2016年3月全面更新。
アナログミキサーやMTRやモニターコントローラーにサウンドカード機能を搭載したものは以前からあったが、2015年くらいからDSPミキサー(ようするにデジタルミキサーの中身)やDSPイフェクタを搭載した機種も増え、ミキサー、MTR、サウンドユニットなどの境界が明確でなくなってきている。
2011年にFast Track UltraとUS-100を購入し再生能力を比較してみたが、ラインを1本出し入れするだけなら、どちらでも実用上の不都合はあまりないように思える(筆者はラインやマイクやギターやヘッドフォンやスピーカを何本も出し入れしており、Fast Track Ultraのレイアウトが必要だし便利だと感じるので、あえてUS-100をメイン用途に回そうとは思わないが)。
対応OSやドライバの更新状況は記事更新時点の情報なので、詳しくはメーカーの公式発表を確認して欲しい。
内蔵タイプのローエンドはクリエイティブが相変わらず強く、ASUSとバッファロー(玄人志向)が残ったシェアを分け合う状況が続いている。2016年3月現在もPCI2.1が生き残っており、ローエンドのSound Blaster 5.1 VX (SB-5.1-VX)が2000円くらい、同軸デジタル出力(プラグは排他)がついたAudigy Value (SB-AGY-VLSE)が3000円くらい。PCIeはSound Blaster Audigy Fx (SB-AGY-FX)が3000円強(デジタル出力なし)。性能は上がっているようでローエンドでも24bit/96KHz出力が普通になった。内蔵のミドルレンジ以上は(RMEなどの音楽編集用もクリエイティブやASUSなどのゲーム用も)PCIからPCIeに中心が移ったようだ。
外付けタイプを「真面目に」使うならUSBというのは最初からあり得ない選択肢なわけで、FireWire対応機種を眺めるとBEHRINGERのFCA610とFCA1616が安く、サウンドカードに必要な機能は一通り押さえてある(DSPミキサー以外)。ミドルレンジ以上の機種は、DSPミキサーやその制御ソフト、ブランド物のプリアンプ、DAWソフトウェアとの統合、一部機種ではワードクロック入出力など、付加価値的な機能or性能で勝負している格好(ソフトハード両面での使い勝手はもちろん、機材としての信頼性や保守性なども重要な要素ではあるのだろうが、使い込まないとわからない話だし環境や好みにも左右される)。ローエンドとミドルレンジの間を埋める形で、スタンドアロンでも動作するDSPミキサーを備えたFOCUSRITEのSaffire PRO 14も健闘している。
USB専用機種は、価格を下げてミニマムバランスを狙ったTASCAMのUS-366(デジタル入出力がある)とSTEINBERGのUR242(アダプタでiPadと接続可能)、モニターコントローラーを統合したSTEINBERGのUR28Mなどが出てきて少し賑やかになった(どれもDSPミキサー内蔵)。単機能機種ではベリさんのUCA222(とUCA202)が、値上がりしたものの相変わらずローエンドを席巻している。1万円前後の2in2out据え置き機種は存在意義がイマイチわからず、US-100のようにステレオライン入力とマイク入力を両方備えた安価な機種がなくなったのが寂しい。iPad系の機器を持っているなら、STEINBERG のUR44とFOCUSRITEのScarlett 6i6がモバイル向けにフル機能(アナログ4in2out以上、ヘッドフォン2系統、デジタル、MIDIの入出力とDSPミキサー)を備えており、1万円強から並ぶローエンドの中でBEHRINGERのis202 iSTUDIO(iPad1~3専用)が単三乾電池駆動に対応している。
2011年にリリースされたThunderboltは、上にPCI Express 2.0(またはDisplayPort 1.1a)が乗るもので、ぶっちゃけ「PCIeの外付けバージョン」である。FireWireは普通PCIeの上に乗るので、よりローレベルなところを叩ける方式だといえる。2016年3月現在、Windowsでは(対応マザーボードの)普及が進んでおらず、サウンドユニットもMac専用のものがほとんど。カリカリのパフォーマンスが必要なら内蔵のPCIeを使えばよく、給電能力も相手がディスプレイでなければ10WとFireWireの方が強力で、ようするに「ラックマウントのサウンドユニットをPCIeに準じる接続で利用できる」ないし「PCIe接続のサウンドカードをラックサイズにできる」ということがウリになるようだ(たぶん)。少なくともハイエンドにおいて、ADATやAES/EBUを噛ますことなくオーディオ機器とコンピュータを接続できることは、一定の優位性をもたらすと思う。Zoomがローエンドに手を伸ばしているほか、MOTUはUSBとの選択式で対応、FOCUSRITEはWindows向けの機種も準備中だという。Ethernetに音声を通すオープン規格としてEtherSound、Cobranet、Danteなどが出てきたが、業務用製品ではDanteが優勢のよう(BEHRINGER DIGITAL SNAKEやOptocoreあたりもEthernetを使っているが、規格がオープンでなかった)。
マルチユースタイプのローエンドではZOOMのR8にローランド(BOSS)のMICRO BR BR-80が張り合っている。元祖であるR16の優位性がフィジコンとして使えることやマルチチャンネル入出力可能な点(デジタルミキサーのような使い方ができる)にあったことを考えると、単純にパソコンの音声入出力を担当できるというだけではちょっと半端かなぁという気はする(フィジコンとレコーダーが欲しい場合R8は選択肢に入るかも)。ミドルレンジはZOOMのR24の覇権が長い。アナログミキサーからのアプローチとしてXENYX UFX1604が出てきた。USB対応のスモールミキサーは・・・筆者もXENYX1204USBを持ってはいるものの、USB接続機能は使っていない。メインミックスをパソコンに送りたがる機種ばかりなのが残念(内蔵イフェクタ用にバスを1本用意する余裕があるなら、代わりにパソコンバスを導入すればいいのに:単機運用向けに入れ替えボタンかなにかつけるとして)。ベリさんがXENYX Qシリーズを出してきて価格的には手軽になった。TASCAMのM-164UFは「パソコンへの16入力は、CH 1-10 AUX SEND 1-2 ステレオバス サブバス」という意欲的な構成だったが、国内流通がほぼなくなった模様。
2021年追記:6in4out以上かつヘッドフォン独立2系統以上のものをUSB接続で探すと、Native InstrumentsのKOMPLETE AUDIO 6 MK2が例外的に安く、機能面に徹したようなデザイン。FOCUSRITEのScarlett 8i6 (gen. 3)なんかもソツない構成だが少し価格が上がる。いっぽうで、ミキサー(とくに2バス以上のもの)を組み込む前提の機種はローエンドからなくなってしまい、だったら値段だけ見てベリさんのUMシリーズかM-AUDIOが出してきたM-Track Duoでいいんじゃないのという状況。ESIのU24 XLとMAYA44 USB+だけは面白そうなレイアウトだが、KOMPLETE AUDIO 6 MK2やフロアミキサータイプとの価格差をどう見るか(U24 XLはとくに、状況次第で気が利いた使い方ができそうには思える)。MIDITECHのAUDIOLINK3(2in2outのまま入力端子だけパラ(ようするにたんなるフタマタ)にしてある)も、アイディアとしては面白いと思うが、ベリさんのU-CONTROLとの価格差をやはりどう見るか。XENYX 302USBが値上がりした簡易ミキサー兼用タイプは、CLASSIC PROがMX-EZ6(下位機種のMX-EZ4はサウンドカード機能なし)というのを出してきて微妙な競り合いになっている(価格的にはXENYX Q502USBも近い)。フロアミキサータイプは、MACKIEのProFXシリーズ、BEHRINGERのXENYXシリーズ、ALESISのMULTIMIXシリーズ、SoundcraftのNotepadシリーズ、ARTのUSB Mixシリーズ、YAMAHAのAGシリーズあたり。横並びではあるが、ミキサー部分が手に合うものという本来あるべき選び方ができる、と解釈しておけばよかろう。FireWire接続機種はベリさんの撤退でローエンドが消えてしまった。MOTUとRMEがUSBと両用の機種を残しており、価格的に、MOTUがミドルレンジ唯一の選択肢(AudioExpress、UltraLite mk3 Hybrid、4preと3機種あるが、ヘッドフォンアウトが独立2系統あるのは4preだけ)になった。Thunderboltの機種ではPRESONUSが頑張っており、Quantum 2626は価格だけでなく機能も充実している。目安になるような製品を探すなら、U-CONTROL、UM2とM-Track DuoとMX-EZ6、KOMPLETE AUDIO 6 MK2、4pre、Quantum 2626ということになるのだろう。
最近、サウンドカードやサウンドユニットを「オーディオインターフェイス」と称して売っている例が多いが、妙ちくりんな用法で使われることが多い呼称なので、このサイトではそのような呼び方を避けている。
PCI接続のサウンドカードを例に、ハードウェア層の本来的な呼称をまとめると以下のようになる。
赤が装置全体の呼称で、形状によりボード(内蔵で大型のものor歴史的に大型だったもの)/カード(ISAスロットやPCIスロットを使うものなど、まれにPCカード形状のものも)/ユニット(おもに外付けのもの)などと呼び分ける。サウンドボードではなくオーディオボード、サウンドカードではなくオーディオカードなどと呼ぶ場合もあるが字面以外の違いはない。
青がインターフェイス(情報を受け渡す部分のこと:辞書的には「(性質が異なるもの同士の)接触面」「界面」が原義、転じて「連結部分」とか「共通領域」とか、機器用語としてはドメイン(界)を跨ぐためのパーツや外部機器との接続部分などを指す)で、MIDIインターフェイスがないものや、PCIインターフェイスでなくUSBインターフェイスを備えたもの(カード形状でなくユニット形状になることが多い)もあるし、もっと多くのインターフェイス(たとえばオプションユニット取り付け用のインターフェイス)を備えた機種もある。
緑はさらに細かいレベルの呼称で、上記以外の構成も多数ある(たとえばラインインがTRSでなくRCAだったり、マイクインがついていたり、ラインアウトが2系統以上あったり)。プロセッサはカードの中心的な部品で、サウンドチップ(デジタル化した後の音声をパソコンのバスに乗せたり、ハードウェア加工する機能を供給したりする:自社製チップやカスタムチップを使っているところも多い)、ADコンバータ(アナログ音声をデジタルに変換する)、DAコンバータ(デジタル音声をアナログに変換する)などがそれぞれ別の石(IC)になっていることもある。
もちろん「パソコンにオーディオ信号を入出力するためのオプションパーツ」を単に「オーディオインターフェイス」と呼ぶのは間違いではない(少なくとも「パソコンのマイク入力」という表現が許容されるのと同程度には)。しかし「サウンドカードとオーディオインターフェイスは別のもの」という意味不明な主張もあって、妙な誤解を招きかねない(「音楽専用に設計されたもの」「値段が高いもの」「ユニット形状でMIDIインターフェイスがついているもの」などバラバラな用法で使われる)。いっぽう2014年6月現在AKGがモニタヘッドフォンのカタログで用いているように、単に「音声ケーブルの差し込み口」の意味で「Audio Interface」と言う場合もある(というかこちらが真っ当な使い方)。
そこでこのサイトでは、形状によらず「サウンドカード」と総称し、オンボードのものは「オンボードサウンド」、ユニット形状のものをとくに指す場合は「外付けサウンドカード」または「サウンドユニット」としている。
追記:2010年くらいから「USB DAC」なる呼称も見かけるようになった。変名商法やるならネーミングくらい自前で捻り出せばいいのに、なんでまた実用上普通に使う用語を使い回すかなぁ(USB接続でDAコンバータを搭載している機器なんていくらでもある)。まあその「紛らわしさ」にこそ需要があるのだろうが、なんともかんとも。
さらに追記:ARTのT Connectなど、カードともユニットとも言いがたい製品がいくつか出てきた。なんと呼べばいいのかなぁ。
さらにさらに追記:TASCAMが2011年9月にすごい製品を出してきた。本家サイトからアオリ文句を抜粋しよう。
ギターも、マイクも、どこでも手軽にレコーディング。この機器は、ファンタムつきマイク入力と楽器入力(排他)、ヘッドフォン出力(ライン出力と兼用)、さらに「iPhone/iPad/iPod touch用接続端子」として4極の3.5mmステレオミニジャックを備える。メーカーは「マイク/ギターインターフェース」と書いているが、小売店は「オーディオインターフェース」に分類して売っている。ピンときた人も多いだろうが気にせず製品説明も抜粋してみよう。
ファントム電源対応iPad/iPhone/iPod touch用マイク/ギターインターフェース
『iXZ』はファントム電源対応のXLR/TS入力搭載iPad/iPhone/iPod touch用 マイク/ギターインターフェースです。『iXZ』をiPad/iPhone/iPod touchのイヤホン/マイク端子に接続するだけで、どこでも手軽にレコーディングを楽しむことができます。小売店は間違ってはいない。中身はファンタム搭載のマイクプリアンプとギター用DIだがたしかにオーディオのインターフェイスである。というか単体のDIもオーディオインターフェイスには違いなかろう(メーカー呼称の「ギターインターフェイス」の方がより適切だとは思うが)。まあなんというか、バズワードを振り回す人たちはバズワードに振り回されるんだねぇ(しかしこれ、2013年7月現在の実売価格も5千円を切っているし、プラグの変換さえできれば普通に便利そうな気がしないでもない:4極ミニメスから分岐させるケーブルは市販品をほとんど見ないので、6AR143などの単体コネクタを使って自作するか、機器を直接改造することになりそう)。