる)を用意するVox(KORG)のやり方もワークアラウンドとしては賢いと思う。
これを機に、ペダルシミュレータ>アンプシミュレータ形式のマルチ-マルチ構成が普及すると面白いことになりそう(ハードが分かれていれば、実機アンプを使うときや少ない荷物で手軽に練習したいときに後ろのマルチを置いて行けるし、リアルチューブイフェクトなど取り回しが悪くなる機能も盛り込みやすいし、ついでにペダル2本技もできる:2台同時操作は・・・後ろのマルチをアンプに専念させるならいらない気もするが、テンポの共有はできたら便利かもしれない)。欲を言うなら、外部ペダル用のセンドリターン端子(だってあるでしょ、どうしても使いたいペダル:上位機種のG9.2ttにはついてるし、POD HD ProとかGSP1101とか最近のラックマルチにもついてるけど、ローエンドフロアだとコスト的に厳しいのかな)と、USBメモリか何かへの録音機能(単にメモリ上のデータをファイルに落とすだけのダムなやつ:せっかくルーパーまではすでに付いてるわけだし)、またはパソコンからの返りを入力にリダイレクトする機能(外部イフェクタとして使いやすくなるし、クリスタルクリーンをパソコンに保存しておいてリアンプするのもラク:デジタル入出力でもいいけど、パソコン前提の方がコストパフォーマンスやウケはよさそうな気がする)をつけた上位機種が出てくればもっと嬉しい。Axe-FXの安い版はアメリカメーカーに先越されちゃってるんだし、オールインワンで囲い込むより外部との柔軟な連携ですよ、デジタルイフェクタもMTRも作れるメーカーのみなさん(聞いてないか)。