打ち込みについて


2010年2月追記:筆者自身の制作環境ははたかぼーさん作のDominoにほぼ移行した。関連記事はDominoのページから辿って欲しい。

どんなにがんばってもMIDIではMIDIの音しか出ない(生楽器の音は出ない)ため、リアルさの追求については、どこまでがんばるかが問題になる。

サンプリング音源を自前で編集して使ったとしても、ハイハット(シンバルとスティックの材質・形状、叩く位置・角度・強さ、時間軸に沿ったペダルの踏み具合、他の楽器との共鳴など、考慮しなくてはならないパラメータが無数にある)などにハマリ込むと、どこまでやってもキリがなくなる。ある程度で見切りをつけてよしとしなければ作業が進まなくなるだろう。

ただし、楽器の特性や奏法についてはある程度知っておいた方がよいので、外部リンクのページから辿るなどして知識を仕入れるとともに、できれば実際に楽器を触ってみるとよい。急がば回れの楽器の練習のページも、多少は参考になるかもしれない。

たとえばギターなどは、楽器によって「よく鳴る音」と「あまり鳴らない音」があって、同じ強さでピッキングしても大きく鳴る音程とそうでない音程がある(影響自体はストロークよりもアルペジオで顕著だが、プレイヤーが無意識に修正するのであまり目立たない)。打ち込みで模倣するかどうかはさておき、知っておいて損のないことではあるし、また実際に楽器に触れないと気付きにくいことでもある(ちなみに筆者はストロークで1音1音ベロシティを変えるようなことはほとんどしない)。

cherryの具体的な操作については、MIDI打ち込みの初心者お助け講座の後半(後半はお助け講座ではなく通常記事)も参照。


仕組みと用語の確認

面倒な話なので(とくにcherryを使っている人は)読み飛ばしてもよい。

MIDIには通常のコントロールチェンジ(ボリューム調整とか:0〜127番)の他に、RPN(Registered Parametaer Number:用途があらかじめ決まったパラメータ)やNRPN(Non-Registered Parametaer Number:ベンダが勝手に利用できるパラメータ)などがある。

RPNやNRPNはコントロールチェンジの101番(RPN LSB:Most Significant Bitで上位ビットの意)、100番(RPN LSB:Least Significant Bitで下位ビットの意)、6番(データエントリーMSB)、36番(データエントリーLSB)を使って表現される。MSBとLSBの関係は「丁目と番地」に近いものだと思っておけばよい。たとえばMSBが0でLSBも0(0丁目0番地)だとRPNのピッチベンドセンシティビティを指し、データエントリの中身がピッチベンドセンシティビティの値として設定される。複数使う場合は64分音符分(30チックス)くらい間をあけた方がよい。

この仕組みは非常に面倒なので、cherryでは本来ないはずの128〜255番を仮に想定して、128〜139番をRPNに、140〜159番をNRPNに、160〜199番を機種依存のコントロールに、200〜219番をドラムのNRPNに(gateの値はドラムノートの番号を表す)、220〜239番を予備に、240〜255番をユーザー定義に割り当てている(仮想コントロールチェンジ、略してVCCという)。たとえば、コントロールチェンジの128番(本来は存在しない)を指定すると、RPNの0番(つまりピッチベンドセンシティビティ)を指定したのと同じことになる。

以下では、128〜255番の仮想コントロールチェンジも単にコントロールチェンジといっしょくたに呼ぶことがある。また、たとえばMSBが1でLSBが2のRPNをRPN1-2などと書くことにする。


ぜひ必要なコントロールチェンジ

まずは155番のテンポが必須。実体はイベントコード「FF 51 03 tt tt tt」のメタイベントSet Tempo(「t」の部分3バイトが設定値:「FF」がメタイベントであること、「03」が設定値のバイト数を表し、「51」がSet TempoのID)で、4分音符の長さをマイクロ秒で指定する。シーケンサーの仕様によるのだろうが、bpmでテンポを指定した場合、120bpmなどキリのいい数値でない場合は四捨五入されるはず。

各種リセットも、最初の音が鳴る前にかけておいた方がよい。160番のGM System ON や161番のGS Reset だけではRPNとNRPN(仮想コントロールチェンジの140〜159番と200〜219番)は初期化されないらしい(160番を送るとGSシステムがオフになるので、両方送る場合は160番>161番の順に送る)。初期化されているような気もするが、音源の設定次第なのかもしれない。ローランドの音源だと、RPN127-127でRPNとNRPNを初期化できるらしい。

コントロールチェンジの121番と123番を使うと、それぞれ、一時的なコントロールチェンジ(ダンパペダルなど)とトーンを全オフにできるが、これらはあまり使わない。


タイミング合わせ

最低限、ドラムセットとベースのタイミングだけは合わせておく必要がある。

利用する音源でサンプルファイルを再生してみて、もしずれていたら、ぴったりとタイミングが合うように(もしくは任意のずらし方で)ステップの値を調整する。楽器1つを丸ごとずらす場合、cherryであればトラックのプロパティ画面で「Step+」を変更すると楽。

音色の一部だけ、たとえばドラムセットの中でスネアだけアタックが早すぎるなど場合は、同じ音色のトラックを2本用意して、不都合のある部分だけを別トラックにしてやると操作が楽。もちろん、個別に数値を変更しても差し支えない。


音色作り

最低限ベロシティ(タッチの強さ:コントロールチェンジではなくノートのパロメータ)とボリューム(コントロールチェンジの7番)くらいはいじって、あとはホールド(ダンパ:64番)とPanpot(左右の位置:10番)あたりを必要に応じて変えればよい。ホールドは0〜63の値(普通は0)を指定するとペダルを放し、64〜127の値(普通は127)を指定するとペダルを踏む(高級な音源だとハーフダンパーも表現できるのかもしれないが、GM音源ではムリ)。現在鳴っている音のみ伸ばすならソステヌート(グランドピアノの中央ペダル:66)を使う。7番のボリュームと11番のエクスプレッションは、PAのボリューム(ミキサーのチャンネルフェーダー)と楽器(またはアンプ)のボリュームのような関係(キーボード用のエクスプレッションペダルなどは後者を操作するためのもの)。

音を不安定にしたい場合はモジュレーション(ビブラートっぽい効果:1番)が使えるが、使った後はきちんと戻しておく(値を0にする)。リバーブ(残響:91)・コーラス(音の厚み:93)・ソフト(高音をカットしてアタック感を減らす:67)あたりはGM音源としては定義されていないので注意が必要(独自に実装しているものもあるらしい)。ソフトはアップライトピアノの左ペダル(ソフトペダル)というよりはブライトネスのカットに近い効果。

コントロールチェンジの71〜74番はGS音源(ローランド)用なので、これもGM音源では使えず、結局イフェクト系のコントロールチェンジはPANとモジュレーションくらいで、あとはピッチベンド(音程の上下:153)でムリヤリチューニングを変えてやる程度の小細工しかできない。GS音源を中心としたイフェクトについてはプリQのMIDI講座というページの解説が詳しい(シンバルロールの第2回までで更新が止まっているが、ページ制作者の方が亡くなったらしい:お悔やみを申し上げます)。もちろん、MIDIの機能に頼らず、一度パートごとに録音してから別口でイフェクトをかけてミックスダウンしてもよい(MTRソフトなどを使う)。打ち込み自体のコツについてはYAMAHAの上級打ち込み講座(アイデックス上杉氏)が非常に参考になる。


ピッチベンドについて

ピッチベンド(153)にはちょっと注意が必要で、使う前にまずピッチベンドセンシティビティ(128)を設定しておかなければならない。デフォルトのピッチベンドセンシティビティは2で、ピッチベンドをいっぱいに(つまり8192または-8192の値で)かけると半音2つ(つまり全音1つ)音が上下する。値としては、2か12が一般的なようだ(12だと最大値で1オクターブ:2にする場合も一応明示しておいた方がよい)。

センシティビティ2の場合半音ひとつ(1ハーフステップ)が4096になり、50セントで2048、25セントで1024、20セントで約820、10セントで約410になる。このほか、128で1/32ハーフステップ、256で1/16ハーフステップ、512で1/8ハーフステップという数字を覚えておくとよいだろう。

ピッチベンドはトラック単位で効果が出るため、ベンドの対象になる音と対象にならない音は別トラックにしなければならない(転調があると面倒)。


不要なイフェクト

不要なイフェクトは、効果を0にしておくとよい。デフォルトの値がそれぞれいくつなのか筆者は知らないが、明示的に0を指定すれば間違いなくイフェクトを止めることができる。cherryのデフォルトだと、パン(10)・コーラス(93)・バリエーション(94:GSだとセレステ)・ブライトネス(74)・ハーモニックコンテント(71)が0に、リバーブ(91)が40になっている。

GMだと74番や94番は使えないはずなので放っておいてもよさそうなのだが、GM互換+独自拡張の音源も考慮して、一応0にしておいた方がよいだろう。


少し手の込んだ打ち込み込み

ドラマーが右手にブラシ、左手にスティックを持つような状況の再現には、仮想コントロールチェンジ180番のUse For Rythm を使う。これはGS音源用の設定で、複数のトラックを1つのドラムチャンネルに割り当てたり、デフォルトのドラムチャンネルであるch10以外にもうひとつドラム用のチャンネルを用意するためのもの。ドラムチャンネルは2つまで利用可能で、値は0(OFF)か1(MAP1)か2(MAP2)で指定する。複数のトラックで同じマップを指定すると同一のチャンネルに送られるようで、トラックのプロパティで指定した送り先チャンネルは無視されているような感じ(未確認)。

ch10がデフォルトでMAP1を使っているはずで、実際SW Synth などではノートの衝突も起こるのだが、Timidity++だと平気で再生してしまう(サンプルファイル)。SW Synth でも、ch10(MAP1)+MAP2+MAP2という構成のドラム3チャンネルなどは再生できる。独自拡張なのか、仕様の解釈やバージョンが違うのか、実装のバグなのかはわからない(筆者は仕様を知らない)が、とにかく、ch10をMAP1、もう1つのチャンネルをMAP2という構成にしておけばもっとも安全。

cherryではトラック#11がドラムトラックになっており、このトラックのデータはデフォルトでch10に送られる。ドラムトラックを追加する場合、たとえばトラック#12にUse For Rythm = 2 という仮想コントロールチェンジを書き込んでプログラムチェンジで41番(ブラシ:番号がひとつずれるので注意)を選択すれば、トラック#11にはスティックの音、トラック#12にはブラシの音と分けて打ち込むことができる。もちろん、MIDIマッピングでも実現は可能なのだが、環境が変わっても(GS音源にさえ対応していれば)再生できるのが長所。Timidity++だとch26もデフォルトでドラムチャンネルになっている(追加や削除などの変更も可能)。

Timidity++でハイハットのロールをやろうと思うと、オルトアサイン(#extension altassign)が有効になっている場合に音がぶつ切れになってしまう。これを防ぐには、MIDIマッピングにより空いている音色をハイハットに割り当てて、ロールのみそちらでやればよい。たとえば、cfgファイルでdrumset0のtone1(普通は空いているはず)をtone42のClose Hi-Hatに割り当てて、ロールにはtone1、ロール以外にはtone42と使い分ける。さすがに、ペダルの踏み具合を変えながらのロールなどは表現できないし、手元での録音用にしか使えないやり方ではあるが。

ロール関連では、Timidity++の設定>詳細設定>エフェクト>同音連打のチェックや、GS音源の場合Assign Mode(仮想コントロールチェンジ179番)の値(0だと新しい音が鳴った場合今鳴っている音が消え、1だと2音まで同時に鳴り、2だと音が消えない:デフォルトは0)も見直しておく必要がある(上記のハイハットロールに限らず、スネアロールやキックロールにも影響する)。設定で頑張るよりロールの音色が入っている音源を使った方が早い場合が多いが、そうすると今度は、他のパートの音色とギャップが出ないように気を使う必要がある。

cerryはデフォルトでスナップモードになっているが、これをOFF(消しゴムの右のアイコン)にして範囲を選択し「削除(Erase)」や「挿入貼り付け」を行うと、トラック丸ごと時間をずらすことができる。これにより、ドラムスだけモタらせたり、ピアノだけハシらせたりすることが可能。虫眼鏡アイコンを使って最大まで拡大しても5チックス単位の解像度にしかならないのだが、それ以上の精度で指定したい場合は、トラックのプロパティからステップの値を変更してタイミングをずらす(詳しくはcherryのページを参照)。


ベロシティとボリューム

音の強さをどうするかという問題。音の強弱に関わるパロメータは、volume(コントロールチェンジ7番)、expression(コントロールチェンジ11番)、velocityの3つ(GSだと仮想コントロールチェンジ131番のmaster volume も使えるが割愛)。特に意図(フェードイン/アウトなど)がない限り、ボリュームはあまり動かさない方が無難で、メインの強弱コントロールはベロシティになる。

ボリュームが大きすぎると、小さいベロシティを多用することになって表現の幅が狭まる(たとえば、ベロシティ50の音の後にそれより弱い音を出そうとした場合49通りの選択肢があるが、ベロシティ5の音の後だと4通りしかない:逆もしかり)ので、最大音がベロシティ100前後(別に127でもよいのだが、何かの都合でもっと大きい音を出したくなったときに困る)になるように設定すればよいだろう。もちろん、高級な音源であればベロシティによって異なる音色が割り当てられているため、各チャンネルのボリュームをそろえて音色の変化を生かしてもよい(細かな強弱表現はやや犠牲になるが)。

ピアノ系の音色の場合、いわゆる強拍弱拍の区別のほかに、コードの構成音でない音やSDのコードを弱めにしたり、メロディを作るトップノートを強調したり、ベースをオクターブで重ねている場合に上下の音で音量に差をつけたりすると面白い。ギター族のストロークは、ミュート弾きの表現のほか、多少ベロシティをバラしてやるとそれっぽくなる。インチキ技だが、クレッシェンドやデクレッシェンドを(ベロシティでイジると面倒なので)ボリュームの変更で表現するという手抜きも可能。


PANと定位

楽器をどう並べるかという問題。前後の定位も表現できなくはないが、打ち込みではなくイフェクトでの編集(遠い楽器のみ音をやや濁らせてリバーブのウェット成分のハイを削るなど)に頼ることになるし、ムキになって音色を崩しては元も子もないので、ここでは左右の定位のみ扱う。

鉄則として、低音楽器はセンターにする。低音はかなり音圧を上げないと聴覚上大きな音に聴こえず、また音が回り込む性質がある。このため、スピーカを2つ使える中央から出すのが有利だし、PANが偏っているとヘッドフォンで聴いたとき非常に妙な感じになる(スピーカなら、どちらか片方しか鳴っていなくても同じように聴こえるはず)。バスドラとベースでPANを微妙にずらすというのはアリ(低音楽器といえども高音成分がまったく出ないわけではないので:ただし、ヘッドフォンで聴いても気持ち悪くならない範囲でやろう)。

似たような音域の楽器は離すようにして、センターには低音楽器とリード(管楽器の意味ではなく、メロディを担当する主役の楽器のこと)だけを置くようにする。

ステレオ録音の鍵盤が入る場合、低音部がセンター近く、高音部が端近くになるよう配置するとよい。プレイヤーが客席の方を向いてステージピアノを演奏するシチュエーションをシミュレートするなら、PANを左に振って低音部が右/高音部が左にやや寄るようにすればよい(プレイヤーの耳に入る音を基準に低音部が左/高音部が右になっている音源もあるが、そういう場合は左右を入れ替えてやる)。鍵盤を左に置いた場合、必然的にギターは右に置くことになる。

ギター2本に鍵盤にヴォーカルといった多人数構成を再現しようと思うとちょっと面倒だが、左から順に鍵盤、リードギター、ヴォーカル、リズムギターなど、メロディ担当を中央に集めつつ同じ楽器が2つ並ばないようにすると無難(リードギターとヴォーカルを両方中央に入れるよりは、中央を低音楽器のみにした方がスッキリするだろう:同時に音を出すパートがないなら、代わる代わる中央に入っても面白いが)。


アーティキュレーション

ノートの長さ(音価)をどうするかという問題。筆者もどうすればよいのかいまひとつわかっていない。

たとえば4分音符が480チックスの場合、480チックスいっぱいに鳴らすと非常に極端なテヌートになり、不自然な聴こえ方になってしまう。このためゲートタイムをいくらか削ってやる必要があるのだが、音源や音色によってアタックタイムやリリースタイムが違うため、これだけ削ればこういう聴こえ方になる、という一定した関係はない。

とりあえず、4分音符なら15〜30チックスくらい削ってやるのが無難な気もするが、パートによって適切な値が違うし、音符によっても違う(たとえば、32分音符を20チックスも削ったらスタッカートになってしまう)。また、割合で削ると全音符などを削りすぎてしまう。他のページで紹介しているDominoを使えば、2分音符より長いものは32分音符分、8〜2分音符は音価の16分の1、8分音符より短いものは128分音符分、などといった削り方が簡単にできる。

さらに、金管楽器のような楽器であれば、ゲートタイムを削るというところまでは確定するが、ピアノのような楽器だと、逆にゲートタイムを増やして音を濁らせた方がよい場合もあって、さらに面倒になる。まして、ピアノの場合ペダルも絡んでくるし、メロディ弾きとコード弾きではまったく違ってくるし、音が隣接している場合とバラけている場合でもやはり違うので、非常にやっかい。ギターやベースなども、鳴らす弦やフレット移動の距離をよく考える必要がある。

とりあえず、鍵盤楽器でコード弾きが固まっているところや、単音楽器でノートが連続している部分は多めに削ってやり、リードギターなどで同じ弦のノートが続く部分やフレットレスベースなどはポルタメントを入れてやるのがよいのだろう。早いフレーズではリバーブで音が伸びる分も考慮に入れて打ち込む必要がある。

実際には、隙間なく打ち込んでも音色ファイルのアタックタイムと相殺されてそれほどレガートには聴こえないことも多いし、ベースの場合は機械でしかできない正確なレガートが却って効果的な場合もある(とくに早いフレーズを弾く場合、生楽器だとどうしても音が薄くなりがち:もちろん、それを補うための演奏上の工夫が「ベースっぽさ」を醸している場合もあるが)ので、筆者はかなり適当に設定している(というか、ベタ打ちのまま変更しない場合の方がずっと多い)。

参考までに、16分音符を480チックスに見立てたピアノの同音トレモロ(ペダル不使用)を、ベタ打ち、15チックス(512分休符)間隔、30チックス(256分休符)間隔、60チックス(128分休符)間隔、120チックス(64分休符)間隔、240チックス間隔(32分休符)の順で並べたサンプルファイル(テンポ120)も用意した。音価の1/32〜1/8くらいが無難なのだろうか。fluidピアノ4frontピアノEVMピアノで鳴らしてみた(EVMピアノは筆者が普段使っている設定)が、やはり音源によって聴こえ方がかなり違う(最後のスタッカートを比較するとわかりやすいかもしれない)。さらにリバーブなどもかかるわけだから、やはり容易な問題ではない。

上記以外に、音の(長さではなく)タイミングをどうするかという問題もあり、Jazzなどでは「リズムとコードが前、メロディが後」という原則のようなものがあるらしいが、やはり例外はいくらでもある(リズムとコードのうち、ベースだけが後に下がるパターンも多い)。リズムとビートについてのページにある前ノリと後ノリの項目も参照。


音程とアタックタイム

一般に、低音ほど「音が鳴り始めてから聴こえ始めるまで」が長い。これは人間の耳の構造によるもの(オーディオの重箱の隅のページで少し触れた耳音響放射が、低音になるほど遅れて起こるため)で、多分それなりに個人差があるのだと思う。音源によってはこの遅れを最初から補正してある(低音ほどアタックタイムを短く設定している)ものもあるかもしれない。

アタックポイント(音が聞こえ始めるタイミング)をずらす場合、低音部(ようするにベースとバスドラム)同士はあまり極端に離さない方が無難。その意味でも、バスドラムは他の太鼓とは別トラックにしておくと便利。

ドラムスのハシりモタりは曲のイメージに大きな影響があるので、いろいろと試してみる。キリのよいところで、256分音符か128分音符くらいで前後させるとよいかもしれない。原則として、スネアや金物をハシらせると不安定に、モタらせるとどっしりした感じになる。低音部だけ(場合によってはベースだけ)モタらせると、前のめりになった感じが出る。

細かくトラック分けして録音する場合、後からMTRでタイミングをズラすことも可能なので、打ち込みですべてのタイミングを決定してしまう必要はない(MTRのサンプルレートに比べて、MIDIの分解能は荒いし)。リバーブのかかり方などでも印象が変わってくるので、打ち込み時点では大まかなイメージ作りに専念して後からゆっくり見直す手もある。


MSGSの仕様について

Vista以降に付属の「Microsoft GS Wavetable Synth」には「ドラムセットのゲートタイムを極端に短くするとマトモに音が鳴らなくなる」という、非常に困った仕様があるらしい(反対にXP付属のMSGSは図太すぎるようで、XP搭載マシンで作ったファイルが他のマシンで再生できないことがあるようだが、それはまた別の問題)。

通常、ドラムセットのチャンネルはゲートタイムを無視するので、同時発音数を損しないようゲートタイムは1に設定する。損するとはいっても、せいぜい3〜4くらいのノートが5〜10チックス程度の時間鳴るだけなので、今時の音源なら実用上の不便はほとんどない。MIDIシンセの同時発音数が8とか16くらいの環境だと、ドラムスだけ先に鳴らしてコード楽器を後にするなどといった小技も必要だったのだが(もっと前には分解能が4分音符=48チックスなどと低かった時代もあり、10チックスも伸ばしていられなかった)。

最新版のCherryやDominoなどでは、デフォルトのゲートタイムを5や10などに変更しているが、過去に作成したMIDIファイルのゲートをすべて修正するのはかなりホネが折れる作業である。実際、筆者も手元のファイルすべてを修正する気にはとてもなれない。仕方がないので、このページでは、サンプルファイルが再生できない場合の代替音源としてQuickTime Playerを挙げている。

未確認だがMicrosoft Synthesizerは仕様変更の影響がないらしく、DirectXのシンセ機能を使うMIDIプレーヤー(TW−MUSIC2など)なら、古いMSGSと似た挙動を見込めるようだ。


その他の備忘録

4分音符が480チックスの場合、8分で240、16分で120、32分で60、64分で30、128分で15、3連4分で320、3連8分で160、3連16分で80、3連32分で40、3連64分で20、3連128分で10。1チックは1920分音符で、256分は8チックス、512分は4チックスで代用する。4/4拍子だと、1拍目は0、2拍目は480、3拍目は960、4拍目は1440チックスから始まる(テンポ125で1チックス=1ms)。1小節を1920=2^7*3*5にしているため256分音符以上が半端な数字になるのだが、どうせなら(2^8)*9=2304か、せめて2^9*3=1536チックスにしたいところ(cherryだとムリ)。

1小節x秒で4/4拍子の曲のテンポn(1分間に4分音符n回)は、60/(x/4)=240/xで求められる。4分音符1拍がx秒なら素直に60/xでよい。耳コピの補助などで計算する場合は、16小節なり32小節なり、ある程度まとまった分量で時間を計り、1小節の時間を求めてから上記の式に当てはめるとより正確になる。逆に、テンポをxとすると、4/4拍子の1小節は(60/x)*4=240/xになり、n分音符の長さは240/(x*n)になる。たとえばテンポ60で8分音符なら240/(60*8)=0.5秒=500ms。

後ろの方に入っているので忘れがちだが、GMのプログラムナンバー117番のMelodic Tom(クロマチックタム)、118番のSynth Drum(シンセ版クロマチックタム)、120番のGuitar Fret Noise(フレットノイズ)、121番のBreath Noise(チフノイズ)あたりは結構使える。114番のSteel Drums(スチールドラム)とか、なぜかクロマチックな116番のTaiko Drum(和太鼓)も使える場面があるかもしれない。和楽器では、なぜか100番台ではなく77番に入っているShakuhachi、106番のShamisen、107番のKotoなどがある。残念ながら笙や鼓はGMにはない。

Fluidの場合ベロシティ100の音とベロシティ50の音は音量が10db違い、SW synth だと12dbの差だった(グランドピアノのC4の音を使用)。おそらく、Fluidはデシベル基準で2倍=10dbという計算、SW synth は素の対数基準で音量2倍=音圧(2)^2倍という計算をしているのだろう。多分、ローランドのほかの音源もSW synth と同じ基準ではないかと思われる。最大音(ベロシティ127だが、端数が面倒なので128として扱う)を0dbとして計算すると:Fluidの場合、64で-10db、32で-20db、16で-30db、8で-40db、4で-50db、2で-60db、1で-70dbになり;SW synth なら、64で-12db、32で-24db、16で-36db、8で-48db、4で-60db、2で-72db、1で-84dbになる。このため、SW synth 前提のMIDIをFluidで再生すると、ゴーストノートなどがやけに目立って聞こえる。逆のパターンだと、ごく小さな音がほとんど聞こえなくなる(対応表を作ってやれば自動変換も可能だろうが)。

cherryでは、通常トーンのバンクセレクトはプログラムチェンジイベントをダブルクリックしたときに出てくるダイアログのBANKの項目で行うが、ドラムスのバンクセレクトはPC#の項目で行う(楽器を選んだかのような表示になるが、きちんとバンクセレクトになっているはず)。


オマケ(TuxGuitar)

TuxGuitarというギターパート専用のシーケンサーソフトがある(GPL採用のフリーソフト)。以前はJAVA版しかなかったため敬遠していたのだが、.NET版が出たのを機に試してみたところかなり使いでがありそうだった。Guitar Proという市販ソフトの互換フォーマットを採用しており、残念ながらバージョン1.0では標準MIDIファイル(SMF)を出力できない(単品で使うか、オーディオデータとして録音してから利用することになるだろう)。

使い方に関してはk本的に無料ソフト・フリーソフトというサイトに解説があるが、注意が必要なボタンは以下の通り(バージョン1.0を元にして説明を進める)。

1は入力モード。普段は音符移動モード(左側)でよいと思う。2はコード入力機能。ギター専用だけあってなかなか強力である。3はフレット画面の表示切替。常に表示しておいた方がよいと思う。4は現在の位置。これが多少面倒で、画面では「全部で2小節あり、現在位置は1小節め」という意味(タブ譜上の四角でも確認できる)。5は移動ボタン。曲の終わりでさらに右矢印ボタンを押すと新しい小節が追加される(筆者はこの操作がわからず5分くらい悩んだ)。

フレット画面に直接入力する場合は、開放弦の音も入力しなければならないことに注意(ナットの位置でクリックする)。その他のボタンは(ギターを弾く人なら)勘でイジっても大体わかるのではないかと思う。キーの設定はComposition>Key Signatureで行い、シャープとフラットの使い分けは自動でなされる模様。

やや慣れが必要な操作方式で、たとえばコードストロークにハンマリングを入れるような場合、同じコードを2回入力して、後ろのコードの音を(フレット画面などで)動かし、後ろのコードのうち改めて鳴らさない音をタイ(コード入力のすぐ左のボタン)でつなぎ、前のコードのうちハンマリングする音を選んでハンマリングボタン(HOのアイコン)を押し込む、という手順になる。

画面上はこのようになる(音が上がるか下がるかだけで、プリングもまったく同じ操作:トリルは手入力でも専用ボタンでもできる)。見方によっては「いかにもフリーソフトっぽい」操作感なので、この系統のソフトに慣れている人にはかえって取っ付きやすいかもしれない。

どのポジションでどの弦をどんなフォームで、ということを常に意識して作業できるため、打ち込みで少しでもギターらしい音を出したい場合には便利だと思う。ただし、ギターを弾かない人が使いこなすためには相当な苦労が必要だろう(結局、ギターを弾く人があえて打ち込みギターを使うというレアケースでしか活躍できない)。パームミュートやスライドなどを少ない手間で入れられるのも嬉しい。

標準MIDIファイルの出力、ドラッグアンドドロップによる編集、もう少し細かい音価設定(「全音符より8分だけ短い音」などを入力しようとすると、何度もタイを使わねばならずやや面倒)あたりに対応してくれればもう少し効率がよくなりそうな気がするので、今後の開発に期待したい。



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