運用


原則とポリシー / 使い分け / 操作方法
/ 制限事項 / 録音時の注意 / ファイルのやりとり // もどる

ハードとソフトがそろったので運用について考える。録音後の作業手順はイフェクトの順番と流れのページで触れたのでそちらを参照。ここでは全体的な流れではなく個別のTipsを中心に扱う。

このページで扱っている「REAPER」は「無料版(バージョン0.999)のREAPER」を指し、たとえ「機能不足により~ができない」という記述があったとしても、最新版のREAPERで事情が同じだとは限らない。

参考までに、2008年1月現在の筆者のハードウェア環境はパソコンのほか、オンボードサウンド、Sound Blaster Audigy LS(オンボードサウンドと併用:こちらがメイン)、MT4X(ミキサ兼マイク/ラインアンプとして使用)、マイク数本、サイレントギター(エレアコとほぼ同様に扱える)、ミニコンポ(モニタ用)、ヘッドフォンとイヤフォンである。

注意:2009年2月現在、SynthEditで作成されたVSTプラグイン(たとえばFreeampなど)やsfzをマルチコアCPUやマルチプロセッサ環境で実行する際に、同じプラグインを複数読み込むと動作に不具合が出る。これを回避するには、プラグインの本体(dllファイル)を使用する数だけコピーしてやる。たとえば、fa3_full.dllをコピーしてfa3_full-2.dllとfa3_full-3.dllを作ってそれぞれ読み込んでやればよい。

2009年11月追記:はるの散歩というブログの記事によると、Reaper3.x系では、プラグインの追加画面でプラグインを右クリック>Run as>Dedicated processでイケるようだ(さらに追記:続報によると、単純に右クリックから「Buggy plugin compatibility mode」を有効にするだけでよくなったらしい)。プロセスというのはプログラムを実行するハコのようなもので、本家フォーラムの記事によると、Native(通常)はReaper本体が動いているハコの中でまとめて、Separate process(別プロセス)はプラグイン用のハコの中でまとめて、Dedicated process(専用プロセス)はプラグインごとに用意したの中で個別に実行するらしい(ハコの中身がごっちゃになるのが問題なので、別のハコで動かしてやればよいというわけ)。デフォルトは設定画面で変えられる。

調べてみたものの詳細な原因についてはよくわからなかった。多分、マルチプロセッサ環境になるとスレッドセーフでなくなるような処理が何か含まれているのだろう(いずれにせよ動けば問題ないのだから、深くこだわる必要もない)。気にするなと言われてもなおスレッドセーフの問題について詳しく知りたい人は、C++:language&librariesのログmemologueというブログの解説などを参照(根本的には、OSだけ、コンパイラだけ、アプリ/ライブラリだけでなんとかなる問題ではないのだろうが、全体的な環境としてPCUnixの方が進んでるよなぁ:FreeBSDなんかは6.x系でスレッドセーフの問題をかなり締め上げたので、ソケット周りを取り込んだときのようにWindowsにも取り込めばいいのに、とちょっと思う)。完全な余談だが、memologueのノリは非常に筆者好みである。

なお、SoFtDrumなどテンポラリデータをファイル名ベースで扱うプラグインの一部は、シングルコア/シングルCPU環境でも複数起動で問題が起きる。これもファイルコピーで解決する。


原則とポリシー

音声データは24bit/48KHzのリニアPCMで扱う。上記のソフトウェアにこのデータ形式で不都合が生じるものはない。REAPERとAudacityの間のみ32bit(float)のデータを使う(音質的な問題ではなく、その方が処理が速いから)。完成後はCBR192kbpsジョイントステレオのmp3にする。

REAPERとTiMidity++を併用する上で、テンポの設定はMIDIファイルの最初の小節の0チックス目で行う必要がある(というか、MIDIの仕様でそう規定されている)。REAPER無料版はMIDI CCによるテンポ変更ができない(少なくとも筆者が探した限りやり方がわからなかった:Control surfaces(MIDIコントローラー)を使った外部からの制御ならできそうな感じもするが試していない)ようだ。マスタートラックのオートメーションにTempo mapがあるが、これははあくまでマッピング(画面表示とスナップ)の設定。Play speedを使えば全体の再生速度を変えられるので、ムリヤリ変化を出せなくはない。

時系列にしたがって変化する音はREAPER(MIDIイベントかオートメーションでプラグインのパラメータを操作する:どちらも設定方法はREAPERのページで紹介しているが、筆者はMIDIイベントを優先して使うべきだと思う)、そうでない音はTiMidity++とAudacityで処理する。Wavosaurはバージョン1.0.1.0現在音量のみオートメーションに対応しているようだ。REAPERからのパラメータ操作が微妙なプラグイン(EVMのbasslineなど)はVSTHostでfxpを作成してからインポートする。

MIDIラーン可能なものはMIDIイベントでのパラメータ操作をカスタマイズできる。コントロールチェンジは20~31番か52~63番あたりを使うと面倒が少ないと思う(102~119番も普通は空いているが、音源独自のコントロールチェンジで使われることが多いので避けた方が無難)。VSTHost(とプラグインによってはDomino)を使って設定を煮詰めておき、ファイルに保存したものを読み込んで使うとよい。Dominoのイベントグラフペインを使って、凝った操作を比較的簡単に実現できる。必須ではないが、Dominoの音源定義ファイルにコントロールチェンジマクロを設定してやればイベントリストが見やすくなる。プラグインによってオートメーション制御が便利なものとMIDIイベントが便利なものがあるので適宜使い分ける(MIDIイベント制御に対応していないものはオートメーションで動かすしかない)。

Audacityで動かないVSTプラグインはREAPERやWavosaurで使うか、日本語パッチを当てたAudacityにプラグインチェイナーを読み込んで使う(Windows版Audacityを使った実際の作業の特集記事を参照)。処理が重いものはノンリニアで処理する。

生楽器などの録音時はヘッドフォンで他パートのモニタを行う。録音中のパートは楽器から直接モニタする(必要なら両者をミキサで混ぜる)。ソフトウェアでもハードウェアでも同等に行える作業ではソフトウェアを優先して使う。

アマチュアの制作なので「大量生産しなければならないプロ向け」な処理は極力行わない。ニコイチは許容、パンチング録音もやる。


使い分け

複数の候補がありこの使い方がよいと決めがたいものについて。

プラグインチェイナー

VSTチェーンを各環境で使いまわすためにEffectChainerかMultifxVSTを入れるのだが、一長一短である。EffectChainerはプラグイン標準のGUIでしかイフェクトを操作できない。MultifxVSTは使い勝手がよく後述のMIDIラーン機能も強力だがag-worksのコーラスなど凝ったインターフェイスのプラグインを読み込むと落ちる。プラグイン標準GUIでの操作に抵抗がないのならEffectChainerをそのまま使えばよいが、筆者のようにフェーダーのGUIが欲しい人はひと工夫しなければならない(欲を言えばテキストベースで操作したいのだが)。

2009年11月追記:ソフトウェアのページに書いたとおり、VSTHostがスレーブモードを搭載して、高機能なプラグインチェイナーとして機能するようになった。MIDIラーン/MIDI制御系の機能が充実しているほか、内部ルーティングの自由度も高く、落ちにくさと対応プラグインの豊富さも魅力。VSTHost(マスター)<>VSTHost(スレーブ)の状態で立ち上げてからマスターを終了して他のホスト(マスター)<>VSTHost(スレーブ)に切り替え、相性問題をムリヤリ克服する荒業も使える。細かい設定ができる分手軽さではやや見劣りするが、選択肢が増えたのは嬉しい限り。設定方法などはDAW入門1を参照。

まず考えられるのは、MultifxVSTで読めるものはMultifxVST上で、読めないものはVSTHostかWavosaur上(REAPERのラックは保存方法が奇妙なため使っていない)でまず設定を保存し、そのうえでEffectChainerで読む方法。多少手間が増えるが、調整は大雑把でよい/しないというのであればなかなか合理的な方法といえる(どうせチェイナー系はデモ作成くらいにしか使わないし)。

どうしてもフェーダーで操作したいならもう少し手間が必要になる。対策なしでも読み込み可能なプラグインはMultifxVSTで読み込み、不具合が起きる場合のみMultifxVST上にEffectChainerを読み込んで、EffectChainerからさらに目的のプラグインを読み込むという方法である(設定は他のソフトで決めておく)。これなら、MultifxVSTをメインにしつつ凝ったGUIのプラグインも問題なく読み込める(余談だが、筆者はこの手のワークアラウンドが大好きである)。

ただし、GUI操作でたまに落ちることはあるし手間も多少はかかる。また、この状態でチェーンの変更(画面左上Chainの文字の右の赤三角ボタン)をすると落ちる(チェーンの保存や読み込みは問題ない)。XlutopのChainerというプラグインを使えばフェーダー操作が可能で落ちることも多分ないが、こちらは有料である。併用が不便ならお金をかけてもよいかもしれない(MultifxVSTが落ちないソフトなら、MultifxVSTの方が細かい設定が楽だと思うが)。

EffectChainerはDirextXイフェクトも読めるが、MultifxVSTとChainerは読めない。その代わりChainerはVSTiを読める(REAPERを使っていればあまり意味がないような気もするが、ndcMIDIなどと組み合わせるとラッパーとして役に立つかもしれない)。ちなみにREAPERは「Effect Name」の情報を優先してプラグインを表示するが、EffectChainerやChainerでこれを確認することができる(プラグインのGUIから?>Effect Info)。

プラグインチェイナーのホスト

別に何を使ってもよいのだが、それなりに特徴はある。

REAPERとVSTHostはVSTiも読み込めるのが強み。ドローバーオルガンをソフトウェア音源で鳴らして、アンプシミュレータに通して、レスリーユニット(ロータリースピーカ)シミュレータにかけるなど、イフェクト作業が音色作りにまで入り込んでいる場合は見通しがよくなる。筆者は、トラック完成までシーケンサとの連携がラクなVSTHostとDominoを使い、録音用にREAPERを使っている。ちなみにどちらも複数のプラグインを一気に読むことが可能。

日本語パッチを当てたAudacity(Windows版Audacityを使った実際の作業の特集記事を参照)は、当然のことではあるが、Audacityでの編集と相性がよい。普段パッチを当てないAudacityを使っていても、プロジェクトを保存してバージョン違いを再起動するだけで作業できる(もしかすると問題のある作業法なのかもしれないが、少なくとも筆者の手元で目立った不具合は出ていない:トラブル時の対応に自信がない人は避けた方がよいだろうが)。パラ出し(ファイル>複数ファイルの書き出し)をするならREAPERやWavosaurを使ってもよいのだが、同じプラグインチェイナーをすべての環境で使い回したいならAudacityの方がラクである。

Wavosaurではプラグインチェイナーが動かないが、自前でチェイナー(ラック)を持っている。動作が軽快で省力化につながる機能が豊富(ノーマライズや上書き保存がワンクリックで可能、ステレオトラックの片側ミュートやモノラルトラックのステレオ化にネイティブ対応しているなど)なのでデモの作成に最適だろう。筆者は、REAPERでマルチトラック録音>パラ出し>Wavosaurで加工>上書き保存>Audacityに読み込んでミックスという手順でデモを作ることが多い(1発録りで5分のデモなら30分くらいで作れる:REAPERでパラ出しする際、生音保存用と加工用で2回書き出しておくと便利)。この作業手順についてはREAPERのページの使用例の項で触れている。

セットもののプラグインを新たに仕入れた場合、プラグインチェイナーはとりあえず使わず、REAPERのラックやVSTHostなど複数のプラグインを一気に読み込めるホストで読んでやるとテストがラクである(一気に読み込んだ後1つだけ残してすべてバイパスする:調子に乗って何十個も読むとさすがに不安定になるが、10個くらいならほとんど問題ない)。編集こそできないが、VSTHostはWaveやMIDIの再生ができる(さすがにREAPERほどの使い勝手ではないが、一応ループ再生も可能)。

REAPERはミキサー機能が充実しているため、たとえばトラック1にアナログ音声を入れ、フェーダーとPANだけ通してトラック2に送り、ノイズ対策のイフェクトをかけてトラック3と4に送り、トラック3で普通に音作り、トラック4にはディストーションをかけてボリュームを絞り、両方トラック5に送って軽くリバーブ、最後にマスタートラックに送る、などということも簡単にできる。マスターイフェクトで凝ったことをやりたい場合はいったん1つのトラックに音声を集めればよい。イフェクトはフェーダーやPANの前に適用される(オートメーションでPreFxの音量やPANもイジれる)。

音源

たとえばエレピの音を入れる場合真っ先に挙がる候補はサウンドフォントからの録音とVSTiのLazySnakeだが、音色の段階から作り込みたいならLazySnakeだろうし、音のキャラだけ選んでイフェクトで音を作るならサウンドフォントがラクだろう(ローズとかウーリーあたりを使いたいなら最初から高品質なものがたくさんあるし)。

基本的には気に入った音を使えばそれでよいのだが、たとえばドローバーオルガン(演奏中にドローバーの出し入れやレスリーユニットのslow/fast切り替えを頻繁に行う)などはVSTiの方が断然使い勝手がよい。数種類の音色を使い分ける程度なら、サウンドフォントを複数用意して別トラックに録音してもよいだろう。

凝ったイフェクトで攻めたいなら、シンプル系の音源から録音した方が後の作業がラクである。締め切り間近のデモ作成などで一刻も早くそれっぽい音をでっち上げたいならIndependence Freeなども便利(音源とイフェクタが一体になっているので)。シンセなどはそれこそ星の数ほど選択肢がある(ハードウェアシンセという手もあるし)。

生っぽい感じを出したい場合は生楽器を使うのが一番(MIDIで生っぽい音を出す修練を重ねるよりは、普通に楽器を練習した方がずっと早いと思う)なので適宜生楽器も混ぜるが、同じパートで生楽器と打ち込みを混ぜるのはかなり難しい(TotoのFahrenheitなどではこれを物凄いレベルで実現しているが、素人に真似できるようなモノではない)。

MIDIのWave化とモニタリング

チャンネル数が多い場合、サウンドフォントを音源とするものはTimidity++で録音してしまった方が早い。MIDIファイルはどうせパラ出しするにしても、いちいちsfzを読んで音源を選ぶよりはTimidityのプレイリストにドラッグする方がラクである(sfzを読んだトラックを複製することである程度手間は減らせるし、後述の通り修正を繰り返し行う場合には便利だが:パラ出ししないのならsfzの方がラクかも)。

ただし、Timidity++では認識できないサウンドフォント(bennetng 8850asia.sf2など)がまれにあるので、その場合はsfzを使う以外に選択肢がない。Vienaでプリセットをイジった場合(生ピアノ系の音源でAttenuationをイジるなど)にTimidity++だとうまく反映されないことがあるので、これもsfzを使う以外ない。反対に、非力なマシンで巨大なサウンドフォントを使おうとするとsfzはエラーを吐くが、Timidity++はたいてい文句を言わずに処理してくれる。

新しく導入したサウンドフォントを試すなら、VSTHost上のsfz(と必要に応じてDomino)を使うのが早い。sfzはただサウンドフォントの音を書き出すだけの優秀なサンプラーなので、設定などであれこれ悩む必要はない。

面倒なのは制作時のモニタリングで、Domino(低負荷モード)+VSTHost(もしかしたらSAVIHostの方がいくらか軽いかもしれないし、スタンドアロン版のChainerの方がピークパフォーマンスは出るかもしれない)+sfzでリアルタイムモニタが可能なら何も問題はないのだが、同時発音数やマシンパワーの都合でリアルタイム再生に問題が出る場合はファイルをWave化する必要がある(上記より動作が軽いソフト組み合わせはほとんど考えられないので、ソフトウェアでの対応はムリだと思う)。

MIDI打ちの終盤では多数の楽器や音色を同時に鳴らす機会が増えると思うが、仮録音したファイルを(Waveで)パラ出ししておき、更新したパートのみ差し替えてモニタするとよい。バンド練習で各パートの個人練習と仮合わせを繰り返しながらアレンジを煮詰めていくように、パート単位での作り込みと全体のすり合わせをできるだけ区別した方が効率がよく、作業の指針も立てやすい(とくに初心者の場合、各パートで「何がしたいのか」を明確にする手助けになる)。

Wave化とモニタリングについてもう少し

一体型のDAW(REAPER含む)でMIDI編集機能を使うならConsolidate(freezeと表記するソフトもある)ボタンですんなりWave化ができるのだが、別々のソフトを使っていると一旦SMFを書き出して受け渡してからWave化しなければならない。REAPERは外部ソフトとのファイルのやり取りが優秀(詳しくはREAPERのページに書いたが、アイテムをオフラインにして外部エディタでの編集を反映できる)なので、一度MIDIファイルをパラ出ししてVSTi(sfz含む)を立ち上げた各トラックに読ませる作業をやってしまえば、その後はかなりラクに作業できる(Dominoを拡張子「mid」用の外部エディタに指定しておくと早い)。本番制作では、なんだかんだいってこれが一番手軽なように思う。メモリを節約するために、Fluidなどの巨大サウンドフォントは必要なトーンのみSoundFont Librarianなどで抜き出しておくとよい。

編集するトラック数が少ない場合、編集対象のトラックのみミュートしたラフミックスと編集したトラックの音を同期再生できれば手軽なのだが、2008年2月現在、DominoとREAPERを同期させるにはREAPERでControl surfaceの設定をしてDominoからMIDI CCを送ってやるしかないと思われる(DominoにはMTCマスターとMMCスレーブ、REAPERにはLTC/MTCマスターの機能があるが噛み合わない)。この辺の扱いはWavosaur(デフォルト設定だと、CC35を送るだけで再生を開始してくれる)の方がラクなので、少数のトラックで繰り返し修正を行うなら、ラフミックスのマスタートラックを(調整するトラックだけ抜いて)Waveに書き出してWavosaurで読み、DominoとWavosaurを同期してもよいだろう(修正したトラックはVSTHostで鳴らす)。

筆者の場合、仮組み終了(一通りのパートが出揃うくらい)まではDomino(とSW Synth)だけで作業することも多い。MIDIファイル単独での配布も考えているなら、とくに意識しなくても互換性がある程度確保できる点がメリットになる。本番録音に入った後は、REAPERとAudacityの間でパラ出しを繰り返してファイルをやり取りしている。

いづれの場合にも、Wave化が終わって不要になったトラックは(MIDIデータを残しておくかどうかはともかく)削除しない方がよい。トラックデータ(読み込んだプラグインやその設定)が残っていれば、次回の更新時にMIDIデータを貼り付けるだけで済む(Chainerのデモ版除く)。ちなみにREAPERには、ミュートしたトラックのレンダリングを省いて負荷を下げるオプション(PreferncesのAudioの項目)があるので一応チェックしておくとよいだろう。

その他

MIDIのCCで読み込んだプラグインを制御でき、かつVSTiを扱えるプラグインチェイナーを筆者は知らない。VSTiのオートメーションはできるだけプラグイン本体の機能で操作しておくと環境の変化に強くなるだろう(VSTイフェクトのオートメーションなら、MultifxVSTでの制御を前提に書いてしまう手もある)。

Chainerを使う場合、無加工のSMFファイルを読み込んでChainerのMIDI transmit channelからチャンネルを選択するという手が使えるのでパラ出しの手間を省ける(デモ版のChainerは起動時に問答無用で状態を初期化するので、正規版でないとREAPER再起動のたびにChainerの設定が必要:OSのハイバネーション機能などを使って再起動なしで作業するとか、メモリの内容を丸ごとファイルに書き出しておいて再開するという手もなくはないし、そもそも大した手間ではないのだが、使い込むなら購入した方が結局ローコストだと思う)。


操作方法

操作方法がわかるまで悩みがちなソフトについて軽く触れる。MultifxVSTとEffectChainerの基本的な使い方は、Windows版Audacityを使った実際の作業の特集記事を参照、REAPERについてはREAPERのページを参照。

VSTのプリセットファイル

fxpとfxbの2種類あるが、前者はプログラム、後者はバンクの設定を保存するためのものである。これはMIDIのバンクとプログラムの関係に似ており、個々のプリセットがプログラム、それをまとめたものがバンクにあたる(プログラムを複数登録できるプラグインではバンクの中からプログラムを選んで適用するが、プログラムが1つしかないプラグインでは選択の余地がない)。ちなみに、MIDIのプログラムチェンジイベントを送ると、プリセットバンクの中から該当するプリセットプログラムを探して適用するプラグインが多い。

MultifxVSTでは、上から2段目の黄土色の帯にあるpresetボタンを使う。最上段のChainという文字の右の数字は(MultifxVST自身の)プログラム番号を示しており、0から127まで設定可能(何かプラグインを読み込まないと0から変更できない)。右のSaveボタンでMultifxVSTのプリセットプログラムを、Save allボタンでMultifxVSTのプリセットバンクを保存できる。その下のCopyボタンとPasteボタンはプリセットプログラムのコピペ用。

VSTHostでは、メインメニューのPlugIn(プラグインを何か読み込まないと表示されない)から行う。プリセットプログラム選択のほか、バイパス、ミュート、MIDI割り当て、チェーンの設定などプラグインパネル(プラグインを読み込んだ後最初に表示される、プラグインの基本設定を行うパネル)とほぼ同様の設定項目がある。また、Export XMLを選択すると、プラグインのパラメータ情報(何番がどのパラメータか)を書き出せる。

EffectChainerのfxp/fxb読み書きは、スパナボタンでプラグインのGUIを開いてから、同じ窓の左上にあるprogramボタンを押して行う(プリセットの選択もここ)。

MIDIラーン

MIDI信号でVSTプラグインの設定を(通常はリアルタイムに)制御するために、どのMIDI信号でどのパラメータを動かすのかプラグインに教える(設定する)。これによりたとえば、PANイフェクトを一定(または不規則)周期で左右に振るとか、特定パートのみ強めにコンプをかけるとか、VSTiの音色を演奏中に変えるなど、時系列に沿って音を変化させることができる。ソフトによって設定方法が異なるが、プラグインチェイナーやVSTホストの機能で統一的な設定を行うことも可能。まずは個々のプラグインから。

Synth1では中央下のoptボタンを押して設定する。Shiftキーを押しながらoptボタンを押す>目的のツマミをクリック>コントロールチェンジを送る、という作業を繰り返して、設定終了後にもう一度optボタンを押してもよい。設定画面のMIDIタブでSaveボタンを押すとmccファイルとして保存できるが、これはコントロールチェンジの1~127番までそれぞれにどのツマミが対応するか記録したcsvファイルなので、内容がわかるなら手書きで設定してもよい(パラメータの並び順は、VSTHostのEdit Parametersボタン(紙とフェーダーのアイコン)をクリックするか、REAPERならUIボタンをクリックすればわかる)。値は0から始まり、たとえばcvsファイルの21番目の値が3であれば、コントロールチェンジの20番に上から4番目のocs2 tuneが割り当てられる(値が-1だと割り当てなしになる)。この数え方はVSTの仕様らしい。プリセット(設定方法とは関係ないが、おそろしく充実している)のロードはプログラムチェンジで行う。

LazySnake(右上にmidi Learnボタンがある)はプログラムチェンジにのみ対応しているようだ。MIDIラーンONの状態でプログラムチェンジを受け取ると、未登録のプログラムチェンジなら現在のプリセットを割り当て、登録済みのプログラムチェンジなら割り当てられたプリセットをロードする(Clearを選ぶとリセット)。MIDIイベントによるパラメータの変更は多分できない。

プラグインチェイナーやVSTホストの機能で設定するなら、プラグイン側がMIDIラーンに対応していてもいなくてもMIDIラーンを利用できる。もちろん、LazySnakeのように一部のパラメータしかMIDIラーンに対応していないプラグインに対しても有効(なのだが、VSTiを読み込み可能でかつMIDIラーンの集中管理ができるプラグインチェイナーを筆者は知らない:REAPERのオートメーションで代用可能なので後述する)。プラグインごとに設定方法を覚えなくて済むのも利点だろう。VSTeはMIDIラーンに対応していないものがほとんど(VSTiと違って、MIDI信号を受け取ることを最初から想定していないものが多い)なので、この方法に頼ることが多くなると思う。反対に、VSTi(とくにシンセ系)には、演奏に必要なMIDIラーン機能が最初から搭載されていることが多い。

MultifxVSTの場合、Effect2のタブで目的の設定項目を選び、最下段やや右のcontroler #:の右のプルダウンメニューで割り当てるプログラムチェンジを選択する。MultifxVSTはVSTiを読めないので、上記のLazySnakeなどには使えない。

REAPERにはプラグインにMIDIラーンを提供する機能がないが、ソフトウェア内部でオートメーションを組んでやれば、REAPERからプラグインのリアルタイム制御を行うこと自体は可能である。ただし、MIDIデータと違い作成したオートメーションのパターンを他のアプリケーションで使い回すことはできないし、自分好みのエディタ(たとえばDominoなど)を自由に選んで編集することもできない(オートメーションをMIDIデータにエクスポートして、編集して、またインポートする、という手順で解消できる問題だが、REAPERでそれが可能なのかどうか筆者は知らない)。REAPERはVSTiを読めるのでMIDIラーン非対応のVSTiをリアルタイム制御したい場合には貴重な選択肢だったが、VSTHostがスレーブモードを搭載した現在では、やや重要度が下がったかもしれない。

その他

sfzはマルチティンバー(1つのプロセスで複数の音色を出せる)だが、出力は単なるステレオ(すべてのMIDIチャンネルの音が混ざって出てくる)なので、パラ出しする数分のsfzを同時起動して、それぞれ分担して再生しなければならない(VSTHostでは、プラグインパネル左中段にあるMIDIポートアイコンをクリックしてFilter Settingを開き余計なチャンネルをミュート、Reaperでは、アイテム右クリック>Source properties>Only play channelsで使用するチャンネルを指定して、データの取捨選択を行う)。バンクセレクトやプログラムチェンジは演奏中でも可能(サウンドフォントファイルの読み込みはMIDI命令ではムリ)。プラグインパラメータの#1と#2と#3がそれぞれQUALITYとEFFECTSとMODEに対応していることは手元でわかったが、それ以外は不明。MIDI Implementationもよくわからず、ウェブで資料を探しても「Pitch Bend, Modulation, Sustain Sw and a lot more」という謳い文句しか引っ掛からなかった。手元では、EFFECTSオフでもChannel Volume、Expression、Panpot、Pitch Bend Sensitivity、Hold1が利くことは確認している。バンクセレクトはMSB127のLSB0で128扱いになる(XGでボイスタイプ127のバンク0のPC1がスタンダードドラムスになるのと同じ方式)。なお、VSTHostバージョン1.46とsfzバージョン197の組み合わせでマルチティンバーな使い方をしようとすると、筆者の手元ではよくわからない挙動を示す(ので、不具合が出る人はReaperなどを利用しよう)。

VSTHostのプラグインパネルの左上段にある鎖アイコンをクリックしてChain Afterを開くと、他のプラグインから音声出力やMIDI出力を受け取れる(一番左上のチェックマークアイコンが音声、その右のMIDIポートアイコンがMIDI出力、1段下の矢印はドライ信号をマスターに送るかどうかの選択)。あとは見たままなので勘でも操作可能だろう(PlugInメニューからもプラグインパネルとほぼ同等の操作ができる)。ウィンドウの表示がおかしくなった場合は、とりあえず、画面最上段のメニューバーからWindow>Tileと選べば何とかなる。プラグインパネルが見えなくなった場合、Windowメニューから見えなくなったパネルを選び、Ctrl+F4でとりあえず閉じることができる(Ctrl+Tabでもパネルやウィンドウを選べる)。画面上から2段目にある矢印のアイコンで、現在アクティブなプラグインのプリセットを選択可能。FileメニューからSave Performanceを選択すると開いているプラグインを記録でき、Reloade Performanceを有効にしておけば次回起動時に再現される。AutoSave Performanceを有効にすると終了時に自動記録される。Save Performance Asはこの情報に名前を付けて保存するもので、Load Performanceまたは画面左上のプルダウンメニューから呼び出すことができる。スキャン関係のメニューもここにあるので、Rescan on Start(起動時にプラグインを再検索する)だけでも見直しておくとよい(ドラッグアンドドロップで読んだ方が早いので、スキャンの必要はないと思う)。

Independence Freeのベースはなぜか1オクターブ低い。MIDIファイルのベースパートを1オクターブ上げてやらないとまともに鳴らないので注意。逆相でぶつけて確認したが、Fng M-Bass Key Switch C0とFng M-Bass Longはデフォルトだとまったく同じ音である(多分イフェクト部分の設定が違うのだろうが確認していない)。ドラムス(単音で聴くと一瞬「おおっ」と思うが、ドラムパターンを組んでやると大した音が出ない)はハイハットの音が変(クローズ/ペダル/オープンに相当する部分が、緩めのクローズ/きつめのハーフオープン/ゆるめのハーフオープンになっている)なので、最初からIndependence Freeを使う前提で打ち込みをする必要があるだろう(少なくとも、オープン>ペダルミュートの部分をペロシティの小さいクローズに置き換える必要がある)。また、Hand ClapがスネアのRuffに差し替えられている。エレピだけはごく普通。


制限事項

前述のとおりのREAPERの無料版はテンポ変更がちょっと面倒である(マスタートラックのオートメーションで多少イジれるが、Timidity++で録音した音源と同期させるとなるとちょっと厳しい気がする:どちらもノンリニア録音可能なので、理屈上は、タイミングを計算してやれば問題ないはずだが)。MIDI再生のホストをREAPERにせず、たとえばDominoからMIDIYoke経由でMIDI命令だけ送ってやれば、不規則なテンポの曲でも録音できる(テンポ変更自体は、タップテンポソフトなどを活用してMIDIファイルに反映させておく)。

これもすでに述べたがMultifxVSTは凝ったGUIのプラグインを読むと落ちやすい。過負荷で音飛びが発生するような状況でVSTiでの演奏を続けたままfxbを読み込んだりすれば、VSTHostあたりもハングする(ホストが固まっているのかプラグインが固まっているのか不明だが、これはまあ仕方ない)。バージョン1.0.1.0のWavosaurはSave Chaneで自分自身も上手く読めないファイルを吐くようで、変なファイルを読ませると固まる(ダミーのプラグインをバイパス設定にして入れてやればとりあえず動く)。筆者の環境だと、これ以外に頻繁に落ちるソフトウェアはない(ごくまれにAudacityが落ちるくらい)。いづれもOSを巻き込むような落ち方はせず、タスクマネージャを呼ぶまでもなく強制終了できる。

SIRはインパルス応答を行う都合で波形のずれが出やすい(とくに複数のSIRを数珠繋ぎにした場合:freeverb3にはゼロレイテンシモードがある)。Freeamp3やFLOORFISHも多少のずれがでる。これが問題になる場合は、トラックの最初の方に目印となる波形を挿入しておくとよい(設定ファイルのページでプリフィックス用のファイルを公開している)。ただし、FLOORFISHをゲートモードで使う場合はインパルスが丸ごと潰れてしまうので上記のファイルは使えない(これが問題になるような状況はあまり想像できないが)。

gigファイルなど特定ソフトウェア専用音源を使用するには手間がかかる。CDXtractなどでムリヤリ変換することは可能だが、プリセット情報がおかしくなることが多いので真面目に使うなら自分でプリセットを書かなければならない。これはまあ当然といえば当然。

日本語版のヘルプがないソフトウェアがある。無料のソフトウェアを中心に選ぶとどうしてもヘルプが英語のみということが多いが、これがどのくらいのデメリットになるかはソフトウェアの種類(有志による解説記事が豊富なものもある)による。有料ソフトなどでも翻訳が酷いために結局英語ヘルプを参照しないと役に立たない例はあるので、日本語ヘルプがあればそれでよいわけではないが。


録音時の注意

REAPERのラックやWavosaurのProcessing機能を使うと、多数のイフェクトをかけながら録音すること(俗に言う「かけ録り」)が可能である。しかし、録音の音作りとミキシングの音作りは分けて考えた方がよい。

かけ録りの場合、リアルタイム録音では音量の上限を決め打ちできない(=ノーマライズできない)ため、コンプやオーバードライブなどが十分な性能を発揮できないし、どんな音が録音されるのか事前に正確な予想はできないため、編集でもっとも大切な基本の音作りの部分が当てずっぽうになってしまうという短所がある。モニタが不正確になるのもいただけない(モニタだけ生音でするくらいなら、最初からノンリニア加工でよい)。

その一方で、ドローバーオルガンにレスリーユニットシミュレータをかけたり、エレピにコーラスをかけたり、エレキギターにアンプでオーバードライブをかけるなど、イフェクトが楽器の一部とみなせる場合、イフェクトセッティングを先送りにするとやはり弊害がある(優柔不断になりすぎると際限がなくなるというのもあるが、楽器の音がしっかり決まっていない状態でアレンジや演奏を考えるのは効率が悪い)。

もちろん、加工済みの音をモニタしながら生音をコントロールできるプレイヤーと、音の入り方を的確に予想して予想外のポイントも流れを切らずに修正できるエンジニアが録音するなら、かけ録りのデメリットはあまり問題にならない。また、加工の如何を問わず通用する普遍的なアレンジや演奏ができるプレイヤーと、ノンリニアならではのきめ細かいパラメータ操作ができるエンジニアが録音するなら、生音録音のメリットがデメリットを上回るだろう。しかし慣れないうちは録音の音作りとミキシングの音作りをしっかり分けて考えた方が効率的である。


ネットワーク越しのファイルのやりとり

複数人で作業する場合、ファイルのやりとりが意外と面倒である。筆者のように自前でサーバを立てている場合はそれを使えばよいが、そうでない場合、メールで送るにはサイズが大きく人数が多いと大変だし、IRCでDCCというのも(IRCを使い慣れたメンバーばかりなら便利だが)今更感があるし、公開アップローダーやファイル転送サービスを使うのも回数が多いとかったるい。

筆者とその仲間内の場合、10GBオーダーのデータは手元に余っている古い3.5インチHDDに詰めて手渡しなり郵送なりで済ませてしまうこともあるのだが、その方法にしてもある程度ハードウェアの知識がある人にしか通用しない。また、最終データだけ交換するならともかく、共同作業で「ベースライン変えてみたからギター被せてよ」とか「ちょっとこっちで混ぜてみたいからドラムスパラでちょうだい」とか、そういったやり取りに使えるような方法でもない(家が隣同士とか、そういう事情でもない限り)。

しかも、作業環境が統一されていればよいが、そうでない場合ファイル形式の問題もある。互換性とデータの完全性を重視するならwavかaiffということになるのだがブロードバンドでないと相当厳しい。では可逆圧縮はどうかというと、flacにしろapeにしろalacにしろWMA Losslessにしろ「みんながすんなり読める」フォーマットではない(筆者がロスレスデータを送るときは「ごめん、手元で変換して」と断ってflacを使っている:手元で変換してもらう前提なら、flacがもっとも万能だと思う)。

可逆圧縮で互換性重視ならmp3だが、プリギャップの問題が面倒だし、トラックデータをCBRで潰すとファイル容量が無駄になる(とくにドラムスをパラ出ししたような場合は、ADSLクラスの回線だと切ないサイズになる:mp3でVBRを使うならoggの方が、という気がする)のであまり使いたくない。だったらOgg Vorbisかというと、性能的には申し分ないのだが直で読めないソフトが多いので使いやすくはない(仕方がないので筆者は、mp3とoggを両方用意して「読みやすい方を使って」という対応にすることがあるが、ディスクスペースの浪費を考えるとなんだかなぁという気がする)。

結局「これでOK」という万能な解決策はなく、状況に合わせてその場しのぎをしなければならないのが現状(2009年現在)である。妥協策として、容量が大きいウェブサイトサービスを利用して、ファイルアップロード機能がある掲示板(I-BOARD/LRとか)やWikiなどを用意するのが無難かなぁという気はするが、パソコンが苦手な人にとってはイマイチ敷居が高い。

せっかくインターネットが普及した時代なのに、これはあまりにもったいない。せめてファイルフォーマットの問題だけでも、早いうちに解決して欲しいものである(たとえばLogicにはApple Compressor(まーた紛らわしい名前をつけたもんだ)というツールが付属しておりoggもflacも読めるらしいが、だったら透過的に処理してくれてもいいじゃないのよと思わずにいられない)。

なお、ビート検出とタイムシフトを組み合わせたツールでタイミングを自動調整すれば多少のプリギャップは無問題に思えるかもしれないが、アタックタイミングが機械的に揃ってキモチワルイ演奏になったり(たとえばポピュラーミュージックの場合、ベースはややハシり気味になることの方が多い)、せっかくモタらせて入れたスネアがジャストタイミングになってしまったり、サビで思い切り突っ込んだはずが前半モタりに変わっていたり、注意して使わないと弊害が大きい。


オマケ(イフェクタについて)

パソコン上でかけるソフトウェアイフェクタと実機イフェクタでかけるハードウェアイフェクタがある、というところまではよいのだが、ごく基本的な注意が抜けている解説が多い気がする。それは、リアルタイム処理ならハードウェアが有利だということである。

もちろん、デジタルイフェクタならソフトウェアが乗った計算機で処理しているのには変わりなく、規定時間内に計算が終わればそれでいいわけで、ハードだソフトだと区別する意味もそれほど重大ではないのだが、パソコンのような汎用ハードで処理するのと比べて、専用ハードでの処理はリアルタイム性を得るのが圧倒的に容易である。反対にノンリニア編集では、アウトプットさえ同じであれば専用ハードでの処理にメリットはほとんどない。チューブアンプの挙動やキャビネット歪みなど、デジタルシミュレートが難しいものを補うだけで足りる。この都合はぜひ考慮しておいた方がよい。

このことはモニタの取り方にも左右され、マイク音声に(積極的な音色作りとは関係ないノイズ対策の)ハイパス/ローカットをかけるくらいなら、ミキサーからドライ(加工前)の音だけ出してモニタしても大した問題ではない。いっぽう楽器の演奏や歌唱をリアルタイムでやるなら、それなりに工夫しないと面倒な問題が起きる(金銭的なコストや運用上の手間を直撃することがある)。

もう1点決定的に異なるのは操作性で、たとえば専用ハードウェアであるミキサーのフェーダー操作はどうやってもマウスとキーボードで再現できるものではなく(だからフィジコンが必要になる)、反面オートメーションによる正確無比な操作は人間が真似できるようなシロモノではない(しかもオートメーションの場合、たとえば32チャンネル同時にバラバラの操作をさせてもヘッチャラである)。これらは優劣を云々するよりも使い分けを検討すべき問題だろう。



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