G1N


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<この記事は書きかけです>

ZOOMのG1Nについて。出音については音声サンプルのページを、設定についてはオマケを、他の機器と組み合わせた活用例についてはギターイフェクト総合を参照。

重要な情報
この記事は筆者が2011年10月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。

基本性能が高い

音声入出力の品質が非常に高い。ノイズの少なさでいうと、メーカーのサイトに「S/N比110dB、ノイズフロア-98dBm」とあり、dBmの基準(多分600Ωではないんじゃないかと思う)がわからないものの、もし-98dbm@600Ω系≒-92dbu≒16μV@開放端の意なら、1MΩの抵抗1つが摂氏27度で20~20000Hzの帯域に生じるヒートノイズ≒18μV@開放端よりもやや小さい値で、これ以上頑張ってもほぼ無意味だと思われる(G1Nが採用している470KΩの入力でも、-100dbmくらいが物理的な限界になる:上位機種は1MΩの入力で「ノイズフロア:−100dBm」を謳っているが、どうやっているのか筆者にはわからない)。周波数レンジも「20Hz~40kHz+1.0dB/−4.0dB(10kΩ負荷時)」と無駄なほど広い。

カタログスペックでの定格入力レベルが「-20dBm」で、多分4dbuくらいでクリップ(未確認)。最大出力レベルは「ライン +3dBm(出力負荷インピーダンス 10k Ω以上時)」と「フォン 20mW+20mW(負荷 32 Ω時)」なので普通にラインorヘッドフォンレベル。アンプシミュレータのキャラもやたら素直で、大入力小ドライブと小入力大ドライブでキャラが変わる(後者の方が歪む)ため、前段に別のクリーンアンプを置いてクランチ(嘘クリーンアンドラウド)を作るといい感じ(というか筆者の手元ではその用途がメイン)。普通に使う分には、楽器の出力に近いレベルで入れてやってG1N本体orそれ以降で増幅すれば問題ない。

上位機種と比べると、細かいパラメータ設定ができない仕様になっている。しかしぶっちゃけ、筆者のような設定マニア(だと自分では思う)でも「パラメータが足りない」とは感じないし、実用上の支障にはならないのではないかと思う。あえて挙げるとすれば「飛び道具は撃てない」というくらいだろう(とびきりに「変な音」を出したい場合は、イジれるパラメータが多ければ多いほど、極端な値を受け付けてくれればくれるほどよい)。キャビネットシミュレータの数が多くないのは、筆者のように細かい音色作りをチマチマやるのが大好きな人にしか問題にならないだろう。PANDORA miniまたはPX5Dと併用すると、いい感じに相互補完できる。

パソコンと併用する入門機として見ると、上位機種であるG1uの方が便利そうではある。パソコンで伴奏を再生しながら練習するにはたとえば、ミキサー(どのみち必要になるだろうとは思うけど)を用意する、G1Nの出力をPCスピーカ(エレコムのMS-130のような、PC入力のほかに外部入力とヘッドフォン出力があるもの:入力数が足りればラジカセやコンポでもよい)にいったん入れる、G1Nの出力をパソコンのライン入力に入れてしまう(サウンドドライバの設定が必要)、といった感じで何かしらの工夫が必要になる(ミキサーさえ持っていれば問題にならないが)。

全体として「80%の人はこれだけしか使わない」という機能を無難に揃えてある印象。もちろん、利便性の面ではパソコンから設定などができる上位機種の方がよいだろうが、音の出入りに関する部分に手抜きがないあたり、ZOOMの真面目さが出ていると思う(ちなみに筆者は、ソフトウェアプラグインのデモ版にノイズを入れるメーカーが大嫌いである:賞味期限を3日間にしようが起動のたびに15分待たせようがメーカーの勝手だが、音を作る人間が音をぶちこわす機能を盛り込むなんてのは、正気の沙汰ではない)。

余談だが、オマケのリズムマシンまで抜かりなく無難性能を備えており、小節のアタマをキッチリとアピールしながら出しゃばらずに刻んでくれて実用度が高い(最後の方に入っているアクセント付きのメトロノームも便利:クネクネしたリズムを詰め込むことに夢中でそういうトコロをきれいサッパリ忘れていらっしゃるKORGさんも筆者は好きだが、練習にはG1Nのリズムマシンを使っている)。

筆者の手元の機種と比べてみると

他のアンプシミュレータが不得手にしているクランチサウンド(弱く弾くとクリーンっぽい音、強く弾くとドライブっぽい音、中間だと微妙に歪んだ音になる設定)が得意、というか比較的苦手でない。実機のチューブアンプに迫る音だとは思わないが、少なくとも、音量が上がると唐突にチリチリと歪む現象があまり目立たない。前段のブースター(という名前だがチューブスクリーマーに近い効果)やコンプが積極的に音を変える仕様なのが功を奏したようだ(たとえばTO800+PANDORA miniの構成で頑張るのと比べて、単機で運用できるのがラク:だが、音色が好みなので筆者はTO800を使っている)。

アンプモデルは「これはこの用途に使う」という部分をけっこう意識している印象で「弾き方を変えるときはパッチも変える」運用の方がフィットしそうな印象。たとえばクリーン音色では、単体でクセなく鳴るfd、脇役的に使うと抜群に扱いやすいzc、コーラスが映えるhwといった住み分けを感じさせる。ドライブ音色も、たとえば単音弾きとパワーコードとコード回しでアンプモデルを変えるなどすると使いやすいと思う(pvモデルは例外的に万能)。旧機種のG1だが、YouTubeでパッチを公開している人たちもいる。メーカーの売り文句にもあるとおり、パッチの切り替えは素早い。

PANDORA miniがアンプとキャビネットに力を入れているのに対して、G1Nは単機完結を重視しているように思える。また限界まで太らせたクリーントーンやベキベキに潰したドライブトーンを集中的に磨き上げたGDI21との比較だと、目的の音が最初から決まっているかどうかで使い勝手の評価がかなり異なりそう。

設定はPANDORA miniと比べるとやや鈍臭くなる(タイトルを入力できないのでどこに何が入っているのかメモor記憶しておかなければならないし、パソコンからの設定もできない)が、いったん記録してしまえばフットスイッチで呼び出せるし、1バンク10パッチの構成も気が利いている。

使いどころ

もっとも活躍できそうなのは、やはりミキサーなしの直結単機運用が必要な場合だろう。ローエンドにはこれが(「可能な」機種はけっこうあるが、筆者が知る限り)得意な機種が少ないので、貴重な選択肢になる。とくに出先で使う場合、ミキサーの有無はおろか電源の確保にも気を使わなくて済む(PANDORA miniやGDI21も電池駆動はできるが、筆者がミキサーなしで使うなら、G1Nを持っていきたい)。追記:後から仕入れたPX5Dがけっこう優秀でサイズが圧倒的に小さいため、筆者の手元では無条件チョイスではなくなった。

ただし出力が1つしかないので、ヘッドフォンでモニタしながら(PAスピーカがあるような環境ならミキサーも多分あるだろうからよいとして)ポータブルスピーカからも音を出すような使い方をするには、やはりミキサー(またはスプリッターやディストリビューター)が必要になる。裏技として、ステレオ出力をインサーションケーブルでスプリットしてモノ2本にする(モノ入力可能な機器か、モノラルイヤフォンなどを使う)案もあるが、筆者は試したことがない。

G1Nとギター本体とヘッドフォンだけあればたいていの演奏や練習ができるし、他の機材を買い足すときにも「トガった機種」を敬遠しなくて済む(苦手な分野をG1Nでフォローできる)ため、入門用にも適しているだろう。筆者の手元でも、アンプ部分はGDI21、キャビネット部分はPANDORA miniがメインで、G1Nは変調系(嬉しいことにコーラスイフェクトの出来がよく、CとEの使い分けでプリドライブでもポストドライブでもクリーントーンでも対応できる)などのサポート役に回っている。筆者の手元で出ている音については音声サンプルのページを参照。

機材が揃ったら出先用以外の出番がなくなるかというと、そういう場合もあるだろうが道具は使いようで、マルチ>マルチ接続での「1台目のマルチ」としても有用である。アウトプットの許容負荷インピーダンスが幅広く(先に引いた説明書の記述を見る限り、少なくとも「32Ω」と「10kΩ」には対応しているはず)、一通りのことが無難にできるため利便性が高い(エクスプレッションペダル対応なのもありがたい)。筆者(GDI21を使っている)のように初段がクリーンアンプとしても機能する構成なら、クリーン>チューブスクリーマー>クリーンのシーケンスで許容入力ギリギリの音量を突っ込みクランチを作る用途にも使える。

本格的に機材が増えマルチが3台も4台も転がっている環境になれば、イフェクタとしての出番はさすがに減るだろうが、ギターの本数も多分増えているだろうから、初段に置いてプリアンプ兼プリドライブコーラス兼チューナーとして活躍してもらおう(急がば回れのエレキギターの扱い方のページで触れているが、ハードウェアで複雑なルーティングをする場合、DIなりプリアンプなりを最初に噛ましておくのが無難である)。アンプモデルのzcは意外な盲点で、クリスタルクリーンにわずかな歪みを加えただけの音が出るのだが、ペダルで音を作ってクリーンチャンネルに出す用途やチューブ風のプリアンプとして使える(手元では、この便利さに負けてMIC200がほぼ引退状態になった)。もちろん、高いレベルで入れてゲインも上げればある程度効きを強調できる。筆者はあまり使わないイフェクトだがコンプもごく普通で、プリドライブでかけたい場合に都合がよい。

DIも専用機を仕入れて本当に出番がなくなったら、余ったギターとセットにして誰かにプレゼントするか、後ろの方に置いてクリッカーとして余生を送らせてあげよう(ドライブアンプよりは後ろにしないとクリックがオーバードライブされる)。パイパスにしてもリズムマシンの起動と停止は可能で、マスターボリュームも効く(設定変更はモードを抜けないとできない)。

まあわからなくもない話

プリセットには面白い音も入っているが、ゲート(ZNR)の設定がキツすぎて、筆者の手元のギター(レスポールもどきとSGもどき)ではフルテンでもヴァイオリン奏法のようになりマトモに使えなかった(ただし筆者は自宅だと弱いピッキングの指弾きばかりなので、弾き方にもかなり問題がある:ピックでカリっと弾いてやれば、アタックはそんなに気にならない)。

ゲートオフでもノイズレベルはかなり低く、あんなにガッチリ閉めなくてもよさそうなものだが、多分、自分で「入れた」ノイズで大騒ぎする皆さんに気を使ってのことだろうと思う(良識のある人向けに、マニュアルに「ZNRの設定は見直してね」と書いてあるが、ちょっとメンドクサイ)。

そういえばEQもかなり激しいカーブ。初心者向けに細かい調整よりも大雑把な設定を重視しているのか、「効きが悪い」とか「音が変わらない」などと謗られるのが嫌だったのかわからないが、まあEQぐらい他でかければよいだけなので実用上の害はない(変調系の前でかけたいことがないではないだろうが、レアケースだと思う)。

リバーブがカラオケエコーっぽいのもアレといえばアレだが、それで不満な皆さんはギターアンプに繋いで実機のスプリングリバーブを使うか、ミキサーより後ろでかけなさいと、きっとそういうことなのだろう。

単体での使い勝手

アンプモデルでは、fd、vx、bl、bg、mc、zm、zn(以上高めのゲインで、bキャビネットを必要に応じて追加、場合によりブースターも有効にする:マーシャルはリアで使うなら定番のcキャビネットでもよいと思う)、zc(ゲイン全開でbキャビネットとコーラスを併用)、hw(高めのゲインでsキャビネットとコーラスを併用)、nd、pv(以上高めのゲインで、sキャビネットを必要に応じて追加)、bd(高めのゲイン)、ed(ゲイン低め~全開、キャビネットはお好みであってもなくても)あたりが使いやすい。

とくに筆者好みなのは、ツイン(fd)のクリーン、オリジナルクリーン(zc)のコーラス、マーシャル系(mcやmdやzm)のクランチ、5150(pv)のドライブ、エクストリーム(ed)のフルテンなど。単体運用はあまりしていない(チューブアンプが使える場所に行くときは単体のオーバードライブペダルを持っていくし、使えない場所に行くときはポータブルアンプへの直結で済ませてしまうことが多い)のでプリセットに入れていないものもあるが、どれも出音は悪くない。

すでに触れたように、変調系や空間系もごく普通な出音で、ヘタな自己主張がなく気軽に使える。どうせ凝ったことをやるならラックでかけた方が早いわけで、フロアイフェクタに必要な水準は十分にクリアしていると思う。筆者がピンとこなかったのはすでに触れたリバーブくらい(ただしroomだけは無難にかかる)。これもすでに触れたが、ブースターはチューブスクリーマーっぽい効きで、穏やかな変化を手軽につけられる。

ちょっとした注意

インプット端子にプラグを接続すると電源が入る仕様でスイッチはない。プラグは、L字のものよりもストレートのものを使った方が安心かもしれない(当然だが、G1Nに接続する側がストレートならよいわけで、ギター側はL字でもまったく問題ない)。なお、ステレオプラグだと反応しないことが多いので一応覚えておきたい。

クリーントーンは音量感のわりにピーク音量が大きい(そのような傾向は一般的なものだが、ギャップがとくに大きいと思う)。録音したりパソコンに取り込んだりする場合は、接続先でクリップしないよう注意した方がよいだろう。とくに、クリーントーンに「チリチリしたノイズ」が乗ったら音量オーバーを疑った方がよい。

マスターボリュームは電源再投入で80にリセットされる。ヘッドフォン利用でなければ常に80でも支障ないが、一応覚えておきたい。

パッチ切り替え直後はエクスプレッションペダルの位置に関わらず元の設定値が適用されており、ペダルを動かすと位置がパラメータに反映されるようになる。たとえばペダルを割り当てた変調系にC5を設定して、ペダルを全閉にしたままパッチを選びゆっくり踏み込むと、C5>C1~C9のようにパラメータが変化する。音量も同様。

設定のバックアップ(というかメモ)は取っておいた方が無難。

筆者が探した限り、公式な資料にブロックダイアグラム的なものは見当たらなかった。本体のダイヤルでも、本家サイトのEFFECT LISTでも、COMP / EFX、DRIVE、EQ、ZNR / AMP、MODULATION、DELAY、REVERBと並んでいるので、多分この順番なのだろうと思う(未確認だが、まあ普通の並び)。

ACアダプタは別売で「純正品以外使うな」という注意書きがあるので必要な人は購入しよう。またエクスプレッションペダル(これも別売:見ればわかるが、フットスイッチは本体に付いている)があるとけっこう機能が増える。

オマケ

一応示しておきたい情報
以下はあくまで筆者の所有するギターに合わせた設定で、とくに、ゲインレベルはピックアップの出力に、EQなどはギターの鳴りやピックアップのキャラに合わせて、それぞれ調整の必要がある。

例によって筆者のセッティングを公開。いづれもダブルコイルのギターをフルテンにして直結、フロント(ネック側)とリア(ブリッジ側)両方のピックアップを使う前提(基本はフロント)。Gシリーズなら他機種でも似たような設定で似たような音が出ると思う(上位機種は設定がより細かくなっているようだが、G1Nと同じ音が出せないとも思えないので)。

まずは基本設定。PATCH LEVEL、COMP/EFX、DRIVE、GAIN、EQの順。
クリーン1:90、--、zc、30、--、--、--
クリーン2:80、--、fd、20、--、--、--
クリーン3:70、b1、hw、30、+1、0、+1
クランチ1:50、--、md、05、--、--、--
クランチ2:50、c1、mc、15、-1、0、0
ドライブ1:10、b9、zm、20、+1、0、0
ドライブ2:10、b7、pv、25、+4、-1、-2
ドライブ3:02、--、ed、30、+3、0、-1
アコギシミュ:100、--、ac、8、6、2、0
これをコピーしては微調整したり追加イフェクトをかけたりしている。

変調系もけっこう楽しい。筆者がクリーンにかけているのはC3の10とかE5の5とか。歪みにかけているのはF5の5とかE7の5~10とか。アコギシミュレータにかけているのはC7の10~15とかE5~9の5~10とか。ゲート(ZNR)はほとんど使わず、キャビネットシミュレータが欲しいときははおもに外部でかけている。

筆者は変調系だけ使うことも多いので、Cは25のEは15でレートを固定し、プリセットのD1~D6をC1、E1、C5、E5、C9、E9と単品コーラスで埋め、さらにペダルも割り当てている。1~2くらいの薄いコーラスはけっこう便利で、コンプも単品C1~C3くらいを用意すると便利かもしれない(筆者はコンプをあまり使わないのでそこまではやっていない)。

リバーブは(レベルを全開にした状態で)先にディケイを決めた方がラクだと思う。ホールとアリーナは1で固定、スプリングは10まで、ルームは上限なし。そのうえで、アリーナは5(せいぜい7)まで、ルームはセンドとディケイの掛け算で100まで、スプリングはセンドとディケイの合計で8(せいぜい10)までを上限に。コーラスやショートディレイなどを入れる場合は控えめにする。

すでに何度か触れたちょっと変わった使い方として、入力音量に対する反応が素直なので、クリーンアンプの音を大きな音量で入れてやるとブルースクランチ(クリーンアンドラウド)っぽい音色を作れる(GDI21のクリーントーンをTO800で歪ませて、音量を上げてからG1Nに入るといい感じ:筆者が使っているのは上記のクリーン2または3と同じ設定)。



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