スリーコードを回す / スリーコードを覚えたら弾ける曲 / コードを増やす
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演奏のためではなく、作曲や編曲に役立てるための楽器の練習について考えてみたい。鍵盤とギターを取り上げる。作曲のページや編曲のページで出てきた専門用語については改めて説明しない(自信がない人は作曲の基礎編だけ読んでおくとよいかもしれない)。余談のそのまた番外編なので、話半分のそのまた半分くらいで。
作曲や編曲を行う上で、思いついたときに考えを中断することなくコードの音が出せるというのは、非常に有利なことである(ここでは触れないが、耳コピをするときなどにも便利)。練習の際は必ず録音するようにして、自分が出した音を聴き返してみること。
入手性のよいコード楽器として、鍵盤またはギターを使う前提で話を進める。まったくの初心者であればギターの方が(とりあえず音が出せるようになるまでが)はるかに容易で手軽だが、鍵盤には(アコピなどを使うのでない限り)ヘッドフォンで練習できるという大きなメリットがあるため、各自の都合と好みに合わせて選んで欲しい。
エレキギターやサイレントギターでも、デジピやキーボードをヘッドフォンで練習するよりはかなり大きな音が出る(筆者はSinsonidというサイレントギターを半年ほど使ったが、遠慮しないで弾くとテレビやラジオの音などよりはよほど響いた:ソリッドボディのエレキギターはサイレントギターほど響かないものが多い)。ハンマーアクションの鍵盤はタッチノイズが意外と大きく、また床を伝って抜けやすい。エレクトリック楽器全般に、不十分な音量でアンプ(スピーカ)から音を出すよりは、ヘッドフォンで聴いた方が練習になると思う。
なお、筆者はテクニック(技術)の習得にかなり冷淡である。スキル(技量)はぜひとも必要だしトリック(妙技)も身につければ楽しいが、テクニックは必要に応じて継ぎ足していけばよい、と思う。ようするに、できる技の多さではなく技の完成度が第一で、そこに遊びを入れられるのが第二、という考え方である(上級者がバリエーションを追及するのが悪いとは思わないが、このページは初心者向けなのでとりあえず無視)。
まずはコードフォームを覚えなくてはならない。少なくとも1つのキーのスリーコードを「考えなくても自然と押さえられる」くらいには練習する必要がある。四和音の存在はとりあえず忘れて、トライアドからやってみることをオススメする。筆者が試した練習法の中では「1451をひたすら回す」というのがもっとも効率がよかった。
最初に挑戦するキーは、鍵盤の人ならCメジャー(CとGとF)とAマイナー(AmとEmとDm)、ギターの人ならGメジャー(GとDとC)とAマイナー(AmとEmとDm)がラクだと思う。エレキギターの人はローコードよりも先にAとEとDとAmとEmとDm(人差し指を使わないフォーム、つまり、Aは2・3・4弦を小指・薬指・中指で、Eは3・4・5弦を中指・小指・薬指で、Dは1・2・3弦を薬指・小指・中指で、Amは2・3・4弦を中指・小指・薬指で、Emは4・5弦を小指・薬指で、Dmは1・2・3弦を中指・小指・薬指で)からハイコードに進む方が効率的なのかな、と思うが人にもよるだろう。エレキとアコギともに、同じフレットを隣り合った複数の弦で押さえる場合は後述の部分セーハ(小バレー)を使ってもよい。
鍵盤の人はヴォイシングも考えなくてはならない。とりあえずこんな感じだろうか(筆者が普段練習しているフォームに少し手を加えたもの:慣れたら他のヴォイシングも試そう)。左手を入れるのは余裕が出てきてからで構わない。サンプルファイルにはCメジャーとAマイナー以外のキーも入っているが、これは後で使うので今は無視しておいて欲しい。
無理のない速さで、まずはコードがきちんと回るよう練習し、慣れてきたら目を瞑って弾く練習もしよう(音を「手に」覚えさせるという意味でけっこう有用)。もっと慣れてきたら適当な鼻歌(即興でよい)でも作って弾き語りの真似事もやってみる(これも、手が音を覚えているかどうかの確認になる:作曲に興味がない人もぜひやってみよう)。
目を瞑って歌いながらでもキッチリ回せるようになったら1541のパターン(鍵盤のヴォイシングは1451のときと同じで構わないと思う)も同様に練習。ある程度メドがついたら(曲の演奏は視野に入れていないという人も含めて)スリーコードで演奏できる曲を探して挑戦してみるとよい。
無心で基礎練習をするのも悪くはないが、曲を演奏するのはやはり楽しい。手頃な曲が見つからない場合は、メロディを変えるなどしてスリーコードにムリヤリ押し込めてしまおう(そもそもは編曲や作曲が目的なので、この練習は有用である)。当然ながら、キーも(自分が弾きやすいように)勝手に変える。
既成曲で練習したい人のために有名どころをいくつか挙げておくと、
Grandfather's Clock(大きな古時計の原曲)(Henry Clay Work)
key on Bb
Bb(I) F(V) Bb(I) Eb(IV) Bb(I) F(V) Bb(I)
Bb(I) F(V) Bb(I) F(V)
Auld lang syne(蛍の光の原曲)(トラディショナル)
Key on F
F(I) C(V) F(I) Bb(IV)
F(I) C(V) F(I) Bb(IV) F(I) C(V)
あかとんぼ(山田耕筰)といった民謡/童謡系の曲が挙げられる(丸括弧は度での表記、角括弧はムリに盛り込まなくてよいコードを示す)。ブルース系の曲でもよいのだが、セブンスコードを覚えないと雰囲気が出ないので後回しにした。
Key on E or Eb
E(I) [A(IV) E(I)] A(IV) E(I)
E(I) A(IV) E(I) B(V) E(I)
一応、コードチェンジのタイミングがわかりにくいという人のために簡易な伴奏ファイルも用意した。ボリュームを下げてあるが、コード伴奏の例も一応入っているので参考までに(ただしダイナミクスやヴォイシングなどは機械的にやっているので、オクターブの上げ下げや強弱の調整をしないと妙な演奏になる)。オマケでビートルズのHey JudeとLet it be用の練習ファイルも入れてある(こちらはスリーコードの曲ではないのだが、マイナーコードのニュアンス出しをベースに任せることで、上モノはスリーコードだけで回すことができる:Dominoで読み込んで、Shift+Tabで演奏モニタを見てみよう)。
伴奏例のファイルではセブンス(7th)コードをいくつか使っているが、慣れないうちは無視してよい。鍵盤でセブンスコードを押さえたい場合、5度音(とベースが他にいればルート音も)は省略できることを忘れないでおこう。キーについても、しっくりこなければカポを使うなりトランスポーズするなり勝手に移調するなりしてみよう(たとえばアコギでGrandfather's Clockを3カポにするとGメジャーのフォームで弾けるし、半音5つ上にトランスポーズした鍵盤ならAuld lang syneをCメジャーで弾けるし、弾けるならあかとんぼはEbに移調した方が響きがよいかもしれない)。
もちろん、アルペジオで弾いてみたり、アクセント位置を変えたり、フェイクやフィルを入れたりといった演奏方面の工夫や、コードを勝手に差し替えたり、メロディをイジったり、リズムをごっそり入れ替えたりといった編曲方面の工夫も、思いつく限りいくらでも試して欲しい。Grandfather's ClockやAuld lang syneを筆者がイジった例(その1、その2)も本編などで掲載しているが、とにかくなんでもとことんやってみよう。そのうちに、楽器の演奏技術も編曲の技術も自然と上がってくるはずである。
スリーコードをしっかり回せるようになったら、メジャーコードとマイナーコードを混ぜて使ってみよう。
まずメジャーキーでI>VIm>IV>IIm>Vの循環をやる。鍵盤の人はCメジャーでC>Am>F>Dm>G、ギターの人はGメジャーでG>Em>C>Am>D、AとEとAmとEmを先に覚えたエレキの人はAメジャーかEメジャーで繰り返しループさせよう。鍵盤の人はI>IIIm>VIm>IV>IIm>V(C>Em>Am>F>Dm>G)もやってみるとよい。
マイナーキーでは、Im>IVm>bVI>Vの循環をやってみる。鍵盤はAマイナーでAm>Dm>F>E、ギターはEマイナーを使ってEm>Am>G>Bがよいだろうか(Aマイナーでもよいのだが、そうするとバレーコードが出てくるので、とりあえずヘタレておく)。AとEとAmとEmを先に覚えたエレキの人は、やはりAmかEmあたりがよいだろう。鍵盤の人はbIIIaugも混ぜてみるとよいかもしれない。
電子楽器(とくに鍵盤)の人は最終兵器トランスポーズがあるので、キーは1つだけでOKといえばOKなのだが、借用コードを使うときのためにFメジャーとDマイナーくらいは練習しておいてもまあ罰は当たらないだろう。アコギの人はカポタストをバシバシ使おう(慣れないと意外と戸惑う)。
ここまで練習すると(キーさえ勝手に変えれば、あるいは電子楽器の人ならトランスポーズ機能を使えば)かなり多彩な曲を弾けるようになっていると思う。ディミニッシュはまだ練習していないが、ムリに覚えなければならないようなコードではない。次以降の項目はギターと鍵盤を分けて進める。
このままではメジャーキーでIIImを使えないのがやや寂しい。ここは気合でBmをマスター・・・する前に3弦ルートフォーム(簡易フォーム)を覚えてしまう手がある。
「親」「人」「中」「薬」「小」はそれぞれ「親指」「人差し指」「中指」「薬指」「小指」を示す。このフォームは習得が簡単で便利だが、筆者は、Amを元にした普通のハイコードから5弦をミュートしただけの形(セーハする努力はするが実際には5弦を弾かない:弦の鳴らし方自体は上記の簡易フォームと同じ)の方が好きである。ついでに4弦ルートF(簡易F)も覚える。
これも、普通のFから単純に5弦と6弦をミュートした形で練習した方が応用がきくと思う。完全な簡易フォーム(ようするに上図のフォーム)も便利だが、本来は「左手の動きをスムーズにするためのフォーム」であって「バレーコードができない人がラクをするためのフォーム」ではなかったりする。たとえばCメジャーでF>ローコードCと動くときなどは、全弦セーハ(大バレー)するフォームより4弦ルートフォームの方がスムーズである。
閑話休題。BmとFを(曲がりなりにも)クリアすると、Gメジャー/EマイナーとCメジャー/Aマイナーでディミニッシュ以外の6コード全てが出揃うことになる。これは非常に嬉しい。好きな曲や自作の曲をバンバン弾こう。
さらに嬉しいことに、FやBmはもともとバレーコードである。バレーコードというのは平行移動で他のコードに変えることができる。たとえば、簡易Fを1フレット平行移動して簡易F#を作るとこのようになる。
こんなにありがたいことはない。
次の項の話と前後するが、ギターのハイコードというのは「5弦ルートのA or Amフォームまたは6弦ルートのE or Emフォームを平行移動する」ことでさまざまなコードを演奏するのが原則である。これを簡易フォームや4弦ルートのD or Dmに応用すると、D、F、B、Dm、Fm、Bmの平行移動で多数のコードを網羅できる。たとえばDのフォームを平行移動したEは
こんな感じ。Dmのフォームを平行移動したEmは
こんな感じである。D or Dmを元にした平行移動は(ハイフレットなら頑張れる人が多いと思うが、ローフレットだと)押さえるフレット幅が広くなるため、4弦を4フレット上げた(=ブリッジ側に移動した)セーハ+1フレ上の2弦+もう1フレ上の4弦=2弦ルートのD(ようするにローコードCの4弦ミュートを平行移動した形)と、4弦を3フレット上げた2弦ルートのDm(ローコードBbmの5弦ミュート平行移動)を基本フォームにする手もある。4弦ルートのFmはFから3弦の中指を放せばよい(1~3弦の小バレーになるが、人差し指は5弦のミュートに使った方がよさそう)し、3弦ルートのBはBm系のフォームから2弦のフレットを1つ上げればよい(2~4弦の小バレーになる)。下図は4弦ルートのFm。
メジャーコードなら中指で3弦を押さえればよい(結局普通の簡易Fと同じような結果になる)。このほか、C(5弦ルート、すでに触れたように5弦をミュートすると2弦ルート)、Cm(5弦ルートで1弦と6弦ミュート)、G(6弦ルート、5弦と6弦をミュートすると3弦ルート)、Gm(1弦ルート)、C#m(2弦ルートで5弦と6弦ミュート)などもポジションによってはバレーコードに応用できる。
作曲や編曲の補助だけを目的にギターを弾くのなら、簡易Bmと簡易Fくらいまでマスターできていればとりあえず物の役には立つかなという気がする(少なくとも、出してみたい音があるのに「これ押さえられないや」という状況はかなり減る)。ただし冒頭でも触れたが、個人的には、普通のハイコードから単純に5弦と6弦をミュートしたフォームを中心に練習しておくと応用しやすいと思う。
もっといえば、普段から普通のハイコードのフォームで弾いて、5弦と6弦はミュート弾きのような音になっても気にせず、響きがどうしても気になる曲に出会ってから必死に練習すると効率がよいだろう(「この曲を弾きたい」というモチベーションがあると、漫然と「このコードを覚えよう」と思っているときよりもはるかに上達が速い)。また「5弦と6弦はちゃんと音が出なくてもとりあえずOK」と考えると、ハイコードは途端に便利で親しみやすいフォームになる(そうやって親しんでいるうちに、ちゃんとしたセーハも自然と身に付くものだと思う)。ちなみにハーフディミニッシュは、わざわざ練習しなくても短3度上のマイナーを鳴らしてやればベースとの合算で間に合う(たとえば、ベースがB、ギターがDmを弾いてDm on B=Bφにするなど)。
完全な余談だが、E or Emを元にしたフォームで押さえるときの4~5弦、Aを元にしたフォームで押さえるときの2~4弦、Amを元にしたフォームで押さえるときの3~4弦を、小指or薬指で部分セーハ(小バレー)する人もいる。とくに薬指で部分セーハして中指を余すフォームだと、ナチュラルに中指が立って見た目がステキである。筆者はローフレットのAフォームのみ、3~4弦を薬指、2弦を小指という変則小バレーで押さえている(薬指だけの小バレーだと1弦の音が詰まりがちなので:ローコードのAは、普通に三本指で押さえるときと、人差し指をナットの外側に乗せながら薬指と小指で押さえるときがある)。
話が飛んだがまとめよう。初めて挑戦する人には困難も多いとは思うが、それなりのリターンはきっとあるので、ハイコードにもぜひ挑戦してみて欲しい。もっと本格的にギターを弾きたい人は次の項目も読んでみよう。
演奏も視野に入れている人向けの情報。自分が出した音を録音して聴き込むことを強く推奨する。
まず、音が「ちゃんと」出ているかどうかしっかりチェックしながら、左手が無意識に動くくらいまで練習しよう。演奏中に適当なところで「極端に遅いストローク」(ワンストロークに1小節くらいかける)を入れてみて、ビビっている弦がないかどうか確認する(ハイコードで5or6弦がビビるのは、とりあえず無視してよい)。同時に、メトロノームに合わせた練習もする(以後、新しい練習はまずメトロノームなしで、慣れたらメトロノームつきでを繰り返す)。右手の動きを4分にしたり3連8分にしたりシンコペにしたりウラゴーストにしたりといった練習もやる。ピック弾き/指弾きの使い分けなども試してみよう。コードチェンジの寸前の音をキッチリ伸ばせているかといったあたりにも注意する。
セーハの練習を先送りにしてきたが、セーハができれば厚い音での演奏が可能になり、また次へのステップにもなるので、ちょっとじっくりやってみよう。やり方についてはいろいろな意見があるが、筆者は6弦ミュートのBm(6弦を人差し指の先でミュートする)から始めることをオススメする。上手くいかない人は1カポでやってみよう。
上手くいかない場合、あまりムキにならず他の練習と並行してやるとか、すでに触れたように5弦の音は多少響きが足りなくても気にしないでやる(ミュート弾きになっていたとしても、弦を4本しか使わない弾き方よりは厚みが出るはず)とか、その程度の意識の方が気が楽だと思う(どうしても厚い音のBmをビシっと鳴らしたい曲があるなら話は別)。
ノーカポでも6弦ミュートのBmがイケるようになったら、3フレセーハ6弦ミュート(フォームは普通で6弦を弾かないだけ)のGをやってみて、できたら3フレセーハ全弦弾きのG、それもできたら2フレセーハのF#、最後にFをやればスムーズだろう。Fのフォームだと、1~5弦がちゃんと鳴れば6弦を足すのはそれほど難しくないはず。Fができたら、1フレセーハFルートの他のコード(F7、Fm、Fm7、Fsus4、F7sus4、Fm6あたり)も、上手くできなくてよいので体験として試してみよう。1フレセーハBbルートのフォームもキツイが、ルートは5弦なので6弦は弾かなくてよいと考えるとかなりラクになる。
なお弦のゲージや高さを変える場合、弦のテンションが低ければ低いほど、弦高が低ければ低いほどビビリが出やすくなるので、少なくとも1カポで開放弦ストロークをしてもビビリが出ない(右手にムチャなレベルの繊細さが要求されない)範囲の調整に留める必要がある。音は出るがビビリが入るという人は、右手のコントロールを見直すとともに、テンションや弦高が低すぎないかどうかチェックしよう。また、弦のテンションが低すぎるとチューニングが狂いやすくなり、左手の力加減でも音が上下しやすくなる(何事もやりすぎはよくない)。
さて、FとBmはできるようになっただろうか。なったという前提で話を進める。セーハができると厚みのあるハイコードが使えて、それだけでも表現力は増す。押さえられるコードも大幅に増えたことだろう(基本的に、5弦ルートのA or Amフォームまたは6弦ルートのE or Emフォームを平行移動するだけでほとんどのコードを押さえられる)。
さらに、セーハを覚えるとスケールを使った奏法への応用もできる。単音を使ってメロディを演奏するにはスケールの練習が欠かせない・・・のだが、もう少しコード弾きで練習をする。アルペジオに挑戦して右手を鍛えておこう。普通のピックでもサムピックでも指弾きでもよいが「狙った弦を正確な強さで、リズムを乱さずに、余計な音も出さずに鳴らす」練習をする(最終的には、ビートや音色を自由に変化させられるのが理想だが、最初から高望みしても到底ムリなので、とりあえず発音/消音のタイミングと音量が正確になるよう頑張る)。これは非常に高度な技術なので、そう簡単にはマスターできないと思う。リズムパターンやアクセント位置を変えながら根気よく取り組もう。
右手と左手がともに鍛えられたらスケールの練習に入る。最初はペンタトニックスケールを覚えるのが定石で、途中で左手が動くアルペジオのような感覚でやればできるはず。十分に練習をして、いつでも好きなときに狙った音を淀みなく出せるようになれば、ギターらしいフレーズやソロの構築に大いに役立つだろう・・・とは言ってみたものの、筆者は単音弾きがまったくできないしやる気もないので説得力がないが、どんな楽器でも単音弾きとスケールの練習は切り離せないものなので、メロディ弾きをしたい人は騙されたつもりで練習してみて欲しい。また、各種セブンスコードを覚えると表現の幅が広がるので、気分転換も兼ねてたまに試してみるとよいだろう。
余談だが、低音弦を親指で押さえる「シェイクハンド」と呼ばれる方法もある。たとえばFはこのようになる。
ただし、ネックが細く薄いギターでないと困難で、クラシックギターなどではほとんど不可能である(クラシックギターは親指で弦を押さえる奏法を最初から考慮しない作りになっている)。また、指が長い人なら5弦ルートのコードもシェイクハンドでまかなう(親指で5弦を押さえる)ことが可能。
シェイクハンドはもちろん他のコードにも使えて、一般的なローコードのGはこうだが、
別にこうしても構わない。
シェイクハンドせずに薬指or小指を余す押さえ方もあり、小指で1弦5フレの9thを入れたり、薬指で2弦3フレを押さえて3度音の重なりを解消するのに使える。
ようするに弦が押さえてあればよいのである。
2弦3フレを押さえるフォームは音がスッキリするのが特徴で、抽象化するとこんな感じ。
このフォームはG7にももちろん応用できて、
2弦を開放すると普通のG7、小指を1弦に動かすと普通のGになる。
もっと大幅に変更したフォームもあり、たとえばこれもGである。
5弦をミュートすればよい(ただし2弦3フレを押さえるやり方と併用するとPowerGになり、厚いパワーコードとして使う場合がある)と考えると押さえるのは1・6弦だけでよく、
こう解釈することもできる(6弦を小指で押さえるのはさすがに、ラップギターでもやるのでなければメリットがないと思う)。
もちろんG以外のコード、たとえばDをこんな風に押さえることもできる。
1弦で上行クリシェ(上のフォームから、中指で1弦3フレも押さえる>薬指で1弦4フレ、小指で1弦5フレと移動)をやるときに便利な方法。
ギターではセーハが出てきたが、鍵盤に出てくるのは黒鍵である。AマイナーでEを使う場面などですでに出てきてはいたが、もう少しだけ本格的に使う。
ということで、まずはCメジャーとAマイナー以外のキーでスリーコードを回してみよう。最初の項目で使ったのと同じものだが、1451を回すとこんな感じになる(このヴォイシングは、筆者の勝手な理論と感覚で配置したものであって、正式な作法とは異なる可能性が大いにある:というか、きっとどこかは違うはず)。
最初からいろいろなキーに手を出すよりは、1451が回せるようになったら1541、その次は13625、メジャーキーが終わったら平行調のマイナーキー、といった具合に1つづつこなしていった方がよいと思う。この練習の合間に、スケールの練習も適当にやっておこう(ドレミファソラシドとか、民謡系クラシックを単音で弾いてみるとか)。
通常の演奏も視野に入れるなら「あらゆる回転形での4or5度移動」を入念にやっておくとよい。たとえば、CGCGCGCGCG・・・と延々と繰り返し、CFCFCFCFCF・・・と延々と繰り返し、という練習を回転形を変えながら反復してやる。ちょっと単調で辛くなりがちなので、曲を弾く練習をしながらつっかえたところで組み込んだ方がよいかもしれない。鍵盤に限らずギターなどでも重要な練習。右手と左手を連動させるよう注意する(右手と左手を「別々に動かす」というのは誤った認識だと思う)。2度の移動で右手を大きく動かすパターン(反行)も地味に要練習。
ある程度慣れてきたら、左手でコード弾きしたり、セブンスコードを導入したり、アルペジオにしたり、オープンヴォイシングにしたり、右手でメロディを鳴らしながら左手でコードを弾いたり、とにかくいろいろ試してみよう(当然メトロノームを使い、またメトロノームがなくても正確なリズムになるよう練習する)。とくに13625のパターンをリズムやビートに変化をつけながら鳴らす練習はためになる。そして、編曲の予習編で紹介したMore Jamのコンテンツコードネームで弾こうを、実際に手を動かしながらもう1度読み返してみよう。
毎度丸投げの形になって恐縮ではあるものの、More Jamの解説はどれも素晴らしいので、地道に練習をすればきっと成果が出ると思う。
ギターや鍵盤にも増して筆者はドシロウトなのであくまで余興として。
椅子の高さは座って足が直角に曲がるくらいとか、グリップにはレギュラーとマッチドがあって云々とか、ハウスアングル(筆者は「家の屋根としてあり得るくらいの角度なら適当でよい」という意図だと勝手に解釈している)がうんたらとか、クロスアームとオープンアームがかんたらとか、その辺の話は他にいくらでも解説があるので省略。
とりあえずスローン(椅子)を「普通に座るくらい」の高さに調節(ストッパーのネジをゆるめて座面を回せば上下する:ガス式やノッチ式のもあるらしいが筆者は見たことがない)、スネアが正面・バスドラのペダルが右足、ハットのペダルが左足に来るようにセッティングする。マッチドグリップならアメリカンスタイルくらい(人差し指の第1関節~第2関節の間と親指の腹で、上からつまむように持って、中指と薬指の先をスティックに軽く添える:つまんだスティックが自由に動くように)で、クロスアーム(右手でハット、左手でスネアを叩く)にしておくと無難か。レギュラーグリップが上手くできない人は、いちどスティックを持ってからクローズリムショットの持ち方(上下反対)に反転させて、さらに戻してみると「自然な持ち方」に近くなる。人差し指と中指は叩き方によってスティックを押さえたり押さえなかったりする。
レギュラーとマッチドについて、とくに有利不利はないように思うが、ジャーマン~フレンチの間で幅を出すマッチドと指(とくに人差し指と中指)の活動度で幅を出すレギュラー、と考えても面白い。初心者にはまったく必要ない技術だが、マッチドからレギュラーへの持ち替えは指2本にスティックを跨がせて中指と薬指でスティックを挟んでから回すか、フレンチグリップ(ティンパニーグリップ)から薬指にスティックを乗せるような格好を経由すると早い(多分)。人差し指と中指の間に挟んでから回す人もいるようだ。レギュラーからマッチドは親指を潜らせてから指2本を跨がせるのが早いと思う。レギュラーグリップにするときは、スネアの打面を少し右ないし右奥に傾けると叩きやすい(フロアタムも傾ける人がいるが、大掛かりになる)。
で練習はというと、平凡にルーディメンツから入るのが多分もっとも効率がよい。当然シングルストロークからやるのだが、慣れるまでは(ストロークせずに)単発打ちだけでもよい。以下(練習方法というよりは)動きを理解するための実験の紹介をしていく。
物の本などには「強い音を出す打ち方」などと書いてあっていろいろ細かい説明もなされているが、最初に意識すべきことはスティックを「落とす」感覚だろう。極端な体験として、スネアを「棒で叩く」のではなく「スティックを持ち上げては落としてやる」つもりで鳴らしてみよう。
スローンをやや後ろにさげて、マッチドグリップでスティックをまっすぐスネアに突き出してみよう(両手でやると「前へならえ」のような格好になる)。
そこから手首だけ力を抜くとスティックが落ちてスネアが鳴るはず(あくまで実験で、この通りに演奏するわけではない)。
これが「手首(だけ)で叩く」感覚で、同様に「肘(だけ)で」叩く感覚や「肩(だけ)で叩く」感覚も体験しよう。図のスネアが微妙に大きくなったように見えるのは気のせいなので深く考えてはいけない。
連続で叩くときはリバウンドをうまく拾う。よく弾むボールを手に持って「ボールを落とす>地面で弾んだボールを掴む>同じ高さまで持ち上げる>またボールを落とす」とやるときのような感覚。
次の実験はちょっとハードなので、ドラムセットではなく電話帳か何かを使ってやろう。やはりマッチドグリップでスティックを頭上まで持ち上げてみる(和太鼓を叩くときの構えみたいな感じ)。ここから肩だけでスティックを落としていって、電話帳に当たる直前に反対の手で手首(のちょっと下)を掴んで動きを止めよう。スティックを持った方の手首の力を抜いていれば、止めずに叩いたのと大差ない大きな音が出たはずである。
これは振り子の運動で
途中につっかえ棒を入れても運動量が保存される(半径が小さくなった分角速度が増す)のと同じ現象(理由は高校の理科で習うはず)なのだが、原理はこの際どうでもよい。
ここで知っておくべきことは、強く叩きたいからといって腕を「振り抜く」必要はないということである。ドラムの演奏以外でも、バドミントンのスイングなどで活用されている。図が非常にアレだが、振り子は大きくなってなどいないし紐も伸びてはいない(きっと目の錯覚だろう)。
マッチドグリップで強さ(というかアクセント)をコントロールする際にもっとも使いやすいのは指(スティックに添えた中指と薬指の握り込み)で、リバウンドでスティックが跳ね上がりすぎる場合のコントロールもおもに指でやる。試しに、肩から手首までを固定して指のコントロールだけでストロークしてみよう。
一通り体験したら、スローンを戻してハウスアングルを作り、いろいろなテンポと強さとアクセント位置でフルストロークの練習をやる。
物の本などには「弱い音を出す打ち方」などと書いてあっていろいろ細かい説明もなされているが、理屈はそれほど難しくない。スティックを「落とす」考え方で言えば、落とし始めの位置を低くしてやれば弱い音になるはずだし、試してみると実際その通りになる(スティックを「置く」という表現も多いが、本当に置いたままにすると音色が変わるので、ちょっと試してみよう:後述のベンドと同じ効果)。
しかし演奏は恐ろしく難しい。どんな楽器でも小音量になるほどダイナミクスコントロール(同じ強さの音を連続して出したり、音の強さを任意に変えたり)が難しくなるが、ドラムスはとくに難しいのではないかと思う。基本的に、センターを外せば外すほど(ヘッドの中心ではなく端の方(多くの場合普通のショットでは奥側、オープンリムショットでは手前側)を叩くほど)響きが弱くなることを覚えておこう。PAが入る場合マイクに近いところを叩くか遠いところを叩くかという選択も出てくるが、最初は気にしなくてよい。
上手いドラマーと下手なドラマーで決定的に差が出る部分なので、根気よく取り組みたい。
スネアを強く鳴らした後低い位置にスティックを止める技である(指を上手く使おう)。何のために低く止めるのかというと、次にタップストロークをやるため。つまり強>弱と音を出したい場合に使う。
慣れてきたら、2発ワンセットにして強>弱で音を出してみよう。2発目の強さを変えることで、フルストロークに近いダウンストローク(強>弱ではなく強>中くらい)なども試しておく。
ついでなので、スネアを鳴らした後スティックをヘッド(スネアの叩く部分)に押し付けるベンド打ちもやってみよう。ちょっとクセの強いアクセントのある音色になったと思う。
ダウンストロークの反対で、スネアを弱く鳴らした後高い位置にスティックを持っていく技である。これはちょっと意識の仕方が違う。
フルストロークのところでやった実験をまたやってみよう。弱い音を出したいので低い位置から始める。
ここから手首の力を抜きつつ同時に手首の付け根あたりを持ち上げる。
・・・申し訳ない、図を作るのが面倒になってしまった(だって斜めなんだもの:回転加工ができるのは知っているが使ったことがないので覚えたくない)。とにかく「手首の付け根を持ち上げた反動で勝手にスティックの先が下がって」スネアが鳴ったはずである(手首にガッチリ力をいれていなければ)。
ここで知っておきたいのは「手首をリラックスさせて手首の付け根を持ち上げるとスティックの先が勝手にスネアにぶつかる」ということ。なぜ重要かというと、アクセントが混じった素早い連打に必要だからである。
当たり前の話だが、強い音を出すためにはスティックを大きく動かさなければならない。しかし素早い連打中にそれをやると、どうしても「大きな音ほど遅れる」ことになる。ので「大きな音を出すための動作」をできるだけ「前倒し」してやるのである。
これも、慣れてきたら2発ワンセットにして弱>強で音を出してみる。どう頑張っても強>弱のときほど素早く連打できないはずだが、当たり前のことなので気にしなくてよい。後ろの音を大きくすればするほど連打は難しくなる(よく覚えておこう)。2発目の強さをいろいろ変えながら素早い連打を試してみよう。
どうということはなく、ダウンストロークとアップストロークを交互に繰り返すだけである。強>弱>強>弱>強>・・・がダウンアップで弱>強>弱>強>弱>・・・がアップダウンだが、名称にはあまりこだわらなくてよい(両方アップダウンと呼ぶ人もいる)。正確なタイミングと強弱で続けるのは相当難しいが、基本技術なので頑張って練習したい。
ここまではスネアだけにしか触れてこなかったが、ダウンアップをシンバル(とくにハイハット)でやると面白い効果がある。が、その前にシンバルの鳴らし方にちょっと触れておかなければならない。
図についてはRGW オンラインドラム講座(ルーディメンツの解説もたいへん親切)のようなもっとキレイな図を掲載しているサイトを見てもらうとして、スティックの先っちょをチップ(スネアは普通ここで叩く:別にスティックの尻で叩いてダメなわけではない(バックスティックと呼ばれる)が、初心者がムリにやる必要はない)、先っちょ近くのやや細い部分をショルダーと呼ぶ。シンバルは、中心の盛り上がったところがカップまたはベル、端の部分がエッジ、平らな部分の内側寄りがライドエリア、平らな部分の外側寄りがクラッシュエリアと呼ばれる(ライドエリアとクラッシュエリアを総称してボウと呼ぶこともある)。
で、エッジをショルダーで叩くのをクラッシュ、ライドエリアやクラッシュエリアをチップで叩くのをピン、カップをチップで叩くのをカップという(用語に混乱があるが慣例なので仕方ない:エッジをチップで叩いたりライドエリアをショルダーで叩いたりできないわけではないが、初心者がムリに挑戦する必要はない)。左手でハイハットをミュートしながら、左スティック(音色的には上下逆さがよいが、マッチドグリップから急いでやる場合はチップがある側を使うこともある)でハイハットの裏(というか下側のシンバル)を鳴らすこともある(もとはJazzの技)。普通のドラムセットではハイハットでしかできないが、シンバル同士を(ペダル操作で)打ち鳴らすのはペダルスプラッシュとかペダルクラッシュという。
同じクラッシュ打ちでも角度(スティックを立てる/寝かせる)や打点(スティックのチップに近い位置/遠い位置)で音が変わるしピンも叩く場所(内側/外側)や角度で音が変わる。ただし、シンバルを真横から叩くと簡単に割れるので、壊れてもよい自前のシンバル以外ではやってはいけない。ハイハットクローズで刻む場合、ロックなどではパワー感のあるクラッシュ打ち(「ジッ」という音)が、Jazzなどでは繊細な響きの出るピン打ち(「チン」という音)が好まれるが、場面ごとに使い分けることも多い。変りダネでベンドすることもなくはない(ベル打ちならライドなどでも可能だが、シンバルが固定されているハットの方がやりやすい)。ちなみにクラッシュシンバルでピン音を出したりライドシンバルでクラッシュ音を出したりしても別に問題はない(代表的な用途が名前になっているだけ)。
さて話を戻そう。アップストロークをやると(叩き方によって程度の差はあるが)スティックの先が下がるため、スティックのショルダーではなくチップがシンバルに当たってピン音になることがある(ダウンストロークでチップがギリギリ当たらない角度にセッティングしておけば簡単にできる:ハットの場合は普通水平に置くので、高さで調整する)。これを刻みシンバルでやると、弱い音と強い音で音色が変わって独特な効果が出る。ぜひ必要な技ではないが面白いので試してみよう。
4種類のストロークを十分練習したら、当然ではあるが、全部をゴチャゴチャに混ぜてみる。テンポをキープしたまま(無視すると意味がない)自在な強さで叩けることを目標にやる。できるようになったらテンポを上げていき、また演奏中にテンポを(正確に)上げ下げするのも試してみよう。
ルーディメンツの話(シングルストロークしか紹介していないが)はとりあえずこれまで。
まずはすでに紹介したセンター外し。ドラムは真ん中近く(ど真ん中だとかえって響かないが、意識して外さなくても、そうど真ん中には当たらない)を叩くともっともよく響くことになっているが、それをあえて外してやる。当然音量が稼ぎにくくなり、だんだん甲高い音になるはず。
オープンリムショット(単にリムショットとか「リムをかける」とも)。演奏上はスネアを叩くときにリム(ふち)も一緒に叩く感覚だが、音的にはリムが鳴っているのではなく、リムでスティックが加速されて倍音が消えにくくなるだけ(ギターのハーモニクスみたいなイメージが近いか)。パタンと倒すようにヒットさせるリム先(手首がリラックスしていないとヘッドの音が出ない)とスティックの尻を沈めるようにするリム後(オーバーアクションだと妙な音になる)があるが、どちらも意識としてはリムとヘッドの同時打ち。アクセントのある音になる。スネアだけでなくタムでもやり、リムをかける深さ(リムに当てる強さ)で音色が変わるほかセンター外しと併用することもある。
クローズリムショット(クロススティック、サイドスティックとも:単にリムショットと言ってこちらを指す人もいる)。スティックを上下逆さに持ち、スネアのヘッドにチップを置いて、そのままリムを叩く。これも音的にはスティックの振動をヘッドが(音響インピーダンス変換で)放出しており、リム自体が鳴っているのとは少し異なる。マッチドグリップの人で持ち替えの時間がない場合はスティックの尻をヘッドに置いても仕方ないが、響きはちょっと劣る。スティックを置く場所や手ミュート(ヘッドに触る)の有無でかなり音色が変わる。また指でスネアを叩いてゴーストを入れることもできる(というか元祖ゴーストノートはこれ)。
スナッピーオフ。スナッピーが何のことなのかや操作の方法は誰か他の人に聞いて欲しい。スナッピーをオフにすると「ポン」という独特な音になる(しいていえばハイタムに似ているが、胴が浅く裏ヘッドが薄いのでイメージはけっこう違う)。2009年現在ポピュラーミュージックでこの音自体を使うことは少ないが、面白い音には違いない。1980年代くらいまでのライブ音源などでは、表(上)からのマイクだけを使うことが多く、スナッピーオンとオフの中間のような音になっているものがけっこうある。
わりと大雑把な紹介をしたが、マーチングなどスネアの奏法にこだわる分野では、センター外しのオープンリムショットをピンショット/真ん中打ちのオープンリムショットをゴッグショット、クローズリムショットをリムノック/リムタップ/リムクリック、クローズリムショット状態でスティックを叩くのをスティックショット、リムだけ叩くのをon Rimなどと呼び分けることがある。ジャンルや流派や地域によって呼称や定義が微妙に違い、スティックショットがヘッドをベンドしたような状態からスティックを打ち合う音だったり(その場合リムにも触れるのはコースタイル スティックショットと呼ぶ)、クロススティックがスティック同士を打ち合う音だったりする。
まとまったパターンをやる前にセッティングの話。諸説あってどれがいいとは言えないが、知っておいたほうがよいことがいくつかある。
高さと角度:基本的に、タイコはリムショットとノーマルショットが自然に使い分けられるように、シンバルはピン打ちメインかクラッシュ打ちメインかを考えてセッティングすべきだろう。
ワンバスがラク:これは理屈で考えなくてもわかるだろうが、バスドラムが2つもあると置き場所的にかなり大変である。ラックが使える場合スペースの問題は緩和されるが「常用する低音マイクが1本増える」ことはPAやレコーディングをかなり窮屈にする(とくにPA)。ラックが使えてかつ生音のライブ演奏orオフマイク一発ならあまり気にしなくていいのかもしれない。ワンバスのままバスドラム用ペダルを2本使いたい場合はツインペダルを使う。
ライドとクラッシュに明確な区別はない:単純に、厚みがあるものをライド用に、薄いものをクラッシュ用に使うことが「多い」だけ。ちなみに、カップの部分が非常に大きいものをベルシンバル、エッジが反り返ったものをチャイナシンバル、非常に小型のものをスプラッシュシンバルなどと呼ぶ(変り種のシンバルをイフェクトシンバルと総称することもある)。また、クラッシュエリアのあたりに鋲(リベット)を打ったものをシズルシンバルというが、普通のシンバルにチェーンなど(シズラーとかラトラーなどと呼ばれる)を垂らして代用することもある。
ライドとクラッシュの数と位置:ライドはもともとバスドラムの上にセットしていたシンバル(だからrideと呼ぶ)で、その位置だとやはり刻みやすい。このため、いわゆる4点セットから右タムを外して、代わりにライドを立てることがある(有名人ではBonzoがこのセッティング)。Bernard Purdieなんかは、タムを2発(ただしこの人は左がロータムで右がハイタム:左ハイ右ローにする人が多いが、好みの問題もあり決まってはいない)セットしたうえで左のシンバルをクラッシュライドのように使っている(パーディの場合、モノとしてはライドっぽい)。クラッシュはハットの右隣が普通だが、右の方にもう1枚あるとタム回しからすぐ叩きたい場合に便利。
シンバルの高さはPAの都合にもよる:ライブなどでPAを通す場合、シンバルを非常に高い位置にセットすることがある。これは天井近くに設置したオーバーヘッドと呼ばれるマイクにシンバルの音を強く入れたいから(単純にその方が叩きやすい人もいるかもしれない)。その場合、ハイハットは極端な高さにセットしにくいため、別途マイクを立てることが多い。PAの方法やハコの特性や担当者の考え方によってマチマチなので、ライブをやるならできるだけ早い段階で情報を仕入れておいた方がよいだろう。レコーディングの場合はある程度融通が利くことが多い。
なお、ドラムスティックはほとんどのモノが木でできているので、向きも気にして使った方がよい。基本的には「上から見たとき木目が線になる」向きだと折れにくく、たいていの場合はこれでよいと思う。いっぽう「上から見たとき木目が面になる」向きだと、スティックが痛みやすい反面「しなり」を大きくできるため、演奏フィールとしてそちらが好きなのであればダメな使い方ではない。
単発の話ばかりだったので最後に8ビートを。ハイハットクローズを8分音符(1拍に2回)、バスドラムを1拍めと3拍めに、スネアドラムを2拍めと4拍めに打つ。音を出すこと自体はちょっと慣れればできると思うが、正確にやるのはかなり難しいし、ノリまで出すのはとんでもなく難しい。それだけだと話が終わってしまうので、練習を重ねて「均等打ちなら無意識に叩ける」くらいまで上達したとしよう。そうしたら今度は変化をつける。
まずはハット。アクセントを入れたりタップ(またはアップ)ストロークに変えたりダウンアップで裏拍を弱くしたり空振り(休符)を入れたり音色を変えたり、まあとにかく考え付く限りのニュアンス出しを試してみる。ハットのシンコペーション(ダウンアップでなくアップダウンで叩く)は意外と難しい。変化を入れたときにリズムがヨレる場合は均等打ちの練習が足りないのだと思う。
つぎにバスドラ。ハットはとりあえず均等打ちに戻してから試す。音を増やしたり(4拍めの裏にも踏むとか)動かしたり(3拍めのオモテに踏んでいたのを半拍前にズラして2拍めウラにするとか)ベンド踏み(押し付けるようにペダルを踏みっぱなす)したりゴースト(ごく弱い音)を入れたりしてみる。ダイナミクス(強弱の付け方)が意外なほど難しい。
いよいよスネア。やはりハットとバスドラは均等打ちに戻しておく。オープンリムショットやセンター外しやベンド打ちを試すほか、アクセントのスネアだけ微妙にタイミングを変えてみる(この辺の話はリズムとビートについてのページで詳しく触れた)。
また戻ってハット。ハーフオープン(ペダルの踏み方を微妙に浅くする)を試そう。一番最初は4拍めのウラをハーフオープンに変えるのがラクで「両足のペダルを同時に踏む」動作でやると自然にやれると思う。実際には、ペダルを上げるタイミング(叩く寸前/叩いた瞬間/叩いた直後)と上げ幅までコントロールしてやらないとちゃんとした音が出ないので、慣れたらキッチリ意識してやる。
これでだいたい一通りの変化をなぞったので、今度は演奏しながらの変化をやってみる。たとえば均等打ち>ハットシンコペ>均等打ち>ハットシンコペ>・・・と切り替えたり、ノーマル打ち>スネアリムショット>ノーマル打ち>スネアベンド打ち>・・・と切り替えたりする。ガッチリ上達したら変化の組み合わせもやろう。ハット1拍めウラ空振り+バスドラ4拍めウラ追加+スネアベンド打ちとか、ハットシンコペ&3拍めアタマオープン+バスドラ1拍めベンド&4拍めウラ追加+スネアちょい遅&ベンド打ちとか。最終的には演奏しながらすべてのパートを自在に変化させられるようにするのが目標。
筆者自身がド初心者なうえに感覚的な言い方しかできないのだが、ドラムの演奏というのはノートを「点に分けてから線に繋ぐ」ようなイメージがある。8ビートなら8回の動作、シャッフルなら12回の動作、16ビートなら16回の動作をそれぞれまず確認して、それが「一連の」動作になるよう練習していって、パターンがパーツになって、意識下と無意識下の領域で出し入れができるようになって、曲が線(いわゆるリニアドラミング(ユニゾンなしの演奏)の話ではなく)で認識されて、線がループを作って円になって・・・といったプロセスがあるような気がする。
上記はあくまで技術的に音をなぞるために必要な練習で、ノリやグルーヴを出すためには多分もう一押し必要なのだと思うが、じゃあ何をやればいいのと聞かれると筆者としては返答に困る(なにしろ素人以前の腕前だし)。
ただこれだけは言えるが、自分の膝を叩いて(別に手拍子でもいいけど)ノリを出せない人はドラムセットを使ってもノリは出せない。またドラマーがノっていなのに他の演奏者や観客がノることはない。それから、ベーシストとは仲良くしよう。
それだけ気に留めておくだけでも、なにかの足しにはなるのではないかと思う。
筆者は「触ったことがある」だけのレベルなので、余興以前のヨタ話程度に。
右手は、フィンガーピッキング(親指はミュート専用にすることが多い)、ピック(ベース用と称しているものにはゴツいものが多いが、ギター用のものも普通に使える)、親指弾き(ピックを持たずにブリッジミュートしながら弾こうとすると自然とこの形になる)あたりが主流。ピックを持たない場合はスラップ系の弾き方も加わる。左手については親指が薬指あたりをサポートする(結果的に先がブリッジ側を向くことが多い)ように、フィンガーピッキングの右手では第3関節を有効利用するようにということがよく言われる。
単音弾きがメインで4度調弦ということは、フレットを4つカバーすれば開放弦を足してクロマチックな動きができるわけだが、ローポジションでは薬指を小指に添えて1つのフレットを押さえる(結果的に守備範囲が3フレットになるので(主に人差し指の)素早いスライドを併用する)人もいる(ウッドベース由来の弾き方だそうな)。フレット4つカバーでも開放弦を使わないとスキマができるが、メジャースケールなら4弦中指~2弦小指または3弦中指~1弦小指で、マイナースケールなら4弦小指~1弦人差し指で1オクターブをカバーできる(ハーモニックマイナーの減7度は1弦人差し指のスライドで出すことになる)。
フィンガーピッキングについてもう少し。そもそもの話をすると、もっとも音色やリズムが安定する(同じ音を任意間隔で出しやすい)のはワンフィンガーピッキング(普通人差し指を使う)で、ウッドベースも弾く人などがやっていることがある。レイキング(人差し指)主体のツーフィンガーピッキングでは、高音側への弦移動時のみオルタネートさせる(普通中指で弾く)。中指が人差し指よりも1つ高音側の弦に触れるように構えることが多い。もちろんオルタネート主体のツーフィンガーピッキングもあり、細かい音符が多い場合に有効。手首の甲をネック側に入れて人差し指と中指が同じ弦に触れるように構えることが多い。
ベースはギターと違って完全な4度調弦になっている。これを利用すると「ルート弾き」がラクにできる。たとえば3弦(A弦)を中心に見るとこうなのだが、
キーによってはもっと便利になる(ちなみに、ギターと比べて図が投げやりに思えるのは気のせいである)。
Gメジャー/Eマイナーの場合はこんな感じ(左端は開放弦なので実際には指で押さえない)。
開放弦と、3弦(A弦)と4弦(E弦)の2フレと3フレしか使わずにスケールの音がそろう。
Cメジャー/Aマイナーだとこんな感じ。
Fがちょっと高くなるが3フレ/開放の使い分けとメジャー/マイナーの使い分けが一致する。
エレキベースはミュートやピッキングに敏感な楽器で、指を他の弦に「当てて止める」感じのアポヤンドでアタック感を補強したり、弦を右手で叩く感じ(スラッピングほど大げさにではなく、控えめなタンボーラくらいのイメージ)のミュートやピックミュート(ピックで弦に触れる)でリリース際を強調したり、左手ミュート(開放弦の場合適当な場所で弦に触れるが、ある程度ナットに近い方がよいような気がする)で曖昧にリリースさせたり、ブリッジミュート(パームミュート)で音色やサステインを変えたり、スラッピングやプラッキングでアクセントをつけたり、指と親指とピックを使い分けたり、左手がフレットを押さえるタイミングや強さを変えたり(ハンマリングとプリング含む)、といった表現が豊富にある。
この辺の表現力を鍛えればルート弾きオンリーでもけっこうイケるんじゃないか、と素人考えに思う。レイキング主体のツーフィンガーピッキングだと右手の使い方にミュートが最初から織り込まれている(人差し指で弾くとして、高音側の弦は中指で、低音側の弦はアポヤンドの際に、もっと低音側の弦は親指でミュートできる)が、その辺も「ベースの基本」と言われる理由の1つなのではないかと思う。音価の意識が大切だと言われることが多いが、鳴らし始めから鳴らし終わりまでの経過(エンベロープと音色)をキッチリコントロールしてやる必要があるのだろう。