非常に詳細な解説をしている百珈苑というページがあるので、マトモな情報はそちらを参照。
焙煎済みのものを買う場合「ブレンド」という名称で売っている豆を買うのが正解(ただし田舎の小規模なお店だと「ヘタクソが淹れてもマズさが目立たない」ことだけに注力した銘柄を「主力」扱いにして、普通の銘柄は「リッチ」とか「濃厚」というフレコミでわかっている客だけが買うシステムのところもある)。コーヒー(に限らず食品全般)は鮮度がモノを言う(鮮度が落ちた高級豆より、新鮮な普通の豆の方がはるかにうまい)ので、回転のよい品目を買うのが常道。ストレート豆を買うのは、コーヒー店に通い詰めて、どの銘柄がどのくらい出ているのか把握できてからでも遅くない。
コーヒー豆の鮮度は1日単位で変化する。焙煎直後は非常にトガった風味。焙煎2日後くらいで味が安定し、もっとも飲用に適する。焙煎後3~4日までが常温(といってもせいぜい20度くらいまで)で風味が保てる限界。冷蔵庫(欲を言うなら野菜室くらいの温度で、湿度は低め)で保管すると7~10日くらい、冷凍庫だと20~30日くらい保存できるが、冷凍(ないし密閉保存)する場合は焙煎後少なくとも1日置いてからの方がよい。豆を挽いてしまうと、せいぜい丸1日くらいで風味が劣化する。
豆についてよく言われる「酸味が強い」とか「甘みがある」とかいう特徴は、実際のところ「適する焙煎度の特徴」であることが多い(と思う)。たとえばマンデリンなんかはシティ~フルシティくらいが好まれるため「苦味主体で香ばしい」とか、キリマンジャロあたりはミディアム~ハイくらいが好まれるため「酸味主体でさわやか」などと言われがちだが、それ以外の焙煎度にしても相応の味が出る。
代表的な豆として
原則として、深く焙煎すると酸味やアクが薄れて苦味が強くなり、豆の表面に油が浮く。暗褐色で微妙に油が浮き出る程度の焙煎をシティローストといい、これが「中くらいの」焙煎になる(1つ浅いハイローストを中煎りとする人もいるが、筆者の感覚だとハイローストは中浅煎り)。焙煎度合いについては、シナモン=極浅、ミディアム=浅、ハイ=中浅、シティ=中、フルシティ=中深、フレンチ=深、イタリアン=極深くらいに捉えておけばよい(アメリカの西海岸ではフレンチとイタリアンの呼称が入れ替わっているらしく、西海岸に本拠のあるコーヒー店を利用する場合は確認しておいた方がよい:日本のコーヒーショップでも微妙な方言があり、たとえばドトールなんかはシティを飛ばして、ミディアム=中、ハイ=中深、フレンチ=深、イタリアン=極深としている)。正確に同義ではないが、上で言う「フレンチ=深」くらいをダークローストということもある(ブレンド豆で「他より深く」炒る意味で使う人もいるよう)。だいたいだが、シティ相当(中煎り)は酸味が少し残っている状態、フルシティ相当だと酸味がほとんど飛んだ状態になる。
粉砕は、細かければ細かいほど同じ抽出時間で味(雑味も含む)がよく出るし、選択的な抽出になる(理屈上、表面積を増やして抽出時間を減らすと、お湯が豆全体に一様に作用することになり、同じような濃度でより温度や時間による選択性の高い溶液が抽出できる:粒が大きいと表面と中心の差が大きくなり、いろいろな特性の抽出が入り混じった状態になる)。粉砕の度合いは抽出法によってもある程度制限がある(後述)。粉砕後の豆が入った容器を軽く叩くと渋皮や破砕されすぎた微粉末が上の方に集まるので、風を吹きかけるなどして飛ばしておく(機械が処理してくれるミルもある)。
抽出効率の高さは豆に触れる溶液の濃度でも変わる。たとえば容器の中に湯と粉砕した豆を入れ、一定時間後に豆だけ取り出せばコーヒーはできる(サイフォンでは実際にそのようにしている)。しかしこの方法だと、抽出の終盤は濃度の高い溶液中で行うことになる。つまり、すでに高い濃度で存在する旨味は抽出速度が下がり、まだ濃度の低い雑味が急速に抽出される条件である(親水性の源が異なる分子は、互いの濃度に影響を与えにくい)。そのためコーヒーサイフォンでは、抽出時間を短くしたり途中でかき混ぜるなど、雑味を出しすぎない工夫をする。
湯温は、高温ほど味がよく出るが雑味も増す。だいたい、85~90度あたりが「中くらいの」湯温で、それ以上が高温、それ以下が低温だと思っておけば大外れではない。抽出時間(蒸らし終わってから落とし終わりまで)は2~3分が中庸か(粉砕度合いにもよる)。酸味成分の多く(全部ではもちろんない)は比較的低温(85度くらい)でも抽出でき、苦味成分の多くは温度さえ高ければ比較的短時間でも抽出できる。あまりに高温(95度超とか)だと雑味が顕著になる。極端な薄味や濃味にならないようにすると、結局「低い温度で長時間」と「高い温度で短時間」の選択になる。おおまかな傾向として、苦味>酸味>雑味の順にピークがきやすいことを覚えておきたい。
どの抽出方法でも、豆を湯(ないし水蒸気)に触れさせて成分を移動させることに変わりはななく、湯温と抽出時間の組み合わせで仕上がりを調整する。煮出し系(パーコレーターなど:エチオピアの人が「本場流」でコーヒーを淹れるシーンもテレビでなら見たことがあるが、中華鍋みたいなので焙煎して、乳鉢みたいなのでゴリゴリ砕いて、ヤカンみたいので煮出してた)と上澄み系(コーヒープレスなど)は荒挽きの豆を使う。イブリックないしジャズベと呼ばれるひしゃくのような鍋で煮出した後上澄みを飲むトルココーヒーは、例外的に細挽きの豆を使うが特殊な抽出法なので割愛。南インドのフィルターコーヒー(最近は「インディアンコーヒー」とはあまり呼ばないようで「South Indian fileter coffee」とかそんな感じらしい)も、ペーパーフィルターの代わりに細かいパンチ穴のある金属容器を使うような感じではあるが、豆はけっこう細かいみたい(かなり濃く出るので、お湯で割ったり多量のミルクを入れたりする:ミルクを入れるものでは、サーブ用のカップから提供用のカップへ、高いところからコーヒー液を落として泡立たせる)。ろ過器具に比して細かい豆を使ったり、微粉末の除去が不完全だと粉っぽくなる。サイフォンは濾過と煮出しの中間くらいのやり方で、やや荒挽きの豆を用いる。
ろ過系のうち加圧による強制抽出(エスプレッソマシンなど)は細挽きの豆を使う(抽出時間が短いのと、圧力を稼ぐため)。マキネッタ(エスプレッソやかん:機械加圧式ほど細かい豆は使えずやや細挽き)だと抽出温度はコントロールしにくいので、圧力(火力)や時間をコントロールして仕上がりを調整する。ろ過系のうち重力で落とすもの(ペーパーやネルでのドリップ)には中くらいの豆が好まれる。ドリップの場合フィルタを「適度に詰まらせて」速度をコントロールする(蒸らしたあと最初の注湯で出る灰汁を使う)ことが多く、湯温の選択も容易でバリエーションが豊富。ドリップスケールという、台ばかりとストップウォッチをオールインワンにしたような器具も市販されており、抽出にかかった時間や使った湯量などを自動で計測できる。
なお、サイフォン(siphon)は管の意で「管に液体を満たして(重力で)導く装置」を指し、風船型に代表されるコーヒーサイフォンは「管を使って液体を移動させる」ことから名前がついたのだと思われる。マキネッタは「小さいマシン」のことで、もとはモカポット(エスプレッソやかん)やナポリターナ(倒立式)の総称だった模様。またモカポットとコーヒーサイフォンは、湯を押し上げるところまで同じ原理で動作する。
コーヒー1杯の分量はマチマチだが、一般的なコーヒーカップは満水165~170cc前後で1人前125~130cc前後のものが多い(米液量オンス準拠だったり常用オンス準拠だったりミリリットルでキリのよい数字だったりバラバラ:ただし、6オンスでほぼ170ccだと覚えてしまってもほぼ差し支えない)。コーヒーサーバの目盛りは1人前=125ccのものが多いように思う。いわゆるLサイズのカップは満水10オンスor300ccくらい、メリケンサイズのジャンボマグは満水20~32オンスくらいまである(24オンスが標準的だと思う:米液量オンスならほぼ710cc)。たいていの方法では1人前の抽出は恐ろしくデリケートな作業になるため、少なくとも2人前以上を淹れた方が無難。
豆の量は、ペーパードリップに準じる抽出方法だと(カップ数+1)*6gくらい(1杯125mlで12g、2杯で18g、3杯で24g)がいちおうの目安になる。いわゆるドリップケトルは実用容量0.8L程度(満水は1.1~1.2Lくらい)のものが多く、ハリオのスマートGケトル(DKG-140)なんかは1Lの「大きめ」サイズ、小さいものだと実用容量0.3Lくらい(コーヒーカップを温める分165cc+コーヒー液になる分125cc+豆に吸われる分30ccとして、必要なお湯は1人前で320ccくらいになるはずだから、0.8Lだと2.5人前くらい:火にかけない前提のドリップポットなら、カップを温める分の湯を入れなくてよいため1人前150ccくらいで足りるし、カップは温めない派の人や、ドリップ用とカップ用を別に沸かすという人なら、ケトルでも同じ容量で足りる)。
デミタスカップはもともと、狭義のデミタスコーヒー(少なめやや低温の湯で長めにネルドリップする:demiは半分、tasseはカップで、半カップの意)に用いた。この用途のものは2~3オンスが普通なのだそうな(当時のスタンダードなカップが4オンスだったのだとか)。エスプレッソ用の小型カップも(小さいカップの意で広義に)デミタスカップと呼ぶのが普通で、こちらはやや肉厚な傾向があり、容量も40から120ccくらいまでいろいろ。心底どうでもいい余談だが、「エスプレッソの一番大きいの」と注文したときに「ドッピオでよろしいですか?」と聞き返されると非常にうっとおしいので、コーヒーショップの関係者がもしこれを読んでいたら、ぜひぜひやめてorやめさせて欲しい。ちなみにイタリアでは、(きっと地方によってバラバラなんだろうけど)小さいカップでサっと飲むのが好まれるようで、caffe doppioと注文すると普通サイズのエスプレッソが2杯出てくるそうな(冠詞でわかりそうな気もするけど、まあ話半分に)。
自分でブレンドをするのは楽しいが、豆の消費量がネックになる。たとえば100gづつ3種類の豆を買うと、1杯=10gとして30杯分になるわけだが、これを3~4日で飲み切るのはつらい。冷蔵/冷凍保存が必要になるだろう。50gで売ってくれるお店もまれにあるので、探してみてもよい。方針としては、気に入ったストレートコーヒーをベースに足りないものを補っていく(または強すぎるクセを丸くする)感じで試していくとやりやすいと思う。この場合ベースの豆の個性を損なわないよう注意が必要で、ベースの豆と比べてクセの強すぎる豆は足さない方が無難。自己主張の穏やかな豆をベースにする場合はもっと大胆なブレンドができるが、難易度も相応に上がる。ブレンドの豆を買ってきて、そこにストレートコーヒーを混ぜていく手もあり、手軽にいろいろな風味を楽しめる。大失敗はしにくい方法なので初心者でも安心。
最初から自分で混ぜる場合、全部で10に対して「浅めのコロンビアと深めのブラジルで6」を基準にするとまとまりやすい。浅めコロンビアにコク(ボディ)、深めブラジルに苦味(テール)を担当させて、メインの豆のバランスをそこに乗っけるというか、コロ2+ブラ4なら苦味にシフト、コロ4+ブラ2ならコクにシフト、コロ3+ブラ3ならたんにクセを緩和して穏やかに、とかそんなイメージ。コロンビア(の一部)をグアテマラ(香りが特徴的)やキリマンジャロ(酸味が特徴的)に変えるとか、ブラジルの焙煎度合い(もちろん他の豆でもよいのだが、ブラジルは焙煎を変えたときの反応が面白い:メキシコやコスタリカやケニア、モノによっては深めのコロンビアに変えるレシピもあるらしい)を変えるといった操作でバリエーションを出せる。さらに、メインの豆も量(もとは10分の4の前提だがこのさいキニシナイ方向で)や焙煎度合いを変えることができるし、手に入るならロブスタを混ぜるという案もある。
家庭で普通に使う分量をブレンドすると余り豆が出てくるが、これはこれで面白く、単純に余った分を全部混ぜて裏ブレンドを作るとか、バラしてストレートで使ってもよい。いちどに混ぜず混ぜながら使うというのも一案で、ストレート豆を別々に保管しておき、淹れる都度ブレンド割合を変えながら使うこともできる。メインのブレンドにストレート豆を足していって変化を楽しむというのも一案だろうし、使う豆の種類を固定しているなら、銘柄ごとになくなった都度補充する運用と組み合わせることもできる(買い物がメンドクサイという欠点はあるが、使い切った豆を似たようなタイプの別の銘柄に差し替えたり、焙煎度合いを注文できる店で買っているなら豆ごとに微調整することもできるだろう)。
調理手法として豆のブレンドを突き詰めて考えると、筆者は、可能な限り「後で混ぜる」のが妥当なのではないかという気がしている。ようするに、豆によって適する焙煎も粉砕も抽出も異なっているのだから、ブレンドを構成するそれぞれの豆に最適化した焙煎や粉砕や抽出を行って、最後に抽出液を混ぜるのが理に適ったブレンドコーヒーの作り方なのではないかと思う(焙煎の前に混ぜるのをプレミックス、焙煎の直後に混ぜるのをアフターミックスというが、アフターよりさらに後で混ぜる)。これなら、たとえばペーパードリップしたコーヒーにサイフォンで淹れたものを足したりとか、同じ生豆を原料にするとしても仕上がりの幅を広げ粒度を上げることができるだろう。
現実的には、1人ないし数人でストレートコーヒーをいくつか同時に作るような感じになるだろうから、みんなで思い思いのコーヒーを作り混ぜては飲み合うようなコーヒーパーティーもできるかもしれない。ミルクや砂糖なんかもめいめいで持ち寄るとよさそう。少しの悪乗りを許すなら、ココアとか紅茶なんかを混ぜてみるのも、パーティーの趣向としてなら面白いかもしれない。
重力ドリップ(ペーパーor布)の場合、抽出場所に湯を「溜めて」いるわけだから「何度のお湯に何秒間豆を浸すのか」という問題になる。すでに触れたように、粉砕度合いが濃度変化の選択性に影響し、抽出効率は温度と豆の量と細かさで与えられる。
一般的に、シティくらいに焙煎した豆を、コーヒーカップ3杯分(出来上がり375cc)に対して25~30gくらいをやや荒めの粉砕(7.5番か8番)にして、90~95度の多めの湯で30秒蒸らして、85~90度で1分半くらいかけ(1:2:1の湯量で3回に分けるか、1:2で2回に分け)て落とすと、だいたい無難に仕上がる。蒸らしだけ高温でやるのはやや手間だが、濡れ布巾でポットの底を冷やすとか、水を混ぜるとか、コーヒーカップを暖めたお湯を戻すとか、まあ適当にやる。抽出は量よりも温度と時間を基準に行うのがよい。抽出中に豆の上に浮いてくるクリーム状の泡はようするにアクで、このえぐ味が抽出液に入らないようにする(この「アクを溶かしてしまうミス」さえしなければ、ペーパードリップが大失敗することはまれ:落とし終わりの汁を捨ててしまうのが簡単な対策になる)。
すでに触れたように、重力ドリップでも「低い温度で長時間」と「高い温度で短時間」の選択が第一になり、粉砕の細かさによる時間選択性が加わって大枠の抽出具合が決まる(ただし、粉砕の粒度を変えると抽出時間も影響を受けることに注意)。細かくやるなら、蒸らし時間、本抽出時間、合計時間の3つをそれぞれ考えるべきだろう。これで濃度が適切でないなら豆を増減し、追従できなければお湯で割る。落ちの速いドリッパーと遅いドリッパーを用意しておくと便利(フィルタの質でも調整できるが、ハリオの円錐>カリタの3つ穴>メリタの1つ穴の順に速い傾向がある)。知らない豆を試すとき筆者は、高温・長蒸らし・短時間抽出から出発して、雑味が強ければ蒸らしを短縮、それでもクドければ温度を下げ、風味が弱くなったら抽出時間を延ばす。重要なのは温度・蒸らし時間・本抽出時間の3点で、高温・長蒸らし・長時間抽出や低温・短蒸らし・短時間抽出など明らかにムリなものを棚上げすれば、せいぜい3~4通りのパターンに絞って試せる。抽出速度が確保できる範囲で、粉砕はある程度細かい方がボケた風味になりにくい。
ネル(布:フランネル)とペーパー(紙)の決定的な違いは、形状・目の粗さ・使い込みによる状態変化(と手入れの手間)である。形状はネルの方が深いというか、ネルは縦切り断面がU字に近くなるのに対し、ペーパーはV字に近くなる。ろ過の目は一般にネルの方が粗い。ペーパーは使い捨てになるがコスト面では優位性があり、ネルは使いはじめと寿命近く(50回くらいが目安)の抽出速度が高まる。全般に、ネルの方がアクが溶けやすく油分を吸着しにくいため、微妙に荒めの粉砕にするとともにクセが穏やかな豆を使うことが多い(泡が豆の上に残るように注ぐ)。粉砕が荒めでろ過も荒めということは抽出速度が高くなるわけで、いちどに注ぐお湯の量は少なめに(あるいはごく細く注ぎっぱなしに)なる。より微妙な違いとして、ネルは裏返し(一般に起毛面が内側だが、それを反対にする:微粉末の吸着が減る代わりにネルの状態を安定させやすくなる)での使用ができ、ペーパーは無漂白だとごく微妙に紙(というか木)のフレーバーがつく。利便性ではペーパーの圧勝で、ネルは粉砕や抽出がデリケートになる分趣味性の奥行きが深い(喫茶店の場合は、職人芸の鑑賞という要素も加わる)。
重力ドリップは焙煎度合いの選択幅が意外と広く、低温抽出が可能なことから浅い焙煎に適する一方、エスプレッソのように濃厚な風味を引き出すことはできないものの、深い焙煎の豆もそれなりに抽出できる(フレンチローストくらいまでなら問題ない)。抽出温度の例はすでに挙げたが、基本的には、焙煎が深い豆は低温、焙煎が浅い豆は高温での抽出が向いており、雑味が出ない範囲で時間を延ばしていく(あるいは雑味が出ないところまで時間を削っていく)と調整しやすい。
コーヒー豆用のミルは、業務用のローラー式(ロールバーグラインダー)を除くと、プロペラ式(ブレードカッター:ほぼ電動のみ)、臼歯式(コニカルカッター:発熱が多く高速にできないので手回しミルでの採用が多い)、カッティング式(フラットカッター:速度維持が必要なのでほぼ電動)の3方式が主流。比較でいえば、プロペラと臼歯は発熱が大きく速度に劣る、プロペラは細挽き・カッティングは粗挽きが苦手でどちらも微粉が多い、臼歯とカッティングはメンテナンスが面倒と、どれも一長一短。
上で挙げたうち、メンテナンス性は大きなポイントになる。業務用と比べ使用頻度が圧倒的に低い家庭用ではとくに、酸化しきった古いコーヒー粉(なかでも微粉が最悪なのだが、プロペラ式以外の電動ミルだとこれがまた取り除きにくい)が混入すると雑味が増してしまうため、プロペラ式や手回し臼歯式のメンテナンス性がありがたい。この2種類を比較すると、手回し臼歯式の方が粒度の調整がしやすく仕上がりも安定するので、家で使うミルとしてはベストだと思う(電動は手が疲れなくてラクだけど、プロペラ式はちょっと挽いて振ってちょっと挽いて振ってを繰り返さないと仕上がりが悪く、どうせ面倒を見なければならないなら手回しでも大差ないように思う)。
カッティング式のいいところはやはり速度で、数日分まとめて挽くような場合には便利だし、スイッチだけ入れれば勝手に挽いてくれるのがラク(ただし掃除は大変)。微粉が多いがまとまって出るので取り除きやすい(その分豆の歩留まりが悪くなるので、やはり大量に挽く場合に向く)。粗挽きが苦手とはいえ、筆者が使っているメリタのECG71なんかでも「ペーパードリップ用のちょっと粗め」くらいにはできる(1が細かく17が粗い17段階だが、筆者は13までしか使っていない)。電動の臼歯式は所有したことがないが、手回し式よりもメンテナンス性が落ちるのは間違いなく、どうせ高速にできないのなら手回しでいいんじゃないのという気がする。
筆者のように濃厚な旨味を好む人がエスプレッソに行き着くのは当然の帰結である。もちろん、蒸らしの方法とアクの取り方が自由で温度や豆の量や抽出時間にも制限の少ない重力ドリップが王道であるのは間違いないが、雑味を許容上限までに抑えつつ旨味を最大限に引き出そうと思うと細かい豆を使うことになり、短い時間で抽出しないと雑味が勝ってしまう一方、豆が細かいと通過にかかる時間が長くなってしまうジレンマがある。この限界を突破するには、重力よりも強い力で強制的に湯を通過させるのが手っ取り早い。
ということでエスプレッソマシンを買ってしまうのが覇道に違いないのだが、なにしろデカいし高いし維持が面倒である。そこでマキネッタの登場ということになる。
でそのマキネッタだが、蒸気圧で強制抽出する仕組み上、湯温はかなり高い。ボイラーのお湯は沸騰しているわけだから、低く見積もっても95度以下ということはあるまい(低温高圧抽出が可能な機械式とは決定的に異なる:機械式の場合、豆7g、湯温90~92度、9気圧、20~30秒、抽出液25ccがスタンダードらしい)。そのため、抽出時間はかなり短くする(機械式より高い温度で、やや粗い豆を使うのだから、数十秒オーダー)。
この「高温短時間抽出」という条件は器具の仕様上変更しがたく、他の条件をコントロールして嗜好に合うコーヒーを得なければならない(別に義務じゃないけど)。ボイラーに入れる湯量を減らし、穏やかな沸騰で、少量の抽出液を得る方法を試したのだが、どうもバランスが悪い気がする。やはり、標準的な挽き方(ペーパーより少し細かいくらい:豆を細かくすると温度に敏感になるし、お湯の通過も遅くなるので、機械抽出のような極細挽きは使いにくい)で、普通の湯量を使った方が無難なのだろう。
もちろん、豆の粉を均等に入れる(蒸らされて膨むので、軽くすり切るのがよいと思う)とか、パッキンに豆の粉を噛ませないとか、高温抽出に耐える深い焙煎の豆を使うとか、念のため蒸気逃がしは人体に向けないとか、マキネッタを使う上で基本的な注意事項はしっかりと守る。漏斗の先のお湯は温度が低い方が望ましいので、ボイラー底面の中心以外(=周囲:ただし出来上がったコーヒーを煮立たせるとまずくなるので、側面はダメ)を集中的に加熱できるとなおよい。
コーヒーの焙煎には大きく分けて、熱風式、半熱風式、直火式の3種類がある、というのは間違った説明ではないが、少し舌足らずだろう。直火式は読んで字のごとく豆に火を直接当てる方式で、ようするに金網を使う。このとき熱源に木炭を使うのがいわゆる炭焼きコーヒー(であるはず)。炒り鍋(焙烙鍋とかでも焙煎できるが、適度に穴が開いていないとカス(チャフ)や煙が抜けにくい)は半直火とでもいうべきか。鍋に熱源からの熱風を導いてやれば半熱風式になる。熱風式は、ドラムの中でかき混ぜる接線型、漏斗状の釜の中でグルグル回す遠心型、筒に入れて底から熱風でかき混ぜる流動床式など、混ぜ方にバリエーションがある。
直火式は仕上がりのばらつきが大きく、大量処理にも向かないが、大手でもドトールが気合と根性で採用している(筆者なんかは、積極的にムラを求めるのでなければ熱風式でよろしかろうと思うのだが、きっとコダワリがあるのだろう)。余熱に当たる工程を「水抜き」とか「蒸らし」などと表現することがあるようだが、生豆の乾燥度合いで状況がまったく変わるため、この工程だけを云々しても話が始まらない(ゆっくり加熱すれば全体に水分が抜け、一気に加熱すると表面と内部に差ができるのは、他の加熱調理と同じ)。実は冷却の方が重要で、とくに家庭でハンドローストするときはここの手際で仕上がりが決まるといってよい。業務用で大量に冷やすときは、水を使うんだそうな(想像するに、噴霧>送風乾燥とやるのかな)。
粉砕したコーヒー豆の粒度(粒子直径の平均)は、慣例的にmesh(メッシュ:篩ないし笊の格子を正方形だと仮定して、その外寸の1辺をインチの逆数で示したもの)で表される。つまり、10meshであれば1辺1/10インチ=2.54mmのふるいを指すが、金網の太さを引き算しなければ穴の1辺(目開き)にならず、通常は荒いふるいほど太く細かいふるいほど細い網線を使うため、meshの値からふるいの穴の大きさを直接判断することができない。便宜上9ないし10meshで目開き2mm、16ないし18meshで目開き1mm、32ないし35meshで目開き0.5mmと想定することが多いようだ。
日本で挽き売りのコーヒー豆を買うときの挽き目は上記と異なり、2番が細かく13番が荒い12段階(といいつつ0.5番刻みだけど)になっていることが多い(おそらく大手メーカーの業務用ミルが採用しているから小売店でもその番号で通じるのだと思うが、具体的な根拠は探せなかった)。だいたいの感覚で、2~3番が36mesh、7~8番が24mesh、12~13番が18meshくらいではないかと思う(当てずっぽう)。とくに大手のコーヒーショップで、標準の挽き方(ペーパードリップ用)を6.5番にしているところが多いのだが、ちょっと細かいような気がするので7番や7.5番くらいも試してみるとよいだろう。
コーヒー豆100gは粉にすると300ml程度と言われるが、これはあくまで目安であって、豆なんだから1粒1粒重いのも軽いのも大きいのも小さいのもあるし、焙煎による水分変化で1~2割軽くなり(生豆が新しいほど元の水分が多く、焙煎が深いほど多くの水分が抜けて、重量変化が大きくなる)、体積も6~8割くらい増えて(ポップコーンほどではないにしても、目で見て明らかにわかるくらいは膨れる)、粉砕して粉にすると隙間が減って少し(一部の店でやっているように真空パックにしたり、容器をトントン叩いて隙間を減らすだけでもかなり)嵩が減る。これらを考え合わせて、100gのコーヒー豆が300mlちょっとで粉にすると300ml弱というのは、そう大外れはしない数字といえる(密度で考えると生豆から半分くらいになる見当:焙煎した豆1粒は、よほど特殊な種類でなければ0.1~0.2gくらいの範囲)。
ただ実際の商品となると話がまた違って、同じ「200gのコーヒー豆」であっても、生豆換算(生豆を買って焙煎してもらうスタイルならこれが原則)のところもあれば、焙煎後の豆換算(焙煎した豆を買って挽いてもらうスタイルならこれが原則:水分が減るのはもちろん、焙煎ムラが出た豆を取り除いているはずなので、けっこう目減りしている)のところもあるし、微粉末や渋皮を除いたコーヒー粉で200g(粉を袋に入れたパッケージで小売するならこれがスジだろう)ということもあり得る。さらに、量り売りの場合は商習慣というかお店の裁量の部分もあって、端数を切り捨てているところとか、極端な場合は勘で「このぐらい」と取って(少なければ足すが)多くても気にしないような店もあるだろうし、焙煎や粉砕による目減りを埋め合わせて売っているところもあるようだ。
保管の都合に関していうと、筆者はハリオの珈琲キャニスターM(MCN-200B:実測したところ、満水で800ml、フタに触れるか触れないかギリギリのラインで700mlくらい)を使っており、粉で買ってきた200g売りのコーヒーが入りきらなかったことはない(トントン叩かないと入らないことは何度かあった)が、200g売りの焙煎した豆が入りきらないことはけっこうある。500g売りのコーヒーだと、開封したときに1回分(40gくらい)使って、キャニスターにいっぱいまで入れて、残りを冷凍するとちょうど半分、冷凍庫から出すときも1回分すぐ使って、残りをキャニスターに入れて冷蔵庫に入れるとピッタリになる(筆者のペースだと冷蔵期間も1週間弱になってまあ許容範囲)。
筆者がこれまで一番多く口にした暖かい飲み物は間違いなくコーヒーだが、お茶やココアが嫌いなわけではない。
若い頃はバンホーテンの練って作るココアを牛乳で溶き2~3倍の濃さ(ホットチョコレートに近い感じ)にしてガブガブ飲んだりもしていたが、最近はさすがにコタエるようになり、作るのも面倒なので森永のお湯で溶くだけのタイプをたまに飲むくらいになった。筆者はレギュラーコーヒーや紅茶には牛乳を使うが、インスタントコーヒーやココアには「クリープ」が合うような気がしていて、森永のココアにもこれを入れている。このクリープというのは面白い製品で、成分を見た感じでは乳糖と乳脂肪を固めたもの(加糖バターに近い)らしく、似たような製品がほとんどない。コーヒーにクリーム(本場で何を使っているのか知らないがシングルクリームの方が合うと思う)を入れるとアインシュペナー(日本でいうウィンナーコーヒー)になるわけで、これはまあわかるが、ココアはもともとカカオから油を抜いて作るわけで、そこに牛乳やらクリームやらを入れるのは奇妙な気もするが、しかし入れるとうまい(カカオ豆を焙煎して粉砕して皮と胚芽を取り除くとカカオニブ、それをさらに粉砕するとカカオリカー、それを冷やして固めるとカカオマス、それを絞って脂肪分であるカカオバターをある程度取り除くとココアケーキ、それを粉砕するとココアパウダーになる:カカオマスにカカオバターを加えるとチョコレートになり、ようするに、脂肪分少なめで粉状にしたのがココアパウダーで、脂肪分多めで塊状にしたのが固形チョコレート)。
だいたいが、乳製品の分類ってのはとてもややこしい。動物(おもに反芻動物)から搾っただけの乳が生乳and/or全乳(ないし牛の乳なら牛乳)で、それを遠心分離するとクリーム(濃さによってシングルクリームとかダブルクリームと呼ばれる)と脱脂乳が得られる。クリームを練ると、さらにバター(8割がた乳脂肪分)とバターミルクに分離する。これらとは別に、生乳を酸や酵素で凝固させるとカードになり、カードを絞ったのがフレッシュチーズ、凝固させたときの上澄みや絞り汁がホエー(乳清)。生乳をたんに煮詰めたものは練乳(煉乳)だが、日本では無糖練乳と加糖練乳の区別があり、前者をエバミルク(エバポレイテッドミルク)後者をコンデンスミルク(コンデンストミルク)と呼ぶことが多い。ヨーグルトとチーズの区別は明確でなく、フロマージュ・ブランやフロマージュ・フレといったヨーグルトっぽいフレッシュチーズもある。クリームチーズと発酵バターの違いは沈殿工程の有無(なんだろうと思う)。サワークリームとクリームチーズの違いは原料(前者はクリームのみ、後者は生乳も使う)と言われることがあるが、生乳を使わないクリームチーズもあり、硬さと用途で判断されていると考えた方がしっくりくる。クリーム(日本で菓子などに使われるものだと典型的には脂肪分40%くらい:イギリス基準だとホイップクリームで35%以上、ダブルクリームで48%以上)とバター(典型的には脂肪分80%くらい)の区別も曖昧で、クロテッドクリームというバターっぽいクリームもある(ミルクセパレーターでクリームを作り、加熱してから一晩冷やして作る:加熱するので「生」クリームではない)。モノとしては「とても濃厚なクリーム」で、練ると簡単にバターとバターミルクに分離する。
余談ながら、スコーンにジャムとクロテッドクリームを両方塗ると破滅的なほどうまい(これと紅茶をセットにしたものをクリームティーというのだが、イギリス人の発明なので例によって、ジャムファーストとクリームファーストで流儀が分かれ、地域や流儀によってはハンバーガーのようにサンドすることもあるそうな:あんなうまいお茶菓子があるのに、歴史的に高級品だったとはいえ、なにが悲しくてキュウリサンドなんぞを添えたがるのかは理解に苦しむところ)。なお、スコーン(ないしバノック)もビスケットもショートブレッドも、イギリスの焼き菓子とはいうもののスコットランドが本場だったりする(ウォーカーやマクヴィティもスコットランドが本拠地:クロテッドクリームはロダスなどのコーニッシュクリームとデボンクリームなどのデボンシャークリームがあり、コーンウォールはジャムファースト、デヴォンはクリームファーストが伝統らしい)。クロテッドクリームは日本で買うと高いが、ようは生クリームを(沸騰後1時間くらい)加熱して冷やせばよいだけなので、自作もそう難しくはない。生クリームは水分が多く業務用の急速冷凍機でないと冷凍できない(品質が損なわれる)が、バターなら家庭用の冷凍庫でも冷凍でき、クロテットクリームはその中間くらい(馬力のある冷凍庫や熱伝導のよい冷凍皿などを使って、注意深く冷凍させればなんとかなるが、数回~十数回に1回くらいの失敗は覚悟すべき、くらいの感じだろうか:失敗したら練ってバターにしてしまえばよいのだとか)。
紅茶はそれほど頻繁に飲まないが、いちおう常備はしている。日東デイリークラブの6種類パックがファーストチョイスで、たいていミルクティーにしてしまうのでアッサム(というか日東の「こく味のある紅茶ティーバッグ」)でもいいのだが、10袋入りという手軽さとフレーバーのバリエーション(異なる種類で2~3袋まとめて使うことが多い)に負けて、他のにしようかなと迷っても結局このバッグを選んでしまう。いわゆるリーフティは普段はまず買わない(ティーポットもずいぶん前に処分してしまった)。同じメーカーの同じ商品ならリーフの方が安いのは当然(極限ローエンドだと響き方も強く、上で名前を出した日東の「こく味」だと、40グラム20バッグが350~400円くらい、袋入りのリーフティ135gが500~600円くらい)だが、やはり淹れるのがかったるい。
紅茶はスタイルによって淹れ方の違いが大きく、イギリスではティーカップで飲むのはフォーマルな飲み方らしい。この場合は冷たい~常温の牛乳を使い、紅茶はティーポットから注いで、ミルクと紅茶は1:8くらい。カジュアルな飲み方ではマグ+ディーバッグが圧倒的多数派で、ミルクの比率も多めだが、砂糖を入れる人はやや少数派。バッグはヒモ付きでないのが普通で、入れたまま飲む人、普通に取り出す人、絞って取り出す人と、イギリス人らしくバラバラ(いまだに階級社会の度合いが強い国なので、毎日ティーカップでアフタヌーンティーを飲むような人たちと、マグでティーバッグの紅茶を飲む人たちでは、話す言葉も(微妙にだけど)違うし食文化も異なる)。チャイはもともと、ダストティーと呼ばれる屑茶葉を水から沸騰数分くらいまで煮出して、茶と同量くらいのミルクとタップリの砂糖を入れ、再沸騰(またはその手前)まで火にかけて作るものだったそうな(スパイス類をきかせたものはマサラチャイだが、こちらが単にチャイと呼ばれることもある)。まあ国や地域によって水も違えばミルクも違うので、どれがどうというものではなかろう。筆者自身は、マグカップを使って人肌くらいに温めた牛乳を多めに入れることが多く、砂糖も入れて薄いチャイもどきにすることが多い。
茶の類は世界中で栽培されており、コーヒーのように生豆の状態で貯蔵というわけにもいかないため、紅茶にはいわゆる旬がある(密封パッケージなら、未開封で1~3年、開封後で1~3か月くらい持つらしいので、完成品の持ち自体はコーヒーよりよい)。代表的なものをまとめてみた。
緑茶(煎茶)は、水筒を持ち歩く生活になったのを機に水出ししている。時間をかけて飲む前提だとやはり安心感が違うし、定期的に茶殻が出ると生ゴミが臭くなりにくい(コーヒー豆にも消臭効果があるようだが、バッグ入りのお茶だと絞って捨てるだけでよいので手軽:絞らないとカビが生えやすい)。以前は粉タイプのインスタント緑茶を買っていたこともあるが、バッグ茶に慣れたら家で使おうとは思わなくなった(粉末タイプの緑茶は、煎茶製造時の切れ端を集めたもので急須で淹れる粉茶、茶葉を臼などで挽いて湯に混ぜて飲む粉末茶、いったん抽出してから水分を取り除いた顆粒タイプがある:碾茶という種類の加工品を原料とする粉末茶が抹茶)。烏龍茶や黒茶は自分で買ってまでは飲まないが、ちょっと本格的な中華屋で食事するときに中国茶がついてくると嬉しい。紅茶も、バッグ入りでない茶葉(いわゆるリーフティ)は自分で淹れようとは思わない(どちらかというと、温かい飲み物を手軽に飲みたいときのチョイスが紅茶なので)。
コーヒーに含まれるカフェインの量は、全日本コーヒー協会のデータ(https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/library/facts/)によると、100mlあたり「レギュラーコーヒー浸出液 約 60mg コーヒー豆の粉末10gを熱湯150mlで浸出」「インスタントコーヒー 約 60mg インスタントコーヒー粉末2gを熱湯140mlに溶かす」らしい。日本食品標準成分表2015年版(七訂)厚生労働省の資料(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm)では「コーヒー(浸出液) 60 mg/100 mL 浸出法:コーヒー粉末10 g、熱湯150 mL」「インスタントコーヒー(顆粒製品) 1杯当たり80 mg 2 g使用した場合」となっている。
いっぽうカフェインの毒性は、内閣府食品安全委員会の資料(https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20141002ik1&fileId=110)によると、急性LD50がラット経口で200-400mg/kg bw、マウス経口で185mg/kg bw、ヒトで11gが「LD50に相当」だそうな。慢性毒性については海外の資料を引いたものしか見つけられなかったが、食品安全委員会の資料(https://www.fsc.go.jp/visual/kikanshi/k_index.data/vol51_P2_3.pdf)やファクトシート(https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf)にある通り、成人で400mg/日くらいが「悪影響のない摂取量」の目安になるのだろう。アメリカFDAが出している数字で「いちどに1200mgの接種で発作の可能性」とする解説も目にしたが、元データは探せなかった。
ここでは「コーヒー100mlでカフェイン60mg」「日常的な摂取上限の目安は400mg/日」と理解しておくことにしよう。コーヒー以外にカフェインの摂取源(コーヒーと茶以外で含有量が多いのは、カフェインを人工的に添加した飲料くらいで、それほどありふれたものではない)がまったくない場合、単純な割り算で667ml(1人前125mlだとしたら5人前:エスプレッソでも30mlあたり60-80mg程度らしく、まあ5-6人前相当くらいだと考えて大きな誤差はなさそう)以上のコーヒーは摂取しない方がよいといえる。筆者のようにガブガブとコーヒーを飲む人なら、けっこう簡単に上限近くまで達してしまいそうだ。
たしかに、コーヒーや茶にはシュウ酸が含まれるのだが、これらは乾燥製品でかつ抽出原料なうえ、焙煎だの発酵だのといった工程を経るため、どのくらいの量が体内に入るのかわかりにくい。単純な含有量は、ほうじ茶の茶葉で300~700mg/100gくらいらしい(「茶に含まれるシュウ酸及びカルシウム量」平成2年11月2日受理、神谷智恵子 小川美江子 大川博徳:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/32/4/32_4_291/_pdf)のだが、コーヒーに関する資料は探せなかった(食品だと、ホウレン草やココアパウダーやタケノコが700前後、バナナで500くらい、サツマイモやレタスなどが300前後らしい:単位mg/100g、タケノコやホウレン草は灰汁抜きで含有量が大きく減る)。
しかもこれ、すでにカルシウムと結びついている分を差っ引いて、いわゆる水溶性シュウ酸(ほとんどがシュウ酸ナトリウムの形で存在する)だけ考える必要があって、とてもとてもややこしい。そのうえ水に含まれるカルシウム(「日本食品標準成分表 一般成分 水道水」によると、水道水や地下水の推定値で0.8~1.5mg/Lくらいらしいから、日本の多くの地域の水なら、豆や茶葉に含まれるカルシウムに比べれば誤差の範囲かもしれない:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365334_1-0326.pdf、https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/14/0/14_0_130/_article/-char/ja/)も問題になるので、参考値を出すことすら難しい。ここはひとつ、茶抽出物のシュウ酸量を10mg/100mlと勝手に仮定して、コーヒーはその半分とドンブリ計算してしまおう。コーヒー1人前を125mlとするなら、6.25mg/杯になる。
シュウ酸(HOOC–COOH)の分子量は90.03g/mol、シュウ酸カルシウム((COO)2Ca)はシュウ酸とCa(原子量40.08:成人の耐容上限量2500mg/day、発汗で失われる)が1:1の結合だから、シュウ酸90gに対してカルシウムが40gとすると、ようするにカルシウムの要求量はシュウ酸摂取量の4/9倍となる(ただシュウ酸カルシウムは劇物で、消化管の中で生成されて害がないものなのかどうか、サトイモとかパイナップルとか食べても大丈夫であるからには常識的な量なら問題ないのかもしれないが、資料は探せなかった)。そこで、コーヒー1杯分のカルシウム要求量=6.25*(4/9)≒2.77...を2.8mg/杯としてしまおう。コーヒーを5杯飲んだとしたらカルシウムの不足分は14mgになるから、だいたい、普通の牛乳(1100mg/L=1.1mg/mL程度のカルシウムを含む)を14mlほど混ぜておくと釣り合いが取れる(というか、ドイツのEnsingerとかフランスのContrexとか、カルシウムを500mg/L前後含んだ水もある:すごいよね、水なのに牛乳の半分くらいある)。んーーー、まあそんなに気にする値じゃないのかも(空きっ腹にブラックコーヒーというのは、シュウ酸のことを考えなかったとしても、あまりよくないのかもしれないけど)。
まず最初に、コーヒー豆の品質は一定でないことを断っておきたい(だってそりゃ農産物ですもの、豊作の年もあれば不作の年もあるだろうし、同じ年の同じ産地の豆でも全部同じではないだろうし、乾燥だって焙煎だって毎回同じく仕上げられるわけではない)。価格帯が下がれば下がるほど品質変動の幅は大きいこと、筆者も下で紹介している豆を定期的に買って評価しているわけではないことを、念頭に置いて欲しい。2019年現在の筆者の感覚だと、400円/200g or 3000円/2kgくらいまでが「安い」コーヒー豆。店売りの参考としては、ジュピターコーヒーのジュピターブレンド(2019年現在「挽き売り税込み200g」で496円だが、30%引きの322円はそれなりに、50%引きの225円もたまにやっている)が筆者の基準。またインスタントでは、たとえばネスカフェのゴールドブレンド エコ&システムパック 105gがアマゾンで800円くらい(2021年現在、通常で809円、定期配送で728円)、パッケージ表記の「52杯分」がその通りならレギュラーコーヒー400gくらいに相当する。エクセラなら詰め替え用の75杯分が700円くらい。この数字を見ればレギュラーコーヒーでインスタントコーヒーに「コスパ勝ち」するのがどれだけ難しいかわかると思う(なにしろ相手は軽くした状態で運べるからねぇ)。
以下、挽いた豆は「粉」、焙煎だけで挽いていないものは「豆」と表記する。またとくに記載がない限り、筆者が安い豆を使うときの標準である高温>低温のペーパードリップを前提にしている。沸騰から一息入れたお湯を多めに(コーヒー液が少し溜まるくらい)使って長め(40~50秒くらいかな)に蒸らし、高温(90~95度くらいだと思う)のお湯を少なめに注ぎ、ケトルに差し水(量は豆による)をして、すぐまたお湯を注ぎ足し、ある程度落ちたら3回目を注ぐ(というか足す:3回目のタイミングで全体の時間を調整する)。これで雑味が出すぎる場合は3回目のタイミングをごく早くするか2回注ぎに変え、それでもダメなら蒸らしの温度を下げ短くする。裏技として、短めの「蒸らし」を(高めの湯温で)2回やると、かなり濃厚な抽出液を得られる(普通の豆でやるとクドくなりがちだが、極端に出が薄い銘柄には苦肉の策として使える)。
UCC ゴールドスペシャル リッチブレンド: 2020年4月の価格は400gが685円、1000gが1336円@アマゾン(どちらも粉:豆は「炒り豆ゴールドスペシャル」という別名称になっており、需要が少ないせいなのかやや割高)。これといった特徴はないというか、ごく普通のコーヒー豆をこの値段で安定供給できているのが凄いところ。素晴らしい豆ではないが、ちゃんとした豆である。筆者が基準にしている銘柄。ゴールドスペシャルのシリーズ全般に、味の素(AGF)のマキシムやキーコーヒーのグランドテイストよりも筆者好みのものが多い。
加藤珈琲店 ゴールデンブレンド コーヒー:
2020年4月の価格は500gが798円、500gの4袋セットで2570円(粉豆どちらも同じ値段)@アマゾンだった。安い豆では珍しく1袋が500gで、家で使うにはありがたい(他だと澤井珈琲の赤袋が500g)。粉砕しない豆のままで買える銘柄、という括りで比べれば、コストパフォーマンスも優秀。シティローストだということだが微妙に浅めな感じで、酸味が少し目立つ。試した範囲では高温短時間薄めの抽出が合うようで、いわゆるアメリカンコーヒーに近い感じにするとけっこうイケる(薄めの抽出を短時間でやることになる:豆の量自体は極端に変えず、30gで4杯分=コーヒー500mlくらいかな)。
サッポロウエシマコーヒー プロフェッショナルユーススペシャルブレンド:
2020年4月の価格は1000gで1054円@アマゾン(本来は12袋=12kg売りなのだが、アマゾンはバラで売ってくれる:粉のみ)。焙煎の違うコーヒーが複数ブレンドされているように見えるが、苦味主体で雑味が少ない(というかクドい風味なので薄めにしておかないと飲みにくい:25gで4杯分=コーヒー500mlくらい、1kg売りで使い方も少しづつなのでなかなか減らない)。それでいて最低限のコーヒーらしさはちゃんと残しているのが凄い。正直なところ、ウマいかマズいかと聞かれればマズいのだが、この価格帯にもっとマシな豆があるかと聞かれると筆者は知らない(価格2割増しでいいならいくらでもあるけど)。淹れたあと10分くらいほったらかしにしてから飲んでも、もちろんまずくはなるが、一般的な豆より劣化が少ない。蒸らしても豆が膨らまないので、コーヒーメーカーでも落としやすい。いろんな意味で業務用な豆。なおサッポロウエシマコーヒーはUCC上島珈琲のグループ会社(2008年に完全子会社になったそうな)。
セブンプレミアム オリジナルブレンド:
2020年4月の価格は粉400gが398円@セブンプレミアム公式サイト。セブンイレブンとその系列の小売店(イトーヨーカドーとか)で入手できる。セブンイレブンのコーヒー豆(少なくとも2020年時点)はキーコーヒーとUCC上島珈琲のOEMらしく、この「オリジナルブレンド」はキーコーヒーが製造している。最大の特徴は価格で、400g売りがここまで安いとは、大手コンビニチェーンの流通力は本当に凄い。豆の質もギリギリのラインはクリアしており、多めの豆を使い短時間で抽出(結果的に大きめのドリッパーが必要になる)すると、雑味の多さと風味の乏しさをある程度補える。ただこの使い方だと豆の消費量が多いので、実質的なコストパフォーマンスは見た目のインパクト程ではない(50gで4杯分=コーヒー500mlくらいじゃないかな)。
セブンプレミアム スペシャルティコーヒー オリジナルブレンド:
2020年4月の価格は粉180gが398円@セブンプレミアム公式サイト。上で紹介した「セブンプレミアム オリジナルブレンド」とは別製品で、こちらはUCC上島珈琲が製造している。価格的にゴールドスペシャルと同ランクの豆(パッケージが小さくなった分割高になっただけ)ではないかと思われるが、だったら筆者はゴールドスペシャルの400gを買ってしまう。買い物予定の数日前にちょうどコーヒーが切れそうだ、というときのツナギとしては大変便利。この銘柄も高温短時間豆多量で抽出するといい感じになるので、使い切りたいときのやりくりもラク。
MJB アーミーグリーン:
2020年6月の価格は袋入り900gが915円@アマゾン、缶入りはなぜか907gでパッケージの分なのか250円くらい高い(どちらも粉)。安いなりに「普通の豆」を志向した感じで、サッポロウエシマのプロフェッショナルと好対照。雑味が多く香りも貧弱だが、なにしろ家庭でコーヒーを淹れる普通のやり方で使える。けっこうよく膨らむ豆で、気持ち薄めに淹れるのが無難。製品としては十分健闘していると思うが、家用の普通の豆の極限ローエンドという狙い自体が、あまり需要のない領域なのではないか。職場のコーヒーメーカーの下の棚に詰め込むならサッポロウエシマや次で紹介する山本プロブレンドの方が使いやすい。
山本珈琲 ザ・プロブレンドマイルドロースト:
2020年6月の価格は1000gで1236円@アマゾン(粉のみ)。無難系を突き詰めた感じでクセがなく、MJBともサッポロウエシマとも好対照。コクも風味もあったもんではないが、ウマいかマズいかと聞かれればマズくはない(どちらにもそこは勝っている)。UCCのゴールドスペシャルと比べても、業務用の豆としてみれば、抜群の扱いやすさで十分勝負できる。蒸らすとガスはけっこう出るが膨らみは小さい不思議な豆。意図的に濃く抽出するとさすがに雑味が勝ってくるので、普通に淹れるのが無難。
神戸輸入食品 深いコク焙煎:
2020年7月の価格は粉340gが350円くらい@近所のドラッグストアで安売り(だっけな?)。粉砕が少し荒く抽出時間が短めになる影響もあるが、とにかく薄味で山本珈琲のマイルドローストよりさらに薄い。普通の安豆と同じノリで淹れると、白湯とコーヒーの中間くらいの不思議な飲み物になる。かといって意図的に濃く淹れると雑味が強く酸味もけっこうあるので、これは薄いまま飲むものなのだろう。やや多めの豆(極端に増やすと雑味が勝ってくるのでやり過ぎない)で短時間抽出するか、普通の分量で普通にドリップして薄味のままにするのが妥当そう。正直コーヒーとして楽しめるような風味はないが、しいていえば薄くしてガブガブ飲みたいとき用(徹夜仕事のお供とか)だろうか。蒸らしてもほとんど膨らまない。あまり見ない銘柄だが進和珈琲のゴールデンブレンドというのが似たようなテイスト。
ヒルス リッチブレンド:
2020年7月の価格は800gで1056円@アマゾン(粉のみ、増量キャンペーン品の青袋)。やや深めの焙煎で、サッポロウエシマのプロフェッショナルとMJBのアーミーグリーンを混ぜたらこんな感じじゃないかというキャラ。これを半端と取るか穏やかと取るかは評価が分かれそう(筆者は半端だと思う)。蒸らしてもあまり膨らまない豆で、やや酸味が勝る。短い抽出時間で気持ち薄めに淹れるのが無難。
アバンス スペシャルブレンド:
2020年9月の価格は500gで644円@アマゾン(豆)。アバンス貿易という会社(国太楼という茶の卸会社の貿易部門が独立してできたそうな:子会社かどうか明確な情報が探せなかったが、2020年現在の社長は同じ人)が出している製品。酸味中心のブレンドで雑味が多め、けっこうよく膨らむ。やや荒めに挽き短時間で薄めに抽出すると、酸味主体のブレンドとしてそれなりに楽しめる(雑味があるので微粉末を入れないよう、普段よりも注意を払う:短時間抽出にすれば濃く出せないわけではない)。価格帯が被っている加藤珈琲のゴールデンブレンドと比べると、酸味系のキャラは共通ながら、多少のクセを許容して濃い風味を追求した感じ(筆者はクドいと感じるが、好きな人がいるかも)。トータルデザインは悪くないと思う。
澤井珈琲 ビクトリーブレンドとブレンドフォルテシモ:
2020年9月の価格は、ビクトリーブレンド500g2袋+ブレンドフォルテシモ500g2袋=合計2kgが2999円@アマゾン(粉豆とも同じ値段:「超大入り」赤袋)。豆のままで買える銘柄としては安価で、品質もハイレベルに普通だが、セット売りが中心(ロイヤルブレンドなど単価の高い豆は抱き合わせない売り方もしているが、3袋セットで1500gだったりする)。ビクトリーブレンドは深めの焙煎で少ししっとりした質感、豆のまま(もちろん未開封で)冷凍保存すると軽く固まる(微妙に油が浮くくらいまで焙煎してある:メーカー分類ではフレンチロースト)。風味はしっかりしているが雑味もあるので、やや高めの温度(極端な高温はダメ)と短い時間(蒸らしも短め)で抽出した方が無難。ブレンドフォルテシモは無難ながらも苦味一辺倒でなく、浅めの焙煎(メーカー分類ではハイロースト)でこのバランスはお見事。こちらは抽出の気難しさもなく、高めの温度にさえしておけば、比較的自由に淹れられる。バラで500g750円ならUCCゴールドスペシャルとも張り合えそうだが、セット売りでなんとか捻り出した価格設定なのだろうと思う。袋の性能なのか、どちらも豆のまま冷凍すればかなり長持ちし、膨らみもよい。
三本コーヒー オリジナルブレンド:
2020年9月の価格は、500g2袋で1198円@アマゾン。アマゾンの商品名が「三本コーヒー オリジナルブレンド(豆) 500g ×2個 レギュラー(粉)」というヤケクソなほど紛らわしいもので、パッケージ写真には「豆」と書いてあり、筆者が購入したものは中身も粉砕しない豆だった。袋を手に取ったとき、開封したとき、豆を取り出したとき、挽いたとき、お湯を注いだとき、カップに移したとき、そして口にしたときと、ことあるごとに「なんて酷い豆だ」と思わせるほどの粗悪品・・・に最初は見えるのだが、なんとこれが、粉砕前の豆の選別を頑張って、高め(高すぎるのはNG)の温度で蒸らして、途中で温度を下げながら一気に短時間抽出すると、かなり普通っぽいコーヒー(雰囲気としては、スプレードライ(微粉)タイプのインスタントコーヒーに似ている)ができる。濃厚系の安豆はドリップで味が変わる幅が大きい傾向があるものの、ここまで差が出るものはそう多くないと思う。雑味が目立たないギリギリのところまで風味を引き出す「攻め」のドリップの練習素材としても面白い(1kgもいらないけど)。
チモトコーヒー 4大陸珈琲福袋:
2021年2月の価格は、500g4袋で2160円@アマゾン。豆ごとにキャラの違いはあるのだが、どれも典型的な安豆の品質で、これといって印象に残らない。値段は安いので、極限コストでかつ少しでも飽きがこないように、というニッチを狙った商品だろうか(ただし豆の消費量は多め)。実際、筆者がどこかの事務所に勤めているとして、サッポロウエシマのプロフェッショナルユースを2kg買って来られるよりは、この商品を買ってきてもらった方が少し嬉しい。
藤田珈琲 オリジナルブレンドコーヒー 中煎り 徳用 800g:
2021年6月の価格は1390円@アマゾン。モノは悪くないのだが、なにしろゴールドスペシャルより価格が高く入手性もやや劣るので、アレじゃなくてコレにする積極的な理由を見出すのが難しい。中身のバラつきもやや大きいようだがおおむね濃厚系。濃く抽出するとクドくなりがちだが、薄く抽出しても最低限の風味は残る。中堅クラスの規模でやっているメーカーらしく、豆売りの商品で比べるとUCCの炒り豆シリーズより安いものがけっこうあるので、そのうち試してみようかと思っている。
キョーワズ珈琲の安い豆:
これはちょっとイレギュラーな商品。キョーワズ珈琲は京都のコーヒー屋さんらしく、メイン商品はやや高級志向(ボリュームゾーンと見られるブレンド豆が500~800円/100gくらい)なのだが、おそらくB級品と思われる豆が出回っていることがある。パッケージも価格も容量も一定しないのだが、とくに「まろやか」系のブレンドはかなり高級な豆を使っている(ことが多い)ようだ。
UCCのゴールドスペシャル以外で印象に残っているのは、風変わりなキャラが面白い加藤珈琲店のゴールデンブレンドと気難しさで抽出が面白い澤井珈琲のビクトリーブレンド(この2つ、いろんな割合で混ぜてみたら面白そうなのだが、1回購入あたりの分量が多いのでなかなか機会に恵まれない)、完成度と扱いやすさで澤井珈琲のブレンドフォルテシモあたり(どれも豆で手に入るのが嬉しい)。なかでも「普通さ」を捨てないブレンドフォルテシモのキャラは貴重、総合的に見て非大手メーカーの製品では群を抜いている。いかにも業務用な豆は、やっぱり(家じゃなく)会社の事務所とかで使うのがいいんだろうと思う。しっかし、冷蔵庫に移してかなり経ってからもやたらと膨らむ豆がたまにあるのはなんなんだろうなぁ。
オマケ(筆者の買い方):
安い豆に限らず、筆者は初めて買うコーヒーはたいてい粉で買う。というのは、売り手が想定している粉砕の度合いを確認したいのと、粉砕工程がどのくらい丁寧なのか見ておきたいから。また知らない銘柄を買うときは毎回買う銘柄も一緒に買って、比較しながら特長をメモっておくと効率よく絞り込める。コーヒー店で直接買うときも、初めて買う銘柄を粉で200g(これを真っ先に使う)、毎回買う銘柄を粉で200g(たんに挽くのがメンドクサイから)、知っている銘柄をテキトーに組み合わせ豆で600g分(後で使う)みたいな買い方が多い。合計1kgならだいたい1か月分くらいで使い切る(豆や体調や忙しさによって、200~300g/週なのだろう)。紹介した中には2kgでないと買えないパッケージもあるが、筆者の使い方だと最後の方は風味が落ちてくることが多い。2023年追記:トシのせいか緑茶を飲む機会が増えたせいか、大量のコーヒーを常飲する習慣はほぼなくなった。
流通に多少時間がかかっても風味が落ちにくい、粉砕前に豆を選別できるという豆買いのメリットは、安い製品でこそ大きいのだが、しかしじゃあ手元で粉砕する手間をかけてまで安い豆の鮮度を保ちたいか、安い豆を手選別して使うなら普通の豆を買ってきた方が早くないか、という現実的な問題もある。一方、手間をかけてうまいコーヒーを作るのが面白いと感じる人には、安い豆は大胆な工夫をいろいろ試すのに格好の材料だろう。この辺の、実用性(コストパフォーマンス)と趣味性(面白み)のバランスについても、少し気を使ってみるのがよさそう。
余談ながら、普通の(安くない)コーヒー豆を買うときは美鈴コーヒー(函館美鈴)が筆者のファーストチョイス(全国的には、北海道のコーヒーブランドといえば宮越屋珈琲なのかもしれないが、地元ではコッチの方が有名、だと思う:直火焙煎をやっている珈琲工房ビーンズ(大谷地ビーンズ)も含め、北海道はコーヒー豆の供給に比較的恵まれている)。