馬力規制と単車のラインナップ

日本にはバイク(4輪車もだが)エンジンの出力を規制するというわけのわからない(というか頭の悪い)ルールがあった。俗に馬力規制と呼ばれる(が、法律ではなく自主規制)。なお、1999年までの日本馬力は1馬力=750ワット、1999年からの日本式仏馬力は1馬力=735.5ワットで、馬力からキロワットへは4分の3がけ、キロワットから馬力へは3分の4がけでだいたい換算できる。

1989年からの基準では、50cc=7.2馬力、125cc=22馬力、250cc=45馬力、400cc=59馬力、750cc=77馬力、750cc超=100馬力、ただし10%以内の誤差はOK。1992年からの基準では250ccが40馬力、400ccが53馬力に下がり誤差も認められなくなった。この規制を考えた人は「50馬力の250ccは50馬力の400ccより危険か」という素朴な疑問について何をどう考えたのだろうか。解禁されたのは2007年なので、18年間にわたって規制が続いたことになる(4輪車は2004年に廃止)。


250ccで45馬力というのはマルチでないと(当時の技術水準では)厳しい数字で、ホンダがRZ250に対抗してムキになったVT250F(1982年発売)でも、初期型(FC・F2D)が35ps@11000rpm、2型(FE・F2F)が40ps@12500rpm、3型(FG)・最終型(F2H)が43ps@12500rpmである。最終型の43psというのはとくに苦しく、カタログを見ただけで「こんなエンジン使えないよ、ピーク出力のカタログ値だけ出してどうするんだ」と思わずにいられない(輸出仕様のVT250Fは35ps@11,000rpmのまま:1988年発売、1991年生産終了の後継車種スパーダは国内国外とも40ps@12,000rpm)

では現在の技術水準で馬力規制が撤廃されると超高出力エンジンがザクザク出てくるかというとそうでもない。環境規制が厳しくなったことと、スポーツバイクの人気がすっかり衰えたこと(各社のラインナップを見ても、メインはスクーター、次いでリッタークラス、中排気量はアメリカンとファッションバイクがちょぼちょぼ、小排気量はビジネス車を除いて壊滅状態、というのが現状)で、高出力エンジンの出る幕はほとんどない。

2008年6月現在、400cc以下のオンロードスポーツというと、ホンダが意地で作りつづけているCB400SF、スズキが空気を読まずに作りつづけているGSRとインパルス、カワサキが何故か作りつづけているNinja 250Rくらいしか残っていない。というか、オンロードスポーツ自体が絶滅寸前で、フルカウルの国内車は今挙げたNinja250とホンダのCBR600/1000しかない(ヤマハはFZ1 FAZERでちょっと別路線を目指している模様)。

でそのCB400SFは53馬力で規制当時のママ(環境規制が強まる中現状維持を続けているのは凄いが、寂しい話でもある)。Ninja250は31馬力で旧規制値を大きく下回っており、CBR600/1000もそれぞれ69/94馬力で自主規制云々は関係ない数値になっている(CBRが逆輸入車よりローパワーなのは、騒音規制への適合というのがタテマエらしいのだが・・・)。リッタークラスがECU(Engine Control Unit)で去勢したハリボテエンジンを積んでいるのはある程度仕方ないと思うが、現状のラインナップだと遠出も考慮している人にとって中排気量車の選択肢が狭い。


筆者の感覚でだいたいの目安を書いておくと、10馬力:街乗りなら無問題(2種原チャクラス)、20馬力:高速を普通に走れる下限(ツーリング系オフ車クラス)、30馬力:高速や2ケツはかったるい(中型レトロモデルクラス)、40馬力:2ケツや高速に十分(250ccスポーツクラス)、50馬力:2ケツも高速も余裕(400ccスポーツクラス)、60馬力:装備重量200kg超の車体でなければ必要ない、くらいか(いずれもパワーバンドを有効に使った場合:車体の重さや空力特性やエンジンの味付けや2スト/4ストでも差が出るのであくまで目安)。筆者は軽量なモデルが好きらしく、今までにバランスがよいと思ったのは、セロー225の20ps120kg(初期は乾燥/装備で106/117kgだったはずだが、WだかWEだかの頃に108/122kgになった、のだと思う)、スパーダの40ps153kg、RVFの53ps183kgなど。

同じ人数の人間を運んでも小排気量車の方がCO2やらNOxやらの排出は少ないわけだから、中排気量2輪車の環境規制はもう少し大目に見てもらえないものかなという気もする(ヘタな規制で大排気量車しか生き残らなくなったら環境問題的には逆効果だと思うのだが、もともと「環境保全を第一に」考えて作られた規制でもないのだろう:ただ、内燃機関を積んだ車両に1人で乗ってる時点で贅沢、と言われればたしかにその通りではある)。・・・まあようするに「せっかく規制なくなったのになんで40馬力クラスの250ccが軒並みカタログ落ちなんだよ」という愚痴である。

2012年5月追記:さんざん愚痴っておいてアレだが、GSR400 ABSが61ps(45kW)@12,000rpmを叩き出していた。さすがスズキさんやることが違う。トルクは39Nm@10,000rpmでCB400SFあたりと大差ないので、たぶん上が伸びるエンジンなのだろう。


ここから先は余談になるが、ホンダのVTRやスズキのSVなど「楽しいスポーツバイク」系の車種まで生産終了になっているのが非常に痛い。速さだけを追求したレーサーレプリカが絶滅したのは仕方ない(惜しいとは思うものの、そういう時代ではなくなった)が、走らせて楽しいバイクがなくなるのは寂しい。ヤマハなどは2008年にメイトまでやめてしまった(スズキさんは2012年現在も元気にバーディを作っていらっしゃる)。

そういう中でNinja250はなかなか気合いが入った作りで、31ps@11,000rpmの2.1kg・m@8,500rpmとピキピキな性能ではないが、インジェクションエンジンに6段ミッションを組み合わせて乾燥重量153kg(スパーダで140kgなので、フルカウルであることを考えるとけっこう軽い)と、カタログだけ見ればかなり楽しそうなスペックである。2ケツなしの下道なら遠出も苦にならないパワーだし、ガソリンも17L入る(一昔前のいわゆるツアラー的な位置付けのようだ)。アジアモデルにも目を向けると、タイホンダのCBR150RやCBR125R(2ストモデルNSR150SPは生産終了して久しい)、中国ホンダのCBF125、中国ヤマハ(重慶建設ヤマハ有限公司)のYBとYBR(とYZF-R)、中国スズキのEN125、タイカワサキのKSR110など、面白そうな小排気量がけっこうある。たかが原チャリに水冷エンジンや6速ミッションやリアのディスクブレーキはいらない(だったら軽くした方がよい)と思うが、輸出先では悪路が多いのか18インチ車が多い。

2009年8月追記:と思ったら2009年2月にVTRが復活したようだ。さすがホンダさんムキになっていらっしゃる。30馬力のインジェクションエンジンと5段ミッションの組み合わせらしい(キャブ仕様は32ps(24kW)@10,500rpmの24Nm@8,500rpmだったからちょっとパワーダウン、装備重量がキャブ後期型の155kg(初期型は153kg)から6kg増えて161kgになった:燃費のカタログ値が悪くなっているのは評価方法の違いかな)。ガソリンが12Lしか入らないのは相変わらずだがこれはしょうがない。2012年5月追記:タイ製のCBR250R(MC41)がワールドモデルにスライドして、250のラインナップが少し増えた。CBR150Rも日本で売ってくれないかしら。2014年10月追記:タイカワサキからNinjaRR150(KRR150ZXないしKRR-ZX150の後継?)が出たのだが、30馬力オーバーの水冷2スト単気筒エンジンを積んで124.5kgと本気な構成を保っている(国内にはほとんど入ってきていない模様:日本メーカーの技術でこんな面白そうなモノができたのに、日本人がそれを楽しむ機会がほとんどないってのは・・・)。

さらに2009年6月にはなぜかR1が国内発売されたようだ。リリースノートを読むに、スーパーバイクレプリカとしてではなくおっさんバイクとして投入された感じ(車体の作り云々でなく、マーケティングの意図として)。だとしたら、R6でなくR1をラインナップしたあたりも理解できる(600ccスポーツが一瞬はやりかけたときにはちょっとしたトキメキがあったが、モトGPですら「990ccじゃ速過ぎて死人が出そうだから800ccまでに」なんてレギュレーションが出てくる時代に、公道向けの大排気量スポーツは立場が微妙なのかもしれない:ちなみにこれは2007年の変更で、2009年現在「また速過ぎになってきた」という議論も出ている)。インパルスはついにカタログ落ちしたようだが、GSRはモデルチェンジしてなぜかABSバージョンまでラインナップしている。2012年10月追記:いつの間にかグラディウスというSVの後継機種が出ていた模様。エンジンはK510で、なぜかSVのK508より高回転(レッドゾーンも12500rpmから)かつ出力もアップ(番号上中間になるK509は、イントルーダーやブルバードに使われた模様)。ABS標準装備で400ccでも200kgオーバーになってしまった。GSR250は水冷2気筒でごくおとなしいエンジン。


さらに余談。HRCがNSF100というオンロードの競技用車を扱っている。2ストシングル125ccだったRS125R(JR01)が44ps@12,250rpmの24.5Nm@12,250rpm(半乾燥重量71.5kg)だったのに対し、4ストシングル250ccのNSF250が35.5kW≒48ps@13000rpmの28.0Nm@10,500rpm(重量84kg)だから、扱いやすくなりつつややパワーが上がった感じなのだろうか(まー、レース仕様車で工場出荷時のスペックなんて突付いてもしゃーないけど)。

WGPでも125ccクラスと250ccクラスがだんだん(経営上の)お荷物になりつつあるので、各メーカーにはなんとか上手いことやって欲しいところ。125cc面白いんだけどな、観てる分には。2012年5月追記:と思ったらまたレギュレーション変更で、今度はMotoGPが1000cc(157kg制限)と800cc(150kg制限)の混在、Moto2はホンダのワンメイク(CBR600RRベースの4スト直4で約140psだそうな)、Moto3は4スト単気筒250ccでレブリミット14,000rpmになった模様。


2012年11月追記:「普通の」オンロードスポーツを探してみた感想。

250クラスは、Ninja250R、VTR、CBR250R、GSR250と非力な車種で埋まった。NinjaとVTRが高回転系で、CBRとGSRはトルク重視っぽい。CBR(これだけシングル)は「VTRより燃費がよくてガソリンが1L余計に入る」のでリトルツアラーを目指したのかもしれない(Ninjaはガソリンタンクで力押ししている)。GSRは重い(センタースタンドを装備している点や装備重量表記なのを差引くとトントンなのかもしれないが、エンジンも非力なのが気になる:利便性や快適性の側に振ること自体は悪くないアイディアだと思う)。いわゆる「普通のオフ車」がWR250Rと、メーカー分類ではデュアルパーパスのCRF250やKLX250くらいになったのも寂しい。セローは250だけ復活(18psの130kgとかつての面影はない)。

400ccクラスは、CB400SF、GSR400 ABS、グラディウス400ABS、ER-4nとネイキッドが並ぶ中にポツンとNinja400R(ER-4nとエンジン型式はもちろんギアレシオやタイヤも同じで、カウルを被せてキャスターをちょっと寝かせただけっぽい)。パワーの割に車重(どれも200kg前後:現在のABSは3〜5kgくらいなのでそう大きなハンデにはならない)が重いのは昔のままだが、選択肢は思ったほど狭くない。600ccからの単純なスケールダウンでないモデルはCB400SFだけで、BOL D’ORもいい発想だと思う(このクラスにハーフカウルというのは合理的)。

個人的には、400ccにオーバートップつきのクロスミッション(1〜5速まで普通のクロスミッションで、6速だけ大きく離れる)を組み合わせたら面白いんじゃないかと思うのだが、実際にやったメーカーは知らない。筆者の場合、250ccのスパーダでさえ5速を使った記憶はほとんどない(巡航用なら6速を使えばよいし、加速用のギアとしても速度域が120〜150km/hくらいで、実用性があまりない)。

国内ラインナップがスッポリ抜け落ちた600ccクラスはCBR600RRくらい。スーパーバイクレプリカでない逆輸入車だとヤマハが頑張っており、XJ6、XJ6F、FZ8、FAZER8あたりをラインナップする意欲をメーカーから奪ってしまった国内市場が恨めしい(ヤマハは2011年の売り上げ構成比率で国内が1割ちょっとらしい)。CB600F(実質的にはホーネット)、GSRやグラディウスの650、Ninja650やER-6nのほか、中型デュアルパーパスもちょぼちょぼ。


2014年11月追記:また「普通の」オンロードスポーツを探してみた感想。

250クラスは、VTR、CBR250R(とF)、Ninja250(とZ250)か。説得力を感じるのはシングルエンジンで軽さを追求したCBRだろうか(それでもスパーダより重いし、出力は比べるまでもないが、車体がコンパクト)。シングルだけにレスポンスのよさはあまり期待できないが、燃費はよさそうなので移動手段としては面白そう。Ninja250は41.2mmのショートストロークエンジンの割には高回転型でなく燃費はタンク容量で補い、1,410mmのロングホイールベースにキャスター26度とやや寝かし少ないオフセットでトレールを82mmにするという、手法としてはカワサキの従来路線を踏襲した感じ。作れるはずのものを真面目に作って売り出したことが最大の功績だと思う。VTR-Fもいいアイディアだと思うが、オンロードスポーツの1機種というよりはVTRという独自ジャンルになりつつあると思う(往年のセローにも通じるところがあるような)。GSRはマッタリ系の路線を追求するつもりのようだ。

2015年10月追記:中排気量のラインナップがそれなりに増えたが、自分で買うつもりになって眺めてみると、意外にめぼしい機種がない。250ccはエンジンが元気でそれなりに軽いMT-25(どーせ街乗り仕様なのでR25よりはコッチかな)が基準で、これを差し置いてとなると、非力だが筆者が好きなVツインのVTRくらい。Ninja 250はカタログスペックが地味ながらそれなりには走りそうな構成なのだが、街中ヒラヒラ一点豪華主義のNinja 250SLの方が面白そうに見える。400ccはやっぱりCB400 SUPER FOURが基準で、これと比べて「アリ」だと思えるのは、軽さ(スズキだけ装備重量表記なので注意)とクロスミッションのグラディウスくらいか。ABSの代わりにハーフカウルを付けた機種が出たらいいのに(筆者の偏見に過ぎないが、砂に乗ったときのことを考えると、ABSつきの2輪車には絶対に乗りたくない:レーサーみたく効きを自分でコントロールできるなら話は別だけど)。すっかり過激さが鳴りを潜めたCBR600RRは、かえって有意義なポジションに転がり込んだように見えるが、それでも筆者の技量では持て余しそう。中古の400ccでも探すかなぁ。

2016年4月追記:思うに、日本の免許区分や税区分はちょっとズレてるんじゃなかろうか。原付2種の上限を150ccに、軽2輪の上限を300ccに、できれば中免も650ccくらいまで引き上げてやれば、メーカーもユーザーもすごく幸せになれるような気がしてならない。


250cc直4の話。

この手の話になると決まって槍玉に上がるのがCBR250RR(エンジンは250Rの頃と同じMC14Eで、92年型までは45PS@15000rpm)とホーネット250だが、実際には、FZR250R(一番激しい時期の3LN1〜3LN5で45PS@16000rpm)もZXR250(同じくZX250Aで45PS@15000rpm)もGSX-R250(同じくGJ72Aで45PS@15000rpm)も、みんな直4の超高回転エンジンを積んでおり、それらのエンジンを流用したジールもバリオスもバンティットも、程度の差こそあれみんな似たような特性だった。だいたいが、ピキピキの特性にしたいのでなければ、ニーハンを直4にする理由なんてないのである(ZZR-250とかゼルビスとかルネッサとか、ツインエンジンのマッタリバイクは普通にあった)。

それが装備重量150kgちょっと(CBR250Rにいたっては乾燥重量がスパーダより軽い:当時の水準から言うとスパーダはVツインの割には重く、代わりにごん太フレームで剛性が高い)の車体に積まれているのだから、じゃじゃ馬にならないわけがない。長いクランクシャフトにクランクピンが4つもついて15000rpmで回りつつ細く丸いタイヤで旋回するとなれば、ハンドリングも独特になる。それでも「(ウルフやRZよりは)穏やか」ということで「初心者向けの乗りやすい車種」扱いをされていた(とくにネイキッドモデル)のだがら、時代が違ったとしか言いようがない。

これらの車種が発売された80年代後半には、90年代以降の感覚でいうネイキッドはまだメジャーでなく、88年にブロス、89年にゼファーとCB-1、93年になってようやくXJRが出てくる(82年から黙々とインパルスを作っていたスズキさんは、やはりやることが違う:中断などもあり同じ車種を作り続けていたわけではないが)。もちろん、フルカウルからカウルを剥いだだけという文字通りのネイキッドのほかに、空冷を中心としたレトロ系車種はあった(意図的なレトロデザインなのではなく、80年前後に発売されたXJやSRやCB250RSやRG250などが引き続き生産されていただけ:それ以前の流れとして75年の免許改正が影響している)。

話を250ccに戻す。90年代以降、ブームの完全鎮火や馬力規制によって4スト250ccレプリカというジャンル自体が自然消滅してゆく。大半の車種が40馬力規制適合モデルを出したきりマイナーチェンジもなしというパターンで、ネイキッドモデルも「ニーハン直4」というと「安い中古車」としてのチョイスになってゆく。そういう中で唐突に出てきたのがホーネット250で、新型として登場しただけに(車体バランスもキワモノだったが)インパクトが大きく、冒頭のイメージが広がる原因になったのだと思う。


2018年のパラツイン

商品としての250ccは「日本向けの軽二輪」でなく「経済成長地域向けのアッパーミドルラインナップ」になった。生産台数も増え機種も充実したが、主役は現実路線のパラツイン。Vツインのロマンを最後まで追いかけていたホンダさんもVTRをカタログ落ちさせてしまった。これはまあしゃあないというか、メインとなる消費者が変わってメーカーもそれに追従した、というのは健全な動きだと思う。

翻って考えるに、やはり単車のエンジンとして250ccというのはどうにも苦しかった。四輪車で660ccが(日本の税制に合わせて)歪な市場を形成しているのと同様に、軽二輪もやはり苦し紛れな設計を余儀なくされてきた。もちろん、だからこそ「面白い」機種が次々に現れてきたのだし、非力だからこそブン回して乗る楽しみがあったのでもあるが、今となっては「じゃあそろそろ本流を見直そうか」というのが日本のバイク乗りの次のステップなのではないか。250ccシングルスポーツだけは面白い選択だと思うのだが、現状で不足している熟成と洗練がこの先進むのか、その前に消えていってしまうのか、まだわからない。

じゃあ400ccか、と聞かれると、ここはもうメインストリームから外れて久しい。600ccや650ccのフレームにエンジンだけ400ccを乗せたモデルに優れたものがないとは言わないが、その手法で「かつて400ccが日本のバイクのボリュームゾーンだった頃」の輝きが戻ってくるとも思えない。極論すれば、4発フルカウルの4ストレプリカが絶滅した時点で、400ccの時代も終わっていたのだと思う(スーパーフォアやSRなどのタウンorシティ系モデルを除いて)。ただ、ツインエンジンの流行でもっとも恩恵があるのは実はこの400ccなんじゃないかと思う。とくにNinja400の2018年モデルはCBR400Rと比べても明らかに「走り志向」のデザインで、カワサキさんの本気度がうかがえる(250でうまいことやったから次も、という考えなのかな:400を「600の縮小版」ではなく「250の拡大版」と捉えた発想もいい)。

600ccは、実際魅力的なレンジではある。2018年現在のラインナップは、ホンダがCBR650F(とCB650F)(直4)、ヤマハがMT-07(直2)、スズキがSV650 ABS(V2)とGSX-S750 ABS(直4)の2本立て、カワサキがNinja 650(とZ650)(直2)となっている。250ccとは違った意味で、650ccのパラツインもまた合理的ではある(前者は「ブン回してもたかがニーハンでしょ」、後者は「どうせブン回せないでしょ」、という趣旨で)のだが・・・「600ccのエンジンを単車に乗せる」というコンセプトを鑑みると「それでいいの?」という思いはどうしても残る。250ccが実用優先のパラツインだらけになるのは止むを得ないし、400ccについては実益が大きく文句も言いにくいが、650ccにはもう一声欲しい。

実績を考えると、CBR600RRとオリジナルのSV650はやはり名車だったわけで、これらが持っていた「バイクに600ccのエンジン積むとこんな素敵ワールドが実現するんだよ」という夢のある主張(だってもう完全に実用品じゃなく嗜好品じゃない、このレベルになったら)が、もう一度見直されてくれたら嬉しいのだが、後継機種はどちらも「半歩後退」したように見える(その半歩が踏み止まるための半歩なのか、ズルズルと引き下がる半歩なのか、まだわからないけれど)。しかしまあ、スズキさんはSV650ABSで国内再挑戦に出たわけだし、カワサキさんは前述のNinja250と400で中小排気量に新風を吹き込んだし、ヤマハさんもR3(とセロー復活)で独自路線を模索しているのだから、そろそろホンダさんにも(スーパーフォアで400マルチの砦を守っているのは立派だとしても)なにか一発かまして欲しいところ(SV400が国内復活しない間にVTR400とか、あるいはいっそのことVFR600Rとか・・・さすがにムリか)。


オマケ1(軽飛行機のエンジン)

1940年代後半にセスナが作っていた120という軽飛行機がある。WikipediaJP(2012年12月現在の記述)からおもな仕様を拾うと以下の通り。
空虚重量: 349kg
最大離陸重量: 658 kg
エンジン: 1× Continental C-86-12
出力 85 hp (63 kW)
最大速度: 203 km/h
巡航速度: 174 km/h
失速速度: 72 km/h
タイヤとプロペラという構造の違いはあれど、85psの出力があれば600kg超の機体で空を飛べるらしい(離陸速度は100km/h前後だそうな)。1977年型のセスナ150Mでも出力は100psで、空虚重量504kgの最大離陸重量730 kgである。

なお、小型ヘリコプターの代表機種であるロビンソンR22は、空虚重量417kg、最大重量622kg、出力124ps(93kW)。こちらは、あまり軽いとオートローテーションがうまくいかない都合もあって、極端な小型機は稀。


オマケ2(4輪車)

小型車の主流はすっかり直列3気筒+CVTになった。デザイン上まず問題になるのはレイアウトで、小型化には横置きFFが有利となれば(660ccでもシングルでは苦しいだろうから)インラインしか選択肢はなく、燃費や出力やトルク特性や重量やコストなどのバランスを取れば直3という選択肢は必然だろう(ターボで出力を稼ぐフィアットのツインエアなんかは面白い試みだし、いわゆるスポーツカーなら直4もアリなのだろうが、vs直3で考えたときのトレードオフが難しいものになりがち)。走行性能を考えると3速ATは苦しく、重量やコストの面から多段ATも現実的でないとなると4速ATvsCVTになり、実用燃費や利便性の面からCVTが採用されるのも妥当なところ(巡航燃費だけ考えれば4速ATにも優位性はあり、初代パッソのFF車なんかは、平らな道を燃費性能に優れたタイヤでアクセサリに電気を使わず少なめの燃料を積み絶妙のスロットルで走らせると、実走でも25km/Lを超える)。

直3の欠点である低回転時の振動は、アイドリングストップなどを使い力技でなかったことにしてしまうのが主流のよう。回生ブレーキが使えるというハイブリッドのキモだけ抜き出した簡易型のハイブリッドも増えており、合理的な選択だと思う。以前はABSやビスカス4WDやESCなどの品質がお粗末だった軽自動車も、2010年くらいからはしっかりした基本性能を備えつつある。それでも筆者としては、軽自動車の660ccという制限は性能的に足かせで、燃費の面からも1000ccくらいのクラスを優遇するのが現実的なのではないかと思えてならない(いっそのこと、1500cc未満は全部軽自動車扱いにしちゃえばいいのに)。しかしまあ、基本的に「走らない」サイズであるからこそ、そこをなんとかしようと各メーカーが技術を競っているのが面白くもあるのだが(個人的には、ダイハツのミラとスズキの軽トラのどこまでも伸びるエンジンが印象的:他のメーカーにもOMEで出してるはずだけど、なぜかエンジンが元気だよね、スズキとダイハツ)。

ハイアマチュアがサーキットでタイムを出すには2000cc前後クラスがホットスポットらしく、鈴鹿サーキットGコースの2017年公式タイムアタックのリザルトを眺めると、38秒を切った12台のうち2300cc以上は1台だけ(13位以下はダンゴ状態、トップは35秒台)、1〜4位はターボ車だが上位12台で見るとノンターボも4台顔を出している。1600ccクラス(ロータリーエンジン除く)のトップは38秒台に2台。1300ccでもターボ車で40秒を切っている人がいるが、2位以下が大きく離れているのでドライバーの技量が突出していたのかもしれない。小型車では、レースベース車のストーリアX4(713cc)でも、40秒の壁は破れていない。660ccはトップ勢が42秒台。

2018年現在、1500cc前後は微妙なレンジで、直3、マルチ、コンパクトディーゼルなどが入り乱れている。本当に趣味性のあるレンジって実はこの辺なんじゃないの、という気はするものの、4輪車に趣味性を求める人の数が減っていることもまた事実で、商売的には難しいのだろうな、と想像できる。筆者自身、4輪車に趣味性を求めるつもりはまったくないし、そういう趣味のある人が身の周りにほとんどいない。しかしそれでも、4輪車にエンジンを乗せて走らせることにロマンを求めるなら、やっぱりここがスイートスポットなんじゃないかと思えてならない。1300cc周辺に生き残っているSUVやオープンカーなんかのミニマムクラスが、もう少し主張できる環境になればよいのだろうが。個人的には、実用品と趣味のオモチャに同じ規制を被せる発想がそもそも乱暴なんじゃないかと思える。乗用車として考えると、1800ccくらいのディーゼルにはもう少しポテンシャルがあるんじゃないかな、という気もする。

筆者は職業ドライバーではないし大きな車(免許区分では普通〜中型)を所有したこともないが、これまで仕事で大きな車を運転することはそれなりにあった。その限定的な印象からすると、2トン車や4トン車はもちろん、バンなんかもディーゼルの方が落ち着く(レンタルで借りたATのハイエースバンなんかが非常に好印象)。乗用車ならガソリンハイブリッドもアリなのだろうが・・・ディーゼルで多段ATにした方が「高級車」っぽいかな、と(自分で所有したいという気持ちはまったくないが)少し思う。どうせハイブリッドにするなら、シリーズハイブリッドにしてしまうのが潔いのではないか。最近はロングのトラックも取り回しがよくなっており、以前仕事で使ったいすずの2トン車なんかは、ロングボディとは思えないほど運転しやすかった。トラックにオートマは・・・ぜひ欲しいとは思わないが、以前ホームセンターで荷運び用に借りた軽トラ(AT限定免許の人にも貸し出せるようオートマにしてあるのだと思う)には「なるほど」と思った。



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