まだ揃え続ける。そう、オッサンは揃えるのが好きなのである。
揃えようと言っておいてナンだが、これは真実である。食品なんて(発酵とか熟成とかを買った後にするものは別として)置いておけばおいて置くほどまずくなる。余計なものは買ってはいけないのである。また食材を痛ませて捨てることほどもったいないことはないし、腐らせてはいけないという意識でムリヤリ使ってもいいことはないので、使い切れる分量のものを選んで買いたい(なんでも少量だと高くつくが、捨てるよりはマシ)。たいていのものは15分もあれば買ってこられる世の中なのだから、せっかくの流通の進歩を享受したい。
でまあ常にあった方がいい食材としてナンバーワンなのが米。常備するからには保管方法に気を使わなくてはならない。ホームセンターに組み立て式のものが安く売っているので、ぜひワンプッシュ計量の米びつを使うとよい。使うたびに蓋を開けたり手の湿気を移したりしていると足が速くなる(痛みやすくなる)。虫除けが必要かどうかは地域や住宅によるのだろうが、使う場合有効期限切れに注意したい。米の銘柄なんて個人の好みとしかいえないが、筆者は、ななつぼし、あきたこまち、キヌヒカリあたりが好き(仕事で使う米に注文をつけられるならササニシキがいいけど、家で食べるなら:親に当たる系統でササシグレという希少米や、ササニシキとひとめぼれを交配したささ結(いくよちゃん)という「ササニシキ直系の米」もあるらしい)。
とはいっても米で大切なのは銘柄云々よりもやはり鮮度である。現実問題として、米には虫がついている(というか、コクゾウムシの仲間は米の内部に、ノシメマダラメイガの仲間は胚芽部分に卵をつけ、肉眼ではほぼ判別できない)。もしかしたら、完全水耕栽培の工場生産みたいなことが将来可能になるのかもしれないが、今のところ稲が田んぼに植えられた穀物である以上これは仕方がない。対策としては卵が幼虫になる前に加熱調理して食べてしまうのが最善で、つまり高温を避けて早めに食べ切るべきである。なお、着色粒と呼ばれる「白くない米」のうち、有害なのはアオカビ(ペニシリウム)の仲間が原因でカビ毒(マイコトキシン)を生じる黄変米くらいで、そのほかは無害なものが多い。カメムシに汁を吸われた傷口にカビが生えたカメムシ斑点米なんかは、カビ毒の生成がない(ものが多いらしい:コメのカビ害防止については、農水省がガイドラインを出しているhttps://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/pdf/120229_guide_linehp.pdf)。また色は白いが不透明に見える粉状質粒(シラタ、乳白粒などとも)はデンプン(アミロース)が少ないだけで、未熟な米・高温障害・日照不足などで生じる(普通の米にもいくらかは混ざっているものだが、あまりに多いと粒が脆くベチャついた仕上がりになる)。余談ながら筆者は、飯は白くないとうまそうに見えないと思うので、けっこう念入りに選り米して斑点米は捨ててしまう(色彩選別機という自動で選り米してくれる機械で弾いている産地もある)。
余談。米にコウジカビをつけた発酵食品が麹だが、コウジカビの仲間にも発酵に有用なものやカビ毒を生じるものなど様々なものがある。菌界(ないし真菌界)の生物について、栄養体が単細胞性のものを酵母、菌糸で体を構成する糸状菌で子実体を形成しないものをカビ、大きな子実体を形成するものをキノコと呼び分けている。酵母に毒素型食中毒や感染型食中毒を引き起こすものはないと考えてよいようだが、それ以外の毒(たとえばエタノール)は代謝産物として普通に出てくるし、感染症を引き起こす酵母もある(カンジダ症やニューモシスチス肺炎など)。
話を戻そう。筆者が密閉容器として(チマチマ使う食材用に)使っているのはおもにガラス瓶(一部プラ)。パッキンつきのフタをパチンと閉めるタイプ(スープや自家製ソースなど)、ヘタつきシリコン蓋で簡易密閉できるタイプ(コーヒー豆やパスタなど)、普通のねじ込みフタのもの(油とか漬け込み食材とか)、それぞれ使い勝手や密閉度が異なるので使い分けたい。野菜などは、湿らせたキッチンペーパーでくるんでポリ袋に入れ、さらにプラスチックの食品ストッカーに入れて冷蔵している(冷蔵庫がファン式なので、温度は下げても風には当てないための工夫)。ただし、ピーマンやキノコ類など水分で傷む野菜もあるので注意が必要。調理済みの食品を凍らせるときは、たいていプラの密閉容器。
液体orゲルゾル系の調味料は極力冷蔵庫に保管しよう。ソース、マヨネーズ、ケチャップなどはもちろん、醤油、酒、酢なども冷蔵庫に保管した方がよい(常温で保存できるものもあるが、酸化など化学反応系の劣化は絶対温度の2乗に比例した速さで進むので、凍ったり固まったりしないなら低い温度を保った方がよい)。味噌や醤系調味料なども冷蔵庫に入れる。粉末の調味料は常温でよいが、調味料ケースには一度にたくさん入れず、ケースもこまめに洗いたい。袋入りの調味料は、輪ゴムや洗濯ばさみで口を絞って保管すると風味が落ちにくく虫もつきにくい。ダシパックみたいなものも、密閉できる袋か容器に入れて冷蔵(長期保管なら冷凍)する手がある。
食品全般について「開封後は冷蔵庫に保管」とか「開封後はすみやかに使い切れ」といった注意書きがあるものが意外と多い(この辺の情報が親切なのが桃屋ののりつくだに:いつからかわからないが、コンビニやスーパーで売られているジャムや調味料類にも開封後の保存目安が表示されるようになってきた)。実際冷蔵庫に入れないと劣化するので、保管方法はしっかり確認しておいた方がよい。
ニンジンのボイルは大変便利である。乱切りと板切りにして、乱切りを水(1Lに対して塩を大匙1くらい入れる)から茹で、煮立ったらor煮立つ手前(お湯の量に応じて調節)で板切りも鍋に、(再)沸騰してオレンジ~黄の灰汁が出たら引いて、6分がた火が通ったらざるに上げ、流水で冷やし、水を切って冷凍する。少し硬さを感じる半生に茹でるのがコツ。半凍りのときにいちど容器を振って、バラしておくと使いやすい。もちろん、冷蔵で悪くならない間に使うなら冷蔵の方が食感がよい(水を張った密閉容器に入れ、朝晩に軽く水洗いしつつ水を替えてやると長持ちする:塩素が入っていることが必要なので水道水をそのまま使い浄水器は使わないこと)。
ボイルしたニンジンを含め、野菜類を冷凍すると繊維が壊れてシナシナになるが、ニンジンやダイコンは下茹でしてから凍らせると影響を少し抑えられる(ニンジンは煮込み料理にならあまり気にせず使える:ダイコンはすこしシナっとするが、下茹でが終わった状態で保存しておくと使うときに便利)。煮崩すつもりのタマネギなんかは、繊維が壊れた方がかえって扱いやすくなる。冷凍保存についてはニチレイフーズの冷凍保存のキホンというページが参考になる。
ダシとかブイヨンとかスープストックとか、半完成のスープも冷凍保存しておくと便利。水分が多く凍ると膨張するので、製氷皿を使うか、冷凍用の密閉ポリ袋に入れるのが無難。もちろん風味が落ちないではないし、冷凍といっても1~2週間で使った方がよいが、種類の違うスープを用意しておけるのが嬉しい。昆布出汁、貝類の蒸し汁、乾物の戻し汁、肉の茹で汁、生姜湯なんかを組み合わせて、その場に合わせたブレンド出汁を作れる(常に全部揃えておくのはムリなので、そのときあるものを気分と勘で組み合わせる)。冷凍してまで自作スープにこだわるより、味覇とか上清湯みたいな濃縮スープを使った方がラクじゃないかという考えもあるが、そこはまあお好みで。濃縮スープを中心に変り種だけ自分で作って冷凍する案もあるのだが、保存期間が長くなりがちになる。
キノコ類は石突を取り房をバラして、基本的には乾いたまま洗わずに冷凍する(マッシュルームなんかは切ってからレモン汁をかけるとよいと言われる:切り口が酸化しやすいから還元剤を塗ってやろうという発想の模様)。家庭の冷凍庫だとどうしても風味が劣化するので、早めに使いたい。ブナシメジやエリンギなんかが使いやすいと思う。冷蔵の場合濡れても乾いてもよくないので、新聞紙などにくるんでポリ袋に入れる。温度は低め。キクラゲは普通乾燥で売っているので保存性がよい。干しシイタケもあると便利だが、戻し汁を使うのが恐ろしいので、これだけは素性の確かな高級品を買った方がよい。他にぜひ欲しい乾物はやはり小エビ。ひじきやのりなどの海草系もお好みで。乾物も冷凍保存した方が劣化しにくいものが多い(乾物用の保存容器を用意したいが、冷凍庫の容量と相談することになる)。
肉類は下茹でして冷凍するのがラク。作り方はいろいろで、用途に合わせ6~8分くらいの火の通し方にしておく(チャーシュー作りなど後から加熱しないときは、もちろんしっかりと火を通す:再加熱する場合でも、和食で「霜降り」と呼ばれる下ごしらえよりはかなり多めに加熱する)。生のまま冷凍することももちろんできるが、凍った生肉はいったん解凍しないと下ごしらえができず使いにくい。こま切れ肉など薄いもので分量が少なめなら、熱湯洗い(ネギと生姜はお湯を沸かすところで入れる)して冷やして水を切る方法もある(冷蔵または冷凍し再加熱して使う)。量が多いときは、ヤカンのお湯で熱湯洗いしてから別に沸かしたお湯で茹でると、茹で汁がドロドロになりにくく扱いやすい。茹でた後は冷凍だけでなく、豚ブロックなら醤油などに漬けてチャーシューにしたり、鳥ならマリネのような感じにしてもよいし、長期保管しないならもちろんそのまま冷蔵してもよい。筆者は豚こま切れ肉(用途が広く使いやすい:多めの分量を、熱湯洗いではなく茹でている)や焼肉用の豚肩ロース(風味が強いので煮込む料理に使いやすく、冷凍保存での油やけも比較的しにくい:茹でる前に半分くらいにカット)を中心に、何かしらの肉類を常備している(たまに豚モモとか牛スネあたりにも浮気する)。
ボトムプロコーナーのホイコーロの項でも紹介したように、バラを茹で豚にするときは低温調理(というか除冷調理:火はちゃんと通し、50~60度まで冷めたら急冷する)がいいと思う。ブロック肉を保温鍋に入る大きさに切って脂身(用途に合わせて適宜削っておく)を上に敷き詰め、浸る程度の水と肉1kgに大匙1くらいの酒とネギの青い部分とショウガの薄切りを何枚か、強火で沸騰させ灰汁を引いたら火を止めて乾燥昆布を加え、茹汁ごと除冷(季節によっては途中で再加熱)、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やして茹汁を漉し、切り分けて冷凍する(臭みがあるとして嫌う人もいるが、筆者は茹で汁をスープベースに使っている:油は捨てるけど)。肉はたこ紐で縛ってもよいが、バラ肉の場合筆者はやっていない。除冷のところは、保温鍋がなければバスタオルなどで鍋を保温してもよい。IH調理器の保温モードも使えなくはないが、実際の温度を確認しながらにする。油が多いので長期保存には向かないし、用途も限られるのが玉に瑕(使いやすさでは肩ロースの方が勝る)。
基本的に、米やブロック肉など一回分に分けるのが難しい食材を例外にすべて都度買うのをデフォルトにして、毎回使うものだけ常備にシフトさせ、一定期間使わなかったものは都度購入に戻すというのが無難なプラン。香辛料も賞味期限が意外と短いものがあるので、もしダメにしてしまったら他のものでの代用も検討してみる。筆者自身は、キノコ類(おもにエリンギとマイタケ:メインで使いやすいブナシメジなんかは意外とかさばるので、基本は都度買って余ったら冷凍の方針が吉)とボイル野菜(ニンジンは常備であれば大根も)とテキトーなボイル肉(焼肉用の豚肩ロースが使いやすいが、なければコマでも切ったブロック肉でも)のほか、ネギ(自分で切ることもあるし冷凍パックも使う)とショウガ(使い切らないのでやむなく)と乾燥スライスニンニク(生で買うほど量を使わない)とローリエ(乾燥葉)も冷凍庫に常備している。タマネギの外側(芯近くだけ生で使う)、白菜(白いところと黄色いところを別に)、コーヒー豆(買い足しがギリギリにならない限りいったん凍らせる)、煮物類(多めに作った余り)、スープ類なんかも凍らせるが、常備はしていない。
もうひとつ、筆者が常備しているものに浄水がある。店舗設備用の本格的な浄水器が使えるなら、水質も水量も文句なしではあるのだが、一般家庭で同等の品質を求めると費用がかかりすぎる。蛇口取り付けタイプの浄水器を使っていたこともあるが、水質と水量がトレードオフになってしまいかったるいのと、台所で熱湯(下ごしらえや麺茹でには浄水を使わず、給湯器のお湯を沸騰させている)を使いたいときに不便なので、浄水ポットを使うスタイルに落ち着いた。愛用品は三菱ケミカル(旧三菱レイヨン)のクリンスイで、2020年代に入り入手性が落ちてきている気がするので、この場を借りて宣伝しておきたい(みんな買ってね、販売終了にならないように)。浄水ポットの場合ろ過時間と水質がトレードオフになるが、ここを水質に振り切っている点がスバラシイ。浄水には塩素が微量しか含まれないため有機物が混入すると腐敗の恐れがあり、浄水フィルタも定期的に水道水の塩素に晒される前提で設計されているため、1日1回は中身を入れ替えてやった方がよいという面倒さはあるが、それ以外の点ではとても便利な選択肢だと思う。以前使っていた青いねじ込みフタの1.4Lタイプ(全容量でなく浄水容量で1.4だったと思う、たしか)がたいへん重宝していたのだが、生産終了になってしまったようで、現在はCP405-WTという1.4L(全容量2.2L)のモデルを使っている(密閉度を犠牲にして傾けるだけで注げるようにした路線変更は一概に非難できないが、冷蔵庫のドアポケットでの占有サイズが増えたのはやはり残念:0.9Lタイプも買ったのだが、筆者の使い方だと微妙に量が足りなかった)。
冷凍してある食品がダメになる原因はそう多くない。酸化ないし油やけ、乾燥ないし風邪引き、臭い移り、解凍冷凍を繰り返し食材の組織がグズグズになる、タンパク質や脂肪酸など高分子の変性(酸化以外では酵素による分解など)といったところだろう。これらを防ぐ上で効果的なのは、空気との接触を遮断し密閉することと、十分に低い温度を保つことである(油焼けの研究は歴史が浅いらしく、ざっと探してみたところ1958年の水産製品の油焼けとその防止(野中順三九)というのがさきがけらしい)。
ポリ袋やジッパー袋を水に半分沈めて空気を追い出す方法がよく紹介されるほか、食材の表面に水(食品によっては0.1%の砂糖水だとか1%の食塩水だとか)をつけて凍らせる方法(グレースとかポーションとか呼ばれる:基本的には、水をつけたあとすぐ氷結させられる業務用向けのやり方)もあるし、半生に下茹でしてから冷凍(ブランチングと呼ばれる)することでダメージを軽減できるものもある。包装と使い勝手は相反する部分があり、適宜使い分けが必要。長期保存に備えるなら家庭用の真空パック機で密封してしまうのが一番だが、普通のプラスチック容器に入れて必要な分だけ使いたい食材もあるだろう。半端に水滴がついていると(凍らせたときに膨張するなどして)食材を痛めるので、水分はなるべく取り除き、必要に応じて調理用の吸水シートを使うとよい。
冷凍解凍とも、水と氷の境界線である-5~0度の通過時間が短い(つまり急速冷凍かつ急速解凍)のが望ましい。冷凍時には、(強力な冷凍機を使うのが理想だが難しいため)できるだけ表面積が大きくなるよう平べったくパッケージして冷却効率を上げる(その方が割って使うのもラクだし)。解凍(せずに直接加熱調理するのが理想だが、何かの都合で)するときは、無理に急ぐと煮えてしまうため、ポリ袋のまま水に漬けて細く水道水を注ぐとか、冷蔵庫を使うなど、ゆっくり解凍することになるだろう。この場合、加熱調理するまで温度を上げすぎないことが重要(ドリップと呼ばれる細菌の増殖に適した環境の解凍汁が出て、温まると一気に悪くなる:出さないのが理想だが、出てしまったらこの汁は捨てよう)。
冷凍食品のシーフードミックスなど、上で紹介したグレース処理がされているものについては、冷蔵庫で解凍して汁を捨てるか、海水くらいの食塩水(3%程度:臭みが強いものなら酒や生姜汁を加える)にさらして水を切るか、急ぐ場合は熱湯をかけて表面だけ解凍するのが無難。グレースの時点で塩茹でみたいな状態になっているため、真水に直接晒すと味が抜けやすい(熱湯の場合は塩を入れてもどうせ味は抜けるので、気にしなくてよさそうな気がする)。塩味がついても構わないなら、食塩水で解凍するのがいいかなと思う。
タンパク質の酵素分解などにより酸素を遮断しても起きる高分子の変化は、家庭用ストッカーの温度(せいぜい-20度くらい)では食い止めようがないため、冷凍保存でも1か月くらいを限度として早めに使い切るようにしたい(業務用の-60度フリーザーも、激安品でかつ70Lとかのごく小さいものなら新品10万円ちょっとで手に入るようだが、こういうものは大きい機種にたくさんの食品を入れて使わないと効率が悪い)。冷凍庫の開閉は手早く行うのが第一だが、前のページのオマケで触れたように、長期保存用のストッカーと一時保管用の冷凍室が分かれているのが理想。冷凍庫の中身がしばらく少ないときは保冷剤を入れておくとよい(冷凍庫に食材を入れるときは保冷剤を利用して急冷、食材を取り出すとき入れ替えて保冷剤を冷やす、とサイクルすると効率がよい)。
だいたいの目安として、家庭用冷蔵庫の冷蔵室(-18度)だと、豚バラなど動物性油脂が多いものは1週間程度、普通の揚げ物で2週間程度、とくに油が多くない食品で4週間程度が冷凍保存の上限になる。これもまあ密封と温度の安定次第だし、モノによりけりで乾物なんかには半年くらい保つものもある(というか常温でも未開封ならそのくらい食べられるものが多いけど)。
パンやクッキーなどでしか使えないが、冷凍時にアルミホイルでくるんでから密閉容器に入れて凍らせ、使うときは直接オーブントースターに入れて温めるという技もある。電子レンジで人肌くらいまで温めて表面だけ焼く方法と排他なので、食材によってどっちにするのか検討したい。煮物なんかは、冷凍してあっても味が入る(塩分が食材の中心付近に移動する)のが止まらないようなので、冷凍前は薄味にしておいて解凍時に調味料を足すのが無難(凍った状態のまま塩分が移動しているのか、冷凍で食材が脆くなって解凍時に味が入るのかわからないが、とにかく濃い味を避ける)。干してから冷凍すると保存性が高まるものもあり、とくに魚なんかは一夜干し~完全な干物までいろんな状態で冷凍できる。普通の干物類(だし昆布とか鰹節とかスルメとか燻製とか)や種子類ナッツ類(ゴマとかトウガラシとかコーヒー豆とか)も冷凍した方が、常温で置いておくよりは劣化が遅くなるものがほとんど。少し面倒ではあるが氷も、すぐ使うのでなければ製氷皿に入れっぱなしにせず、空気を抜いたポリ袋に密閉しておくと臭い移りを減らせる(筆者は、製氷自体には浄水ポットの水を使い、水道水で洗ってから飲み物に入れている)。
業務用の冷凍揚げ物(タラやアジのフライとかコロッケとか)は、量の問題さえクリアできれば価格が非常に安い。主食類も、通信販売のおかげで入手がかなり容易になってきている(価格的なメリットはもちろん、たとえばロイヤルシェフの8秒スパゲティとか、ちょっとした条件(お湯さえすぐに使えれば、とか)をクリアするだけで、手間や時間を大幅に節約できるものもある:というか、手間や時間を節約できてナンボだからねぇ、業務用は)。どのジャンルでも、冷食メーカーのコスパ系業務用商品は高付加価値狙いの商品よりもずっと安い(チャーハンやピラフなんかだとキロ600円くらいvsキロ1200円くらい、うどん単品だとキロ200円くらいvsキロ400円くらい、餃子だと17g*50個=850gで900円くらいvs2500円くらいかな)。業務用のカット冷凍野菜は、ニンジンでキロ400円、薬味ネギでキロ600円くらいと安価だが、切り方だったり分量だったりのニーズが合わず、筆者はあまり活用できていない(キノコなんかもバラして冷凍したものが市販されている)。都会すぎると配送サービスのある問屋の方が優勢だし、田舎過ぎると需要が少なく、大型の仕込みスーパー(やコストコみたいな大規模小売店)が使える立地は意外と限定される。
なお、寄生虫の類に冷凍で死んだり感染力を失ったりするものがあるのは事実だが、当然ながら、冷凍しても死なない(解凍すると活動再開する)寄生虫もいるため「凍らせたから安全」は誤りである(詳しくは食品安全委員会による解説などを参照:読めばわかるように、トリヒナなど「冷凍しても死滅しません」と明記されている寄生虫もある)。このほか単細胞の食中毒菌も、多くは冷凍に耐える。
まずは冷やすものと冷やさないもののより分けから。冷蔵に適さないのは、サツマイモやジャガイモなどイモ類、タマネギやショウガやニンニクなど鱗茎や根茎を食べる野菜、ナスやオクラやピーマンやパプリカなど夏野菜、トマトやバナナなど追熟するもの、バジルなどの生ハーブ類など。基本的には、冷やして痛んだりマズくなるのは野菜か果物で、例外は蜂蜜とかオリーブオイルあたり。ただし、ナスやらカボチャ(タネはとくに痛みやすいので取り除く)やらトマトやらであっても、切った後に常温保存すると痛みやすい(さっさと火を通してから冷蔵なり冷凍なりするべき)。
空気を抜いて密閉しておくと、食品はかなり長持ちする。いわゆる真空パックは非常に有効な保存技術で、家庭用の真空パック機も売っているが、少々値段が高いのと、流体(ソースとかジャムとか)の保存が面倒である。簡易なやり方として、ポリ袋に食品を入れ水に沈めた状態で口を縛るという案もあるし、単に手で空気を抜くだけでもけっこう違う。これらの方法は、空気を抜いて、かつ冷凍することが可能なので、長期保存に適する。余談だが、食材を真空包装して調理するのを真空調理という(レトルトの簡易バージョンで、最終加熱を別途行うのが前提なのが普通:密閉してから常圧で加熱する都合上、沸騰するとエラいことになるので、95度くらいまでの温度で加熱(湯せんなど)するのが普通)。
いったん加熱する食材には瓶が手軽。気密性が高い瓶を煮沸し、熱い食品を入れ(空気が少ない方がよいが、フタの隙間に詰まったりフタ裏にくっついたりすると腐敗の原因になる:滴がハネたときは、消毒した布巾でふき取っておく)、フタをしめて鍋に並べ(動かないよう布巾などで隙間を塞いでおく)、お湯を張って煮沸(モノや分量により30~60分くらい)、自然冷却する。冷えると瓶の中の水蒸気が液体に戻って減圧され、フタが瓶に吸い付いて気密性が増す。また開封した際へこんでいたフタがポンと戻れば気密が保たれていたことを確認できる。詰めてしまえば常温で保存可能な食品が多いが、冷蔵庫に入れておいてもよい(試したことはないが、冷凍したら多分割れると思う)。いったんフタを空けたらすぐに中身を使い切ること。
真空保存容器とか真空キャニスターと呼ばれる、空気引き機能(電動のものと手動のもの、フタとポンプが一体化したものと外部ポンプを使うものなどいろいろ)つきの密閉容器もある。乾物とかコーヒー豆とか、事前に加熱しない食材にはこちらが便利で、冷凍保存できるものもある。袋状のものに比べるとかさばるのが欠点だが、手軽さではやや勝るか。フタにヘタがついていて、倒すと密閉される(排気はしない)タイプものものあり、ようするにただ密閉しただけではあるのだが、冷凍保存との併用がしやすくそれなりに便利。
豪華というと少し語弊があるが、複雑なものを使うべきである。環境が充実している場合はシンプルなものを使った方が味がボケにくいし仕上がりをコントロールしやすいのだが、妥協せざるを得ないときは複雑なものを使ってなんとなく誤魔化してしまうのがラクである(複雑なものを隅々までコントロールして使うのは理想のひとつではあるが、シンプルなものを自由自在に使えて初めて挑戦できる領域)。
だから、たとえば塩なら塩化ナトリウム99%のものではなくにがりが入ったもの、酒の補助として味醂、単品の干し魚介の代わりに複合醤を使うのが手っ取り早い。カレー粉(ルーじゃなくて粉)、ガラムマサラ(北インドで使われるカレー粉の仲間)、五香粉(中華風ガラムマサラ)、チリパウダー(スペイン南米系ガラムマサラ)、ブーケガルニ(ミックスハーブ:ティーバッグ入りが便利)、トウバン醤(中華辛味噌)、テンメン醤(中華甘味噌)、XO醤(総合調味料)、マーラー醤(辛い総合調味料)など、複数の調味料やスパイスをブレンドした製品も便利。使い方にも工夫が欲しい。たとえば卵焼きにXO醤を使うなら、卵に混ぜ込むよりあんかけソースに加えた方が風味がよい。便利で複雑なものを使う場合にもメリハリは必要だということである。また食べる直前に加えた方が香りが活きる場合もあるし、加熱を始めるときに加えた方が馴染みがよいこともあるので、何のために使うのかは常に意識した方がよい(なあなあになりがちなので)。調味料も鮮度が大切で、とくに瓶詰めの総合調味料は水分があり冷凍保存も適さないものが多く、開封後は足が速い。やたらと数を増やすのではなく、ある程度種類を絞るとかローテーションで回すなど、風味が落ちないうちに使い切る工夫が必要。
中華調味料(とくに味噌系:日本味噌は冷凍できるわけだから中華味噌も冷凍できるのかもしれないが、小分けするのが面倒だし試したことはない)は足が速いものが多く、筆者も常備しているのはXO醤だけ。リキンキをメインにしているが、家庭用だと味の素(CookDo)のラインナップも面白く、甜麺醤に豆鼓(単体で買うとまず使い切らないし、豆鼓醤にしてもそう頻繁には使わない)が入っていたり、熟成豆板醤や豆鼓醤がやたらシンプル構成だったりする。オイスターソースは長いこと常備していたのだが、あるとき買い忘れで切らして、実はなくてもそんなに支障がないことに気付き都度買いに改めた。唐辛子はちょっと悩みどころで、糸唐辛子を使いたいときも輪切り唐辛子を使いたいときもホール唐辛子を使いたいときもあるのに、唐辛子自体はそう大量に使うものではない(と思う)。結局筆者は、エスビーの輪切りタイプを冷凍庫に常備している(一味や粗挽き唐辛子を使いたいときもこれを砕いて代用)。
醤油系の調味料は、醤油+酒ないしみりんを煮切ってだしをきかせた煮切り醤油が基本(寿司醤油とか昆布醤油なんてのもこの仲間)。ここに砂糖を加えるといわゆる「めんつゆ」になり、桃屋の「つゆ特級」なんかはこれに近い構成(いんべんの「つゆの素ゴールド」なんかは酵母エキスとかも入ってるみたい)。白だしとか割り下とかいった製品も、出汁+塩ないし醤油+酒類+甘味という軸は変わらない(濃縮タイプの原液が醤油と似たような塩分になっている製品もけっこうある)。なお醤油と料理酒には微妙な関係があり、醤油には(多くの場合2~3%、減塩のものや淡口のもので5%くらいの)アルコールが入っているし、料理酒には(多くの場合3%前後の)食塩が添加されている。両方を同時に使うことが多い調味料なのだが、成分が一部被っているので、互いの量をしっかり意識して調整する必要がある(プロの厨房では、これを嫌って飲用酒を料理酒として使ったり、保存料を使用してアルコールを控えた醬油を使ったりすることもある:醤油や味噌のアルコール分も保存料として添加されているのではあるが、たとえ無添加でも元が発酵食品なので、ある程度のアルコールは自然と含まれる)。
酢に甘味を加えたものはバリエーションが多い。中華の糖醋(タンツー)は酢1:醤油1:砂糖1が一般的(なハズだけど日本ではケチャップタンツーの方が一般的だと思う)。三杯酢は酢1:醤油1:みりん1が普通だと思っていたのだが、みりんではなく砂糖を使うこともあるよう(タンツーと同じ中身になる:比率も酢が多めのレシピや砂糖を減らしたものなどがある)。三杯酢に鰹出汁をきかせたものが土佐酢、酢1:醤油1の酢醤油はとくに二杯酢と呼ばれる。この辺の調味料は、わざわざ既製品でなくてもいいのかなという気はする(出汁を取る手間を省けるのが利点だが、開封すると足が速く、製氷皿に小分け冷凍とかやると結局手間がかかってしまう)。
香味野菜は選択が難しい。ショウガは生を使いたいが、冷蔵庫に入れるとカゼをひく(風味が悪くなる)ので、冷凍の方がマシ。冷蔵する場合は水分を保ち高めの温度で。色が変わった部分はそぎ落として、色が変わっていない部分を使う。ニンニクは油に漬ける(後述)と持つがメンドクサイ。冷凍すると炒め物の香り出しに使いにくくなるし、常温だと芽が出るし、瓶詰めの刻みにんにくは開封後の保存に難がある。乾燥チップ(冷凍庫に入れると保存性が増す)をメインにした方がラクかもしれない。皮付きのまま新聞紙にくるんでポリ袋に入れると、そこそこ冷蔵できる(他の野菜と違い強く冷やした方がよく、最適温度は-2~3度くらいだそうな)。ネギは・・・薬味用なら冷凍も可能で、刻んでからキッチンペーパーを敷いた密閉バット(またはポリ袋)に入れ冷凍庫で2時間くらい冷やし、ざっくり混ぜてからキッチンペーパーを取り除いて凍らせる。
ホールとパウダーが選べる香辛料は、ホールの方があきらかに長持ちするし、冷凍保存もしやすい。なかでも、ゴマやコショウなんかはご利益が大きい(スパイスミルも安いし)。クミンもホールがあると面白いが少し手ごわい。ローレル(ローリエ)は乾燥葉、バセリやバジルは乾燥粉末で買うのが普通だろうが、これらも冷凍庫だと持ちがよくなる。カラシとワサビは粉末を自分で練るタイプが無難。生だと使う量に対して足が速すぎるし、チューブ入りのものは風味がいまひとつ。シーズニング系の調味料はやけに用途が細分されたものが多いように思うが、エスビーのバジリコ(これとペペロンチーノだけボトル売りがある)は比較的使い回しやすい。シーズニング系調味料のキモは塩・コショウ・ガーリックパウダー・味の素あたりで、あとはハーブ類とかスパイス類でバリエーションを出しているだけだから、自分で調合(というかカスタム)するのもそんなに難しくない。
バターは小さいパッケージ(125g)の無塩発酵バターを使っていたのだが、引越しで手に入りにくくになってしまった。普通の200gパッケージは筆者の使い方だと量が多いので、買ってきたら半分冷凍して半分冷蔵庫に入れるようにした(冷凍なら1か月くらいは保ち、再冷凍さえしなければ風味はそう落ちない:ただねぇ、バターケースがねぇ、いいのないかねぇ)。サワークリーム(生クリームを乳酸菌発酵させたもの:牛乳・ヨーグルト・バター・レモンを適宜使って代用するか・・・)はあると便利なのだが、使う頻度がネック。ココナッツミルクはパウダーが無難な選択肢だろうが、最近は使い切りの小袋包装のものも市販されている(おもにカレー用として:エスビーのカレープラスとハウスのカレーパートナーは、フォンドボーやブイヨンなんかもあってけっこう便利)。
筆者が常備しているのは、ハコ型の調味料入れに塩(大)・砂糖・片栗、シンクの下に料理酒・油・醤油(大)、常温で塩(小)・黒コショウ・カレー粉・バジルシーズニング・スープの素(ガラとコンソメ)・トマトペースト、冷蔵庫に醤油(小)・バター・XO醤、あとはすでに触れた冷凍庫の中身、といったところ(追記:冷蔵庫の使い方を変えて、料理酒も冷蔵するようになり、醤油は中パッケージに一本化して冷蔵することにした)。中華調味料やネギやピザソースなんかは、必要になったら買ってきて、残っていたらテキトーに使い回すような感じ。単品の味の素は、あれば使いはするのだが常備まではしなくなった。
複合調味料はたしかに自作した方がウマイのだが・・・量と手間がねぇ。マヨネーズにしたってトマトソースにしたって中華の香味油にしたって、普通に作れる量を作ってしまうと単身の自炊なら確実に余る。できるだけ小さい鍋や容器や卵を使うことでなんとか緩和したい。冷凍保存も適宜活用のこと。キットを買ってきて頑張れば味噌とか醤油みたいな発酵調味料も作れる(というか筆者の母親が昔やっていた)が、メンテナンスが大変なので既製品を普通に買ってきた方がラクだと思う。味噌や醤油はもとより発酵調味料は全般に種類が多すぎる。とくに気に入ったものがあるならそれを使えばいいが、なければできるだけありふれたものを選んでおくのが無難だと思う。塩くらい使用頻度が高く保存がきけば、安いものとそこそこのものを2本立てで用意することもできるのだが。もうひとつ面倒なのが果汁で、レモンとかスダチとか、使いたい場面はたしかにあるのだが、使い切らないことが多い(開封後は冷蔵庫で保管してもせいぜい2週間くらい:詳しくはメーカーの説明を参照)。弁当用の小袋タイプも市販されているが、それでも半年もつようなものではないし、入手性があまりよくない。
トマトはかなり悩ましい。生で買ってくると使い切るのが大変で下ごしらえも面倒、かといってトマトピューレは割高なうえ常備してもそれほど頻繁には使わない。調理用のトマト(完熟で収穫されるのが普通で、ナスやピーマンの仲間らしい形状のものが多い)を入手するのも大変だし、もし裏ごししていない煮ただけのトマトが必要になったら缶詰を買ってくるのが妥当なのかも。トマトケチャップはトマトピューレに調味料(基本的には、トマト・タマネギ+にんにく・セロリ+酢・砂糖・塩)を加えれば作れるが、肝心のピューレを小出しに使うのが難しい(瓶詰めのフタを開けてしまうと足が速い:冷凍しておく手もあるが1か月くらいが限度)。トマトペーストなら、カゴメが小分け包装の製品を出しており、嵩張らず使い切りやすく価格も少し安く、煮込み料理なんかには大変便利(ピューレとペーストの区別は濃縮度合いで、筆者が常用しているカゴメのドマトペーストは「6倍濃縮」を謳っており、同社のトマトピューレは「3倍濃縮」らしい:商品分類としては無塩可溶性固形分24%が境界線だそうな)。なお、日本ではトマトベースで辛味や香味を足したソースが「チリソース」(辛さがマイルドなものは「スイートチリソース」)を名乗っていることが多いが、ベトナムやタイのチリソースは唐辛子・にんにく・砂糖・酢・魚醤・塩あたりで作る模様(タバスコもチリソース=唐辛子入りのタレに違いないはずだが、商品分類としては「チリペッパーソース」として別扱いされるそうな)。
食材としての漬物は、やはりニンニクの油漬けとオリーブの塩漬けが便利ではあるのだが、どちらも自分で作るのはかなりメンドクサイ。ニンニクは継ぎ足しと使い切りのタイミングが難しく、オリーブは渋抜きが大変である。前者は使う頻度が高ければ自前でやってもいいかなという気がするが、後者は市販の瓶詰めなどで妥協するのが無難だと思う。沖縄のコーレグース(唐辛子の蒸留酒漬け)なんかも使い勝手のよい調味料ではあるものの、既製品は風味に劣る傾向があると思う。ザワークラウト(乳酸発酵させたキャベツの塩漬け)は、キャベツの細切りをレンジにかけて酢と少しの砂糖で代用(加熱しないことで栄養的に優れるのがオリジナルの利点だが、食味は香味材料次第で補える:ジュニパーベリー、ローリエ、クミンシード、ディルシード、キャラウェイシード、ワインなどが用いられる)してしまった方が手軽だと思うが、通販の普及で既製品も入手性がよくなった。干物は意外と簡単に作れる、のだが動物性のものだと(作るときの)臭いが強い。傾向として北国ほど干物好きなようで、北海道の一戸建ての家庭にはかなり高確率で魚干し網があるし、21世紀になっても冬に大根を吊している家がけっこうある。燻製はもっとハードルが高いが・・・手作りすると風味が段違いなのよね、アレ。
スープの素(ないしスープストック)は、結局顆粒タイプがラクだと思う。ペーストタイプの方が選択肢は豊富だが、一度に大量に使う用途でなければ足の速さが気になる。ストレートの液体タイプも、基本的には「使う都度」向けだろう(高価で嵩張るものの、毎回使い切るなら保存性自体は悪くない)。濃縮液体タイプは・・・ヒガシマルのうどんスープみたいな、用途限定の個包装なら使いやすいのだが、あまり一般的なパッケージではないらしい。いわゆる固形スープは分量の加減が面倒で、毎回同じ分量でしか使わないなら別だが、保存が利いてメイン使いしやすいという固形の利点を活用しにくい気がする。固形タイプと顆粒タイプは塩分がけっこうキツい(味の素もユウキも、通常品は質量比で40%台、減塩タイプでも25~30%くらい)のだが、リケンの素材力シリーズは食塩無添加タイプが豊富で、パッケージも家庭用の5gスティック個包装と業務用の500gジッパー袋が選べて気が利いている(同じブランドでだしパックと鰹節パックもある)。個包装でない顆粒タイプで塩味がキツくないもの、と思って探すと、味の素の丸鶏ガラスープ塩分ひかえめ(「通常品と同じ使い方」にこだわったタイプ)、ユウキの減塩ガラスープ(ごく普通に塩を減らしたガラスープ)、リケンの素材力だし鶏だし(あくまで「ダシ」であって「スープ」の手前で止まってくれている)あたりが候補になる。いわゆる「コンソメ」は、2022年現在、大手メーカーで顆粒の減塩タイプを出しているところを探せなかった。
油はけっこう足が速い(劣化しやすい)食品である。
精製度合いでサラダ油・白絞油(精製油)・半精製油(バージンオイル)・粗油(未精製油:普通は食用にしない)だとか、ヨウ素価(不飽和脂肪酸の多さ=酸素と反応して固まる性質の強さを示す)で乾性油・半乾性油・不乾性油だとか、分類はいろいろ。家で普通に使いそうなものを軽く調べてみたところ、
自炊用に便利なのはこめ油で、キャノーラ油より少し高いものの、揚げ物から生食まで守備範囲が広く、こめ油とごま油とオリーブ油があればだいたいの用途はカバーできる。流通があんまり豊富でないのが難点だが、千葉県(本店は東京らしい)のボーソー油脂などが大ボトルサイズのものを出している(筆者はホクレンの600gボトルを使用)。紅花油も(こめ油と対照的な性質なので)あれば便利だし、こめ油と混ぜて使う手もあるが、少なく使いたい油種なのに小さいボトルが少ないという欠点がある。ごま油は・・・銘柄はともかく、小さいボトル(より正確には細い注ぎ口:割高になるけどねぇ)の方が使いやすい。安くて大きいボトルのものはキャノーラ油が中心で、日清のサラダ油とか味の素のサラダ油TUPなど大豆油メインのものもちょっと探せばある。
余談ながら、食用油に添加されるシリコーン(シリコン樹脂)は普通ポリジメチルシロキサンで、ヒトの消化器官では吸収されず未変化体として排出される。消泡を目的とした食品添加物として一般的で、精製食用油、豆腐、蒸留酒、ジャムなどの製造時に使われるが、製品完成までに除去する場合は表示の必要がない(完成品に残す目的で添加している場合は表示の義務がある)。業務用の揚げ油にはたいてい入っているし、惣菜など既製品の揚げ物にも入っており、現代日本人で日常的に摂取していない人はほぼいないはず。なお、消泡剤として十分な量が用途により0.1~10ppmくらい、食品添加物として認められる上限値で50ppmとかいったオーダーなので、一斗缶1本に1gも入っているなんてことはあり得ない。
またお金の話。個人差も大きいだろうがこれってどうなんだろう。料理は半分趣味とはいえ生活の一部であるのには変わりないので、多少のコスト意識はあってしかるべきだと思う。追記:以下の価格はいわゆるコロナ前、ウクライナ紛争によるエネルギー危機より前のもので、現状とは異なることに注意。
筆者の感覚でいうと、自炊で1食1000円はかけすぎである。地域にもよるが、1000円あったら外食でどれだけウマイものが食べられるか(酒やコーヒーでもそうだが、筆者は「本当にいいものなら家で食べるのはもったいない」という発想の持ち主である:だって設備の整った厨房でプロに料理してもらって、雰囲気のいい部屋といい器で食べたいじゃない、本当にいいものなら)。大切なお客さんを迎えるとか、作ること自体に興味があるメニューに挑戦するとかいうのでなければ、このラインは(うっかり越えることはあっても意図的には)越えないと思う。
500円・・・くらいならかけてもいいが毎食だとちょっとアレ。単身者の食費として月に3万円というのが安いとも思えず、1日1000円の前提で毎食500円だと足が出る。筆者の場合朝はシリアルで済ませることが多いので1食あたり150円くらいだろうか。ご飯やパンに目玉焼きをつけてスープとちょっとした一品を添えると、おそらくやはり150円くらい。昼を質素にして300円くらいで済ませれば、夜に1食平均400~500円かけても酒やコーヒーを含む飲み物やヨーグルトなんか(も筆者は食費とみなしている)を買う予算が残る。ということで、300~500円で何が作れるだろう、と妄想してみたい。
ご飯は安い。米10kgが飯22kgになるとして、キリのいいところで10kg3300円の米だとすると、飯は1kg150円になる(水代電気代は米の値段からすれば誤差みたいなもの)。同じ前提で、米1合=150gが飯330gになるとすると50円くらい、2合で3人前とすると1人前33円くらいになる。もちろん、米の値段が1.5倍になって10kg5000円なら、飯の値段も1.5倍になる(1人前=2/3合で50円くらい)。10kg5000円の米を使っても、普通の銘柄の食パン(1袋150円くらいかな:ヤマザキのロイヤルブレッドもフジパンの本仕込もパスコの超熟も、1袋が450gくらい)を半分ないしバターロールを4個焼くのに比べると安く、10kg3300円の米と1袋100円の食パンを比べても米の方が安いはず(コメは家で炊いた方が安いが、パン類はコナが高く家で焼いてもモトは取れない:1斤200円くらいかな)。麺類だと、個別包装のいわゆる生ラーメンが100円くらい、5食入りとかの安いものを探して1食あたり50円とかそのくらい、マルちゃんの焼きそば3玉入り450gが250円くらいだから1kg500円くらい、麺だけパックのうどんが生でキロ400円くらい冷凍でキロ500円くらい、乾麺のスパゲティが1kg500円だとして1人前50円、業務用の5kg袋で買うともう少し安い。カロリーベースで考えると、ご飯2合分(米で300g、飯で660gちょい、飯の体積で1Lくらい)と食パン1袋(450gくらい、12.5cmの立方体なら体積で2L、実用上340~510gを1斤として扱う:普通の銘柄)とスパゲティの乾麺300g(茹で上がり700gちょい)がどれも1000kcalちょっと(それぞれ3人前くらい:パンはやや低ボリューム高カロリー)。
肉を100gないし魚を切身で150円くらい、見合う程度の野菜類が均しで100円として、汁物と調味料乾物その他で50円くらいかけると合計380円になる。筆者が大食い(その分間食はほとんどしないけど)なのもあるけどけっこう厳しいなぁ。肉をケチって卵とモヤシと豆腐を活用すれば300円は見えないこともないが、廃棄ロスは出せない数字でもある。500円あると、1品増やすなり大エビなど単価の高い食材を使うなり単純に肉を増やすなり、けっこういろいろできる。
改めて考えてみると、そんなにカツカツでもなく、かといって余裕があるわけでもない、実に微妙な数字が出てきた。業務用の冷凍食品を使えば主菜の費用をぐっと圧縮できるが、単身だとさすがに使いにくい。まあ実際には外食が食費を圧迫しているのが大きいわけで、節約したいならまずソッチからではある。またコストはパフォーマンスを考慮して検討しないと意味がない。たとえば100gで120円の豚肉と160円の豚肉があって、後者のほうがウマイのが(もし仮に)わかっているなら、後者を買うべきである。毎日100g、1か月で3kg豚肉を食べるとしても1200円の違いである。月に1200円で幸せが買えるなら、本当に貧乏な人以外は買うべきである(断言)。月に10kg豚肉を食っても4000円しか違わないし、そこまで豚肉を愛しているなら、やっぱりいいものを買うべきである。まあ値段が高ければモノがいいかと聞かれるとそんなことはないのだが、コストを気にするならまず実効性を考える必要がある。さらにまた、家で作るメシがマズいと外食がむやみに増えて結局出費増になりがちなので、常にウマいものばかり取りそろえる必要はないが、値段だけに釣られて質の低すぎるものを買うのは賢明でない。
炊いたご飯1合を340gとするなら一升=3.4kgになるが、人間が一度に食べられる量はこの辺が限界である(胃に入る飲食物の容量は成人で1.5~2Lが標準と言われるので、普通の人なら頑張っても総量で2kgちょっとだろうと思う)。もちろん特異な例外はいるもので、えびすこ(常識はずれに大食いな力士の俗称)として知られる第242代大関琴奨菊は、現役時代に1日2食で3升の米を食べていたのだとか(1.5升として飯だけでも5kg:もちろん、米だけ食べていたわけではあるまい)。
大量の食事が腹に入るときには、食塩の過剰摂取に注意しなければならない。ボトムプロコーナーのプレーンチャーハンのページでオマケに詳しく書いたように、食塩はけっこう激しい毒性を持つ物質で、慢性毒は閾値が不明確だが1日あたりの目標量で7.5gとかそのくらい、急性毒性は0.5g/kg(体重60kgなら30g)くらいから生じると推定されている(体内に何キロの水分があって、そこに何グラムの食塩が入ってくると濃度が何パーセント上がる、というのはほぼ体重で決まっており、急性毒性が問題になるときは体重が重要であるのに対して、慢性毒性には代謝量や排出量が関与することが多く、体重が決定的な要素にならないこともある:もちろん、たとえば腎機能への悪影響が生じる量と高血圧の原因になる量など、作用先が異なれば目安の量も変わる)。タンパク質の慢性的な過剰摂取も腎臓へのダメージを引き起こし、日本の腎臓学会では1.3g/kgを摂取上限の目安にしているようだ(腎機能の目安となるGRF(糸球体濾過率)が低下していたり、尿タンパクが多い人はもっと厳しいタンパク摂取制限をすることがある)。ステーキ肉(牛リブロース)500gが90gちょっとのタンパク質を含むので、体重70kg未満の人が毎日これを食べると(他の食事を一切摂らなかったとしても)上限目安を超えることになる。白米の飯に含まれるタンパク質はそう多くなく、100gあたり2.5g程度(ではあるが3合飯を1日3回食べると75gちょっとになる)。大豆は100gあたり35g程度と飛び抜けて多いものの、豆腐にすると6.5g程度になる(まあグラム当たりだと水分の影響が大きいけど)。
スポーツマンでない一般市民だと、5合飯を食べ切る人はまれにしかいない。いわゆるチャレンジグルメ(という呼称が筆者は好きでないが)なんかで賞金が出始めるのがこの辺で、総量2~3kgのラインだろうか(このうち1%が食塩だとすると20~30gで、上で触れたように食塩の急性毒が問題になり始めるラインなので、体重が少ない人はこのレベルの量に挑戦しない方がよいし、体重の多い人でも、食事前の血中ナトリウム濃度によっては危険がないとはいえないだろう)。3合飯(ご飯だけで1kgちょい)なら「食がいい人」は普通の食事として食べることがあると思う。筆者も20代の初めまでは1食=3合だった(今にして思うと、米の分だけで1日5メガカロリーくらいの熱量になるはずなのに、どうやって消費していたのか不思議である:タンパク質もおそらく過剰だったと思う)。牛丼チェーン店の並4人前がおおよそ飯1kg+アタマ0.5kgくらいで、飲食店の特大メニューなんかはこの前後のラインが多いだろうと思う。
量を多く食べる人ほど自炊のコストパフォーマンスが上がる(というか、外食や半外食のコストパフォーマンスが下がる)傾向があるので、大食漢にとって自炊は(趣味にももちろんなり得るが)生活のためのスキルにもなる。なおおおよそだが、生麺(ラーメンとか)200gと白米1合(150g)と乾麺(スパゲティとか)140gが、だいたい同じ重さの仕上がりになる(調理後に330~340g:食パンの専用単位「1斤」も「340g以上」という定めで普通は500gくらいまで、大きさは12.5cm立方で2Lくらいが目安)。日本そばの場合、生麵で80g程度を「一合」(蕎麦粉一升1kg程度から作る麺の量を「一升」とする説も見たことがあるが、その場合十合=一升で計算するともう少し重いはず)とするらしく、俗にいう「一升盛り」は(多くの場合)単に景気がよさそうな呼称をしているだけで、使う麺は6合(ないし4人前)程度なのだそうな(伝聞)。
豚肉は大まかに、背中側が前から、カタ(肩周辺の肉は、肩ロースで一緒くただったり、肩ロースとカタに分けたり、肩ロースと肩バラとウデorカタに分けたり、流儀が多い:英語でも、shoulderとbuttとpicnicあたりが何を指すのかは混沌としている)・肩ロース(やや硬め、味強め、カブリあり:肩周辺を細分するときは背中側の後ろの方)・フォアロース(リブロース相当、カブリあり)・ミドルロース(いわゆる普通のロース肉)・エンドロース(ロース切り落としの主役、やや筋目あり)、腹側がバラ(三枚肉)、前足付け根がウデ(やや硬め、味強め、肩ロースより脂少ない)、尻~後ろ足付け根がウチモモ・ソトモモ・ランプ(あっさり、脂少なめ)、ロースとバラとモモの間に埋まっているのがヒレ(脂少なめ)。胴の肉の内側には肋骨(リブ)があり、背中側をバックリブ(日本ではロース肉と背ガラに分けて売られるのが普通)、真ん中をスペアリブ(中華でいう排骨)、腹側の先端部分がバラ軟骨になる。スペアリブはさらにカタ側とトモ側に分けられ、一般に流通が多いのはカタスペアリブ。大雑把に呼ぶときは、肩ロース(shoulderないしbutt、またはbladeないしhand)・ロース(loin)・モモ(legないしham)・バラ(bellyないしsideないしbacon)くらいの分け方になると思う(加工食品としてのベーコンはもともとロース肉を使っていたらしいのだが、北米でバラ肉を使ったいわゆるサイドベーコンが普及して、バラ肉のこともbaconと呼ぶようになったのだとか:イギリスでは今もバックベーコンが主流)。
最近「ショルダーエンド」なる部位をたまに買うようになったのだが、具体的にどの部位なのかはっきりしない。どうも見た目にはblade end(ロースを1本取ったときの前端:その後ろがいわゆるロース肉のcenter ribで、さらに後ろがサーロインのcenter loin、後端はおそらくフランスでポワントと呼んでいる部位でsirloin end)の先端っぽいのだが、ロインとショルダーの間をロインショルダーエンドと呼んでそこのことだ、という説明もいくつか目にした(「ロース肉」と括弧書きしてあることもあるので、筆者の近所で売っているものはblade end相当なのだろう)。まあどっちにしろ、肩の端っこか肩側の端っこには違いない。やや固めの赤身で肩ロースほどではないが風味がそこそこ強く、ポークステーキ用にカットされて売られていることもある。半端なキャラのせいか価格がわりと安く、筆者はチャーコマ(チャーシューの端っこを刻んだものの俗称)の代用にしている。角煮を作ったときの煮汁の残りに醤油を足して、フライパンで焼いたショルダーエンドと火にかけ、沸騰したらすぐ火を止め、荒熱が取れたら肉だけ取り出して刻み、煮汁に戻してもう一度沸騰させ、冷えたら汁と分ける、というのが今のところのやり方。
牛は流儀違いや細分化が多く面倒。だいたいのところで、背中側が前から順に、肩ロース・リブロース・サーロイン・ランプ、腹側が前バラ(肩バラ)・中バラ・外バラで、中バラとサーロインの間あたりにヒレ。後ろ足が外モモ・内モモ・スネで前足がウデとスネ、くらいか。たんに「肩」と言ったときにどこを指すのかは一定しない(肩ロースの外側だったり、ウデの別名だったり、肩ロースの省略形だったり)。肩ロースの一番前側をネックと呼ぶこともある。内蔵肉のハラミとサガリはどちらも横隔膜(メンブレン)の一部というか周辺部分で、背骨側の太いのがサガリ(ハンギングテンダー:ぶら下がっているように見えるからサガリなのだろう、きっと)で肋骨側の細いのがハラミ(アウトサイドスカートorシンスカート:腹側だからハラミなのだろう、きっと)と呼び分けることもあれば、両方をハラミと呼ぶ地方や両方をサガリと呼ぶ地方もあってメンドクサイ(北海道では両方サガリと呼ぶが、サガリと称する商品にはハラミの方が多い)。さらに実は欧米での呼称にも混乱があって、フランス語でいうbavette(ヨダレカケの意)というのが実にややこしい。これは漠然と「脇腹肉」を指しており、トモバラのうちヒレに近いあたりが相当する(ウチバラプレート、カイノミ、ときにはソトバラあたりまで含むエリア:細かく言いたい場合はBavette à bifteckとかBavette d'aloyauがカイノミを中心としたあたり、Bavette à pot-au-feuとかBavettef flanchetがソトバラ(とくにフランク=ささみ)を指すのだそうな)。これが英語に入るとサガリを指すことが多くなる(ちなみにフランス語でサガリはOnglet、ハラミはHampeだそうな)ようで、イギリスではHanging Tender(ないしHanger)の表記よりもBavetteの方が一般的、しかし英語のBavetteがカイノミ(Flap meat)を指すこともないではない。そのうえさらに、英語の用法が逆輸入されたのか元々の地域差なのかは知らないが、フランスでもBavetteの名前でサガリのSteak-Fritesを指すことがあるらしく、とても付き合っていられないほどのグダグダぶり。
鶏は、ムネ・モモ・手羽の3分類+ムネの前側に埋まっているササミという理解でだいたいOK。細かく区切るとしても先とか元とかつくくらい。ムネと手羽の間の肉を肩肉(あるいは、肩小肉、ふりそで、むねトロなど)という名前で売っていることがあるが、ムネ肉を丸ごと買うと一緒についてくることもある(風味はムネとモモの間くらいと言われることもあるが、筆者は手羽元に近い思う:焼きが合うが揚げたり煮たりしても使える)。ちょっと面度なのは皮で、一般に串焼きなんかに使うのは首皮、モモ肉と一緒につてくるのがモモ皮、尻脂つきでチーユ(鶏油)の材料になるのが尻皮と、種類が違う(値段もけっこう違い、業務用の冷凍パックだとキロあたりで、モモ皮200円、尻皮300円、首皮400円くらい)。ラードは豚バラでなく背油が本来だし、チーユはモモ皮でなく尻脂(と尻皮)が本来だ、というのは、騒ぎ立てるほどのことではないが知ってはおきたい。鶏の丸や中抜きは大型の小売店や肉専門の店なら売っているところもあるが、豚の半丸(内蔵と骨を除いた半身肉、半丸枝肉とも)は業務用でしか手に入らないのが普通、牛は業務用でもレア。ニワトリはキジの仲間でおそらくヤケイ系の(単独か複数かはっきりしないが)種が原種、ガチョウはガン(雁・かり)の仲間、アヒルはマガモを家禽化したものでフランス料理ではアヒルも「鴨」と書くことがある(フランス語ではどっちもcanard:アヒルの卵はピータン(皮蛋)の材料として有名)。サイズはかなり違うものの、ウズラもニワトリと同様にキジの仲間(日本では精肉の流通が豊富でないが、フランス料理なんかには普通に使われ、Cailleというらしい:日本でも輸入食材として入手できるし、鶉卵目的の養殖も愛知県などを中心に行われている、というか生卵は輸送の都合上輸入が難しいので、生で売られている鶉卵はほぼ国産)。
余談:しかしマイナーな肉って都会じゃないと買いにくいよねぇ。首都圏ならハナマサがあるし、ロピアは地方都市にも増えてきたけど。
イキナリだが、キロ単価で見るとモヤシはブッチギリの安さではない。もちろんモノにもよるが、2022年現在の全国平均で、小売のモヤシはだいたいキロ180円くらい。本当のメリットは絶対的な価格ではなく、農作物というよりほとんど工業製品に近い作られ方をしているために、1年中同じような価格で手に入るところだろう。なお、たまに言われる「モヤシはプリン体が多い」というのは、100gあたり35mgほど含まれているので間違いではないが、白米や小麦粉(薄力粉はやや少ない)の26mg、豆腐の31mgなどと比べて飛びぬけて高い数値ではないし、肉類(とくに内蔵肉)や魚やイカ・タコ・貝類に比べればかなり低い(余談ながら、ビールに含まれるプリン体量は100gあたり5~15mgくらいで大したものではなく、エタノールに尿酸の産生を亢進させる作用があることの方が重要)。
モヤシ以外で安い野菜というと、やはり白菜とキャベツ(キロ180~220円くらい)で、時期によっては大根もモヤシに迫るコストパフォーマンスになる。この白菜・キャベツ・大根は(季節変動もあるがおおむね)水分が多い野菜で、微加水で煮物を作るときに重宝する。タマネギも、クセが強い食材なのでメインを張る機会は白菜・キャベツほど多くないが、時期によってはいい感じに使える。葉物野菜では小松菜が筆者のお気に入りで、白菜の黄色いところ(煮物には使わず取り分けておく)と並んでよく使う。使いたいメニューが多いのに価格変動が大きく悩ましいのがネギで、値段が高い時期には冷凍の薬味ネギや乾燥ネギなんかも活用している。ニンジンは、そんなに大量に使う食材ではないし、茹でて冷凍してしまうので、安かったら多めに買って高かったら次に使う分だけとか、そんな感じの買い方が多い。
上で挙げた野菜のうち、中華風の調理に合うのはやはり白菜だと思う。魚介との相性もよいが、炒めでも煮込みでも豚肉と合わせると格別。大根はアクがあるので下茹でが必要。冷凍した場合は電子レンジで半解凍にして、水で洗って氷の塊を取り除いてから使うとよい。アクさえきちんと抜ければ和風洋風中華風と使い回しやすく、炒めてから煮込む調理にも合う。キャベツは少し手ごわい。煮物にするとクセが出るので、コンソメや牛肉や加工肉など風味の強い素材と合わせたい。
大根やキャベツの上の方は生食でも食感がよく、炒め用のキャベツも上の方が使いやすい。ただし、野菜類も生食には相応のリスクがあり、千代田区のサイト(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/shokuhin/oshirase/vegetable-food-poisoning.html)によると
全国で、過去10年間(2012~2021年)に生野菜や浅漬けが原因と疑われる食中毒の内訳は、きゅうり(浅漬け含む)7件、キャベツ4件、白菜(浅漬け、キムチ含む)4件、サンチュ、ミニトマト、大根、レタスでした。(略)これらの食中毒事例には、野菜そのものに食中毒菌がついていたのではなく、手洗いが不十分な状態で、生野菜を取り扱ったため、食中毒になったケースも含まれます。だそうな。もやしについては欧州や北米での食中毒事例が多く、ざっと探したところカナダ保健省が公開しているデータの日本語概要が内閣府のサイト(https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu01240180110)にあった。農林水産省も「生野菜を安全でおいしく食べるために」という特設ページ(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/fresh_vege.html)を公開しているので、具体的な対策についてはそちらを参照。
野菜類も、あまり値段ばかり優先してしまうと酷いモノに当たる頻度が増えるし、節約が自己目的化しても面白くないので、やっぱり食べたい・使いたいものを基本にして、そのなかで費用面のやりくりを考えるのが賢いだろうと思う。コストパフォーマンスを追及すると旬の食材を選ぶことになるため、自然と季節感を取り入れられるのもメリット(春のキャベツ・豆類・山菜類、夏の茄子・トマト・ピーマン、秋のタマネギ・芋類・キノコ類、冬の大根・人参・蕪・白菜・葱、など)。野菜に比べて肉の価格は安定しているので、ベースにする野菜に合わせて肉や魚介類を選んでやると、効率よくメニューを組み立てられる。もういっぽうで、勢いで大量買いしてしまった食材に、合うのかどうか自信がない食材を試しに合わせてみたり、試してみたらやっぱり合わなかったときに悪戦苦闘して誤魔化したりするのも、趣味でやる料理の面白さのひとつになってくれる。
筆者が愛用しているのに入手性が悪い品々を紹介する(2023年現在)。ここで取り上げたからといって急に大人気になって入手性が改善したりはしないのだろうが、販売終了になったら悲しいので、ぜひみんな買ってほしい。
スパイス・ハーブ・乾物方面では、エスビーが筆者好み。なかでも入手に苦労しているのが「旬の香り 有機スライスにんにく」(同社の「菜館 有機スライスにんにく」より少しお徳用寄りのパッケージ)。そもそも乾燥スライスのにんにく自体がそう需要の多い製品ではなく、ちょっと単価のかさむ本品はさらに見つけにくい(風味は抜群なんだけどねぇ)。ちょっとの間ボトル版が入手困難になっていた「シーズニング バジリコ」は、ラインナップが戻ったようだが筆者の近所では入手できず、カレーの赤缶84g(これはサイズ的にしゃあないか)とともに、通販に頼っている(以前はAmazon一択だったけど、このごろはヨドバシなんかが頑張ってると思う:みんなヨドバシで食品を買おう)。上記以外に、花椒、ホールのブラックペッパー、ローレル、きくらげ(これも菜館シリーズで水洗い不要なのが便利)、ドライパセリなど、筆者の台所にエスビー製品は欠かせない。調味料では李錦記(リキンキ)の国内扱いもエスビーで、筆者は瓶詰めの「海鮮XO醤」(チューブとは別製品)を常備している。
スープの素はリキンキでも創味でもなく味の素が筆者のファーストチョイス。顆粒タイプのコンソメと粉末タイプの丸鶏がらスープの併用で、モノ自体にコダワリがあるのではなく、ベースの味を担当させることが多くずっと同じ製品を使い続けたくて(というか、料理中にほとんど計量せず目分量でやっているため、たまたま品切れで他のを買ったら勘が狂ったという事態を避けたくて)コレにしている。キューブタイプは量の加減がしにくいし、ペーストタイプは手軽さ(というか単品の味の素を置かなくなったので、汁のない炒め物への使いやすさ)にやや難があるように思えて、顆粒か粉末でいつも同じ製品が手に入るもの、と考えたら自然と味の素の製品に落ち着いた(以前はシャンタンのチューブ入りとか、リキンキの中華だしペーストなんかも使ってたんだけど)。さすがにメジャーどころだけあって、探しさえすれば手に入らないということはないが、とくに袋入りパッケージは大きめのスーパーでも置いていない店がある。キューブよりぜったい便利なので、みんな買ってほしい。
パッケージが便利なものといえばカゴメのトマトペーストの個包装タイプもお気に入りで、使い勝手は抜群だと思うのだが入手性はあまりよくない。ケチャップやピューレよりペーストの方がずっと便利なんだけどなぁ。それから、キョウワの「お徳用海藻サラダ」も実に見つかりにくい(今の話題と関係ないけどこれ、パッケージの説明通りに5分では戻らないよねぇ)。別にどこの製品でも中身に大差はないのだろうが、乾燥状態で1袋36g、かつ余計な付属品なしというパッケージが素晴らしい(デカい袋のがあるなら他社製品でもいいけど:というかこれ「ワカメとワカメ以外」に分けてくれたらもっと買いやすいのに)。乾物では小エビもチョイスが難しい。筆者はフジサワの「素干しエビ」や玉鈴の「小エビ」(どちらも中国産のアキアミだそうな:名前にアミがつくがサクラエビの仲間、塩辛がキムチの原料になる)を使うことが多い。ちょっと意外なところでセブンイレブンの「7プレミアム きざみねぎ」も便利。他にも類似の製品はいくらでもあるが、冷凍のまま(加熱せず)薬味に使えると明記してある安心感が(そう頻繁に生では使わないけど)ありがたい。筆者の近所では入手性に難はないが、単純に便利なのでみんな使えばいいと思う(筆者はこれとは別に、自分で切って冷凍したネギも常備している:以前はフリーズドライも併用していたが、このところは冷凍ばっかり)。食塩無添加のバターや料理酒は、入手性は悪くないが現状割高なので、もっと広く使われるようになればいいなと思う。
食品ではないが、このページの記事でも大プッシュした三菱ケミカル(旧三菱レイヨン)クリンスイの浄水ポットは、ぜひぜひみんなに使って欲しい。それから、いわゆる「お茶パック」(筆者はダシと香味野菜にしか使っていないが)の、10*12cmくらいのもの。製品としてはトキワ工業の「たっぷり お茶パック」とゼンミの「お茶だしパックL」がメジャーではあるものの、どちらも小さいサイズしか置いていない店が多い。みんな煮物には葱姜蒜をお茶パックに入れて使おう。台所用品で重宝しているのは花王のキュキュット。中身は普通だが、家庭用なのに詰め替えの「超特大」サイズ(1380ml)がラインナップされている(業務用は普通に4.5Lボトルでさすがにデカすぎる)。単身でも、筆者のように「何でも食器用洗剤で洗ってしまう」習慣のある人にはありがたい。超特大の入手性はそれほどよくないが、幸いなことに筆者の近所には売っている。余談ながら筆者は花王の製品がけっこう好きで、キッチンハイターとキッチン泡ハイター、クイックルシリーズ、マイペットとマジックリンも愛用している(が、カビ用洗剤だけは昔からカビキラー)。