筆者が食べた珍しい料理、もどき作りに挑戦した本格料理、毎日の食事としては少し大掛かりだがたまに作りたくなる料理などを、聞き齧りうろ覚えの作り方とともに紹介する。
食材の入手が大変なので、ユッケジャンクッパとおじやと韓式泡飯をごちゃ混ぜにしてごまかしたい。肉を茹でて使うことと、調味料をまぶした後少し寝かせることと、スープを入れる前に軽く炒めることがポイント。もやしと青野菜(小松菜かホウレンソウでいいと思う)は最後に乗せる。山菜類が手に入らなければニンジンとシイタケとニラとネギともやしくらいでもなんとかなる。多分邪道なのだろうが市販のキムチ(白菜とか大根とか)も少しだけ足す。野菜は細切りor薄切りにして、火が通りにくいものは下茹でしておく。
牛肉ブロック(モモかスネ)は400~500gくらいのものを選び、生姜水に晒して酒と生姜とネギで茹で、冷まして手で裂く。調味料は醤油4:酒2:みりん2:トウバンジャン1:テンメンジャン1:ニンニクすりおろし1:生姜すりおろし1(全部大匙)くらいと唐辛子を混ぜるのだが、中華料理用の四川唐辛子を使うと恐ろしく辛くなるのでぜひ朝鮮料理用のもの(甘味や風味が強い)を使おう。スープ(漉した茹汁)は2Lくらいか。もやしと青野菜は茹でて流水で冷やして水を切り、少しの塩とごま油をあえておく。
ニラネギもやし青野菜以外(キムチ含む)に調味料をあえて冷蔵庫で30~60分くらい寝かせ、ごま油(大匙2くらいかねぇ)で焦がさないように炒めて、スープを入れ、煮立ったら沸き上がらない程度の沸騰を保つ。軽く灰汁を引きながら(灰汁を取りきるよりも油を捨てない方が重要なのでムキにならない)5~10分くらい煮込むとユッケジャンタンの完成。すぐに使わない分はジッパー袋で冷凍すれば1週間くらいは持つ。
煮立ったユッケジャンタンにニラとネギを加えて軽く煮込んだら仕上げ油(ごま油でいいけど、花椒油とかでも面白い)、ご飯にかけてもやしと青野菜を乗せて完成。なお朝鮮料理にはコムタンというこれまたうまいスープがあるが、家で作るにはちょっと手ごわい。
この料理は大変難易度が高いが、クリアすべきポイントは1点に絞られる。それは、帆立の養殖をやっている漁師さんと友達または親戚になることである。難しいが、できないと話が始まらないので、どうにかしてここをクリアしたとしよう。稚貝の季節(地方により3~6月くらい)になったら漁師さんに「稚貝欲しいなぁ」とお願いする。このとき数量指定は明確にしなければならないので注意が必要。毎年毎年どこかの浜で、
漁師さん:時期だから稚貝持ってってあげる。2カゴもあれば足りるかい?という古典悲劇が繰り返されている(浜の人が言う「カゴ」とか「鍋」とか「袋」というのは、陸の人が思い浮かべるカゴとか鍋とか袋とは大きさが違うことがよくある)。普段の付け届けを怠らないのはもちろん、稚貝の時期はたいへん忙しいので、自分でも水揚げ作業(たいてい早朝か深夜)を手伝いに行こう。
都会から越して来た縁戚:ありがとう。家族が多いから助かる。
漁:足りなかったら早めに言ってくれればまた持って行くからね。
数日後、カゴ(サンコーのサンテナー27.6L:普通盛りで20kg、すりきり満杯盛りで25kgくらいの稚貝が入る)に山盛り2つ+オマケ(というかカゴに詰めようとして入りきらなかった半端)で米袋1つ分の稚貝が軽トラで届く。
縁:ぎょええぇぇぇ。
カゴ(丸篭と呼ばれる円筒状のものが主流だが、一部でザブトンと呼ばれる四角いカゴも使用されている)を海から引き上げたら、浜で稚貝をほろい出し、選別機で小さすぎるもの(規格外)をはじく。もらえるのが正規の貝か、規格外か、「ざっぱ」(漢字で書くことはまずないが、たぶん「雑端」だろうと思う)と呼ばれるさらにランクの低いものかは、豊漁不漁のタイミングや漁師さんとの親しさによる(漁師さんは気前の良さを潔しとする人が多いので、ざっぱを他人にあげることはめったにない:飲食店に売っている(というかわざわざ買いに来るらしい)ところはまれにある)。選別機である程度海水洗浄されるが、食用にするならもう一度海水で洗っておいた方がよい(海水はその辺の水中ポンプからいくらでもかけ流している)。泥が多い環境にあったものは、海水を引いたいけす(地域によっては使わないのでバケツなどで代用)に入れて少し泥出しをした方がよいかもしれない。エビの幼生みたいなもの(浜では「しおむし」と呼ぶことが多いのだが、フクロエビ上目ワラジムシ目コツブムシ亜目の「シオムシ属」とは関係ない模様:まあどっちみち「小さい節足動物」には違いないけど)や他の貝類や軟体動物(ホヤとかムール貝とか)がくっついているので、死に貝や空貝とともに取り除いておく。
この料理は素材の風味だけでなく臭みも濃厚に引き出してしまうので、稚貝が元気なうちに調理を開始するのが大切である(死んでいるのは論外)。稚貝をざるに入れて水道水でざっと洗い(真水で洗うと風味が落ちるという人もいるが、港で汲み上げた海水はけっこう汚れているので、筆者は洗う)、すぐに圧力鍋に入れ、料理酒を軽く振りかけて蒸す。稚貝からけっこうな水分が出るので、このとき加える酒は呼び水というか、加熱し始めの時点で鍋が空焚きになるのを防ぐためのもの(ただし足りないと焦げるので、慣れないうちは少し多めに:糖分が多い酒を使うときは水を足した方が無難)。生姜水なんかでもよいのかもしれないが、筆者はいつも料理酒を使う。圧力切り替えが可能な機種では低圧に設定して、10~20分(好みと稚貝の大きさによる)加圧調理し、圧が抜けたら蒸し汁と貝の中身と貝殻に分ける(火を通してあれば中身は指で簡単に外れる)。このときウロと呼ばれる黒い部分(中腸腺)を外しておくと臭みが出ず冷凍保存もしやすいのだが、外す作業がとてもメンドクサイ(成貝のウロより頻度は低いが、食中毒の原因になることもあるので外すのに越したことはない:地元では外さずに食べる人も一定数いるが、油やけの原因になるので、冷凍保存する場合は外すべき)。
蒸し汁を鍋に入れ、ごく弱く沸騰させて膜状の油(ウロに含まれており、臭みがある)が出たら取り除く。このとき控えめな沸騰なら油とわずかな灰汁だけを取れる(加熱を少し強めると灰汁も相応に増え、風味は弱まるが臭みも減る)。灰汁を取り終えたくらいで臭みやアルコールも大方飛ばせているはず。蒸し汁を火からおろしたら出汁用の乾燥昆布を加え、荒熱が取れるまで自然冷却して昆布を取り除く。稚貝の中身は、蒸し汁(火からおろした時点で少し取り分けておく)と醤油と酒と砂糖を同量くらい混ぜた調味液で煮る(もちろんお好みでよく、みりんを少し加えたり、黒砂糖を使ったりしてもよい:生姜と葱の分量ももちろんお好みで)。煮汁は多すぎない方が無難で、稚貝が6~7分漬かるくらいの分量から少し煮詰めるような感じだろうか。少し水分が減ったら火からおろし、蒸し汁と同様に昆布(濃厚さを求めるなら戻した乾燥しいたけも少し)を加えて自然冷却し、昆布を取り除く(冷ます途中で1~2回上下を混ぜた方がよいと思う)。貝殻は捨てる(たいていの地域では生ゴミ扱いだと思う)か、洗って畑の肥料(上級者向け)にでもする。
できあがった煮物は非常に濃厚な風味で、ご飯に乗せたり粥に入れて食べてもよいし、チャーハンやおにぎりの具だとか、八宝菜の具材(煮汁も使いたい)にも酒のつまみにもなる。煮汁だけ少し取って、卵かけご飯の醤油の代わりだとか、あんかけの隠し味だとか、少し量がかさむが磯辺焼きの付けだれなんかにも使える。蒸し汁から作ったスープも非常に濃厚で、少量用いるだけで強い風味を得ることができる。どちらもすぐに使わない分は冷凍保存しておくのがよいだろう。
作り方にバリエーションが多く、スライス肉を焼いて、すりこぎで砕いて、汁ごとトロ火にかけ水分が飛ぶまで乾煎り、ニョクマム(ヌックマム:ベトナムの魚醤、タイのナンプラーと似ている)と塩などで軽く味付け、というのが基本のようなのだが、最初の加熱で茹で豚を使うレシピや、肉もロースを使ったりバラを使ったりとさまざま。なんだかややこしいが、とにかく豚肉を加熱して砕いて炒ると、中華でいう肉鬆のようなフレークができる(タイにもムーヨンという似たような料理があるそうな)。
ベトナムではこれを密閉容器に入れ冷蔵しておくようで、軽く乾煎りして(または少量の油で炒めて)から使う。ふりかけのようなノリでご飯にかけてもよいし、チャーハンや粥などの米料理にも合うし、サンドイッチの具にもなるそうな。スープを作って「肉っけがないな」というときに少し入れたり、おひたしや冷奴などに鰹節の代わりにかけても悪くない。ベトナムでは各家庭で作っているらしいが、日本ではRuoc Thit Heoという既製品を使う人が多いようだ。
後から調べたところ、ベトナム南部で「ruốc」というと小エビやエビペーストを指すようで、北部で「ルオック」と呼ばれている肉田麩(と似たもの)は「チャーボン」というらしい。
筆者が使っているのはロールドオーツなのだが、燕麦(カラスムギの栽培種でオート麦とも)は種類がややこしいので先に紹介しておく。オートミール(oatmeal)というのはようするに燕麦加工食品の総称。オートグローツ(oat groats)というのはoatのgroatなのだが、groatには「外皮(bran:日本語だとフスマ)を取り除いた麦類」「フスマを取り除いて粗く砕いた麦類」の両義があって、前者である(=挽き割りでない)ことをとくに示したい場合はホールグローツ、後者はアイリッシュオーツ(粗め)とかスコティッシュオーツ(細かめ)とか、まとめてカットオーツなどと呼ばれる。これに対し、ホールグローツを蒸してローラーで潰したのがロールドオーツ(押麦)で、アメリカのメーカーが「オールドファッション」と称しているのがこのタイプ。ロールドオーツを砕いたのがクイックオーツ、再加熱が不要になるところまでしっかり調理したのがインスタントオーツ。
グラノーラ(Granola)はようするに焼いたロールドオーツ(クイックオーツで作ってもまあまあ似たような感じに仕上がる)なのだが、そもそもはグラハム粉の生地を焼いて砕いたグラニューラ(Granula)という食品が先にあって、その類似品として市場に出てきたらしい(詳細は調べていないが裁判にもなったのだとか)。だいたいの作り方としては、ロールドオーツを乾煎りして、油脂(オリーブ油でもココナッツ油でもバターでも)を温め、オーツを戻して調味料も適宜入れて混ぜ、軽く焼き色がついたら広げて冷ます、とかそんな感じだろう(オーブンでも鍋でも作れる)。テキトーなタイミングで、ナッツ類(乾煎りのときからでいいと思う)や香辛料(調味料と一緒でよろしかろう)やドライフルーツ類(食べる直前でよさそう)を混ぜて作るとバリエーションが出る。そんなに足の速い食品ではないと思うが、筆者は食べる都度作る(実益がどれほどあるかは知らないが、油で加熱する料理は作り置きしたくない)。
ポリッジ(porridge)というのは、挽き割りのオートグローツを水から煮て、塩やミルクを加えて食べる粥の一種(水ないし下味を施した水に浸してから作ることもあるそうな)。しかし調理が大変なので、クイックオーツと体積2倍程度の水を加熱(途中で混ぜれば電子レンジでも可)してモドキにするとラク、インスタントオーツにお湯をかけて作るともっとラク。ロールドオーツを煮たものはポリッジとは言わないのかもしれないが、筆者はこっちの方が断然好き。体積2倍(重さなら5倍くらい)の水と、レンジでなく鍋を使って少し煮込む。ロールドオーツはスープの具(中華粥のイメージと豆のスープのイメージの中間くらい)にもなるし、インスタントオーツをカレールーなどのツナギにすることもあるそうな。ミューズリーはもともと、ロールドオーツを水でふやかして、レモン汁と煉乳とリンゴを加える療養食だったそうな。
余談ながら、アイルランド料理では上記のアイリッシュオーツのほか、ジャガイモと羊肉がよく用いられる。羊肉はイングランドのサフォークやウェールズのウェルシュマウンテンの方が有名だが、アイルランドとスコットランドでもよく食べられるそうな。イギリスの有名な飲食物でイングランド由来というものはごく珍しい(南西部のコーンウォールなど、都市化から取り残された地域には食品で有名なところもあるけど)。ご馳走といわれるオグロシギ(godwit、シギ科Numeniinae亜科:日本で見られる田鴫や山鴫はsnipeないしwoodcockで、シギ科Scolopacinae亜科)もスコットランドが本場。ウォーカーやマクビティもスコットランドだし、ギネスに至ってはイギリスでなくアイルランド。さすがに元「ウールの国」だし、上で触れたサフォークを中心に畜産酪農の伝統もあるはずなのだが、その羊肉を使った代表料理がかの悪名高いハギス(もともとはスコットランド料理ではなく、イングランド料理だったのだとかなんとかいう話もある模様)だったりして、しっかりオチがついている(イギリスの料理については、英国大使館がクックパッドで公開している資料が詳しい:https://cookpad.com/recipe/list/7597382)。
追記:朝食用にシリアルを食べるようになり、オーツ麦はほとんど食べなくなってしまった。ロールドオーツならあれば使いはするのかもしれないが、分量的に買う気が起きない。ケロッグ恐るべし。
近所で安く売っているので活用したいのだが、まだ試行錯誤中。中華だと炒鶏肝ないし爆炒鶏肝(爆炒はただの炒よりも高温で調理する意)という、ネギとかニンニクの芽なんかと炒める料理が一般的なよう。ネギと合うのはけっこう嬉しい特徴だと思う。炒める場合の下ごしらえは豚レバーと大差なく、水にさらして酒・醤油・香味に片栗で油通しでよい(卵は使うとしても微量が無難:火を通しすぎると臭みが出るし内臓肉なので生焼けも危険=薄くても厚すぎてもダメという事情があって、切るのがけっこう難しい)。他には煮付け系の使い方が多いらしく、平凡に酒・醤油・砂糖で煮るか、煮詰めて佃煮っぽくするやり方もあるみたい。筆者の近所で売っているものはわりと大きいパックで、冷凍して使いたいため、ひとまず煮ることにしてみた(油通しの方が仕上がりはよいかもしれないが手間だし、油が酸化するため保存に向かない)。
ボトムプロコーナーでも触れたように、鶏肉(レバーなどの内臓肉を含む)はカンピロバクター汚染のリスクが高いので、肉から飛沫が飛ばないような扱い方が必要(ゴミの扱いにも注意)。筆者自身は中華屋風に、生のまま切って(硬い部分や血の塊はこのとき取り除く)ザルに入れ、ボウルに水を張ってザルごと静かに沈めているが、キッチンの環境も考慮しなければならず、どうするのがいいとは一概にいえない。まあそこはそれぞれ何とかするとして、30分くらい水に晒したら軽く茹で(和食でいう霜降りくらいでよい:ジャーレンがあると便利)、水で洗ってから改めて煮込む。筆者は水に晒すとき生姜水(牛乳を混ぜる人もいるらしい)を使うし、下茹でに八角を入れたお湯を使う案もある。臭みというか、ある程度のクセは残すのが無難で、あまりムキになると味が抜けすぎる。
煮汁は前のページで紹介した豚角煮とほぼ同じタレだが、少し薄味志向というか、下味のつもりで味付ける(水が多め)。葱姜蒜は、ネギが普通でショウガが多めでニンニクが少なめ。煮立つとアクが出るが、細かくて灰汁取り網だと取りにくいので、お玉かレンゲで掬った方がラク。これも筆者は徐冷で作っており、アクを引いたら保温鍋で温度をキープする。仕上がったら、冷凍する分は煮汁をひたひたくらいまで入れて容器に(汁は保存用で解凍したら捨てている)。そのままでも珍味っぽく楽しめるが、炒めて表面をカリっとさせるのもいい感じ(焼き目だけつけたら取り出してから他の具材を炒めないと崩れやすい:冷凍した場合はとくに脆く、中まで再加熱してから表面だけさっと焼かないとグズグズになる)。野菜と炒めたときは軽くとろみをつけた方が食べやすいと思う。
余談ながら、今日のフォアグラは普通肥育したガチョウのレバー(これが元らしい)を指すが、肥育したアヒル(ないしその野生種のカモ)を用いることもあり、18世紀くらいまではニワトリも用いられていたそうな。
薪しか使えなかった時代、木炭やコークスで大火力を手に入れた時代、ガスで自在な火力調整が可能になった時代、そして現在と、加熱調理の技術は飛躍的に進歩している。その中で新しい調理方法もいろいろと生み出され、レトルトパウチだとか低温調理だとか、加熱以外でもフリーズドライとか瞬間冷凍とか、実に目覚しい。以下、2019年現在筆者が興味を持っているものを紹介したい。
まずは「弱火で煮込む」という調理法を見直したい。もちろん、中華粥のように弱い沸騰を保ったまま煮るのが適したメニューもあるが、いわゆる煮物の類なんかは、いったん煮立てたら60度くらいまで徐冷して再沸騰させた方が仕上がりがよいものもある。強火で加熱して、沸騰手前で弱火、数分煮立てて保温鍋に移し、食べる前にもう一度火を入れる感じ。圧力鍋の2段階調理にも挑戦中だがまだコツがつかめない。高圧モードで圧がかかるまで加熱、すぐ火を消し圧が抜けたら具材追加、ひと煮立ちさせ味付けて除冷、荒熱が取れたら低圧モードで再加熱、圧がかかったらまたすぐ消火、みたいな手順でやっている。圧が抜けるまでの時間が、鍋の調子(?)とか気温とかに左右されてしまうのが悩みどころ。
炒めは一般家庭だと圧倒的に火力が足りないが、2口のコンロに鍋を2つ並べて同時調理するとかなり頑張れる。筆者は中華鍋とフライパンの併用をよくやり、中華鍋で少量づつ焼き目を付けた食材を次々にフライパンに移していく。炒めに強い火力が必要なのはたしかにそうなのだが、時間軸で見ると食材を入れた直後の温度が一番重要で、仕上げの火力がそれに次ぐ。だから、中華鍋は(適宜温度を上げながら)食材を小出しにしながら使い、冷えないように混ぜるのはフライパン、最後に温度を上げた中華鍋で仕上げる。チャーハンみたいな均質多量系の料理には使いにくいが、肉野菜炒めのような多種少量系のメニューには便利な方法。
炒めの代用としてのオーブン調理にも可能性は感じるが、掃除がメンドクサイのがネック。大型ガスレンジについている魚焼きグリルや、汁受けに水を入れて使う電気式グリルなんかなら汁が出るものでも焼けるが、魚焼きと兼用にすると臭いが気になる。業務用の電気式焼き鳥台みたいなものが家でも使えれば便利なのだが、焼肉の項で触れたようにガス台の上に魚焼き器を乗せるのがいまのところのワークアラウンド。この辺は家庭での調理文化みたいなものが変わらないと製品も出てきにくそう(なのだが、筆者が望んでいるのとは反対方向に流れていっているように思えてならない)。
ネットで見かけたフライドポテト(フレンチフライ)のレシピに、茹でて、冷凍して、低温で揚げて、また冷凍して、高温で揚げるというものがあった。筆者はそこまでやる気にはならなかったが、茹でて(or水にさらしてから蒸して)、冷凍して、2度揚げするのはアリだと思う。加熱調理と比べると歴史は非常に浅いが、冷やす調理というのもなかなか興味深い。積極的な調理ではないものの、今挙げたじゃがいものほか茹で豚を切るときなんかも、冷蔵くらいの温度まで冷やすと崩れにくくなる。
電子レンジについてはその3のオマケで触れたが、加熱調理器としての特徴を考えると、やはり水分を引き出す点にあると思う。元の水分量が多い食材は汁が出るから、汁気と固体部分をいったん分離することができる。元の水分量が少ない食材は乾くので、塩の湿気抜きなんかにも使える。家での調理ではなく工業製品だが、いわゆる「レンジ加熱対応パウチ」は凄い発明だと思う。マイクロ波調理のためにアルミ蒸着ができない、蒸気逃がしは必要だが密封性も犠牲にできない、何より安全確実な加熱ができなくてはお話にならない、といった難問をすべて乗り越えるには、想像を絶するほどの創意工夫があったのだろう(内圧上昇で袋が立ち上がる仕掛けとか、感動的ですらある)。大手ではハウスが2021年2月から「レンジで簡単!!」シリーズとして採用している。
2023年追記:とかなんとか言ってたら!369sonicなる「The first ultrasonic kitchen knife」が348ドルで発売された模様。高周波ブレードですよコレ。「12 V battery」「45 000 beats per second」「10 - 60 W of power」ですって。超音波カッター(スズキマリンのSUW-30シリーズが40kHz)の包丁版ですやんコレ。夢があるわぁ。こういうのってコモディティ化が速いから、(もしこれがスジのいい製品であれば)数年でドコの台所にも普通にあるような製品になるのかもしれない。
筆者は都会と田舎の両方に住んだことがあるが、外食のコストパフォーマンスは間違いなく都会が高い。もうホントにねぇ、東京や横浜(最後に住んでたのいつだっけな、2010年代は間違いないと思うけど)で昼に1000円出したら(店を多少選びさえすれば)どんなにいいものが食えることか。田舎じゃどうやら腹は膨れる程度のものにも同じだけかかる。外食のコストパフォーマンスは回転率の高さと競争の激しさ(≒人の多さ)に比例するのだから、当たり前である。毎日の食事の一環としての外食に限定すれば、これはほぼ絶対の法則だろう。
しかしチェーン店の場合は、田舎でも都会でも同じ値段とサービスというのが(例外はあるもののおおむね)原則になってるので、田舎に行けば行くほどありがたい存在になる。だいたいの感じでいうと、筆者は旭川に行くと2回に1回くらいなか卯(自体の質が昔通りかといえば疑問もあるけど)に行くが、札幌に行ったときにわざわざなか卯に行くことはほとんどない、といえば雰囲気だけでも伝わるだろうか(旭川にも良心的なメシ屋がもちろんあるが、その関係者がこの指摘に「悲しい顔」や「残念な思い」をすることはあっても、怒ることはないと思う:同様に「超高級食パンには紛い物が多い」なんて話にしても、真面目に高級品を作ってるパン屋さんなら(おおっぴらにでなくコッソリ聞けば)「そうだよねぇ」と言ってくれると思う、きっと)。
同じ安さでどれだけマシなものを、という土俵で張り合ったら、そりゃあ都会特化型の高効率チェーン店に敵うわけがない。松屋なんかはチョイ田舎にまで手を出しており、農場から厨房機器から全部グループ内でカバーする徹底ぶりの賜物なのだろう。モスバーガーやすき家みたいなフランチャンズ主体のチェーンは田舎にもけっこう店があるが、都会の店舗同士で比べるといまひとつパンチがないのかもしれない。こうやって見比べれば、チェーン店でさえ地域ごとの特色みたいなものはあるし、個人のやってるメシ屋となればなおさらである。
個人がやっているメシ屋と大手企業がやっているチェーン店が(内部で)どう違うかといえば、決定的なのは、前者は人の技術が支えており、後者は技術を前提としない(というか積極的に排除している)という点だと思う。ファミレスとかチェーン店中華とか、上でも触れた松屋とかチェーン居酒屋といった業態は、料理の技術がまったくない人が料理らしきものを出せるようにするという(料理人の雇用状況にはとても困ったことではあるが)もの凄い偉業を達成したシステムだといえる。食品の大量生産はかなり古くからされていたが、飯屋を大量生産できるシステムも可能になったのが凄いところ。なかでも、メニューのバリエーションが多い松屋とか大戸屋とかバーミヤンみたいなチェーンには、大企業が本気になったらできちゃうんだねああいうこと、という感慨すら覚える(ついでのついでで、大手外食チェーンの系統一覧なんかも作ってみた:いったい何の役に立つのか、筆者も見当がつかないけど)。
さて翻って、それでもやはり個人がやってるメシ屋には面白みがあるし、条件さえハマればチェーン店をしのぐコストパフォーマンスが出現しないではない。しないではないのだが、筆者が思うに、やはり都心は競争が激しすぎる。みんながみんな「10年は続けられない」勢いで全力疾走しており、どこかで「脇道」を見つけ逃げ込んだ一握りの人しか長続きしない(ちょっと大きめの中華屋には、出身の和洋中を問わず、そうやって「ひと花」咲かせた(あるいは咲かせられなかった)人たちが寄り集まる場所としての役割が、少なくとも平成の末くらいまではあった)。じゃあ田舎は安泰なのかというと・・・モノを理解してくれる人の割合というのはそんなに大きなものではなく、人の絶対数が少ないと「モノで勝負」というのは無理筋に(モノじゃないところで勝負しなければならなく)なる。
この辺がまあ微妙なところで、都会の華やかな「とっかえひっかえ」にも魅力はあるし、田舎のちょっと拍子抜けた雰囲気にも味があり、その中間(とくに都会に近い田舎)の開き直ったスタイルも愛すべきものに思える。
2022年追記:コロナ騒ぎによる飲食業界への影響は本当に大きかった。なんというか、あの困難が商売人たち(大手も中小も)のモラルを直撃したうえに、苦境にあっても正直な商売を続けていた人たちが割を食ってしまった部分もある。筆者自身は、大手チェーン店で食事をする機会が大きく減り、わずかに生き延びたツワモノを探しては、ささやかながらも贔屓の店にするようになった。いいものを食べさせてもらえる喜びみたいなものは以前より強く感じるようになったので、悪いことばかりでもないのかもしれないが、この先も「食事と商売」の関係はどんどん難しくなっていくのだろう。
筆者が飲食店を選ぶときの基準みたいなもの。料理関連のコーナーを書き始めて以来ずっと、書こうと思っては先送りに、書きかけてはボツにしてきた話題。
初めて入る店では「看板メニュー」的なものを選ぶべし:筆者のように件数を多く回るタイプの外食好きには、初回の訪問でできるだけ多くの情報を仕入れたいと思う人が多いはず。そのためにもやはり、店が推しているメニューから食べるのは理に適っている。看板メニューが、注文してもらえたら店が儲かる商品なのか、店が客に知って欲しい一皿なのかというあたりにも、その店の心構えみたいなものが現れる。またいわゆるトッピング系の注文は初回訪問では(看板メニューの構成要素になっていない限り)避ける。ベースが気に入るかどうかでトッピングを試すかどうかは十分判断できるが、トッピングしたものだけ食べて気に入らなかったとしてもベースが合わなかったのか組み合わせがよくなかったのか判断できない。
付け合わせのサラダはもう一枚の看板:サラダを「いつでも」いい状態で出すには大変な苦労が必要で、しかし料理全体の中ではさほど大きな注目を集める品でもない。しっかりしたものを出し続けられるのは本当に熱心な店だけである(大皿のサラダなら、それなりの物を出す店はあるけど)。生野菜(に限らず生モノ)を出すだけでも非常に神経を使う仕事だし、それを高い水準でやり続けるのは並大抵ではない。ただし、付け合わせのサラダがよかったらメインの料理にも大いに期待できるが、付け合わせがショボかったからといってメインもショボいとは限らない(泣く泣くの判断で、格好だけのサラダを付けている店もあるだろうと思う:半端なものを出すくらいならいっそ止めた方がいいのではないかと筆者は思うが、それでもなくすには忍びないという判断も十分理解できる)。サラダ以外でもうひとつ、いわゆる「主食」も(微妙に繊細な問題はあるが)それなりの指標になり得る。インドカレーの小中規模チェーン店なんかには、回収モードに入ると露骨にナーン(いわゆるプレーンナン:なんかホットケーキみたいな香りと食感になる)の品質が下がるところがあるし、激安系の定食屋なんかだと「ライスの品質」が店の設定する「品質の最低ライン」を反映していることが多い。
コーヒーか生ビールで敗者復活:どちらも心がけさえしっかりしていればマズくはならないもので、もう一度来てみようかどうか迷っているときに注文してみることがある。ただし、付け合わせのサラダが気に入ればメインがイマイチ合わなくてももう1回は行ってみるが、コーヒーや生ビールがよかったからといってメインが気に入らなかった店には行かないので、サラダと比べると弱い判断材料。もうちょっとシビアなところで「お冷」も店の底力を反映しやすい。冷水器と製氷機の手入れは盲点になりやすい業務で、水がウマイ店は(新規に開店した店だとノーメンテでもまだ品質が落ちていないだけの可能性も高いが、長くやっているトコロなら)いい仕事をしてくれる期待が高い。が、これも泣く泣く手が回らないという店があるため、水の良し悪しだけで店全部を評価してしまうのはちょっと迂闊だろう。
値段がわかりにくい店は考慮外:筆者の個人的な好みがことさら強い項目だが、もともと「時価」が普通なジャンルを除いて、何を頼んだらいくらになるのかちゃんと示さない店は最初から候補にしない。とくにウェブサイトがある店の場合、メニューを載せていないところや、意図的に価格を見えにくくしているところは避ける(定休日や営業時間もマトモに伝えず、ただただ調子のいいイメージ写真だけ見せびらかしているトコロもあるが、そういう中にすごくいい感じの店がごくまれに混じっていたりして、世の中わからんものである:ウェブを人任せにして、その任せた人がアレだったとか、そういうケースもあるのかもしれない)。高い値段でいいものを出しているなら、その旨を堂々と言えばいいだけのことなのだが、どうして客に値段がわかりにくくしようという発想が出てくるのか不思議な感じがする(意図してやっているのではなく(広告の)能力が足りていないだけのケースもあるのかもしれない)。悪意や不信感を感じながら食べるのでは、どんな料理もうまくない。価格についてもう少しいえば、メインになるメニューが多少高い店でも、安価なメニューも提供している店なら筆者は積極的に行ってみる(最初に頼むのは、すでに触れた看板メニューの方だけど)。自分の店には高価な食材を使いこなす技術が確かにありますよと、見せて納得させて注文してもらおうという心意気を感じられるから。また他が高めでも、アルコール飲料の中に安価な選択肢を用意しているトコロなんかはポイントが高い。できるだけ多くの人に多様なスタイルで楽しんで欲しいという意図を感じられるから(いわゆる「経営者目線」だと、いかにももったいなく感じるだろう選択なので、これができる店は相当しっかりした考えでやっているし、そういう熱意の部分を通しながら商売も持続できるだけの実力(というか自信)がある:別に商売で考えてマイナスの選択だとは、筆者はまったく思わないけれど)。
品ぞろえは店の顔:世の中になんでもできちゃう人はいるものだし、店によっては分業制でそれぞれ専門の人が担当しているところもあるだろうが、規模から常識的に考えられる範囲で、メニューに脈絡がない店は避けることが多い。よほど安価でない限り、わざわざ外食に行って素人料理なんて食べたくないし、それをやって平気な店なら本命の料理にも期待できない。やたらと生モノ(野菜以外)を推している店も避ける(なんでも生で出しさえすれば高単価が取れるみたいな勘違いをしている店は論外として、たとえばレバ刺しとか、店と客の間でひっそりと暗黙にやりとりするのが(目くじらを立てて非難するほど)悪いことだとは思わないが、出しちゃいけないタテマエのものを「あります!」なんて公言している店に自分の食生活(というか健康)を預けたいとも思わない)。反対に、たとえば食事メインの喫茶店なんかで、メニュー(最近はウェブでもチェックできるし)の最初のページにコーヒーが載っていたりすると、ちょっと嬉しくなる(コーヒー屋なら、やっぱり最初にコーヒーを見せるのがスジだと思うので)。
当然だが、筆者が「嫌い」な店の中にも「いい店」はいくらでもあることを、念のため断っておきたい。
重要な情報:
以下はあくまで筆者の素人考えと体験談をまとめただけのものなので、安全性に関しては専門家による最新の情報を各自で確認して欲しい。
以前弁当が必要な状況があっていろいろと検討したのだが・・・いわゆるスープジャーを使うのがいいのかなという結論に達した。そもそも弁当というのは衛生上温度管理の制限がキツく、暖かく保つなら60度以上、冷やすならできるだけ低温にした方がよい(荒熱を取る手間があるし季節や環境によっては保冷剤も必要)。作る労力や食事の満足感を考えると、筆者は断然保温したい。温度を保つには保温力の高い容器と熱容量の多い中身が必要で、ジャー型容器+熱い汁物の組み合わせがファーストチョイスだろう(バッテリーつきの保温容器とか使うのでなければ)。ではいわゆるランチジャーとスープジャーのどちらが、と考えると、ランチジャーは飯を入れるのが前提の構成になりがちで、ぶっちゃけ出かけるたびに飯なんぞ炊きたくない(時々ならいいが、弁当を持つたび必ず飯が要るというのは嫌:反対に、どうせ朝は飯を炊くという人なら都合がよい選択肢かもしれない)。またランチジャーの場合スープ容器がほとんど300ml前後と決まっていて、筆者が普段汁物の標準にしている500mlのものがないこともデメリットになった。
ということで、500mlクラスのスープジャーをメインにするところまでは決まったものの、さすがに汁物だけでは物足りない。炭水化物が欲しいところではあるのだが、米の飯にしろショートパスタにしろ、暖かいまま昼までもたせるにはランチジャー以外の選択肢がほぼない。手元でも、500mlのジャーにスープ、300mlのジャーにフジッリという組み合わせで、大きめの保温袋に一緒に入れてみたのだが、昼にはフジッリは冷えてカチカチになっていた。ようするに、再加熱なしで暖かい弁当を食べたいなら、スープジャーでスープだけ持っていくか、ランチジャーを使うのが唯一の現実的な方法といえる。またランチジャー以外の容器で米の飯を弁当に使うとなると、荒熱を取る時間がかったるい。ここで最初の話に戻り、筆者の結論は500mlクラスのスープジャー+パンいうことになった。オニギリも嫌いではないが、やはりパンの手軽さと使い勝手(朝冷凍庫から出すと、ちょうど昼時に食べごろになる)は無視できない。数日くらいは似たようなスープを食べることになるので、主食でバリエーションを出せるのもありがたい。スープジャーは象印のSW-KA52というのを使っており、さすがは我らが象印で保温能力はとても高い(同じシリーズで300mlのSW-KA30もたまに使っており、フタが共通なのが意外と便利:大きめサイズでThermosの24オンスモデルSK3020というのも買ったのだが、こちらはめったに使っていない)。
メインのスープは、水分が出る野菜(白菜・キャベツ・大根の組み合わせ:食事の満足感では白菜に軍配が上がるので、売り場に置いてさえあれば白菜メイン)にテキトーなキノコとニンジンと何かしらの肉(豚コマとか鶏肩とかバラベーコンとか油かすとか、スペアリブを買ったときは骨部分だけ煮込んでから引き上げたりもする)、たまたま手元にあれば小松菜の茎とかチンゲンサイの堅いところなんかも使う。圧力鍋の低圧モードで圧をかけたらすぐ消火、ごく薄味にしてすぐ使う分以外は冷凍してしまう(スマートフラップ角型(M)610mlに8分目くらいまで、だいたい500mlくらいを1パックにしている)。いちどに5~6パック分作るので、一部にだけトマトペーストを入れたり、解凍するときにキクラゲや干し小エビを足したり、温め直してからXO醤やごま油なんかを加えてフレーバーを変える。解凍するときはまず500Wのレンジで5分、中身の上下を返してからもう3分、鍋で弱火にかけ再沸騰させてジャーに入れる。鍋での加熱を強火にしないのは、固形物の内部に熱が入るのを待つため(固形物は小さめの方が扱いやすい)。この合間にお湯を沸かしてジャーを余熱しておく。スープの素なりコンソメなりバジルショートニングなりを(粉末または固形のまま)テキトーに混ぜ、別容器(弁当用のドレッシング入れが密封性が高くて便利:筆者はmarnaのK692Rを使っている)に入れておき、食べる直前に合わせる。
追記:電子レンジ対応の冷凍弁当箱というのがあるらしい(スケーターの作り置き弁当PMFシリーズ、アスベルのランタスWTLシリーズ(蓋を外してレンジ)、OSKのまるごと冷凍弁当箱などがメジャーどころみたい)。見た目には単に空気穴を付けた冷凍容器なのだが、いやーこれは考えたものだ。電子レンジにかけられる弁当箱は以前からあったが、そうか丸ごと冷凍かぁ。