Endeavor NP11-V


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EPSONのEndeavor NP11-Vについて。

重要な情報
この記事は筆者が2010年7月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。

とにかく静か

完全ファンレスで、カタログスペックでは「基本構成におけるWindows待機時」に「ISO7779準拠オペレータポジション」での騒音が「約17dB」となっている(ISO7779は「情報技術装置から放射される空気伝搬騒音の測定」に関する規格で、オペレータポジションは「床上75cmの机の上に装置を設置し、本体前面より50cm、机上から高さ45cmにマイクをおいて測定」すること:NP11-Vとは関係ないが、ノートパソコンは「本体前面より25cm」らしい)。

筆者はサーバ用にも同じ機種(2台同時に買った:生産終了になる前に「持ち歩き用」をもう1台買っておけばよかったかも)を使っており、24時間運転しているが、本当に静かである。本体に耳をくっつけても、動作音として知覚できるのはハードディスク(デバイスマネージャによるとSeagateのST9160314Aらしい)のシーク音くらい(頻度は高くない)。

これはおそらく、レイアウトとOS選択の勝利である。完全ファンレスである程度のパフォーマンスを出そうと思うと、縦置き(煙突効果で、熱い空気が上に逃げ、冷たい空気が下から勝手に入ってくる)以外のレイアウトは考えにくい。またWinXP採用なので、無駄にリソースを突っ込まなくても「普通の動作」が可能である(サーバマシンはFreeBSDでXも入れていないためもっと軽い)。

まあ完全ファンレスでなくとも、オペレータポジションで20~30dBくらいの動作音しか出ない機種はけっこうあるので、気分的なスッキリ感(とヘタリでノイズが増加する心配がないこと)以外のメリットは大したものではないのだが、とにかく本当にこのうえなく静かである。

サブマシンには十分なスペック

おもな仕様を抜き出すと、

となっている。消費電力は「通常使用時約14W」で「47.6W(最大)」らしい。メモリは1GBからビデオに128MB持っていかれる。

外部ポートはUSBが6つ(4年も使ってやっと気付いたが、どのポートもUSB2.0に対応してはいるものの、USB1.1の機器を繋ぐといくつかのポートがまとめて1.1モードになるようだ:ただしUSB2.0のルートハブは1つだけ)。ビデオ出力がVGA(ミニD-SUB15ピン)だけだが、メインマシンをデジタル出力で使っているので、筆者は不便を感じていない。NICは1000Base-T対応で十分な仕様。ヘッドフォン出力は普通だがマイク入力はプラグインパワー垂れ流しで「パソコン用マイク」専用だと思った方がよさそう。

筆者は1年間くらいメインマシンとして使っていた(というか、その時期にウチで一番速いマシンがこれだった)が、処理速度の面で不満を覚えたことはほとんどない。新しいマシン(いちおうBTOの静音モデル)を入れた後も、なんだかんだいって起動している時間はこちらの方がずっと長い。HDDはイマドキの水準からすると容量が小さく、サウンドユニットを外付けしてしまうと(ルートハブを占拠してしまうため)ストレージを追加しにくい(最初はNASを使っていたが壊れたので、ローカルサーバにsambaを入れようかと考えている)。

ノートパソコンに準じる構成で拡張性はゼロに近いが、拡張する必要性自体があまりない。サウンドユニット(オンボードはオマケ以下の性能だし、追加するとなるとUSBの外付けしか選べない)の選択にちょっと悩んだが、2011年現在のラインナップを見るとUSB以外で魅力的なのはPCIのローエンドくらいで、結果的にたいしたデメリットではなかった。ディスプレイは当初推奨モデルのLD18W41S(18.5型ワイド、1360×768(WXGA)、DVI-D24ピン(HDCP対応)またはD-sub15ピン接続)を使っていたが、出力自体は1920×1080(フルHD)で可能。

モニタが快適になる

音楽制作での用途としては、真っ先にモニタが挙げられる。

一般住宅で正確なモニタを快適に行いたい場合、オープンorセミオープンのヘッドフォンがブッチギリの最有力選択肢だというのが筆者の持論で、静かなパソコンが1台あるメリットは計り知れない。もちろん、補助的にスピーカを使う際にも有利である。

筆者はパソコン本体を別室に置くレイアウトを何度か試しているが、ドアや引き戸を1枚隔てても、NP11-Vの静かさには遠く及ばなかった(音響的に十分隔離された部屋に本体を置いてケーブルも不都合なく引き回せる、という羨ましい人なら事情は変わる)。

制作以外にリスニングも快適である。だいたい、音楽制作をチマチマやるような人はリスニングも好きなわけで、筆者もパソコンの前に座っているときはほぼ必ずなにか聴いているが、それが上質になるのはたいへん嬉しい。またマイク録音(自宅でやるなら限界はたかが知れているが)にも向く。

5年半で1台クラッシュ

2016年3月に、デスクトップ用として使っていた方がクラッシュした。

Windowsが起動途中でコケてセーフモードでも立ち上がらす、最初はメモリか汎用バス上のハード(オンボードのPCI/USBインターフェイスとか)がやられたのかと思ったが、バラしてHDDを取り出し、ATA/USB変換を噛ましてWindows7が入ったメインマシンで読んでみたところ、Cドライブが破損して認識できない状態だった。幸いデータドライブは(多少読み書きで引っかかるが)無事でCドライブにはWindows本体しか入れていなかったため、データサルベージは楽だった。

分解に必要な手数は多いもののスジが悪い組み立てはされておらず、極端にストレスフルな作業にはならなかった(10~20年位前の国産スリムデスクトップなんかをバラした経験から、かなりの難航を予想していたが肩透かし)。取り外したHDDは、エラーが出た領域だけ削除してやればまだ使えそうではあるが、わざわざ再生させるメリットもなさそうなので、本体ごと廃棄ということになりそう(部品取りに残しても多分活用する機会はないし、購入時に支払い済みのリサイクル料金ももったいない)。

極限ローエンド機を酷使した割には持った方だと思うし、壊れたのもどうやらHDDだけで、中身のデキはよかったのかなという印象。サーバ用にFreeBSDを入れて365日24時間運転している方はまだ元気(ノートPC向けの2.5インチHDDだから常時運転の方が故障リスクが大きいはずだけど、片方だけ衝撃を与えたなんてこともないし、たまたまだろうね)。

当面はメインマシン単体運用になるが、この手の静音マシンの快適さはやはり捨てがたい。後継機種っぽいEndeavor ST11E(ファン搭載になったが待機時動作音は約19dBでNP11-Vより微妙に大きい程度)を買い足しても悪くはないものの価格がやや高い(基本構成で5万円くらい)ので、タブレットに手を出してみようかなとも思う。追記:2022年頭に、サーバ用として24時間365日運用していた方もハードディスクが読めなくなった。よく保ったなぁ。



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