パソコン周辺以外の買い物


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パソコン周辺以外の、買い物に関するあれやこれや。

重要な注意
買い物の結果に責任は持たないよ。急がば回れの録音のページにあるお金が絡む話題についての項も参照のこと。


最初に

筆者が実際に使っている機器については、ローコスト制作の感想コーナーで紹介している(音声サンプル)。また、一部の機器(現在は使っていない古いものや、筆者の所有でないものも含む)はローコスト制作のハードウェアのページ(とそこから辿れるリンク先)に音声サンプルを掲載している。エレキギターや周辺機器に関する一般的なTipsは急がば回れのエレキギターの扱い方のページを参照。

ハードウェアにしてもソフトウェアにしても、コストパフォーマンスは数が出るものほど(あくまで「期待できる」というだけではあるが)有利だということを覚えておきたい。またハードウェア一般について、最大出力を上げるというのはトレードオフの大きな取り組みで、必要最小限の最大出力を持つ機器を用いると効率のよいハイファイ化がしやすい。サイズや重量についても似たような事情がある。

以下断りがない限り2011年7月現在の情報を元にしている。また、筆者が実物を見たこともない製品についても、カタログ情報を鵜呑みにして取り上げている。


楽器

筆者はどの楽器についても「初心者以前」の腕前でしかないのであしからず。楽器は「現物を手に持ってみてから」買うのが原則。電子楽器なら「同じ機種の別の製品」でも騒ぐほどの誤差はないかもしれないが、アコースティック楽器の場合「自分が買う個体」で確認したい。

どこのメーカーだからどうだとか値段がいくらだからこうだとか材料がなにで仕様がこれだからああだとか騒ぐよりは、自分の手で触れて「ああなるほど」と思えるものを選んだ方がシアワセなことが多そうに思える(もちろん、それで失敗することもあるだろうが、どんな選び方をしても失敗することはあるし、どうせ失敗するなら納得済みで失敗するのがまだマシな気がする)。

方針のようなもの

筆者はハードウェアやソフトウェアの細かい差異にかなり冷淡(その代わり好き嫌いには情熱的、だと思う)で、楽器にしても同じ種類のモノなら「だいたい似たような演奏」はできるだろうと考えているため、以下の紹介は一般的な楽器の紹介とは少し趣向が異なるだろうと思う。この態度は乏しい経験からひねり出したものに過ぎず、一般にどこまで通用する話なのか筆者は知らない。

たとえば筆者がギターを弾く場合、自宅ではエレキしか弾かず(というかエレキしか持ってない)、リハスタではエレアコ(レンタルの都合でオベーションとかタカミネとか:太っ腹なことにどちらもエントリーブランドやパチモノではなく本家のレギュラーラインナップ)も弾くが、楽器が変わったからどうのこうのというシチュエーションに出会ったことはない(筆者が度を越えて鈍感だという可能性は否定しないが、道具にはけっこうウルサイ方じゃないかと自分では思っている)。

もちろん、弾きにくい楽器やノリが合わない楽器というのは誰にでもある。しかしそれは楽器の性能や特性ではなく、結局「その人に合うか合わないか」「好きか嫌いか」の問題で、実際に弾いてみる以外に情報の得ようがない。どれだけ数字を並べても、もっともらしい根拠を積み上げても、手や身体に馴染む馴染まない、演奏のフィールに近い遠いという問題は厳然として消えない。自分の手には馴染まない「憧れの楽器」をどうしても使いたい人も一定数いると思うが、自分の手に馴染む楽器で練習してから(あるいは練習しながら)憧れの楽器に挑戦した方が、きっと効率がよい。

結局筆者は「楽器が多少変わっても、自分に合わないものだけ避けておけば、そんなに大げさに騒ぐことはないんじゃないか」という立場にいる。上達して、その機種やモデルに特有の操り方を突き詰める段階になれば話は別だろうが、その段階に到達する以前に「楽器の種類に共通の操り方」を相当レベルまで身に付けねばならず、それが身についた頃には「自分の演奏に何が必要か」という情報が今よりはるかに増えているだろう。

以下の紹介は、そういう思考の持ち主が書いたものだということを念頭に読んで欲しい。

エレキギター

具体的な製品や価格に言及した紹介が無駄なく始めるエレキギターのページにある。以下では大まかな傾向や誤解されがちなポイントを紹介する。

代表機種にフェンダーのテレキャスターとストラトキャスター、ギブソンのレスポールがあり、エントリー機種の大半はいづれかのコピーモデルになっている。一番数が出ているのはストラトモデルだと思われる。

最初からアレだが、エレキは「試してから買え」としか言えない。エレキギターというのは変態的なデザインのものしかない(復刻版的な機種ならなおさら)ので、どうしたって合う合わないの問題になる。レンタルも豊富だし、エレキギターが上手い人の家に行くとたいてい全部揃っているので、少なくとも上記3種類は(可能ならSGも)試してから買うのが無難だろう。それ以外では、ヤマハのPACIFICAシリーズが(世間的に大人気ではないようだが)相変わらず合理的なので、予算に多少の余裕があれば選択肢になるかもしれない。ボディやネックの形状とか、ツマミ類の位置や大きさとか、手に持ってみないとわからない仕様がけっこうある(同じような機種でも、コピー元モデルの年式やメーカーの方針などで変わる)し、素の天然材料(たいていのギターには木が使われている)には必ずバラツキがある。似たモデルを知っているから大丈夫ではなく、自分が実際に買う個体を手に取って確認しておきたい。

大雑把な傾向として、テレとストラトのボディ下3分の2くらいはボトム(ボディ下端)とコンター(カドを削ってある)部分を除いてだいたい同じ形、ストラトの方がややブリッジとナットがボトムに近い。レスポールは尻が長く丸いので地面に置くと背が高いが、ボディの一番くぼんだところを基準にすると、ストラトを上下に縮めたorテレのブリッジ位置を変えずにナットを近くした感じ。SGはレスポールのボディのくぼみをぐっと低くした感じ、ボディは小さいが尻が長いので地面に置いたときの背は高い(テレやストラトでピッタリのハードケースには入らないことが多い)。

誤解されがちな点として生音の鳴りがある。生音がよく鳴るということは弦の振動エネルギーが空気中に多く逃げているということなので、ピックアップで電気に変換する効率は落ちるのだということを理解しておきたい(ボディからのフィードバックによる整形作用と引き換えになる)。また、弦の振動が効率よく空気に伝わるということは、空気の振動が効率よく弦に伝わるということでもあり、ハウリングしやすくなる。ボディが鳴るソリッドエレキギターというのは結局、セミアコやセミホロウに近い音になる(アコギに近い音になるわけではない)。といった点は押さえておいた方がよいだろう。

もう1つ誤解されがちな点としてデットポイント(音詰まり)も挙げられる。ブリッジからピックアップまでの距離や、ダブルコイルやハーフトーン接続であればピックアップ同士の距離によって、出力されにくい周波数がある(ボディやネックの特性として特定周波数が鳴らないことももちろんあるので必ずそれが原因だとは言えないが、弦は良好に振動しているのにピックアップが拾っていない状況と、弦の振動自体が鈍い状況は区別して考える必要がある)ということに注意したい。さらに、弦が振動する角度でも、同じ振幅に対する出力や倍音成分の割合が変わる(ポールピースのど真ん中を横切っている弦をキッチリ水平に振動させると、見かけ上の振動数が倍になった格好になる)。

弦が1本丸々鳴りにくい場合、アジャスタブルポールピースなら簡単に調整できる。参考までに、復刻系のストラトなどに採用されるスタッガードポールピース(段差付きの固定ポールピース)では、5弦と2弦を低く、4弦を高く調整してあることが多い(3弦はワウンド弦用かプレーン弦用かで異なる)。弦振動の角度による基音成分の抜けは弦をポールピースの真上からずらすことで緩和でき、ピックアップ全体をずらすこともあれば高音弦ほどセンターから離れたレイアウトにすることもあるし、反対にダブルポールピースを採用して角度による音色の変化を強調することもできる。

筆者としては、ローエンドでアーム付きの機種はちょっとパスしたい(普通の機種ならアーム自体は取り外せるが、チューニングの安定性や故障率の点で、アームなしよりも明らかに不利なので)。ローエンドだとピックアップのコイルが全部同じゲインという状況を求めにくいため、独立可動のアジャスタブルポールピースだと便利だろう。テレキャスタイプの場合、弦長調整(オクターブチューニング)を2本の弦で共有する3wayブリッジ(というか3wayサドル)のものはちょっと不便だろう(それが楽器の味を生んでもいるのだが、筆者はメンドクサイのが嫌いである)。またボディとネックのジョイント方式(ボルトオンとかセットネックとか)が注目されることは比較的多いが、傾斜ヘッドのギターではその前にナット周辺での接木(スカーフジョイントと呼ばれる形式が多い)の仕様を確認しておくべきだろう。

世間的にはどうでもいい話なのだろうが、筆者はトップジャック(表板側にジャックがある)の機種が好き、というかサイドジャック(側面にジャックがある)は座って弾くとき邪魔なので嫌いである(実用面を考えても、トップジャックにL字プラグを挿した方が抜けにくくていいと思うのだが:トップ浮きの問題があるフルアコやセミアコは別にしても)。エレキでなくエレアコだが、オベーションのボウルバックはあんなにアグレッシブな位置にジャックがあるのに、なぜか干渉しないから不思議である(体格やフォームにもよるのかもしれない)。

筆者のぶっちゃけた見解

全部変態仕様なので、テレタイプとストラトタイプとレスポタイプを全部試してから好みで選ぼう。アームレス(固定ブリッジ)でアジャスタブルポールピースだと無難だが、選択肢が狭まる(手軽に手に取って試せるものと考えるとレスポがダントツ、ついでSGやテレのピックアップ変更モデルあたりか)のでお好みで。

アコースティックギター

鉄弦の代表機種にマーティンのD系(ドレッドノート)と000系、ギブソンのJ系(Jumboシリーズ)がある。エレアコはタカミネやオベーションが有名、なぜか日本では大人気でないようだが、マーティンも豊富にエレアコをラインナップしており、ノンカッタウェイ薄型ボディのモデルが多い。エレガット(ナイロン弦のエレアコ)を大きく扱う大手メーカーは少ないが、ヤマハやタカミネが比較的多くラインナップしている。

他のページでも触れたが、ピックアップ付きのアコギとエレアコの違いは、生音とピックアップ出力のどちらを重視しているかの違い、エレキ(のフルアコ)とエレアコの違いは、アコギっぽさを追及するかどうかの違いだと考えてよい(より細かいことをいえばフルアコやソリッドはあくまでボディ構造を指し、大部分のアコギやエレアコもフルアコギターの一種ではあるのだが、ソリッドorセミホロウのアコギorエレアコは普通サイレントギターと呼ばれるし、フルアコであることをわざわざ断るのだとしたらエレキだろうとわかるので、フルアコといえばエレキのフルアコを指すのが一般的:細かい話を無視してまとめるとようするに、ピックアップ使用を前提にアコギっぽい音を目指しているのがエレアコで、そこから外れるのがエレキかアコギというのが筆者の定義である)。

エレアコはさらに、ピックアップの信号をエレアコアンプに出す前提のものとミキサーなどからハイファイスピーカに出す前提のもの(一概に言えないが、フェンダーやフィッシュマンなどアンプも作っているメーカーのシステムはアンプ前提のものが多いだろうと思う)、マイクで音を拾って足す前提のものと生音は捨てる前提のもの(やはり一概に言えないが、タカミネやギブソンに前者、オベーションやヤマハに後者のデザインのものが多いと思う)などがある。すでに触れたように、生音とピックアップで拾う音は別物で、それをどう組み合わせるかはシステムの設計思想による。

ピックアップなしのアコギは代用も流用もききにくく、サウンドホールを半分塞いでしまうようなマグネティックピックアップはもちろん、音響伝達の要であるブリッジに余計な部品を挟み込む加工なんてのも、アコギとしての鳴りを(使っている木の種類がどうだとかナットの材質がこうだとかなんて話とは桁が違うくらい深刻に)スポイルする。いっぽうエレアコは生音(とくに低域)が豊かでない方が扱いやすいため、ボディもカッタウェイつきや薄型になっていることが多い(有名機種にノンカッタウェイの大型モデルが多くルックス的な要求がある鉄弦よりも、演奏の中心を占めるトラディショナルな奏法ではカッタウェイを必要としないエレガットのラインナップを見るとわかりやすい:技術的によりムチャな演奏を可能にするためにカッタウェイにしているモデルや、強度を稼ぐ目的でノンカッタウェイにしているモデルもあるだろうが、傾向として)。

録音ではエレアコでアコギの代用をするメリットが限定的(録音の難易度としてはエレアコを使った方がかなりラクなので、生音を捨てる前提のものならば、奏者がエンジニアを兼務する場合や録音場所の都合でマイク録音が厳しい場合などには適する)で、PAを使わない生演奏ではほとんどメリットがない。もちろん、アコギの代用でなく「エレアコの音」が欲しい場合や、エレアコのラインから入力する前提のイフェクタを使いたい場合など「アコギでなくエレアコ」が求められる状況も普通にあり得るし、PA(アコギ用アンプを含む)を使う生演奏ではたいへん便利である。とくにマイクを使った弾き語りでは、ヴォーカルマイクへのギターの被りとギターマイクへのヴォーカルの被りを同時に抑えられるため、エンジニアの作業がぐっと楽になる。

音が小さいモデルも需要がけっこうあると思われるが、これはなかなか難しい。筆者はARIAのSinsonido(鉄弦)を借りっぱなしでメイン使用していたことがあるが、一般的なエレキギターに比べると生音がかなり出た(まあ弦も太いし当然ではある)。ヤマハのサイレントギターでさえ「一般的なアコースティックギターに比べて、音のエネルギーでは100分の1、音量では10分の1(当社比)」(2011年9月現在の公式サイトより)らしく、音圧10分の1=仕事率100分の1=-20dbの意だろうから、少なくとも鉄弦モデルはそれなりの音量が出ると思った方がよい。

サイズが豊富なので自分の体格に合うものを選ぶべきだが、小柄大柄だけで決まるものではないので、やはり実際に手に持ってみるべき。また小型で奏者との接触が密なアコースティック楽器なのでどうしようもないのだが、奏者に聴こえる音とリスナーに聴こえる音(orマイクに届く音)は大きく異なるし、聴く場所やマイキングによってもかなり違った音になる(また当然、鳴らす部屋や場所によっても音色は大きく変わる)。これももちろん考え方次第で、マイクに入れる音はある程度の加工ができるが奏者が直接聴く音は加工できないので、弾いている自分に気分のよい音が届くことを優先して選ぶという手もありえる。

筆者のぶっちゃけた見解

アコギもエレアコもナイロンも、ヤマハの一番安い機種に手が届かないなら、値段だけ見ながらいくつか手に持ってみて選ぶのがよさそう。エレキと比べて「出音が気に入ったもの」を選ぶ価値が高いが、奏者に聴こえる音とリスナーに聴こえるorマイクが拾う音は大きく異なることに注意。

エレキベース

代表機種にフェンダーのプレシジョンベース(プレベ)とジャズベース(ジャズベ)があり、エントリー機種の大半はどちらかのコピーモデルまたは両方を折衷した感じのレイアウトになっている。一番数が出ているのはジャズベモデルだと思われる。アジャスタブルポールピースの機種が少なく、弦のテンションに相応な強度を得るのが大変で、音の狂いが面倒な事態を引き起こしやすい、といった条件が揃っており、ギターに比べてローエンドに手を出しにくかったりもする。

以下では両者の細かい違いにも触れるが、ジャズベは「ピックアップを増やした豪華版」だと思っておいてさほど問題ない。レンタルしているところもあり、やはりエレキベースが上手い人の家に行くとたいてい両方あるので、買う前に試せるなら両方試してみるとよい。例によってヤマハさんがBBシリーズで世間の評判を気にすることなく性能向上のための合理路線を貫いていらっしゃるが、入門機種としては少々お高い。

ギターよりもローエンドの選択肢が少ないので、かえって悩みが少ない。プレベとジャズベの違いはネックの幅で、プレベは一般的なエレキギターとほぼ同じ42mm、ジャズベは38mmが代表的なナット幅。フロント(ネック側)ピックアップだけ使っている分にはどちらも大差ない音が出るが、プレベのピックアップはセパレートでハムキャンセル接続(両方のピックアップに同じノイズが乗ると打ち消し合う)になっているので若干扱いやすいか。ジャズベはリア(ブリッジ側)ピックアップもついていている。2ボリューム1トーンが標準的(フルテンにするとハムキャンセルのハーフトーンになり、そこから片方のボリュームを下げて音色を変えることが多い:フルテンの音も筆者はけっこう好き)。楽器自体の特性とは関係ない話だが、小さめのケースだと「ジャズベは入りません」という製品がけっこうあるので、ジャズベ持ちの人はチェックしておこう。

座奏メインと立奏メイン、ピッキング方法(ワンフィンガー、レイキング主体のツーフィンガー、オルタネート主体のツーフィンガー、ピック弾き、親指弾きなど)、体格などで適切なディメンション(ボディ形状)が変わるため、理想を言えば、レンタルなどである程度自分のクセがわかってから自分の楽器を買った方がよい。たとえば、ブリッジミュートしながら弾く場合はブリッジが遠すぎるとやりにくいし、ピックアップをサムレストの代用にしながらオルタネート主体のツーフィンガーで弾く場合はピックアップが近すぎると窮屈になる。

ショートスケールのものやコンパクトボディのものは、メリットとデメリットがわかる人向けだと思う。フレットレスや多弦(5本以上)のものも、必要性を感じる人だけ検討すればよい。ハムノイズの影響を受けやすいのでアクティブピックアップのメリットも大きいが、電池が必要になり利便性が下がるし、気合を入れたレコーディングでなければ、そうこだわらなくてもいいんじゃないかという気がする。

筆者のぶっちゃけた見解

プレベタイプとジャズベタイプのネックを握ってみて、気に入った方にしよう。

手広くやっているメーカーというとやはりダダリオ。アコギ用のベーシックモデルはEJ、エレキ用のベーシックモデルはEXL、コーティング弦はアコギ用もエレキ用もEXPが頭について、エレキのライト(レギュラーライト)なら110、アコギのライトなら11が尻につく。ベース用の弦はランドワウンドのEXL160とセミフラットワウンドのENR72とフラットワウンドのECB82がミディアムゲージ。例外もあるが、EJシリーズで数字が5増えるとリンを添加したモデル(たとえばEJ11とEJ16は同じゲージ)、EXLシリーズで数字が50増えるとベース用になる(たとえばEXL110はエレキギター用でEXL160はエレキベース用)。ダダリオのほかアーニーボールもラインナップは豊富。フェンダー、ギブソン、マーティン、ヤマハなどでももちろん扱っているし、コーティング弦で有名なエリクサーもある。

エレキギター弦だと、ダダリオのEXL110やアーニーボールのREGULAR SLINKYあたりが普通、ダダリオのEXL115やアーニーボールのPOWER SLINKYあたりが太め、ダダリオのEXL120やアーニーボールのSUPER SLINKYあたりが細めのゲージに相当する。エレキベース弦だとそれぞれ、160系とREGULAR BASS系が普通、230系とPOWER BASS系が太め、170系とSUPER BASS系が細めの選択肢。アコギ用の鉄弦は、ダダリオのEJ11とEJ16やマーティンのM140とM2100が普通、EJ12とEJ17やM150とM2200が太め、EJ10とEJ15やM170とM2000が細め。

極限ローエンドにはプレイテックのAGSシリーズ(アコギ用)とEGSシリーズ(エレキ用)とEBSシリーズ(ベース用)とCGS クラシックギター弦(これだけ変な名前)、ARIAPROIIのAGSシリーズ(200系がアコギ用、400系がナイロン用、600系がベース用ラウンドワウンド、800系がエレキ用)などがある。一般論として、コストパフォーマンスを考えると数を出しているメーカー(ダダリオやアーニーなど)に圧倒的なアドバンテージがあるものの、自社のギターとセットで出荷できるメーカーも健闘している。

コーティング弦は巻弦の寿命が長いのが特徴だが、メタルピックなどで遠慮なくピッキングすると樹脂が剥がれてくる。エレキギターで指弾きメインなら、このデメリットはあまり気にならない。たいていはプレーン弦にも長持ち加工がなされているが、それでも、プレーン弦の寿命がセットの寿命になる製品が多い(2012年現在、プレーン弦まで樹脂コーティングしている大手メーカーはGHSとDRくらい、エリクサーはAnti-Rustプレーン弦、ダダリオはAnthi-Corrosionコンパウンド・プレーティング、アーニーは「a rust-resistant plating along with a patented reinforcement winding of titanium wire」と、メッキを中心とした対応をしている模様)。筆者がEXP110とEXL110やEXL110+を比較した限り、きちんとメンテしていれば「コーティング弦の方がちょっと長持ちするかな」くらいだった。またコーティングの種類によってはブリッジアースが巻き弦に落ちなくなる場合があり得る(それで悪影響があるかどうかは状況による)。コーティングなしでコーティング弦並の寿命を実現している弦もあるし、そもそもピュアニッケルにしてしまえば巻き弦は錆びないので、耐久性重視の場合こそノンコーティング弦にも目を向けてみるべきだと思う。

ギター族に限らずスケール(弦長)と弦のゲージ(太さ)を選べる楽器全般について、「小さいゲージの(=細い)弦と短いスケールの組み合わせ」には注意が必要である。細ければ細いほど、短ければ短いほど、弦のテンション(張力)が下がるわけだが、テンションが低すぎるとチューニングがすぐに狂う。さらに、テンションが低く弦高も低いとビビリが出まくるし、テンションが低く弦高が高いと押弦する指の力加減で音が上下しやすい。度が過ぎると楽器が壊れる原因にもなるので、やりすぎには注意したい。また、弦のテンションというと左手の押さえばかりが注目されがちだが、右手の感触もかなり大きく変わる(ある程度テンションのある状態の方が右手はラクだと思う)。

4弦エレキベースのミディアムゲージは.050-.105、鉄弦アコギのミディアムゲージは.013-.056、ライトゲージは.012-.054、エレキのミディアムゲージは.011-.048、ライトゲージは.010-.046、エレキのフラットワウンドライトゲージは.012-.052くらい(表記はたとえば「.010-.046」なら「1弦が0.010インチで6弦が0.046インチ」の意味)。もちろんメーカーや製品により微妙な差があり、たとえばダダリオは6弦がやや細くなる傾向がある(一部呼称も違い、アーニーは他メーカーのアコギ用カスタムライト相当のゲージをライト、ライトゲージ相当のゲージをミディアムライトとしている)。本来的には太さではなく重さがテンションを左右する(同じ太さでも、重い素材や密な巻き弦なら高いテンション、軽い素材や粗な巻き弦なら低いテンションでないと、同じ音程にならない)のだが、慣例として太さを基準にすることが多い(巻き線がみっちり詰まったフラットワウンドなどは太さの割にテンションが高いので、使う人は覚えておこう)。

鉄弦のアコギはミディアムゲージがやはりよく鳴るが、ライトゲージでもライトゲージなりの音色が得られる(どちらがよいというものでもない:ギター本体の特性と調和させるのが先決)。ヘビーゲージはスライドギターやダウンチューニングでの利用が大半で、楽器がテンションに耐えられることを確認しておいた方が無難(強度は足りても、ナットやサドルなどの加工が必要になる場合がある)。ピックアップの特性上高音域がウルサくなりがちなエレアコでは、ライト以下のゲージが好まれる。エレキは楽器によって扱いが異なり、フルアコなどでは大きめの(というかアコギに近い太さの)ゲージが、ソリッドなどでは小さめのゲージが好まれる(もちろん例外はある)。ソリッドボディのエレキだとラウンドワウンドのライトゲージが一般的だろう。フルアコ用に3弦巻弦でアコギ準拠ゲージをラインナップしているメーカーもある(ダダリオならEJシリーズなど)。ベースの場合は普通にレギュラーゲージがスタンダード。

筆者の好みを言えば、レスポールやSGにはライト(.010-.046)、テレにはミディアム(.011-.050)、ストラトならスーパーライトプラス(.0095-.044)、エレアコにはカスタムライト(.011-.052)、アコギにはライト(.012-.054)、ベースならロングスケールにレギュラー(.050-.105)くらいがよさそうに思う(すでに触れたように、楽器に適合するテンションでないと壊れるので、必ずこの通りにできるとは限らない)。傾向として、太くて短い弦だと狂いが大きくクセのある音色、細くて長い弦だと狂いが小さく澄んだ音色になりやすいことは、覚えておいて損がないだろう。

筆者のぶっちゃけた見解

エレキギターならダダリオのEXL110、鉄弦のアコギならマーティンのM140、エレキベースならダダリオのEXL160をとりあえず試せばいいと思う。

鍵盤の仕様について

まずサイズの問題がある。両手弾きのヴォイシングは2~3オクターブにわたり、ルートが上下1オクターブ分動き、キーの変化も1オクターブ分とすると合計6オクターブ必要で、鍵盤数にすると73になる。片手弾きのヴォイシングが1オクターブで、ルートが1オクターブ上下して、キーが1オクターブ分変わるとすると、合計4オクターブで49鍵あれば十分だとわかる(オクターブシフトを適宜使用する前提)。反対に片手しか使わなくても「曲」を弾こうと思うと25鍵では普通足りない。たとえば、Bb>EbM7>F7>Bbなんていうごく普通のコード弾きをしようとしても、ヴォイシングやルートの移動が窮屈になる(トランスポーズすれば多少緩和される)。編成によっても事情が異なり、ベース担当楽器がほかにあるならせいぜいC2くらいまでで足りる。ということで、ベースがほかにいる場合61鍵、ベース兼務の場合C1くらいまで出せるもの、片手弾きでは49鍵が(実際には使い切らないことも多いが)十分サイズだということをまず把握しておきたい。

いちおう、標準的なデフォルト音域を一覧にしておく(単独手鍵盤前提、括弧内はMIDIノートナンバー)。

横幅は25鍵で50cm弱、49鍵で80cmちょい、61鍵で1m前後、76鍵で1.2m前後、88鍵で1.4m弱、奥行きは20~30cm(シンセタイプはものによって40cm弱)くらい、厚みは10cm前後が一般的ではないかと思う。机の横に置きっぱなす場合61鍵あると明らかに邪魔だし、37鍵でも普通の机の上に置くとそれだけでスペースを使い果たすはず。73~76鍵のバリエーションはけっこう微妙で、左手がどこまで降りていく可能性があるかが問題になりそう。88鍵は無駄かというとそんなこともなく、通常の演奏で使うことももちろんあるし、スプリットしたときの使い勝手は断然よいし、端っこの鍵盤はMIDIイベントを書き換えて(ハモンドオルガンのプリセット機能みたいなノリで)使ってもよい。ウェイテド、セミウェイテド、ウェイトなしは好みと持ち運びの都合で選べばよい。そのほかの機能としては、アフタータッチが必要かどうかだけ確認すれば、あとは似たようなものなんじゃないかと思う。

もちろん、デジタルピアノやデジタルオルガンを実機の代用として使う場合には、実機と同様の操作子(ピアノなら88鍵とか、オルガンなら61鍵2段+足鍵盤とか)がないと弾けない曲が(多いか少ないかはともかく可能性として)出てくるだろう。用途が決まっているなら演奏フィールを実機に近付ける機能も有効だが、専門性を高めると汎用性に難が出ることに注意(ハンマーアクションの鍵盤でオルガン音色の演奏をするとか、ノーウェイテッド鍵盤でピアノ音色の演奏をするのは、不可能ではないだろうがいかにもぎこちない)。ドローバーや足鍵盤など特殊なハードウェアを後付けする必要がある場合は、本体(あるいは音源)の拡張性を確認しておいた方がよい。

音源は内蔵のものが1つはあった方が便利だが、そう凝ったものでなくてよい場合が多そう。外部音源としても使う場合、オーディオデータをデジタル出力できると便利だろう。XG系(ヤマハ)とGS系(ローランドなど)で仕様が違うことには一応注意。MIDI端子がなくUSB接続だけの機種は、パソコンの電源が入っていない場合の利用に制限が生じることがある(何の不都合もない場合ももちろんある)。フィジコン機能もあれば便利だろうが、どれか1機種が対応してくれれば十分だと思われる。

筆者のぶっちゃけた見解

電子楽器の中から弾きやすさ優先で。音源の仕様がXG系かGX系かは把握しておいた方が無難かも。

鍵盤

パソコンベースのソフトウェアシンセが手軽になってきているのでメインをMIDI鍵盤にする案もなくはないのだが、筆者としては、音源内蔵の鍵盤が1つはないとメンドクサイし、ハードウェア音源の代用にもなるので、メイン鍵盤は別に用意して、打ち込みの入力補助も最初はそれで賄い、不便を感じたらMIDI鍵盤の導入を検討するのがよさそうに思える(実際に自分でやってみれば、どの程度のものが必要かもなんとなくは予想できるはずだし)。また鍵盤を2台(以上)使うとなると、MIDI入力用の機種にはフィジコンの機能も求めたくなることが多いだろう。

筆者はセミウェイテッド鍵盤が好きで、ピアノもエレピもオルガンもシンセも鳴らす「マスター」キーボードにセミウェイテッドというのは合理的だし、そういう使い方をするなら(88鍵いるかどうかはわからないが)76鍵はあった方がよいと思うのだが、2021年現在、以前よりも選択肢が豊富になった。NEKTARというメーカーのIMPACTシリーズはアフタータッチつきのフル機能、老舗M-AUDIOのシンプル機種KeystationはKeystation88 MK3が最新機種。61鍵でいいならM-AUDIOのOxygen Proシリーズ、Focusrite(NOVATION)のImpulseシリーズ、AKAIのMPK261などもあり、いづれもアフタータッチつきでフィジコン機能が充実している。SAMSON(いつの間にか扱いがキクタニになっていた)のCarbonとGraphite、FATAR(Studiologic)のNuma Compact 2と豪華版の2Xは、デジピとMIDI鍵盤のハイブリッド(メーカーはステージピアノを名乗っているが、ようするに音源内蔵かつフルサイズのMIDI鍵盤)というユニーク機種で、どちらもアフタータッチつきの88鍵セミウェイテッドにして7.1kgという驚異的な軽さを誇る。さらに、Dexibellというメーカーは、ポータブルステージピアノを名乗り単三8本で動くVIVO S1という68鍵(A1~E7で、ちょうど88鍵から下1オクターブと上半オクターブちょいを削った形:うーむ、絶妙)の機種を出しているが、ちょっと高い。偶然なのかそういう流行りがあるのか、FATARもDexibellもイタリアメーカー。取り回しに問題がないならヤマハのMOTIF XF系(FSX鍵盤仕様は最大76鍵)やローランドのJUPITER-80(76鍵)やKORGのKingKORG(61鍵アフタータッチなし)などシンセの上位機種にもセミウェイテッド鍵盤搭載のモデルはある。ベリさんが出したモーターフェーダー搭載のフィジコン統合機MOTOR61は短命で終わるのかもしれない(本家サイトではまだカタログ落ちしていないが、usの大手通販サイトでも在庫は限定的)。

その一方で小型の音源内蔵キーボードは、薄いラインナップがさらに寂しくなりつつある。YAMAHAのMX49は、一時的なものかもしれないが国内取り扱いが減っている模様(2021年3月現在、ヨドバシには在庫があるみたい)。音源部分がMOTIF系の16ティンバー同時128音で、接続もMIDIin/outにUSBhost/slaveにAUDIOauxと豪華、サウンドカードとしても機能する。KORGのTRITON taktile-49は販売終了。元がMIDIキーボードだからかMIDIinがないのが惜しいものの、「ACアダプターやモバイルバッテリー(市販のUSB2.0企画準拠で DC5V 550mA以上のもの)を使えばスタンドアロンで動作可能」で、なぜかタッチパッドをパソコンのマウスとして使える果敢な機種だった(それでこそKORG、だと筆者は思う)。メインとして使える音源、出先で使うためのMIDIin、DAW連携のための簡易フィジコン機能などをつけるとローエンドには踏みとどまりにくいのかもしれない(2021年現在、ローエンドのMIDIin搭載機種がほぼ絶滅してしまい、デジピでもローエンドではKORGのD1とKAWAIのES110Bくらいになってしまった:USB経由での受信ができる機種も希少になってきているが、エントリーモデルとしてカシオのCasiotone CTS-200が「16chマルチティンバー受信、GMレベル1準拠」を謳っている)。

余談

そんな中、MIDITECHというメーカーが2020年に、PianoboxminiというハードウェアGM音源モジュール(充電式でバスパワーも対応、MIDIinとUSB経由両対応)を日本で発売した。たしかに貴重な製品だとは思うが、これが「パソコンを立ち上げなくても音が出せて便利」と受け取られるのは、世の中何かが間違っているんじゃないかと思えてならない。

筆者のぶっちゃけた見解

小さい音源内蔵鍵盤+大きいMIDI鍵盤がスマートだと思うが、ラインナップが薄い。

ドラムス

まず知っておきたいのは、ドラムセットをフルで持ち運ぶことは(もちろん可能ではあるが)あまりないということ。持ち込む頻度が高いのはスネアとキックペダルで、ケースも豊富に売られており、PROTECTIONRACKETのTZ3015とTZ3016(背負うタイプの一体型ソフトケース)やPEARLのPSC-BJSPCAとPSC-SPCA(セミハードケースとカートのセット)のような、スネア+ペダルのケースもある。

ドラムセットについて、10万円くらいまでのものは「オマケつきのバスドラ」だと思った方がよい。とくにシンバルは、SABIANのローエンドセットSBR Performance Setで2万5千円くらい、ミドルレンジのもので4万円前後、ZENNの激安ZCCSETでさえ2万円くらいはするもので、10万円くらいのセットにそんなにいいものはついてこない(プレイテックが、激安セットについてくるのと似たようなランク(おそらく)のものをバラで売るという果敢な挑戦をしている)。またスネアとキックペダルは自分の好みで買い換えるのが普通(セットについてくるのは試供品程度:これもプレイテックが激安品を出している)だし、ペダル類・ヘッド・シンバルは消耗品なのでずっと使うようなものではない。結局、ドラムセットの中身で長く使うのは、バスドラとタムとスタンド類(とセット内容によってはイス)くらい。スタンドとイスは意外と高価なので、素晴らしいモノが期待できないとしてもそれなりのモノは欲しい。タムは、イスを低くするセッティングで大径のバスドラを選んだ場合に高さの確認が必要なくらいで、そんなに気にしなくてよいと思う(気に入ったものがついてくるのに越したことはないが、タムを基準にセットを選ぶほどではない)。バスドラは価格が高い(単品で買うとエントリーモデルでも3~5万円くらい、普通のローエンドは6万円くらいから)ので好みに合ったものが欲しい。

そのバスドラだが、2014年現在とくにエントリーモデルではすっかり22x18インチが主流になり(筆者は22x16インチの方が好き)、コンパクトセット用としてJazz風の18x14インチもけっこうある(これも20x14インチの方がバランスがいいような気がする)。22x18インチのバスドラは主流になってから間もないからか、ハードケースのラインナップがやや薄いことも覚えておきたい(ギターの項でも触れたが、引っ越し業者はハードケースに入っていない楽器を運んでくれないところが多い)。スネアは14x5.5インチが一般的だったが、これも深いものが増えつつある(ウッドとメタルでキャラは違うが・・・まあスチールがラクだよね)。スネアのラグは、10テンションだとタイトで8テンションだとオープンな響き(シェル鳴りの減衰が変わる:上下一体のブリッジラグと上下分割のセパレートラグでも少し変わるそうな)とはいうものの、ハイテンションセッティングの上限が異なると考えた方が実際に近いと思う(少ない方がチューニングが手軽だが狂いが早く、多いとチューニングに手間がかかるが狂いは遅い、という傾向もある)。シンバルも平凡にハット14クラッシュ16ライド20で差し支えないだろう(筆者の好みをいえば、リハスタにスイートライドの21と23が置いてあると嬉しいのには違いないが、ミディアムライドの20だけだと困るのかと聞かれると別に困りはしない:チャイナいらんから(クラッシュライドじゃないちゃんとした)ライド置いて欲しいなー、とは思う)。

ヘッドは好きに張ればいいのだが、リハスタのレンタルスネアはたいていRemoで、バターサイド(トップ)に114BA(AMBASSADOR COATED)+スネアサイド(ボトム)に114SA(AMBASSADOR SNARE SIDE)、たまに見るEvansならB14G1+S14H30がだいたいお約束になっている(どっちも、10mm1plyコーテッド+3mm1plyクリア)。ちなみにRemoは、ロゴの下に「AMBASSADOR COATED」と書いてあるのがOO仕様(114BA-00)、「AMBASSADOR SMOOTH WHITE COATED」と書いてあるのがJP仕様(114BA-JP)らしいのだが、どっちでも気になるほどは違わない。タムはたいていPINSTRIPEかEC2で、どっちにしてもクリアーの2ply、というかタムのヘッドなんぞ破れてなければなんでも構わない・・・というのは言い過ぎかもしれないが、筆者なんかはスネアでさえあまり気にしていない(いちおう、AMBASSADOR X COATEDが好きではある)。スナッピー(スネアワイアー)にこだわると泥沼にハマるので、深入りせずなんとなくで選ぶのが無難。キックペダルも、筆者としては「普通こそ正義」な機材だと思う。シングルチェーンの真円カムにフェルト(または2way)ビーターでアンダープレートありというのが王道で、レンタルセットによくあるPEARLのP-920なんかはとても使いやすい(同じような価格帯で、TAMAのHP200Pは真円を切り取った形のPower Glideカム、YAMAHAのFP7210Aはフロアプレートなし、PEARLのP-63はフロアプレートなしの偏心カム)。

要約

セットならバスドラ重視、シンバルは消耗品、スネアとキックペダルは好きなものを単品で。

筆者のぶっちゃけた見解

借りられるなら借りた方がラク。どうしても自前ならPEARLのSS1455とP-920が最強。

ドラムスティック

どれを選んでよいかわからないなら、有名メーカーが出しているヒッコリーの5Aで、特殊形状でないチップのものを選べばだいたい問題ない。同じ5Aでもメーカーにより寸法が異なり、TAMAやPROMARKは14.0mm×406mm、LUDWIGは15mm×390mmくらい(多分)、VATERは14.5mm×404mm(重心を先端に寄せたロサンゼルス5Aも同寸法)、Vic Firthは14.4mm×407mmとバラバラである(PROMARKやLOS CABOSなど、サイズが異なる2種類以上の「5A」をラインナップしているメーカーや、VATERのロサンゼルス5AやKeg5Aのように派生サイズを設定しているメーカーもある)。ようするに、径が14~15mmくらいで長さが40cm前後のものが標準サイズになる(重さは1本40~60gくらい)。

チップの形状についてはいろいろなことが言われるが、まず押さえておくべきなのは、チップで叩くのは主にスネア、ライド、たまにハット(オマケでタム)であるという点だろう。そもそもタイコとシンバルを同じスティックで叩くことにムリがあるとか何とかいう話はさておき、スネアドラムの場合、広い接触面積で叩くと迫力のある(理屈上はピンクノイズなどに近い)音、狭い接触面積で叩くと澄んだ(理屈上は周波数分布にピークやディップが多い)音になりやすい(のだと筆者は理解している)。いっぽうライドのピン打ちは、側面が平べったいチップの方が高音域の豊富な音(ナイロンチップの方がウッドチップよりも金属的な感じ)になり、ハットはライドほど音が変わらない。セッティングでなんとかなることが多いが、チップの形状によりライドのカップ打ちがやりにくい場合もあるのでいちおう注意。またスティックを振り下ろす方向とチップが楽器に当たる面が垂直から大きく離れると(たとえばチップのギリギリ先端を使おうとすると)力が逃げてカスったような音になる(orできる)。

もっとも特徴が出るのはやはりライドのピン打ちで、マイクなしのシンバルレガートをやる場合などはこの音色が選択基準になることもある。が、結局好みと曲によるので最初はあまりこだわらなくてよいと思う。だいたいが、ポピュラー系のドラムサウンドはいったんマイクを通してイジるのが前提なわけで、単体の音色を云々するよりも操作性や安定性を重視した方が生産的なことも多い(また音量を出したい場合に、楽器から出す音を大きくするよりマイクアンプのツマミを捻った方がはるかに簡単なことも、しっかり覚えておいた方がよい)。とりあえずのチョイスとしては、安定性と迫力を両立できる樽型(バレル:メーカーによっては俵型とかスクエアとも)が無難かなという気がする。そこから出発して、カドを斜めに削ったドングリ型(アコーン)やカドを丸めた楕円型あたりに手を出してみると手っ取り早いのではないか。自分では試したことがないモデルばかりでアレではあるのだが、PROMARKのTX717W(Rick Lathamモデル)、VIC FIRTHのVIC-SG(Steve Gaddモデル)とVIC-SG2(クリアラッカー仕上げ)、Pearlの123H/3(村石雅行モデル)と110H(これだけは筆者も持っておりお気に入り)、VATERのVHK5AW Keg 5A(サイズは普通で重心が先端寄り)、TAMAのH2145-B(メーカー分類ではボールチップだが樽型に近い)あたりをテキトーに振り比べてみて、なんとなく気に入ったのを選べば大外しはしないと思う。

スティックバッグはそんなに高価ではないしあれば便利。決まったスティックしか使わないなら3ペア収納モデルで十分、どれを選んでも大差ない(見た目重視で選んで構わないと思う)。サイズが大きいもので(実物に触ったことがあるモデルはほとんどないが見た目で)便利そうなのは、PEARLのPSC-STBOS(6ペア)、SABIANのSAB-SSF12(8~10ペア、自立型)、MONOのM80(10ペア)、TAMAのTSB24シリーズ(12ペア)、TECHRAのSTICKS BAG(16ペア)あたり。筆者自身はTSB24系の古いモデル(10ペア)がメイン。20ペアは軽く入るジャンボバッグも持ってはいるが、ほとんど持ち歩かず家用のスティック入れにしている(上に挙げた中ではSAB-SSF12が便利そうで、ちょっと欲しい)。あまりパンパンに詰め込むと使いにくいので、上限収納数から2割くらい減らして使うのが無難だと思う。もし本数がとても多いなら、運搬用と演奏時手元に置く用でバッグを2つ用意するのも一案。

スティック購入に関する注意として、個体差が大きい製品なので手に取って現物を確認してから買うようにしたい(左右の重さでいうと、筆者の知る限り一番厳しいVic Firthが2g刻み、Wincentなんかも「左右で最大3グラム以内にペアマッチング」をウリにしているが、重心なども1本1本違うので、秤に乗せて何gかよりも振ってみた手ごたえを重視した方がよいのではないかと思う)。追記:ダダリオによる買収後のPROMARKが、工場出荷時1.5g以内かつトーン差6Hz以内という「驚異的な精度のペアリング」を謳うようになった(Vic Firthを強く意識してのことだろう、きっと)。マーチングスネアに使う前提で設計されたモデルも(とくにトラディショナルと称するラインナップに)多数あり、用途がドラムセットでもあまり気にせず使い回している人が多いようだ。筆者自身のチョイスについては別ページに掲載している。

要約

とりあえずヒッコリーの5A、とくに考えがないなら樽(バレル)型チップ。ナイロンチップは少し丈夫で、スネアの音はウッドチップと大差ない。


楽器周辺機器

アンプの性能など

パワーアンプとかマイクアンプとかの話ではなく、楽器用アンプの話。

まず確認しておくべきこととして、大型アンプとポータブルアンプで同じ音は出ない。デジタルのアンプシミュレータを使う場合も(程度は異なるが)事情は同じで、自宅の5インチモニタから出しているときとスタジオやステージで15インチのPAスピーカから出すときで「同じ音」には決してならない(というか、リスニングポイント(点)で最高のパフォーマンスを目指す普通のスピーカと、オーディエンスエリア(面)で平均パフォーマンスや最低パフォーマンスを考慮するPAスピーカは、根本的な設計思想が異なる)。またデジピなどでは関係ないが、エレキギターやエレキベースの場合大音量だと音声経由のフィードバック(アンプの音が楽器を揺らしてまたピックアップに拾われる)が強く出るため、小音量時とはトーン自体が同じにならない(ハウリングするほどではない弱いフィードバックでも、音はかなり変わる)。

とくにステージでは、望みの音を手元で作るところまでが奏者の仕事、それに「できるだけ近い」ものを客席まで届けるのがPAの仕事(最終的に「届く音」が問題なのであって、そのためにアンプにマイクを立てるかDIから引っ張って卓で似せるかはPA担当者の領分なのが本来)と分けて考えないと、話が妙なことになる。もちろん、PAの仕事がスムーズに運ぶような気配りができるに越したことはないが、それは奏者の仕事をキッチリこなせる上級者がさらなる上積みとして考慮すればよい。というかほとんどの場合、初心者奏者が専任PAつきのハコで演奏するなら、最初に「出したい音」を実際に聞かせたあとは全てPA担当者の言うとおりにやるのが、もっともマシな結果を得られる(もちろん、モニタが聴きやすいかどうかは申告しなければならないが、注文をつける前にヘッドフォンモニタを検討した方がよい)。また、PAで自前のアンプを使う機会はストリートくらいである(「飲み屋イベント」系や屋外の仮設ステージなどならないではないが、それだって「物持ちなベテラン」が気合で持ってきたアンプをみんなで使うのが普通:良識として、荷物運びくらいは手伝おう)。例外はモニタ用のキーボードアンプくらい。

また、コンボアンプやアクティブスピーカのワット数は最大音量を決める支配的な要素ではない。まずモノをいうのはスピーカユニットの能率(大きくて軽いユニットほど高能率になり、大きさの方がより強く影響する)で、たとえばJBLのウーファー130AとフルレンジD130がそれぞれ101dbSPL/W@1mと103dbSPL/W@1m(ギターアンプ用の12インチユニットも100db前後が多く、ベースアンプ用だともう少し低能率のものが増える)、FOSTEXのウーファーFW108NとフルレンジFF80がそれぞれ86dbSPL/W@1mと81dbSPL/W@1m(3インチ前後のフルレンジには80~85dbくらいのものが多い)、もし性能が数字通りなら、D130に1W入れる方がFF80に100W突っ込む(耐入力10Wなので多分焼き切れるが、仮に突っ込めたとして)より正面@1mの音が大きい計算になる。またたとえば、マーシャルの1960(2013年1月現在の現行品)に100W突っ込むのと、1960Vに50W突っ込むのはほぼ同じ音量である。低域はエンクロージャの影響も強く受け、単純な無限大バッフルと完全逆相バスレフ(どちらも現実にはありえない)で比較すると約6db差がある。高域は指向性の持たせ方でどうとでも変わる。なお、大型スピーカに1Wの電力を投入したときの音圧というのは健康への危害が懸念されるくらい大きい(急がば回れのエレキギターの扱い方のページを参照)。

アンプのワット数を考慮するべきなのは、セパレートアンプやパワーアンプ+パッシブスピーカなどを導入する場合で、最大出力でスピーカが壊れないかどうかや十分な音量が得られるかどうか検討する材料になる(パワー段がチューブの場合定格よりも大きな出力が生じることが多いので注意)。とくにセパレートアンプでキャビネット歪みを得たい場合には、最大出力で壊れず常用出力で歪んでくれるキャビネットを探す必要がある(楽器用のキャビネットには歪みやすく作ってあるものが多く、マーシャルの1960だってアンペグの8発だってパワーアンプに10Wも突っ込めば歪んでくれる:歪ませないために全力を尽くしているハイファイ系スピーカとは設計思想からして違う)。なお、パワードスピーカやアンプの消費電力は、アンプの効率まで絡んでくるので、最大音量を考える際にはアンプの出力よりもさらに意味の薄いパラメータになる(ハコの空調能力や給電能力を検討する場合には必要な数字)。また最大出力はトレードオフが大きい性能パラメータなので、過剰に用意するとローファイになりがちである(その音が気に入っているなら問題はないが)。

生ドラムと合わせる場合は最大音量がネックになることがある。数字でいうと、ドラムスの演奏で出てくる最大音量は120dbSPL@1mくらい(とくに大きな音を出す奏者がとくに大きな音の出る楽器を使った場合:バスドラ2発とタイコ2発の全力ショットとかならもう少し出るが、そんな演奏とはそもそも「アンサンブル」できない)の音圧が出てくる。しかし上記はあくまでピーク値であって、これに合わせるリード楽器の出力(RMS)はせいぜい110dbSPL@1mもあれば余裕である。本気の骨董品でなく故障もしていない中型以上の機種(12インチ1発のギターアンプとか、12インチウーファー+ツイーターのキーボードアンプなど)であれば、生ドラムに音量で負けることはほぼあり得ない。ただし、ベースアンプの場合能率(キャビネット形式やツイーターの有無でも傾向が変わる)が低いものが多いので大きさやアンプ出力の割に音量が稼げない場合がある(ギターアンプなら、8インチ単発キャビネットに10Wも突っ込めばRMSで100dbSPL@1mちょっとは出る)。

ドラムスの音で他の楽器が消されてしまうのは、もう一方が小型アコースティック楽器の場合、アンプがごく小型の場合、少なくとも片方の奏者が極端にヘタクソな場合だけである(ミキシングをやる人は、バンドの多重録音をミックスしようとしたときに、どんなに音量を絞っても特定の楽器(ドラムスに限らない)が他の邪魔をして仕方がなく、いっそフェーダーをゼロまで下げてやろうかと思ったことが一度くらいはないだろうか)。またPAや練習では、音量バランスの問題とモニタの問題を区別して考える必要がある。とくに、ドラマーにベースアンプやギターアンプの音が直接聴こえないのは距離やスピーカセッティングの問題から避けようがないことが多い(ギタリストにモニタ用ギターアンプの音が聴こえないのは、多分アンプの出力以外の何かがおかしい:PAの場合外に出す音よりはギターが大きなバランスになっているはずだし、練習だとしてもまずドラマーからギターが聴こえないという苦情が出るはず)。ヘッドフォンモニタも含めて対策を検討すべきだろう。

筆者のぶっちゃけた見解

必要なものと役割分担をちゃんと確認しよう。

アンプの運用など

音色について、ギターアンプやベースアンプの場合はとくに、キャビネット(アンプのスピーカ部分)から出す音とラインアウト経由で普通のスピーカから出す音が異なることに注意。最近の機種はラインand/orヘッドフォン出力にキャビネットシミュレータを噛ましている機種が多いが、パワーアンプへの出力を単純に分岐している機種だと、キャビネットで落ちるはずの成分がそのまま残ったり、パワーアンプやキャビネットで加算されるはずの歪みが抜け落ちたりして、本来の鳴りとはかけ離れた挙動を示すことがある(ただし、プリアンプまでで音作りを完了してハイファイ系のキャビネットを鳴らす機種ではそう大きな差にならない)。

デジピなどではあまり問題にならないが、エレピやエレキギターのようなエレクトリック楽器、エレクトロニック楽器でもエレドラムのようにタッチノイズが大きなものでは、奏者に聴こえる音とアンプの向こうに届く音がかなり異なる。比較的簡単な実験としては、アンプシミュレータからの直接出力を、モニタスピーカ(または開放型に準じる構造のヘッドフォン)で出す場合と、マイク録り用モニタヘッドフォン(KOSSのQZ99とかVIC FIRTHのSIH1のような遮音性が極端に高いもの)で出す場合を比べてみるとわかりやすい。

ギターorベースの場合、スピーカミュートに適したアンプ(ようするにヘッドフォンorラインアウトを「メインに」している機種:キャビネットを使わずにキャビネットの「ような」音を出したいのだから、結局シミュレータ系になる)が1つはあった方がよいと思う。少ない騒音で練習できるメリットはもちろん、録音も簡単だし、ステージで使う場合も同じ環境を利用できる。アナログのチューブシミュレーターは構造的にクランチサウンド(弱く弾くとクリーンっぽい音、強く弾くとドライブっぽい音、中間だと微妙に歪んだ音になる設定)が苦手なものが多いが、それ以外の性能はかなりよくなってきており、筆者が使っているBEHRINGERのGDI21(TECH21のSansAmpシリーズのパチモノ)は、たいへん使い勝手のよい音が出る(ただしこの機種はミキサーに入力する使い方が本来のようで、単機だと活用にある程度の制限がある:リンク先参照)。

いわゆるデジタルマルチを使う場合、とくに凝ったギミックを装備している機種でなければ、本体にペダルがついているメリットは薄い(ペダル入力さえあれば、必要になってから足せば事足りる:頻繁に持ち運ぶ場合荷造りと荷解きが多少面倒にはなるが、本体とペダルを別の場所に置ける分自由が利く)。どこのスタジオやライブハウスに行っても、マーシャルのJCM2000(またはJCM900、たまにJVM系)、フェンダーのツインリバーブ(なかでも65ツインリバーブの復刻版と、たまに2001年リニューアル版)、ローランドのJC-120、ベースアンプならアンペグのSVT(たまにハートキーやトレースエリオット)が定番なのは変わらないので、これらを一通り試したうえで好みのものを見つけ、シミュレータも「それっぽい感じ」のものを選べばよいのではないかと思う(すでに触れたように「同じ音」は決して出ないが「雰囲気が出ている」ものはけっこうある:実用的には、雰囲気だけ出してくれた方が便利だったりもする)。

2012年3月現在の筆者の認識では、エレキギターの6弦開放を「なんとか鳴らす」ために、ノーマルなギターアンプスタイル(後面開放や密閉型のキャビネット)なら6~6.5インチ、普通のバスレフで5インチ前後、凝ったバスレフ+ツイーター構成でも4インチくらいのユニットがギリギリのラインになると思う(ベリさんなどカツカツの構成をしないメーカーはワンサイズくらい大きな製品をラインナップしている)。もちろん、全音域を鳴らし切らなくても演奏を楽しむことはできるので、ミニチュアアンプに出番がないわけではない(筆者が試したものではVox(KORG)のAC1 RhythmVOXが面白かった)。

キーボードアンプは必要な人だけ導入すればよいだろう。電力や形状の制約から楽器本体のスピーカは補助的にしか使えないことも多いが、電子楽器の場合楽器内部で音が完成するので、アンプがなければ楽器の音にならない電気楽器とはかなり事情が異なる。どの楽器でも、ステージでのモニタはヘッドフォンで行った方が無難である(とくにベースとドラムス)。PAでベースアンプに(モニタ用でない)マイクを立てるのは、よほどの自信がない限りやめた方がよい(DIからアンプシミュレータに入れてPAスピーカから出すのが無難)。

チューブアンプは面白いツールで、筆者もBEHRINGERのMIC200という極限ローエンド機種(ARTのTUBE MPシリーズのパチモノ)を愛用している(プリアンプとアウトプットアンプの間にチューブ回路を挟んだイフェクタ的な実装)。しかしチューブアンプ一般について、温度が安定するまで出音も安定しないとか、真空管(球)の寿命をケアしなければならないとか、発熱が大きいとか、ノイジーになりがちだとか、メインとして常用するにはちょっと面倒な話が(機種によって程度は異なるが)いくつかある。まあモノとしては面白いので、好きな人はサブアンプとして導入してみてもよいかもしれない。

また真空管をどこに使っているかで「チューブアンプ」の意味合いが変わってくる。楽器用ハイブリッドアンプにプリチューブが多いのは、大出力のパワー段をチューブで作ると(発熱、トランスの設置、メンテナンスや消耗品、重量や体積なども含めて)非効率だというのが主な理由だと思われる。もちろんプリ段とパワー段ではやっていることが違うため、得られる歪み(後者の方が荒っぽい傾向)も違えば、わざわざレガシーデバイスを使う目的の1つである「不安定な応答」のメカニズムや影響範囲も異なる。すでに触れたMIC200(や多くのラックハイブリッドアンプ)のように、プリ段をソリッドステートにして信号が劣化しやすい状況をまず脱し、チューブに通してからまたソリッドステートの安定したアンプで増幅するイフェクタ的な使い方もある。

単純にチューブっぽい歪みが欲しいだけなら、アナログ回路でのモデリングもあるし、デジタルシミュレータももちろん数多くある(本当に手ごわいのはチューブ歪みよりもキャビネット歪みで、2011年現在、シミュレータで「気分よく」再現するのはかなり難しい)。なお、真空管で増幅すると超音波域の歪みが生じるのは事実だが、実機アンプではそれを12インチのフルレンジに突っ込んでいることを忘れない方がよいと思う。

筆者のぶっちゃけた見解

ギターorベースならローエンドのデジタルマルチorアンプシミュレータからアンプ機能メイン(または単機完結型)のものを。少なくとも「アンプで音を作る」ことを覚えるまでの期間、シンプルさは多機能さに勝る(そしてその期間に限定した投資と考えてもローエンド機種なら十分ペイする)。鍵盤なら必要性を感じてから検討するのが吉。チューブアンプは面白いがメインにするとやや面倒。PAでは実機アンプを極力使わず、ヘッドフォンモニタを優先し、知識や経験が豊富な人の助言を積極的に求めると、初心者でもマシな音を客席に届けられる。

奏者用イフェクタ

やり方は人によって様々だろうが、もし初心者がリアルタイムでイフェクトを使いたいと思ったなら、専用ハードを使うのが無難である(ノンリニア編集なら、パソコン上のソフトウェアイフェクタでもまったく問題ない、というかアウトプットさえ同じならパソコンの方がラク)。なかでもデジタルマルチと呼ばれる複合機が便利かつ安価で、エレキギターやエレキベースやエレアコギターであれば「とりあえず」の選択肢になる(アコギの人は・・・直球勝負ならイフェクタはあまり重要でないし、作り込むならエレアコ使えばいいからねぇ)。

ちょっと困るのがヴォーカル用イフェクタで、加工を(プレイヤーの手元でなく)ミキサーより後ろでエンジニアがやることが多かった事情や、実際に作業が難しいこともあり、手軽な製品が少ない。理想はラックイフェクタで、dbxの286Sが鉄板チョイス、価格的なメリットは小さいがBEHRINGERのMIC200+MDX2600(デザインからどうやら、MDXシリーズのヴォーカル向けバージョンらしい)あたりは設定項目が簡易。時間空間系はパソコンで処理する手もあるし、ラックでやるならLEXICONのMXシリーズや、安く上げるならBEHRINGERのFX2000(こちらはサウンドメイキングが好きな人でないととっつきにくそう)なんてのもある。

2012年12月現在筆者が知る限り、フロアorペダルタイプのオールインワンイフェクタは派手に音が変わるだけのもの(が悪いとは思わないが、ヴォーカル加工で最初に必要なのはヴォイスチェンジャーやカラオケエコーではなく、ハイパス・コンプ・ディエッサー・エンハンサーあたり、ミキサーより後ろでパラメトリックEQ・コーラス・ディレイ・リバーブあたりである)ばかりでちょっと寂しい(ラックを持っているヴォーカリストがチューブアンプを持っているギタリストほど多くないのは、効果が地味なせいもあるんだろうなぁ:綱渡りしながら針の穴に糸を通すような集中力で、原音のイメージを極力残しつつ過剰なバリを削ぎ落とした渾身のサウンドメイクを「あんまり音変わってないよね」と流された日にゃあ、コッチは音を変えないために魂削ってんだと愚痴りたくなる)。また、ピッチコレクトメインのマルチイフェクタはコーラスやリバーブなどに「効きがわざとらしい」ものを(ピッチ補正による不自然さを覆い隠すために)あえて採用しているものが多い。

2015年10月現在、ぱっと見に基本的な処理をそれなりにケアしていそうな奏者向けイフェクタ(実物はまったく未確認)は、TC HELICONのVoiceTone Correct XT(シンプル系でエレキギターなどに使えるDI端子つき)とVoiceLive Play(多機能系というかマルチイフェクタ)、DIGITECHのVocalist Live FX(かなり本格的でマニュアルを読んで「これは便利だ」と思える人向け)くらいだろうか。ただしこれらは「英語での歌唱をアメリカで流行っている音色に仕立てる」ことを意識しているであろうことに注意(ハマる人にはハマるだろうけれど:これに限らずヴォーカルは元音に大きな個人差が出るので、実物を試さないとなんとも言えない部分が他の楽器よりさらに大きい)。また手元でリバーブをかけてしまうとその後の加工に差し支えることが多いことも覚えておきたい。

少しヒネった案として、デジタルMTRには(録音機能に特化したものもあるが)マルチイフェクタとして使えるものが多いため、持っているならぜひヴォーカル加工も試しておきたい(筆者はこれを採用している)。パソコンを使う場合モニタの確保でそれなりの手間がかかるが、活用できるなら金銭的なコストが下がるだろう。エレキギターも弾く人ならプリアンプ+ギター用ペダルという活用法もあり得るが、コンプやシングルボイスコーラスあたりはものによって癖が出る。結局一長一短なので、各自の都合に合わせて選択するしかなさそう。

要約

ノンリニアの場合、パソコン上でのソフトウェア処理を有効活用しやすい。リアルタイムの場合、エレキギター、エレキベース、エレアコギターであればとりあえずデジタルマルチ。ヴォーカルのリアルタイム加工は選択が難しく、ワークステーション系デジタルMTRの内蔵イフェクタ、パソコンでのかけ録り、単体マルチなどから都合に合わせて。

筆者のぶっちゃけた見解

気合の残高に応じて、ラックイフェクタ>デジタルMTR>パソコン>簡易機器。


録音や編集など

ミキサー、ヘッドフォン、ヘッドフォンアンプについてはパソコン周辺のページを参照。

モニタスピーカ

ヘッドフォンだけでのミックス作業には限界がある、というのは正しい。どういう限界があるのかというと、スピーカ再生に最適化した編集ができない(当然、スピーカだけでのミックス作業にも限界があり、ヘッドフォンに最適化した編集ができない:「デカいスピーカでちゃんと鳴れば他でも大丈夫」的な論調をたまに見かけるが、まったく的外れである)。ということで、スピーカ再生を前提とした編集作業をする場合どうやってもスピーカでのモニタが必要なわけだが、真面目にやるのなら、ちゃんとしたスタジオのモニタ設備を使う以外に選択肢はない(プロのスタジオでも「万全の」モニタ環境が揃っているトコロは少なく、設備が足りない所では精密なモニタが必要な作業だけ外注に出している)。

自宅で作業するなら、普通のステレオコンポのスピーカがあれば問題ないだろう(すでに持っている物があるなら、小さくてもボロくても使えるだけ使えばよろしかろうと思う)。ただもし音楽編集のために新たに買うなら4インチ以下は検討にも値しないし、もし5インチクラスのホームユーススピーカを買うなら値段だけ見て選ぶのがベスト、というのが筆者の意見(いつか革命的な技術が出てきて常識がひっくり返るのかもしれないが、2020年現在はまったく疑いなくそう思う)。単体のスピーカだと、BEHRINGERのSTUDIO 50USBやSAMSONのSAMSON MediaOne M50が安い(メーカーはモニタ用だと主張しているが、どちらもマルチメディアスピーカっぽく見える:実物はまったくの未確認)。

もしスピーカをまったく持っておらず、上記の5インチ機種でも予算オーバーなら、買える範囲でとにかく1番デカい2way(1つのハコにスピーカが2種類ついているタイプ)にしよう。ミニチュアサイズの2.1chシステム(2つある方のスピーカが直径15cm未満くらいのもの)を使う場合、ウーファーユニットは正面に設置する(パソコンディスプレイの上とか:普通の2.1chシステムではメインスピーカの中点を避けるのが普通だが、ミニチュアシステムだとサブウーファーからもけっこう高い音が出てきて、それが左右に偏っているとやっかい)。たとえどんなにプアな環境であって、音の加工を完成させるまでに一度はスピーカから音を出してみるべきだ、と筆者は思う。

なお、5インチのスタジオモニターはかなり特殊な機器なので、本当にわかっている人(はこんな解説読む必要ないけど)以外は手を出さないのが無難(本当にスタジオ用のモニターな機種と、メーカーがモニターを名乗らせてるだけで中身は普通のホームユース用の機種があって、とてもややこしい)。8インチクラスは(部屋との相性が強く出るものの)しっかり選べば有用な選択肢になる(5インチ2発クラスはさらに扱いがデリケートなので、なんとかできる人用)。もし本体にイコライザ(EQ)がついたモニタスピーカを導入するなら、イコライザの設定は必ず行おう(イコライザを日本語にすると等価器で、ようするに「設置環境に合わせて出音を調整する機能」のこと)。またスタジオモニタをリスニングに流用できるとは考えない方が無難である。そのほか詳しい話は機材コーナーのスピーカのページを参照。

面倒な話が続いたが、種類や性能がどうこうよりも、デタラメな環境に設置したスピーカの音を「参考程度」以上に信用するなということに尽きる。信用できるスピーカの音が欲しければスタジオ(ただし少なくとも音楽編集専用の設備があるところ)に行こう。

要約

一般住宅で使うならテキトーでよい。スピーカ前提の音を作るなら何かしらのスピーカは必要だが、テキトーな音が出ていることは忘れないようにしたい。

筆者のぶっちゃけた見解

5インチは値段だけ見て買え、4インチは買うな。

マイク

極限ローエンドについては、ローコスト制作の感想コーナーにある安いマイクのページを参照。CM5(とコンデンサマイクに手を出すならC-1やC-2も)は「持っておいてもいいかな」という気がする(他にお気に入りのマイクを持っていても、荒っぽく扱わざるを得ない場合や出先で使いたい場合に出番があるし、単純に予備を用意しておく意味でも有効)。PDM-57は・・・本家のSM57がかなり安いからわざわざパチモノじゃなくてもいいかなぁ。棒状マイク向けの汎用ショックマウント(サスペンションホルダー)は、AKGのH30やオーディオテクニカのAT8410Aあたりがローエンドで5000円前後。ハンドマイク形状ならSHUREのA55Mというアイソレーションマウント(一般的なショックマウントとは形状が異なる)が3000円くらい。マイクの形状により使えるものと使えないものがあるので適宜確認のこと。

あとは録音する楽器や環境などに合わせて必要なものを必要なだけそろえればよいと思うが、ラージダイヤフラムのマイクや指向性切り替え式のマイクはクセが出やすいという傾向は覚えておいた方がよいだろう(クセを出したいときと出したくないときがあるだろうから、どちらがよいというものでもない)。また他のページでも繰り返しているが、指向性がキツいもの(「超」とか「鋭」とか「スーパー」とか「ハイパー」とかが頭につくもの)は近接効果(音源に近付けると低音が強まる)や軸外特性(マイクの真正面以外から入った音のキャラの変わり具合)の乱れが大げさになりがちである。これらは必要性と使い方がわかって実践できる上級者専用だと思ってよい。

ヴォーカル用にコンデンサマイクを用意する場合、人間の息はかなり湿っているので使った後のメンテナンスには気を使おう(というか、オンマイクで録るならダイナミックマイクの方がずっと使いやすいと思うので、使うかどうかをまずじっくり検討したい)。アコースティック楽器の録音では「楽器全体が鳴る」(指向性マイクはとくに、オンで使うとクセが強く出る)ということを忘れないようにしたい。アコギをややヘッドに近いオフマイクで狙うなど、出音の偏りを積極的に利用することもできる。

低音用マイクは、ローが足りないときにメインマイクに被せる用途があるので、極限ローエンドのものでも1本あると便利かもしれない。オフ用のマイクもあるに越したことはないが、活用する機会があるかどうかちょっと疑問でもある(筆者自身は、わざわざオフ専用にマイクを持ち込んだ経験はないし、自宅でオフマイク録音をやってみようという気もない)。

要約

CM5(やC-1やC-2)は持っておいて損はなさそう。あとは用途に合わせて、というか用途に合わせられるようになってから。

MTR

録音にももちろん使えるのだが、マルチイフェクタとしても使えそうな機種がある。ミキサー兼務タイプなら小規模PAへの流用もラクで、MTRの他にはマイクとアクティブスピーカだけ用意すれば事足りる(一種のワークステーションとして機能する:マルチソースでクリーンデータを残したい場合も根元で録音できるため、バス数などに不足がなければ、入り口ミキサーに代えてMTRというのは録音でも魅力的)。

ローエンドで筆者の目に付いたのは、ローランド(BOSS)のMICRO BR BR-80とZOOMのRシリーズで、順番だけ固定でモジュールを選ぶ方式のイフェクタを搭載しており、サウンドカード動作と電池駆動が可能。どちらもギターorベース用イフェクタで有名なメーカーなのでその方面では期待できそうだし、ラインナップが薄いヴォーカルプロセッサ(ディエッサーとかプリアンプシミュレータとか)を搭載しているのも嬉しい。ただしどの機種も、筆者は実物を見たこともない。

BR-80はコンパクトサイズが特徴。モデリングイフェクトも当然のようにJC-120やらOD-1やらが入っている(本家だからモデリングが上手いとは限らないが、本家様はやっぱり本家様である)。ピッチコレクトが入っているのも面白いし、変調系やステレオイフェクトにも期待できそう。ネックになりそうなのはやはり操作性で、2011年9月現在筆者が斜め読みした限り、公式ドキュメントにパソコンからイフェクトセッティングをイジれるような記述は見当たらなかった。アナログ出力がラインヘッドフォン兼用端子1つだけなのはサイズ的に仕方ないか。

R16はマルチチャンネルが特徴。ストレートフェーダーとファンタムを装備したミキサーとしても使えるし、サウンドカードとしてもマルチチャンネルが(必要な人には)活きるだろうし、フィジコンとしても動作するし、ストレージに対するUSBホスト動作もできるし、イフェクタも標準的なモノは一通り揃っている。ネックになりそうなのは置き場所だろうか(ミニコンポサイズよりも微妙に幅がある)。パソコンからのイフェクトセッティングはやはりできない模様。またカタログスペック上R8よりも電池がもたない(ACアダプタで使うなら関係ないが)。

R8は同時2入力仕様の廉価版でR16との差額は大したものではないのだが、後発だからか、48KHzサンプリングで単体録音できたり、フットスイッチ端子があったり、ファンタムが24/48V切り替え式だったり、オマケでリズムパッドとサンプラーがついていたりする。サイズもR16より一回り小さく重量も軽い。マルチチャンネルが(将来的にも)必要ないならR16よりはR8かなという気がする。

ミドルレンジにさしかかってもやはりZoomとローランド(BOSS)の一騎打ち状態は変わらず、R24かBR-800ということになるのだろうが、筆者の好みで言えば断然R24。MTRとしての基本機能がしっかり練ってあるのがよいし、妙な独自規格や自社製品の囲い込みを振り回していないあたりにも好感が持てる。追記:2015年にTASCAMがDP-24SDとDP-32SDを出した。いかにもワークステーションMTRな佇まいが4トラ世代のハートを直撃する。

要約

ワークステーション系のデジタルMTRがあればけっこうなんでもできてしまう。コンパクトサイズのBR-80、同時入力数以外はフル機能のR8、安価なマルチチャンネルのR16といったところ。

筆者のぶっちゃけた見解

DP-32SDが欲しい。

ハードウェアとノイズ

ここではどの機種がどうのこうのという話題には触れない。

新品で買ってきたイフェクタやミキサーやアンプなどの電気機器が「あり得ないほどノイジー」な場合、電源を入れっぱなして数時間くらい放置しておくと直ることがある。これは故障や初期不良とは少し違い、通電なしで長期間経過すると回路内の漏れ電流が増えることによる自然現象である。頻繁に使っている場合も、電源を入れて1分くらいはウォームアップだと思うのが無難(慌てて「電源アダプターでノイズが激減」なんて騒がないように)。

「グランドリフトスイッチ」がついた機材について、とくに必要がありグランドをリフトすると電気的にどのようなことになるのか理解している場合を除き、グランドは「接続」のままイジらない方がよい。一般家庭や普通のリハスタで使う規模の配線だと、グランドをリフトしてメリットが得られることはまれである。というか、もしグランドが「繋いでも害しかない線」なのであれば、最初から繋ぐ人はいない。

音響機器は、ライン用、マイク用、ハイインピーダンス用、スピーカレベル用に大きく分けられる。それぞれ扱える電流やインピーダンスなどが異なるので、用途に合ったものを使おう。また、マイク信号やハイインピーダンス信号(エレキギターの出力など)はさっさとアンプ(またはアンプを兼ねる機器)を通してしまった方が扱いがラクである(アンプ(のライン出力)より後ろではライン信号に準じる扱いができる)。

またノイズフロアのマネジメントでは、機器の最大出力を用途に合わせることが重要である。たとえば12インチのスピーカユニットが4発ついて最大130dbSPL/mくらい出せる大型ギターアンプがあったとしよう。このアンプが50dbSPL/mくらいのノイズを常時放出していたとしても、全開で鳴らしてやれば大問題にはならない。

要約

新品なのに調子がおかしければ電源を入れて数時間放置。グランドはむやみにリフトしない。機器は用途にあったものを。

ケーブルとかコネクタとか

数を使うので意外と費用がかかる。自宅環境だとステレオフォンプラグ(TRS)とピンプラグ(RCA)の出番が意外と多い。

ステレオフォンは本来のステレオ伝送でも使うが、ラインレベルのモノラルバランスに使う機会がある(ミキサーのメインアウトからサウンドユニットのライン入力などでキャノン出しのフォン受けもやるのだが、デュアルケーブルのラインナップが薄い)。フォン<>フォンのケーブルは単品で買うとうっとおしいので、筆者は長めのパッチケーブルセットで代用している。

Y字ケーブル(二股ケーブル)もフォンやピンのものが多い。センドリターン用のもの(インサーションケーブル)は仕様(グランドの浮き/接続に注意)によってはステレオ<>モノ2本の変換ケーブルとしても使えるはず(ステレオフォン<>ピン2本タイプはこの用途のものが多いのかな)。

ピンプラグケーブルは単品ではあまり使わないが、コアキシャルケーブルの代用に(ムリヤリだが)なるのと、変換や分配や選択に関わる機器が豊富なので出番がある。たとえば、ローエンドのオーディオセレクターを使おうと思うと、たいていピンプラグに変換する必要がある。

変換アダプタを直接機器のジャックに取り付けると、ムリな力がかかりやすくなり故障の元なので、できれば機器>ケーブル>アダプタ>ケーブル>機器のように、変換部分をケーブルの間に持っていく形が望ましい。

重要な注意
スピーカや楽器用アンプなどへの経路にあるプラグやジャックやケーブルなどについて、接触不良や断線がないよう十分気を配りたい。もし接触不良や断線があると、アンプのボリュームを上げたまま配線を抜き挿しするのと変わらない状況になる。

非常に重要な注意
PAで使うケーブル、とくに大電流が流れ得るもの(電源周りやパッシブスピーカへの出力)は、靴で踏まれたり、機材の下敷きになったり、荷物を満載した台車のキャスターが通過したりといったことが必ず起きるという前提で選び、ノーメンテで同じものを使い続けるのは避けよう。また、仕様で定められた上限を超えた電流が流れないようしっかり対策しよう。

要約

意外と金食い虫なので必要数がわかってから製品を選ぶのが吉。変換はできればケーブルとケーブルの間で。PAには丈夫なものを使いこまめにチェックとメンテをしよう。


部屋やレイアウトなど

あまり頑張るとエラいことになるのでホドホドのところで手を打ちたい。

レイアウトの原則

タワー型のパソコンケースは普通、机の左側に置く前提になっている(台座面が右、左側は吸排気口になっていて、塞ぐとエアフローがまずいことになるし、メンテの都合からもパソコンの右側が机に接する形が便利:これってなんかアレだよね、右利きならマウスの側に置いた方が線がスッキリするのにね)。パソコンの左側からは音声ノイズも出るわけだが、これを壁に当ててしまうと反射がうっとおしい(音楽用でなければ、足元の右側に置く手があるのだが)。ので結局、部屋の真ん中を使えるのでなければ、右側に壁があった方がよい。ここまでで、前と右に壁がある場所に机を置いて、左側にパソコン、というのが無難なのがわかる。

お次は配線。電源はできれば、パソコン用を机の左側から、楽器用を机の右後ろから取ってきたい(机の裏でケーブル類が混沌とするのを少しでも避けたいので)。LANケーブルも左側から引き回せるとなおよい(性能の問題もさることながら、部屋の中に無駄な電磁波源を置かないためにも、無線LANは避けたい)。この条件だと、楽器類は自然と右側に集中することになる。だいたい、右利きの人なら鍵盤は右に置くだろうし、ギターやベースのシールドも右から出ている(置き場所が左側だと出し入れがメンドクサイ)はずである。片出しのヘッドフォンは左からコードが出ているのが普通なので、メインのヘッドフォンアンプやヘッドフォンハンガーは左側にあった方がよい。

ラックとミキサーはどこに置こうか。楽器が右にあってパソコンとヘッドフォン関連が左ということは、真ん中(ディスプレイの下あたり)が有力になるわけだが、ラックマウントのパソコン周辺機器の有無(USBやFireWireを長く引き回したくない)、操作の頻度、マイクスタンドの有無と数、弾き語りを録音する機会の有無と使用楽器などで事情が変わる。なお筆者は、19インチラックとは別に普通の木の棚を用意して、ペダルイフェクタやフロアイフェクタやサブミキサーなどをそちらに並べている(平面的に並べると場所が足りない)。

ラックマウントのパソコン周辺機器があり、鍵盤でもギターでも弾き語りをするなら、マイクスタンドは机の右後方か右前方、ラックは机の左前方か右前方に置くのが無難かなという気がする。

要約

楽器が右でパソコンが左だと便利。部屋の真ん中を使うのでなければ壁は右側が理想。

筆者の感想

世の中右利きが便利にできてるのは仕方ないところ。

カーテン

一般住宅で「窓がない部屋」(法的には「居室」として認められず「納戸」「サービスルーム」などとして扱われる)というのは珍しく、マイク録音やスピーカモニタをする場合は(吸音パネルのようなものを用意するのでなければ)カーテンが必須になるだろう。カーテンの場合1KHzくらいより下の音響透過損失がほぼ重さと設置方法だけで決まり、それなりに厚く柔らかい素材なら高域は(低域に比べ)無視できるくらいしか通さず、音響反射は壁などに比べ明らかに小さいはずなので、ようは重いものを使えばよい。しかし重いカーテンを使うと、カーテンレールへの負荷が大きい。

そこで筆者は、ドンキホーテで買ってきた安眠カーテンを窓側、普通のカーテンを部屋側に吊るす構成にしている。厚手のカーテンを窓側にするのは、少しでもカーテンレールへの負荷を小さくするため(同じ重さでも、部屋側に吊るすとてこの原理で負荷が大きくなるはず)。両方のカーテンを閉め切ると、ないよりけっこうマシ程度の効果はある。ただし、上記の使い方でもカーテンの種類や湿度(による布の重さ)の変化でカーテンレールや窓枠が壊れない保障はないのであしからず。

カーテンレールは一般家庭用の普及品で2.5~5kg(両開きは5~10kg)くらいまでの荷重に耐えるものが多く、家庭用防音カーテンの重量はせいぜい1.5kg/m^2、縦180cm横210cmだとして6kgくらいだから、レール自体が壊れるほどの重みではない。それよりも、レールが壁から落下するトラブルが多いようである。ちなみに、劇場などで使う緞帳には5kg/m^2くらいのものもあり、レール式ではなく巻き上げ式になる(9.5mm厚の石膏ボードが6kg/m^2ちょっとなので、室内の薄壁1枚に匹敵するほどの質量:ただし壁の場合ボード2枚で柱を挟んであるだろうから正確にはその半分、一般的な窓ガラスが3~6mm厚で7.5~15kg/m^2なので緞帳を吊るよりは窓を二重にした方が効率がよい)。

なお板ガラス(密度が約2.5g/cm^3)はそれほど重い材質ではないため、同じ厚さの鉄板かステンレス板(7.9g/cm^3)に取り替えると(多分窓枠が壊れるが)遮音性能は大きく上がる(コンクリートは約2.4g/cm^3でガラスとあまり変わらず、実はアルミニウムの約2.7g/cm^3よりも軽い:安価な金属ではやはり鉛が重く約11.3g/cm^3、金や白金やウランやタングステンやイリジウムで20g/cm^3前後)。板ガラスにおいても1KHzくらいまでの音響透過損失はほぼ重さだけで決まるが、音波が斜めに入射すると板が波打つため共振が生じる(コインシデンスといい、コインシデンス限界周波数が12000/ガラス厚くらい:3mm厚だと4KHzになる計算)。板ガラスの音響特性については日本板硝子資料PDFが詳しい(面密度と周波数の積が対数で効くためやたら厚くしても意味が薄く、素人目には減衰させたい最低周波数と板厚(mm)の積を1000くらいにするのがオイシイのかなといったところ)。また気密性は単体で遮音性能を左右しない(極端な話、ラジカセに薄いゴミ袋を被せても音は小さくならない)。

要約

重いものを使いたいがレールが落ちないように工夫が必要。

エアコンなど

音楽スタジオを作るならエアコンは必須である。気密性の高い部屋に熱に弱い機材を並べてガンガン電気を使うのだから、ないとお話にならない。一般住宅でマイク録音する場合、エアコンを一時的に止めるのはそれなりに有効だろう。


オマケ1(比較)

最近はいわゆる「比較動画」が豊富になった。もちろん「本当の違い」というのは自分の環境にその楽器や機材を組み込んで使い方を最適化し、最終的にどんな音が出てくるかという視点で(メンタルな影響や運搬の都合など単純な出音とは関係の薄い要素まで含めて)評価しなければわからないものだが、資料が増えるのは悪いことではない。

こういった動画を探す場合「vs」や「shootout」をキーワードにすると英語圏の人たちの動画がヒットしやすい(もちろん日本語で検索できるものにも有用な動画はあるが、英語でも検索できると数がぐっと豊富になる)。

自分の手元で比較するときも含めた注意点として、楽器や真空管製品など個体差の大きなものは数を試さないと傾向が掴めないし、自分が使う個体が気に入った反応をしてくれればそれでよいということを忘れない方がよい。

繰り返しになるが「同じ条件での比較」にはとくに注意が必要である。たとえばエレキギター弦の比較で、同じメーカーのライトゲージとミディアムゲージを同じギターに張って同じアンプで演奏したとする。一見公平なようだが、ゲージが上がればゲインが上がり高域の音が増えるわけで、ライトゲージでちょうどよい歪み方と高域バランスに調整してあればミディアムゲージは「音が濁りすぎ」ということになるし、ミディアムゲージでちょうどよく調整してあればライトゲージは「物足りない」ということになる。忘れないでおこう。


オマケ2(音色について)

筆者の持論に過ぎないが、音色について過大評価されている部分と過小評価されている部分があるように思う。

たとえばStevie Ray Vaughanは、借り物のアンプを使ったりギターのネック交換を行ったり弦のゲージをコロコロ変えたりしているものの、どの録音でも「Stevie Ray Vaughanの音」としか言いようのない音がちゃんと出ており、ギターやアンプに少々変更があったからといって(少なくとも最終的な出音は)それほど影響は受けていないように見える(何千回と聴き込んでいるマニアでも、資料を参照せずに音だけで「ネックを換える前の音」とか「このときの1弦は013」なんて言い当てられる人はそういないと思う)。

またたとえばJeffが教則ビデオの中でやった「Bonzoのマネ」は、初見だと咽るくらい似ている。Bonzoといえば巨大バスドラムにJazz風ハイハットにハイテンションスネアと変態的なセットやチューニングが有名だが、Jeffが普通のドラムセットで出した音は、少なくとも筆者にとって「Bonzoが叩いているとしか思えない」ものだった。

もちろん、弦の太さで出音が変わるなんてことは、自分でギターを弾いているときははっきり認識できる(芯線の太さでピックアップの感度が変わるエレキギターで顕著)。サウンドエンジニアとしての立場からも、細い弦から出た音と太い弦から出た音を同じにすることなどできないと(素人ながらにではあるが)知っている。普通のドラムセットでBonzoの音色が出せるなんてことがあるわけもない。つまり、音色は違っているが演奏内容の認識に支配的な影響力は及ぼしていないことになる。

では音色はどうでもよいのかというとそんなことはなく、まず演奏フィールが変わる。演奏フィールが異なれば演奏内容も間違いなく影響を受ける。楽器に関しては、気分よく弾けるものや自分で納得のゆくものを使う意味がたいへん大きい。音作りの観点からも、最初に出てきた音がアプローチの仕方を変えたり、発想を生んだりする。また音色に手を加えることで、たとえばJeffがやったモノマネをもっとソックリなものに仕上げることも(マルチのテープがもし残っていれば)きっとできるだろう。

なお、演奏フィールの部分は気分だけの効果でもまったく問題なく、たとえば楽器にステッカーをベタベタ貼って気分よく演奏できるなら、それで性能が多少スポイルされても収支はプラスになる。



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