買い物関連で思うこと


単に筆者がよく思うことを列挙しただけの無益情報。

欲しいなら買っちゃえって

酷い見出しだがまんまその通りである。だいたい「~が気になるんだけどアレってどんなモン?」なんて聞く人は最初からそのブツが欲しいわけで、だったらさっさと手に入れて喜ぶなり怒るなり哀しむなり楽しむなり、自前でやってみるのがいちばん早い。他人の話で自分の使用感を予知できるなら誰も苦労しない

ただ、大金を使う前に試すチャンスがあるのなら、試した方がきっと無難だろう。メジャーな楽器はたいていレンタルがあるし、都会なら編集機材なども扱っているところがある。

なんでコダワルの?

これも見出しの通りなのだが、妙なところにこだわる人が多いような気がする。たとえば電子楽器の標準鍵盤。なぜ(当人にとって)そんなモノが重要なのか、筆者には理解できないことがある(ギターだとショートスケールやスリムネックがやたらと持ち上げられるのにね)。もちろん、普段アコピを弾いていて同じ感覚で扱いたいとか、ピアノの練習用(=アコピの代用)に欲しいとか、そういう具体的な需要があるのならわかる。が、そうでなければこだわる理由がないように思えてならない(「標準」という言葉の魔力なんだろうか)。

だいたいピアノの鍵盤なんてのは、重いハンマーで鉄弦をブッ叩かなければならないとか、クラシック系の曲に親指を酷使するものがけっこうあるとか、昔はピアノ奏者のほとんどがオルガンも弾いていたとか、それなりの理由があってあの形をしているわけで、電子楽器しか弾かない人が同じモノを使わなければならない義理はまったくない。

たとえばエレキギターアンプ。名機と呼ばれるものがいくつかあって、多くのメーカーがそのアンプの音を再現しようと努力している。ハードウェア構成を似せるやり方(ようするに量産レプリカ:老舗メーカーが評判のよかった自社製品でやる場合はリイシューと呼ばれる)と、出音だけ似ていればハードウェア構成は違ってもよいとするやり方(モデリング)があり、なぜか前者がもてはやされる。

しかしどちらも、やっていることは状態のよい実機を探してきて徹底的に真似るということらしい(ただの売り文句なのか実際にやっているのかは知らないが、少なくともそう宣伝するメーカーが多い)。注意しなければならないのは、昔の機器には有害物質の塊のようなものが多くあり、現在の法律ではレプリカを作れなかったり、また当時の低い製造精度によってバラツキが多く生じ、その中で奇跡的なバランスを得た個体が高い評価を得ている可能性もある。出音がどれだけ似ているかを第一にするなら、ハードウェア構成も似せなければならないという足かせはない方がラクである(出音を似せていった結果たまたまハードウェア構成も似たものになることは、もちろん妨げないとして)。もっと下世話な話として、昔の機器を当時の仕様のまま再現できたとしても、利便性が(その時代には「それしかなかった」ために受け入れられていたものであっても)低く商品性が期待できないという理由で、マーケティングのための変更が入ることもあるだろう。

そう考えるとレプリカだから偉くてモデリングだから格下、などというのはちょっと迂闊だろう。もちろん、似たような回路を作ればある程度以上の「ソックリ度」を確保しやすいというメリットはある。しかし、ある1台の素晴らしいアンプがあったとして、出音を似せた製品を大量生産するための方法は、別に何であっても構わないはずである。

分類は何も教えてくれない

たとえばギターに使う木材。メイプルは硬くてローズウッドは重い、たしかにそういう傾向はあるが、柔らかい種類のメイプルや軽い種類のローズウッドもないわけではなく、さらに個体差(木の重さや硬さなんて1本1本全部違う)や加工の違い(乾燥とか塗装とか)や個体内部の差(根元の方と先端の方とか、中心と外側とか、南側と北側とか)もある。

実際、木材の特徴でギターの出音が変わるのは間違いないが、どこにどれを使ったらこんな音、というほど単純なものではない。ドラムスティックのように木材の特徴が単独でモロに現れる使い方ならともかく、ギターで「表板がメイプルだからこんな音のはずだ」とか「指板がローズウッドだからあんな音のはずだ」なんて言っても(少なくとも、ギターを「作る」のではなく「弾く」だけの人にとっては)ナンセンスである。

それ以前の話として、用語が何を指すのか自体が曖昧過ぎる。マホガニーといったら普通はセンダン科マホガニー属の植物を思い浮かべるが、フタバガキ科(ラワン)やムクロジ科の一種をマホガニーと称していることも多い。ローズウッドなんてのはもっといい加減な用語である。

用語が指す範囲が広すぎる場合もあり、たとえば「金属とプラスチックとセラミックと木材ではどれが一番丈夫ですか」と訊かれても、硬い金属もあれば柔らかい金属もあり、熱に強いプラスチックもあれば弱いプラスチックもあり、化学変化しにくいセラミックもあればしやすいセラミックもあるし、腐食しやすい木材もあればしにくい木材もあり、さらに塗装や表面加工でも特性が大きく変わるし、そもそも「丈夫」が何を指しているのかサッパリわからない。

電気的な仕様についても似たようなことが言える。たとえば機材Aのバランス出力と機材Bのアンバランス出力を比べて、前者の方が特性がよい保障はどこにもない。バランス/アンバランスはあくまで伝送の形式であって、大まかな傾向(バランスだとコモンモードの外乱に強くなる)を予想するのには役立っても、性能をただちに決定するような要素ではない。

「オーディオ用のコンデンサ」なんてのもねぇ・・・重要なのは「メーカーがオーディオ用だと書いていること」や「値段が高いオーディオ機器に使われたこと」ではなくて「必要な場所に十分な性能の部品を使う」ことだと思うのだが(たとえばコンデンサに強い振動が伝わると容量が変化するので、使用中に振動が伝わってかつ容量の変化がノイズにつながる場所には、機械的な制動が大きいコンデンサが適する:というか、真空管回路を例外に、ラックに蹴りでも入れない限り誤作動に繋がるほどの変化はしない)。

数字でわかることとわからないこと

たとえば100Wのギターアンプと1000Wのギターアンプ(面倒だからどっちもコンボアンプだとしよう)があったとする。この数字を見てわかるのは、後者の方が余裕のある電源や空調を要求しそうだということくらいである。最大音量についてはキャビネットの効率次第で前者の方が大きい可能性もあるし、もしこの2台が同じ効率だったとしても10dbしか変わらない。最適音量域がどこにあるのかに至っては、上記の数字からはまったく予想できない。

たとえばウーファー8インチのPAスピーカと12インチのPAスピーカがあったとする。低音域の再生能力が高いのがどちらかはわからない。しかし、出力が面音源的に振る舞う範囲が広いのは後者である。また、より大きな設置スペースを要求するのは多分後者だろう(と、例外的な形状でない保障はどこにもないが推測として言える)。

結局、数字の意味がわからないと「何がわかって何がわからないのか」もわからない、ということになる。スペックに振り回されるのはアホらしいが、意味もわからないスペック表記で数字が多い少ないと一喜一憂するのはそのうえ滑稽である(まだ「値段が高いから凄いんだ」という主張の方が、その人の思い入れ(購入には価格相応に「気合」が必要だったことだろう)だけは伝わる分、同情的にはなれる)。

何を知りたいの?

たとえばエレキギターの試奏。いろんなギターで音を出してみること自体が楽しくて延々やっている人もおり、それが趣味なら他人が口を挟むような問題ではないのだが、買い物の参考として必要かと言われるとちょっと疑問である(ただし中古で買う場合は、音を出して電気回路がちゃんと生きているか確認した方がよい:新品でも、ネックのシェイプや指板のR、ナットやブリッジの近さ遠さを含めた身体へのフィット感、重さのバランスや大きさ、ツマミ類の操作性などは、手にとってチェックすべき)。

ぶっちゃけ、エレキギターからどんな音が出るかなんて自分のアンプに繋いでみないとわからない(インギー様とかレイヴォーンみたいな異次元の住人だと、ショーウィンドウ越しに一目見ただけで「コイツはイケル」という天啓が舞い降りるらしいが、一般人には到底ムリ:なお、異次元の住人も実は見た目でテキトーに選んでおり、単に上手いからすごい音が出てるだけだという可能性は否定できない)。中古で買うにしても、重さと形状、消耗品(フレットなど)の減り具合、ネックの状態、電気回路がちゃんと機能しているかどうかくらいわかれば、あとは買ってから考えた方が早い。

小型アンプやデジタルのシミュレータをメインにしている人なら、自前のアンプを楽器屋さんに持っていくという力技ができなくはない。が、弦だって展示品に付属したものをそのまま使うわけではない(ミキサーを替えてさえ音の変化が気になる人がいるらしいから、弦が違えばまったく別の音になることだろう、きっと)だろうし、そのギターに合ったセッティングが出せるまで試奏コーナーで粘るというのも、よほど環境に恵まれないと厳しい(反対に「このアンプ通してみたいからコンセント借りていい?」とか「とりあえず弦だけ買うからこのギターに張ってみていい?」とか「ピックアップ少し下げていいかな?」なんてことができるのが、顔なじみのお店を作る利点でもある)。

またアコースティック楽器では奏者が聴く音とリスナーが聴く音が(吹奏楽器や小型楽器や奏者との接触が密な楽器ならとくに大きく)異なる。自分がどんな音を出しているのか、録音を聴いてみないと正確に知ることはできない(マイキングによる音の変化などももちろんあるが、よほど酷い録音をしない限り、リアルタイムに自分が出している音を聴くよりはずっとマシなはず)。自分の音を把握するだけでもけっこう大変だということは、知っておいた方がよいだろう。

正気を保とう

たとえば電卓が必要なときに、パソコンを丸ごと買ってくる人は(目的は果たせるので間違った選択だとは断言できないし、電子式で卓上で計算機だからパソコンも電卓だと言い張ることが不可能ではないが)クレイジーである。多分いないと思うが、HPのProLiantを買ってくる人がいたらファンタスティックである。

ファンタジスタレベルにまで到達した人にいまさら何がどうだと言う気はないし、熱に浮かれて「なんだかよくわからないうちに衝動買い」なんてのも楽しい行為ではあり、常に正気でいるのがその人にとってシアワセかどうかはわからないが、多くの人にとって平常時は正気を保っていた方が無難である。

なぜワザワザこんなことを言うのかというと、妙に「消費者の気の迷いを煽って買ってもらっちゃおう」的な意図が感じられる売り方のメーカーが、一部にあるのがその理由。筆者は、ビジネスをビジネスライクにやらない連中が嫌いである。

誰かが電卓を必要としたとき、パソコンを丸ごと買ってきても用が足りるのはすでに触れた通りだが、便利で使い勝手のよい電卓を真面目に作っている人も多分どこかにいるはずである。

いやそれオマケだから

一部のハイエンド品を除いて、楽器や機材に付属する消耗品の類はあくまでオマケである。たとえば置時計を買って「付属してきた電池の持ちが悪い」とか、自転車を買って「付属してきたチェーンロックが安っぽい」なんて言い出す人がいたら滑稽だろう。同様に、ギターに最初から張ってある弦とか、デジピのハコになぜか入っているヘッドフォンとか、そういったモノはあくまでオマケであって、通常の品質を求める方がクレイジーである。

もちろん付属品にも(万全ではなくともある程度)品質が求められるものはあって、鍵盤楽器のスタンドとかマイクのホルダーなどは、それなりのモノを付属させるかいっそ最初からナシにしておいてくれないと面倒やゴミが増える(ローエンドのダイナミックマイクに取って付けたようなホルダーを付属させるのはやめて欲しいところ:どーせ500円くらいでマトモなモノが買えるんだから)。

ついでに、サウンドハウスが楽器の調整(ギターのオクターブチューニングを出荷時にやっておけとか:そんなの弦の高さやゲージやテンションで変わるだろうに)で叩かれていたのが不憫でならない。購入時の弦高が高いってのも・・・好みは人それぞれなんだし、少なくともネック側は下げるのより上げるのが大変なんだから、出荷時は高めにしておいて低いのが好みの人は自分で調整する形以外どうしようもなく、ネック側を調整したらブリッジ側にも自然と手が入りそうなものだが。そのうち「オレの家の湿度や温度や弦のテンションなんかをエスパーしてトラスロッドを回しておかないのは怠慢」とか言い出す人が出てきそうで笑えない。

万能と無能は紙一重

工作系の格言に「ヘタクソほどモンキーを使いたがる」というのがある(モンキータンブリンのことではもちろんなく、モンキースパナorモンキーレンチのこと:むやみな使い方さえしなければ、モノ自体は普通に便利な道具)。ようするに「ちゃんと専用設計された道具を使い分けろ」という趣旨だが、音楽制作でも同じことが言える。

性能だけ考えても、専用品を本来の目的にだけ使えば、コストパフォーマンスも限界パフォーマンスも汎用品より有利になる。たとえば同じメーカーが同じ用途と価格帯で出しているヘッドセットとヘッドフォンで音を聴く場合、後者の方が優れていることが(必ずではないが)多いだろう。十徳ナイフのドライバーでもたいていのネジは回るが、ナメないように回そうと思ったら普通のドライバーを使った方が10倍よい。

またハードウェアで「標準的なサイズ」がある場合、そこから極端にかけ離れたものには注意が必要である。スピーカなど音が出るものやミキサーのように手で操作するもの、アコースティック楽器のようにその両方を兼ねるものはなおさら、操作性や出音を確保するために必要なサイズがどうしてもあり、極端な大きさのものはクセが強くなる(あえて使いたい場面があるから、買う人がいて作る人もいるわけだが、一般的な使いどころとは異なるのが普通)。ハードウェアの形状全般について、なにか理由があってその形をしているケースが多いことを覚えておきたい。

理解できない宣伝文句や根拠不明の風説は無視

残念なことに、ユーザーの無知につけこんでムシれるだけムシろうとするメーカーが(有名ブランドの中にさえ)多くある。筆者がひとつの基準にしているのはデジタル音声の説明。わざわざカクカクのグラフ(それも酷いものだとサンプルレートが足りていないものをビットレートの説明に使ったり:もしサンプルレートが48KHzくらいよりも高いなら、そのトゲトゲは超音波域のノイズであってシグナルじゃねぇよ)を持ち出してくるところは疑ってかかる(組織的な悪意があるのか、最低限の知識を持ち合わせない人がドキュメントを担当したのか、大多数の関係者はマトモなのにエライ人が暴走したのか、それだけでは判断できないが、少なくとも信用には値しない)。

もうひとつの基準として、メリットだけをアピールしてコストやトレードオフについてスットボケるメーカーも、筆者は信用していない。たとえば超指向性マイクをなんの注釈もなしに「単一指向性よりも高性能」と持ち上げているトコロや、モニタスピーカと称する製品をセッティングに関する注意もなしに売っているトコロである。完全なプロ用製品で「仕様見せてやるから自分で判断しろ」というならともかく、エントリーユーザー向けの製品で変なアピールをしているところは疑ってかかる(ベリさんだけは、ブレずに分け隔てなくいつでもみんなに不親切なので、そういう性格なんだと思うことにしている)。

品質に関する風評も(ネガティブなものとポジティブなもの両方、極端な内容であればあるほど)あまりアテにしない方がよい。通販サイトの評価などを眺めていて目に付くのは「ホメながらけなす」コメント。「初期不良でグチャグチャでしたが自前で直したらサイコーでした」とか「そこそこ以上の性能は求めない僕にはピッタリです」とか「僕の持ってるステキ製品(しかも用途が違うモノだったりする)と比べるとオモチャだけど悪くない」とか「機材Aに繋いだら最高の性能だったけど機材Bに繋いだら突然ぶっ壊れました、また買います」とか、素で言っている人がどのくらいの割合でいるのか知らないが、わざとやっている人たちがいないと考えるにはちょっと数が多すぎる。

「ライブなら誤魔化せるけどレコーディングには使えない」とかいうのもよくある言い回しだが、実際には「レコーディングなら運用でどうにでもなるがライブだと厳しい」ことも多い。たとえばノイジーなギター用コンパクトイフェクタがあったとしよう。レコーディングなら、入出力のレベルをギリギリまで上げてペダルを踏むパートだけ録音し、たとえクリップしてもリアンプしてしまえばよい。ライブだと音量合わせがまず困難だし、クリップしたからやり直しということは普通できない。マネジメントはどちらが簡単か、実際に使ってみればすぐにわかるはずなのだが。

持ち上げるのもケチをつけるのも自由だが足元は見よう

たとえばクラシック音楽の伝統性を重視しているらしい人たちが、19世紀に家具屋のオッサンがそれまでの製法をゴッソリひっくり返して作ったピアノ(オッサンの名前はヘンリースタインウェイ)をやたらとありがたがる。

たとえばラジオの修理をやっていた元会計士のオッサンが作った楽器(オールドのテレキャスターとかストラトキャスターとか:しかも当時は「便所の蓋」なんて嘲笑されてたシロモノ)をやたら持ち上げる人たちが「アンプ屋の作ったギター」をコケにする。

たとえば、スピーカケーブルにやたらこだわる人がまともなスピーカスタンドも使っていなかったり、下手をすると狭い部屋の壁際にベタ置きしていたりする。リスニング位置を固定する努力(筆者ですら、真面目な音声比較をするときは顎を乗せて耳の位置が変わらないようにする台を用意している)なんて最初からする気もない。

なんか変だと思いませんか?思わないならそれ以上追求する気もないけど。

レビューの読み方

ユーザーレビュー的なものも、機材の仕組みをある程度理解して読むなら参考になるが、まったく情報がない状態ではあまり役に立たない。用途や使い方を理解していないレビュアーによるノイズをスクリーニングするだけで、けっこうな労力を要する。

ユーザーレビューを掲載する販売店はぜひ「実際に買ったことが明らかな人」とそうでない人のレビューを判別可能にするとともに、レビューへの評価も「買った人の評価とそうでない人の評価」に分けて欲しい(どーせ買い物ポイントでレビューを集めるなら「購入から一定期間後にレビューの評価をしたらポイントプレゼント」とか、その辺までやってくれればいいのに)。まあ「実際に買った人」の中にも、スタジオモニタ用スピーカを買っておいて「セッティングがシビア」だとか、真空管回路の機器を買っておいて「動作が不安定」だとか、一般住宅でラージダイヤフラムのコンデンサマイクを使っておいて「音声ノイズを拾いすぎる」なんていう人がいて、買ったという事実だけで信用するにはムリがあるのだが。

一般に「不要な推測」が混じったレビューは眉に唾を付けて読むのが無難。とくに「当たり外れ」だとか「相性」だとかいうのは、自分が何をやっているのか理解していない人や印象操作をしたい人が使いがちな単語である(言うまでもないが、それなりの数を試して「当たり外れ」を論じている人や、ちゃんとした切り分けをやって「相性」を主張している人ももちろんいる:が、そう装っているだけの人と区別するのはそれなりに難しい)。それから「壊した」人の多くが「壊れた」と言いがちな(非常識な扱いをする人ほど、自分の正当性を(ちょっと斜めから)主張しつつ壊した機材を非難しがちな)こと、もっと愉快な人たちはオマケで頭に「何もしてないのに」をくっつけることを覚えておきたい。

それとねぇ・・・これは半分愚痴になるが「音質」なんてものを筆者はあまり信用していないし、手持ちの機材についても「万全、十分、普通、注意、不足」の5段階くらいでしか評価していない。とくに、意図的にクセをつけた機器であれば音のキャラ(というか好き嫌い)を問題にできるが、フラット指向の機器で出音がどうこうなんてのはたいていの場合ナンセンスである。コスト構造を理解できていない人が「高い機材は音質もよくなきゃおかしい、そして選ばれた人類である俺様はそれを判別できるはずだ、そうに違いない」といった強迫観念にドライブされて密度だ空気感だと言い出してしまうのは、非常に気の毒なことである(変な喩えだが、本を読んで「行間がどうこう」とか言い出す人が「文字で普通に書いてあること」を理解していないことが多いのと似ている:根拠はないけど「EQの効きが悪い」とか「プリアンプの歪みが弱い」とか騒ぐ人たちと、自称「0.1dbの周波数特性や0.1%のTHDを聴き分けられる」人たちって、同じ人たちだよね、きっと)。

厳しい現実ではあるが、音質に限らず、省エネでもサッカーの戦術でも業務効率でも、大騒ぎするのは「理解していないし、理解の努力をする気もないが、理解したと確信している人」がほとんどである。最低限の理解をしている人は、優れた仕組みや成果を紹介し、前提となるものを示し、扱い方を論じる(性格的に騒ぐのが好きで、大騒ぎしながらそれをやる人がいないではない)。ぶっちゃけた話たとえば、「世界平和なんて知ったこっちゃねぇ」と心の底から思っていない限り、ロクに勉強もしていない平和論を真顔で振り回すなんて、できるわけがない。世の中に常識外れの力持ちは一定数いるが、たいていの場合、認識が軽いからこそ振り回せるのである。

ついでに、利用者側に直接の責任はないが、ユーザーレビューなどを掲載するサイトには危険な使用方法を推奨するコメントへの対応をしっかりやって欲しい。冷却ファンを殺すとか指定以外の電源を使うとか、実際にそれでパフォーマンスが向上する場合もあり得るのは理解できるし、即時削除せよというのは乱暴だと思うがせめて、それなりの知識や経験や注意を要し使用上の制限も生じ得るのだということを指摘しておくべきだろう。

二流ブランドを狙う

ネームバリューとして一流ドコロではないものの長く商売を続けているメーカー、というのはコストパフォーマンスに期待できる。

考えてもみよう、有名ブランドと二流ブランドが同じ値段で同じジャンルの製品を出していた場合、性能も同じならみんな有名ブランドのものを買う。有名ブランドと二流ブランドが同じ性能で同じジャンルの製品を出していた場合、値段が同じなら誰も二流ブランドの製品は買わない。いっぽうで、ブランド価値を持っているということは「逃げたときや失敗したときにに失うものがある」ということで、二流ブランドメーカーとはいえ完全なノーブランドメーカーのように勇猛果敢に振る舞うのは難しい。つまり、何かしらの「実益」をなるべく堅実に提供し続けないと、二流ブランドは短期間で潰れる。

中には作りの甘い製品を安い価格で売りさばいているトコロもあるのだろうが「安物メーカー」と見られがちなハンデを乗り越えて「売れるモノを作り続けている」人たちの創意工夫というのは並大抵のものではない(ついでに「変態メーカー」の中の人たちの情熱も:変態デバイスばかり作っているのに潰れないメーカーというのは、相当な技術力を(使い方が適切かどうかは別として)有しているのだろうと思われる)。

もちろん、ヤマハさんのようなガリバー企業(他と明らかにスケールが違う企業の俗称)がパワフルに力押しした製品にも魅力的なものは多くあるし、老舗のネームバリューをフル活用しないと継続できない地味な研究開発などもあると思う。しかしそれと同時に「掘り出し物」を求めて二流ブランドの製品を漁るのも楽しいものである。

素人ブランドを狙う

かなり上級者向けの狙い方ではあるが、通常の物理法則を超越できる(と正面切って宣伝しているわけではないが、結果的にそう宣言している)チョー高級品を扱うメーカーやベンダーも、まれに掘り出し物をラインナップしていることがある。

とくに「素人考えには便利そうだが普通は商品にしない」あるいは「普通に使うと害しかないが活用方法がないわけではない」ような小物を、他のラインナップからは考えられないほどマトモな価格で扱っていることがある(と聞いて「ああ、あそこのアレもそうだな」と1つくらいは思いつく人でないと使いこなせないので、具体的な製品名は挙げない)。

こうした小物が(自作とそうかけ離れない価格の完成品で)手に入るのは、素人が安易な認識で商売をやっている副作用でもあるわけだが、もちろん、安全対策なども相応のレベルでしかやっていないはずなので、リスク評価や追加の対策などを入念に行う必要がある(「間に合わせでヤンチャに自作した」シロモノ以上の信頼性は期待すべきでない:「扱いに注意を要するが有用な製品」を供給しているところとの違いは、売り方を見ればすぐわかる)。

欲しいならそれでいいじゃない

身も蓋もないがそうとしか言えないのが実際である。グランドピアノだろうが実機のチューブシンセだろうが生ドラムフルセットだろうが、総重量500kgのスタックアンプだろうがスタジオ用のミキシングコンソールだろうが気合のラージモニターだろうが、欲しくて置き場所があって近所に迷惑がかからず金銭的にムリがなければ買っちまえばいいのである。

出音がどうだとか使い勝手がああだとか特性がこうだとか、そういう細かいことは買ってから悩めばよろしい。というか、気張ったモノを購入して「やっぱコレはムリだった」と泣く泣く手放す、なんて経験を楽しめない人は趣味にお金をかけること自体避けた方がよい。5打数3安打の長打1(機材を5点買ってゴミが2点、常用するくらい気に入ったものが1点)なら御の字じゃないか。

オマケ(ネットの風評をアテにして買ってみたブツいろいろ)

2011年5月の日記でも触れているが、筆者は性格が天邪鬼らしく、他人が「駄目」とか「使えない」と言っているものが欲しくなってしまう。ネットで機材を眺めているとユーザーレビューなどが嫌でも目に入り、ついついノせられて買ってしまうことがあるのだが、実際に手元に届いてみると評判ほどではないものばかりでガッカリすることが多い(本文で「風評にノせられるな」と繰り返しているのは、自身の苦い経験からだ、ということにしておいて欲しい)。

ネットのものに限らず、評判なんていい加減なものだというのはよく知っている。たとえばフェンダーのエレキギターが便所の蓋なんて呼ばれていたのは有名な話だし、そのフェンダーが本国でグダグダになっている間も「フェンダーUSA」はもてはやされ、何年も後になってから「当時は日本製の方がよかったよね」と振り戻してジャパンビンテージみたいな売り文句が飛び交うことになる。それはわかっているがみんなが楽しそうに評判を語っていると自分でも試したくなるのが人情というものではないだろうか(いや、きっとそうに違いない)。

大外れだったのがBEHRINGERのアンプMIC200 TUBE ULTRAGAIN。ウェブでは「ノイズだらけ」とか「球を替えないとクソ」とか「音がバリバリに硬い」とか大評判でワクワクしていたのだが、まったくの期待外れ。2011年11月現在も(後で買ったGDI21やG1Nがあまりに便利で出番は減ったが)普通に活躍している。

処理に困ったのはZENNのドラムスティック。サウンドハウスのサイトに「一曲たたき終える前に折れた」とか「1時間で折れました」とか「あまりにも短命」など心躍るコメントが寄せられており大いに期待していたのだが、折れる気配すらなし。おかげで16本ものスティックが手元に丸々残ることになった。とても邪魔である。

PEAVEYのピック101TとかストラップSTRNなどの顛末も上記リンク先にまとめてある。どーも、サウンドハウスのサイトではPEAVEYにも熱心なファンがついているようである(筆者は高級品メーカーだと思っているのだが、世間的なイメージはそうでもないみたい)。

ちょっと変わったところではBEHRINGERのHD400 MicroHD。ベリさんなのになぜか絶賛コメントが多く、これはトラップに違いないと思い購入。実際のブツは単なるトランス+グランドリフターで、ネタとしても弱く使い道もなく、ガッカリとか困ったというよりはシラケた結果になってしまった。同じベリさんのDI20PS400も普通だったがこれは予想通り。

とまあ結局、他人の評価(読者にとっては、筆者が書いた紹介記事も含む)は眉に唾をつけて読むのが無難なようだ。なお、筆者がチョー不幸な星の元に生まれついており「外れ」ばかり手にしている可能性は、非常に低いと思うが否定はしない。



一足飛びの目次に戻る / 音楽メモの目次にもどる

自滅への道トップページ