このページで紹介する手順は「どうしてもコードが当てられないときに、とりあえずで試してみる方法」なので、普通にコードが当てられる人は読む必要がない。また曲全体のコードをこの方法だけで決める必要もまったくない。
メロディにコードをつける場合、ギターのような単体でコード伴奏ができる楽器があると圧倒的に早い(鍵盤楽器でもよいが、まったくの初心者がなんとか音を出せるようになるまでの道のりは、ギターよりかなり遠いと思う)。
しかし「ギター買って練習してね」「ハイそうですか」と実行できる人ばかりではないだろうし、あえて楽器を使わずにパソコンだけでやってしまう方法を紹介したい。楽器を使った作業にも応用できる部分があるかもしれない。
ということで春が来た(作詞=高野辰之、作曲=岡野貞一)のメロディとDominoの機能を使って実際にやってみる。ソフトの使い方自体がわからない人は、一足飛びの目次に戻って「簡易な手順」のコーナーを頭から読んでみよう。操作がわかる人もメロディのページの内容は一通り試しておいた方がよい。
すでに触れたとおり、メロディはすでに(最初から最後まで)できており、ベタ打ちのMIDIファイルが手元にある前提で話を進める。Dominoで打ち込む場合、2小節目は無音にしておこう(後でカウントを入れるため)。オニオンスキンも適宜活用のこと。
まずテンポをゆっくりに設定する。
数字にこだわらず自分の感覚でよい。遅いのが嫌いなら速いままでも問題はない。
メロディの音色を変える。
コード進行のページですでに触れたが、クセのない音色の方が作業がラクである。
メロディの高さを、だいたいC4~G5くらいの範囲が中心になるように変える。
一括変更を使ってもよいしトランスポーズを使ってもOK。極端に高すぎる音や低すぎる音がなければ、テキトーな高さでよい。今回はたまたま変える必要がなかった。
ドラムスを補助的に打ち込む。
2小節目にカウントを入れ、コード楽器を鳴らす予定のタイミングでバスドラムを弱めに入れておく。この予定は後から変更してもかまわない。
コード伴奏の音色と音量を変える。
音色はメロディトラックと同じく好みだが、やはりクセのない音色の方が作業がラクである。音量は過剰に大きくしない方がよい(メロディトラックの4~8割くらいだろうか)。筆者はチャンネルボリューム(上図では「Part Level」になっているが、細かい表記は気にしないで欲しい)とベロシティ(後で設定)の両方で音量を下げることが多いが、片方だけで調整してもよい。
と、このくらいで準備終了。いちおうファイルを掲載しておくと、こんな感じになっているはず。
前の項までで作ったファイルを聴きながらメロディの「強さ」を意識して、ファイルにも反映させる。ベロシティの変化幅は、曲調や音色によってテキトーに決める。
今回のサンプルは童謡系なので小節の頭に強い音が集中しているが、実際の制作では自分が思ったように変化をつけてよい(ただし必ず聴き返して響きを確認すること)。弱中強の3段階くらいでよいと思う。
作業が終わったら、コード伴奏トラックのプロパティを開いて「Key補正」を「-12」にする(なにをやっているかわかる人は、この設定を省いてもよい)。
ついでに、オニオンスキンでメロディ(とドラムス)のトラックが見えるようにしておこう。
ベロシティの差が見えにくいかもしれないが、音を出せばわかるのであまり気にしない方向で。
やっとコードを入力する。ツール>コード入力支援>コード一覧と選ぼう。
使うのは基本コードのうちメジャーとマイナーだけである。
普通に使い分けてもよいのだが、メジャーで打ち込んで真ん中の音を半音下げるとマイナーに、マイナーで打ち込んで真ん中の音を半音下げるとメジャーに変えられるので、覚えておくと効率が上がるだろう。
さて、オニオンスキンでメロディの高さを確認しながら、それぞれの区間(コードが鳴ってから次のコードが鳴るまで)でメロディの「中心になる音」と同じ高さにコードを置いていこう。メジャーとマイナーは実際に音を出して耳で選ぶ。
必ずそうだとは言えないが、中心になる音は「強く長い音」であることが多いはずである。1つの区間に重要な音が複数ある場合、どちらか片方に合わせてとりあえず打ち込んでしまう(まだ仮なので勘で決めてよい)。この時点で重要なのは、中心になる音を意識して打ち込むことと、メジャーとマイナーの使い分けだけである。
ここまで進めても、まだこんな感じで「ちゃんとした伴奏」っぽくはないかもしれない。つぎの項でちょっと手を入れてみよう。
前の項までで作ったファイルを聴きながら、コードに手を入れていく。
まず試したいのは「5度移動」である。5度がなんの意味かわからなくても大丈夫なので、響きが気に入らないコードを丸ごと「半音7つ下」(または「半音5つ上」)に動かしてみよう(結局メロディのページでやった「5度中心のメロディ」を反対側から作るだけ)。
一括変更でも範囲選択+ドラッグ(コードの一番上の音をメロディの中心の音と同じ高さに持っていくことになる)でもトランスポーズでも、好きな方法で動かしてよい。まだ気に入らない部分があるときは、メジャーとマイナーを入れ替えてからコードの真ん中の音をメロディの中心の音と同じ高さに持っていってみよう。
それでもまだ気に入らない響きが残る場合、まずメロディの中心とみなす音を変えてみる。ダメなようなら、コードチェンジのタイミングを変えたり増やしたりしてみよう。たとえばこんな感じの部分を
こうしたり
こうしたり
といった具合である。このとき、目印のバスドラムも一緒に動かしておいた方がよいだろう。別の方法として、コード進行のページでやったように、コードの種類を変える手もある(同じ説明になるので繰り返さない)。この辺まで作業が進むと、いくら簡易手順とはいっても一本道ではなくなってくるので、耳で音を確認しながら取捨選択しよう。
仕上げとして、やはりコード進行のページでやったように、ベースをつけたり高さを調節したり、場合によってはコードを変化させたりすると、だいたいなんとなく伴奏っぽい雰囲気になるのではないかと思う。たとえばこんな感じ、ドラムスもイジってテンポを調整するとこんな感じになる。
もちろんこの伴奏は、筆者が考え付く限りもっとも簡易な手順で作ったもので、一般に「春が来た」の伴奏として流通しているものとは細部が異なる。が、とりあえずこのくらいの作業でメロディを破綻させない伴奏を作ることができる。
初心者向けの解説で「まずキー(調)の判断から」といった説明をよく見かけるが、筆者の意見としては、上記のサンプルくらいの伴奏ができてから検討した方が材料が増えラクなように思える。詳しい話は急がば回れの作曲基礎完成編や編曲基礎編に譲るが、この時点で「コードをまだ当てていない部分」が少しくらい残っていても、大した問題ではない。
実は、ここまでに紹介した手法には「メインメロディが休んでいるパートにコードをつけられない」という欠点がある。とりあえずの解決方法として、直前のパートと同じコードをもう一度鳴らすか、近くのパートに出てくるコードを適当に選んで入れてみるという案がある。メインメロディが休んでいるパートというのは伴奏楽器にとって見せ場になることが多く、ここで及び腰になるのはちょっともったいないのだが、手が回らない人はもうちょっと作業に慣れてからじっくり検討すればよい。
今回作ったサンプルはかなりシンプルな構成のままだが、コード伴奏を複雑にする手法は豊富にあるので、後からいくらでも手を入れられる。まずはコードをつける作業自体にある程度慣れてしまおう(やっているうちに、自然と手や耳や頭が「ついてくる」ようになるはず)。
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