BEHRINGERのULTRA-DI DI20について。
重要な情報:
この記事は筆者が2011年12月に購入した個体に関するもので、その後のバージョンアップや仕様変更に追従していない、あるいは個体差や環境の違いを考慮していない記述があります。最悪のケースとしてたとえば、筆者が自分の不注意で壊した機材を(そうと知らずに)「粗悪品」と評している可能性もある、ということに注意してください。
取扱説明書の説明が舌足らずだが、少なくとも筆者が購入した個体は、リンクモードにすると1系統パラ入力+スルー(CH.1 INとCH.2 INがハードワイヤーのパラ)+1系統パラ2出力(CH.1 OUTとCH.2 OUTがパラだが、単純なハードワイヤーではないらしく、CH.2 OUTにファンタムをかけつつCH.1 OUTからアンバランス出力や、その反対も可能)になる。
モードに関わらず、どちらかの出力端子にファンタムをかければ動作する。ユニティゲイン(直結時の音量)よりはちょっと下がるかなという印象。リンクモードにするとさらに少しだけ音量が下がるようだ。ネットで評判のハムノイズは、グランドリフトスイッチを有効にしたときと12Vファンタムで駆動したときだけ派手に生じた(不具合ではなくごく当たり前の現象)が、普通の使用では気にならなかった。
どーも、ハイが微妙に落ちているのではないかという気がするのだが、音量が落ちた影響でそう感じるだけなのか、実際に削れているのか、耳だけでは判断がつかない(そのうちループバックテストを行う予定)。
取扱説明書(2002年10月版のバージョン1.0)によると、周波数帯域は「10Hz~70kHz(-3dB)」、ノイズは「100dBu」、歪み率は「<0.014%(1kHz, 0dBu in)」、最高入力レベルは「+12/+32/+52dBu」と、実用上大きな問題が出ない程度(さすがにノイズレベルは「-100dBu」の誤記だろう:もし100dbu出たら怪奇現象)。
ノイズレベルが「-100dBu」だとすると、まあ酷くはない程度の値。ARTのXdirectが「Dynamic Range: >100dB typical」、BSSのAR-133が「Noise <-105dB unweighted, 22Hz-22kHz, rms (Noise measured relative to maximum outputでMax. Output Level +8dBu into 600 Ohms or greaterだから多分-97dbuくらい)」、SAMSONのS-DIRECTとS-DIRECT PLUSが「Noise Level (22-22kHz, Input Shorted) .. -104 dBu」、dbxのdB12が「Noise: <-105dB unweighted, 22kHz BW」、ベリさんのギター用DI100が「Noise Level -110 dBu」、ローランド(BOSS)のDI-1が「残留ノイズ -110 dBu以下(IHF-A)」なのと並べると優秀な部類ではなく、ゲインも若干落ちるので「ギターを繋ぐならDI100使っとけ」というのは間違いない。
なお、COUNTRYMANのtype85のスペックシートにある「Noise Floor (shorted input): .63 μV RMS (-122 dBu)」というのは、150Ωの抵抗が常温で20Hz~20000Hz帯に発生させるヒートノイズとほぼ(「電源が入っていない普通のライン機器」から出るノイズともだいたい)等しく、-10dbのゲインカットでゲタをはかせているにはしても、リニア応答でカタログ通りの値が出るならすごいことである(入力抵抗10MΩだし)。
やはりファンタム仕様はかったるい、というかGDI21(DI動作モード)の仕様が素晴らしすぎる。
シグナルレベルはGDI21の方が大きく、ノイズフロアもGDI21の方が低いため、総合的なノイズレベルではけっこうな差がつく。すでに触れたとおりハムノイズはたいしたものではなく、ノイズフロアはホワイトノイズ(というかヒスノイズ)によるもの。
音色もGDI21の方が素直な気がしないでもないが、すでに触れたように厳密なレベル合わせをして比較したわけではないので気のせいかもしれない。どっちにしても、ギター用DIとしてはGDI21の方がかなり優秀(専用品なので当然の結果)。
多分、アンバランスのラインレベル信号をどうしてもバランスに変換したいときに使うのが、もっとも素直な使い方なのではないだろうか(だったらファンタム仕様でなくACアダプタ仕様にしときゃいいのに、とは思う)。マイクをぜひDIに、という場面ならさっさとプリアンプに入れた方が早いので、マイク用に使うことは多分ないだろう。