蒸留酒の分類とスタンダードカクテル


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ウィスキー

麦芽の酵素で糖化、酵母で発酵。チェイサーとともにストレートで飲んだり、ロックや水割りにする。バーボンはフランスのブルボン家が語源で地名の方が後らしい。

名称 主な産地 特徴 代表例
スコッチ スコットランド 大麦が主原料、peatで燻蒸 バランタイン・ジョニーウォーカー・オールドパー・カティサーク・シーバスリーガルなど
バーボン ケンタッキー州バーボン郡 トウモロコシが主原料、内側を焦がした樽を使う IWハーパー・アーリータイムス・フォアローゼズ・ジムビーム・イエローローズなど

上記以外では、アイリッシュ(アイルランド)・テネシー(テネシー州)など。



ブランデー

果実酒を蒸留、常温のものをストレートで飲む。人類が始めて作った蒸留酒はアリストテレスがワインを蒸留したものだという俗説があるが、おそらくはエジプト(もしかしたらエジプトにワインとビールの原型を伝えたらしいシュメール人)が先行していたのだろう。

名称 主な産地 特徴 代表例
コニャック コニャック市 白ブドウを酵母で発酵 レミーマルタン・ヘネシー・カミュなど
カルバトス ノルマンディ地方カルバトス県 リンゴが原料  
マール/グラッパ フランス/スペイン ブドウの搾り粕が原料  

上記以外では、アルマニャック(アルマニャック地方、原料白ブドウ)など。



その他のスピリッツ

一般に、単式蒸留(1回だけ蒸留する)のものは風味が強く、連続蒸留(蒸留を何度も繰り返す)のものはすっきりとしている。

名称 主な産地 特徴 代表例
焼酎 日本・韓国 麦や芋が原料、こうじで作ったもろみを搾って蒸留 日本国内には乙類(単式蒸留)と甲類(連続蒸留)の分類がある
白酒 中国 宋末~元初ころに南方から蒸留技術が伝わったそうな、「しろざけ」ではなく「パイチュウ」ないし「パイジウ」、焼酒とか高粱(コーリャン)酒などとも(コーリャンは乾燥に強いイネ科の一年草で和名はモロコシ)
アラック 中東を始めユーラシア西部各地 アラック(一般的なカタカナ表記)、アラク(アラビア語圏)、ラク(トルコ)、ラキヤ(ブルガリア圏)、ラキア(アルバニア)、ラキウ(ルーマニア)、ウゾないしウーゾ(ギリシア)など各地にいろいろなものがある、ラキア系(スラブ地域)はリキュール寄りの性質が強い傾向
ウォッカ ポーランド・旧ソ連地域・北米(北米にはフランス経由で伝来) 麦や芋が原料、連続蒸留後白樺炭で濾過、ストレートで飲む ベルヴェデール(ポーランド)・ズブロッカ(ポーランド)・スミノフ(アメリカ)・スピリタス(ポーランド)・ストリチナヤ(ロシア)・アイスバーグ(カナダ)・グレイグース(フランス)・アブソルート(スウェーデン)・フィンランディア(フィンランド)など
ラム/ロン 南米 サトウキビの搾り粕(糖蜜)が原料、酵母発酵もしくは自然発酵、ショット・ロック・混ぜ物などさまざまな飲み方 マイヤーズ(ジャマイカ)・バカルディ(キューバ)・ロンリコ(プエルトリコ)・コイーバ(キューバ)・キャプテンモルガン(プエルトリコとジャマイカ)・ロンサカパ(グアテマラのサカパ県サカパ市)・モカンボ(メキシコ)など
ジン(ドライジン) イギリス ジュニパーベリーでフレーバーをつけた蒸留酒(スローベリーフレーバーのものはスロージン)、カクテルに用いられるほかロックや冷やしたストレートなどで飲まれる タンカレー・ボンベイサファイア・ブルドッグ・ビーフイーター・ゴードン・ギルビーなど
ジェネバ(オランダジン) オランダ 古い製法(単式蒸留)のジン  
テキーラ ハリスコ州テキーラ村(メキシコ) アガベ・アスール・テキラーナ(竜舌蘭の一種)と砂糖が原料、カバジート(仔馬の意)と呼ばれる細長いショットグラスに入れライムorレモンorオレンジを齧りながら塩を舐める飲み方や、冷やしてストレート、ロックでも飲まれる クエルヴォ・エラドゥーラなど



リキュール

蒸留後にフレーバーをつけたもの。香味がどれだけついたらリキュールと(酒税法上の扱いは別として)決まっているものではないため、スピリッツとの境界は連続的。

名称 原料 風味
カシス 黒すぐり 甘酸っぱい
カンパリ 不明(薬草?) 苦甘い
ピコン 不明(薬草?) 苦甘くフルーティ
ビターズ 不明(薬草?) 苦い
シャルトリューズ 不明(薬草?) バリエーションがありさまざま
キュラソー オレンジの皮 オレンジの香りと甘味
アクアビット ハーブとスパイス ハーブリキュールの代表格(現在はジャガイモのスピリッツを用いるが、古くはワインを原料にしていたらしい)
カルーア コーヒー コーヒーの香り、甘味、バニラの風味
ベイリーズ クリーム、カカオ、バニラなど カカオの香り、甘味、バニラの風味

薬草・香草系のリキュールは材料が不明なものが多い。醸造酒にフレーバーをつけたものとしては、ベルモット(ワインとハーブ:甘口のスイートベルモット/イタリアンベルモットと、辛口のドライベルモット/フレンチベルモットがある)や、屠蘇散(とそさん:ブレンドは地方や時代によりさまざま)という漢方薬・スパイス・ハーブをミックスしたものを日本酒や味醂などに漬けた屠蘇(いわゆる「おとそ」)などがある。



カクテル

原則として、氷が入るものはロングドリンクカクテル(比較的長時間かけて飲む:タンブラーは脚無しで300mlないし10オンス、サワーグラスは脚付きで120mlないし4オンスが代表的)、氷が入らないものはショートドリンクカクテル(比較的短時間で飲む:脚つき逆円錐形のカクテルグラスが好まれ、75、82.5、90mlくらい、ないし3オンス前後か、大きめのものは120mlくらいだがシャンパングラスで代用されることもある)とされる。カクテルレシピを調べる際、ウェブサイトにしても紙の本にしても、グラスに言及していない(少なくともロングとショートの区別がない)ものは入門者向けのごく簡易な解説だと思ってよい(もちろん、このページ自体もそのような大雑把な紹介のひとつ)。

名称 材料 備考
スクリュードライバー ウォッカ・オレンジジュース サワー(蒸留酒+柑橘類ジュース)の代表格。サワーグラスで飲む。スクリュードライバーのレシピから、ジュースをグレープフルーツに変えるとブルドッグ、さらにレモン汁で湿らせたグラスのふちに塩をつけてスノースタイルにするとソルティドッグになる。「レモンサワー」とという非常にややこしい(しかしまあややこしいだけで、ジンデイジーやホワイトレディはサワーグラスでは飲まないので、後述の「ウーロンハイ」に比べれば紛らわしくはない)名前のアルコール飲料もある。
ジンライム ドライジン・ライムジュース・氷 ステアもシェイクもしない(シェイクするとギムレットになる)。トニックウォーター(風味をつけた炭酸水:風味なしのものはソーダ)を入れたものがジントニック(細かい亜種が無数にある)で、トニック(蒸留酒+柑橘類+トニックウォーター)の代表格。
ジンフィズ ドライジン・レモンジュース・砂糖・ソーダ・氷 フィズ(蒸留酒+柑橘類ジュース+ソーダ)の代表格。ソーダ以外をシェイクしてから注ぐ。オールドトムジンをベースにコリンズグラス(10~14オンスくらいで細長:ゾンビグラスまたはトールグラスとも)を用いるとトムコリンズになる。コリンズ系もベース違いのバリエーションが多い(基本は蒸留酒+レモンジュース+糖類+ソーダ:ようするに、イギリスでいうレモネード、アメリカでいうレモンスカッシュで蒸留酒を割ったもの)。同様のロングカクテルはスリングと呼ぶことが多いが、ソーダに代えて水やお湯を使うこともあるそうな。レモンジュースに代えてミントの葉を使うスリングはジュレップと呼ばれる。シェイクしない炭酸系のカクテル(あるいは、フィズも含めた炭酸系カクテル全般)をクーラーと呼ぶことがあり、蒸留酒(ワインでもいいらしい)+レモン+ジンジャーエールはバック(buck)という。
ジン・リッキー ジン・ライム・ソーダ 蒸留酒+柑橘類果肉+ソーダをリッキースタイル(アメリカのジョー・リッキーさんが考案者なのだとか)といい、もとはウイスキーベースだったそうな。
モスコミュール ウォッカ・ライム・ジンジャービア(ジンジャーエール) 銅のマグカップで飲む。ミュールはラバが原義で「強い酒のカクテル」の意。地名+ミュールで、メキシカンミュール(テキーラ)やジャマイカンミュール(ラム)などのパターンがある。
ブラッディマリー ウォッカ・トマトジュース・レモン タンブラーやサワーグラスを使う。ジンベースだとブラッディサム、テキーラベースだとストローハット、ビールベースだとレッドアイなどバリエーションやレシピ違いが多い。
マティーニ ドライジン・ドライベルモット・オリーブ プレディナーカクテル(食前酒)にもする。カクテルの王様と呼ばれ、ジンの量が多いものはドライマティーニと称する。オリーブではなくパールオニオンを添えたものはギブソン(水に見えるくらい透明なものが好まれる)という。ウィスキーベースにするとスモーキーマティーニ。
マンハッタン ライウィスキー・スイートベルモット・ビターズ(・チェリー) プレディナーカクテルにもする。カクテルの女王と呼ばれる。ウィスキー・ドライベルモット・ビターズ・オリーブでドライマンハッタン。ライウイスキーではなくスコッチウイスキーを使ってイギリス風にするとロブロイ、ブランデーベースだとキャロル、ラムとベルモットだけだとリトルプリンセス(またはポーカー)。
サイドカー ブランデー・キュラソー・レモンジュース シェイクする。ベースがジンだとホワイトレディ、ラムだとXYZ、ウォッカだとバラライカになる。
マルガリータ テキーラ・キュラソー・ライムジュース・塩 スノースタイルで。クラッシュドアイスを使ってフローズン(ようは水っぽいカキ氷)にすることも多い。
アラスカ ドライジン・シャルトリューズ シャルトリューズの種類やレモンジュースを入れる入れないで名前が変わる。
シャンディガフ エール・ジンジャービール イギリス式。
ブラック・ベルベット スタウト・シャンパン 同時に注ぐ。
カンパリソーダ カンパリ・トニックウォーター・氷 プレディナーとして出せる。カンパリ・オレンジジュース・氷だとカンパリオレンジ。
ダイキリ ラム・ライムジュース・砂糖 キューバの特産品総出演。
ロンケロ ジン・グレープフルーツ・ソーダ フィンランド語でロングドリンクの意なのだそうな。
キール 白ワイン・カシス プレディナーカクテルにもする。
カルーアミルク、ベイリーズミルク カルーアorベイリーズ・ミルク・氷 ロックグラスを使う。フロート(ステアせず比重に任せて分離したまま)やホットにすることもある。

以下は番外編

名称 材料 備考
グロッグ ラム・水 ラムの水割りをグロッグという。コーラ割りはキューバリバー。
ホッピー ホッピー(ノンアルコールビール)・焼酎 氷を入れる場合もある。
ポマック割り ポマック(ノンアルコールビール?)・ブランデー ポマックは北欧のソフトドリンクで、最初はワインやシャンパンの代用品だったらしい(カールスバーグが市販しているほか、かつてはドクターペッパーも取り扱っていたのだとか)。
グリューヴァイン ワイン 温めた(おもに赤)ワイン、香辛料(シナモンとかオレンジピールとか)や甘味料(砂糖とか蜂蜜とか)や柑橘類(レモンとかライムとか)や蒸留酒(ラムなど)を加えることもある。グリューヴァインないしグリューワイン(ドイツ)、ヴァンショー(フランス)、ヴィンブルレ(イタリア)、マルドワイン(イギリス)、グロッグないしグレッグ(北欧)、ホットワイン(日本)など呼称やフレーバーが多様。クリスマスシーズンに好まれる。
爆弾酒 蒸留酒(焼酎・ウォッカ・ウィスキーなど)・ビール 韓国発祥らしく、本場ではジョッキの中に猪口のようなものを落として作るらしい。
お湯割り 焼酎・お湯・梅干し まれにだが、ウーロン割りにも梅干しを入れることがある。カクテルではトディ(toddy:蒸留酒+甘味+湯)と呼ばれるスタイルに近いか。
水割り ワイン・ミネラルウォーター 古代ギリシアでは発酵度合いが低い(=やや甘い)ワインをkratērという甕で(場合や都合に合わせ1~7倍程度の)水と混ぜ、ビッチャーのような入れ物で給仕したそうな。この習慣は発酵技術が高まった後もローマ圏で生き残り、甕こそ使わないもののワインの水割り自体は現在も完全に廃れてはいない。
ハイボール ウイスキー・ソーダ・氷 由来も語源もはっきりしない不思議なカクテル。ウイスキーソーダないしスコッチソーダ、ジョーリッキー(リッキー系の元祖:ベースがライウイスキーだったのかバーボンウイスキーだったのか不明らしい)、ブランデーソーダなど類似のレシピが多くあるが、いつのまにかウイスキーソーダのことをハイボールと呼ぶようになった。・・・のはいいのだが「アルコール飲料を非アルコール飲料で割ったもの」という極超広義の用法(誰が言い出したのか知らないが、んなこと言ったらカクテルの半分くらいはハイボール扱いになるような・・・)があるらしく、正直わけがわからない。ただまぁ、ジンソーダやウォッカリッキーをわざわざジンハイボールとかウォッカハイボールなんて(調べてみたら言う人がいないではないようだけども普通は)言わないわけで、単にハイボールと言ったらウイスキーとソーダorトニックウォーターは入っているものだと理解しておくのが良識的な反応だと思う。さらにメンドクサイことに、焼酎ハイボールのことを酎ハイと略す人たちがいて、さらにさらにレモンハイだのウーロンハイだの名前の頭に割り物の名前をくっつける用法がある(カクテルの名前は普通「ベースの酒+割り物orスタイル名」で、たとえば「ウイスキー+ソーダ=ウイスキーソーダ」とか「ジン+ライム=ジンライム」とか「ウォッカベースのリッキースタイル=ウォッカリッキー」とか、そんな感じになる)。
ロシアンティ ジャム(ママレード・りんご・ブルーベリーなど) ジャムをウォッカでのばしたものをなめながら紅茶を飲む。



オマケ1(酒の量)

ヨーロッパ(またはその植民地)起源の酒は、普及当時のオンス基準が多い。現在は瓶や缶の多くが量産品であるため、12米液量オンス≒355ml(4分の3パウンド)や24米液量オンス≒710mlがよく使われる(4分の3リットルで750mlというのも多い)。

ヤードポンド法自体、国や時代によって異なる値が使われ一定でない(イギリスにおける英オンスと日本における英オンスなども微妙に違う)が、だいたいの値として
1米液量オンス≒29.5735ml、1米液量パイント=16オンス≒473ml、1米液量ガロン=8パイント≒3785ml
1英液量オンス≒28.4134ml、1英液量パイント=20オンス≒568ml、1英液量ガロン=8パイント≒4546ml
くらい。

もし4ユニット(定義はいろいろだが、ここではエタノール100ml分≒ウイスキー8ショット≒ワイン1本≒日本酒4合≒ビール2リットルくらい:かなり酒に強い人でも常習的に飲むには危険な量)を「1人前」とするなら、多くの蒸留酒は3人前でフルボトルということになる。



オマケ2(蒸留酒の味)

蒸留酒というのは、当然ながら蒸留して作るわけだから、水とエタノールと不純物から成るはずである。もっといえば、連続蒸留の場合アルコールの方が主になるまで蒸留を繰り返した後で加水するのが普通(希釈しないこともあるけど:単式蒸留だと水の方が多い)だから、不純物中にはアルコールと共沸する成分が多く、水を溶媒とする成分は少なく、蒸留で分離される成分(たとえば塩分とか糖分とか)はほとんど含まれないはず。とすると、蒸留酒の味(というか香味というかフレーバー)はほぼ不純物が決めていると考えてよい。もちろん、塩を溶いたお湯とスープの比較と同様、エタノールを水で薄めただけではうまい飲料にはならず、適切な不純物が加わって初めて酒になると考えてよい(温めた塩水がうまくないのと同様、加水したエタノールもそれ自体はうまくない)。

よくある説明として、蒸留酒に甘みを感じるのは、甘い香りとアルコールの刺激が組み合わされて脳が勘違いするのだというものがある。どこまで正しい論なのか筆者は知らないが、蒸留した酒に(後から添加しない限り)糖分がほとんど含まれないのは当然で、しかし実際甘味のようなものは感じるわけだから、これは錯覚と呼ぶほかにない(たとえ醸造酒の樽を使ったとしても、甘みとして知覚できるほど大量の糖分が溶け出すことはないだろうと思う)。もし蒸留酒の甘味が(少なくとも主な作用として)錯覚によるものなのだとしたら、飲む人が「甘味」を「よく知っている」必要があるはずで、洋酒好きに甘党が多い(ような気がしない?)のも合点がいくように思える。

何はともあれ、我々が蒸留酒を嗜むとき、実際には「香りつきの加水アルコール」を楽しんでいるのだと言ってしまって、そう大外れではないはずである。いっぽうで、スピリッツに後から糖分を足す飲み方も普通にあって、キューバリバーとかサワー・フィズ系のカクテルなんかはその代表例だろう(もちろん香味もプラスされる:上で喩えに出した塩水とスープの例は、むしろこちらに近いのかもしれない)。

改めて考えてみると、蒸留酒にあれだけ「味」のバリエーションがあるというのは、驚くべきことなのではないかと思えてならない。大半の成分は中性スピリッツ(95度以上に精製した飲用アルコールのこと:連続蒸留でも96度くらいが限界で、それ以上の濃度のものは塩類で脱水して作る)を水で薄めたものと変わらないのに、香味と脳の反応があれだけの多様さを生み出しているとは、理屈ではわかってもにわかに呑み込めないところがある。もしかすると、温度や濃度や飲み方の違いで味わいが大きく変わる性質も、錯覚で生じる味わいの比率が大きいのが一因なのかもしれない。

余談:発泡酒がマズい理由を真面目に考えてみた(考えただけで検証はしてない)。2023年10月現在の分類では、「麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの」「麦芽、ホップ、水、麦、米、とうもろこし、こうりやん、ばれいしよ、でん粉、糖類又はカラメルを原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の100分の50以上のものであり、かつ、その原料中麦以下の物品の重量の合計が麦芽の重量の100分の5を超えないものに限る。)」を満たすのがビール、ビールでない「麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(1から11に掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)で発泡性を有するもの」が発泡酒(ないし発泡酒1)、「発泡酒に、麦原料スピリッツを加えたもの」が発泡酒2、「糖類、ホップ、水及び大豆たんぱく等を原料として発酵させたもの(エキス分が2度以上のもの)」が発泡酒3。ようするに、麦芽の重量比率がホップと水を除いたうちで50%以上かつ副材料が少ない(以前はここが「副材料を用いない」だったので「ほぼビール」な発泡酒も作れた)のがビールで、麦芽が少ないか副材料が多いのが発泡酒1、蒸留酒を添加しているのが発泡酒2となる(発泡酒3はこの際無視)。

・・・どうもこれ、麦芽が少ない>味が薄い>強引に味をつける>マズイ(発泡酒1)、または、水で割った(割らないと度数上がっちゃうから)リキュールを足す>味が薄い>強引に味をつける>マズイ(発泡酒2)、という仕組みなんじゃないかと思えてならない。というか、ビールに蒸留酒を混ぜただけでマズくなるわけがなく、実際、カンパリビアとビアモーニ、カルーアビア、カシスビア、ドッグズノーズ、ミチュラーダ、レッドバード、ボイラーメーカーといったビール+リキュールのカクテルに日本の「発泡酒2」のようなマズさを持つものはないし、ビアスプリッツァーのように醸造酒と混ぜるレシピも普通にある。うーん、余計なコトしなきゃいいのになぁ。いやまあ、消費者が求めているモノが「ビールの安い紛い物」なのであれば、メーカーがそれに応えて悪いわけでは決してないのだけれども、マズくしないでビールにリキュールを混ぜる(ことで税金が18円/350ml近く安くなる)方法はみんな知ってるわけだから、ソッチ方面に寄せた商品もいくつかはあれば筆者が嬉しいのだけれどなぁと、思ってはみるものの誰に言っても仕方のない話なのでネットの片隅に書き殴ってみた次第。



オマケ3(蒸留酒の保管場所)

これってけっこう微妙な問題だと思う。普通のボトルだと1本あたりのアルコール量が10ユニットくらいはあるので、1人飲みだとすぐに飲み切るというわけにもなかなかいかない。蒸留酒に限らず食品は全般に、高温ないし温度変化・多湿・日光・臭いを嫌うし、飲料を含む液体の食品は振動にも弱い。さらに蒸留酒の場合、グラスに注ぐときの温度が低いと揮発性の成分(ようするに香り)が立ちにくくなる。

そういった事情から「ウイスキーやブランデーは冷蔵庫に入れるな」的なことが言われることが多いのだが、しかし実際問題、夏場に40度超えになるような室内(世帯住みで常に誰かが家にいるような環境ならまだしも、アパート暮らしの単身者だと留守中の部屋の環境はかなり厳しいはず)に置いておくのはアレだし、台所の下なら温度は少しマシかもしれないが臭いと湿度が気になり、かといってワインセラーみたいなモノを自宅に置いている人も少数派だろうと思う。筆者の場合、秋~春の間は食品ストッカーに入れて台所の下、夏場なら冷蔵庫に入れてしまう。

ウォッカやジンの場合冷凍庫に保存する方法もあるが、どちらかというとカクテル向き(氷が溶けにくく、また炭酸が抜けにくくなる)の処理だと思う。ウイスキーなんかも、度数が高い製品でまれにある冷却濾過なし(Non-chill)のものでなければ、冷凍庫温度まで下げて飲むことはできる(基本的には、アルコール臭が強く、常温にしても香りが立たないorフレーバーがついていてことさら立たせなくてよい酒向きの方法:温度を下げることでトロみが出るため、その口当たりが好きだという人もいる)。

いやーしかし、真夏の間の保管だけでもなんとかならないものか。バケツに水を張って瓶を漬け、扇風機で風を送るなんていうバカ技も考えてはみたものの、日光に当てず振動も防ぎながら実行するのはムリっぽいので止めた。うーん、真夏はビールとか冷凍ウォッカとか飲んでなさいというのが妥当なセンなのかなぁ。



オマケ4(ジャンル別で好きな酒)

バーボンはIWハーパーの12年(カクカクボトル)、ウォッカは無印ベルヴェデール(情報が混乱していてよくわからないが、2005年4月にフランスのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンの完全子会社になっているはず)、泡盛は久米仙のブラック古酒43度。これはそうそう動かないと思う。格が違う。ジンはタンカレーNo10、ロン(ラム)はロンサカパかモカンボ、スコッチは外ではあまり飲まないが若いときに初めて飲ませてもらったジョニーウォーカーの青にはびっくりした。ウイスキーはブレンデッド派でシングルモルトは外で勧められないと飲まない(カクテルベースにはする)。

唯一嫌いな酒だった紹興酒は、中華屋で働いているときに安物でさえなければうまいことを教えてもらった。麦焼酎は特蒸泰明(欲を言うなら「ここから」)が置いてあったときくらいしか飲まないが嫌いなわけではない。芋焼酎はとくにこれと決めた銘柄はなく、泡盛があればそっちにしてしまう。スピリタスを(ラッパ飲みはもちろん)ショットで飲むようなことはもうあるまい。醸造酒は(体質的に)あまり得意でないが日本酒を飲むなら酔鯨。ワインはわからない(嫌いなわけではない)のでほぼハウスワインしか飲まない(店さえ選べば十分楽しめるものを選んでくれる)。リキュールではカンパリもお気に入りで、ソーダよりはオレンジが好き。

余談の余談:紹興酒は本来、浙江省紹興市特産の黄酒(おもにもち米を使う醸造酒)を指すが、それ以外の地域で製法を模したもの(たとえば台湾紹興酒など)もある。色が薄い黄酒を清酒、仕込み水の代わりに黄酒を使ったものを酎(強い酒の意)という。老酒は熟成年数の長い黄酒を指し、標準的な製法で作る元紅酒ではなく、米を増量したレシピで作る加飯酒が用いられることがほとんど。花彫酒というのは容器(花彫酒瓶という酒甕)の名前から来ており、お祝い用の酒を指したそうな(女の子が生まれたとき嫁入り用に仕込むものを女児紅という:長期熟成が前提なので中身は加飯酒)。

家ではそんなに頻繁に飲酒しないが、飲むときはなぜかウイスキー中心。バランタインの青とかジョニーウォーカーの黒とか、「混ぜてももったいなくないしロックでもまあイケる」クラスが、家で飲むならちょうどいいと思う(筆者はいい酒は外で飲みたい派)。この辺を狙うとバーボンが難しく、フォアローゼズの黒ならスコッチの方が安いし、フタがあけにくいのをガマンしてメーカーズマークのレッドトップあたりが無難か。熟成が長いバーボンもいいものだが、ちょっと敷居が高い。エライジャクレイグとかエヴァンウィリアムスとかオールドエズラなんかがラインナップしている12年ものなんかは手ごろだが、小売が豊富でない(2021年追記:なんか洋酒全般に値上がりしたねぇ、いま安いのはブレンデッドのスコッチか・・・まあそのときどきでお得なものを選んで買えばいいやね、せっかく便利な世の中なんだから)。家ではわりと穏やかな飲み方で、1日に3ユニット以上飲むことはほとんどない(外でも6ユニットは超えないように心がけているが、たまにやらかす)。

実はビールも好きで、バス・ペールエール、コゼル・ダーク、エーデルピルスあたりがお気に入り(筆者が住んでいたころの横浜は、ビールに恵まれた街だった)。コロナもけっこう好きだったりする(あの嘘臭さがいい)。2015年くらいから国産のプレミアムビールがやたら増えたような気がするが、エビスマイスターはけっこうよかった。普通の国産だとクラシックラガーとか黒ラベルあたり、北海道限定品だがサッポロクラシックも疲れているときなんかに飲みやすいと思う。いわゆるIPAビールとか度数が高い麦ワイン系のもの、国産のクラフトビールでこれといったものは見つけられていない。ハートランドは外でなら飲む(なぜか知らないけど、20瓶売りや樽はけっこう安いみたい)。余談の余談:国内大手メーカーの場合、瓶・缶・樽で中身の違いはないし、缶と瓶を比べると充填方法により瓶の方が微妙に酸素に触れにくくはあるが、実用上の差はないらしい(サッポロビールが運営するホッピンガーデンというサイトの記述が詳しい:https://www.hoppin-garage.com/hoppin-college/difference-between-can-and-bottle/)。ただ筆者が思うに、紫外線に対してほぼ無敵の缶(なにしろ金属だし)vs一時的な温度変化をある程度緩和できる瓶(アルミは熱伝導率がバカ高いし、そもそも缶は薄い)という特性はあるんじゃないかと思う。生ビールの樽は炭酸が別になっているうえ、缶と同様に紫外線に強く、瓶よりも丈夫で、熱に対しても(2乗3乗の法則が効いて)強い(だからといって中身がマズくならないわけではないが、瓶や缶に比べると鈍感:その代わり、サーバーの清掃を怠るor方法が正しくないとマズくなる)。

ビールと言ったら瓶売りが普通だった頃に比べると選択肢の幅は飛躍的に増えたが、ビールがデリケートな生鮮食品だということをしっかり理解してくれている小売店はそう多くないように思う。おおむね3度以下にしてしまうと「寒冷混濁」が生じ、18度以上にしてしまうと大きく劣化するのは有名だが、製品として「要冷蔵」のものを除き、長期間の冷やしっぱなしもよくないし、日光や衝撃にも弱い(製造工程では、発酵(サッポロビールによると「下面発酵の場合は通常8~10℃、上面発酵で15~20℃」)のあと0度前後で「貯酒」を行うが、製品になった後にこのような低温に晒すと不可逆的に劣化する)。筆者が酒屋を選ぶとき、品揃えを眺めてから瓶ビールを買ってみることがほとんど(外で飲むときも、初めての店ではたいていビールから頼む)。ビールも満足に扱えない酒屋で日本酒やワインを買う気には到底なれないし、ビールが不味い飲み屋では梅酒しか飲まない(氷までマズかったらストレートで飲むが、たいていはロック:「マズかったら梅酒」は事実だが「梅酒を頼んだからマズかった」は正しくないので、筆者のリアル知り合いは注意)。ビールメーカーも、生ビールにはナントカマイスターとかカントカ称号とかやっているのだから、小売店にもグレード認定を出すようにすればいいのにと思わずにはいられない(まー力関係とかあるのかもしれないけど、シロウトであるいち消費者からは)。なお、生ビールを満足に扱えないような店なら瓶ビールの扱いにも期待はできないため「生がマズかったら瓶」はあまり有用な対策とはいえない。

追記:世の中でいまでもたまにあると思われる「あの店はビールが薄い」「んなわけねーだろ」論争は、互いの理解不足に原因があることがほとんど。まず、飲食店が生ビールを薄めて提供することはほとんどあり得ない(ビールサーバーに水を通した後捨てるべき水混じり液をちゃんと捨てていない店はごくまれにある)。理屈上はたとえば、発泡酒をジョッキに注いで泡だけビールのサーバから取るようなことが不可能ではないが、家族経営で秘密主義を貫けるようなトコロや、なぜか短期間でコロコロと看板を架け替えて商売しているようなトコロ以外では、どんなに上手くやってもいつかはバレる。しかし実際的に重要なのは、薄めなくても「マズい」ビールは出せるということである。生ビールの樽は缶ビールの缶や瓶ビールの瓶よりもはるかに丈夫だし、炭酸が別になっており開栓時に噴き出すようなこともないが、25度以上での保管はさすがに厳しいし(閉店後の店内が暑くなりがちな夏場は対策が必要)、衝撃を完全に遮断するわけでもない(が瓶ビールに比べると雑に扱われがちだと思う)。微生物(野生酵母・乳酸菌類・カビ類)による劣化は、ビール液に濁りが出ない程度でも風味に影響を与えることがある。また「薄い」という印象に結び付き得るパラメータに、注いでからテーブルに届けるまでの時間もある。提供までの時間が長いと、いわゆる「気の抜けた」状況になりがちなのは、説明を要しないだろう。これらの事情が重なり合って、生ビールの品質というのはどこで飲んでも一定というわけではなく、粗悪なモノに当たった人が「マズい」ではなく「薄い」と言ってしまったり、そういう評判に流されて品質に問題はないのに「薄い」ような感覚になってしまう人も出てきたり、店の側でも「ビールの濃さなんて変わらない」という思い込みで「ビールがマズくなっている」可能性に思い至らず「そんなことを言い出す客の方がおかしい」なんていう認識に陥っているところもあるだろう。

さらに余談:酒税法上の扱いが変わるラインがある、というのは理解できる話ではあるが、それ以外で考えたとき、薄い蒸留酒には何のメリットがあるのだろうか。変な言い方だが、ウイスキーやブランデーが40度程度に加水されているのはストレート(というかショット形式)で飲むためであって、どうせ薄めてしまう酒なら加水せずに出荷してもらった方が、経済的にも品質的にもありがたい。たとえば50度の原酒と加水して25度にした酒を比べるなら、同じアルコール量で体積(と重量もほぼ)が2倍違うわけで、薄めない方が運ぶ費用も保管する費用もずっと少ないはずである(果実ジュースなんかではわざわざ濃縮還元なんてこともやってるわけだし)。飲む際にも、たとえばおいしいジュースがあって蒸留酒を混ぜたいとき、たんなる水でしかない成分は少ないに越したことがないではないか(ようするに、加水して25度にした酒を使うレシピから、50度の酒を半分の量で使うレシピに変更すれば、結局水分量だけが変わるはずで、水なんて欲しければ後で足せばよい)。繰り返しになるが、これがショットで飲んで欲しいとかロックで飲んで欲しいという意図の製品であれば、口当たりがもっともよいバランスにあらかじめ調整するというのはわかる。しかしどうせ後から薄める前提の酒を、前もって水で薄めた状態で売ること(ないし買うこと)にメリットはないように思えてならない(黒霧島とかさつま白波や雲海日向といった芋焼酎では、原酒と称する製品も売っているので、他の蒸留酒にも真似して欲しい:焼酎の場合アルコール度数が36度以上45度未満の間にないと「原酒」を名乗れないらしい)。

さらにさらに余談:ビールの注ぎ方

いわゆる生ビールで注ぎ方に細かくコダワるのはやはりチェコビールで、ウルケルの分類が有名(以下指6本分の高さのジョッキを用いる前提:サーバーに泡モードはなく、バルブの開け方で泡の量を調整、注ぎ口が下に長くなっているものを使う)。泡を作ってから(注ぎ口を泡の下まで突っ込んで)下に液体のビールを入れ、仕上がり時の泡部分を3本指幅にするのがハラディンカ(Hladinka)、おそらくもっとも一般的なやり方。液体部分を注いでからやや大粒の泡を乗せるのがナドバクラット(Na Dvakrát:ナドヴァクラートなどとも)、日本のいわゆる生ビールの注ぎ方と似ている。キメの細かい泡でジョッキを満たすのがムリーコ(Mlíko:なぜかわからないがミルコともいうらしい)、シメのビールなんかに使うらしい。液体だけで泡を作らないのがチョフタン(Čochtan)、調べてそういう注ぎ方があるらしいということ知っただけで、筆者はこの飲み方をする人を見たことがない。大きめの泡>細かい泡>液体、と注いで、仕上がりでは下から順に液体2>泡3>隙間1にするのがシュニット(Šnyt)、もとはテイスティング用の注ぎ方らしい。馴染みでもない店でイキナリ「注ぎ方はどうしますか」とだけ聞かれるようなことがあったら、シュニットを注文してみるとよい(嘘です)。

瓶詰・缶詰の場合も、基本的な考え方はそう変わらない。底に当てて泡立て、液体で泡を持ち上げ、休ませてもう一度持ち上げるいわゆる「3度注ぎ」は、手法としてはハラディンカに近く、仕上がりは少しシュニットに寄る感じだろう(テッペンの泡が細かくなる:2回めをグラスに沿わせる流儀と上から落とす流儀がある)。泡立てずに注いで最後に泡を作る(ナドバクラット風)こともできるし、傾けたグラスの中ほどに当てて注ぐと渦巻き状にビールが回って液体が泡を含むような感じになり、無濾過ビールなんかでは最後のひと注ぎの前に軽く瓶を振ることもある。グラス・ジョッキは、普通にビールと同じ温度(にしたいのだが調整が難しい)、冷蔵庫で冷え過ぎたときにちょっと乱暴に温度を上げられる常温、フルーティなビールに合うという冷水(または氷水)すすぎくらいのバリエーションだろうか。上が膨らんだグラス、ドイツ・チェコ風のずんぐりジョッキ、日本でも一般的な縦長ジョッキ、いわゆるビールグラス、他のグラスでの代用など容器もいろいろ(量が少ないほど細長いグラスでないと泡の層の「厚み」を確保しにくくなることに注意:体積が少ないなら空気と触れる面積を減らさないと酸化が速くなりすぎる(2乗3乗の法則)のも理由のひとつだが、量が少なければ飲み終わるまでの時間も相応に短くなるはず)。ギネスのビールフォーマー(グラスを置いてビールを泡立たせるメガネの超音波洗浄機みたいな台)など、注いだ後に泡を作るやり方もある(サントリーが神泡サーバーというのを出して、こちらは缶を振動させるようだが、注いでから泡立てた方がスジがいいんじゃなかろうか)。

筆者自身は、常温の丸ジョッキに3度注ぎが面白い飲み方だと思っている。他の酒の合間にビールみたいな飲み方のときは、膨らみグラスをフォーマーに乗せる方が好み。瓶のまま・缶のままというのもこれはこれでアリというか、とくに小瓶のビールなんかはラッパ飲みもそんなに悪くないんじゃないかと思う。なお大きいジョッキに3度注ぎというのはある程度時間をかけて味わうときに適するやり方で、開栓から3分くらいで飲み切るなら、泡は乗せなくても香りの飛び方なんかに大差はつかない。



オマケ5(安酒メモ)

2022年追記:円安の影響なのか、洋酒が軒並み値上がりしている。ジョニ黒はまだ2千円台前半に踏みとどまってくれているが、そのちょっと上のクラス(ハーパーの12年とかロンサカパとかベルヴェデールとか、オマケに久米仙ブラック43度まで)がかなり上の価格帯に行ってしまった。国産も、値上がりしたりキャラが極端すぎたりと、洋酒(というか蒸留酒)が冬の時代を迎えた感がある。そんな中頑張っているのがブラックニッカで、クリアは置いておくとしても、リッチブレンドとディープブレンドは特筆に価する(混ぜる酒としてならスペシャルもそれなり)。どちらもジョニーウォーカーの赤と張り合える価格で、teacher's selectほどドギツくなく、キリンの陸と違ってロックでもまあ飲める(筆者は、このクラスに無難さ以上のものを求めるべきではないと思っており、それをハイレベルに達成してくれている)。ジンやラムやウォッカには当分期待が持てなさそうなので、ジョニ黒と青バラと赤キャップが踏ん張ってくれている間に、安ウイスキーを開拓しておかねば(未チェックで面白そうなのは、ホワイトホースの12年とか、あとはデュワーズの12年あたりかなぁ)。

2022年末追記:つい半年前にジョニーウォーカーの健闘を讃えたばかりなのだが、現行品を買ってみたところガッカリした。オールドボトルがウンヌン特級時代がカンヌンといった話ではなく、おそらく先々代の、ジョニーとウォーカーの間にオジサン(ストライディングマン)がいて、下帯の12の数字が四角囲みになったボトルのもの(現行品はオジサンが下帯の上に移動してデカくなり、下帯自体が横に短くなって黒地に上下金ラインになった:12の数字が8角形ワクに入って、下帯が金ラインでなく太い金縞2本になっているのが、おそらく先代ボトル)と比べてもかなり劣る。もちろん、原料が農産物なのだから当たり年外れ年はあるだろうし、もしラベルが赤かったら、値段は少し上がったけれどジョニーウォーカーも頑張っているなと思えるレベルではあるのだが、これはブラックラベルの品質ではない。流通段階で誰かがやらかしたのかと思って別の店でもう1本買ってみたが、中身は同様だった。近いうちにバランタイン青とメーカーズマーク赤トップもチェックしなくてはならない気持ちになったが、なんだか確かめるのが怖いような気もする。いっぽうビールは値段が上がった、のはしゃあないとしても、国産ビールの品質が軒並み下がったような気がしてならない・・・と思ったのだが、しばらく様子を見ていたところこれってもしかして、仕入れ値の上昇前に過剰に仕入れすぎた(当然だけど一部の)小売店が、本来ビールを置いておくべきじゃないトコロで保管して品質が悪くなってるのではなかろうか。疑問には思っても確認のしようがない話ではあるのだが、その後別の経路で買ったものはちゃんとしていた。

2023年末追記:その後も洋酒の値上がりは続き、ビールやワインに逃げたりもしていたのだが、このところサントリーのオールドを見直すようになった(買ったのは多分20年ぶりくらい)。ブラックニッカのディープブレンドよりはこっちかなぁ。似たような価格帯に健闘しているモノがないではないが、オールドじゃなくてコレ、というものは探せずにいる。試してみないとと書いたメーカーズマークのレッドトップは、まずまず一安心の中身だった。バランタインの青は流通がめっきり少なくなったが、近所のドラッグストアで残り物らしきタマを発見、期待を裏切らない品質で筆者としてはレッドキャップよりこちらかなといった感触を得た。2024年追記:どっちも値上がりが続き、現在3000円くらいはしているよう。相場的には、ローゼズ黒>青バラ>赤トップで、入手性はメーカーズマークが圧勝、なのだが価格は店によってバラつきが大きく掘り出し物があればお得に買えるかもしれない。以前名前を挙げていまだに試していないデュワーズとかホワイトホースの12年は、赤トップより微妙に安いみたいだけど筆者の近所では売っていない。一時期高騰していた久米仙ブラックが少しこなれてきたから、しばらくそっちに逃げようかしら。

・・・と思っていたら、久々に当たりワインに遭遇、イタリアのオットービアンコ(8 Otto Bianco:国内扱いはネスコジャパン)がいい感じで、ここ最近の安ワインに感じていた「安いには安いけどコスパではどうなの」感を払拭してくれた。追記:ロッソ(赤)も試してみたけど、やっぱりこの価格帯では少しムリがあるかも(悪くはないけど)。最近相対的に割安感があるビール(2022年10月に値上がりしたが、2023年10月に酒税が安くなって少し下がった:この改正では、ビールと清酒が下がって発泡酒と果実酒が上がった)の500ml缶と比べても、これなら十分(勝つか負けるかは人によるだろうが)勝負はできる。このところ安ワインはけっこうな数を試していたので、やっと当たりを引けて少し溜飲が下がった(ワインで本当に趣味性があるのは2000円前後の価格帯なんじゃないかという気は大いにするものの、数を試す気にはならない、というか筆者はワインに2000円払うなら3000円の蒸留酒を買いたい)。白ワインは極限ローエンド(500円台)でもバランスで勝負できる(というか、味も素っ気もクソくらえで無難方向に全振りした)モノが稀にあるが、赤はワンランク(800円台くらいまで)上げないと厳しい(その中で、シャトレーゼの「樽出し生ワイン」のメルローなんかは、コスパ自体はとてもよい:のだが「じゃあビールじゃなくてコレにするの?」と並べられると即答しがたい)。ワインの安さで有名なサイゼリヤのグラスワイン(Oscoという銘柄なんだそうだが、酒屋で買うと店で飲むより高い)なんかも、白は文句なしだが、赤は(健闘してるけど)イロイロ大変なんだろうなという印象がある。入手性がいいモノでは、ゼブンイレブンが売っているグラン・アンデス ソーヴィニヨン・ブラン(国内扱いはカサ・ピノ・ジャパン)あたりが健闘していると思う。

2024年追記:うーん、筆者としては「良かったモノ」の記事を書きたいのであって「良くなかったモノ」の指摘はあんまりしたくないのだが・・・という書き出しでローゼズの茶色をコキ下ろそうと思ったのだが、なんだコレ、いいだけ酔っぱらってから飲んだらクセになるじゃないか。いやー、蒸留酒の奥深さをもうひとつ知ったというか、そうかそういうバランスの取り方もあるのか。「4杯め以降ならこれより美味い酒必要ないでしょ」ってことか、そういうことなのか。やるなぁキリンとシーグラム。さらに追記:カジュアル酒の探索は続き、今度はニッカ(ウィルキンソン)のジンとウォッカに手を出してみた。ジンの方は・・・クドい。割らずに飲むことは考えていないようなクドさ。ビーフイーター・ゴードン・ギルビーあたりが1500円前後で、やっぱりこの辺が価格の下限なのかも(プリマスがこの近くの価格帯になってるみたいだから試してみようかな)。ウォッカの方は、安くて普通でよい商品(先に試したのは40度のもので、後から50度のものを買ったらジンを上回るクドさだった)。総合的に見ればよい商品なのだろうが・・・どーもウォッカという酒自体が筆者の飲み方に合わないというか「濃く混ぜる」とシンドい風味になりがちだと思う(筆者がベルヴェデールを別格扱いするのはストレートでもロックでも楽しめる風味があるからこそなのだが、ウィルキンソンウォッカも半端に混ぜるくらいならロックの方がマシな気がしてきた)。しかしロック飲んでうまいのかと考えるとどうにも厳しい感じで・・・ウォッカの40度も結局はクドさがネックで落第のよう(筆者の酒棚では)。

さらにさらに追記:上で「苦手」とは言ったものの、安酒の最適解のひとつがウォッカ(なりホワイトリキュールなり)にありそうだ、という感触を得たのでいくつか試している。今のところよさそうなのは、ごく平凡にスミノフの赤(No21)で、近所の店にも普通に置いてあり入手性がダントツ(黒(No55)はともかく青(No52)は試してみたいのだが、売っているところを見かけない:ストリチナヤやエリストフもそうだが、通販のメンドクサさを思うと「帰りに買えるスミノフ赤でいいや」となってしまう)。割らずに飲めるようなシロモノではないが、筆者が勝手に「リバースレシピ」と呼んでいる特濃カクテル(主材料と副材料を入れ替えるアレンジで、一般的には「Reverse Manhattan」に代表されるように酒+酒のカクテルに用いられるが、筆者はフィズとかサワーでもこれをやる:英語の「reverse recipe」は(献立から食材を知るのではなく)食材から献立がわかる形式のモノを指すことが多い模様)にしてもまあ許せるというか、同じ価格帯のウイスキーよりはずっと飲みやすい。うーんしかし、安酒には安酒なりの需要があって、筆者も安酒をこそ飲みたいときがそれなりにあるのだが、これはある種の探索趣味というか、知らない酒を次から次と試せる(あるいはいろんなモノを混ぜてみる)面白みがあってのモノで、たとえただ酔っぱらいたいからという理由だけで飲むのだとしても、酒の味わいが持つ価値は実に大きなものだと思えてならない。安直な言い方をすれば、酒が美味いからこそ気持ちよく酔えるのである。しかしまあ、安いからこそ可能な「とっかえひっかえ」の面白さはまた、これはこれで他に代えがたいもので、あちらを立てればこちらが立たずと悩ましい(高い酒をとっかえひっかえできるほど金持ちだったとして、どんな幸せな飲酒ライフが送れるかは想像がつかないトコロ:かえって興が冷めたりするのかねぇ、わからんけど)。

2024年6月追記:今更ながらバランタインのファイネストを試した。風味が「薄く」なることにムリに抗っていないのがとてもよい。これならロックでも(うまいとは思わないが)飲めはするし、混ぜても他を邪魔しない。今まで値段だけ見て「どうせジョニ赤クラスでしょ」という気になって購入に至らなかったのは見当違いだったみたい。ただこれ、濃く混ぜるよりは普通に混ぜた方が楽しめるような気がする。もしくは反対側に振って、コッテリ系のツマミがあればストレートでも、こればっかりではさすがにツラいがハーフショットくらいをキュっと飲む分には十分イケる。ともあれ、これでようやく安酒探しの長旅に区切りがついた(別に義務でやってたわけじゃないけど)。次は何にしよう、ワインや日本酒は数年くらい買いにくさが続きそうな気がするし、かといって普通の洋酒も割高なままだし、ビールも(安酒と並行していくつか試してたけど)タマが豊富じゃないし、焼酎か泡盛あたりかねぇ。

さらに余談の追記:次の目星をつける間にと思い国産ビールをいくつか飲んでいたのだが、一番搾り(飲食店では口にしてるはずだけど、買って飲んだの20年ぶりくらいだと思う、きっと)がうまくなっていて驚いた(今だに好みではないけど、わざわざ選んで飲んでいる人がいるのもナルホドと思える説得力を感じた)。新製品も増え「プレミアムじゃないビール」カテゴリの競争もけっこう熾烈なよう。似たような追記もう一つ:けっこう久しぶりにアーリーを買ってみた。なんだかこのところ売り場で目に付くので、もしかしたら中身が変わって人気が出ているのかもしれないと考えてのチョイスだったが、飲んでみたら筆者がよく知るあのアーリー(か、もしかしたらもう1周りくらい酷いモノ)だった。別にアーリーをこき下ろしたいわけではなく、あのマズさが本体というか、顔を顰めながら「ヒドいなこりゃ」みたいなノリで喉に押し込むのがアーリーの醍醐味だと(異論はあるだろうが筆者は心から)思う。その意味では期待を裏切らなかったわけだが、ハーフボトルにしておけばよかったとはちょっと思った(無念)。

2024年7月追記:なんだかこの頃酒の飲み方が変わったというか、ちょっと量を飲むと「いかにも身体に負担がかかってる」感が否めないようになってしまった。いやー、トシだねぇ。その割に家で飲酒する頻度はけっこう高くなって、1ユニットくらいの酒をササっと飲むことが増えた。こういう飲み方だとビールなんかは少し野暮ったい気がするし、ワインだと分量がアレなので、スピリッツを「ショット+氷」みたいなノリのロック(かリキュール割)で飲んでいる。芋焼酎の原酒とかテキーラあたりから手を付けたのだが、どれもアリっちゃアリだしもう一つといえばもう一つで、イマイチ方針が定まらない。しばらく試行錯誤が続きそう。



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