ヤマハのMSP5について。
重要な情報:
この記事は筆者が2011年1月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。
重要な情報:
筆者が購入した個体は中古で販売されていたもので、新品と同等の性能や機能を有していない可能性があります。
一応示しておきたい情報:
筆者は執筆当時、普通の集合住宅(アパート)に住んでいました。スピーカ間隔は約60cm、リスニングポイントまで約80cmのセッティングで、壁までは側面背面とも1mくらい、スピーカスタンドではなくパイプラックに設置していました。
サウンドエンジニアリング(というか音の加工や調整)を行う際のメインモニターとして5インチクラスのスピーカを検討している読者がもしいたら、もう一度念を押しておきたい。そんなの最初から無謀だし、わかっていてなおかつやってみたいという人を(「ケーキナイフでマグロを捌く」みたいなチャレンジと同様の意味で、面白さはあるかもしれず)止めようとは思わないが、しかし最初から無理だし無駄である。
筆者が購入したのはMSP5 studioの前のMSP5Aのさらに前の無印モデルで、12cm(約4.75インチ)ウーファー+2.5cmツイーター(モデルチェンジ後は5インチウーファーになった)。取扱説明書から仕様情報を抜き出しておく。
総合仕様無響室特性のグラフを見ると、1.5~3KHz周辺に-2dbくらい、100~800Hz周辺に-5dbくらいのディップがある。200~400Hzあたりを中心に半値幅1octで4~5dbくらい持ち上げてやるとだいたいフラットになるか(250Hz中心1oct幅4dbってところかな:それより下は本体スイッチで補正、上は触らないか、4KHz中心2oct幅で2db削って2.5KHz中心1oct幅で同量ブーストくらいだろうか)。低域は軽めに引っ張ってあり、公称特性上スッキリ出るのは70~80Hzくらいまで。本体スイッチでローを落としてシェルビングで持ち上げるのもアリだと思う。上は超音波域までガッツリ出るが20KHzあたりに小さなディップがあるので、ローパスをかけてショルダーで持ち上げるといいかも。
形式:バイ・アンプ 2ウェイ バスレフ型 パワード・スピーカー
クロスオーバー周波数:25kHz
再生周波数帯域:50Hz~40kHz
最大出力音圧レベル:101dB(軸上1m)
最大外形寸法(W×H×D):169×279×222mm
重量:7.5kg
スピーカー部
スピーカーユニット:LF:12cmコーン(4Ω、防磁型)、HF:25cmチタンドーム(6Ω、防磁型)
エンクロージャー方式:バスレフ型、内容積:6.3l
アンプ部
定格最大出力:LF:40W at 400Hz、THD=0.02%、RL=4Ω
HF:27W at 10kHz、THD=0.02%、RL=6Ω
入力感度/インピーダンス:Line 1:+4dB/10kΩ(XLRバランス)
Line 2:−10dB/10kΩ(phoneアンバランス)
S/N:≧100dB(A Weighted)
コントロール:TRIMスイッチ
LOW:4ポジション(+1.5dB、0dB、−1.5dB、−3dB at 60Hz)
HIGH:3ポジション(+1.5dB、0dB、−1.5dB at 15kHz)
Powerスイッチ:On/Off
VOLコントロール
パワーインジケーター:緑LED
電源:AC100V、50/60Hz
消費電力:45W
付属品:ゴムアシ(2個)
グチャグチャな部屋にムリヤリ設置した割には出音も素直だし、妙なクセも感じず、低音も変な出方には感じないし、左右のバランスもこれといって気にならない。放熱もそう極端ではないし、音量もそれなりに出せる。ようするに、モニタスピーカとして普通の仕事を普通にこなしてくれている。普通のことをソツなくやって欲しい場合、ヤマハさんとベリさんは(販売戦略は対照的だが)実にいい仕事をする。本格的なスピーカモニタがこれでできるかと聞かれると厳しそうだが、MSP5でさえマトモに鳴らし切れる環境にはなく、これ以上のものを買っても現実的なメリットはなさそう。
ということで、筆者の環境でモニタスピーカに必要な(というか求めて意味がある)能力はすべて備えていると言ってよいが、スピーカだけに費用はけっこうかかった(中古でペア25000円、モニタヘッドフォンならブランド物のフラッグシップモデルを新品で買ってオツリがくる:今にして思えばPM0.5nやB2030AやB1031AやM1 ACTIVEやBX5 D2やRP5 G2あたりが新品で買えた気もするが、衝動買いする人は理性を保っていないから衝動買いするのである)。ステレオコンポなどを別途所有しているならそのスピーカで間に合わせてもよい(というか、スピーカを1つも持っていないなら先にリスニング用スピーカを買った方がよい)ところで、筆者は単体のオーディオ再生機を買う予定がなかったので、たまたま中古を見つけたこれにしただけ。まあ出音の素直さではステレオコンポのスピーカよりずっと優秀なので損をしたようには思わない。2022年まで元気に動いていたが、引っ越しの都合で処分(して後から仕入れたリスニング用スピーカSC-LS10を残)した。
このスピーカはスタジオで使うモニタ(略してスタジオモニタ)ではあるが、言うまでもなく、エンジニアリング用のリファレンスに使えるようなシロモノでは到底ないし、リスニングスピーカとはかなり異なる特性なので小型スピーカでの再現性の確認にも使えない。あくまで、アナウンスモニタであるとか、電子楽器奏者への返しであるとか、そういった用途に使うべきものである。
筆者自身は試していないが、公称特性や実際の出音から察するに、メーカーとしてはサブウーファーありとなしの両方に対応したかったのだろうと思われる。が、最初からムリな話なので、サブウーファーを入れたければ普通に8インチモニタを使った方がはるかによい(どうしても小さなスピーカを使いたくて、かつ高い技術を持った人に設置してもらえるアテがあるなら、MSP7 STUDIO+SW10 STUDIOという選択肢がないではない:もし設置してくれるはずの人が「ムリだ」と言ったなら、本気でムリなので食い下がらずに諦めよう)。