ACアダプタ


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筆者が2011年9月から2012年2月までに購入した商用AC100V>DC9Vセンターマイナスの電源アダプタについて。

重要な情報
この記事は筆者が購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。

重要な情報
特定の製品(純正品や社外指定品)を使うよう指示がある機器は、指定のACアダプタで電源供給してください。たとえ使用に差し支えないように見えても、電源変更によるリスクは消えません。また十分な知識と技術がない人は以下の実験や運用方法を真似しないでください。


試した機種

BEHRINGERのPSU-SB(たくさん)とPSU-HSB-ALL(1つ)、ローランド(BOSS)のPSA-100S(2つ)、サウンドハウスのAC9V 0.5A(2つ)。実験に使った電源タップは根元で1点アース(ただしエアコン用)してある。


容量について

電源アダプタの性能を考える上で重要なのは(電圧やプラグ形状などの規格を間違えていないことは当然として)容量とノイズである。容量が足りないと機器が動かないし、ノイズが多いと動作に差し支える。この2つはトレードオフなところがあり、容量が大きいアダプタにはノイジーなものが多い(あくまで傾向として多いだけ:適切な負荷で使ってやればノイジーでなくなるものもある)。

そのため、むやみに大容量のアダプタを選ぶのは賢明とはいえないが、ギリギリの容量にするのはもっとよくない。完全な容量オーバーなら、最近主流のアダプタでは安全装置が働いて電源供給が止まるものが多いが、そのちょっと手前くらい(つまり容量100%近く)での使用でも部品(一次側トランスなど)に負荷がかかり、長時間使用では(製品や環境にもよるが可能性として)最悪焼き切れる。

どの程度の容量がよいかには、消費電力の50%だとか70%だとか諸説あるが、アダプタの内部構造にもよるので一概に言えない(取扱説明書に「消費電力」とは別に「ACアダプタ容量」が明示された機種もある)。筆者自身は、50%くらいを目安にしている。

また非安定化電源の場合、定格よりも極端に小さい電力しか使わない場合(負荷インピーダンスが高い場合)、機種によっては電圧が高くなることがある(これを計算に入れて電源回路を作ってある機器もあり、安定化電源を使うとかえって動かなかったりもするため、仕様に合ったものを使うのが一番である)。

なお、適切な仕様のACアダプタを適切に使用している限り、機器の性能が変化することは普通ない。


ちょっとした注意

複数のイフェクタに同じACアダプタからのタコ足で一斉給電すると、ノイズの原因になることがある。とくに、デジタルイフェクタ(電源ラインにノイズを落とすものがある)とアナログイフェクタを混在させたときに生じやすいようだ(アナログ同士でも起きるときは起きる)。一斉給電は便利だが、大容量アダプタを使う都合からもともとノイジーになりやすく、許容範囲を超える問題が生じないか確認が必要である。

電源ラインに乗るもの以外にも、電源アダプタ自体が(程度は異なるが)音声ノイズや電磁ノイズを発生させるため、影響をうまく避けて運用したい。音響機器用のACアダプタが露骨に音声ノイズを出すことはあまりないが、携帯電話などの充電器用アダプタが「鳴る」現象はよくある。電磁ノイズについては、マグネティックピックアップやダイナミックマイクを近付けてみると程度がわかる(ただし、電源タップも比較的大きな電磁ノイズ源なので、延長コードなどで距離を離さないと切り分けが難しい:流す電流によってもノイズの周波数成分が変わるはずなので、あまりムキになって測定しても意味は薄そう)。

DC機器の電源には、グランドに対してプラスの電圧を得て動作するもの(ネガティブグランドと俗称される)と、グランドに対してマイナスの電圧を得て動作するもの(ポジティブグランド)があり、両者を混在させて一斉給電することは原則としてできない(マイナスの線をグランドに落とす機器とプラスの線をグランドに落とす機器を混在させると、結局マイナスとプラスがショートする)。単独給電なら、2本の導線の間に電圧がかかってさえいれば電力は取り出せるが、きちんと専用のアダプタ(DC+9VでなくDC-9V)を使わないと、一部の機器だけ異なるグランド電位を持つことになり望ましくない(シャーシ経由でグランド同士が接続されたりすると最悪火災の可能性もある)。

ACアダプタにはいくつか種類(オマケ1で触れる)があり、最近のコンパクトイフェクタ用ACアダプタならスイッチング電源が一般的だが、古い機種やアンティークタイプの機種にはそれ以外の電源を前提にしているものがある。機器が想定する種類と違う電源を使うと不具合が生じることがあるので注意が必要。


具体的チョイス

筆者の手元のACアダプタ各種をCTO-2など電源に敏感な機種(単体)に接続し、後段のアンプで思い切り増幅してみたところ、どうやらPSU-SB≦PSA-100S<AC9V 0.5A<<PSU-HSB-ALLくらいの順でノイズが小さいようだった。AC9V 0.5Aはバズノイズが主体、PSU-HSB-ALLは高域もうるさい。

PSU-SBはローノイズで形状も普通だが、容量が100mAなので足りるかどうか確認してから使いたい。PSA-100Sは500mAと大容量でノイズも少ないため、電流の大きい機種にはファーストチョイスになるが、横長の妙な形状をしているので電源タップの端を使うか短いACアダプタ用延長コードを使う必要があるだろう(壁のコンセントに直接繋ぐときは便利かもしれない)。

AC9V 0.5Aは容量を考えるとそれほど酷くはないノイズ性能だが、筆者なら電源に敏感な機器には使いたくない。具体的な機種でいうと、CTO-2に使うのは完全に却下、SE-BODに使うのはまあ許容範囲だろうが気分がよくない。出番があるとしたら、プラグ形状でPSA-100Sが使えず容量不足でPSU-SBも使えないときくらいだろう。PSU-HSB-ALLは明らかにノイジー(1.7Aと極端な容量なのでやむを得ないところもある:ローランドも2.0AのPSB-100は細かく対応機種を指定して売っている)で、大容量が必要な場合専用なのだろう。なお、PSU-HSB-ALLはPSA-100Sと似た横長形状である。

結局、小容量用途ならPSU-SB、大容量用途ならPSA-100S+延長コード、出先用に荷物を減らしたい(すでに配線してある他のアダプタを動かしたくもない)場合にPSU-HSB-ALL、というのが筆者の使い分けになった。50~100mA程度の機種を4~5台駆動するなら1.7Aも必要ないため、自宅での一斉給電はPSA-100SからCUSTOM AUDIO JAPANのPBHUB6-Cというハブを介して行っている。

PSA-100Sからは、プラグが短い仕様のせいかPSU-HSB-ALLに付属のデイジーチェーンケーブルは使用できなかった(未確認だが、IBANEZやキクタニの単品売りケーブルも使えなかった例がある模様:もちろん、筆者の手元のPBHUB6-Cは普通に使えている)。筆者が実際に試していない機種も含めた一斉給電用の構成候補については機材関連のその他のページを参照。


オマケ1(ACアダプタの種類)

主なものは3種類。

2012年現在一般的なのはスイッチング電源で、スイッチングレギュレータという回路を使う。これは、大雑把に整流(直流化)した電気を高速でオンオフして、大出力が必要なときは密に、小出力でよいときは粗に流して、後でまた整流するという方式(出力の大小は検出回路で検出する)。スイッチング~出力整流の区間を高周波で扱えるため小型軽量で、電圧調整をスイッチングの間隔(パルス幅)で行うため低発熱高効率、スイッチングノイズという特有のノイズがあるが、通常の負荷ならごく高い周波数にのみ現れるので、後段のフィルタで落としやすい(後述)。

以前多かったものにリニアレギュレータ電源があり、シリーズレギュレータを使うのが一般的(他には3端子レギュレータなど)。これは「ちょっと多めに荒っぽく出力して、必要ない分を熱にして捨てよう」という発想(多分)の方式で、重くてデカくて効率が悪い(=発熱が大きい)が高性能にできる。90年代くらいまでは家電のACアダプタもみんなこれだった。

トランスやダイオードなどで作った非安定化電源の後ろにレギュレータ(安定化回路)を置いて出力を安定させるという意味で、これらの電源を安定化電源と呼ぶことがあるが、慣例や文脈により「シリーズレギュレータ電源」の意味で「安定化電源」と言ったり「非安定化電源」の意味で「トランス式電源」と書かれたりすることがある(もちろん、スイッチング電源にも普通はトランスが入っている)。

非安定化電源は簡易な整流だけを行う(本格的な安定化回路を設けずに出力する)。リップルノイズ(AC入力と同じ周波数が下限になるので除去しにくい)が顕著で出力も不安定だが、小さく軽く安くて丈夫な製品が作れる。今回試した中ではAC9V 0.5Aが該当(いつからか知らないが、サウンドハウスのサイトに「ACアダプターにはスイッチングタイプとトランスタイプの2種類があり、弊社取り扱いの商品はトランスタイプとなります」「無負荷状態時には余剰電圧が発生する仕様となります」と説明が追加されていた)。

なお、スイッチング電源を極端な小出力で使うと、スイッチングノイズの周波数が下がる(はず、多分)。たとえばフルスイングで2Aの電源をスイッチングで20mAにすると、スイッチング周波数の100分の1のパルス波が(電源内部の整流器の前でではあるが)生じる(のだと思う)。また(イフェクタ用に採用されているかどうか知らないが)小出力時にスイッチング周波数自体を下げる機種もある。これらの影響が「機器とACアダプタの相性」とかなんとかいう話と混同されているのではないかという気がしてならない。


オマケ2(ベリさんペダルと電源)

非常に重要な注意
この項で紹介する実験は危険を伴うので、十分な知識と技術がない人は決して追試をしないでください。機器や電源の破損や、最悪の場合火災が生じる可能性もあります。

ベリさんペダルは電源に対して図太い印象があったので、手元のTO800やPO300やTM300、オマケでGDI21も使って実験してみた。

PSU-SBとPSA-100Sをとっかえひっかえしても・・・当然ながら変化はない。PSU-HSB-ALLを使って一斉給電すると、どうやらGDI21だけ微妙に影響が出た模様(単独給電なら平気)。思い切ってAC9V(MIC200用)を突っ込んでみたところ・・・GDI21以外は(ハムはそれなりに乗るものの)普通に動いた。とくにTO800は、ミキサーでハイパスローカットをかけていれば「電源に敏感な機種にAC9V 0.5Aをつないでハイゲインで使った」程度の影響しか出ていない(とサラっと書いているが、ものすごく危険な実験なので安易に真似しないよう重ねて注意しておく)。

世間では電源に敏感だという評判がいくつか見られるが、少なくとも筆者の手元の個体に関する限り、9V前後の電圧がテキトーにかかっていれば動いてしまうくらいのタフさを備えているようだ。



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