曲作り


最初にぶっちゃけた話 / ソフトと機材の準備
/ ギターが手元にある人 / 打ち込みの活用 / 注意点と問題解決
全体の検討 // 録音と加工に進む / もどる
<サンプルのMIDIファイル(SMFフォーマット1)が再生できない方はQuickTime Playerを使用してみてください>

基本方針として

という手順でやる。

異論もいろいろあるだろうが、筆者が思うに「メロディもコードも思い浮かばない」状態でメロディから手をつけるよりは、とりあえずでテキトーに並べても構わないコードをやっつけた方が早いだろう。反対に「すでにできているメロディ」というのは貴重なので、どうにかして活かす方向で考えた方が多分早い。

またメロディにしてもコード(ハーモニー)にしてもリズムにしても、固定して考えるのではなく、どれも一度はイジってみるつもりでやると効率がいい。後で見直すというよりは、最初は仮組みだけでいいと認識した方が近いだろう。とくにコードとリズムは、メロディがあってそれに合わせるのとメロディがない状態でただ並べるのとでは相当違う(ので、メロディが一通り仮組みできたら1度は手を入れるべきだし、メロディが乗っていない段階で細かいことを考える必要はあまりない)。


最初にぶっちゃけた話

他のページで何度も断っているが、作曲は人によって得手不得手が激しい。世の中に泳げない人や自転車に乗れない人が一定数いるのと同様、どう頑張ってもメロディを作れない人が少数ながらいる。これはしゃあないので、もし合わないようなら諦めよう。ただ、最初は誰がやっても上手くいかない(例外はあるだろうが、一発でスパっと上手くやれる天才にはこんな記事を読む必要がそもそもない)ので、自分のセンスにどこで見切りをつけるかは自己判断で。

音楽経験がまったくゼロでこれから曲を作ってみようと思っているなら、ギターを買ってきた方がいい。激安品なら新品で1万円も出さずに「初心者セット」みたいなものが手に入るので、ぜひ用意して欲しい(3日坊主になったら粗大ゴミが増えちゃうけどね)。向き不向きがあることは否定しないが、多くの場合、打ち込みだけで曲作りを練習するのと比べてかなり効率がよくなる。

楽器の選択について「マトモな楽器を使わないと上達に差し支える」という指摘は正しいが、それは「上達して上手く弾けるようになる」のが目的の場合で、とりあえず曲が作りたいのなら気にしなくてよい(曲を作るときだけギターを使って、後から打ち込みに差し替えればいいだけ:筆者もよくやるパターン)。

キーボードなら物置にある、という人もいるだろうが、鍵盤はマトモに音を出せるまでの道のりが遠い。しかも、ヴォイシングやらなにやら気を使わないと変な伴奏になるので、初心者にはオススメできない。もちろん、素人だが鍵盤(に限らずコード伴奏ができるギター以外の楽器)が好きで弾きたいという人はギターにこだわらなくてOK。すでに鍵盤を「弾ける」レベルの人は、できればこのページではなく急がば回れのコーナーを読んで欲しい。


ソフトと機材の準備

たかぼーさん作のDominoというシーケンサ(打ち込みソフト)が非常に便利なので、まずはこれをインストール。よくわからない人は初心者になるための耳コピMIDI講座というサイトの解説を読みつつ自力で頑張ろう。設定や操作はDominoの設定と操作のページに書いた。

音源はWindowsPCにRoland製のものが最初から入っているので必要ない。シンセに手を出すのは止めないが、とりあえず普通にメロディを作ってコード伴奏できるようになってから考えてもまったく遅くないと思う。

インストールできたらDominoをいったん終了、DominoをインストールしたフォルダからIniFiles>ユーザー名>MouseTool(斜体の部分は自分のユーザー名)と辿って、中にある「PianoRollPen.ini」を「PianoRollPen.ini.bak」に名前変更、筆者が作った設定ファイル(2009年12月4日に大幅バージョンアップしたので、ファイルが古い人は入れ替えよう)をダウンロードして代わりに入れる。

次に音声を記録できるものをなにか用意する。テープレコーダーでも24トラックのデジタルMTRでも携帯電話のボイスメモでもなんでもいいが、最低でも3分くらいは録音時間があるものを選ぶ。パソコン上で録音する人はぽけっとれこーだーHDRecorderを使うと便利(パソコンの設定は真似するだけでできる録音のページなどを参照)。

準備はこれでおしまい。


ギターが手元にある人

まずはコードを覚える。メジャーキー(明るい感じ)の曲では、GとDかD7とCをメインにEmとAmも、マイナーキー(暗い感じ)の曲では、Em、B7、AmをメインにGとCも使う(AmとDmとEmとE7をまず覚えるのが典型的な入門コースなのだが、筆者のオススメは上記)。難しいコードは含まれていないが、厳しいようなら作りたい曲調で使うメインの3つだけ先に覚えよう(オマケの2つはなくてもなんとかなる)。ぢりのフォークでシャッフル!というサイトのChord Diagramを参考にしよう。

メロディができている場合はまず音の高さを合わせる。ギターで、明るい感じの曲ならG>C>D>G>休み、暗い感じの曲ならEm>Am>B7>Em>休み、と音を出してから、それに合う高さで、メロディを鼻歌かなにか(これも録音しておく)で出してみよう(ギターは最初だけ弾けば休んでいい)。たとえばこんな感じでやる(使い回しなのでピアノ伴奏のままだが大目に見て欲しい)。もし「高すぎor低すぎて声が出ない」という状況になったらカポタストを使う(「カポなんざダサくてやってられん」という人は気合で声を出す:筆者はアコギならカポがダサいとは思わないが、気合声出しはけっこうよくやる)。

で今度はコード振り。録音に合わせながらでも口で歌いながらでもいいので、ギターでコードを演奏していく(ゆっくりしたスピードで、口で歌いながらやるのがラクだと思う)。メインの3つをまず試して、違うようならオマケの2つを使う(3つしか覚えていない人はムリヤリにでもどれかを当てる)。全部のコードを試してもおかしい気がする場合は、小節の途中でコードチェンジする案を試してみる。それでもダメな場合、たいていメロディの方が「変」なので、メロディをコード(好きなものを適当に選んでよい)に合わせて修正するか、適当なコードを振ったうえで最初のメロディを忘れて改めてメロディを作る。

メロディができていない部分は先にコードを決める。ぶっちゃけどれでもいいのだが、一応、ギターだけで前後を演奏してみて自分のイメージに近いものを選ぼう。選んだらギターを録音するなり弾きながら考えるなりしてメロディを乗せる。どうやって乗せるのかと聞かれると返答に困るが、ギターを持って適当にコードを回していれば、たいていの人はなにかしらメロディっぽいものが勝手に出てくるはず(鼻歌レベルですらメロディが浮かばないという人は、残念ながらこの方法で曲を作ることはできない)。

メロディとコードが出揃ったら、Dominoでベース(コードがGならGの音、EmならEの音をただボーンと鳴らせばいい)とドラムス(どこかから「コピーしても問題ないサンプル」を持ってきて貼り付けるのがラク:このサイトでもローコスト制作のファイル配布ページで筆者が作ったサンプルを公開している)を打ち込んで、演奏に自信がない人はギターも打ち込んで、伴奏の完成になる。

似たような手順で作った筆者の自作曲も別のページでいくつか公開している。最終的なファイルには急がば回れなどで紹介しているいろいろな技術を盛り込んでいるが、メロディとコード回しをとりあえず決めるくらいまではこの項の話と大差ないやり方(リンク先にオマケで掲載しているサンプルその1その2:本当に自分用のメモだけのために録ったもので、鼻をすする音やらヨダレをこぼしかけた音やら不快なノイズがいろいろ入っているため、気にする人はダウンロードしない方がよい)。


打ち込みの活用

最初にギターが手元にない人へのフォローを。やることは前の項と同じ。ただそれをDominoのみでやるというだけのことだが、効率は悪いので心しておこう(コード後付けのページで悪あがきの例を紹介している)。

コード伴奏を作る手順。まずコード入力支援ツールから入力したいコードを(ギター伴奏なので「ギター風(コード表記)」のところから)選ぶ。

たとえばEmを選んだとしよう。

E2~D#3の間にあるEの高さ(E 2 [40])のところでダブルクリック(名前に「high」がついているコードの場合はもっと高いところも使う)するとコードが入力されるので、

選択モードにしてコードの音符を「左右の幅がちょうどになるように」すべて選択(ちょうどでなくても操作はできるがやりやすいように)、選択範囲の右端をドラッグして長さを調整する。

長さや強さは最初から数字で指定しておくこともできる。

ストロークしている感じにする場合は、音符を選択したまま適当なところで右クリック、ストロークを選ぶ。

「step値」はストロークの速さを決めるパラメータで、固定値で5~15くらいにしておけばいい(5が速い、10が普通、15が遅いくらいに考えてOK:テンポによっても「ストロークし始めてから終わるまでの時間」が変わるので、速い曲では多め、遅い曲では少なめにする)。

作業が終わったら通常入力に戻しておこう。

・・・とまあこうやればギターストロークっぽい音は打ち込めるのだが、正直ちょっとかったるい。ので、もう少しラクをする方法をギター打ち込みのページで紹介する。

さて、ギターは大変便利な楽器だが、打ち込みにも打ち込みなりの利点がある。中でも大きいのは「コピペや改変が簡単」ということだろう。

たとえばローコスト制作のファイル配布ページで配布しているこのファイルの中から気に入った流れの部分をちょいちょいとツギハギして、上にメロディを乗せてやれば、面倒なことを考えなくてもだいたい曲っぽい体裁にはなる。すでに紹介したドラムパターンなども切り貼りで使えるだろう。伴奏の流用だけでなく、メロディを引っ張ってきて別の構成に作り変えたり、すでに完成品として公開されている曲に手を入れるのも面白い。

ただ、これを自分だけでやる分には多分問題ないのだが、できたものを公開しようとすると権利関係で引っ掛かることがある。製作者ごとにいろんなポリシーで配布しているだろうから、注意書きなどをよく読んで欲しい。筆者が上記のページで配布しているファイルはパブリックドメイン(まったく自由に利用してよい)扱いなので、丸ごとコピペして伴奏に使いつつ「自作曲」としてどこかで公開してもまったく問題ない(問い合わせも必要ない)。

筆者が公開している以外のものとして、Five Pin PressInstant Drum Patterns(ファイルにクセがあるらしくバージョン1.38のDominoではうまく読み込めないので、いったんcherryに読み込んでから標準MIDIファイル(.smf)を書き出そう)やMIDI STATIONというサイトのアルペジオパターン集などがある(クドいようだが、ライセンスは各自で確認のこと)。


注意点と問題解決

急がば回れなどで何度も繰り返している話と重複するが、注意点などを改めて。

イメージと曲の食い違いについて。正確でご都合主義的でない曲のイメージを持つこと自体がかなり高い熟練度を要するので、最初は食い違って当たり前。「出てくる音がおかしい」と考えずに「イメージのズレを修正する」心構えでいれば、そのうち噛み合うようになる。

手順について。当然だが、ギターで伴奏しつつメロディを作りつつ次のコードを考える作業をいっぺんにできる人は、このページで紹介しているのより短縮したやり方にしてもまったく問題ない。というか、これができるようになるまでの労力が(鍵盤などに比べて)少なくて済むのがギターのいいところで、いくつか曲を作っていればそのうち勝手にできるようになる。作業をブツ切れにするより流れも効率もいい。

ドラムスについて。メロディやコードを考える際の助けになるので、できるだけ早い時期(メロディもコードもまったく考えていない一番最初の段階でもOK)にいくつか候補を選んで、それに合わせながら曲を作ると効率がいい。

演奏の録音に後から打ち込みを重ねる場合、テンポがフラフラしているとタイミングが合わなくなる。打ち込み終わってからもう一度録音すればいいだけの話ではあるが、最初からメトロノームなどを使って録音してももちろん構わない。たとえば筆者が配布しているこのファイルをダウンロードしてDominoで開き、好きな部分を選択して

ループボタンを押して再生しながら録音するとメトロノーム代わりになる。

コード伴奏について。同じ「大きな古時計」のメロディにこんなコードを振ってもこんなコードを振っても、好きな方で構わない(やはり使い回しなのでピアノ伴奏のままだが大目に見て欲しい)。自分が意図するイメージに近くなるよう、いろいろなコードを当ててみて欲しい。

もし「コードに合わせてメロディを直す」ところが増えすぎる(たとえばこんな感じ)ようなら、キー(メジャー/マイナーまたは音の高さ)が自分の意図と違うのではないかと疑ってみる(もちろん、キーが変わった方がイケてるなら戻さなくていい)。


全体の検討

曲の雰囲気作りはテンポやリズムでやるのがまず第一(具体例は急がば回れの編曲知識補充編に掲載した)なので、他を見直す前にちょっと検討してみよう。ギターの場合右手の弾き方(ストローク、アルペジオ、スリーフィンガーなど)でも相当雰囲気が変わるので、気に入ったパターンを2~3種類くらい持っておくとよい(苦手なら全部ストロークにして、強さと速さとアップダウンだけでニュアンスを出してもOK:さらに小技として、高音弦のあたりだけストロークとか、低音弦のあたりだけストロークといったこともできる)。

ベースやドラムスをゼロから自前で打ち込むときの注意点だが、本当に「必要な」音だけ出すことに集中しよう。伴奏全般において「余計な音を出さない」のは重要だが、ベースやドラムスではとくに注意が必要になる。ほどほどにしておけば「まあアリ」な曲を「ゴチャゴチャ」にしてしまうことも多い(そういう意味では「化粧」に似てる作業だと思う)。アカペラでメロティだけなぞって「よさ」が出ない曲はどれだけイジってもそれ以上よくならないし、メロディのよさがどこにあるか理解(少なくとも意識)しないでイジるといくらでも酷くなる。

コードの響きに不満がある場合は、GとEmまたはCとAmを入れ替えてみよう。コードのつながりがギクシャクする場合は前のコードの最後を別のコードに変える(小節の途中でコードチェンジする)。変え方の例はやはり急がば回れに掲載してあるが、このページで紹介した手法でやる限り、変だと思うつなぎ目の直前にしらみつぶしに他のコード(といっても5~6種類しかないわけだから)を当てればいいだけ。ベースは元のコードのままにした方がいい場合と弾き直した方がいい場合があるので、先にコードだけ考えて、あとからベースをどっちにするか考えるのが早いと思う。

もう少したくさんのコードを使いたい人は、メジャーキーならG・DかD7・CとEm・Amに加えてB7・AかA7・EかE7・Cm・Dm・G7あたりを、マイナーキーならEm・B7・AmとG・Cに加えてD・Bm・AかA7を覚えておこう。一部押さえるのがやや難しいコードもあるのでムリをしなくてよい。


オマケ

細かい編曲や打ち込みにはある程度の知識と経験が必要だし、とくに打ち込みで生楽器っぽい音を志向する場合の作業は相当に手間である。その苦労自体が「楽しい」と感じる人には何の問題もないが、もっと手軽に片付けたい人もいるだろう。作編曲補助/伴奏自動作成系のソフトが手軽になってきたので、試してみるのも面白いかもしれない。

2010年現在、インターネットのSinger Song Writerシリーズ(DAWとしての機能もある)、PG Music(日本での販売はイーフロンティア)のBand-in-a-Box、カワイのバンドプロデューサーあたりが有名どころなのだろうか。ヤマハのSOL(前身バージョンであるXGworksの頃からボイストゥスコアやオートアレンジャーなどの機能を搭載しており、らくらく作曲名人などの派生ソフトもあった)は2008年に生産終了になったようだ(残念)。

筆者はどれも使ったことがないが、SSWについてはまったりとDTMに挑戦する記録というblogにマニュアルを読みながら使いこなしていく体験記があった。ざっと読んでみたところ、ベタ打ちギターをスタイル・シミュレータという機能で加工する記事などが興味深かった。発売元のインターネット(いつも思うがこの社名、なんとかならんモノなのか)が公開している活用法の解説もなかなか親切である。



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