いまさら断るまでもなく筆者もオッサンなのであるが、自炊したいorしなければならなくなったが要領がわからんというオッサンは世の中に数多いと思う(確認したわけではないがきっと)。そのような人たちの案内になれば幸いである。なお、若い女性などはオッサン臭い調理方法が身につくと不幸になるので真似しない方がよいし、あくまで「自分しか食べない」前提のため家庭の主婦or主夫の参考にもならないと思う。
さてでは手始めに道具を揃える。そう、オッサンは道具を揃えるのが好きだからである。
これはまあ好みなのだが、数はあまり増やさない方がよい。深皿、鉢、丼、飯椀、汁椀、小皿くらいがあれば足りる。これだけで満足した人は次の項まで読み飛ばそう。筆者は磁器っぽい素材が好きで、ウレタン塗装の食器は嫌い、滑らかなシェイプが好きでカドや凹凸のある食器は嫌い、つまり水に漬けっぱなしても痛まず食品の保存にも使い回せて手早く洗える食器が好きである。余談ながら日本の磁器では、有田・伊万里、瀬戸の新製、九谷・砥部などが有名(基本的には全部、唐津~有田の系統からの派生)。備前・越前・肥前尾崎などの陶器・炻器も味わいがある(肥前尾崎なんかはいわゆる伝統的な尾崎焼とは別物になっているが、そんなことを言ったら有田だって「昔の有田焼」とは似ても似つかないものが多数を占めるわけで、うるさく言うことはないかなと思う)。磁器なら砥部(猪口とか手塩皿みたいな小さいものなら有田も)、陶器なら上野、八代(高田)・薩摩・琉球(やむちん)、炻器なら備前あたりが筆者好み。
大きさの目安として、安物の電子レンジの回転皿が25cmくらい、庫内は29cmくらいで、普通に回せるサイズは28cmくらいが限界(皿は3cm刻みが多いので、27cmまでならレンジで回せる計算になる:当然ながら角皿の場合対角線が29cmまで、完全な正方形なら1辺20.5cm、普通は丸みをつけてあるだろうから23cmくらいまではイケるはずで、筆者が持っている21cmの角皿は余裕で回る)。電子レンジ用のパスタクッカーなどは、ロングパスタが25cmくらいだから(折らずに調理する前提だと)外形27~28cmくらいになるはずで、回るかどうか微妙なライン。小型の台所ラックは幅20~30cmくらいのものが多く、大皿は四角い方が収納しやすい。大型ガステーブルの魚焼きグリルや、いわゆるオーバルパンの類が30cmちょいなので、それよりデカい魚はバーベキューコンロでも使わないと丸焼きにはできない(単体の魚焼き器は25cmくらいのものが多いか)。
やや深の皿は大きいのがあった方がラク。やや深とはいうものの鉢みたいなものではなく、一般にパスタプレートとかカレープレートと呼ばれているものから、平らな部分ができるだけ広いものを選びたい。使い勝手を考えると22cm前後の角皿がよいと思う(いわゆる「プレート皿」「スクエアプレート」のカテゴリでは「中皿」扱いのものが多い)。焼き魚なんかにもこれを使い、朝をパン食にするならトースト(普通サイズなら13cm前後の正方形)2枚にベーコンエッグにちょっとした野菜くらいは乗る。追記:以前使っていた厚めの角皿を不注意で割ってしまったので、コレールのスクエア中皿(J2211-N CP-8902)というのを買った。カタログ寸法は22.5cmだがちゃんとレンジで回っている(なかなか高性能な皿で、オーブンでも使えるらしい)。もう少し小さい(スクエアなら対角20cmくらいの)平皿がもう1枚あっても悪くないが、枚数が増えると面倒なので必要になってから買えばよい。鉢はメインディッシュ用。野菜炒めも麻婆豆腐も魚の煮付けも全部これで食べる。こだわりがあるメニューに専用皿を用意するのはもちろん差し支えないが、使い回せるところは使い回した方がラクなのは言うまでもない。筆者はスパゲティもカレーもこれに入れてしまう。深さはある程度あった方がよく、楕円(オーバルまたはリーフ)の方が使いやすいかなという気はするが、メインで使うものなので好みで選ぶのがよさそう。普通の大鉢、深めのパスタボウル、浅めのベーカー皿あたりから選ぶのが無難だろうか。魚だけはデカい皿に乗せたいという場合は35cmくらいの長皿を用意すればよろしかろう。
飯椀は自分が食べる分量に合わせて。自炊だと飯は1回で盛ってしまう人が多いと思う。満水で500ccくらいあれば1合飯を盛っても見苦しくならない(飯を隠すシェイプの浅めの飯椀は4寸で満水280ml前後が典型的で、4.2寸350mlくらいが大きめ、3.5寸200ml前後のものはとくに姫椀と呼ぶことがある:いわゆる飯丼(小丼)は似たような径でもシェイプが深く440~450mlくらいあるし、飯用でない丼には4寸500mlちょいのものもある)。炊いた飯は木のおひつ(これって食器に入るんだろうか?)に移すと、水分の抜け方や微妙な香りをコントロールでき仕上がりが随分変わるうえ、ご飯の食べ方に時間軸のガイドラインを作る役目(1膳めと2膳めの変化を楽しもうとすると、食事のペースが自然とできあがる)もしてくれるのだが、そういった効果が良好に得られるよう手入れするのはかなりの手間だし、そもそも飯をいったん移してから盛るのがメンドクサイ。まあこれは好みというか、白飯によほどコダワリがある人だけ挑戦すればよいものだろう(セラミックのおひつは少し扱いがラクなのだが、10の手間が8に減ったところで・・・という気がする)。なお普通のおひつは保存容器ではないし臭い移りを防ぐ性能も限定的なので、冷蔵庫に入れたいなら密閉容器(普通のでいいけど、真空おひつなどの名称で減圧機能つきのものも売っている:というか、名前が何であれ結局は丈夫で耐熱性のある食品容器なんだから、減圧機能つきの弁当箱でも真空保存ケースでも構わないし、水蒸気だけで十分減圧できるならポンプも必須でない)か、まだしもドンブリにラップをかけた方が無難だと思う。
丼は悩ましい。家庭用のラーメン丼は満水850~1000ml前後(スープ450mlの生麺110gが100mlだとして550mlくらい、使い捨てのいわゆる発泡どんぶりも、満水で850とか930くらい)で、容量的には1000mlくらいあると使い回しの幅が広がるのだが、口が広いものが多く筆者はあまり好きでない(いわゆる反丼とか切立丼も形が嫌い)。玉形丼なんかは16cm(5寸)前後のもので1200mlくらい入り形も上品だと思うのだが、今度は湯麺や広東麺なんかに使いにくい。さぬき丼は容量があるものの形が浅く、深口丼は形がいいものの容量の大きいものが少なく、たまによさそうなものを見つけたと思うと樹脂製だったりする。こればっかりは数を当たらないとダメっぽい(筆者もかなり探し回った:アヤさんありがとう)。ステンレス製の断熱丼なんかもあるらしいが、残った料理の保存(深い器の方が場所を取らない)なんかにも使うなら陶磁器の方が便利だと思う(異なるシェイプで2つ持つともっといいかな)。追記:丼がけっこう増え、実測で満水900・950・980mlと3つになった(銘入りがひとつあり「ひじり」というから美濃焼きだろうか)。追記:16cm950ml前後の製品(5寸深丼)が少し増えてきたみたい(業務用の21.5cm1900mlクラス(7寸丼)も、amazonなんかを使えば手に入る模様)。汁椀は陶器が少ないし容量が小さいものが多いため中華の湯椀を使うのが便利。味噌汁を湯椀に入れるのはちょっとという人は木か樹脂のものを別に用意すればよろしかろう。小皿はまあ何枚かあればよい。小さくて深い器(多用椀とか多用丼とか呼ばれるものの小さいやつ)がいくつかあると付けあわせを入れるのに便利だし、オーブンに入れられる皿も1つくらいはあるとよい。
食器・調理器具・食品容器等は検疫が厳しい商品なので、いわゆる輸入食器は割高になる(安全のためのコストが高いと言い換えてもよい:miproという団体が「食品用器具 輸入の手引き」を公開しているので、内容が気になる人は参照してみるとよい)。少なくとも、新品中古品に関わらず、原産国がわからないような品物は使わないのが賢明(筆者のような物好き以外は)。表面がザラっとした仕上げのものはラップがくっつかず、また高台がないもの(底を支える脚というか、多くの場合筒状になっている部分:平らなものを「べた高台」と呼ぶこともあって「ない」というのは御幣があるのかもしれないが)はレンジでかなり熱くなるため、あらかじめ確認しておきたい。また食器を重ねるときは、胴の部分が面で接する格好になると割れやすいため、底or高台の部分が線で接する形を心がける(プラスチックなど割れにくい素材の食器でも、面接触で重ねると抜けなくなったりすることがある)。
光熱費の計算に興味がない人は次の項まで読み飛ばそう。結論から言うと、都市ガスが使えるならガスだけ使っているのが一番安く、瞬間最大火力でもそう見劣りしない。都会でもプロパンよりは電気の方が安いが、ガスでサポートした方が効率的。田舎のプロパンはカセットガスと大差ない単価で、できるだけ電気を使った方が安い。以下費用の計算は2016年現在の料金を元にする(ウクライナ紛争によるエネルギー危機で高騰する前の燃料費なので注意)。またあくまで費用把握のための目安であって、省エネとか光熱費節減みたいなものを目的としていない(余談ではあるが、もし資源の節約を云々するなら、真っ先に冷凍再加熱をやめるべきである:いったん加熱したものを冷やしてまた温めるなんて、エネルギーの無駄以外の何者でもない)。また住宅環境によっては、加熱調理機器の効率が高い=暑くならない(わけではないがちょっとはマシ)という一点が絶対的正義になることもあり得る。ガスコンロは並火力が3.5KWで強火力が4.2KWくらい、IHは100Vが1.4KWで家庭用200Vか3KWくらいのものが標準的(200Vの業務用IHには6KWクラスのものがあるが30A配線が必要で、工事が大掛かりになる)。
燃料費は地域によって価格が大きく違う。たとえばLPガス(以下プロパンと呼ぶ)は、東京なら10m^3(1ギガジュールくらい)使っても基本料金込みで8000円を切ることがあるが、北海道なんかでは12000円を超えることがある。13Aの都市ガス22m^3と同じ熱量だとして、東京だと3500円くらいだろうか。カセットガス(ブタン:20kgで1ギガジュールくらい)は、イワタニの250g缶3本セットが安いところで500円くらいだから1ギガジュールで13000円ちょっと。IHの熱効率比がガスの1.5倍だとすると185KWhくらいだから、東京電力の従量電灯B30Aの基本料金+1段2段階料金で5000円くらい。ガスは使えば使うほど料金が安くなるが、電気は使えば使うほど料金が高くなる(3段階料金になったり契約アンペアで基本料金が増えたり)こと、調理用の契約で従量電灯Bよりは少し割り引かれること、ガスの基本料金は調理以外でも使わなければ(いわゆるオール電化になっていれば)不要だが電気の基本料金はどのみち払うことに注意。
これだけ見ると、都市ガス<電気<都会のプロパン<田舎のプロパン≦カセットガスなのだが、全体の効率はカタログ上の熱効率だけでは決まらない。たとえば大きな寸胴にお湯を沸騰させたいとき、温度が上がってくると鍋から周囲への放熱が増え、火力が弱く時間がかかると無駄な熱がどんどん逃げる。つまり、ラストスパートの部分で火力が強いほど無駄なエネルギーを使わなくて済む。家庭用の大型機種を想定して、200VIHが3KWでガスが4.2KWだとすると、熱効率の差で最大火力ではIHが少し上回るが、IHの火力維持は排熱との戦いで常に最大出力をキープできるわけではない(内部の温度が上がりすぎるとパワーダウンする:ラストスパートにこそ火力が必要なのに)。卓上だからビルトインだから100Vだから200Vだからという問題ではなく、どんなIHでも内部が熱くなったら負けである(サイズに制限がある卓上タイプの方が排熱能力に劣る傾向はある:実際問題としては電源の系統がどう分かれているか、というか端的には電子レンジと同時使用できるかどうかの方がずっと重要ではあるけど)。これらのことから、プロパンとIHを併用する場合、スタートダッシュとラストスパートだけIHにやらせて途中をガスにした方が効率がよいことがある(休ませている間も冷却ファンは回るので、けっこう冷えてくれる)。
なお、IH調理器に適する鍋はガス火に適さないし、ガス火に適する鍋はIH調理器に適さないので、火力の比較をしたいならそれぞれに合った別の鍋を使わないと適切でない(ただし、加熱の効率は水蒸気が逃げる量で大きく左右されるので、そこは揃えないと比較にならない)。IH用の鍋は、一番下が磁性体(普通はステンレス)になっており、その上に厚いアルミの層がある(表面上ステンレス鍋でも、底にはアルミを仕込んであるものが多い:鉄鍋は例外)。IHはコイルの上だけがドーナツ状に加熱されるので、温度を横に伝えるために厚い鍋底が必要になる(熱の伝達効率は断面積に比例する)。ガス火の場合は面積が大きい方が有利で、杉山金属のエコラインなんかは120L寸胴で湯沸し時間が3分の2くらいになるそうなのだが、2015年にリコールがあった影響なのか家庭用の鍋はラインナップから消えてしまった。
さらに、熱効率という言葉にも注意が必要で、ガス器具ならメーカーの表示はJIS S 2103 : 2010(規定の鍋で水を初温から50度上昇させ、いわゆる余熱も加味する)という規格に従っているはずである。IHの熱効率(鍋の温度上昇も含まれる計算方法らしいのだが、JISの何番なのかわからなかった:これだけの性能ですと売り文句にするなら、計算根拠くらい明示するのが当然だと思うのだが)は90%くらいを謳っているが、ガスと同じ試験方法だと80%にも届かないのだとかなんとか。いっぽうで、この規格は最大出力に応じて使う鍋の大きさが変わりそもそもが公平でないとかいう話も聞く。なんだかどこの誰に聞いても非現実的な数字が飛び交っているばかりでうんざりするが、筆者はとりあえず、それぞれに適した鍋を使ったときはガスが50%くらいでIHが75%くらいなんじゃないのと勝手に納得したうえで、IH1.5倍段(ガスと比較するときは出力を1.5倍扱いする)でお茶を濁している。手元の鍋で実験してみた結果、1.4KWの卓上IHに26cmフライパンvs3.5KWの外炎式ガスに16cm片手鍋(両方とも蓋あり)という極端にIH有利な条件で、湯沸し時間はガスがやや早かったので、最大に見積もっても2.5倍まではいかないくらい、IH用の鍋を両方に使い回したときで2倍くらいなんじゃないのという数字だった。電子レンジはガスとIHの中間くらいの効率のようだが、最大出力が小さい機種が多い。余談ではあるが、IHで鍋のお湯を沸騰させると微振動が強く生じるため、これが「IHはお湯の沸騰が早い」という評判に一役買っているのではないかと思う(水は温度が100度になれば即ちに沸騰するわけではなく、ざっくりいえば、温度が100度以上のお湯に衝撃を与えると、ボコボコとした沸騰が始まる:温度が上がりすぎてから衝撃が加わると、いわゆる「突沸」が起きる)。
そのうえさらに、そもそも火力を上げられるのかという問題もある。多くの「IH対応鍋」(業務用含む)には「200VのIH調理器でも使えます(ただし弱火でなら)」と書いてある。というか、200VのIHで強火全開にして大丈夫だと書いてある鍋を筆者は見たことがない。いっぽう、4.2KWクラスのガス火(外炎式)をちゃんと受け止めようと思ったら、寸胴シェイプで26cmくらいの径は必要になる(少なくともそれくらいというだけで、26cmで十分かどうか筆者は知らない)。底面積も大きい方がよく、IH対応鍋に多いのっぺりした鍋底だと効率が落ちる。内炎式のバーナーは鍋が小さいときに真価を発揮し、強火にできる>時間短縮>無駄に熱を捨てる時間が減るという寸法で燃費改善につながる(ただし家庭用は、ガスレンジへの安全センサー設置義務化で絶滅してしまった)。IHも小さい鍋が得意な器具(だが下限にはシビア)。なお「200VのIH調理器はパワーがあるため鍋の変形が云々」という説明は、間違ってはいないが正確でない。というのも、もし火力だけが問題で鍋が変形するなら、中華鍋(業務用中華レンジの出力は普及品で23KWくらい、ほぼ常に火力全開で使われる:火力特化型の機種は、大手だとマルゼンのスーパー龍神が60KW近く、西崎厨房設備のオーロラに至っては80KWオーバーの出力を誇る)なんてとっくにグニャグニャになっている。厚くて平らな底を局部的に加熱するから歪むのである。
一般家庭で大火力を使う所というと蓄熱式でない給湯器で、ガスだと1号あたり1500kcal(1.74KW)で表示されていることが多く、屋外設置タイプは16号(単身用:27.84KW)~24号(家族用:41.76KW)くらいが主流(あくまで最終出力というか給湯能力の表示であり、41.76KW出力で効率8割ならガス消費量は52KW相当くらい)。強制吸排気でない台所用(風呂は沸かせない)でも5号(8.7KW)くらいのものが多く能率も高いため、お湯を沸かす能力だけ見ると家庭用のガスコンロやIHよりもかなり強力。いわゆる石油給湯器(灯油ボイラー:たいてい貯湯式だが水道直圧式もある)は35~45KWくらいの給湯能力(ガス給湯器基準だと20~26号くらい)のものが多いみたい。給湯も電気はまた面倒で、いわゆるエコキュート(冷媒にフロンを使わないヒートポンプ式電気給湯器:調べてみたら関西電力の登録商標なんだそうな)の場合、2022年末時点で年間給温効率4.0(いろいろ条件はあるが、効率の平均が400%だと思えば大間違いではない)の製品も出てきており効率は高い。しかし費用面でのコストを考えると、本体の交換(を繰り入れない計算ばっかりが飛び交っていて嫌になる:10年しかもたないのに)が高額で、かつ深夜電力を使うと料金体系が特殊になるため、効率の数字だけ見たときほどのインパクトはない。また効率が気候(というか外気温)に数倍レベルで左右される(のでさらに電気代に響く:ピーク消費量が価格に与える影響が大きいため)。余談だが、現場でのエネルギー効率だけを考えると、風呂やシャワーで水を熱いまま捨てる(熱容量が膨大なうえ量自体も多い)のは言語道断の所業で、高効率なシステムでは排水の熱をヒートポンプで拾って再利用している(全体を見たときに、再利用を実現するために費やされるエネルギーがどのくらいの期間や使用頻度でペイするのか、筆者は知らない)。また給湯器の効率を考えるときは配管の長さも重要で、一般的な15A配管の内径を約数16mmとするなら断面積は約2cm^2で、これを5m引き回すと容量1Lになるが、お湯を使うたびにこの分の熱がただ空気中に逃げてゆく。
厨房機器としての給湯器を考える場合のポイントは、まず「飲める」かどうかで、貯湯式(ないし電気蓄熱式)給湯器のお湯は飲めないものが多い。ただしこれも「多い」だけで、電気温水器でもイトミックなんかは「飲用・洗い物両用」の機種を出している(ガスが使えないオフィスの給湯室なんかで使われているのはこのタイプが主流、だと思う)。ガスについては「ガス給湯器は、瞬間式湯沸しのため、飲用や調理用にお使いいただけます。ただし、機器や配管に長時間たまっていたお湯(水)や、朝一番などのように給湯器を長時間使用していなかった場合は、飲用や調理用には使用しないでください」(リンナイ:https://faq.rinnai.co.jp/faq/show/1158?category_id=105&site_domain=default)「水道水を直結している場合は、問題はありません。ただし機器や配管に長時間たまった水や、朝一番のお湯は飲んだり調理に使用したりしないでください。(雑用水としてご使用ください。)」(ノーリツ:https://noritz-faq.dga.jp/aftersupport/faq_detail.html?id=1000040)などとアナウンスされているように、たまり水を捨てれば飲用できるのが普通(実用の際には、使用する機種の取扱説明書を確認のこと)。
ちなみに灯油は27リットルくらいで総熱量が1ギガジュールでプロパン10m^3相当だから、リッター130円でも都市ガスとトントンくらい(ボイラーの熱効率はどちらも、通常型で80%、潜熱回収型で95%くらいのカタログスペック:実用上は通常型で70%程度に捉えておけばよろしかろうか)。1.5~2KWくらいのものだが、石油コンロというコンロもコロナやトヨトミが作っている(JIS1号灯油(ようするに普通の灯油)しか使わないんだから「灯油コンロ」と呼べばいいのに:「石油ストーブ」もそうだが名前変えた方がいいんじゃないか)。ただの偶然ではあるが、灯油を1L/hのペースで燃やすと10KW(掛ける熱効率)くらいの出力になる。またおおよそだが、水の顕熱を4.2J/K・gとすると、25℃1リットルの水を100℃にするのに315KJのエネルギーが必要で、効率50%なら総エネルギーは630KJ、さらにこれを1分(というか60秒)で行ったとすると10.5KJ/s=10.5KWになる。1リットル分の氷を解凍するのにも、水の融解潜熱が約333.6J/gなので、上記と似たようなエネルギーが必要になる(電子レンジの場合ワット数は加熱エネルギー(高周波出力)準拠の表示なので、500Wの機種で10分ちょいのはず:固体の顕熱も考えると、100gの水が凍った状態から50~60度まで500Wで2分くらいという計算になり、食品の主成分はたいてい水なので調理の時間読みに使える)。
2016年現在の筆者の判断としては、ガス・IH・電子レンジ・オーブンはそれぞれ別の加熱調理機器であり、種類をたくさん持っていた方が便利である(ついでに言うと、料理用のガスバーナーもあるともっと便利)。何を当たり前のことをと言われそうではあるが、たとえ都市ガスが入っていてガスコンロが一番安いとわかっていても電子レンジは便利だし、田舎の超高級プロパンガスでも中華鍋で炒めをやるなら使わざるを得ない。すでに加熱調理機器を持っている人は次の項まで読み飛ばそう。
じゃあメインの熱源を何にするんだと考えると、これはもう住宅設備の都合に合わせるしかない。ガスが入っているなら普通にガステーブルと、卓上のIH調理器があると便利。小さめの鍋が得意で瞬発力のあるIH調理器はガスコンロのいい補完になる。ガスが入っていない場合は(契約で禁止されていないなら)カセットコンロを用意するのがよいだろうが、マキネッタ(エスプレッソやかん)みたいな極小の器具は内炎式で使いたいし、炒めに使うなら強火力タイプが欲しいし、悩ましいところ。レアケースではあるが、設置場所の温度が極端な場合、電気機器であるIHは使えないことがある。暑過ぎるのはもちろんダメだし、寒すぎてもエラーが出る(機種によるのだろうが、気温がプラスくらいの寒さならたいてい大丈夫)。筒でガスを送って燃やしているだけのガスコンロではこういうことは起きないが、あまりに極端な環境だとセンサー類が誤動作したり、カセットガス(ブタンが主成分:純物質だと沸点-0.5℃くらい)などでは5℃くらいで使えなくなるものもある。プロパン(純物質だと沸点-42℃くらい)や灯油(1号で凝固点-40℃以下)なら、暑過ぎるところに保管するのはもちろん危険だが、日本の屋内で寒くて燃料が使えないということはほとんどないはず。反対に暑い場合、機器の許容範囲ももちろん問題になるのだろうが、効率の悪い(=周囲への放熱が多い)機器を使っていると人間がツライ。料理を加熱したエネルギーは結局部屋の温度を上げることに使われるが、料理の加熱に使われずただ部屋を温めるだけのエネルギーは、夏場には少ないに越したことはない。
オーブンは、わりと自由に選べて種類も多い加熱調理器具だと思う。オーブンの加熱媒体には(メジャーなものが)3通り、放射(ラジエント:ようするに赤外線)、空気(エアー)、水(スチーム:状態としては水蒸気で潜熱を利用)がある(ピザストーンみたいなものを使うと伝導による経路も追加できる)。水と空気は流体で(伝導もしないわけではないが主に)対流によって熱を伝え、ここを自然対流と強制対流の2方式、あるいは流速が(熱境界層への作用に注目しておおむね5m/sくらいを境に)速い強制対流を加えた3方式に分ける(強制対流のものがコンベクション、速い強制対流のものがジェットまたはインピンジメントを名乗っていることが多いが、ジェットオーブンには家庭用の製品がほとんどない:ジェットというからには噴出し口から吹き付けるタイプを指すのが自然で、業務用機種は実際そのようなノズルを備えている)。媒体と対流のところで付く名前を組み合わせて、スチームコンベクションオーブンとか、エアーインピンジメントオーブンとか、そういう感じの名前になる(が、次で触れるように慣例的な用法が多くメンドクサイ)。
一般家庭で使われるのは、ラジエントヒーターの自然対流オーブン(とくに名称はないが、オーブントースターを名乗っていることが多いか)、エアーコンベクションオーブン(たんにコンベクションオーブンと呼ばれる:空気で加熱するというよりはラジエントオーブンにファンがついただけの機種が多く、語義を考えると似非だが慣例なので仕方ない)、スチームコンベクションオーブン(過熱水蒸気オーブンとかウォーターオーブンと称する:スチームコンベクションとかスチコンといった名称は業務用の機種に使われることが多い)のどれかだろう。なお、スチコンと蒸し器がどう違うのかというと、水蒸気の乾き度が異なる(過熱水蒸気にするのは乾燥させるためだといってよい:たかだか数度の顕熱に大きな意味があるわけではなく、気体の状態であることによる潜熱が効く)。湿り蒸気と乾燥蒸気は、氷タップリで0度の氷水と、たんに冷やした1度の水くらい違う。追記:フィリップスが2010年に公開し日本では2013年に販売が始まった「ノンフライヤー」は、上部にヒーターとファン、下部がバスケットと網になった方式。ノンフライヤーの語はなかば一般名詞化しているが、エアフライヤーとかノーオイルフライヤーとかノンフライオーブンという呼称もある。見た感じの印象でしかないが、どうもコンベクションオーブンをタテにして汁受けを付けたような感じのモノが多いみたい(ファンも少し強いようだが、ジェットオーブンの家庭用バージョンというわけではないらしい)。
これらの中で、小さい放射メインのオーブン(というか、オーブントースターとして売っている電熱線タイプのやっすい機種)が1台あると、なかなか便利だと思う。放射タイプはなにしろ立ち上がりが早く(だって流体あっためる必要ないんだから)、サイズが小さいと熱源から食材までの距離も短くなり仕上がりも速い。反対にいえば焦げやすいのだが、焦げ目をつけたいときに使えるということでもある。家庭用のコンベクションオーブンは、空気の対流で熱を伝えるというよりは、食材の周囲の湯気を飛ばすような効果の方が大きいんじゃないかという気がする。筆者も一応持っていて(アイリスのが中古屋で3000円くらいだったからなんとなく買っちゃった)たまに使っているのだが、表面の水分を飛ばしたいときはファンあり、たんに炙りながら温めたいときはファンなし、焦げ目を付けたいときは小さいオーブントースターという使い分けをしている。なお、大きめのオーブンだと、予熱にかなり時間がかかる(機種によるので取扱説明書を参照するしかないが、いわゆる「オーブンレンジ」サイズの家庭用電気オーブンなら、180度まで15分くらいかかるものが多いのではないか:いわゆる「予熱完了お知らせ機能」がついている機種もあるが、あまり過信せず自分の感覚でも温度を把握できた方がよいと思う)。
家の中での調理では、煙が出る焼き物がけっこう面倒。素朴に考えると、熱源が下にあるのが問題、つまり食材から出た油が落ちて熱源に触れるから燃えたり煙が出たりする。これを解決するにはもちろん上から加熱してやればよく、実際テーブルコンロなどの魚焼きグリルはそういう構造になっている。この手の機器はたいてい密閉式(蓋ないし扉つき)で、上からの加熱を開放式でやるサークルロースターとかいう機器もあるが、調理台が燃えない範囲の設定しかできないので火力に制限がある(パロマのPY-8など、業務用のものには出力が大きいものもある)。熱源が下方にある開放式だと、昔からあるガスの卓上ロースターのように熱源とずれた位置から油が落ちるようにしたもの、カセットガス式グリルの一部に見られる斜め下から加熱するものなどもある。どちらにしても油は落ちるし落とさないと仕上がりがよくないわけで、七輪のようにあえて燃やしてしまうのでなければ汁受けは必要になる(というか汁や油が落ちないならオーブンでも焼ける:上で紹介したノンフライオーブンなんかは汁が出る食材に強い)。汁受けに水を入れたり燃料にガス(燃焼すると水と二酸化炭素になる)を使うと水蒸気量が増えて蒸しに近い焼きになり、七輪のように水分が出ない燃料を使い食材も密閉しなければ純粋な焼きに近付く。
いろいろ検討した結果筆者は、ガスコンロ用の魚焼き器(下から順に、鉄板、発熱用セラミック網、焼き網と重なっているもの:セラミック網の上にゼオライトを入れてみたところ、使い勝手が微妙に向上した)で魚を焼くことにした。ポイントは火力調整と油のふき取りで、最初は強火で表面を焼き固め、滴るくらい油が出たらひっくり返してキッチンペーパーでふき取り、裏面も同様に焼き付け、ひっくり返す前に弱めの中火に落とし、表返して油をふき取り火を通し、裏面も同様に焼き火が通ってきたらまた強火、最後に両面とも強火で短時間焼いて仕上げる(ようするに、強火>中火>強火を両面でやる)。ちょっと鈍臭いやり方ではあるが、どうせ油は出るし落ちるので、燃えて煙にならないようにするには手で取り除いてやる以外にない。下に水を入れるタイプの電気ロースター(加熱効率が発熱量/面積になるため、大きいと火力が弱く小さいと使える食材に制限ができる)も買おうかとは思っているが、テーブルでものを焼いて食べるという習慣自体にあまり馴染みがないし、加熱調理はやっぱり換気扇の下でやりたいという気もする。
炊飯器はガスでも電気でも大差なく、炊いてほぐした後保温ジャーとして使える電気式が便利ではある。筆者の理解では、厚釜はIH(局部加熱される)を使うから必要になるのであって、従来型のヒーターなら薄いアルミ釜でも大きな問題はない。炊飯時の加圧についてはよくわからないが、調べてみたらデンプンの様子はどうやら違うらしいという報告を見つけた(東京家政学院大学紀要 第 51 号 2011 年 圧力炊飯による飯の特性 中村 アツコ:https://www.kasei-gakuin.ac.jp/tkgu_cms/wp-content/uploads/2022/04/51-5.pdf)。土鍋での炊飯は筆者も何年かやっていたが、少量の場合に向く一方、ガスコンロが1口塞がるのと面倒を見なければならないのがネック。どの場合も鍋の容量と実際に炊く量を合わせるのがポイントで、1~2合炊きの炊飯土鍋は容量いっぱい、たいていの3~5.5合炊き炊飯器は最大量の6~8割で炊くのがもっとも仕上がりがよい(3合炊きなら2or2.5合、5.5合炊きなら3.5~4.5合が適正量だと考えれば、大外しはしない:ちょうど3合なら5.5合炊きがよい)。半端な量を炊くよりは、1度に炊く量を固定して余った分を冷凍した方が(すでに触れたようにエネルギーは消費するが、労力や仕上がりも含めて総合的に考慮すると)効率がよいと思う。大量に炊くときは圧力鍋(筆者が持っているパール金属のクイックエコは、3.5Lが5合の5.5Lが8合まで炊けるが、3.5Lで5合炊くのが扱いやすいと思う)を使うとラク。米の炊き方については土鍋でご飯を炊くのページを参照(圧力鍋炊飯の紹介もここ:オマケの項を参照)。
結論から言うと、樹脂加工のIH対応16cm片手鍋、IH対応21~22cm寸胴(できるだけ深いもの)、26cmの樹脂加工フライパンと揃えれば基本的なことはほぼできる。27cmの中華鍋も欲しいが鉄鍋は本当に面倒なため覚悟が必要で、中華鍋を追加するにしても雑用フライパンはあった方が便利(なのでこちらが優先)。ガスをメインにするつもりでも、片手鍋はIH対応の方が便利、フライパンはガス専用でも大丈夫だが、もし中華鍋のサブにするつもりで1口ガス+IHの構成なら、もちろんIH対応がよい。寸胴はお好みで樹脂加工でもステンレスでも(酸やアルカリに弱いので樹脂加工なしのアルミは避けた方が無難)。これだけで満足した人は次の項まで読み飛ばそう。
鍋のサイズは内径の一番大きいところを表示するのが普通で、円柱に近いシェイプの鍋でも鍋底の平らな部分の直径(底径)は表示サイズよりも1~2割小さい。内径と高さがほぼ等しい円柱シェイプの両手鍋を寸胴と俗称し、高さが内径よりもあきらかに大きければ深寸胴、高さが内径の3分の2くらいなら半寸胴と呼ばれる。普通の片手or両手鍋で深鍋と呼ばれるのも半寸胴と似たようなサイズで、高さが内径の3分の1くらいだと浅鍋に分類される(これらの中間が普通サイズ)。IH調理器は機種ごとに鍋の大きさの制限があり、それを外すと動かない。ガスの場合、小さすぎると鍋が焼損するし、大き過ぎると一酸化炭素中毒事故の恐れがあり、通常タイプのコンロでは本体からはみ出るような鍋を使ってはならない(生命に関わる問題なので、実際に使用するときはコンロの取扱説明書を確認すること)。
20cm鍋だと3.5KWくらいのバーナーでも炎が無駄になることがある(筆者が持っている21cm寸胴(底径19cmくらい)は、実家のガス台の3.5KWバーナーでギリギリ炎がはみ出ない程度、自宅のコンロは普通に使えている:ガスの火は最外周の見えない部分が一番高温なので、はみ出さないだけでは十分でない)。底広ケトルとか省エネやかんと呼ばれるやかんが底径22cm前後なので、その辺が強火で使えるラインになっているのかもしれない(当て推量)。ただし大きければよいというものではなく、鍋が大きくなると少量調理に向かなくなるし、放熱量が増えて効率も落ちる。4.2KWくらいの家庭用強火力バーナーだと、28cmフライパンや30cm中華鍋は火力を犠牲にする選択肢になる。
IH調理器を使う場合、底径13~24cmくらいが無難に使える範囲になる(ただし揚げ鍋やオールメタルIHはサイズ制限がもっと厳しい)。調理可能なサイズでも、あまり小さいと加熱効率が落ちる(普及品は中心と外周で2分割されたダブルリングコイル、高級機は同心円状3分割のトリプルリングコイルというのが一般的だが、三菱電機がびっくリングコイルという名称で多分割レイアウトを採用している:見た目には真ん中に同心円2つ+外周4分割に見えるが、電気的には中央+前後+左右らしい)。2016年現在の筆者の認識では、21~22cm寸胴をもっとも効率よく加熱できるのは内炎式のガスだろうと思う(安全センサーの設置義務化で家庭用据え置きタイプは全滅したため、イワタニのエコプレミアムなどカセットガスしか選べない:ドリップケトルや片手鍋などにも適するので、あれば便利ではある)。
鍋の厚さは熱の広がり方に大きく関与する。厚いと鍋全体が均一な温度になりやすく、薄いと加熱された場所に偏って高温になる。とくに底の厚さは熱源との兼ね合いがあり、すでに紹介したようにIH調理器などは、加熱される箇所が偏っているため厚い底にしないと均一に火が回らない。反対に中華鍋などは、ガス火で丸い鍋底全体が加熱されるため極薄のチタン鍋なんかも使える。厚いと鍋自体を熱くする(予熱)ための時間が延びるため、短時間調理には薄いものの方が効率的。長時間調理であれば最初に1分やそこら違っても大差にならないし、温度の安定性(保温力)も高まるため厚いものが向く。
家庭で中華鍋(他の鉄鍋の事情は知らない)を使う場合、2度洗いで手入れするとキレイに使える。使ったらササラかタワシでざっと湯洗いして、鍋を軽く焼き、本格的に湯洗いしてからまた焼く。毎日使う鍋なら、月に1回くらいは金属タワシをかけて、年に1回くらいはクレンザーも使って鍋の表面を均しておくと、より使いやすくなると思う。何日か使わない場合は、キッチンペーパーなどで薄く油を引いておく(「塗る」ほど大量の油は必要ない)。
冒頭で挙げた、16cm片手鍋、22cm寸胴、26cmフライパンの組み合わせが便利な理由。
片手鍋は14cm1.2L前後のものと24cm(普及品の最大サイズで、普通の深さだと3.5Lくらい、深鍋シェイプのもので5~6L)のものを併用する案がまず浮かぶが、14cmだと袋入りの即席めんを茹でるときに入り切らないし、機種によってはIH調理器にはじかれることもあると思う。いっぽう24cm鍋でも底径は20~22cmが普通だから、3.5KWの外炎式ガスバーナーがギリギリ強火で使えるくらい。と考えると、IH調理器をメインに小さいものを選んだ方が合理的だろう(軽いとひっくり返りやすいし厚みがあれば熱容量も稼げるので、はり底のIH対応鍋が便利)。筆者が使っている16cmの片手鍋(たぶん和平フレイズのダブルマーブルシリーズ)は、底径13.5cm、実測で深さ8cmの満水1500mlくらい(深い方が煮炊きはラクだが、蒸し焼きなんかをするときには浅い方が便利で、このくらいが妥協点かなと思っている)。少量の揚げ物や1人前くらいのパスタ茹で(ロングパスタは折るかフライパンを使う)、目玉焼きなんかもこれでやってしまう(卵2個でも鍋が微妙に大きいけど、気になるならエッグリングでも使えばいい:目玉焼き用の丸い金枠で、たいていは直径7~10cmくらい)。逃げる熱量が少ないので、容量さえ足りるなら炒めにも使える(大きいフライパンを「中火で」使うくらいなら、片手鍋を同じ火力で使った方が温度が上がる)。これをメインに据え、片手鍋でできないことをどうカバーするかという考え方で他の鍋を揃えるのが近道だと思う。
両手鍋は用途によって必要なものが異なるが、比較的万能に使えるのは、内径22cmくらいの寸胴だろうと思う(どうやら、家庭用の鍋や圧力鍋は「10リットル」を境に法律的な扱いが変わるらしく、家庭用の24cm寸胴はあまり見ない:作りで多少変わるが、24cmで満水10.5~11Lくらいになるのが普通)。容量が大きいのでIH調理器(100V卓上型の場合、高火力を持続できる時間がかなり短い)よりはガス(瞬間的な火力はさほど出ないが、比較的高い出力を長時間持続できる)を使いたいのだが、外炎式バーナーだと炎がはみだす場合もあると思う。水の量が多いと加熱に必要な時間も増えること、スパゲティ(ロングパスタ)を茹でるときにそれなりの高さが欲しいことから、細めで深めのものがあれば便利なのだが、世間的にはレアな需要なのか品揃えが豊富でない(業務用の深寸胴は27cmからが多い)。パスタ鍋なんかを寸胴として使い回すこともできないではないだろうが・・・樹脂加工の方が便利そうな気がする(ただ、片手鍋と比べると(おそらくは面積が広いせいで)コーティングの寿命が短いので、ステンの方が気楽に使えるというメリットはある)。また4~5Lの両手鍋をわざわざ別に買うくらいなら、圧力鍋や保温鍋で代用してしまっても大差ないと思う。
筆者は以前ホームセンターでたまたま見つけた樹脂加工の深寸胴を使っていたのだが、2016年に探したところ似たようなものが見つからず、パール金属のHB-1847という21cm鍋を買った(H-2093が後継機種なのかな?)。しかし筆者の使い方だと、一番大きい鍋が満水6.4L(適正容量だと4.5Lくらいかな)というのはちょっと切ない、というか、下茹でなんかを一気にやりたいときや、キャベツ・白菜あたりを丸ごと使って煮物にするとき(煮始めると嵩が減るけど)は不便な思いをしている。業務用の22cm寸胴(8Lくらい)か、いっそ24cm(10.5か11Lくらい)が欲しいが、ちょっと高い(アルミなら安いけど手入れが大変すぎる)し、踏ん切りがつかない。24cmなら深くなくていいのだが、22cmで深めのが見つからない(小さくて深い鍋自体、業務用でもめったに見ないが、EBMがクローバーモリブデン深型寸胴鍋(深型タンク)というのを扱っており、20cmで8.7L、24cmで14.5L:クローバーは大屋製作所のブランドだそうな)。追記:トスカーナがパスタポット22cm SJ3120、パール金属がパスタ鍋22cmNEWだんらんH-5876という7L超のIH対応パスタ鍋を出しているよう。容量的にもうちょっとだが、業務用で見つけた遠藤商事(TKG)のAZV6622、江部松(EBM)のプロシェフIH寸胴鍋22cm、KIPROSTARのIH対応電磁調理器鍋ステンレス寸胴鍋22cm(蓋付)あたりと比べると少し安い。
フライパンは26cmが妥協点だろう(ロングパスタも、最初だけ手こずるがなんとか折らずに茹でられる)。小さすぎても大きすぎても使い勝手が悪い。平らで面積の広い鍋なのでコーティングの寿命も短いし、厚い貼り底だと反りが出やすい。安物を短めのサイクルで買い換える使い方ならガス火専用のものも候補になる(もちろん、熱源が確保できればの話だし、中華鍋と併用する場合IHも使えた方がラクなこともある)。底面と側面の境目が滑らかな鍋(洗いやすく返しやすくお玉で混ぜやすい)が筆者好み、コーティングはザラっとしたタイプの方が油の馴染みがよい。注ぎ口みたいなヘコミのあるもの(邪魔なだけ)や変に深さのあるもの(収納しにくいし炒めにくい)は大嫌いである。中華鍋との比較だと、やはり手入れのラクさが圧倒的なメリットで、カンカンに熱を入れる必要のない炒めを担当させることもできるため、中華鍋を持っていても出番はけっこうある。片手鍋では間に合わないが中華鍋を焼いて使うのもカッタルイ料理、というと、洋風の炒めとか、カレー用のタマネギ炒めとか、パンケーキ焼き(中華鍋でやったらエライことになりそう)とか、魚料理とか、まあその辺だろうか。筆者は以前1年間くらい、20cmの鉄鍋(スーパーの食器売り場で見つけてなんとなく買った)だけで通したが、近所のドラッグストアで26cmフライパンが1000円だったのを見つけてフラっと買ってしまった(700円のもあったけど、お高い方を選んだ)。2022年末追記:2500円の高級フライパンを買ってしまった。包み紙(っていうの?)には和平フレイズのTRB-2465だと書いてあるが、メーカーサイトによるとどうもデイズクックシリーズのRB-1762(相当品かモデルチェンジ前のモノ)らしい。平らで丸く普通の深さでザラっとしたコーティング、縁取りがあるのも筆者好みだし、注ぎ口らしきものはついているが外形は変えずに厚みをえぐった作りで使いやすい。一般家庭で鉄鍋を使おうとすると、調理もかったるいが、鍋を焼くのがものすごくかったるい(少なく見積もっても5分くらいはかかる)。それでも家で鉄の中華鍋を使いたいなら27cmがベストだと思う(とくに4.2KWクラスのガスコンロと組み合わせる場合)。筆者は実家の物置で発掘した30cm鍋をしばらく使っていたが、引越しを機に処分し、新たに27cm鍋を買った(重さのバランスを優先して1.6mm厚にしたが、正解だったと思う:販売店により表記が違うが、全体でおよそ1kgちょいらしく、業務用の39cmと比べると3分の2くらい)。樹脂加工のフライパン(急冷に弱く連続使用(使ってすぐ洗ってまた使う)がしにくい)と併用する場合も27cmで困るということは考えにくく、おそらくここがベストの妥協点だと思う。火力を最優先するなら、少量の弱火~中火調理は片手鍋に任せてしまい、中華鍋を24cmにする案もあり得る(とくに熱源が複数同時に使える場合)。ただそうすると、炒めに使ったときは火力を出せるが、応用範囲の広さも中華鍋の魅力のひとつなので、ちょっともったいない気もする(炒め専用にするとしてもやはり24cmは小さい:というか27cmでも窮屈な場面はある)。
揚げ鍋も筆者は持っていないが、揚げ物の頻度によってはあった方が便利。口が広い方が使いやすく、揚げ油1.45L(1300gのサラダ油1本相当)くらいは使える容量が欲しい(取扱説明書の適正油量表示に従うが、普通のシェイプだと満水容量の1/3~2/5くらい)。油の持ちを考えると、シリコン焼付塗装、アルミ、ホーローの3択だが、入手性を考えるとシリコン焼付塗装(揚げ物は、磨耗に弱いが高温に強い特性が活きる用途だと思う)が妥当か。中華鍋を揚げ物に使う場合、27cmで満水3L強なので、油は1000gくらいにしておくのが無難だろうか(鍋の形状と容量による)。一度に揚げられる量、というのも揚げるものによって異なるが、普通に考えるなら油の4分の1くらい(1.45L=1300gの油なら300gくらい)、せいぜいムリをしても油の半分くらい(同じく650gくらい)までにしておくのが無難。
圧力鍋はとても便利である。自炊用なら小さいもので十分だが、筆者は5.5Lと3.5Lを両方買ってしまった(パール金属のクイックエコ)。使っているのはほとんど5.5L(本当は7Lくらいのものが欲しかったのだが高かったので妥協した)で、3.5Lはめったに出番がないまま引越しで処分してしまった。煮込み料理(角煮とか煮付けとか)がラクにできるメリットはもちろん、圧力鍋で蒸すとものすごく濃厚なスープが取れる(常に高温高圧の蒸留水に触れるのだから当たり前)。たいていの具材はカラカラの出汁がらになり味が残らないほど。ただし魚出汁などは臭みも(圧抜き後にしばらく沸騰させると多少飛ばせるが)完全抽出されるのであまり向かないし、昆布のように過熱するとえぐみが出るものにも向かない(骨付き肉や貝などに向き、生姜湯も作れる)。このスープはそのまま使うと濃すぎるので、カツオや昆布など普通の出汁で割って使っている(どちらも製氷皿で凍らせて保存)。圧力鍋は高温調理ができるためセルロースやコラーゲンの破壊は速いが、肉の赤身部分などは破壊が進みすぎるとかえって硬くなる(だから油通しのときなんかも高温を避けるわけだし)ので注意が必要。
他に変わったものとして、筆者は保温鍋(パール金属のエコックの一番小さい3.2L)も買ってしまった。出番はそれほど多くないものの茹豚作りには便利。茹豚以外の用途では、中身が少ないと保温効率が落ちるのが悩みどころ。5.5Lの圧力鍋や30cmの中華鍋と相性がよく、サブの両手鍋としても一応使える。保温容器のつもりでスープポット(和平フレイズのFLR-6865:400mL)も買ったが調理用には小さく、あまり活躍しないまま引退してしまった。いわゆる減圧鍋にも興味はあるのだが、これってようするに、触れる酸素の量を制限しながら徐冷ができるのがポイントなのであって、低い圧力で調理するためのモノではないような気がする(まー実物使ってみないとわからんけども)。
熱源が対応しているなら、12~13cmくらいの極小鍋も選択肢になる。ソースパンとかミルクパンという名前が多く、雪平鍋のような形のものもある。以前はたいていホーローだったが、ステンレスやセラミックのものも増えてきた(もっと小さいものはプチパンとかミニパンなどと名乗っていることもある)。土鍋系(鍋ごと電子レンジに入れられるものが多い)やスキレット系(オーブン調理に対応しているものが多い)にもメリットはあるのだろうが、鍋は熱容量の小ささが手軽さ(というか速さ)につながるので、ステンレスが有望ではないかと思う。容積が小さい鍋としては、いわゆる親子鍋(丼もののアタマを作る用の鍋)もあり、16~17cm(5寸丼に合わせてるのかな)が主流。遠藤商事のAOY30という製品は例外的に13cmと小さく樹脂加工もしてあって、わかっていらっしゃる感じ。業務用の中華お玉とそう変わらないサイズだが、たとえば酒を煮切ろうと思ったときに、家庭の台所で鉄お玉を出すかこの親子鍋を出すかといえばきっと後者だろう(同じ会社がATY55002というステンレスの2号中華お玉も扱ってるけど:ATY11002というのはサイズが違うので注意)。小さいフライパンは14cmまでが主流だが、12cmくらいのものも一部ある。このくらいになると取っ手が火に晒されがちで金属製の方が便利なのだが、やはり遠藤商事のAHLAC01という業務用製品が、12cmでアルミで樹脂加工で金属ハンドルと、とてもわかっていらっしゃる。
複数熱源対応の鍋は・・・それぞれに特化した方が効率がよくはあるのだが、たとえば電子レンジ>ガス火のように連続して使う場合なんかには便利だろう。基本的には、IHに対応するには平らな磁性体の鍋底が必要で、電子レンジでは使えなくなる。どうしても両方で使いたいなら、鍋と調理器の間に入れるIHアダプター(ようするにステンレスの板で、ヒートディフューザー(熱拡散器or熱拡散板)とかヒーティングプレートとかヒートコンバーターとか、いろいろな名前で呼ばれる:鍋とプレートの間の熱移動が、調理器による発熱を上回っていないと、板が過熱する欠点がある)とか、鍋の中に入れるヒーティングプレート(発熱板、たいていは複数の穴が空いている:熱源が近くなる影響なのか焦げやすくなる欠点がある)とか、何かしらの工夫が必要になる(いわゆるIHマットは、発熱体ではなく単なるクッションなので別物)。直火と電子レンジの両対応を目指すと、セラミック(というかガラスor土鍋系)になるのが自然で、キャセロール(もとはたんに鍋の意だが、鍋のままテーブルに上げる料理の名前に転じて、さらにその用途の鍋自体も指すようになった:ココット鍋orココット皿やラムカンやグラタン皿orドリア皿との区別が曖昧でメンドクサイ)か土鍋(これも曖昧だよなぁ、ガラスだってセラミックだし)ということになる。片手鍋だと電子レンジでの使い勝手が(回らないタイプなら影響のないものもあるだろうが)制限されるし、オーブンで使ったときはミトンで持つ必要があるし、強度的にも両手鍋にした方が安心だろう。蓋に穴が開いたものと蒸し器も意識したものがある。
シリコンスチーマーとかレンジ鍋の類は、筆者は家では使っていないが、最近は冷凍もオーブンも電子レンジもOKというものが安くなったようだ。この手の容器でオーブン調理なんてめったにしないだろうし、冷凍>レンジだけ考えるなら普通のプラ容器の方が使い勝手がよい(とくに冷凍時の密閉性)だろうが、耐熱温度が高いこと自体はメリットになる。本命はやっぱり蒸し用途だと思うのだが、そこに特化したレンジ蒸し器も各社から出ているし、他の項で紹介した真空おひつの類にも、電子レンジ対応で蒸し料理用のすのこが付属しているものがある(サイズの問題と、臭い移りの問題さえなければ面白そうな選択肢)。少し価格は上がるが、オモリつきの密閉方式で圧力調理を謳った製品もある。スノコを使ったときは仕方ないとしても、本体の底が凹凸になっているものは洗うのがかったるいので、事前に確認した方が無難。炊飯とかパスタ茹では・・・筆者は炊飯器や鍋でやりたい。
包丁は、ペティ(12cm)、牛刀18cm、牛刀24cmで3本揃えるとよい。ぶっちゃけ牛刀18cmだけあればたいていのことができる。中華包丁が欲しいなら30号サイズがオススメ(これがあれば牛刀24cmは省いてよい)。まな板は大きいに越したことがないが、小さいのも用意しておくと便利。手入れのラクさを重視して、筆者は皮むき(ピーラー)をセラミック刃のものにしている。大きな魚を捌くなら出刃はあった方がラクだが、中華包丁でもやれないことはない。ウロコ取りは魚を捌くときにも使えて、それなりに便利。おろしがねは普通の穴あきプラが結局使い勝手がよいと思う(セラミックのツブツブ皿も便利だけど収納でかさばるのよねぇ、アレ)。追記:包丁砥ぎをお願いしている金物屋さんに唆されてボーンチョッパーも買ってしまったのだが、これ、調理台がしっかりしてないと力が逃げるねぇ。業務用キッチンならゴムハンマーでゴンゴンやってスペアリブでも豚足でもぶった切れるんだけど、一般家庭の台所だと派手な音がするだけで力が伝わらないし、まな板がけっこう傷付く。
鉄鍋を使うなら中華お玉が断然よいが、手入れが面倒なのでプラもあると便利。灰汁取り、カス揚げ、味噌漉し、すくい網、菜箸、計量カップ、計量スプーン、しゃもじあたりはまあ普通のものを。油やスープを漉すときに20cmくらいの巨大漏斗(米とか豆とかに使うのが本来だそうな)とすくい網を併用すると、なかなか便利である。筆者はこの辺の調理器具をほとんどダイソーで買った。フライ返し、木ベラ、ゴムベラ、泡立て器、トングあたりは、必要になってから買っても遅くない。お玉や菜箸は、中華鍋や片手鍋などと一緒に換気扇のフードにマグネットフック(「超強力」と書いてあるやつ)をつけて吊るしている。ちょっと面倒なのがザル。傾向としては、プラスチック<パンチメタル<金網の順に強度があるため、この順に大きなものに適するのだが、家庭だと金属製の調理器具ってのは意外と使いにくい(金属同士が触れているところからサビ始めるのがやっかい)。筆者としては、21cmのプラ(穴が格子でなくスリットになっているもの)と27cmのパンチメタル(普通はステンレス)の組合せが無難かなという気がしている。金網タイプはとにかく丈夫なので大きいものが欲しければこれしか選べないが、やはり扱いが面倒だと思う。またプラスチックのザルしかないと、揚げ物に使いにくい(パンチメタルなら、キッチンペーパを敷いての油切りはもちろん、その気になればジャーレンみたいな使い方もできる)。追記:プラザルが2年足らずで割れたので、ワンサイズ大きい24cmに買い換えてみた。米を3合研ぐときやバスタの湯切りには使いやすくなったが、やはり取り回しは少し劣る。21cmと両方持つのも邪魔くさいし、微妙な問題だなぁ。
筆者の場合、食器としてではなく調理器具として、小さい飯碗(卵を溶いたり下ごしらえした食材を寝かせたり:中古屋で買ったものだが銘によれば有田の一峰)と深い小皿(片栗を溶いたり合わせ調味料を入れたり:これはたしかもらいものだったような記憶がうっすらとある)を使っている。ステンレスでもいいのだろうが、酢とか重曹なんかを使う場合に、金属よりも陶磁器の方が安心感がある。追記:食器と調理器具の兼用のつもりで2点買い足した。どちらもリサイクルショップで捨て値だったのをたまたま見かけたもので、ひとつは事務所で客にお茶を出すときに使うような小さい茶碗。底に西峰の銘があるので有田だと思う。もうひとつは深碗(形は丼だけどサイズがごく小さい)で、クリーム色のベースにちょっとした絵柄が入っており、その下に「(C) NOBIKO OSADA」なる表示がある(norikoでもnobukoでもなくnobiko)。さらに、底を見るとなぜかBASKIN ROBBINSの銘がある(31のマークもあるのでパチモノではなかろうと思うのだが、なんだろうなコレ:アイスの景品にしては作りがよすぎるというか、違う図柄で単に器として売ったら1000円くらいはしても不思議じゃない出来に見えるんだけど)。満水容量を実測してみたところ、深小皿150ml、茶碗180ml、飯椀250ml、深碗300mlとキレイに並んでおり、実用容量も、80、120、160、180~200mlくらいと、けっこうキリよくおさまった(ちなみに、メインで使っている樹脂お玉が満水130ml前後、プラの散蓮華が30mlくらい)。
挽臼はちょっと注意が必要。油が出るものや香りが強いものには専用のミルを使いたいところだが、あまり数を増やすのも考え物である。そこで、ゴマとコショウだけ専用のミル(保管容器を兼ねるやつ:どっちもセラミック臼がいいと思う)を用意して、それ以外のものはプロペラ刃のコーヒーミル(安い奴でいい)を使い回し、どうしても挽きにくいものだけすり鉢を使うのが妥当だと思う。使い回すときはとくに清掃のしやすさが重要なので、カッター系(コニカル刃とか)や臼系(いわゆるグラインダー)など閉鎖度が高いものは使いにくい。すり鉢は究極のフルオープン形式(まな板2枚で挟んでハンマーで叩くとか、そういう反則系を除けば)だが、汁や油が染み込まない素材のものが無難(この用途であれば)。使い回さず一品専用にする(掃除は必要だけど)なら臼系も手軽で、ダイソーなんかで売っている小型のミルはサイズの小ささが利点、ホームセンターなどで売っているやや大型のミルは多めの量を挽くときに速い。焙烙(焙煎土鍋のことで「ほうろく」または「ほうらく」と読む:形状はさまざまで、浅いミニ北京鍋みたいな感じのものから注ぎ口とフタがない急須のようなものまである)は、ほうじ茶でも作るのでなければ中華鍋かフライパンで代用できる。
保存容器は、密閉度が高く蓋を外さないとレンジにかけられないタイプと、密閉度が低くそのままレンジにかけられるものを使い分けると効率的。密閉度が高い容器は、冷凍庫に入れる前に荒熱を取ったら、いったんフタの水滴を払って閉め直しておくとよい(冷やすと脆くなるので、吸い付きすぎると割れることがある)。容量は500cc前後(炊いたご飯で1合分、茹でた豚切り落とし肉で250g分、石突を取ってバラした普通パックのブナシメジで1袋、中華スープ1人前(12両≒450~480cc程度:タンメンのスープも普通同分量)くらいが、だいたいちょうどで入る)を基準にするとよいが、フタの形状によって満水容量を使い切らない設計のものもある。電子レンジに入れるにしても冷凍庫に入れるにしても、高さ14cm前後がひとつの目安になるだろう。減圧機能のある密閉容器も真空保存容器とか減圧調理容器(いわゆる真空調理法に拡散促進の効果はないらしいが、どこのメーカーも「スピード調理」とかなんとか騒がしい:それよりせめて、真空度と耐熱耐冷温度をちゃんと表示すりゃいいのに)などという名称で売られている。
何を使っても大差はないと思うが筆者は、汁物の冷凍(膨張するので厚く硬い容器だと割れやすい)には岩崎工業のスマートフラップ角型(M)610ml、冷凍ご飯にはエビスのジャストロック長方形L(PL-67:600mlで1.1合くらい入る)かパール金属のキープロック長方形900ml(HB-589:1.5合ちょい入る)、少量用途にセブンイレブンの電子レンジで使用できる保存容器(7PL保存容器320ml)を使っている。スマートフラップは低密閉で汁物冷凍に使いやすく、重ねて収納したとき高さが(とくにフタの分で)嵩まないため数を揃えるうえでも便利(ウチの冷蔵庫の2段目(極端に低くしてある)にもちょうど入る)。蓋にヘコミ(空気穴から汁が吹き出たとき溜まるようになっている)があり、汁物を冷凍するとここが押されてフタがすくことがあるため、(入れ過ぎを避けるのは当然として)上に保冷剤か何か乗せて冷凍するとよい(この用途だと実用容量は450mlくらい)。ジャストロックは「電子レンジOK。フタをずらして、そのまま加熱できます。」と明記がある親切さがウリ。スマートフラップと比べて少しスリムで少し背が高い(ご飯用としてはこの方が便利だが、ウチの冷蔵庫の2段目にはちょうど入らない)。キープロックはスタック収納を捨てて微妙な大容量化をしており、それがまた微妙に便利(だと思う:900ml長方形タイプは、フタを外せばウチの安物レンジに2つ並べてもムリヤリ回ってくれるが、ひとつひとつレンジをかけた方が無難だと思う)。
乾燥昆布や出汁パックやコーヒー豆は冷凍庫に保存したい。筆者の冷凍庫は容量がけっこうカツカツになっているが、詰め込んだ方が効率がよくなるのでまあいいのだろう。汁物の冷凍には、シリコンバッグと呼ばれる柔らかい袋もあるのだが、筆者としては形が決まったハコの方が扱いやすいように感じている。だいたいの目安に過ぎないが、1.5合の冷凍ご飯や500ml程度の冷凍煮物は、500wのレンジで5分+上下を返して3~4分+鍋で仕上げくらいで温められる(熱容量に対しては水の分量が支配的なので、結局は重さで考えればよい:冷蔵の場合は、同じ分量で3分+2分くらいだろうか)。筆者の台所では、冷解凍の小物として、杉山金属のNewクイッ君大(KS-3181)が大活躍している(底のフィンは面積を稼いでいるだけでなく、温まった空気を横に逃がしてくれるし、上の皿は汁受けになるだけでなく、水を入れて接触面積を稼ぐことができる:さすが)。粗熱取りにも解凍にも急速冷凍にも使えるし、前述のスマートフラップ610mlやジャストロック600mlが2つ並んで乗る。シリコン鍋敷き>凍らせた保冷剤>クイッ君>皿に水150cc>保存容器、と重ねると(当然室温や容器の形状にもよるが)1時間くらいで、炊きたてのご飯1.5合の荒熱を取ることができる(急ぐときは冷凍した保冷剤を容器と皿の上にも敷き詰める)。なお、密閉容器でご飯を冷凍する場合、解凍するときの都合も考えた方がよく、ドンブリ(内径15cmくらいのものが多いはず)に移すなら正方形タイプ(500ml前後のもので1辺12.5~14cmくらい)が使いやすい。量が少なくてよいなら、ご飯専用の冷凍容器も市販されている(筆者は長方形タイプで不自由してないけど)。
製氷皿(アイストレー)はダイソーで買った5個タイプ(いちばんデカい氷ができるやつ:後で4個タイプを発見して乗り換えた)を飲み物用に、合計容量が一番大きかったもの(氷1個がちょうど25ccで重宝している)をダシ用に使っている。氷の熱容量は体積が、冷やす効率は表面積が支配するので、球形の大きな氷はゆっくり長時間、カキ氷状の氷は一気に短時間の冷却に適するのだが、水は凍るときかなり膨張するので、大きい氷を作ろうとすると容器破損のリスクが出てくる。飲み物(というかおもに蒸留酒のロックアイス)用のボールアイスは板氷から削り出すのが本来だが、最初から丸い氷を作れる製氷容器も市販されている(膨張に耐えるため、柔軟性のある素材を使っているものが多い:ゆっくり冷やした方が透明度の高い氷になるため、あえて熱が伝わりにくくしてある製品もある)。凍らせた水が腐ってしまう心配はほぼないが、たとえただの氷であっても臭い移りと無縁ではないので、作りっぱなしの氷は定期的に状態を確認しておいた方がよい(使おうとして「うわー、なんか変な臭い」となっても、作り直すのに時間がかかるので)。筆者は、氷を製氷皿のまま保存せず凍ったらポリ袋に移し、使うときは水道水で洗ってから使っている。
タケヤ化学工業のフレッシュロック パスタ 2.7Lは、本来ロングパスタ用なのだろうが、オーマイのエクセレントフジリ6mmの1kg袋を入れるとちょうどくらい(微妙に入りきらないが袋を開けた直後に1人前使えば残りが入る)なので、ショートパスタ用に回してしまった(ロングパスタ自体あまり食べなくなったというか、以前スパゲティを使っていたレシピもだいたいフジッリで済ませてしまうようになった)。米びつは5kgのものにしてなるべく回転を上げ、米用と別にもうひとつ平べったいタイプを用意、未開封の乾物や粒系調味料(ゴマとかコショウとか花椒とか)やパウチ類を入れている(米を取り出すための窓がついていて便利)。その下に10Lの食品ストッカー(密封タイプでめったに開けない)を置いて、粉物調味料の使いさしや缶詰め瓶詰め類を収納するスタイル。このところ水出し緑茶を常飲するようになり、お茶パックの収納には食品用の850ml容器をあてた(お徳用の50パックパッケージでもなんとか入る)。紅茶ティーバッグの場合、日東のDAY&DAY50パックだと、入らなくはないがものすごくムリヤリになる(同社のデイリークラブと違って紙包装なので容器に入れたい)。油入れはホームセンターで買ったガラスビンを使っている。油は光を嫌うが台所の下なら暗いし、金気も嫌うのでビンの方がいいかなぁと。雑用油は大きめの急須(茶漉しがステンレスのやつ)に入れた。調味料入れは平凡なデザインのものの方が使いやすいと思う。砂糖、片栗、塩をケースに入れた上に香辛料を乗せているが、使用頻度が低いものは冷暗所に保管した方がよい。プラスチックのストッカーケースは地味に便利で、冷蔵庫の中に嘘野菜室を作ったりもできる。
「こうなってるとよい」なんて言われてもどうしようもない話ではあるが、しかしこうなっているとよいやり方はあるので触れておきたい。以下右利きであることを前提に話を進める。
配置は、左に加熱調理器、真ん中に調理台、右にシンクが原則である(右シンク/左シンクとか右勝手/左勝手という言い方もあるが、シンクの位置よりも加熱調理器が左にあることの方が重要度が高いと思う)。鍋から器に料理を移すとき右側に食器を置いておくのが自然な配置だし、洗い物をするときシンクの左に台がないと食器を置きにくいし、シンクの左端にくずかごを持ってくれば調理台から切れ端を捨てるのもスムーズである。贅沢をいえるならシンクの右側か背後にも台(なければ電子レンジラックかなにかくっつける)があると理想的。なお、加熱調理器は部屋の隅に置くべきだというのが筆者の主張で、端から離れたレイアウトの部屋にも住んでいたことがあるが、調理の煙が部屋中に広がって最悪だった。キッチンにカウンターを作りたいならシンクや加熱調理器の反対側に置けばいいのに、と思う(業務用のキッチンだと、壁側にコンロ類がズラっと並んで、振り向くとコールドテーブルになっていることが多い:とくに中華屋ではコンロや餃子台に水道蛇口がある都合からほぼ壁側になる)。キッチン自体にそう広大なスペースは必要ないが、コンロや電子レンジなど加熱調理器具と冷蔵庫・冷凍庫だけは置かなければならないので、キッチンに「壁」がないレイアウトは使いにくい。
その冷蔵庫・冷凍庫には直冷式(庫内の壁が冷却器になっている)と間冷式(ファン式)がある。直冷式は静粛性やエネルギー効率に優れるが霜取りの手間がかかり、間冷式は自動霜取りだが霜取り作動時に庫内温度が上がる。容量はまあ使い方次第なのだが、冷蔵庫のドアポケットは大きい方がよい。個人的には合計170L(125+45Lか110+60L)クラスのファン式冷凍冷蔵庫+100Lクラスの直冷式上開き冷凍ストッカーというのが理想(ストッカーがあれば冷凍冷蔵庫の冷凍室は小さくて大丈夫だが、ちょっとした冷凍物は手が届きやすいところに置きたいし、霜取り時のバックアップにも使いたいので、ないよりはあった方がよい)だと思うのだが、なにしろ置き場所に困る。国内主要メーカーのものは合計170Lを境にリサイクル料金が変わるのでいちおうチェックしておこう(2015年の「JIS C 9801-3:2015附属書H」で容量の計算方法が変わりIECとも整合させたらしい:この項の数字は旧計算法JISC9801-2006によるもの)。冷蔵庫をシンクの右側orコンロの背後に置くなら左開きが便利だし、シンクの背後に置くなら右開きが便利。
家庭用の冷蔵庫は側面(と機種により天面と、まれに前面も)から熱を捨てる構造のものがほとんどで、昭和の時代に主流だった背面放熱はほぼ絶滅している。このため背面は壁ベタでもよいものが多いが、左右には0.5~3cmくらい、上部には30cm前後の隙間が必要になる(実際の使用に際しては取扱説明書を参照)。とくに暑い時期には側面に扇風機(なりサーキュレーターなり)で風を吹き付けてやると効率が上がるし、もし室内が外気温より暑いのであれば、換気をよくすることでも少し冷えやすくなる。天面(トップテーブル)にものを置けるか、どの程度まで重いものを置けるかは機種による。家庭用のファン式冷凍冷蔵庫はたいてい、冷凍室と冷蔵室で冷却器が独立しているもの、1つの冷却器で冷蔵室に送る風量だけ自動コントロールしているもの、冷蔵室への分配量が固定(ないし3段階くらいの手動設定)されているもののどれかである。安価な小型機種の場合、温度センサーは冷蔵室だけにあって、冷気分配量は手動ツマミで3段階くらいのものが多い。この場合は、冷凍室の温度が希望の範囲に収まるようにツマミを調節してやるだけでよい(というか冷蔵室の温度は調整できない:極端に暑いときに、冷凍室を犠牲にして冷蔵室の温度を下げることは、いちおうできなくはない)。
ゴミ箱の位置もけっこう悩む。基本はシンクのすぐ隣、場合によってはシンクに立ったときの背後もあるのかなと思う。細かい話だが、腐敗する生ゴミはポリ袋(保存用に使った余りで十分)に入れ密閉して捨てた方が、ゴミ箱が臭くならない。空気は漏れるが湿気は抜けない程度の半密閉を保つとたいへん臭くなる。三角コーナーはステンレスのを使いたいのだがシンクが錆びるのも嫌だし、悩ましい。家庭用のシンクは狭いので、中華鍋を洗うときにプラの三角コーナーを焦がさないかハラハラする(プラのを短めのサイクルで使うのが結局無難なのかな)。
冷蔵庫ドアポケットの容量は意外と重要で、筆者は冷蔵94L+冷凍44Lのファン式を使っているのだが、ドアポケットには水、お茶、牛乳、オレンジジュースのパックを置いたらいっぱいで、醤油、酢、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、中華味噌やオイスターソース、チューブ入り練り調味料、4.2Lプラケース(嘘野菜室を作るためのもの)などが下段を占領しており、上段に卵と梅干と香味油を入れると、完成品の料理は丼で2つくらいが限界(元は4段式だが、1段抜いて、中段を目いっぱい狭くして、2段式に近い状態で使っている)。本当は料理酒や味醂も冷蔵したいし、生姜水なんかも作っておきたいのだが。冷凍庫には、氷、ダシとか蒸汁とか(これが場所を取る)、ご飯、茹豚、ボイルニンジン、香味野菜各種、パンあたりが入っており、7割方は常に埋まっている状態(冷蔵庫は7割未満で使う方が冷却効率がよいが、冷凍庫はたくさん詰め込んで温度変化を小さくした方が効率よく冷えるので、埋まっているのが悪いわけではない)。
ドアポケットの「2段め」に高さ(25cmあれば牛乳パックが入るし、30cmあれば1Lクラスの調味料ボトルも入る)が必要だというのはあまり一般的でない需要らしく、280Lクラスの2ドア機種でもポケットを縦に切り詰めているものが多い(ハイセンスのHR-B2501という機種は高さがありそうだが寸法不明)。冷蔵庫の買い替えも検討はしていたのだが考え方を改め、冷蔵室は上段を広くしてボトル類をそちらに置くようにしたら、庫内がかなり広くなった。それでも高さの不満はまだ解消していない(冷蔵室が外寸60cmの内寸53cmくらいなのだが、もう10cm高ければと思うことがよくある)が、買い物に行ったらすぐ料理することが増えたこともあり冷蔵室はカツカツでなくなった。その分作り置きが増えて、ダシ類とパンの冷凍を諦めたにも関わらず、今度は冷凍室がいっぱいになっている(ストッカー欲しいなぁ)。
日本の住宅用キッチンは、長方形で奥が壁になっているいわゆる「壁付I型」の場合、奥行き65cmがデファクトスタンダードで、シンクは幅80cmがメジャーらしい。家庭用ガステーブル(ガスコンロ)は標準幅59cmかコンパクト56cmのものが多く、ステンレス板や薄いタイルなどの不燃材を可燃性の壁に直接貼り付けた壁で防熱板がない場合、左右奥行き15cm離すのが普通(消防法やら火災予防条例やらあって複雑なので、実際の購入に際しては各自で確認のこと)。60cmのコンロをシンク(の調理台)にくっつけて反対側は15cm壁から離すとすると、75cm必要になる。大型コンロの奥行きは50cm弱のものが多く、壁から15cm離すと65cmで標準的なキッチンにぴったり収まる(余談だが、いわゆるビルトインコンロや備え付けコンロは機種を自由に選べず、本当に不便である)。
上記は世帯向けのサイズで、単身用の集合住宅にはもっと小さいキッチンが多い。典型的なのは、奥行き55cmで、間口はコンロ置き場70+調理台50+シンク60で合計180cmのもの(シンク開口部幅55cmくらい)。グリルなしの2口コンパクトコンロだと、パロマのPA-29Bで幅560*奥行き363mmだから、置けるかどうか微妙なところ。家庭用のまな板はせいぜい45*25cm(とくに大きいものでも50*30cm)くらいなので、上記のサイズなら調理台の幅が足りないということはあまりないが、食器立て(ガワが深いものは湿気が篭るので皿タイプがオススメ)を置きっぱなす運用だと奥行きはカツカツになる。
筆者は自宅で頻繁に料理をするし、台所自体は上記の単身サイズ(奥行き55cmのコンロ置き70+調理台50+シンク60=180cm)がギリギリ最低ラインだと思っているが、いわゆる間取りでいう「キッチン」は広くなくても構わない。台所が食堂を兼ねる場合(いわゆるダイニングキッチン)で、冷蔵庫にオーブンと電子レンジくらい置いても単身なら、180*270cm(畳で3畳)もあればどうにか押し込めるレベル、ストッカーを置くとしても4畳半もあればたくさんだと思う。ただこれは空間を「台所専用に」使えた場合の話で、廊下と共用になっているだけならまだしも、トイレやら浴室やらへの出入口で壁が奪われると、あっという間にスペースが足りなくなる。ここは面積よりも作りのよさが必要な部分。
キッチン以外に、日本の単身向け住宅の事情として、衣類干しが部屋を圧迫する。ベランダやバルコニーがあってそちらに干せるならよいが、そういう設備がないとか、花粉症が酷いとか、季節によって雨天や黄砂が続くとか、屋内に干さざるを得ないケースも普通にある。ドライルームとしてもっとも有望なのが「脱衣所」で、洗面所を兼ねているような広いタイプのものだとありがたい(洗濯物が広がっていると風呂に入れないような作りだとタイミングが難しいけど、その風呂があるおかげで強制換気できるのが強み)。コインランドリーの大型ガス乾燥機はとても便利で、リーズナブルな出費で大きな問題を解決してくれるのだが、立地は運任せになる。
生活部分も、デスクまわり(幅130*奥行き200cmもありゃ足りる)とシングルベッド(カツカツに置いて100*200cmくらい)で用が足りるなら、4畳半もあれば十分だろう。ようするに、台所に「壁の長さ」があって、濡れた衣類を干す場所がある(または干す必要がない)なら、台所4.5畳の居室4.5畳なんてのは十分広い(もし荷物が多いとしても、カビさせずにしまっておける場所があるかどうかの問題だと思う)。筆者はいわゆるワンルーム(それなりに広かったけど)にも数年住んだが、料理をする場所と生活する場所が同じというのはどうにも不便である(その期間はほとんど家で料理しなくなったが、それでも、冷蔵庫がうるさいのはけっこうコタえる:部屋が分かれているにしても、寝る場所からは極力離したい)。いわゆる2LDKにも住んだが、一人だと持て余す(生活用の部屋のほかに荷物を置ける部屋があるのは便利だけど)。
ステンや鉄をそのまま使う鍋もあるが、表面にいろいろ塗った鍋もたくさんある。
代表選手はやはりホーロー(琺瑯:ホウロウ、エナメル、七宝焼などとも)。これは金属(たいてい鉄か鋼かアルミ)の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けたもの。つまりガラスコーティングなので、熱や化学変化に強いが衝撃に弱い。鍋だけでなく、調理設備にもホーローが使われることがある。樹脂加工の鍋に比べると、一般に値段が高い。鉄のヘラやお玉でガンガンぶっ叩く中華鍋にはまったく適さない加工。
ホーローよりよく見るのはフッ素樹脂でコーティングした鍋。テフロンはフッ素樹脂の一種でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のこと。230~260度くらいから劣化が始まるらしい。引っ掻きなんかにも弱く、金属ヘラが使えないものもある。いろんなメーカーがいろんな名前でいろんな商品を出しており、値段も安い。油が燃え上がるほど加熱し鉄のヘラやお玉でガンガンぶっ叩く中華鍋にはまったく適さない加工・・・だが、いわゆるディープパンとかイタメ鍋の類を中華鍋だと言い張っている例はある。
ちょっとマイナーだが製品は増えつつあるのがセラミック鍋。この呼称がまず面倒で、土鍋のことではなく金属にセラミック皮膜を付加した鍋を指し、ガラスもセラミックの一種ではあるが普通ホーローは含まない。基本的には、ホーローの互換品か、改良品だと思ってよいはず。2019年現在は値段が少し高め。セラミックコート(ないしフッ素セラミック)の中華鍋はたまにある。
シリコン皮膜は機械的に弱いが熱に強く、揚げ鍋なんかに適する。これは仕組みがよくわからなかった。だいたいが、セラミックス(焼結した無機化合物)とシリコーン(珪素酸化物(シロキサン)を中心とする高分子)の区別自体、焼いて作ったかどうかの違いでしかない。とにかくまあしかし、シリコン皮膜とかシリコン加工と呼ばれている鍋の特徴として、機械的に弱いが熱に強いというのはだいたい間違っていないので、そこまででよしとしておきたい。シリコンフッ素加工を名乗る製品もあるが、PTFEを併用しているのか、PTFEの実装法のひとつなのかわからなかった。
まあ「食べやすいように食べればよい」という考えにも一利なくはないし、犬のエサを入れる皿に口をつけて掻き込んでも食事ができないわけではないが、普通の屋内で座って食事をするときは、ある程度「一般的な取り方」に倣った方がよいと筆者は考える。また外国の料理を真面目に作る場合、食べ方にも注意を払った方がよい。外国人がどんなに上手に寿司を握っても、それを握り箸で突き刺して食べているのを見れば、日本人は「わかってねーな」と思うはずである(ちなみに筆者は、さすがに散らし寿司を手では食べないが、握り寿司や巻き寿司なら許される限り手で食べたい派:とくに長巻きを箸で食べるのには、オニギリを箸で食べるのに匹敵する違和感がある、と思う)。
どんなジャンルの料理にも共通する大前提として、同じ文化圏の成人であって「人間並みのものの食べ方を知っているような奴ではない」と思われていない限り、食事マナーの違反は故意だと受け取られる行為である。まずは食事を出す(もてなす)側に「きれいに食べられるように盛り付ける」義務があり、キレイに食べられない盛り付けで食事を出すと「お前は人間未満だからエサでも食ってろ」という侮蔑の意を示すことができる。反対に、汚い食べ方をすると「これは人が食べるようなものではない」という、これまた軽侮のメッセージになる。さらにカジュアルな食事にガチガチのフォーマルマナーを持ち込むことで、強烈な嫌味を伝えることもできる。
人の感性の深いところに作用するのか、食事を通じた侮蔑のメッセージには、ものすごい威力がある。とくに飲食店で賄いを汚く食べると激しい怒りを買う(厨房の人間は料理の盛り付け方や食べ方を知っているのが建前で、また料理を大切に扱わなければならないという意識があって当然だという前提があり、実際には客に食い散らかされても文句が言えないフラストレーションもある:ホールの人間にも当てはまる事情ではあるが、仕事の場所がやや遠いので、厨房の人がやったときほどは怒られないことが多い)。とはいえチンタラ食べているとそれはそれで睨まれるため、飲食店の下っ端にとって素早くキレイに食べる技術は必須といえる。
話を戻そう。盛り付けられた料理は、日本食の場合原則として、手前からor左からor上から取ってゆく。箸で食器の上を跨ぐor跨がせる(袖越しとか渡し箸とか)のはよくない。魚を食べるとき、身はひっくり返さない。一汁三菜で配膳するときは、手前列が左から飯、香物、汁、奥列が左から副菜、副々菜、主菜になる(主菜の皿は持ち上げずに食べる前提:流儀によって多少の差異あり)。
中華食器の散蓮華(レンゲ)は、人差し指を上から窪みに沿わせて、親指と中指で支えて3本指で持つのが本来(左手で粉末の調味料を取るときと似たような格好:もちろん、地域や流儀によって差異はある)。中華以外にも使われる食器なので必ずこの持ち方でないといけないことはないが、正しい持ち方がしにくいレンゲは他人に出さない方がよい。取り分けるときは別として、食べるときに器は持ち上げない(どうしても必要なら傾ける)のが中華の原則。余談だが、中国の多くの地域には「食事の際に出るゴミ(ホネとかカラとかタネとか)を食器に戻すのは汚い」という意識があるらしく、ゴミはテーブルの上に捨ててテーブルクロスごと交換するのが一般的。音を出して食事をするのも嫌われるので麺類は蓮華に乗せて食べるのが無難。総じて、一口で食べられないサイズの料理は(箸などで)切ってから食べる。
ナーンやチャパーティ(ローティ)を手で食べるときは、右手を使う(ヒンドゥーとイスラームで左手に対する意識が違うし、他の文化圏の人たちが同じメニューを違う食べ方で食べることはもちろんあるが、少なくとも、左手で食べるよりはナイフで切ってフォークで食べた方がまだ見やすいと思う)。ヨーロッパ風のピザ(1人1枚で、切れていないものが出てくる)も座って食べるときはナイフとフォークを使うのが普通(カジュアルな食べ方にも流儀があるようで、(カットしてあるのを)2つ折にするのがニューヨーク風で(カットしていないのを)4つ折にするのがイタリア風らしい:イタリアの店頭売りなんかでは、最初から畳んだ状態で手渡されるそうな)。筆者自身は、自分の文化圏のやり方で食べるのは悪いことではないと考えており、洋食でも箸で食べることが多い。