初心者向けのネタ。
まあ「何がいい」と言われても、わざわざ遠出のためにバイクを買い換える人はあまりいないだろうが、重視すべき点は
DT200(2スト単気筒200ccのOFF車、借り物:カタログスペックだと30馬力だが、年代モノのポンコツだったので20馬力も出ていなかったと思う)で走った経験からいうと、このクラスだとややパワーが足りない。スパーダ(4スト2気筒250ccのネイキッド:カタログスペックだと40馬力で、これもポンコツ)でギリギリ、CB400SF-R(4スト4気筒400ccのネイキッド)で楽々、といったところ。高速で長距離を走るなら、人によっては400ccクラス(6速100km/hで走ったとしても6000rpmくらいでしょ、多分)でないと疲れるかもしれない。
OFF車はブロックタイヤのノイズがうるさい(というか振動で疲れる)が、それ以外は峠道などを走るときに前輪の重さがかったるいくらいで、総合的な疲労度は思った程ではない(寒い季節だとナックルガードがこの上なくありがたい:長距離だと尻が痛いという話をよく聞くが、車両の問題を考えるより乗車姿勢を見直した方がよいと思う)。カウルがない車種についても、高速道路さえ走らなければほぼ無問題といえる(エンジンをカイロ代わりに使えるし)。筆者はエンデューロやラリーレイドやデュアルパーパスなどのモデルに乗ったことがない、というか4ストのOFF車自体セローにちょっと乗せてもらったくらいしか経験がないので、2ストとどのくらい違うのかは知らない。
できれば、旋回の軽いバイクが疲れにくい(道がずっと平坦で真っ直ぐなら、どっしりしたタイプの方が楽)。レーサーレプリカタイプのバイクで長距離を走ったことはないが、ちょっと借りて走ってみた感じでは、ポジションさえ合っていれば割と走りやすいのではないかと思う。アメリカンタイプには乗ったことがないので不明。まあしかし、オンロードで500km/日くらいの単発走行なら、ちゃんと走って曲がって止まりさえすればあとは何とでもなるのが現実なので、あまり気にする必要はない。
なお参考までに、北海道の海岸近い主要道(知床横断道路含む)を1周すると2200kmくらい、函館から稚内とか網走とか釧路までの直行や、稚内からえりも町までの縦断は、下道で500~600km。松前町から根室や知床までとか、完全に端~端でも700kmちょい(羅臼町まで行っても750kmくらい)で、距離だけ比べれば東京~青森と似たようなもの。函館~札幌間は近いと思っている人がいるようだが、道央道だと300kmちょい、下道でR5なら280kmくらい、R230で近道しても250kmちょいある(札幌~旭川の方がずっと近い:130kmくらい)。また青森から鹿児島まで高速に乗った場合、東北道だと2000kmちょい、北陸道だと2000km弱、下道でも2000km前後になる(高速代だけで往復6万円はカタいし、宿泊なしでは到底走り切れないので、フェリーに乗った方がいいと思う:寝ている間も勝手に移動を続けてくれるのがフェリーの強み)。
荷物のパッキングには「とにかく減らせ」という鉄則がある。ということで、ぜひ必要なものをまず見ていく。
濡れると困るもの(上記では着替えとタオル1本)や流体の荷物(=漏れたら困るもの:振動とか衝撃とか温度変化とかに晒し続けるわけだから)はビニール袋に入れておく。地図・ガム・アメ・タオル1本はタンクバッグに入れるか、リュックなどに入れてネットでタンクに載せると便利(携帯電話なんかもこちらに入れて下車時に持ち歩くようにする:運転中は身につけていると邪魔)。後ろに載せるバッグには、雨具・着替え・ゴミ袋・カイロが入ることになる。
その他あると便利なものとしては、
キーの付け忘れを防ぐため、ジャケットなどに結びつけるカールコードがあると便利だが、念には念を入れてスペアキーを財布の中にでも入れておくとよい。貴重品の嵩は、身に付けたままトイレに入って(ポケットから出さずに用を足して)も差し支えない程度に留めるのが無難。ウェストバッグも便利ではあるのだが、乗車中はバッグを身に付けているよりネットで(タンクバッグの上などに)固定した方がラクだし安全だと思う。走行中に中身をぶちまけると悲惨なので、バッグ類の口はしっかり閉め、走り出す前に再チェックする心の余裕を持ちたい。
タンデムの場合、同乗者の疲労を軽減する必要がある。見た目はかなりアレ(走っているときよりも降りたときの方が目立つ)なものの、シートの上に座布団(数百円の安物で十分だが、シートのタンデムベルトなどに縛り付ける必要から、ヒモつきのものを選ぶ)を敷くと効果が高い。さらに、同乗者が荷物に寄りかかれるような積み方にできればもっとよい(荷崩れにはくれぐれも注意:ライダーも、タンク上の荷物に寄りかかれる姿勢だと何かとラク)。
キャンパーの人は、テント・寝袋・ウレタンマット・ビニールテープ・ロープ・調理器具・ペーパータオル・懐中電灯あたりが必要だが、調理器具は飯盒・鍋1つ・ナイフ1本・携帯コンロだけで間に合うことがほとんど(食器は箸以外不要:開けたところに行くのであれば、飯盒とナイフも省いて構わない)。魔法瓶(水の確保用)は大きいものを持った方が楽(飲み物の保温用と2つ持ってもよい)。照明器具は懐中電灯が1つあれば十分。昔はラジオも必携だったが、今は携帯電話で情報収集ができるので、これはお好みで。
運転中に同じ姿勢を長時間続けると、手首・足首・腰・膝あたりをどこか痛めるので注意。こまめに下車して少し歩き回ると疲労しにくい(腰・肩・手首はストレッチ必須)。けっこうエネルギーを使うので、アメやガムなど(カロリーオフじゃないもの)で糖分を補給すると集中力を保ちやすい。水分も適宜補給するが、夏場ならスポーツドリンク、冬場ならホットレモンあたりがよいだろう(カフェインに利尿作用があるので、コーヒーはあまりオススメしない:ダイエット系のドリンクも、糖分の補給にならないのであまり良くないと思う)。
途中コンビニを利用するだろうが、ミニストップがダントツで利用しやすい(店内で飲食できるのは最高:地図ひとつ見るにしても、イスに座って見られるので非常に楽)。多額の現金は持ち歩かない方がよいが、田舎に行くと銀行よりも郵便局がはるかに便利。コストパフォーマンス重視でファミレスチェーンなどを利用する場合、オシボリを出してくれるところだとありがたい。食事は腹持ちのするものがよいと思う。
主要な国道などでは、アスファルトが磨り減って路面が轍状になっているが、轍の山もしくは左の轍を走るとよいだろう。ペースは流れに乗って走った方が楽(道がわかっているのでなければ、飛ばしてもさほど時間短縮にならないことが多い)。とくに前が空いたときはあまり調子に乗って飛ばさない方が無難(地元の車がペースを落とすのにはそれなりの理由がある)。長距離バスや長距離トラックの後ろだと安定したペースで走れて楽なのだが、あまりくっつくと前のドライバーに迷惑だし、ディーゼルの排気が煙たいので車間を広めに取る(バスやトラックを追い越していく車が、いったん自分の前に入れるくらいがよいだろう)。というか、間に1台入っているくらいの方が走りやすい。反対に大型の前を走る場合は、ブレーキの性能が違うので普段よりも後ろに注意を払う。
たまに、やけに遅い車が前を塞いでいることがあるが、そういう車は長距離を走らないことが多いので、おとなしく待っていればそのうちいなくなる(急に曲がることや、下手をすると曲がりかけて止まることがあるので車間は広めに)。後続の車が追い抜いていくようならそちらについていってもよいが、やはり自分の前を1台入れるくらい空けて、左側を走っておくと流れがよい(何も考えずに追い抜くと、ヘルメットを被ったお兄さんが運転していたりして悲しいことになる)。自分の前に1台入ったら、あらかじめ右に寄っておくと楽(このとき、強引に自分を追い抜いていく車がいないかどうか必ず確認:とくに北海道を走る場合)。
交通法規はもちろん全国共通のものだが、細かいマナーや習慣については意外と地方差がある。たとえば信号の変わり目について、東京は「黄色は止まれ」にかなり忠実だが、札幌あたりだと信号が赤になる前に交差点に入るくらいのタイミングでは誰も止まらない。いっぽう、札幌では「見切り発車」をするドライバーが東京よりもかなり少なく、また発進もかなり慎重である。これは札幌で降雪や路面凍結が多い影響と思われ、実際冬場には信号が変わったからといって急に止まれないし、もし止まれたとしても追突される危険がある。そして夏場になってもこのリズムは忘れられず、結局は1年を通してそのような傾向が保たれる。これはどちらが良いとか悪いとかいう問題ではなく、危険回避のために必要な情報である。たとえば東京で札幌のような交差点進入をしたら、反対に札幌で東京のような発進をしたら、かなり危険である。
このほか知らないとびっくりする北海道(の田舎)の習慣として「大きい道路からの右折は小回りで小さい道路からの右折は大回り」なんてのもある(これも、大きい道路では減速幅を抑えたいという意識から来ているのだと思う、多分)。都会の感覚で右に寄って待っていると、大きい道路から小回りで右折してきた車(大きい道路からの左折で反対車線にはみ出てくる車もたまにいる)に轢かれそうになるし、前の車が左に寄ったと思ったらイキナリ右折(指示器はハンドルを切りながら出す、という習慣も根強いが、これは単なる法規違反:というか、4輪車の場合ハンドルを左に切ると右折の指示器がキャンセルされるので、ハンドルを切りながらでないと出せない)することもある。急に「首振り」(真後ろをミラーで確認するための短い蛇行)をする牽引車両なんかは少なくなったが、完全に絶滅してはいない。
田舎(とくに夜道)だと、野生動物が飛び出してくる場合がある。筆者は、箱根で猫(昼)、北海道の浮島峠でエゾシカ(夜)を轢きそうになったことがあるので、それほど稀な事態ではないのだと思う(猫くらいならともかく、エゾシカなんぞにぶつかった日にはこちらも多分死ぬので要注意)。
冒頭で述べたとおり筆者は東京~札幌の下道(+青函連絡フェリー)移動であれば経験があるが、札幌~東京は経験がない。経験がないので推測でしか言えないのだが、恐らく東京~札幌よりも札幌~東京の方がつらいはずである。
理由はフェリー移動(手続きなども含めて4時間くらいかかる)のタイミングで、東京~札幌の移動だと体力的に限界が近づく出発後20時間くらいのタイミングで青函連絡フェリーに乗ることになり絶好の休憩となるのだが、逆方向の移動だとあまり効果的に休めない。さらに、札幌~東京の移動だと最後の最後で都内を走行するハメになる。小岩・江戸川方面が目的地であればまだマシだが、三鷹・府中・多摩方面が目的地だと都内に入ってからの運転がかなり辛いはず。
東京~札幌の場合、東京を深夜出発~青森に深夜到着~函館に早朝到着~札幌に昼到着というパターンと、東京を朝出発~青森に朝到着~函館に昼到着~札幌に夕方到着というパターンが考えられる。寒い季節だと前者の方が楽だが、睡眠などのリズムを考えると後者の方が合理的。間を取って東京を早朝に出発する手もあるが、一番疲労の溜まっている青森直前を暗い時間帯に走ることになるのは深夜出発と同様なので注意する。東京~青森は実質20時間程度だが、3~4時間くらいは余裕を見て予定を立てたい。
札幌~東京の場合、札幌を夜出発~函館に深夜到着~青森に早朝到着~東京に早朝到着というパターンが有力か(睡眠パターンが崩れにくいし、ラッシュアワーを避けてかつ明るい時間に東京に入れる:新聞配達のカブがかなり飛ばしている時間帯なので、それだけは注意)。倶知安の辺りと奥羽山脈の両方を日中に走れるパターンを目指すと、札幌を昼出発~函館に夕方到着~青森に深夜到着~そのまま休憩して早朝出発~東京に早朝到着という感じになる。札幌~函館は5時間程度だが、1時間くらいは余裕を見ておいた方がよい。
とくに夜間は、給油が死活問題になるので十分注意する。多少データが古いが、24時間営業のガソリンスタンドをまとめた非常にありがたいサイト(トップページ)があるので参考にする。ルート設定についてはGoogleマップでも利用するのがよろしかろう。
出発前のメンテナンスでは、アクセル・ハンドル・ブレーキが「疲れない操作」で「きちんと機能」することを確認する(レバー類やペダル類が曲がっていたら交換した方がよい)。消耗品としてはオイル・チェーン・タイヤ・ブレーキシュー・エアクリーナーあたりをチェック。ブレーキオイルとラジエター冷却水の量や、バッテリーの交換期限も確認しておいた方がよいだろう。普段昼間しか乗らない人はライトも一応チェック(とくにロービームとハイビームが同時に切れるタイプの車両)。忘れがちだが、シートに亀裂があったら補修しておこう。
フェリーについては日刊海事通信社のページで検索できる。他の交通手段と違い、フェリーは経由地がある便だと価格も所要時間も大きく増える(同じ行き先なら直行便の方が早くて安い)ので注意。大型フェリーはたいてい25~30ノット(時速50km/h台)で、移動中だけ考えれば陸路の方が速い(太平洋側を通る場合は少し遠回り、日本海側は場所によって少し近道することになるが、影響は大きくない)。ポイントは寝ている間も食事している間も風呂に入っている間も移動してくれるところにあり、これをどこに設定するかがキモになる(職業ドライバーの間では、北海道から八戸でフェリーを降りて東京まで自走するルートも一般的な選択だと聞いたことがある)。車両は、出港90分前(遅くとも60分前)にはフェリーターミナルに到着している必要がある。
フェリーの車両運賃(2輪4輪とも、普通は自転車も)は、ツーリストと呼ばれる半個室(カプセルホテルのカプセルよりは明らかに簡素なタイプのベッドを6つくらい詰め込んだ大部屋:上位のツーリスト客室として個室を用意している船もある)とセットになっており、追加料金を支払うと部屋のグレードを上げられる。ツーリスト客室にはサニタリーがつかないのが普通なので、スリッパ、洗面用具、靴下、ポリ袋(脱いだ靴下とか濡れたタオルなんかを入れる)、紙とペンなんかをトートバッグにでも入れて持ち込むとよい(スリッパやタオルなんかは船内でも100~200円くらいで買える)。食べ物(アルコール飲料は禁止の船が多い)も持ち込めるし、たいていはカップ麺の自動販売機があって給湯室でお湯を入れられるが、オーバーフロータイプの電気給湯器(せいぜい98度くらいのお湯が出る)であることが多く、ノンフライのカップ麺はやめておいた方が無難。
安いビジネスホテルを利用する場合、駐車場がネックになる。都会になればなるほど自前の駐車場を持っている所が減り、近所のコインパーキングを利用する形態(とくに車止めで料金管理しているところ)だと2輪車不可であることも多いため、事前に確認が必要。深夜になるとフロントが閉まる(内線電話などで人を呼べばチェックインはできるのが普通)ところや、貴重品を預けられない(常に自己管理になり貴重品ボックスもない)所、安宿なのにやたらIT化が進んでいて現金NGの所もある。筆者は旅行先では生水を飲まないことにしているし、朝食の提供時間と出発時刻が合わないことがほとんどなので、チェックインしたらすぐに水と食料を用意して冷蔵庫(自分でスイッチを入れるタイプのものは、冷え始めるまでにしばらくかかる)に入れておくことにしている。
追記:日本銀行法第46条第2項に「前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。」という定めがあり、事前の合意(当然ながら強行法規でなく任意法規なので、契約の自由により「支払い方法はこれこれの電子決済に限る」といった契約も普通に有効)なしに現金払いを拒否されることはないはずだが、旅先で不要なトラブルを避けるためにも支払い方法は確認しておいた方がよい。正確な法的情報は専門家に相談のこと。
いわゆる「ドライブイン」系の食堂は当たり外れが大きい。目安として、大型トラックが大量に停まっているところだと(すばらしくおいしいとは限らないが)大外しは少ない。給油ついでにガソリンスタンドでオススメ(というか近くで食べられるところ)を聞いておくとよい。
たくさん積むためにまず必要なのは大きなキャリアである。なぜかというと、自動二輪(と原付二種)には「高さは地上から2m、乗車装置(シート)または積載装置(キャリア)から前後(普通は後ろ)に+30cm、左右それぞれに+15cm、重量60kg、灯火を隠さない」という積載制限があり、大きい荷物は大きいキャリアにしか積めないからである(だから、配達用のカブなんかは車幅いっぱいの大きなキャリアを装備している:まー体積だけ増やしても結局60kgまでしか積めないわけだけど)。荷物でなくケースの場合はこれまた面倒で、基本的には積載物ではなく積載装置として扱われるのだが、国土交通省が「指定部品」として認めているものでかつ取り外し可能な設置方法であれば、構造変更の手続きなしに使える(はず)。まあ何にしても、ここは各自がなんとかしたとしておきたい。
たいていのバイクでは、一番大きい荷物が積めるのは「後ろ」だろう。ここにハコを置くと収納力が高まる。バイク用の収納箱には台座をキャリアに固定して箱ごと付け外しできるものもあるが、リアキャリアに積むタイプだと重量の制限がキツい(カブの一部とかジャイロみたいな荷物を運んでナンボの機種には、業務用のとても丈夫なキャリアや200Lクラスの巨大なトランクも用意されているが、普通の街乗りバイク用のキャリアは5kgくらいの耐荷重のものが多い:丈夫さで勝負したら、そりゃあリアシートには敵わない)。ロープ固定でもよいなら、ホームセンターで売っている屋外収納用の箱(ベランダストッカー、ガーデンストッカー、ベランダコンテナ、ベランダボックス、カートランク、ホームボックス、そのほかいろいろな呼称で呼ばれる:屋外使用とロープでの積載に耐えるものならなんでもよい)が容量とコストパフォーマンスに優れる。天面が平らな箱だと、上に他の荷物(テントとか)を重ねることができて便利。手間を惜しまないなら、底に穴を開けてシリコンの丸ワッシャーを噛ましロープをかけるフックをつけることもできるのだろうが、強度の問題があるので適切な補強ができる人以外は手を出さない方が無難。
後ろに箱を積むときは、高さを過剰に高くしないことと、伸縮性が小さいロープを使うことが重要(ホームセンターだと、荷役ロープとかトラックロープとかいった名前で売ってんのかな)。重心が高くなるとサイドスタンドが使えなくなるだけでなく立ちゴケの原因にもなるし、伸びるロープやゴム紐を使うとずれて荷崩れする。箱を背もたれにできるような積み方にしておくとなおよい。もちろん、箱でなく大きなリュックを使うこともでき、その場合荷崩れはしにくくなるが、中の物が壊れないようロープではなくネットを使った方が無難(シートバッグとかリアバッグなどと呼ばれる専用品だと、ヒモを複数使うものが多い)。本当はバイク便などで使われるハコ(名称に混乱があって、トランクボックスとかリアボックスとかデリバリーボックスなどと呼ばれる:底近くで固定して、クーラーボックス風に上で開くものが多い、と思う)が理想なのだが、個人で買うとけっこう高い(3万円くらいだから普通のケースよりは安いかも:きっと丈夫なんだろうし、積んだまま荷物を出し入れできるってのは便利だろうと思うが、リアシートとシート下は潰れるし、上手く乗る車種とそうでない車種がありそう)。代用品だと大型のクーラーボックスが近い形だが、やや細長だと思う(ずっと屋外に晒す前提の製品ではないので積みっぱは避けた方が無難)。
タンクバッグはリュック+ネットで代用できる(タンクの形状によるので、ネットのかかりのよさと相談してから)。着脱可能なポーチがついていると便利で、ミリタリーレプリカのリュック(ミリタリーバックパック、アサルトパック、タクティカルリュックなどの呼称で売られている:MOLLE(ないしPALS)レプリカなら、ポーチなどの付属品に互換性があって使い回せる)なんかは容量も大きくベルト類が豊富。乗車中直接身に付けるのは本当の貴重品だけ、バイクを降りるときはポーチも外して持ち歩くようにして、電話とかカメラなんかはポーチの方に入れておくとラク(故障防止のためタオルで包むなどの振動対策と、真夏であれば熱対策もしておこう)。リュックを固定したネットの上に小さめのネットをもう1枚張って、親亀小亀状態にしても便利だが、飲み物(ストローつき水筒とか)を積むときはとくに、落っことさないようしっかり積む。リュックに寄りかかるというか、抱きつくような姿勢も取れるようにしておくと体がラクだろう。
最初に断っておくが、筆者自身はキャンパーではない。昔何度かキャンプをしたことがあるだけのシロウトである(このサイトはホント多いな、このパターン)。まあとにかくバイクを使ってキャンプ(ソロ前提)に出かけたい人のためのちょっとした情報である(過信禁物)。2輪車でのキャンプの特徴は、走っているときも寝ているときも、とにかく風雨を(災害レベルのものなら当然避難するが、それに至らないほとんどの場合)避けられないところにある。というか、風雨を避けないつもりだからわざわざ2輪車に乗っている、というのが普通の解釈だろう。
で、何を言いたいのかというと、テントはクロスフレーム(自立型ドーム)のダブルウォールにしといた方がいいよ、ということである(前置きが長かった割にあっけないが、筆者の実感である)。極限までコンパクト化したものとか、面白機能を詰め込んだものとか、ギミックの多いものなんかは、本当に欲しい人だけが手を出せばいい。またテントは基本的に消耗品(とくに連泊する場合、濡れたテントをそのまま収納してまた使うという繰り返しを避けようがないし、途中にフェリー泊なんかが挟まると干せないままになるため、天気予報が晴れのときだけ出発して降りそうになったら即撤収とかいった運用でもない限り、どうやってもカビが生える)なので、あまり気張った費用はかけない方が無難(必要な性能さえ確保できるなら)。
他に必要なのはクッションマットくらいで、夏なら寝袋(これも干すのが大変だがサボるとカビるし虫が湧く)は必須でないというか、キャンプが初めてなら寝袋が必須になるような条件は避けた方がよい(ホームセンターに1500円くらいで売ってる毛布と数百円の防災用アルミ保温シートが各1枚あれば十分)。それよりも、ビニールテープとかロープとか軍手とか懐中電灯とか、多めのタオルとポリ袋とか大きめのステンレス魔法瓶とか、荷物に余裕があれば替えの靴とか、そういった物をしっかり持っていった方がよい。雨具と乾いた着替えは(上でも触れたように安全のため必要なものなので)使わなくても毎回持っていくべき。テントに入れられる荷物は限られるので、それ以外の荷物が夜露や雨に濡れないよう、ゴミ袋かなにか被せ(て飛ばされないよう固定し)ておくことも必要になる。
炊事用品も初めのうちはいらない、というか初心者がコンビニもないようなところに行くものではない。日帰りのロングツーリング>宿泊施設を使った泊りツーリング>寝る場所だけテントに変更>慣れたら炊事もやってみよう、くらいのステップは踏んだ方が、自分への負荷が減り、ひいては安全にもつながる。ステップアップのたびにいろんなトラブルがあるだろうし、いろんな工夫をして、いろんな失敗をして、だんだんと行動範囲を広げていく、というプロセスを面白いと感じない人は、別の趣味を探した方が幸せなんじゃないかと(おせっかいながら)思う。上で防災用のアルミ保温シートを話題にしたが、防災用品はキャンプにも便利だし、非常食なんかは消費期限があるので、少し古くなってきたらキャンプで使ってしまうようなサイクルも合理的だと思う。
・・・とはいったものの、野外調理はそれ自体に趣味性があって、やはり面白い。米を炊くつもりなら無洗米が無難で、米を浸水する間にお湯を沸かし、沸騰したお湯は魔法瓶に、コンロが空いたら飯を炊き始め、炊けたら蒸している間に付け合わせを1品デッチ上げるようなリズムだとスムーズ(熱源が1つしかないだろうから、お湯>飯>それ以外の流れを基本に)。風がある場合はとくに、鍋にフタをしないと極端に沸騰が遅くなるので、湯沸しには必ずフタを使いたい(ゴミやチリや虫もけっこう飛んでくるし)。都合、鍋を2つ(米用と、お湯と付け合せ用)使うことになるが、セットものよりも、メスティン系の飯盒(フタつきの平べったいやつ:850mlで2合炊けるものが多い)に米と食材、コッヘル系の鍋(丸い片手鍋:1~1.5Lくらいのものが多い)に屋外用カセットガスとバーナー(とクッションになるもの:食器拭き用の布とか)を入れて持っていくのがコンパクトじゃなかろうか(普通のカセットガスは入手やオフシーズンへの使い回しがラクだが、普通の屋内のような安定した環境でないため、ガス缶の保管と火の扱いにはくれぐれも注意:固形燃料なんかも扱いやすい熱源ではある)。沸かしたお湯は、食事が終わった後食器や鍋に少量注いで、残った有機物をまとめて胃袋に流し込むのにも使う。
洗い物がけっこう難しいのだが、山とか川とか海なんかに合成洗剤をタレ流すのは非常にアレだし、キャンプ場などでも使用可能な洗剤(食器用石鹸のみとか)を指定しているところがあるので、まずは行き先の事情に合わせる(ちゃんとした下水に流すなら合成洗剤の性能がありがたいわけだし)。小さいタワシは意外と便利だし、洗剤なしで擦るだけ系の食器用スポンジや、自立タイプの水切りゴミ袋が役に立つ場合もあるかもしれない。ただし、食器を拭く布やスポンジ類なんかは、雨が続くと湿気っていても干せない(キッチンペーパーなら濡れたものを捨てればよいだけだが、それはそれで野暮な気もするし、そもそもキャンプ用の食器なんて多少の油汚れが残ってるのが普通というか・・・うーむ、好みで決めるしかないのかも:リュックの中で洗剤のキャップが緩んで中身が流出すると悲惨なことになるし、タワシとお湯の力で頑張るのが潔い気もする)。ゴミの扱いも行き先ごとに規程があるはずなので、しっかり確認しておく(とくに山の近くでは、生ゴミが鳥獣害の原因になることもあるので注意が必要:4輪車なら密閉式のゴミ箱(パッキンゴミ箱とかペイントペールとかシールバケツなどいろいろな名前で売られており、オムツ用などで脱臭剤をセット可能なものもある)を自前で用意することもできるのだろうが、2輪車だと荷物の余裕がないため、相当難しいと思う)。
本編でも繰り返したが、水に濡れた状態で風に当たることだけは絶対に避けたい。完璧な防水を実現した、あるいは天気が雨でなかったとしても、自分の身体から出る水分を止めることはできないし、完全な透湿装備というのも存在しないので、まずは風を入れないことが重要になる。そのためには、服の「出入口」になっている首・手首・腰・足首をしっかり絞ることと、風を通さない生地・密閉を妨げないファスナーを備えた服を選ぶ必要がある。
首周りは選択肢が微妙で、上半身への風の侵入・ヘルメットとの干渉・ばたつきの少なさなど考慮すべきポイントが複数ある。冬用のライディングジャケットなら単体で襟を絞れるようになっているものの、短いマフラー+貼り付けカイロくらいは用意しておいた方がが無難かなぁというのが筆者の感想。手首・足首は、グローブ・ブーツさえしっかりしていればそう大きな問題にはならないが、ここから風が入ってくると非常に寒い。座りが悪いときは、裾絞り用のゴムバンドなんかも検討してみるとよいかもしれない。ハンドルカバー・ブーツカバーも選択肢になる。腰のところは、普通に絞ってさえあればなんとかなるし、ベルトなり腰ひもなりで上からもサポートすることが可能。
本当に寒い環境では、胸元・手の甲側・腰の背中側・膝上やや内側にカイロを使えるとかなり違う。胸元(胸骨の一番上あたり)は、普通の状況でカイロを使うと心臓や血圧によろしくないのだが、なにしろ(首は手首や足首ほどキツく絞められないため)一番多く風が入ってくる場所で、非常に強く冷やされる。できれば、腕の付け根(肩甲骨の反対側、体の前面)にも小型のカイロを貼っておきたい。手の甲と膝上も、グローブやパンツの上からとはいえ風が直撃する箇所で、ここ自体が冷えること・冷えた血液が末梢を痺れさせること・冷えすぎた血液が体幹に戻ることのどれもが危険である。バイクの燃料タンクも地味に冷たいので、ニーグリップするときタンクと腿の間に挟まるくらいの位置にもカイロがあるとなおよい。つま先にカイロを入れられる余裕がないなら、ふくらはぎの下くらい(靴下の上の方)に小型のを貼り付けてガマンするほかあるまい。
風を通さない服という意味で、雨合羽はけっこう優秀、というか、真冬用のライディングウェアだってスキーウェアだって、外側に防水防風生地+内側に空気保持裏地という構成には変わりがない。ただ、専用ウェアの裏地と同等の保温能力がありサイズもピッタリなインナーを探すのは、かなり大変だろう。北海道でいう「ウインドブレーカー」(ボリ系の外生地で裏地付き、普通はズボンと上下セットになっている)は、使えるものも中にはある(とくにズボン)のだが、強い風にずっと晒され続ける使い方は想定していないものが多い。
条件が違いすぎて公道を走るときの参考にはならないが、オンロードの耐久レースだと鈴鹿8耐で1200kmくらい、同じEWCのスパ・フランコルシャン24時間だと3500kmくらい。MotoGPやスーパーバイクなどオンロードのスプリントレースは上限130kmのものが多く、それを3人で3セットやると1170kmになる、と考えるととんでもなく長い。オフロードはEWCで250~300kmくらい、ISDEが6日間で1000kmくらい。オフロードの長距離を一人(修理まで自前)で走り切るのは、技術や体力ももちろん必要だろうが、よほど強靭な精神力と入念な下準備がないとできないことだろう。