ドラムス


最初に / 知っておくべきこと / 区切れ感 / アクセント
/ スネア / バスドラ / 刻み / 刻みの調整 / パターンから入る
/ 変化をつける // メロディに戻る / コード後付けに進む / もどる
<<あまり手軽な方法にならなかった>>

ドラムパターンを自前で作るときの注意点。ドラムセット(またはそれを模したデジタル音源)の利用が前提。クラシックパーカッション、ラテンパーカッション、和楽器などには触れない。サンプルファイルは一般的な音楽用のモニタ環境を前提に作成してあるため、ヘッドフォンなどを使って十分な音量で再生して欲しい。

2010年1月追記:9/3にリリースされたDominoバージョン1.37から「選択範囲の絞り込み」機能に「Tickの値」という設定項目が増えたため、ベロシティずらしのワークアラウンドがあまり重要でなくなった(小節をまたいでパターンを作る場合などには有効)。


最初に

メロディとハーモニー(コード)に関する紹介はすでに書いたので、リズム(ドラムス)の紹介もしておかないと格好がつかないのだが、初心者があまり手間をかけずにドラムパターンを自前で作るのは、ぶっちゃけムリなんじゃないかと思えてならない。

ゼロから自前で作るより、たとえばローコスト制作のファイル配布ページで筆者が配布しているものなど、ライセンスがクリアなものを探してきてそのまま流用するか、気に入らないところだけ手を入れる形の方がずっとラクだと思う。

無料で網羅的なパッケージとしてFive Pin Pressが配布しているInstant Drum Patternsがある(2010年8月現在、圧縮ファイルにはライセンスに言及したファイルが見当たらないが、配布ページで「To create the actual rhythm track you copy and paste in the measure view of your sequencer.」「You can use our patterns as a basic guide and modify the patterns for even more variety.」と説明されている)。ファイルにクセがあるらしくバージョン1.38のDominoではうまく読み込めないので、いったんcherryに読み込んでから標準MIDIファイル(.smf)を書き出そう。

それでも自前でドラムスを打ち込みたい人のために無難そうな手順を紹介するが「コード進行とメロディはすでにできている」ことを前提にするので注意して欲しい。ハーモニーやメロディを考えるときにもリズム伴奏は大切だが、それは上記のような流用ファイルやunknownのようなドラムマシンソフト、またはもっと簡単にMetronome for Windowsのような多機能メトロノームあたりでまかなえばいい。

以下の説明ではこのコード回しとメロディ(他のページに掲載したサンプルをニコイチしただけなので準備が非常にラクだった)を使って話を進める。最初と最後にカウントが入っているが、曲がイキナリ始まるとリズム感を掴むまで聴きにくいので、適当な音色で何か入れておいた方がよい(後で消してもいいし、そのまま残してもOK)。


知っておくべきこと

ドラムスの音は他の楽器と混ぜると音量感が(とくに大きく)変わる。たとえば急がば回れのドラムス(番外編)で使ったこのサンプルでは、ハイハットが常に同じ音量で音を出しているのだが、ほとんどの人にはそのように聴こえないはずである。

テンポやリズムを変えると曲の雰囲気への影響力が大きい。急がば回れの編曲知識補充編で使ったサンプルを再掲しておこう。

どんなリズムにするとどういう雰囲気になるか知るには、頭で悩むより実際に音を出してみた方がずっと早い。

ドラムスは他の楽器との連携が重要。上記のサンプルにもドラムス以外の楽器が積極的にリズムを作っている例があるが、ベースやコード楽器との連携も重要である(とくにベース)。さて実際に作業してみよう。


区切れ感

まず検討するのは小節の区切れ感で、バスドラムを使うことが多い(後から他のタイコに変更しても構わないので、とりあえずバスドラでやってみよう)。

Dominoにファイルを読んでドラムスのトラックを表示したら、小節の頭にバスドラムを打ち込んでいく。

面倒なら小節単位でコピーしてもOK(1小節をコピーして2小節に、2小節をコピーして4小節に・・・と増やしていけば、100小節や200小節はあっという間に埋まる)。

最後までバスドラを打ち込んだら楽器名のところをクリックして選択、

一括変更でベロシティ(強さ)をいろいろ変えて再生してみる。

たとえば、

こんな風にして比較する。最初にも書いたが、ベースがピック弾きか指弾きか、コード伴奏の楽器がピアノかギターか、などによっても区切れ感が変わるので、他の方針が固まっていない段階では大雑把にやる。今回はこのファイルの演奏を選んだ(ピアノやベースがガッツリ区切りを演出しているので、ドラムスまでムキになる必要を感じなかった)。


アクセント

アクセントも決めよう。1小節に1回スネアドラムを入れる(やはり、後から他のタイコに変更しても構わないので、とりあえずスネアでやってみよう)。ベロシティはバスドラと同じで構わない。コピペをする場合は画面を横にやや縮小して、

小節の頭から範囲選択したうえで

トラックリストを見ながら貼り付けてやると早い。

位置を色々変更するのだが、まとめて選択してから

一括変更でTickの値をイジってやると早い。

デフォルト設定だと、480で1拍分、240で半拍分動くので覚えておこう。

数字でイジるのが苦手な人はダミートラックを用意。適当な空きトラック(ドラムスのすぐ上か下がわかりやすいと思う)のプロパティを開いて表示をドラムに変えておくと(音は変わらないが)ドラムスの音符が見やすくなる。

ドラムスのトラックに戻りスネアの音符をまとめて選択してから切り取って、

さっき作ったダミートラックの先頭に貼り付け、

ダミートラックを表示して

範囲選択してから時間削除や時間挿入を選び、ずらした音符をまたまとめて選択、切り取って元のドラムストラックに貼り付けるか、単純に音符だけ切り取ってずらして貼り付ける(上図ではやっていないが、オニオンスキンも設定しておくと見やすいかもしれない)。

どちらの方法でやってもいいが、たとえば、

こんな風に比較する。ここでは2拍めのアクセントを選ぶことにした。バスドラのときと同じようにベロシティの調整もやり、結局こんな感じになった。

ついでだが、ある拍と次の拍の間のことを「ウラ」、拍ちょうどのことを「オモテ」と呼ぶことがあるので一応覚えておこう。


スネア

これはやりたい場合だけやればよい。スネアをもう1発増やして、たとえばこんな感じこんな感じにする。

ダミートラックを作り、スネアだけコピーしてから位置をズラして貼り付けるとラクだが、貼り付ける前に(一括変更で)ベロシティをちょっとだけ変えておくと、後で「選択範囲の絞込み」が使えて便利である(コード進行のページでも似たような技を紹介した)。上記のファイルでは元からあったスネアがベロシティ80、コピーしたスネアがベロシティ79になっている。

なお、1小節にスネアを3発も4発も打っていけないわけではないので、あまり機会はないだろうが、意図的にやりたい場合はもっと増やして構わない。さらにレアケースだが「アクセントがないパート」というのもなくはないので、もし必要なければスネアの数をゼロにしても問題ない。


バスドラ

これはやりたくない場合はやらなくてよい。筆者はスネアを増減しなかったのでこのファイルに戻って話を進める。

とくに面白い変化が起こるのはアクセントの直前直後にバスドラを追加した場合で、直前だとこんな感じ、直後だとこんな感じになる(これ以外の場所に追加してももちろん構わない)。

また、小節の頭のバスドラは動かしてもよく、たとえばこんな風にすることができる。これでは寂しいと思うなら、移動ではなく追加にしてこんな風にしてもOK。サンプルファイルで4小節に1回頭をちゃんと打っている部分は手作業で直した。ダミートラックを使うのが面倒だったので、もう1つのバスドラの音を使っている。

ちゃんと使い分けたければ後から切り貼りで動かせばよい。

追加場所や移動先やベロシティをいろいろ検討して、結局こんな感じになった。4小節ワンセットで音をいろいろ変化させているが、このくらいになったらトラックリスト画面を使って、

小節単位で切り貼りした方がラクだと思う。

まだまだ音は増えるので、とりあえずアクセントの聴こえ方と小節の頭だけに集中して作業しよう。


刻み

まず、曲の拍子の数だけハイハットクローズ(別にライドで刻んでもダメではないのだがとりあえず)を打ち込んでみよう。4拍子なら1小節に4回、3拍子なら1小節に3回鳴らす(ポピュラーミュージックの場合4拍子が圧倒的に多い)。

刻む強さは好みでよいが、筆者は「意識すれば明確に聴き取れるくらい」を目安にして「意識しなくても明確に耳に入ってくる」ほどは大きく入れないことが多い(シンバルがシャカシャカ鳴っていた方が楽しい曲もあるので、最終的には耳で判断)。またシンバル類は音量によって聴こえ方がまったく変わってしまうが、以下ではある程度大きな音量での再生を前提に作業する。

数が多くて面倒なので、スネアのときと同じように、

小節の頭からハットだけ選択しては次の小節の頭にコピーしてやる。ベロシティは後からイジるので適当でよい。

たいていの場合これだけだとスピード感が出ないはずなので、ダミートラックに一度コピーしてベロシティを微妙に変えてから、半拍ずれた位置にもハットを入れてやろう。

これでも足りなければ4分の1拍ずらしでさらに増やしてやる。

たとえば、

こんな風に比較する(手数が増減すると音量感も変わるので、大雑把にでも調整しておく)。このとき「微妙にうるさいor忙しいかな」と思うくらいのを選んでも問題ない。

なぜかというと、コピーした方の音符だけベロシティを下げてやるとけっこう大人しくなるから。たとえばこんな感じの演奏がこんな感じに変わる。ベロシティの下げ方はフィーリングで構わないが、半分~4分の3くらいが普通だろうか(ほとんど聴こえないくらい弱くするとゴーストノートと呼ばれるが、名前はムリに覚えなくていい)。反対の発想で元の音符だけベロシティを下げることも可能でこんな風になる(シンコペーションと呼ばれるが、やはり名前はムリに覚えなくてもOK)。

今回はとりあえずこれを採用。なお、エレドラムの場合刻みは必須でなく、省かれたり刻み全体がゴーストになることもある。


刻みの調整

先に言っておくが刻みの調整はメンドクサイ(なにしろ数が多いので)。が、調整しないとマトモなドラムス演奏にはならないので渋々やる。

これは刻みを打ち込んだ後の画面だが、

ハイハットが単品で鳴っている個所が目立って聴こえるはず。なのでここのベロシティをちょっと下げてやる。また、スネアと同時に鳴らすところは目立たなくなりすぎるのでベロシティを上げてやる。タイコ以外にピアノやギターの音との被りも問題になるので覚えておこう(スネアも、アコギあたりにはけっこう消される)。音の重なりはミキサーの技術次第でかなり緩和できるので、この時点ではムキになり過ぎない程度に。

調整できたら、小節頭からの選択やトラックリストでの選択や選択範囲の絞り込みなどを活用して、できるだけ少ない手間でハットのパートをコピーしよう。

筆者が手元で作業したところこんな感じになった。


パターンから入る

上記ではゼロからの組み立てをやってみたが、作業に入る前に大まかなパターンがイメージできていることもあるし、共同制作で他のメンバーから注文をもらうこともあるだろうから、パターンから入るスタイルについても少し紹介しておく。

たとえば、ギタリストから「どんすとぱっぱん」みたいな感じで、という大変わかりやすい注文をもらったとしよう(ネタではなく、「ドン」とか「パン」とか言ってもらった方が結局わかりやすい)。多分こんな感じになったはず(明らかにスネアorバスドラっぽい表現以外はとりあえずハットだとみなしてしまうと話が早い)。

曲想との兼ね合いもあるが、上記のままだと「遅ぇ」と突っ返されそうな予感がするのでテンポを上げてみるが、どうやら200BPM以上の極端なハイテンポになりそうである。そういう場合はドラムパターン全体を選択して

一括変更でステップ(次の音符までの距離)を半分にしてやろう。

これで手数が2倍になった(こんな感じ)。

バスドラとスネアはもう入っているのでハットを入れよう。基本的にタイコ(バスドラかスネア)が鳴る個所にはハットも(強弱は別にして、音符としては)入れておくが、それ以外の場所に入れても構わない(というかたいてい少しは入れる)。こんな感じだろうか。ベロシティは前の項でやった同時打ちの兼ね合いを思い出しながら調整しよう。

ぶっちゃけこれだとウルサイので、こんな感じに手を入れたくなるが、たいてい「余計なことすんな」と怒られるので、さっきのファイルも忘れずに同時提出しよう。


変化をつける

まあこれはお好みで。たとえば、このサンプル

こんな風に比較する。

これを全体にちりばめてやると、たとえばこんな感じになる(あえて全部盛りにしただけで、こんなに不自然な混ぜ方は普通しない)。刻みの強弱はとくに重要で、場合によっては空振り(普通に音符を消してもよいが、Dominoならベロシティをゼロにしてもよい)も有効。注意点としては、とにかく「不要な音を出すな」ということに尽きる。

バスドラとスネアを入れ替えてみるのも有効で、たとえば、このサンプルならこんな感じの変化が考えられる。筆者の好みでもう少し手を入れるとこんな感じだろうか(こういう演奏/打ち込みをやると条件反射的に「バスドラムを減らして低音をシェイプアップしないと」と言い出す人がいるが、あくまでその音が必要かどうかで判断したい:演奏の幅を広げるためにも、バスドラ以外のタイコやシンバル、ベースやその他のリズム楽器でなんとかならないか、とは考えてみた方がいい)。ハイハットはオープンで叩くと目立つ音になる(というか、ミュートしていないわけだから、当然音がデカくなる)のでベロシティを調整しておこう。

なお、ペダル操作で出す音(=ハットペダルとバスドラ)を例外に、シンバル同士やタイコ同士を同時に鳴らすのはとくにその音が欲しいときに限定しておく。たとえばライドシンバルとクラッシュシンバルを同時に叩くとか、スネアとタムを同時に叩くといった鳴らし方は特別な意図がない限り避け、どちらか片方にしておく。タイコとシンバルは任意の組み合わせで同時に鳴らしてOK(というか、すでに紹介したように、タイコを鳴らすときはたいていシンバルも鳴らす:タムは右手で叩くことが多いためちょっと事情が違い、左手でシンバルを叩いたり、シンバルなしにしたり、ペダルでハットを鳴らしたりする)。

ライドシンバルで刻みながらハットペダルを踏むとか、スネアやタムを回しながらバスドラを踏むのは気にせずやってOK。バスドラとスネアの同時打ち(片方省けないかどうか試してから使った方がいいかも:バスドラ>スネアのフラム(ずらし打ち)にする手もある)は繰り返し感やユニゾン感を強調したいとき、それ以外は音色を変えたいときに使うことが多い。たとえばこんな感じ(ファイルではGM規格の制限から普通のハイハットオープンで代用しているが、音源が対応しているならペダルスプラッシュやペダルスライドの音を使った方が生ドラムっぽくなる)。

とまあこんな感じなのだが、ドラムスの場合ダイナミクス(強弱)をコントロールしなければならない都合でどうしても手間がかかる。うまい方法ないもんかなぁ。



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