いろいろ作ろう


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先に断っておくが、筆者は元中華屋である。中華以外の料理はドシロウトだし、中華もシロウトに毛が生えた程度しか知らない。そこを忘れないで欲しい。



うま煮を作っておく

「元中華屋である」と宣言してしまったので中華っぽいものを先にやっておこうか。

豚肉は、豚バラスライスあたり(厚めがよい)。酒大匙1と醤油小匙1と酢小匙半分(たぶん6人前分くらいのタレになると思う)をふりかけて20分くらい置き、水気を切り、少量の片栗粉と一緒にポリ袋に入れて振り混ぜる(余計な粉ははたき落として、触ると水分が微妙に滲むくらいにする)。できれば、酒を吸わせる前にざるで流水洗いして軽く絞り、スジっぽいところがあれば包丁を入れ、酒を吸わせるときにネギの青いところとショウガを一緒に漬け、お好みで黒コショウと粗挽き乾燥ニンニクを追加するとよい。スープの素の類(ウェイパー含む)を使わない場合、糖分だけは足しておいた方がよい(酒や具材の甘味や、全体の塩味/醤油味を考慮して決めるが、普通は微量でよい)。

キノコとニンジンと白菜があれば、あとは青い野菜(そのとき安いものでよいが、チンゲンサイか小松菜が安定して使える)とモヤシで十分。モヤシはさっと湯がくか熱湯で洗って水気を切って使う。白菜の白いところとチンゲンサイの根元も一緒に湯通しした方がよいだろう(ホウレンソウと違い灰汁は少ないので、葉の部分は水洗いだけでよいと思う)。キノコ類は煮るとクセが出やすいので、量や加熱時間を加減し、冷凍のものは凍ったまま炒める。もし冷凍でないキノコを使う場合で乾燥が進んでいたら、霧吹きで軽く水を含ませてもよい。他に気が向いたものがあれば適当に入れよう(戻した乾燥キクラゲとか、タケノコの水煮、冷凍の小エビなんかも合う)。

鍋に油を熱して、ネギの青いところ、ショウガ、叩いたニンニクあたりを(全種類でなくてよいので)炒めて、香りが出たら取り除き、肉の表面(だけ)を焼いて皿に取り、モヤシと肉以外の食材を炒め、モヤシと肉を入れて少し炒め、スープの素(コンソメでも中華スープでも)と適当な調味料(塩とか酒とか)を少量のお湯で溶いて入れ、沸騰したら片栗で固める。片栗は多めの水(チャパチャパするくらい:計るなら片栗1:水2でOK)で完全に溶き、混ぜながら3回くらいに分けて鍋に入れ、皿に盛ったとき下に落ちる程度のとろみに仕上げる(カチカチにし過ぎない)。分量はもやし2~4:他の野菜4:肉魚介1を目安に。もやし1袋が200g前後なので、同量の野菜と肉50gが標準分量(もやしはお好みで減らす)、スープと調味料と水溶き片栗の合計水分は、上記標準分量に対して300ccくらい、かな(今回はあくまで「煮物」のつもりで:八宝菜や中華丼のアタマなんかのあんかけはソースっぽいイメージで、かなり少ない汁で作ることが多い)。仕上げにごま油をたらしてひと混ぜしたらできあがり。

スープを煮立てるところでも火が通るので、炒めのところで完全に火を通す必要はない(とくに肉の1回目は、6割生くらいの見た目になれば十分、2回目もモヤシに油が回ったらすぐスープでよい)。樹脂加工の鍋でも作れるが、比較的高温になるのでコーティングが傷むことは覚悟しなければならないだろう。



チャーハンを真面目に考える

中華料理の炒飯(チャオファン)を一般家庭で作るのは、24~27cmの中華鍋に4.2KWクラスの強火力コンロを組み合わせて少量作るなら技術次第でなんとかなりそうではあるものの、一般的にはかなり難しい(ぜひ挑戦したい人はボトムプロコーナーを参照)。この項ではそういうチャレンジはせず、日本の家庭料理としてのチャーハンを、インチキと抜け道で炒飯に近付ける方法を探る。以下分量は小さめの卵(M玉を殻含まず55gと想定)とご飯200g(0.6合くらい)を使い仕上がり250gの前提。油を飛ばしきれないので、卵をやや少なめにした方が食べやすいと思う(風味のバランスの問題や炊きたての飯を使う都合があるので、油はケチっても過剰でもいけない)。

チャーハンを作るときに問題になるナンバーワンは、おそらくご飯のダマだろうと思う。なぜダマになるのかというと、ご飯を炒め(高温の油で表面を変性させ)られていないからである。ほぐしと混ぜが下手だというのももちろんありえるが、炒めるには高温と油の両方が必要であり、常温のご飯に油をまぶして混ぜても、高温の鍋でご飯を乾煎りしても、ご飯はパラパラにはならず、混ぜれば混ぜるほどネバネバに(もしくは焼けてカリカリに)なるだけである。ご飯を干して揚げた菓子である「あられ」を考えてもわかるように、水分を抜けばバラバラになるというものでもない。筆者もいろいろ試しはしたが、この際、炒めることを半分諦めてしまうのがもっともよいと思うようになった。

まず普通にご飯を炊き、蒸らし、ほぐす。グラタン皿などにキッチンペーパーで油を塗り(どうせくっつくので薄くでよい)、ご飯を入れて、オイルスプレー(なければ手に油でも付ければよいが、油なしでも大丈夫)で少し油をかけてやる(放っておけば下まで落ちるので混ぜなくてよい)。余熱したオーブンでアルミホイルは使わず「てっぺんの飯粒がシワっとするまで」加熱する(時間は機種と皿の高さによる:プチプチと音が出るはず)。焼けたらひっくり返すようにしてご飯を別の容器に移し、グラタン皿の底にたまった蒸気を追い出す。あまり長時間オーブンにかけるとご飯が蒸れすぎるので、ほどほどに焼く。電子レンジを使うときもそうだが、ご飯を過剰に蒸すとクタクタになる(飯粒ひとつひとつがキリっとしていないとパラパラにならない)。油を塗ったグラタン皿は熱いし滑るので、ミトンは選んで使おう。

オーブンは出力全開が基本で、筆者が使っているのはFIFTYとかいうメーカーのOBT-111という機種(ディスカウントショップで2~3千円だった)。庫内が小さいため厚切りのトーストなんかを焼くと焦げるくらいの火力がある。透明な容器を使うと、加熱中に湯気がモワっと立ち上るのがわかると思う。強い火力で表面の水分だけゴッソリ飛ばし油に入れ替える作業が、鍋ではできないためオーブンに肩代わりしてもらうわけである。飛ばす水分量が多く、冷凍して解凍したご飯だとパサパサになりがちなので避けた方がよい(炒めは内部に水分を閉じ込める調理法である)。そもそも、いったん冷や飯にすると飯粒がくっつき合うので、炊きたてが使えないなら保温ジャーを使うのが無難。ある程度の油がご飯に染み込むのは避けられないため、オーブンで使う油はあっさりしたものをとくに選んで使うとよい(粘度が低いのでこめ油がいいかな)。もしラードを使いたいなら卵の方に使おう。

特別な下準備はここまでで、ご飯部分の仕上がりはすでに大方決まってしまっている。あとは普通に油(油返しで残る油と合計で大匙1弱)を熱して、煙が多く出る状態で卵と油を混ぜ膨らんだらご飯。お玉の底で撫でるように鍋に広げては混ぜ、ガンコなダマがもし残っていればお玉で少量の酒をかけて壊し、調味料と具を入れて混ぜ、仕上げ油は使わない。鍋でやるべき作業が半分終わった状態から始めるので、炒め時間は短くなる。このやり方だと、中華鍋さえあれば、3.5KWの並火力コンロでも「なんだかチャーハンらしきもの」は作れる。欠点はグラタン皿に飯粒がくっつくことで、皿に塗る油を増やしすぎると油臭くなる(皿の素材によるのかもしれないが、筆者は耐熱ガラス製の長皿しか使ったことがない:だって1人前ちょうど入るんですもの)。炒め油が少なくスタートダッシュの高温が必要な都合上、最初のところで卵が焦げやすいことに注意(ご飯を入れたらすぐに鍋を返してご飯の上に卵を乗せてしまった方が無難)。

ただまあ油を蒸発させられないのは変わらず、それなりの油っぽさは残る。が、限られた火力をやりくりするには適した方法だと思う。この「油をまぶしてオーブン作戦」はもともと油通しの代用として(細々と)伝わっていたようで、筆者も最初はエビだかイカだかの下ごしらえとして教わった(カワハラさんありがとう)。



チャーハンを諦める

実も蓋もない見出しだが、普通の家庭用キッチンで冷凍のご飯しかない場合、諦める以外にどうしようもない。卵を多め(ご飯200gに対してLL玉1個とか)にして、半量の卵を先にご飯にあえて、多めの油(上記分量で大匙1.5くらいかな:仕上げ油を使う場合はその分差っ引く)で残りの卵を炒め、膨らんだら卵かけご飯を入れて鍋で焼く。ご飯に混ぜる卵の量は、ギリギリ「卵かけご飯です」と言い張れる程度でよい(卵の溶き方をざっくりにして、ご飯にかける方に卵白が多くなるようにすると仕上がりがけっこう違う)。ギリギリの踏ん張りとして、鍋だけは中華鍋を使って、煙が多く出る油温に熱してから卵を入れよう(熱源はカセットガスのコンロで妥協してもやむを得ない)。ご飯は温めるが卵をかけたときに煮えるほどの高温にはしないのがポイント。ご飯を器から直接鍋に入れようとするとハネて危険なので、ステンレスボウルか何かに入れておいてお玉で掬って入れよう。水分の飛ばし具合は好みだが、表面が焼けてきたらさっさと混ぜてさっさと仕上げるのがラクだと思う。パサパサするときは焼き過ぎだが、ご飯の水分が元から少ない場合(冷凍して解凍するとかなり水分が飛ぶ)は酒を少しかけるとある程度誤魔化せる(酒の甘味が嫌ならスープでもお湯でも)。

炒めていない分風味が弱いため醤油と仕上げ油(ごま油あたり)は使った方がよい。酒やスープ(インスタントで構わないがお湯に溶かすのが無難)をかける場合でも、醤油は後から別に入れる。油が多めだが焼き飛ばすことはできないので、アッサリした油を使う(ラード不許可、こめ油推奨:ラードをブレンドして使うのはアリかもしれないが、筆者はやったことがない)。なんとなく、大きい具材は合わない気がするので筆者は全部粗みじん切りにしている。チャーハンともヤキメシとも違う不思議な仕上がりにはなるが、鍋で焼いた卵かけご飯もこれはこれでうまい。タマネギやニンジンのみじん切りを入れたいときは、上記のレシピから卵を小さいものに変えて全量をご飯に混ぜてしまうとよい。半量とはいえ高温の油とあえた卵が混ざっていると、野菜の風味と卵の風味がぶつかってごっちゃりした仕上がりになる。

もうひとつ、冷や飯のまま使うやり方に、水振りがある。カレー皿みたいな広くてフチのある皿に冷や飯(電子レンジでぬるいくらいに温める:理由はわからないが、冷蔵より冷凍のご飯の方が扱いやすい気がする)を広げ、飯250gに対して50ccくらい(飯の状態による)の水を、少しづつ振りかけながらお玉(プラの方が安全)でダマを壊しておく。油を大匙1くらい熱してM玉1個(殻除いて55g)くらいの溶き卵を入れ、膨らんだらすぐご飯。ある程度水分が飛んだら具を入れて混ぜ、少量のスープの素(中華スープでもコンソメでもいいが、過度に甘くないもの)を水か酒で溶いて塩や醤油を加えたもの(合計で25ccくらい)を振りかけて、もう一度水分を飛ばして完成(あまりパサパサにはしない)。こちらはピラフとチャーハンの中間みたいな仕上がりになり、あんかけチャーハンのベースとしても使える。冷や飯を水洗いしてから使うというレシピを多く目にするが、ザルで洗うよりは皿に広げた方が、過剰に粘りが抜けず後始末もラクだと思う。卵を冷たい鍋から弱火で半熟にしてから飯を入れる方法もあるらしいが、筆者は最初だけでも高温の油を使いたい。なお、常温(20度)で50gの水を蒸発させるには113KJの熱量が必要で、3.5KWのコンロが50%の効率だと1分くらいかかる。実際には空気に晒される面積とか鍋の余熱とかで結果が大きく変わるわけだが、目安として覚えておいて損はないと思う。

上記全部の複合技として、ご飯にマヨネーズ(ようするに卵と油と酢だが、熱すると酢酸が飛ぶので、結局卵と油と水:全卵型で試したことはないが、普通に考えて卵黄型の方がよいと思う)をあえておく方法もあるのだが、正直準備と後始末ががかったるい。ただまあどちらにしても、冷や飯や冷凍のご飯を頑張って調理するよりは、既製品の冷凍チャーハンを使った方がずっとラクで仕上がりもよい(2022年現在、ニチレイとか味の素みたいなブランド品でも買い方によってはキロ単価千円を切るので、費用的にもそんなに高くない)。既製品を使う場合筆者は、電子レンジで解凍(解凍モードではなく普通の加熱モードを使うが、上と同じでアツアツにはしない)してから少量のごま油で焼き色をつけている。レンジだけで温めるとベチャっとするし、凍ったままフライパンだと表面が焼けないので、試行錯誤の末結局こうなった。



スパイスでカレー

カレーといっても実にさまざまなものがある。筆者はカレーがかなり好きで、東京に住んでいたころは、新大久保のヒマラヤ(20年ぶりくらいで再訪したら、店は同じ場所にあったが筆者の記憶とはちょっと違う感じになっていた:まー昔の記憶だからアテにならんけど)とか、戸山(馬場下町に移転したんだっけな)のメーヤウとか、歌舞伎町や西新宿の大小いろんなカレー屋さんに通ったものだし、札幌でもいくつかの店は回りアクエリアスとかいう尋常でなく辛いカレーも食べた(中華じゃないから店名出してもヘーキなのよね)。

じゃあ家ではどんなカレー作ってるのと聞かれると、学生の頃からほぼ変わり映えなく、豚バラブロックのカレーである。たまにちょうどよさそうなマトンを見つけたり、冷凍のエビが怪しくなってきたり、鶏肉が余ったりすれば他のカレーも作らないではないが、やっぱり豚バラブロックが多い。筆者が家で作りたい理想のカレーはメーヤウの(できればポークでなくマトン)カレーなのだが、あんなのムリなので汁がユルいだけの普通のポークカレーを作っている。

筆者の理解だと、みじん切りにした野菜でカレーソースを作ってメインの食材にあえるのがインドカレーで、ココナッツミルクで煮込むのがタイカレー(凄く乱暴な分類で、例外がたくさんあるのは承知の上)なのだが、どっちも正直メンドクサイ。今は通信販売が発達して、アマゾンあたりじゃユウキのココナッツミルクが400ml(4号缶)300円ちょっとで買えるようだからそのうちやってみようとは思うのだが、エスニック追求系に振るならそれこそユウキのカレーペーストとか使った方が早いわけでもあり微妙。

筆者が使っているのはエスビーのカレー粉(赤缶:家庭用は20・37・84gだが、業務用は400g・2kg・10kgとあり、一皿分2gとすると20g一缶で10人前)で、昔は無印良品のカレーキットも使っていた。この記事を書くために確認してみたところ、無印はレトルトっぽいソースばっかりで、スパイス詰め合わせ的なキットは現在扱っていないらしい・・・と思ったらこれ、GABAN(2016年からハウスの子会社)の「手作りカレー粉セット」だ(案の定ではあるがOEMだったのね)。そうそう、このセットからターメリックだけ抜いて、赤缶1個(20gのを全部)と混ぜ合わせるのが筆者のレシピだった。セットを「作り方」の説明通りに乾煎りして、密閉容器で冷蔵庫に3日くらい寝かせる(赤缶と混ぜるのは寝かせた後)。なおホールスパイスを使うときはテンパリングと呼ばれる技法(中華でいう香味油作りとほぼ変わらない:香爆とはイメージが違う)で油に香りを移すと風味がよい。ぶっちゃけメンドクサイのだが、唐辛子とクミンだけは余裕があればホール(とパウダーの併用)がいいのかなぁと思う。筆者は油を漉して香辛料を取り除いてしまう(クミンなど小さいタネモノは少し残した方がアクセントになる)。

でまあバラブロックを立方体になるくらいに切り、水(できれば生姜水:ネギの青いところと生姜を水に漬けて作る)晒しで血抜き(夏30分冬60分くらいかな)してよく絞り、軽く塩を振り酒と少しの酢を吸わせて30分ほど冷蔵庫で寝かせ、表面の水分を拭き取って焼き網で焼き、キッチンペーパーで油を拭き取る(他の方法もいろいろあるが、圧力鍋を使うときはこれがよいと思う)。野菜は、煮崩すもの(最初から肉と一緒に煮る:トマトとかみじん切りタマネギとか)、形を残すもの(1回目の加圧調理の後で入れる:ニンジンとかダイコンとか冊切りタマネギとか)、揚げるもの(食べる直前に入れる:カボチャとかピーマンとか)に分け、必要なものは下茹でしておく。大根(をカレーに入れるのはメーヤウで初めて見た)を使うときは、皮のすぐ内側の筋になっているところ(苦味が強い)まで剥いて、中の方だけカレーに使う(外側は別の料理に使いたい:すりおろすと、ワサビともカラシとも違う独特な香辛料になり、冷たい麺類のめんつゆにも合う)。米のとぎ汁(または水と米糠か生米)で芯に火が通るまで下茹でして、水でさっと洗っておく。冬より夏、新鮮なものより古いもの、上の方(葉の生えている首の近く)より下の方(細くなってひげ根が出ている近く)が、苦味と辛味が強くなるため、買い方や使い方を工夫したい。

肉を強火の焼き網に乗せ、表面(だけでよい)をしっかり焼き、肉と煮崩す野菜とひたひたくらいの水を圧力鍋に入れ煮立たせ、しっかり灰汁を取る(加圧調理中は灰汁を引けないため、蓋を閉める前に取り切ってしまう必要がある:油の量も適宜調整)。灰汁が出なくなったら酒と塩ひとつまみと小さめのブーケガルニ(ローリエだけでもいいと思う)を入れて高圧で0~15分程度(鍋の種類と肉の大きさ、肉質や希望の仕上がり、気温や分量による)調理してから圧を抜き、ブーケガルニを取り出し形を残す野菜を入れ、もう一度火を入れ灰汁を取り低圧で0~5分くらい調理する。元気があるなら、後から入れる野菜は少しの塩で(炒めるというよりは)温めて、水分を飛ばししんなりさせておく(フランス料理でいうシュエ)。

圧力調理と平行して米も炊いておこう(汁ありのカレーにはやはり米の飯が合うと思う)。クミンライス(ジーラライスとも)、サフランライス(どうやら日本でのみ有名な料理らしい)、ターメリックライス(サフランは高級品なので、サフランライスを名乗るターメリックライスがけっこうある模様)、ビリヤニ(インド風パエリア、と紹介されることが多いが、米とスパイスや具材を層状に重ねて蒸し炊き(茶碗蒸しみたいな要領で)する、ちょっと変わった高級料理)など、スパイスを利かせた飯もいろいろあるが、短粒のジャポニカ米なら白米のままの方が無難だと思う。

炊飯器のスイッチを入れたら小麦粉を(香味)油で炒めておき、スパイスを足して香りを出す。以前はここを、油>小麦粉>スパイスの順にやっていたのだが、小麦粉>スパイス>油の順の方がラクな気がして、いつからか順序を入れ替えるようになった。どちらにしても、小麦粉は60度前後の温度で水と反応し糊化する(=ダマになる)ので、溶かしバターを使う場合はいったんバターを冷ましてから粉と合わせる。メイン鍋の圧が抜けたらスープの素を加えテキトーな調味料で味を調え、炒めた小麦粉とスパイスをスープで(3回くらいに分けながら)伸ばして入れ、乳製品(バターか牛乳かヨーグルトあたりで余っているもの:キノコ類を入れるならソテーにするとよい)と果物類(ジャムでもチャツネでもすりりんごでも:ようするに甘味と酸味を足せればよい)を何か混ぜ、揚げ野菜を入れたらできあがり。甘味の加減はタマネギの量と調理法にも影響されるのでテキトーに加減する(汁ありカレーの場合筆者は、大きめに切って炒めないで使うので、甘味を別に足す)。

基本的にはあまり「味を染みこませない」作り方で、できたてを食べる(分量的に翌日持ち越しになるのは仕方ないが、すぐの方がウマイと思う)。生トマトでなくトマトペーストを使った方がいろいろとラク(なければピューレでもジュースでもケチャップでも)。スープの素(コンソメかブイヨンあたり)は邪道なのかもしれないが、メインにはしないまでも少しは入れた方が安心感のある味になると思う(トリガラ系のダシと甘味を補える:いわゆる「コク」には甘味の関与が大きい)。圧力鍋は当初「手抜き道具」としてバカにしていたのだが、使い始めると便利すぎて手放せない。



汁なしカレー

汁なしとはいうものの、みじん切りの野菜を使い、中華でいう干焼みたいな感じにする。余談ながら、「ドライカレー」はこの「汁なしカレー」を指すのが本来(のはず)。

タマネギは別に調理した方がラクで、油を熱した鍋にみじん切りを入れ、底の方が茶色くなるまで熱し、スープか酒かお湯(お好みで)をさして混ぜ、また熱することを繰り返す(フランス料理の用語でいうと、シュックを作ってはデグラッセするということになるのかな)。品種や個体にもよるのだろうが、この調理方法だとかなり甘味が出て、大量に入れすぎるとクドくなるので注意。強火でやればそんなに時間がかかる作業ではないが、タマネギを電子レンジで温めておくとすぐにシュックができる(焦げすぎに注意)。冷凍のタマネギを使う場合、レンジで温めると汁が出るので、汁を切って使う(嫌いでなければ、汁は後でカレー鍋に入れてしまえばいい)。

肉はどうするのがいいんだろうねぇ。干焼風にするなら粉をつけて油通しだし、生のままヨーグルトに1時間くらい漬け込むレシピもよく聞くし、スネとか肩などの硬い部位(牛スネ豚スネ牛カタ豚カタと、どれもそれなりにイケる:邪道だがホルモン系のモツも捨てがたい)が合う調理法なので圧力鍋で柔らかくしてしまうのも手だろう。中華ではあまりやらない方法だが、塩をすり込み1時間くらい寝かせてから水か酢水で洗ってもよい。ここでは普通の「カレー用角切り肉」と圧力鍋を使うことにして、肉の表面だけさっと炒めたら、タマネギと一緒に加圧調理しておく。汁気は鍋が焦げない程度にあれば十分(水でもスープでも料理酒でもワインでもトマトジュースでもよい)。長時間加圧する必要はあまりないので、圧がかかってすぐ火を消しても大丈夫(冬場ならタオルでも巻いて鍋を保温しておいた方が仕上がりがよい)。

圧力を抜く間にニンニクやショウガなどをみじん切りにして軽く炒め香り出し、カレー粉(赤缶そのまま)も軽く乾煎りしておく。加圧調理が終わった鍋に材料をすべて入れ、トマトペーストを混ぜ、塩で味を付けてバターを少し入れ、軽く水分を飛ばしたら完成。煮切ることを考えて調味料は控えめ、筆者は醤油も少し入れる。フランス料理風に小麦粉を入れても悪くはないが量は控えめに(ソースの仕上げにバターや小麦を入れてとろみを出す技法はリエと呼ばれ、あらかじめ小麦粉とバターを練ったものがよく用いられる:インドやネパールやパキスタンで何と呼ばれるか筆者は知らない)。

付け合せはとくに必要ないと思うが、盛り付けた後で乾物(ナッツとかドライパセリとかガーリックチップとか)を乗せると風味が増す。ドライトマトとかレーズンを刻んで乗せても悪くない。肉をひき肉(自分で荒みじんにした方がよい)にして豆を入れキーマ風にもできるし、さらにカレー粉をチリパウダーに変えるとチリコカルネ(chile con carne:唐辛子と肉という意味だそうな)っぽくなる。



除冷で豚角煮

これって日本の料理なのかしらね。中華にもトンポーロウとかジャンロウといった料理はあるがけっこう感じが違う。角煮っていう呼称からしてよくわかんないが・・・角切り煮込みとかそんな感じの意図なのかしらね。まあとりあえず皮なしの豚バラブロックを使って普通の角煮を作りましょ。なお、中華風の味付けを志向するときは八角が欠かせない香辛料になるが、日本人にとってはかなりキツい風味なので、使うとしたら下茹でのときにだけ使うのが無難。素材の風味がフルに抽出される圧力鍋調理では、とくに慎重に使いたい。肉はバラが第一候補で、スネや肩ロースやスペアリブも使えなくはない。調味液は、酒6:醤油3:砂糖2くらいが基準になるだろうか。水or茹汁の量は煮るときの都合に合わせ、おおよそ調味液が肉の4~5割くらいだと、頑張って肉を敷き詰め落し蓋をしてちょうどよいくらいになるはず(冷凍するときはひたひたくらいの汁があった方が長持ちするので、汁は不均等に使う:肉を引き上げて汁だけ煮詰める技もあり、筆者は焼いてから保温鍋を使うときにこうすることが多い)。

調味液はたとえば、砂糖100cc+醤油150cc+酒300ccに対して、茹汁50ccの肉1kgだと濃いめで、味を肉の中心までは入れず、後から具材(葉物野菜とかキノコとかタケノコやニンジンの片とか)を足してあんかけにするような食べ方に適する。同じ分量で茹で汁300ccの肉1.5kgだと薄めになるはずで、長めに漬けてしっかり味を入れ、食べるときは汁に少量の醤油(とお好みで砂糖や煮切った酒や生姜など:片栗は弱めに)を足してから肉単品で食べるような場合にはこのくらい。どちらも全体に占める酒の量が多めで、料理酒だと塩味がキツくなるので清酒の方が使いやすい(圧力調理で酒を多く使いすぎるとエタノール比率の高い蒸気が出るので、ある程度沸騰させてから圧をかけるなど鍋の説明書もよく読んで対策する)。砂糖はお好みだが、塩分に比べて糖分は染みこむのに時間がかかる(単体イオンになる食塩に対してショ糖は高分子)ため、煮込み終わり直後の状態だけで判断しない方がよい。肩ロースや肩スペアリブなどを使う場合は、醤油味メインの肉+甘味のある餡の組み合わせにするのも一案。冷凍する場合、凍らせた後にも味が入り続ける(もしかしたら解凍時に味が入りやすくなるだけかもしれず、正確にはわからないが、結果的には塩味が濃くなる)ので、控えめな塩加減にしておくのが無難。もし味が入りすぎたら卵とじにでもしよう。

筆者のやり方は、圧力鍋と保温鍋の併用、茹でてから圧力鍋、網で焼いてから保温鍋と変遷して、今はフライパンで焼き目を付けて保温鍋を使っている。油通しするのも(面倒ではあるが)効果的で、油が多い肉を使う場合はとくに適する。カレーのときと同様に、仕上げの大きさに切ってから表面を焼き付け、油をふき取る。肉の赤身の部分は、加熱するとコラーゲンなどが壊れ弾力を失い、糖分で硬くなり、それをさらに冷凍するとスポンジ状になり、再加熱でポロポロになる。食感を残すには、表面を焼いて内部を保護してやった方がよさそう。トロトロ系の仕上がりを目指すときは過剰加熱に気を付ける。とくに茹豚を使うときは注意が必要(砂糖を加圧調理の後に回すのも硬化対策になるが、面倒なので筆者は一緒に入れてしまう)。下処理が終わったら、切っていない場合は適当な大きさに切って、脂身を上に圧力鍋に並べ、少し頭が出るくらいの調味液を入れ加熱、灰汁を引いて加圧する。

茹でてから圧力鍋を使うときは、バラを保温鍋で生姜とネギで水から茹で、沸騰したらすぐ火を止めてアクを取り、乾燥昆布を加えて除冷(下茹で前に焼き目を付けたり熱湯洗いをする案もあるのだが、メンドクサイ)。荒熱が少し残っているくらいで肉を取り出して水洗い、茹汁は漉して(というか網で中身を全部出して)沸騰させ灰汁取り、圧力鍋に肉と調味液と香味野菜を入れアルミ箔で落し蓋をして、低圧モードで加圧調理、というパターン(加熱しすぎるとボソボソに硬くなるので注意:砂糖で硬化が早まるので甘めにしたときはやや短めに、周囲の温度で余熱の効果が変わるため季節にも左右される)。加圧調理を先にやる場合は、圧が抜けたら保温鍋に移してひと煮立ちさせ、ゆっくり冷ます。焼き目を付けて保温鍋を使うときは、少量の油で表面だけ焼いて、保温鍋に肉と調味液と香味野菜を入れ、水を足して鳥ガラスープの素を少しだけ、煮立てて灰汁を引いて保温容器で少し休ませて、もう一度沸騰させ保温容器に戻し昆布を加える。保温鍋を火にかける前の段階でひたひたくらいの煮汁(肉は加熱で縮むので、仕上がりはかぶるくらいになる)にして、落し蓋はしていない。

どの場合も、触ったら明らかに熱いくらい(50度ちょい)まで冷えたら、氷水を張ったボウルで鍋を冷やすなどして急冷、荒熱が取れたら保存容器に小分けして冷蔵庫でさらに冷やし、すぐ使う分以外を冷凍する(他の項で触れるように、冷蔵冷凍する場合は出てきた油をフタとして残した方が保存性が高まるような気がしている)。調理方法によってはすでに細胞破壊がかなり進んでいるが、凍らせるとさらに細胞が壊れ、茹豚を使った場合はトロトロに、炙豚を使った場合は外側だけ形を保ちつつ中が柔らかくなる。脂身が下になるよう冷凍容器に入れ、好みの量の煮汁(茹汁少なめで濃いタレなら少なめ、茹汁多めで薄いタレなら多めに)も一緒に保存する。ただし、凍っていても味は入るし抜ける(気がしてならない:理屈はわかんないけど)ので、汁の量が(足りないと乾いたりもするが)過剰にならないように注意した方がよいと思う。解凍するときは煮汁が大方溶けるくらいまで容器のままレンジにかけ、丼などに移して上下を返し、隙間があくようにラップをかけ湯気が出てくるまでまたレンジ、肉を横にして少し置きまたレンジ、さらにひっくり返して休ませてまたレンジ、と何回かに分けて加熱する(一気に加熱すると爆発するので注意)。

そのままでももちろん食べられるが、青い野菜(チンゲンサイとか小松菜とか)をサッと炒めて、角煮を汁ごと加え、片栗で軽くとろみをつけてやるとウマイ。チンゲンサイの茎の部分を使うときは少し長めに煮て肉は軽くほぐし、片栗で餡を作り丼飯にかけ、花椒(か山椒)を軽く振ってやると合う。タマネギなどと一緒に煮詰めて豚丼モドキも作れる(これも少し片栗を入れた方が筆者好み)。



焼肉がしたい

表題が調理法の紹介というよりはただの願望みたいになってしまったが、自宅で焼肉というのはなかなか難しいシチュエーションである。先のページの加熱調理機器の項で触れたように、肉を焼いたときに出る汁や油をどうするのかということが、とても悩ましい問題になる。

まず焼き網はムリ。焼き加減は悪くないが煙が出すぎる。屋外でなら使えるがだったら七輪の方がいい。昔ながらの、汁受けに水を入れ真ん中にガスバーナー、目の字に穴が開いた鋳鉄の焼板(ロストル)を使うグリルは、煙が多いものの加熱調理器としての性能は悪くない・・・が、家庭用のポータブルプロパンガスが規制強化された影響で業務用専用になってしまった。家庭用での後継はイワタニのカセットグリルあたりだろうか。いわゆるグリルプレート的な溝が入った焼き板は、平らなもの、ジンギスカン鍋のように汁溜まりがあるもの、数は多くないが汁を外に流すものなどがある。

筆者の意見としては、油を外に出せることは必須の条件だと思う。また屋内で使う前提だと、熱源に直接油を落とすというのもちょっと困る。ようするに、汁受けに水を張って使うタイプのものがもっとも使いやすい。結局のところ、ロストルグリル(もともと、都市ガス仕様でも2.3KW程度の出力だった)の後継機であるカセットグリルが本命だろうと思う。余談になるが、昔の北海道には「ジンギスカン用ホットプレート」なるものが売られており、普通のホットプレートの外周に溝を切って汁受けに流すような仕組みになっていた(が、容量が小さく気をつけていないと溢れた:筆者が幼少の頃は、タレつきの肉はこのプレート、タレなしの肉はロストルグリルという暗黙の使い分けがあった)。

焼肉にしてうまい肉というと、牛肉ではカイノミ(ヒレとウチモモに近い部位のトモバラ:フラップミート)、ザブトン(肩ロースの芯:チャックフラップ、ハネシタ)、サンカク(中バラと肩ロースに近い部位の肩バラ:チャックリブ)、豚肉はやっぱりバラ、ラムは部位がよくわからないがロースあたりだろうか。牛のマルチョウ・シマチョウは焼肉でもウマイが、センマイは鍋、ハツやミノは串焼き向きだと思う。レバ刺しは規制強化で小売も卸もなくなってしまった(少しのリスクを許容して食べたい、という人も一定数いると思うが、売る立場からはそうとばかりも言っていられないからねぇ:ネットで見つけたこの記事とか、食べる立場からしたらその通りなんだけど)。そういえば、ヒウチとかイチボみたいなモモ肉は、これだよと言われて食べた記憶がない。



ポトフを語る

もはや作る気がなさそうな表題になり、筆者はちょっと照れている。ともかく「Le pot-au-feu」ってのは、牛肉と野菜を使う料理で、材料は水から煮込み、スープは漉すものだと思うのだが、日本語で「ポトフ」というとあんまりそんなイメージがしない。ドイツ料理のアイントプフの方が近いんじゃないのという気がして調べたら、たしかに野戦糧食的なレシピ(野菜とソーセージをコンソメスープの素で煮るだけ)は日本のポトフに近い感じだが、家で作るようなレシピ(野菜(漬物含む)を賽の目に切って、レンズ豆と炒めて、スープと肉とブーケガルニ、じゃが芋、ソーセージ、塩コショウ酢らしい)はホントにドイツ料理っぽい。ロシアのシチー(ザワークラウトを使い、ヨーグルトに似たスメタナという発酵乳製品を加えることが多い)やウクライナのボルシチ(テーブルビートを入れるのが特徴、かと思ったらポルシテヴィクというハナウドの一種が名前の由来らしく、テーブルビートが入らない白ボルシチというのもあるそうな:テーブルビートは日本で火焔菜と呼ばれる甜菜の仲間)、日本の田舎汁なんかも雰囲気は近いと思う。

WikipediaFRによると「ポトフはフランス料理の代表的な一品」らしい。使うのは:

だそうな(筆者はフランス語が恐ろしく苦手なので正確性は不明)。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病対策で牛の背骨は流通禁止になっているので、使うとしたらテールだろう。

少し真面目にやるなら、牛肉を冷蔵庫で半日ほど塩漬けにし、水洗いして水分をふき取り、水からゆっくり煮て、肉が柔らかくなってきたら先入れの野菜(タマネギとかニンジンとか)、弱火のまま再沸騰させ灰汁が落ち着いたら後入れの野菜(カブとか)、といった感じ。スパイスやハーブ類は、塩漬けのとき、煮込み始めるとき、スープを漉した後の3段階で使うのだが、どこで何をどれくらい使うかでバリエーションを出せる。もっと広義に、肉と野菜をスープで煮込めばOKと考えると、カレーもポトフだし中華の鬆スープもポトフには違いない(言葉だけ見たら「火にかけた鍋」という意味で、なんでもアリっぽさに溢れてる:中華の「火鍋」とは何か関連性あんのかねぇ)。

豚肉を使うときは、賽の目に切って冷たいトリガラスープから煮込むのがよさそう。好みや材料に応じて熱湯洗いしておいてもよい。生肉を水からコトコト煮るのが基本ではあるが、スープを漉さない前提で牛スネなんかを使うときは、炒めてから圧力鍋で柔らかくして固形スープと野菜でよさそう(ただし荒っぽい沸騰は避ける)。圧力鍋と固形スープは相性がよく、普通のスープだと風味が飛んでしまうような調理も、スープの素を入れるタイミングを加圧調理後にしてやれば悪影響なしで行える。しかしこのポトフという料理のアイディア、具材を煮てスープと分けて食べるという発想は(オマケでも触れるように)ものぐさ料理と相性抜群、メニューのバリエーションを大幅に増やしてくれる。煮物の調理法としても、いったん具を引き揚げてスープだけ煮詰めるという裏技があって、なかなか奥が深い(やはり、臭みやアルコールを飛ばしにくい圧力鍋との相性がよい:煮立てた後にアクを引いて具材を追加することもできる)。

余談ながら筆者がよく作る汁を漉さないポトフもどきは、水が出る野菜(白菜の白いところか大根、あれば補助的にチンゲンサイの白っぽいところやカブなど)を圧力鍋で圧をかけずに沸騰まで加熱、煮込む野菜類(ニンジンと、あれば気分でタマネギとか)、肉類(生のを軽く炒めるか、ボイル冷凍したものを凍ったまま)とキノコ類(生なら軽く炒めるが冷凍ならそのまま)を加えて低圧で圧だけかけ、もし材料と元気があればみじん切りの野菜(たいてい小松菜、チンゲンサイを使ったときはチンゲンサイの青いところ)を炒めておき、食べる前に合わせる。最初の加熱調理は野菜と水(できあがり3Lだとして、野菜の種類と状態により0.5~1Lくらい)だけ、ローレルと切って冷凍しておいたショウガと乾燥にんにくをティーバッグに入れ下の方に埋めて少し嵩が減るまで煮る。根菜類はすべてあらかじめ下茹で(たいていの場合はさらに冷凍)してあり、肉を炒めるときは下味つきで、冷凍のときは圧力鍋に入れてから醤油と料理酒と微量のカレー粉を(肉に直接)振りかける。圧が抜けたらスープの素系の調味料(鳥スープかコンソメ)を少し入れ薄味のスープくらいに味付けて、冷凍容器に4つ分くらい取り分け、残りをテキトーに集めてその日と翌日に食べるような感じ(1回に0.5リットルくらい使うものを6回分くらい取るから、できあがりで3リットルくらいなんだろうな、たぶん)。そのままスープとして使ってもいいし、飯にかければクッパもどきになるし、塩とカレー粉を入れればカレーになり、コンソメを足してショートパスタにかけてもよい。

大根のスープは意外とデリケートな料理で、スープはコンソメ系が無難、具材としてはニンジン・ベーコンなどの肉・タマネギなどが合う(冷凍のボイル大根を使うときは、水洗いして氷の塊が入らないようにしよう)。他に、煮物用昆布と大根と豚肉(と追加の野菜)を煮込む昆布大根もたまにやる(もとは沖縄料理で、塩味、醤油と砂糖と泡盛、白みそ、醬油とみりんと酒など、島によって味付けや具材が違うらしく、大煮(ウーニー)と呼ぶ地域もあるそうな:筆者がこのメニューを初めて知ったのは田無駅前にあった沖縄屋というお店で、記憶が定かでないがたしか塩味系だったと思う)。



それはコンフィなのか

表題について、筆者はどっちでもよい気がする。水鳥の肉を同種の鳥油で煮て冷やして固めた、煮凝りの油バージョン(バスク地方周辺のconfit d'oieと少し北方のconfit de canard)が有名だが、果物の砂糖漬けもコンフィといい、語源的にはコッチの方が古いのだそうな(煮詰めないand/or煮崩さない砂糖煮がcompoteで、煮詰めて煮崩す砂糖煮がconfiture(英語でいうジャム)、非加熱の砂糖漬がfruits confitsらしい)。どうやら、水鳥の油自体もコンフィというらしく、鶏肉を水鳥の油で煮た料理はpoulet en confitと呼ばれる(中華で使う鶏のチーユはなんていうのかしらね)。なお、砕いた干し肉(伝統的にはバイソンやシカ類を使ったそうな)と獣脂を練り合わせたカナダの伝統料理はペミカンと呼ばれ、シベリアのナナイ族には魚のフレークを魚油で練った携帯食もあるそうな。

ともかく、動物性油脂で油煮を作ると、冷えたときに固まる。どうやらこれ、冷凍保存と相性がよいらしく、豚バラや肩ロースなんかを(油煮ではなく普通の角煮のように)煮て冷やすと、ラードが蓋のように上部で固まるが、冷凍して電子レンジで半凍りまで解凍して油を丸ごと捨ててやると、肉の状態が比較的保たれている(ような気がする:解凍するとき、安いレンジだと底の方だけ先に温まるが、テッペンが固まったまま油を捨てると煮汁と混ざりにくい)。低温調理(80~90度が一般的だそうな)するのがコンフィのキモ(だと思う)なので、筆者はなるべく、普通の煮汁で煮るときも保温鍋を使って低温長時間の加熱をしている。

もうちょっとホンモノっぽいコンフィもどきは、鶏肉をチーユで煮れば作れるが・・・普通に唐揚げでよくない?むしろ砂肝に合うような気が数年来しているのだが、チーユ作って砂肝も料理してというのがメンドクサイので、いまだに試していない。魚の場合(液体の)オイル煮orオイル漬もあり、オイルツナはあまり家では作らないと思うが、オイルサーディンを作っている人はいる模様(オリーブオイルだけ派と他の油を混ぜる派に分かれるみたい)。まったくの余談だが、日本でイワシと呼んでいる魚(ニシン科のマイワシ、ウルメイワシ科のウルメイワシ、カタクチイワシ科のカタクチイワシなど)と英語でsardineといったときに指す魚(ニシン科のニシイワシやママカリを含み、ウルメイワシやカタクチイワシを含まない)は、共通する種(マイワシとか)もあるが重複しない部分も大きい。



ピザって何だろう

表題について、筆者も見当がつかない。粉を練った生地を平べったく焼いたものに具を乗せる料理(具乗せトーストなんかもそのひとつだよね)自体は紀元前からあるらしく、wikipediaJPの記述を鵜呑みにするなら、アケメネス朝のダレイオス1世の時代すでに「ナツメヤシをトッピングしたチーズのせパン」が食されていたらしい。ピタとかフォカッチャとかパイとかタルト(トルテ)とかキッシュとか、形態や地域や時代により、似たような料理がいろいろとある。ピザに限定しても、オリーブオイルを利かせた薄い生地を使ったローマ風、額縁(cornicione)のあるやや厚い生地を使ったミラノ風、厚くて四角い生地を使ったシチリア風など、種類が多い。

歴史やら由来やらを追求していてもラチがあかないので、家でピザを焼くときの注意点に話を移すが、具材にはあらかじめ火を通しておいた方がよい(もちろん、半生の方がうまい食材なら話は別)。とくにキノコ類や肉類は、生の状態でピザ生地に乗せて焼こうと思うと仕上がりタイミングがとても難しくなる。火を通してから冷凍した肉を使う場合なんかも、電子レンジで解凍して水気を切ってからピザに乗せて焼いた方が無難。焼くときは、小さいオーブントースターだとほぼ間違いなく焦げるし、そもそもサイズ的に窮屈すぎるので、大きいオーブンを使った方がよい。焼く温度は高めでよいというか、業務用のピザ用電気オーブンなんかだと300~350度くらい(モノによっては500度以上)が最高温度になっているので、家庭用卓上オーブン(200~250度くらいでしょ)なら、上段の棚で全開近い火力だとトントンくらいか。高温で焼くことで、チーズを軽く焦がしつつ生地の中に水分を残すことができる。ファンがついている機種(いわゆるコンベクションオーブン)ならファンも回す(アメリカ風の厚い生地だとわかんないけど、薄い生地なら対流ありの方が仕上がりがよい)。ピザストーン(オーブンの中に敷く耐熱セラミックの板)を使うと、余熱が面倒だが仕上がりがかなり違う。ピザボード(焼き上がったピザを乗せ(てピザカッターで切)るためのまな板:本当は意味が違うがピザパドルとか、本当に意味が違うがピザピールと称する製品もある)は食器としても使えるデザインのものがあって、筆者もちょっと欲しいのだが持ってはいない(切り傷に強くて、汚れが染みこまなくて、熱い食べ物を乗せても安心、という条件だと探すのが大変なのよねぇ)。

筆者は生地やソースまで自分で作る気力がないので、市販のプレーン生地(未開封で冷蔵庫なら1か月くらい持つものが多い:デルソーレのミラノ風ピザクラストなら入手性もそこそこ)とピザソース(カゴメの具だくさんピザソースは凄い発明だと思うのだが、入手性がよくないので、そのときたまたま目に付いたもの)を使っている。チーズは冷凍してあるので凍ったまま、具材はキノコと豚肉を使うことが多い。肉を炒めて、残った油でキノコを炒めて、テキトーな野菜(タマネギとか小松菜の葉とか)を生のままチョコっと乗せて焼くだけ。分量的に、痛ませるとしたらソースなので、なるべく他の料理にも使い回すようにしている(ようはトマト・にんにく・玉ねぎ・バジルにスパイス・ハーブ・調味料を加えればいいわけで、にんにくとバジルを乾物で済ませれば都度作れなくもないんだけどなぁ)。盛り付けはいつも使っている角皿で、イタリア風の4つ折が好き。

なお、ピザの大きさはけっこう微妙な分類になり、家庭用の完成品生地で多いのは19cmないし8インチ(1枚100gちょい)のもの。ピザ店以外の業務用だとなぜか9インチが多く、市販の冷凍生地(発酵済みで延ばすだけで焼ける)もこのサイズを意識したものが多い(150~160gくらい)。ピザ店の商品は10インチ(24か25cm)がMで14インチ(35か36cm)がLというのが一般的だろう。チーズの量は本当に生地と好み次第だが、目安としては重量で生地の半分~同量くらい。上で紹介したデルソーレのエスニックブレッドシリーズはサイズが少し変則的で、17・19・21cmの3サイズが設定されている(2022年末時点:クラストももちもち系でフチありの「ナポリ風」と平らで薄い「ミラノ風」があるのだが、小売店で見かけるのは圧倒的にミラノ風17cm2枚入り)。どうせ出来合いの生地に出来合いのソースを塗ってチーズを乗せて焼くだけだと考えると、いわゆるチルドピザ(冷凍でなく冷蔵で流通する焼いて食べるタイプ)でも大差はなく、使い勝手としても、さすがに単品のピザ生地よりは賞味期限が短いものの、ピザソースの足の速さを考えたら十分選択肢になる。冷凍ピザもチルドに迫る品質のものが出てきており、弱点だった生地のハンデを感じさせないものもある。チルド冷凍とも、プレーンピザに近い構成のものにトッピングを足すのが手軽だと思う。

甘味メインのピザも作れる(デザートピザって言うそうな)。筆者はフルーツ(りんごとかバナナとか、焼いても食べられるもの)とクリームチーズを組み合わせたものしか知らなかったが、カスタードクリームを塗って焼いてからトッピングするという技もあるらしい。チーズを使って具を乗せてから焼くのがピザのアイデンティティじゃないのか(チーズなしでカスタード塗って焼いてから甘くトッピングするならクーヘンかトルテじゃね?)という気がしてならないのではあるが、しかしこれはこれで理に適っている(うーむ、奥深いな、ピザ)。ジャム(元が果物の砂糖煮なんだから熱くして悪いわけじゃないんだよね、考えてみると)も意外と悪くないが、筆者はピザ生地だけ焼いて冷たいジャムをつけて食べる方が好き(同様に生地だけ焼いて、ひき肉を炒めてピザソースを回したものを付けるとタコスっぽくなる:市販のミートソースでもイケるかもしれないが試したことはない)。

生地を平べったく焼いたもの(シカゴピザとかはあんまり平べったくないけど、皿型っちゃ皿型なのでよしとしておこう)というと他に、トルティーヤ(タコスの皮:トルテと同じくラテン語の「丸いパン」が語源らしい)とかブリトー(そば粉を使うのがブリトで小麦粉を使ったものはクレプだ、とフランス人に力説されたことがあるが、世界的にどうなのか筆者は知らない)とか春巻とか、包み物のバリエーションもある(チャパーティはどっちに入るんだろう)。どうせ具を先に調理するなら包んでも乗せてもさほど手間は変わらないが、ピザほど入手性がよくないため、筆者はめったに作らない。



モツとかスジとか

下ごしらえにもいろいろなやり方があるが、塩もみして、流水でざる洗いして、水分をふき取って、ネギの青い部分と生姜と酒をまぶして30分くらい置き、汁を切って圧力鍋の高圧モードで(15~25分くらい:モツは薄い肉が多いため印象ほどは時間がかからない)蒸し、氷水で締めると、ほとんどのモツが柔らかくなる。歯ごたえや風味を残したい場合は、先に焼き網で炙ってから短い時間で蒸すとよいのだが、焼くときの油と煙が難問。油通しもあんまりやりたくないし、普通に蒸すのがラクだと思う。部位と鮮度によっては、生姜水に漬けてから茹でこぼしや熱湯洗いするのもアリ。ホルモン焼きなどで生のモツを使いたい場合は、塩もみして、流水でざる洗いして、ボウルに入れ水を細ーーーく注ぎながら30分くらい晒し、香味野菜と調味料をもみこんで味をつけ、数時間おいて余分な汁を捨てる。

話がぶっ飛ぶが、モツ煮を作るときはゴボウを入れることが多いと思う。ゴボウを酢水に晒すのはアク抜きではなく色止め(色留め)と酸化防止である(アク抜きも同時に行うが、それだけが目的なら普通の水でよい)。ゴボウが黒くなるのは、タンニン、フェノール、クロロゲン酸などがポリフェノールオキシダーゼという酵素に酸化されるためで、pHを下げてこの酵素の活性を落としてやる(すりおろした果実やジュースなど、食材によっては食塩を使うこともある)。酢水に晒すとポリフェノールが流出するから灰汁抜きしない方がよいという説明を目にすることがあるが、ゴボウの水溶性成分は煮込むとどうせ大方が壊れるし、すでに酸化されたポリフェノールを摂取してもあまり嬉しいことはなさそうな気がするので、普通に酢水に晒すのがよいと思う(そんなにポリフェノールが好きならナフタレンでも置換すりゃいいのに)。

牛スジは色で(というのが正確な分類なのかどうか筆者は知らないが)3つに大別される。黄色いものは硬く、白いものは柔らかく、銀色のものは中間くらいで、形を留めて煮込むなら銀、煮崩すなら白、長時間煮出してダシにするなら黄が使いやすい。黄色いスジはゼラチン質が多く、蒸すとベタベタしがちなので、洗って、生姜水に漬け、茹でこぼして、氷水で締めてから圧力鍋で(蒸さずに)煮るのがいいと思う。茹でこぼすときは、ネギの青いところと生姜に加え八角も(控えめに)使うと、風味の強さに負けにくくなる。後で調べたらどうやら、肉混じりのものは肉を整形した端(いわゆる肉スジないし引きスジ)、黄色と銀色は背中(リブとかロースとか周辺)の筋で、黄色い方が鬼スジとか板筋と呼ばれるもの(靭帯らしい)、銀色のはロース周辺の引きスジでローススジとも呼ばれるようだ。白いのはアキレス腱(いわゆる牛スジ)、おでんとかに串でよく入っているのはメンブレン(横隔膜の一部)で、一般にはスジと総称してしまうが、ちょっと種類が違うそうな。黄色いスジは、鶏でいうモミジみたいな扱いで、スープにクセをつけるくらいでしか使わないものだと思っていたが、直接食べるレシピもあるらしい(中華にも牛板筋ってのがあるんだってさ)。



スパゲティ3種

調理済み状態で円断面のロングパスタ(25cmくらい)、というと話が面倒だが、ようするにスパゲティである。やや狭義には2~2.4mmくらいのスパゲットーニ(vermicelli(ヴェルミッチェリ)とも呼ばれるが、もしかすると微妙にレンジが違うのかも知れず、1.9~2.1mmくらいを指すことが多い、と思う:まあイタリア人のやることなので、地域や時代や主義主張で呼び方が変わるのは日常茶飯事、orati、minutelli、fermentini、pancardelleと別名も豊富だし、アメリカ基準のvermicelli(バーミセリ)なんかはなぜかフェデリーニのことを指す)、1.8~2mmくらいのスパゲッティ、1.6~1.8mmくらいのスパゲッティーニ(thin spaghettiとも)くらいまでが範囲に入るか。ここでは、1.4mm前後のフェデリーニも「スパゲティ」に含めて話を進める。なお上記以外のロングパスタには、楕円断面のリングイネ(リングイーネ)、平断面のフェットチーネ、中空断面のブカティーニやブカトーニ、細すぎて断面がよくわからないカペリーニ(本当にメンドクサイが、フェデリーニのことをCapellineと呼ぶ人たちは、カペリーニのことをcapelli d'angeloと呼ぶ:英語でangel hairとも)などがある。乾麺100gが茹で上がり250gくらいで、米よりは少し膨れる(以下のレシピでは乾麺換算で表記:ついでにショートパスタの場合、フジッリなんかで乾麺1kgが3Lくらい)。

イタリアでは(とイタリア人が言った場合、たいてい「自分の地元(ないし仲間内)では」という意味で、中国人が「中国では」と言っているときと同じくらい信用ならないのではあるが)ロングパスタはPasta asciutta(汁なしパスタ:日本で言うミートソースみたいなものも含む)に使い、Minestora(汁物)に入れるのはたいていショートパスタ(国内消費はショートパスタの方が多く、8割近いそうな)。ロングパスタを使ったいわゆるスープスパゲティは、ギリシャや日本が中心のよう。統計年度にもよるが、パスタをよく食べる国は、イタリア、チュニジア、アルゼンチン、スイス、ベネズエラ、ギリシャあたり、アメリカ、イラン、UAE、サウジ、オーストラリア、中国なんかでもそれなりに食べられるらしい。生産国のデータはあまり見つからなかったが、やはりイタリアがトップで、トルコやアメリカやギリシャもけっこう多いらしい。デュラム小麦は高温乾燥を好むので地中海性気候の地域や中近東が中心産地(カナダも比較的大きな産地で、調べてみたらサスカチュワン州が大部分を占めるらしい:https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/h22/pdf/usnz22.pdf)。

茹でるときの塩の量についていろいろなことが言われるが、麺にコシを出す目的で使うなら水1Lに塩25gくらい必要、単なる下味なら5~10gくらいが普通だと思う。後から調べてみたらちゃんと研究してる人ってのはいるもので、「ゆで水に添加する食塩の濃度がスパゲティの硬さに及ぼす影響」という論文に「20% NaClでグルテンの水分含量は有意に低値を示したが,2%以下のNaCl添加では水分含量に有意な差はみられなかった(略)ゆで水に通常使用する1%のNaCl 添加では,スパゲティの硬さには影響しない」( 村上 恵、日本家政学会誌 66(3), 120-128, 2015)とあった。実用上は、ソース(たいてい市販品を使うと思う)の調整というか、ソースがクドい味なら麺に下味をつけてソースを少なめに使い、薄い味なら麺には塩気を入れず多めに使えばよい。なおソースの塩分については、市販品だと乾麺100gに対して食塩2~2.5gくらいが普通。

フランス料理だと麺の茹上がりに差し水をしてからザルに揚げ熱湯洗いするらしいが、筆者はイタリア風に差し水なしでアルデンテ(皿に盛った時点で芯が微妙に残る程度:正確には「歯ごたえがある」食感を指す言葉で茹で加減を直接示すものではないし、地域差や個人差も大きく「バリカタ」レベルから「ふやけてはいない」レベルまでいろいろ、乾麺について言うのか生麺について言うのかでも意味合いが変わる)に仕上げる方が好き。

以下旧レシピから転載。

ペペロンチーノ

2人前。材料は、麺250g、にんにく(生が望ましい)、オリーブオイル1/2カップ、赤唐辛子(できればホール)、その他具材(きのこやベーコンなど)。麺は多少細め(1.5mmくらい)のものを。ソースに加える塩は、麺を茹でるお湯の塩加減によって調整する。

  1. フライパンにスライスしたにんにく(なければ乾燥のものを水で戻す)とオリーブオイルを入れ、弱火のまま温め、泡が出てくるようになったらトロ火にする(泡は出るが色はつかないくらい)。
  2. きのこやベーコンを入れる場合は麺をゆで始める前に(上のガーリックオイルとは別に)炒めておく。炒めた油も捨てない。
  3. スパゲティ250gを茹でる。
  4. フライパンの火を弱め、唐辛子を入れ、焦げない範囲で泡が出る火力のまま、香りを出す。
  5. 具材(炒めたものは油ごと)と塩を入れ、汁気に応じて火を強める(パセリやバジルを入れるときもここで混ぜ、にんにくや唐辛子を取り出す場合もこのタイミング)。
  6. 麺の茹で汁を1/4カップくらい加え、強火にして軽く混ぜる。
  7. 茹であがった麺の汁気を切り、鍋を軽く揺すってから入れ、強火のまま混ぜる。
  8. 味を見て塩を足し、盛り付ける。
  9. エキストラバージンオリーブオイルと、食卓用の塩やスパイス類を添えて出す(いづれも分量外)。
実はこれだけ新レシピ。汁気のあるもの(酒蒸しにした貝類とか)を入れる場合は鍋に入れる茹で汁を少なめにして、具材の汁に薄力粉(片栗でもいいのかもしれないが試したことはない)をサラっと振って、混ぜてから鍋に入れる。スタンダードなレシピと比べると油が多めで茹で汁が少なめ(合計量は大差ない)だと思う。

カルボナーラ(気合を入れて作る)

6人前。材料はスパゲティ750g、きのこ、ベーコン、オリーブオイル1.5カップ、卵黄6個、卵白3個、パルメザンチーズ半カップ、牛乳1/4カップ。スパゲッティは多少太め(1.7mmくらい)のものを。

  1. フライパンでベーコンを炒め、皿に取っておく。千切りでも大きめでも可。
  2. フライパンを軽く洗い、オリーブオイルもしくはバターできのこを炒め、塩・コショウで味をつける(多少濃いめで構わない)。
  3. スパゲティ750gを茹でる。
  4. 深くて大きなボウルで卵黄>塩>オリーブ油>卵白>牛乳>チーズ>コショウの順によく混ぜ合わせ、好みで軽く湯せんする(これがソースになる)。
  5. 茹であがった麺とベーコンときのこをボウルに入れてよく混ぜる。麺の水分は多少残しておく。
  6. 味を見ながら塩・コショウを足す。
卵白と卵黄のバランスは好みで適宜調整する(卵黄だけでも作れるし、1:1くらいまでなら卵白を増やしても大丈夫)。余った卵白はスープなどに入れる。

追記:ベーコンは厚めに切って斜め半分に割り、直角三角形に近い台形を作るといいと思う。
追記:卵黄とチーズをボウルに混ぜておき、具材をオリーブオイルで煮詰め、具材の鍋に茹でた麺を入れ、和えながら味付け、鍋の中身をボウルに混ぜてあえるのがいいようだ。筆者のレシピも麺を炒めない分ラクだけど。

カルボナーラ(軽く作る)

2人前。材料はスパゲティ250g、オリーブオイル半カップ、卵黄2個、卵白1個。

  1. スパゲティ250gを茹でる。
  2. ボウルに卵黄>塩>オリーブ油>コショウの順に加えながらよく混ぜる。
  3. 卵白と茹であがった麺をボウルに入れてよく混ぜる。
  4. 味を見ながら塩とコショウを足す。
追記:麺を茹でている間どうせヒマなので、他に作るものがないなら、気合を入れて作った方がいい気がする。

オマケ(麺)

90年代に輸入物のスパゲティといえばブイトーニだった(よね?)が、2008年に旧体制での生産を終了したらしく、店で見かけることも(まるでなくなってはいないが)減った。代わってシェアを伸ばしたのがバリラで、テフロンダイス(つるつる麺)のイタリアスパゲティとしては、ハイレベルな普通さとそこそこの安さを両立している。2017年に国内扱いが三菱食品になり入手性がよくなった(がサイズ違いができて、No5なんかは1.7mm、1.78mm、1.8mmとバリエーションがある:どーもイタリアではロングパスタのサイズをmm単位で把握するのが一般的でないみたいで、直輸入品を買うとサイズ表記がないものもある)。ブロンズダイス(ざらざら麺)の製品は種類が少なく、日本でもすっかり老舗のディチェコ(国内扱いが日清フーズで入手性もよい)がほぼ唯一の安定した選択肢。業務用が5kg売りでなく500g*12袋という謎パッケージ(昔は5kgもあったと思ったけど、2020年にこの記事を書くために調べたらラインナップになかった:どうも日清フーズが国内扱いしていないだけで、他の経路なら3kg袋も5kg袋もある模様)で、大量に買っても割高なのだが、なぜか1kg袋が安売りになっていることが多く、機会を選んで買えばバリラより少し高いくらいだったりする。ブロンズかテフロンかというのは好みの問題で、筆者は、ロングパスタならのびにくいテフロン、ショートパスタならソースをはじきにくいブロンズが使いやすいとは思うが、ブカティーニ(クドいソースとブロンズダイスの麺を合わせるのが醍醐味だと思う)以外ならどっちもアリだと思う。

有名ドコロのメーカーとしては、コストパフォーマンスと入手性でブッちぎるバリラ、扱いやすさ優先で業務用っぽいディヴェッラ、風味にクセ(以前とは違うと思うけど、今のが悪いとも感じない)のあるブイトーニ、ちょっと高級路線のアネージ(国内扱いはピエトロ)あたりがテフロンの大手。ブロンズはデイチェコが鉄板チョイスで、amazonがやたら押している老舗のラ・モリサーナなんかもブロンズテフロン両方(No.28なんかは、ブロンズダイスのフジッリとしては安価で貴重:500gで400円切るくらい)を扱っている。筆者は、買うたびに値段を見てお買い得感があるものを選んでいる(2020年現在、アマゾンJPでスパゲッティを5kg買うと、バリラが2000円弱、モリサーナが2500円前後、デイチェコが3000~3500円だが1kg袋の方が安いことも多い:キロ600円なら、筆者の感覚ではギリギリで「買いやすい」範囲内)。値段の話で言うと、特売でないときの1kg売りで、昭和やセルバが400円くらい、シジシージャパン(CGC)のアントニオデニーロで300円くらいだが、価格最優先で探せばキロ200円くらいのモノも地域によっては見つかる(筆者はバリラで妥協したいけど)。アネージは2000円/3kgくらいで、デイチェコより微妙に高い。

ショートパスタはロングパスタでいうバリラのような安定チョイスに欠けるように思う。Amazonで買う場合、ラティーノのフィシリ(後で紹介するMAKVELというメーカー)がキロ500円を切っているが風味に欠け、オーマイのエクセレントフジリは500円をちょい上回り無難な感じ、ちょっと頑張るならブイトーニのエリーケ(No.116)、バリラのフジリ(n.98)、ラ・モリサーナのフジッリ・ブロンズ(No28)といったところ。ブイトーニもペンネリガーテ(No.311)はけっこう安いんだけど。オリーブオイルはカルボネールとガルシアが老舗で、アマゾンで5L入りを買うとエキストラバージンでも5000円ちょっと(ガルシアの方がパッケージが多く、1Lや2Lのものがかなり安いことがある:カルボネールは缶なので、場所によっては使い勝手が悪いかも)。日清オイリオが輸入販売しているロリエーラも、エキストラバージンの1Lボトルが800円ちょっとで売られていることがある。

イタリア産の乾麺(日本版パッケージでないもの)には「Cottura」(デイチェコの表記がこれ)とか「Tempi di cottura」(バリラの表記がこれ)という表示があり、直訳すると「調理」ないし「調理時間」つまり茹で時間を示しているのだが、これに従って茹でるといわゆる「ben cotti」(よく茹で)の状態になる(ショートパスタの場合は硬さが残ると食べにくいので、ほぼこの通りの時間でよいことが多い)。デイチェコなんかは別に「Al dente」の時間も表示しているが、調理時間は茹でる人が調整するのが前提なのだろう。アネージは「cottura al dente」を表示しているが、その通りに茹でるとben cottiかつal denteという不思議な仕上がりになる。筆者の勝手な感覚だが、バリラやアネージは麺の輪郭を感じるタイプ、デイチェコやブイトーニは麺の中心(というか芯)を感じるタイプのアルデンテになりやすいと思う。

2020年追記:ロックダウン騒ぎでヨーロッパ産の麺が入手困難になったのを機に、今まで買ったことがなかった麺を試している。以下断りがない限りテフロンダイス。ALDA(エジプトの新興メーカーらしく、公式ウェブサイト(https://uniquewayfood.com/)に2018年創業だと書いてあった:国内取り扱いは朝日商事)の青袋1kgは1.7mm。食感がよく「芯を感じる」タイプのアルデンテに仕上げやすい。バリラと同じ値段だったら筆者はそう頻繁には買わないが、たまにこっちにしたくなることはありそう。PROSSIMO(トルコのメーカーらしいが詳細不明、国内取り扱いは加藤産業)の緑袋300gは、1.6mmでギリギリ及第点くらいの品質。モノがどうこうというより、1.6mm300gというパッケージで選択肢に入ることがあるかも、というポジション(ショートパスタでは早茹で3分のミニフジッリも200g袋で出している)。SANREMO(エジプトのメーカーらしいが詳細不明、国内取り扱いは朝日商事:オーストラリアにSan Remoというパスタメーカーがありパッケージも似ているのだが・・・なんか無関係っぽい感じに見える)の赤袋500gは1.7mm。食感はボソっとしていていまひとつなのだが、麺に「謎のうまみ」がある(なんだろうなぁ、でも間違いなく麺自体がうまいよなぁ、これ)。欠点はあるがソースによっては面白い選択。MARRE(トルコの会社で、WiXだとかいうツールを使った恐ろしく見づらい公式フェブサイト(https://190367.wixsite.com/marre)によると、食用油・ドライフルーツ・ジュース類・ケバブ類・パスタ類などを扱っているようだ:国内取り扱いはマルレ)の青袋500gは、風味が弱く食感もいまひとつだが、冷めたときにマズくなりにくい。だからといって冷たいパスタに合いそうかというと疑問だが、暖かく料理したときはご利益がある。明らかに芯がある状態から芯を感じなくなるまでの幅が狭い(微妙に芯を残す茹で方にしにくい)ように感じた。EURIMAC(ショートパスタや筒系パスタも扱うギリシャのメーカーで、とっても重い公式サイト(https://www.eurimac.gr/)によると1939年創業のMAKVELという会社が前身だそうな:国内取り扱いは富永貿易)のLatino#6青袋1kgは1.65mmと微妙な太さ。これも風味が弱くMARREと似た感じ(輪郭を感じるタイプのアルデンテになる)。パッケージには茹で時間9分とあるが、公式サイトによると7~9だそうで、実際には7分で食べごろになる。Bengiはたまに特売で見かける激安麺で、トルコのメーカーらしい。アントニオデニーロよりもさらに安価で、しかも取り立ててマズくはないという凄い商品(茹で時間がやけに短い気がする)。橋谷株式会社という札幌の会社(本店が札幌で本社が神戸らしい)が輸入元になっており、もしかしたら北海道ローカルの商品かもしれない。



丼物

割り下については、砂糖:醤油:酒:味醂で1:2:2:2が基本になる。さらに同量(砂糖が大匙1+他が大匙2なら1カップ:これで3~4人前)くらいの出汁を加えると丼のタレになり、酒を省いて味醂を1.5倍にすると甘口のタレになる。味醂を使わない場合、砂糖:醤油:酒で2:3:6くらい(1:1:2だと少し甘口、という認識でOK:砂糖小匙4+醤油大匙2+酒大匙4+出汁1カップで上記と同じくらいの分量)。豚丼と牛丼に関しては、肉は焼いた方がウマイと思う。タレは煮含めるのではなく、下ごしらえの段階で肉に片栗をまぶしておき、焼き色がついたら(家庭用コンロでは油をふき取って)タレを絡める感じ。冷凍玉ねぎを使ったときなど汁が出る場合はカタクリで固めることもあるのだが、中華風に指を使って溶くか、いっそのこと火を止めてから粉を直接振りかけるなどして、水分が増えないようにカタクリを混ぜた方がよい。欲しい彩りや香りによって、三葉・水菜・白髪葱なんかを添えると、メインの具がぐっと引き立つ(クレソンや香菜を使うメニューもある)。

昔厨房で働いていた頃、メニューに豚キムチ炒めがあって、ある先輩がそれを丼にしているのを真似したら旨かった、というのをなんとなく思い出した。記憶が曖昧だが当時作っていたのはおそらく、豚バラ(これは間違いない)>タマネギ(多分)>ニラ(まかないのときだけ勝手に入れてたのかも)>白菜キムチ(あまり酸味がないタイプ)と順に炒めて醤油をきかせて胡麻油で仕上げ、生の卵黄を乗せるような感じだったか。ポイントは、豚はバラ、タマネギとニラは少なめ、キムチは肉の倍量くらい、もやしは入れない、といったところ。下味が重要だとする解説を多く目にするが、筆者が仕事で作っていたメニューは、たしかキムチと仕上げの醤油とごま油だけだったような記憶がある(まあキムチの味の濃さによるのだろうが、肉が厚切りならニラを入れる直前に醤油を持っていけばよさそう)。ただしこのメニュー、店で作っていた頃にはまったく気にならなかったが、市販のパック入りキムチを使うと味のバランスが難しい。市販のキムチはかなり塩辛いし、過剰に甘いものも多い(さっき軽く調べてみたら、汁を全部含んだ数字で、100gあたりの食塩相当量が2.2~3.3gくらい、典型的には2.5~3.1gくらいのよう)。筆者が試した限り、ピックルスの「ご飯がススム辛口」がよさそうだったが、それでも甘いし辛くないし酸味が強いし塩辛い(業務用の四半分切り白菜キムチも、今は通販で買えるみたいだけど、そんなに大量に買ってもねぇ)。だいたいの目安として、野菜1:肉3:キムチ6:飯12(米3合≒飯1kgに対して、タマネギとニラ80g+肉250g+キムチ500g、おそらく4~5人前)とすると醤油をちょっと利かせてちょうどいいくらいだろうか(水分と酸味をある程度飛ばした方がウマいので、上の数字だけ見たよりも濃いめになる)。

中華屋で丼物といったら、まあ中華丼とか天津丼とかの燴飯だろうが、これは日本式の丼に入れるより、もう少し浅く皿っぽい器を使った方が合う(中華飯とか天津飯と呼んだ方が、筆者にはしっくりくる)。中華料理に滑蛋(ワータン・ワッタン・ファーダンなどいろいろなカナが当てられるが、北京語だとワーダンに近い音:卵液に水溶き片栗粉を混ぜてから焼いたり、たんに半熟の卵焼きを指すこともあるそうな)という技術があり、少量のスープに弱くとろみをつけてから卵液(できれば卵白多め)を細く回し入れると、ユルめの卵とじみたいな感じになって、丼物のアタマにちょうどいい。まかない料理ではホイコロ飯とかチンジャオ飯なんかもあるが、なんでも飯に乗っけて食べていると古株の先輩に「少しは前向きな工夫をしろ」と咎められる(おっしゃる通り)。マーボー丼は日本人しか作らないだろうという先入観を根拠なく持っていたのだが、ネットで調べたら中国でも「麻婆豆腐燴飯」なるものがあるらしく、日本のカレーライスみたいな盛り付け方のものがほとんどだった(日本のコンビニチェーンが弁当として売ってるものもあるようで、そちらは日本同様深めの器で上かけタイプ)。炸醤(マーボー系の料理やジャージャーメンに使う肉)やガパオ(ホーリーバジル入りの炒め物:鶏肉が代表的だが肉に限らない)やタコスの具(沖縄料理のタコライス)など、そぼろ系のアタマをご飯に乗せるメニューもけっこうあり、ルオック(北ベトナムの肉田麩:南部ではチャーポンと呼ばれる)なんかはふりかけとの境界が曖昧。卵かけご飯も解釈によっては生卵丼だが、ユルい目玉焼きもそぼろ系の丼の追加トッピングに合うし、上で紹介したように生の卵黄だけ使うのも手かもしれない。

揚げ物の丼(カツ丼とか天丼とか、筆者が昔よく行った弁当屋さんには唐揚丼なんていうメニューもあった:唐揚弁当と中身は一緒だが、醤油ベースのタレがかかっている)は、家で作るにはちょっとかったるい。そもそも揚げ物自体が、ある程度の量と頻度で作らないと(費用的にも労力的にも仕上がり的にも)コストパフォーマンスを上げにくい調理法だと思う。ソッチ系は外食のときに食べることにして、焼くか炒めるか、せいぜいオイルスプレーしてオーブンで焼くくらいでお茶を濁したいというのが筆者の意見。・・・というだけではナンだし、他で揚げ物の話題を取り上げなかったのでついでに触れておこう。コロッケのように衣のあるものや、魚介類など水分の多いものは、熱すぎる油に入れると(小規模な)水蒸気爆発を起こすことがある。しかし、温度が低すぎると衣がタレやすくなる(わりと常識的なハナシで、サンマルコのウェブサイトなんかにも「油が少なかったり、温度が低いと衣がとけだして、中具があふれる場合があります」なんて注意書きがある:http://www.sanmaruko.co.jp/howtofry/)。また冷凍してあるものは半解凍すると破裂しにくくなるが、上で引いたサンマルコの製品のように「冷凍の状態から調理することを前提に開発しておりますので、必ず解凍せずに」と明記してあるものもあるので、パッケージの説明を確認しなければならない。



なんとなくオムレツ

中華風卵焼きの作り方はボトムプロコーナーで紹介したが、中華鍋やジャーレンが必要なのでけっこうかったるい。洋風のオムレツの方が手軽に作れると思う。プレーンオムレツの場合、卵2個を溶き、できれば濾して、塩・コショウ。バターを10gくらい(焦がさずに)溶かして卵液を入れ、キメが細かくなるように混ぜ、ある程度硬さを出して手前から奥に集め、一番奥を折り返しフタにして、閉じたら奥から手前に返し、固めて盛り付ける。卵液に牛乳は入れず、塩を入れて少し馴染ませてから水を少量加える、というレシピもよく目にするが、筆者は塩と胡椒のみで下味をつけた後すぐ焼いてしまう。

ソースはいろいろあり得る。真面目にやるなら赤ワイン大匙2を煮詰めてからケチャップ大匙3を足して煮立てるといい感じになるが、そこまでやるならケチャップ(トマト・タマネギ+にんにく・セロリ+酢・砂糖・塩が基本)から作った方が仕上がりの自由度が高いかもしれない。手を抜くなら単にケチャップをかけるだけでも悪くはないし、野菜やキノコを炒めてからトマト類を足してもよいし、ホワイトソース(クリームソース)やタルタルソースを使う人もいるようだ。カゴメが推している焼きケチャップ(「油を熱したフライパンにトマトケチャップを入れ、2/3くらいの量になるまで水分を飛ばすように中火でしっかりと焼く。」:https://www.kagome.co.jp/campaign/yakiketchup/)を使う手もあるのだが、かなり甘みが勝った仕上がりになるので好みが分かれると思う。オムレツ用あるいはオムライス用を名乗る既製品のソースも市販されている。

簡易なパターンでやればそれほど大きな手間はかからないメニューだが、なにしろ卵を焼いただけなだけあって、単品だと(おもにビジュアル面で)さみしい感じになってしまいがちで、付け合わせが難しい。オムレツといえばなんとなくサラダみたいなイメージはあり、生野菜の用意があるなら話が早いし、パセリだけでも(もしトマトソースでないならミニトマトなんかも)添えてやればずいぶん彩りがよくなる。魚は意外と合うというか、煮魚や切り身焼きなら日本風の卵焼きの方がしっくりくるが、目刺しとか焼きシシャモみたいな姿焼き系の魚ならちょっと面白い。スープはフライドオニオン入りのコンソメスープが断然合うと思う。

イングリッシュブレックファスト(フライドエッグが普通だと思っていたが、スクランブルエッグやポーチドエッグを好む人もけっこういるそうな)風に、肉系(ベーコンとかソーセージとか)、マッシュルーム、豆(ベイクドビーンズ)、じゃがいも、焼きトマトあたりと合わせるのも面白そうだが、朝食にするならあまり凝ったことはしたくない(筆者は)ので、ソーセージあたりで手を打ちたい・・・と考えると、じゃあフライドエッグ(目玉焼き)でいいんじゃないのという話になってしまいとても悩ましい。フライアップ(フル・イングリッシュ・ブレックファストの俗称:焼き物づくし的なイメージ)しないからこそのオムレツと考えるなら、やっぱりサラダなのだろうか。

まあクドクドと考えてはみたものの、卵でも焼いて食べますかと思ったときになんとなく、フライドエッグやスクランブルエッグではなくオムレツにしたいことはたまにあり、焼き上がってしまってから微妙に悩みつつも「まあいいか」で流してしまう食べ方で、筆者はそれほど困っていない。

心底どうでもいい余談:イギリス人やアメリカ人が(フランス人やイタリア人、キリシャ人やトルコ人ならともかく)特定の調理法をどう呼んでいようと、我々日本人には関わりが薄いことではあるのだが、上でも少し触れた「フライドエッグ」は、目玉焼きのことを指すのが普通で「オムレツ」(も油を引いたフライパンで卵を「fry」するのに違いはないはずだが)を含まない。また油を使った加熱調理は一般に「fry」ではあるものの、イギリス人が普通にfryと言われて思い浮かべるようなfry(例えば目玉焼きとか)と大きく異なる調理法については、油を引いた鍋で混ぜながら加熱調理するのをstir-fry(混ぜフライ)、いわゆる揚げ物を「deep-fry」(油に沈めるフライ)などと、接頭辞を付けて言う。



芋ってけっこう悩むよね

ジャガイモとかサツマイモとかカボチャとか、筆者は自分ではめったに買わないのだが、もらうことはたまにあって、使い道に悩むことが多い。どれもとりあえずで蒸してしまえばシンプルに食べられるが、オーブンがあるなら蒸した後に軽く焼き目をつけると香りが出る。蒸し時間は、蒸篭や蒸し器だと下のお湯が沸騰しているところに入れて中サイズ皮付き丸ままのジャガイモで20分ちょい(小さめのものなら20分くらい)、圧力鍋だと高圧モードで加圧から15分くらい、皮つきで水から茹でるときは沸騰から20分ちょい、切って茹でる場合で沸騰から5~10分くらい、大きめのものを丸ごとオーブンで焼く(いわゆるジャケットポテトにする)ときは180~200度で1時間ちょい、電子レンジで下ごしらえするときは濡らしてラップして500Wで3~6分、というのがだいたいの目安(サイズや水分量によって大きく時間が変わるので、あくまで参考程度)。

ジャガイモ料理といえばドイツ、ジャガイモのことをドイツ語でkartoffelnという。bratkartoffelnは直訳すると「焼き芋」で、ようするにフライパンで調理するタイプのジャガイモ料理を指す(いわゆるジャーマンポテトもこの仲間)。似ているものにofenkartoffelnがあり、こちらは直訳すると「芋のオーブン焼き」で、イギリス人がジャケットポテトと呼んでいるようなものからほとんどポテトフライと言ってよさそうなものまで、いろいろな種類がある(ディープフライするフライドポテトはpommes fritesと言うんだそうな)。筆者もそんなに種類を試したわけではないが、レンジか蒸しで下ごしらえして、バターを使ってフライパンで炒めるのが、手軽さと満足感のバランスがもっともよさそうに思っている(ベーコンとかキノコとかタマネギとかソーセージとか入れる場合は、別で炒めてから合わせるのが無難)。

サツマイモも電子レンジ調理できるのだが、燃えやすい(とくに細くなった部分が燃えやすいので、両端を切り落としておくとよい)。濡らしたキッチンペーパーに包んでラップをかける手もあるが蒸し系の仕上がりになるため、だったら最初から蒸しでいいかなという気がしないでもない。焼きたいならアルミホイルに包んでオーブンだろうか。カボチャは揚げた方が筆者好みなのだが・・・メンドクサイので、レンジで軽く加熱してオーブンが妥協ラインか。



意外と奥深いかまぼこ

我々雑食の哺乳類にとって、動物性の食べ物が「ごちそう」であることは否定できない。が、オッサンからジーサンに近づく年代になると、肉や獣脂をガバガバ食べるのはだんだんとシンドくなってくる。とすると、食材としてエビや魚肉の地位が上がってくるのは自然の成り行きと言えないだろうか、いやきっとそうに違いない。でその魚肉なのだが、いわゆる焼魚や刺身なんかも食べ方のひとつではあるのだが、常食するにはちょっと敷居が高い。そこで蒲鉾や竹輪の類が重要度を増してくるのは当然である。前置きが長くなったが、オッサンにとってカマボコやチクワが重要な食材であることには、議論の余地がない(ということにしておいて欲しい)。幸いなことに、日本は魚料理大国であり、無論カマボコ類についても無数の選択肢がある。

北海道の「天ぷら」は、小さめのさつま揚げといった見た目で、一般家庭では魚焼きグリルで軽く焼き目を付け醤油をたらすことが多い。網走のご当地かまぼこ「ほたてニポポ」(ニポポはトーテムに似たアイヌの木彫り民芸品の名前)のように、ホタテを使った蒸し(ないし焼き)蒲鉾もある。カニカマも近年(令和に入ってから?)はけっこういいものが出回っているが、本物の焼きタラバをを食べたことがある身としては、どうしても代用品的なイメージが払拭できない。刺身にできる鮮度のものをあえて半生に焼く贅沢は、ほかに代えがたいものがある。

筆者は東北の食文化に疎いが、笹かまぼこ(ヒラメがオリジナルらしい)くらいなら、もちろん聞いたことはある。関東に下って群馬にはミンチ天という衣付きの揚げかまぼこがあり、馬群(まごおり)というメーカーが全国展開をしている。広島のがんすや鳥取の赤天も雰囲気は似ている。北陸の巻きかまぼこは、見た目に面白そうだが流通が少なく、筆者も試す機会に恵まれずにいる。関西では蒸してから焼いた蒸し焼きかまぼこが有名だが、蒸さずに焼いた焼通しかまぼこもあり、どちらも全国的には流通が少ない。板付きかまぼこは兵庫県が発祥だという解説も目にした。愛媛県でじゃこ天とか皮天と呼ばれているものは全国的にも知名度があり、もとは伊達藩から連れて来られた蒲鉾職人の発明だとする説があるそうな(じゃこ天は雑魚天の転訛なのだとか)。九州では鹿児島のさつま揚げがやはり有名だが、佐賀のごぼうてん(近隣で「ごぼ天」と呼ばれる牛蒡の天ぷら的なメニューとは別物:野菜天と称するタマネギなどが入ったものもある)や福岡近隣の丸天(薄く丸く大きい揚げかまぼこ:形が違うだけの角天は比較的マイナー)なんかもある。沖縄のチキアギーは薩摩揚の原型になったのだという。

とまあご当地ごとにいろいろなかまぼこがあるわけだが、実際のところ、買うときに気にするのは揚げか蒸しか焼きかくらいで、中身まではそうそうじっくり確認しないことが多いと思う。筆者はカマボコを(フライパンか片手鍋で)温めて食べることが多く、しかし汁物にはめったに入れないし、焼きやオーブン加熱はメンドクサイと感じるので、買うのはもっぱら揚げかまぼこ。これを少量のごま油で焼いて、醤油を付けて食べることが多い。野菜と合わせて炒め煮のような食べ方もできるし、焼いてから海苔巻きにしてもイケるので、日本のオッサンの自炊レパートリーとしてけっこう重宝するんじゃないかと思う。



ローテーション(オマケ1)

料理が趣味だという人であっても、毎日の食事の用意を常に楽しくこなしているのは一握りなのではないだろうか。できるだけ楽をして、飽きずに、まずまず文句ない食事にありつくためのローテーションを考えてみたい。

ローテーションは1週間単位を基本としよう。ほとんどの人が曜日を基準に生活しているわけだからこれはまあ妥当なところ。朝はテキトーに何か見繕うことにしてここでは触れない。昼に弁当を作りたい人も別途悩んでもらうとして、1日1回の夕飯を対象にする。平日働いていて毎土日が休みで祝日は全部仕事という、まあ少し変わった生活パターンを都合よく想定して進めよう。

オッサンはやりはじめに過剰に熱くなる傾向があるが、慣れてきてしまえば、凝ったものを作るのなんて週に1回あれば御の字というのがたいていのパターンだと思われる。これを肯定するところから始めよう。上の前提なら頑張るのは週に1回週末だけでよいことにしてしまう。じゃあ土曜か日曜かとなったときに、成り行きで日曜日になってしまうことも多いと思われるが、やるべきことを土曜日にこなしてしまえばローテの組みやすさが断然違う。ぜひ土曜日は家事の日にして、週に1度の機会なので、料理だけでなく掃除や洗濯もしっかり片付けてしまおう。

ということで、土曜日は「他の家事をやっつけながら比較的長時間かかる作業をこなせる日」ということになる。早めに買い物を済ませて、スープ取りとか香味油作りとか、忙しくはないが時間がかかるものをここでやってしまうのが合理的だろう。日曜日を幸せな休日にするためにも頑張ろう。日曜日は土曜日に用意したモノを使ってパーっとやる。月曜日に余りものをやっつけたら、ここまでが表ローテになる。日曜日はあまり手間をかけずに過ごしたいし、土曜日は仕込みの余り物(冷凍し切れなかった食材とか)を組み合わせて何かデッチ上げられればスムーズだと思う。気の利いたローテにするために、ポイントになるのは月曜日のやり繰りじゃないかと思う。

火曜日は生鮮品を買いに出たい。個人経営の食料品店を眺めて回るのにちょうどいいタイミングだと思う。野菜を買ってきて、保存してあった肉やきのこや魚介と煮込んで、1日目はポトフ風に汁を切って、2日目は具を足したり味を変えたり、3日目は冷凍しておいた分を戻してカレーにしてしまうとか、1日目は柔らかい部分を炒めに、2日目は硬い部分をスープに、3日目はやっぱりカレーにしてしまうとか、そんな感じで乗り切ろう。大丈夫、煮てカレー粉さえ入れれば、たいていのものはカレーにできる。木曜日はカレーの日ということにしてもいいし、それでは飽きるというなら味噌とかトマトペーストとか乳製品とか、カレー粉じゃないもので変化をつけても、もちろん両方(同時または順に)使ってもいい。もう少し真面目にやるなら、出汁(というか半完成のスープ)を冷凍しておいて、テキトーなものを炒めてはあんかけ、炒めてはスープ、炒めてはカレー、といった感じで都度軽く手を加えてもよいし、両方を忙しさ加減で使い分けてもよいだろう。

ポトフのコンセプト(煮込みを作って具材とスープに分ける:汁は焦げない程度に少なめが無難)は、使い回し料理を考える際にとても便利だが、スープにも鮮度があることには注意したい。スープの味が悪くなるのはたいてい(とくに油脂の)酸化、でなければ煮すぎた具材からのえぐ味が原因だろう(ダシはある程度の保存が利くがスープは保存しにくい、というのはここがネックになっている:漉すタイプのポトフであれば、具を煮すぎる心配はないけど)。酸化対策は、保存の際に固まった油を取り除いたり空気と触れないよう密閉したり、といったことが考えられるが、突き詰めると「さっさと食べ切る」以外にない(翌日以降に持ち越すなら冷凍した方がよい:汁物の冷凍に対応した容器があると便利)。ニンジンの皮をスープに入れると持ちがよくなる、という通説があって根拠が不明なのだが、実際にやってみると効果があるような気がする(炒めてからスープに入れた方がいいとか、トマトやカボチャなど緑色でない野菜の皮なら他にも使えるものがあるとか、いろいろ言われる)。

あまりに便利すぎてワンパターン化の恐れもある諸刃の剣だが、ポトフ風の温菜(後の都合次第で汁ありでも汁切りでも)>中華風のスープ(片栗でトロみをつけてごま油)>カレー(カレー粉の量は好みと気分で)、というシーケンスは恐ろしく使い勝手がいい。上で触れたように鮮度の問題があるので、ベースの煮込みは油脂の少ないタイプにしておき、8分がた火が通ったら翌日分を取り分けてから当日分を仕上げる(翌日分は、荒熱を取るときの余熱と食べるときの再加熱で仕上げる)。炒めて入れたい具材は取り分けてから食べる前に入れればよいし、ネギとかショウガなんかの香味系はもちろん、乳製品やトマト系の味を足してもいいし、薄味に作っておけば味噌を溶いて田舎汁もどきにもできる。他でも触れたが、普通のコンソメスープでも片栗とごま油さえ入れれば中華風になるので、わざわざガラ系のスープを使う必要はない(もちろん、使いたければ使ってもよいが、カレーとの相性は要検討)。基本的には、副菜兼汁物として夕食>朝食>夕食の丸1日で使い切る前提なのだが、ついついこれが主菜になっていってしまう。

金曜日は・・・いいんじゃない、週1くらいでサボっても。基本的には料理をしない日にしておいて、外食してしまったらそれでもいいし、しなかったら麺類でも茹でて食べよう。いいじゃん週1くらいなら。



電子レンジも立派な加熱調理(オマケ2)

耐熱容器に入れて「あたため」ボタンを押したらあとはほったらかしにすることが多いと思うが、電子レンジ加熱も調理には変わりなく、上手にやれば仕上がりが相当違う。

たとえば冷や飯は、ラップをしたまま6割方温めたところで天地を返してからラップを外して追加過熱すると、底の方がベチャっとしたり上の方がパサっとしたりするのを防げる。煮汁があるものも途中で(半凍りのまま)上下を返して加熱すると火の通りが安定しやすい(角煮のように熱ムラができやすいものは、工程を何度か繰り返す)。中華まんのように厚みのあるものは休ませながら(熱を均しながら)加熱した方がよく、単純に「弱レンジ」モードなんかを使うことで休ませるのと似た効果を得ることはできるが、もし暖めるものが2~3皿あるなら、交代で休ませながら「強レンジ」を使った方が時間短縮になる。筆者はたいてい、汁ものをレンジで解凍したときは鍋で仕上げる。

パンなんかを電子レンジ加熱すると顕著だが、水分が出てベチャっとすることがある。これも使い方次第で、凍ったパンをレンジでぬるくなる手前くらいまで温めてからオーブントースターを使うとふっくらする(場合によってはレンジの前に霧吹きで水分を足す)。炒め煮やカレーのタマネギなんかの場合は水が出るのを利用して、電子レンジにかけ、汁を切って炒め、汁を戻して煮込むなんてこともできる。豆腐の水抜きなんかもわりと一般的な使い方だろう。塩の水抜きもやってみたことがあるが、どうも効果がぱっとせず、これは鍋でやった方がよさそうな気がする(元の水分が少なすぎるからなのかねぇ)。

ティーバッグの紅茶を電子レンジで作ると独特の風味を出せる。やり方は、水にティーバッグを入れて加熱し、途中で軽く混ぜて、休ませず再加熱するだけ(水でなく牛乳を使う場合はとくに、沸騰させると派手に溢れるので注意)。抽出というのは温度域で成分が変わるのだが、電子レンジだとその変化が独特なのと、茶葉自体も加熱されるため、普通に作るのとは一風変わった仕上がりになる(それが好きか嫌いか、茶葉やフレーバーに合うか合わないかは別として:紅茶の話題はコーヒーのページのオマケに少し書いた)。



即席めん(オマケ3)

袋入り即席めん、いわゆる袋ラーメンを作るのも、料理といえば料理だろう。食味を求めるなら、やはり他で触れているように香味が重要。ネギは(筆者はセブンイレブンの冷凍刻みネギを使っているが)フリーズドライのものでもまあ使えるし、にんにくは乾燥スライス(筆者はエスビーのものを愛用)でよいが、生姜だけは自分で切って冷凍した方が使い勝手で勝る(粉末タイプがダメとは言わないけど)。ごま油とすりゴマもあれば仕上がりがけっこう違う。もちろん、わざわざ袋ラーメンのために全種類用意する必要はなく、普段使うものを使い回せばよい。鍋のまま食べるのが好きだという人を止める理由はないが、どうせ鍋を洗うなら丼がひとつ増えても手間に大差はない(30秒も変わらないと思う:もしその時間も惜しいなら、最初から袋麺ではなくカップ麺か、アイリスオーヤマの豪麺(電子レンジで作れるらしい)みたいな製品を選ぶべきだろう)。

筆者がよくやるパターンは、お湯を沸かす段階でスライスした生姜とネギと乾物類(味噌汁の具として売っている野菜とワカメのミックスがメイン、気分でキクラゲとか乾燥の小エビとか)を入れておき、沸騰したら麺、ほぐれたらスープを入れて、仕上げにごまand/orごま油。これだけでそこそこ満足感のある仕上がりにはなる。卵を入れるときは先に麺だけ(箸で雑に)丼に移し、残ったスープを沸騰させて回し、卵を溶かずに割入れて黄身を壊す(溶き卵を細く流し入れるのも悪くないが、即席めんには溶かない卵の方が合うかなと思い宗旨替えした:あのフワっとした風味が出ない方がよいような気がしている)。以前は麺だけ茹でてザルで湯切りして作っていたこともあるが、そこまでやるなら生麺を使って、野菜類もちゃんと炒めて入れた方がよさそう(余談だが、中華屋で自分のまかない用のタンメンを茹で野菜で作っていると、先輩に「料理人が雑なモノ食ってるんじゃねぇ」と怒られる、ことが多かった:その辺の刻み野菜を茹で麺のザルにぶっこむだけなので、グッタリしているときなんかはついやってしまう)。

具体的な製品を選ぶときは、麺にそれなりの食感があるかどうかというのが重要なポイント。ぶっちゃけ、イマドキの技術なら即席めんのスープなんてマズくは作れないレベルなので、粉末だけか液体やペーストも付くかというところ以外、大きな差はつかない(ただどうも筆者の口には、市販の即席めんは塩辛すぎる気はする)。筆者がこのところよく買うのは「旨麺」の塩ラーメン。流通が複雑な製品で、製造会社が山本製粉、販売会社がニッド、小売はNID(日本ドラッグチェーン)加盟店、ということのよう(ようするに、NID加盟のドラッグストアで買える)。日清やサンヨーなどのブランド品よりは安く、激安品よりは麺がちゃんとしており、スープは普通だがガーリックパウダーを使ってドーピングしているのが特徴といえば特徴(生姜とすりゴマとごま油、あとはコショウくらい足せば十分イケる)。

余談ついでに筆者がたまにやる麺2倍(2袋分茹でてスープは1人前)の作り方。水は普通に作るときの2~3割増(卵を入れるときでも1~2割増)くらい。麺が水分を吸うので、そのままだと過剰に塩辛くなる(し、量が多いのでやや薄くらいにしておかないと途中でシンドくなる)。お湯が沸騰したら麺を1つ入れ、ほぐすにはちょっと硬いくらい(持ち上げたら割れるかもくらい)でもう1つを下に入れる。少し待つと先に茹で始めた麺(後入れの麺の上に乗っかっている)が柔らかくなってほぐせるので、両方ともほぐす。あとは普通に作って大きい丼に入れる。2人前作ってしまうと家庭用の丼にはまず入らないが、汁半分なら入る、というバカ技。



魚はどうすりゃいいの(オマケ4)

田舎に引っ越して以来かなりの頻度で魚をもらうのだが、筆者は料理方法をあまり知らない。中華で魚といえばまず揚げてあんかけ、でなきゃホンショウ(煮付けのことでホンシャオとも:技術的に難しいし、ぶっちゃけ日本風の煮付けの方がうまい、というか日本人である筆者の口に合う)か蒸す(清蒸鮮魚というと熱いごま油をかけるのが有名だが、普通に熱い醤油ダレをかけることもある)かといったところ。本場に行けば種類は無尽蔵にあるのだろうが、その辺の日本人中華屋が知っている魚料理はそう多くない(と思う)。

どうも、ムニエルとかワイン蒸しとかオーブン焼きとかいろいろあって、中華よりは洋食の方が華やかなラインナップに見える(カルパッチョを魚で作るのは日本発祥らしい)。日本風の魚料理で素人にもマネゴトができそうなものというと、焼き(塩or味噌or照り)、煮付け(醤油or味噌)、刺身、鍋、汁物、すり身と練りもの、干物に漬物(糠or粕)といったところか(蒸し料理はローカル物が多いような気がする)。

焼き魚なら、道具のページで紹介したように焼き網でできる。これはけっこう融通がきいて、フライパンを被せたり端で焼いたりと小細工ができ、ガスレンジのグリルよりも(手間はかかるが)おいしく焼けると思う。煮付けは圧力鍋でやっている。圧力鍋は食材が柔らかくなるのが特徴だが、味は調理時間相応にしか入らないので、調理後に冷蔵するなり調味料を濃くするなり、工夫が必要。

切り身を買って食べる魚といえば圧倒的にサバ。もともと筆者が好きな魚ではあるのだが、焼き網を使わず片手鍋にオリーブオイルを引いて焼いても、そこそこの仕上がりになる手軽さがいい。魚の焼き方には流儀が無数にあるが、基本は盛り付けたとき表になる側から焼く(川の魚は皮から、という言い回しもあるが、日本だとおろしたり切り身にしたりして焼く淡水魚ってあんまり多くない)。筆者が塩鯖を焼くときは、高めの温度で表面を焼いたらトロ火に落としフタ、裏返してもしばらくトロ火で、最後にフタを取って強火で仕上げる。盛り付けは左が頭で右が尾、海の魚(海水魚)は腹が手前で川の魚(淡水魚)は背が手前ないし上、という原則はあるが、魚の種類と地方によっていくらでも例外はあると思う。

ブリをもらって中華包丁(円頭刀なんて持ってないので普通の方頭刀)で捌いたことがあるのだが、できないことはないものの出刃包丁が欲しくなった。鰓を外す所だけクリアできれば他はなんとかなりそうなのだが。ウロコ取りも中華包丁でできなくない(というか中国人は普通にやる)が、ホームセンターで売っているウロコ取り器を使った方が間違いなくラクである。



食品なんて全部毒(オマケ5)

上の方で「そんなにポリフェノールが好きならナフタレンでも置換すりゃいいのに」と実も蓋もないことを書いたが、特定の成分が多い少ないなんてことを、それだけ取り上げて云々しても話は始まらない。

たとえばミネラル。いわゆる必須ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン(ここまで多量ミネラル)、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、セレン、モリブデン、硫黄、塩素、クロム、コバルトあたり(ミネラルが大好きな人には塩化ナトリウムがオススメ!)。日本の健康増進法施行規則(平成17年改定)や食事摂取基準でミネラルに相当するのが亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガシ、ヨウ素、リン。アメリカではフッ素、ホウ素、バナジウム、ニッケル、珪素、砒素もミネラル扱いらしい。こうやって並べてみればわかるが、どれも過剰に摂取すると生命に関わるレベルで危ない(純水の急性経口半数致死量が100g/kgだとかいう話もよく引き合いに出されるが、ミネラルの場合は桁が違う)。

ビタミンは・・・ビタミンが機能を指す言葉で物質を指すものでないこと、水溶性ビタミンはB群とCくらいでA・D・E・Kは脂溶性だということ、脂溶性ビタミンは過剰症(ビタミン中毒)のリスクが高いことは押さえておいた方がいいと思う。

そもそも従属栄養の生物に生まれついた時点で栄養摂取と毒の摂取は切り離せないわけで、だから我々の身体には肝臓とか腎臓とかがくっついており、それらの機能を損なわない注意は払うべきだろうけども、休ませっぱなしにしなきゃいけない理由もないんじゃなかろうか。



それでも「味」を云々したいなら(オマケ6)

プロ向けの記事の中では「味は好き嫌い、仕事は良し悪し」なんてことも書いたが、アマチュアが趣味で料理をするなら、やはり「うまい料理になったかどうか」というのは大きな関心ごとだと思う。食味をよくしたい場合に気をつけるべき点をまとめておこう。

塩加減が最重要:調味料の中で、塩だけは分量を間違えられない。反対から言うと、塩だけキッチリ計っておけば、他はけっこう融通がきく。外食などでは食事の総量の0.9~1.0%くらいが塩分になるメニューも多いが、普通の量を食べると食塩の総量が多くなってしまう。外食で塩分の多い食事を取ることが多い人はとくに、家での摂取量を減らしておいた方がよいだろう。醤油はもちろん、料理酒などに含まれる塩分もバカにできないので、しっかり計算したい。

甘味は旨い:味に何か物足りなさを感じるとき、甘味を足してやると雰囲気が大きく変わることが多い。中国の料理人はこれに敏感なようで、本当に何にでも砂糖を入れる。もちろん、焼き魚みたいなメニューなら味醂と醤油の合わせダレを使うとか、洋風の煮込みものならコンソメの素(まれに甘味を含まない製品があるので要確認)を足すとか、料理に合わせて砂糖でない甘味を使っても構わない。食べて甘さを感じるほどでなくても、入れるのと入れないのとで大きな差が出ることがある。現代人がデンプン質の食材をおいしく食べられるのも、多糖類を(部分的にではあるが)単糖類に分解する技術を発明した賜物だろう。

油脂も旨い:これはもう仕方ない。人類が今より小さな生き物で(おそらくは)ナッツやフルーツを食べて生きていた時代からの本能で、甘いものと脂っこいものはうまいのである。食用油脂の中でも、動物性のもの(バター、クリーム、ラード、ヘットなど)は強烈にうまい。さらに人類が発明した新しい美味であるデンプン類を加えると、まさに禁断のうまさになる(だからケーキはあんなにうまいのだ、と思う:バタートーストだってたぬきうどんだって、デンプン食に脂質を足したいという情熱から生まれたものに違いない)。うまいものを際限なく食べると病気になる、というのは生物の悲劇かもしれないが、しかしうまいのである。

香味は鮮度:中華ではツォン・ジャン・ソン(長ネギの青いところ、ショウガ、にんにく)をよく使うがごま油も重要、中華ではあまり使わないすりゴマも使い勝手がよい。これらを、下ごしらえの段階でももちろん使うのだが、食べる直前に(さらに)加えてやると料理が見違える。スパイス類では黒コショウとカレー粉が大活躍、花椒(ホワジャオ)やクミンシード、イタリアンパセリやスイートバジルの粉末なんかも用意できると、いっそう小細工がきく。種類を増やしすぎると使い切れずに鮮度が落ちるので、ラインナップをある程度絞るとともに、冷凍保存なども活用したい。コンソメの素みたいな複合調味料は塩味と甘味とうま味、ウェイパーみたいな練り調味料なら油脂もある程度は補えるが、仕上げの香味(と香り系の油)は後から足してやるしかないので、差がつくポイントになりやすい。

過剰にしない:とくに加熱については、煮過ぎない、焼きすぎない、レンジにかけすぎない、の原則を守ろう。野菜を煮すぎてえぐ味を出してしまうミスは意外と多い。キノコ類や貝類にもえぐ味を持つ(あるいはうま味成分が過剰になるとえぐ味に変わる)ものがあるので、使う量に注意したい。炒め料理では一度に大量に調理しないことも大切で、火力が許す範囲の分量に小分けする。たいていの料理は、塩加減が適正範囲内でえぐ味や臭みが過剰に(ココ大切)出なければまずくはならない。袋入りの即席ラーメンを具なしで食べたり、ご飯にふりかけだけでも(決してうまくはないだろうが)耐え難いほどのマズさになることはめったにない、というのはここから来ている。うまさを求めるなら甘味と油脂と香味だが、マズくしないためには塩加減と過剰避け、と言い換えることもできる。

うま味は意外と足りる:調理に個人裁量がある飲食店の裏技に、味に文句を言う客がいたら味の素を倍量にして(より実用的には、醤油(塩ではなく)と油(おもにラード)と砂糖(本来入れないメニューにも少し足す)も増やして)作り直すと褒めてもらえる、というのがあり実際その通りなのだが、家庭で料理をする際にはうま味を含む複合調味料が豊富にあるため、うま味専門の調味料はそれほど重要でない(筆者なんかは、コンソメの素と中華スープの素だけで済ませて、単品の味の素は台所に置かなくなってしまった)。むしろ、入れすぎるとシンドい味になるため、足りなかったら後で増やすくらいの使い方で十分。

もうひとつ、忘れてならないのは見た目である。音楽関連のページで「目の前にクソの写真でも置いてカレーを食ってみれば」云々という実も蓋もない説明をしたが、そこまでしなくても、見た目の良し悪しで食べ物の味が変わることは容易に納得できると思う。だからこそ、職業料理人は盛り付けや食器にこだわりを持つし、飾り包丁なんていう技術も発展したのである(もっといえば、サーブ(給仕)の仕方や店内の雰囲気も「味」に大きな影響を与える:だから「ちゃんとした」店では、ホールの(メンバーとは必ずしも「仲良し」でなくても)仕事に相応の敬意を払わない料理人は、厨房の中でも(あからさまにではないかもしれないが本音の部分では)軽く見られる)。食味は、舌と鼻だけで感じるものでは決してない。

家庭で料理を作るときも盛り付けには注意を払った方がよいが、これまた面白い効果で、見映えよく盛り付けられる技術がないのなら、あえてゴチャゴチャにしてしまうのも手ではある。プロでも一部のラーメン店なんかが利用しているやり方で、健康に悪くて食味がよい料理をゴチャっと盛り付けると、ある種の背徳感というか、健康と快楽を取引しているような感覚が強調されて、かえってうまく感じることもある(まったくの憶測だが、どうも、我々の心の奥底に「リスキー」な食事をうまいと感じさせる何かがあるような気がしてならない:考えてみると、人類は食べ物に関してとてつもないチャレンジャーだし、毒のある魚はうまいなんて話もこれと無縁ではないかもしれない)。どちらにしても、まずは「見た目は味を左右する」という事実を、しっかり認識することから出発するのがよいだろう。

ということで、マズくしないためにまず必要なのが塩加減、そのうえで過剰な加熱や分量を避けて臭みやえぐ味を出さないようにしなければならない。うまさを追求するうえでの優先順位は、甘味、アブラ、香味、見た目で、うま味は意外と順位が低い。この中で健康を犠牲にせず追求できるのは香味と見た目なので、世の中の自炊オッサン達にはぜひとも、この2つを大切にして欲しい(本当は食感も大切なのだが、ここを追求するのはプロの領域で、技術的にとても難しい)。オッサンになると、塩辛いもの、甘くどいもの、脂っこいものは(身体的に)コタえるようになってくるが、香り高いものや盛り付けが美しいものは、まだまだ受け入れられるはずである。



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