馬力規制と単車のラインナップ

日本にはバイク(4輪車もだが)エンジンの出力を規制するというわけのわからない(というか頭の悪い)ルールがあった。俗に馬力規制と呼ばれる(が、法律ではなく自主規制)。なお、1999年までの日本馬力は1馬力=750ワット、1999年からの日本式仏馬力は1馬力=735.5ワットで、馬力からキロワットへは4分の3がけ、キロワットから馬力へは3分の4がけでだいたい換算できる。

1989年からの基準では、50cc=7.2馬力、125cc=22馬力、250cc=45馬力、400cc=59馬力、750cc=77馬力、750cc超=100馬力、ただし10%以内の誤差はOK。1992年からの基準では250ccが40馬力、400ccが53馬力に下がり誤差も認められなくなった。この規制を考えた人は「50馬力の250ccは50馬力の400ccより危険か」という素朴な疑問について何をどう考えたのだろうか。解禁されたのは2007年なので、18年間にわたって規制が続いたことになる(4輪車は2004年に廃止)。追記:ヨーロッパ(というかEU圏)では1996年から免許制度が変わったらしく、125cc以下かつ11KW(15ps)以下のA1、35KW(47ps)までのA2、限定解除に当たるAの区分になったらしい(パワーウェイトレシオの制限とかA2はフルパワーモデルが70KW以下とか、細かい規程があってけっこう複雑:日本の制度もいい加減歪だけど、ヨーロッパもヨーロッパでアレよね)。アメリカは例によって州ごとに免許制度が違うが、多くの州で排気量や出力を限定しない単なる「二輪車の免許」になっているらしい。

250ccで45馬力というのはマルチでないと(当時の技術水準では)厳しい数字で、ホンダがRZ250に対抗してムキになったVT250F(1982年発売)でも、初期型(FC・F2D)が35ps@11000rpm、2型(FE・F2F)が40ps@12500rpm、3型(FG)・最終型(F2H)が43ps@12500rpmである。最終型の43psというのはとくに苦しく、カタログを見ただけで「こんなエンジン使えないよ、ピーク出力のカタログ値だけ出してどうするんだ」と思わずにいられない(輸出仕様のVT250Fは35ps@11,000rpmのまま:1988年発売、1991年生産終了の後継車種スパーダは国内国外とも40ps@12,000rpm)。ちなみに、4スト800cc時代(2007~2011年)のMotoGPマシンがよく「200馬力以上」と言われていたが、ドゥカティが2018年に市販したパニガーレV4R(SBKのホモロゲ機)で234馬力を達成した(MotoGP機は、1000ccになって300馬力に迫っているともすでに越えたとも言われるが、詳しい数字は出てこないカテゴリなので真相は不明)。

筆者の感覚でだいたいの目安を書いておくと、10馬力:街乗りなら無問題(2種原チャクラス)、20馬力:高速を普通に走れる下限(ツーリング系オフ車クラス)、30馬力:高速や2ケツはかったるい(中型レトロモデルクラス)、40馬力:2ケツや高速に十分(250ccスポーツクラス)、50馬力:2ケツも高速も余裕(400ccスポーツクラス)、60馬力:装備重量200kg超の車体でなければ必要ない、くらいか(いずれもパワーバンドを有効に使った場合:車体の重さや空力特性やエンジンの味付けや2スト/4ストでも差が出るのであくまで目安)。筆者は軽量なモデルが好きらしく、今までにバランスがよいと思ったのは、セロー225の20ps120kg(初期は乾燥/装備で106/117kgだったはずだが、WだかWEだかの頃に108/122kgになった、のだと思う)、スパーダの40ps153kg、RVFの53ps183kgなど。

同じ人数の人間を運んでも小排気量車の方がCO2やらNOxやらの排出は少ないわけだから、中排気量2輪車の環境規制はもう少し大目に見てもらえないものかなという気もする(ヘタな規制で大排気量車しか生き残らなくなったら環境問題的には逆効果だと思うのだが、もともと「環境保全を第一に」考えて作られた規制でもないのだろう:ただ、内燃機関を積んだ車両に1人で乗ってる時点で贅沢、と言われればたしかにその通りではある)。


250cc直4の話。

この手の話になると決まって槍玉に上がるのがCBR250RR(エンジンは250Rの頃と同じMC14Eで、92年型までは45PS@15000rpm)とホーネット250だが、実際には、FZR250R(一番激しい時期の3LN1~3LN5で45PS@16000rpm)もZXR250(同じくZX250Aで45PS@15000rpm)もGSX-R250(同じくGJ72Aで45PS@15000rpm)も、みんな直4の超高回転エンジンを積んでおり、それらのエンジンを流用したジールもバリオスもバンティットも、程度の差こそあれみんな似たような特性だった。だいたいが、ピキピキの特性にしたいのでなければ、ニーハンを直4にする理由なんてないのである(ZZR-250とかゼルビスとかルネッサとか、ツインエンジンのマッタリバイクは普通にあった)。

それが装備重量150kgちょっと(CBR250Rにいたっては乾燥重量がスパーダより軽い:当時の水準から言うとスパーダはVツインの割には重く「世界初の鋳造中空一体構造アルミキャスト・フレーム(CASTECフレーム)」という鳴り物入りのごん太フレームで剛性が高い)の車体に積まれているのだから、じゃじゃ馬にならないわけがない。長いクランクシャフトにクランクピンが4つもついて15000rpmで回りつつ細く丸いタイヤで旋回するとなれば、ハンドリングも独特になる。それでも「(ウルフやRZよりは)穏やか」ということで「初心者向けの乗りやすい車種」扱いをされていた(とくにネイキッドモデル)のだがら、時代が違ったとしか言いようがない。

これらの車種が発売された80年代後半には、90年代以降の感覚でいうネイキッドはまだメジャーでなく、88年にブロス、89年にゼファーとCB-1、93年になってようやくXJRが出てくる(82年から黙々とインパルスを作っていたスズキさんは、やはりやることが違う:中断などもあり同じ車種を作り続けていたわけではないが)。もちろん、フルカウルからカウルを剥いだだけという文字通りのネイキッドのほかに、空冷を中心としたレトロ系車種はあった(意図的なレトロデザインなのではなく、80年前後に発売されたXJやSRやCB250RSやRG250などが引き続き生産されていただけ:それ以前の流れとして75年の免許改正が影響している)。

話を250ccに戻す。90年代以降、ブームの完全鎮火や馬力規制によって4スト250ccレプリカというジャンル自体が自然消滅してゆく。大半の車種が40馬力規制適合モデルを出したきりマイナーチェンジもなしというパターンで、ネイキッドモデルも「ニーハン直4」というと「安い中古車」としてのチョイスになってゆく。そういう中で唐突に出てきたのがホーネット250で、新型として登場しただけに(車体バランスもキワモノだったが)インパクトが大きく、冒頭のイメージが広がる原因になったのだと思う。追記:カワサキさんが2020年にNinja ZX-25Rでやらかしてくれた。「ラムエア加圧時:34kW(46PS)/15,500rpm」ですって。スゴイ。


2018年のパラツイン

商品としての250ccは「日本向けの軽二輪」でなく「経済成長地域向けのアッパーミドルラインナップ」になった。生産台数も増え機種も充実したが、主役は現実路線のパラツイン。Vツインのロマンを最後まで追いかけていたホンダさんもVTRをカタログ落ちさせてしまった(そんな中、スズキからVストローム250が出た!と思ったらパラツインじゃねぇか、チクショウ)。これはまあしゃあないというか、メインとなる消費者が変わってメーカーもそれに追従した、というのは健全な動きだと思う。

翻って考えるに、やはり単車のエンジンとして250ccというのはどうにも苦しかった。四輪車で660ccが(日本の税制に合わせて)歪な市場を形成しているのと同様に、軽二輪もやはり苦し紛れな設計を余儀なくされてきた。もちろん、だからこそ「面白い」機種が次々に現れてきたのだし、非力だからこそブン回して乗る楽しみがあったのでもあるが、今となっては「じゃあそろそろ本流を見直そうか」というのが日本のバイク乗りの次のステップなのではないか。250ccシングルスポーツだけは面白い選択だと思うのだが、現状で不足している熟成と洗練がこの先進むのか、その前に消えていってしまうのか、まだわからない。追記:スズキインディアのジクサーが国内発売されてたらしい。もうねぇ、原付をちゃんとした免許にして150ccまで、普通二輪を650ccまで、大型をそれ以上、みたいに制度を整理した方がいいと思うんだけどなぁ。

じゃあ400ccか、と聞かれると、ここはもうメインストリームから外れて久しい。600ccや650ccのフレームにエンジンだけ400ccを乗せたモデルに優れたものがないとは言わないが、その手法で「かつて400ccが日本のバイクのボリュームゾーンだった頃」の輝きが戻ってくるとも思えない。極論すれば、4発フルカウルの4ストレプリカが絶滅した時点で、400ccの時代も終わっていたのだ(スーパーフォアやSRなどのタウンorシティ系モデルや、450ccのオフレプリカを除いて)・・・とかなんとか思っていたら、SS300レプリカのカテゴリとして、2017年に細々ではあるが復活した。なかでもNinja400の2018年モデルは、カワサキさんの本気度がうかがえるデザイン(250でうまいことやったから次も、という考えなのかな:400を「600の縮小版」ではなく「250の拡大版」と捉えた発想もいい)。ツインエンジンの流行でもっとも恩恵があるのは実はこの400ccなんじゃないかとも思う。

600ccは、実際魅力的なレンジではある(650~800ccくらいのツインは、燃費面でもメリットが大きいそうな:どうせツインならV型でもいいんじゃないかと思えるが、90度前後のV型は排気量が大きいとレイアウトの制限からロングストロークにしにくく、燃費を妥協して出力を取るなら直4でいいじゃないかという板挟みがある)。2018年現在のラインナップは、ホンダがCBR650F(とCB650F)(直4)、ヤマハがMT-07(直2)、スズキがSV650 ABS(V2)とGSX-S750 ABS(直4)の2本立て、カワサキがNinja 650(とZ650)(直2)となっている。250ccとは違った意味で、650ccのパラツインもまた合理的ではある(前者は「ブン回してもたかがニーハンでしょ」、後者は「どうせブン回せないでしょ」、という趣旨で)のだが・・・「600ccのエンジンを単車に乗せる」というコンセプトを鑑みると「それでいいの?」という思いはどうしても残る。250ccが実用優先のパラツインだらけになるのは止むを得ないし、400ccについては実益が大きく文句も言いにくいが、600~650ccにはもう一声欲しい。

実績を考えると、CBR600RRとオリジナルのSV650はやはり名車だったわけで、これらが持っていた「バイクに600ccのエンジン積むとこんな素敵ワールドが実現するんだよ」という夢のある主張(だってもう完全に実用品じゃなく嗜好品じゃない、このレベルになったら)が、もう一度見直されてくれたら嬉しいのだが、後継機種はどちらも「半歩後退」したように見える(その半歩が踏み止まるための半歩なのか、ズルズルと引き下がる半歩なのか、まだわからないけれど)。しかしまあ、スズキさんはSV650ABSで国内再挑戦に出たわけだし、カワサキさんは前述のNinja ZX-25Rと400で中小排気量に新風を吹き込んだし、ヤマハさんもR3(とセロー復活)で独自路線を模索しているのだから、そろそろホンダさんにも(CRFもダカールレプリカ出したし、スーパーフォアで400マルチの砦を守っているのは立派だとしても)なにか一発かまして欲しいところ(SV400が国内復活しない間にVTR400とか、あるいはいっそのことVFR600Rとか・・・さすがにムリか)。

2023年追記:中排気量をパラツインが席巻し、大排気量クラスにも進出している。ホンダはCL500とRebelシリーズやデュアルパーパスのNC750XとXL750 TRANSALPだけでなく、リッタークラスでNT1100とHAWK 11(この2機種だけエンジン共用)、さらには2016年に復活したCRF1100L Africa Twinにもパラツインを採用した。ヤマハはMT-07とYZF-R7とXSR700にTénéré700、リッタークラスでMT-10がパラツイン。スズキはVストロームがワケノワカラナイことになっており、Vストローム800DE(とVストローム250)だけがパラツインであとはVツイン。V型で押したいのかと思いきやパラツインのGSX-8Sも新発売した。カワサキはZ650シリーズとNinja650シリーズに加え、空冷のMEGURO K3とW800シリーズがパラツイン。台数とモデル数が増えるに従って性能的にも洗練が進んでいるようで、スズキがGSX-8SとVストローム800DEに搭載しているらしいスズキクロスバランサー(270度クランクに等距離かつ90度かつ捻れた位置にバランサーを2つ追加して、1次振動と1次偶力振動を抑制する:特許取得済みだそうな)なんかは、いかにもスズキっぽい変態的なデバイスで好感が持てる。国産のオンロードスポーツでビッグツインというと、やはりVTR1000(ファイアーストーム)やTL1000などV型の印象が強いが、振動の問題さえクリアできるならパラツインでもイケるということなのかもしれない(ぶっちゃけリッタークラスに「回せる」エンジンなんていらんだろうし)。


2019年はカワサキが元気

なんと言ってもNinja H2Rがスゴすぎる。RS500RとかNSR500Vみたいなノリではないし、ドゥカティやアプリリアがやってるSBレプリカ(パニガーレV4凄いけどね)とも違うし、レーサーベースですって言われてもスパーチャージャーつきの1000ccなんていったいどこのカテゴリで走るんだろう・・・と思ったらボンネビルスピードウェイに出るらしい。ロードレースは眼中にないですか、そうですか。でもせっかく走って曲がって止まれるバイクなんだから、レギュレーション変更のロビー運動ガンガンやって、7耐に昔のオープンクラスを復活させて出て欲しい(2008年にレギュレーションが変わって、ニーハンのツインまでのオープンクラスと、指定車両(ほとんどはニーハンだけどBMWはG310R)だけのNEO STANDARDクラスに再編され、小型車レースになった:8耐のエクスペリメンタルクラスはしばらく実施されてないっぽい)。

普通の市販車だとNinja ZX-6Rもスゴイ。ラムエアなしで93KW(126PS)の197kgといったら、昔のCBR600RR(逆輸入仕様PC37が118PSの194kg、PC40が119PSの199kg)とも十分張り合える。価格がちょっとだけ高いのはしゃあないというか、600~800ccレンジにこういうバイクが1台はないと、全体がしぼんで見えてしまう。カワサキの心意気に乾杯(「エンジンパフォーマンスを妥協することなく、ユーロ4排出ガス規制に適応しています」の売り文句が頼もしい)。そう、600ccってのは「スーパーな」スポーツバイクが生き残れる最後のレンジなんだよねぇ(と思うのだが、外車のミドルSSはDaytona 675とF3 675くらい、2019年からMoto2のエンジンサプライヤーになったトライアンフはなぜかネイキッドのStreet Triple 765にベースエンジンを投入している:日本車はホンダのCBR600RRとヤマハのR6とカワサキの6Rだけど、トライアンフは2019年以降、ホンダは2021年以降スーパースポーツ世界選手権に参戦しない)。

カワサキはWSBKでも絶好調(2015年~2020年まで、ドゥカティとのマッチレースを制して、ジョナサンレイのチャンピオンシップとマニファクチャラータイトルで6連覇:2014年はシルバンギュントーリのアプリリア、2021年はトプラクラズガットリオグルのヤマハが獲った)だし、18-19シーズンは世界耐久選手権(Endurance World Championship)でもカワサキフランスが勝った(19-20シーズンは暫定スケジュールの中スズキが獲った)し、市販車のデザインもアグレッシブだし、本当に元気がいい。追記:とか何とか言ってたら、次はNinja ZX-25R(日本でも売る気らしい)ですって。さらに追記:うわー、ホントに出た。水冷直4でまさかの旧自主規制超え33kW(45PS)@15,500rpm。スコンと頭打ちしそうなトルク曲線に見え、タコメーターは17Krpmからレッドゾーンで20Krpmまで切ってある。

話を戻そう。4発ミドルは他に、ホンダのCBR650R、スズキはワンサイズアップのGSX-S750 ABS(GSX-R750はもう作らないのかな?)。過渡期には「スーパーじゃないミドルスポーツ」に一定の意義があったと思うが、ミドルツインのラインナップが増え、ZX-6Rでスーパースポーツの復活が見えた今、少し立ち位置が微妙になってきたのかもしれない。ミドルツインは、カワサキのNinja 650(とZ650)、スズキのSV650(とVストローム650)、ヤマハのMT-07(と一応XSR70)、ホンダのNC7500と、価格を抑えたモデルが並ぶ。こういうカジュアルなモデルを新車70万円台(Ninjaだけわずかに超えるけど)で出してくる国内メーカーの努力は凄いと思う(海外メーカーだと、アプリリアのRS660とTUONO660、トライアンフのストリートトリプルとトライデントあたりだが、手軽さでは国内メーカーに軍配が上がりそう)。中でもやはり、フルカウル(実用上はハーフカウルでもいいんだけど)モデルで勝負してきたカワサキの戦略には熱さを感じる。

存在意義が希薄になってしまった400ccクラスは・・・デカ重バイクにするならエンジンが小さいし、ミドルツインより値段が高いんじゃ買いにくいし、いっそYZF-R3みたく小さくする方が理に適っているのかもしれない(BMWはG310Rという単気筒モデルを、意味合いは違うがKTMもRC 390というシングルSSを出している)。その中でもやっぱりカワサキさん、Ninja 400には説得力を感じる。パラツインとはいえ車両重量167kgはさすがすぎるし、タイヤサイズが110-150なのもわかっていらっしゃる。600ccサイズでエンジンが400ccじゃあ面白くもなんともないが、250ccサイズでエンジンが400ccというのはエキサイティングだと思う(ジムカーナに使って欲しいのか、最小回転半径2.5mとやたらハンドルが切れる)。なお、R3とNinja400(とCBR500RとRC390R)は、少なくとも名前上、スーパースポーツ300のレプリカに相当する(レギュレーションが複雑で、シングルで出ているのはKTMだけ、ホンダ・ヤマハ・カワサキの日本勢はツイン)。ニーハンは2018年より少し後退したのかな、という印象。スズキのジクサーみたいに、やっぱり小さめ(というか125ccの上位モデルみたいな)を狙う方が合理的な気もする。

それより、グラディウス400が生産終了して小排気量クラスにV型エンジン採用車がなくなってしまったのが寂しい。小排気量Vツインのメリットを考えると、細い車体や後ろめな重心が生むハンドリングももちろんそうだが、やはり振動の小ささが特徴になる。というのは、小排気量車で高速巡航するとどうしても高い回転数になるため、振動の小ささが長距離移動の楽さに直結するからである(ゼルビスなんかもその辺の発想だったんだろうね、売れなかったけど:スパーダで6速100km/hが8000rpmちょいだから、もう少しロングなのかな)。まあ昔はねぇ、「夏休み=単車で北海道」みたいな学生がいくらでもいたけど、イマドキそんな面倒で大変なことを好き好んでやる人ほとんどいないわけだし、しゃあないんだろうねぇ(回す人がいない、長距離走る人がいない、小排気量をブン回して長距離走る人はもっといないと、そういうことなんでしょう、きっと)。

追記1:2020年になってヤマハがTénéré700という「4stビッグオフロード」を発売した。テネレシリーズの国内販売は初代である1983年のXT600Zテネレ(なんでも、76年のXT500(79年の第1回パリダカで総合優勝、翌80年も二輪部門優勝)が源流らしく、セローも発売当初から一貫してXT225のモデル名を継承している:同じ83年にホンダがXLV750R RD01(XRV650 RD3以降「アフリカツイン」が正式名称になる)を発売している)以来だそうな。メーカー曰く「オンロード:オフロード=1:9」という思い切ったコンセプトで、軽さの追求だとかオンオフ可能なABSだとか高めのシート高だとか、本当に「夢のある」バイクを追求しているのが素晴らしい。余談ながら、セローの「Final edition」は生産終了になり、ハイテクメカになってしまったアフリカツイン(2003年に生産終了して、2016年にパラツインの別物になって再登場:モデル名もXRVからCRFに変わった)を除けば、国産の公道用オフ車はこのテネレと、ホンダのCRF250(「RALLY」は「ABSキャンセルスイッチ」を搭載しているがキャンセルできるのはリアだけみたい)、カワサキのKLX230(こちらはオンオフ両用の「デュアルパーパスABS」だそうな)が最後の砦になる模様。

追記2:本格的なオフ車にまでABSがついているのは、国内でもABSが義務化になったため(新型車は2018年10月1日、継続販売車は2021年10月1日から:軽二輪以上は少なくとも前輪にABSでキャンセルできてはダメ、原付二種はABSまたはコンビブレーキ)。いやーこれ、搭載を義務化するところまでは仕方ないにしても、キャンセルしちゃダメってのは一体どういう了見なんだ。ABSがついた単車の運転が(とくに砂っぽい田舎道なんかで)どれだけ恐ろしいか、制動距離が(不意に)伸びるかもしれないことが運転者にどれだけのプレッシャーを与えるか、規制を担当した人たちが真剣に検討してくれたのだと、筆者は到底信じることができない。

追記3:スズキさんが「ジクサー250」(とフルカウルの「SF」)を単気筒で出してきた。しかも油冷。CB250Rと比べると微妙に非力で好燃費、タンクは2L多い12L、いやーナルホド。Ninja 250SLはカタログ落ちしたようだが、250のシングルスポーツにはそれなりの説得力があるように感じる。頑張ってるなぁ、国内メーカー。追記4:ヤマハがTRACER9 GTという直3のクルーザーを出したようだ。ハイテクメカ山盛りで、ジャンル的にはVFR800Xなんかと近いんだろうか(そう思って見ると、800~900ccあたりに変則レイアウトってのはフィットしそうなイメージがある)。追記5:元気がない印象だったホンダだが、CBR600RR vs ZX-6R、CBR250RR vs ZX-25R、CRF1100L vs Ténéré700と並べてみると、どの対決でもそれなりの「回答」を出しており、実は健闘しているんじゃないかと思い直した。「令和2年排出ガス規制」でVFRとCB400(とベンリィ110とゴールドウィング)が生産終了になるそうだが、いっぽうで、2018年からヤマハのジョグとビーノがホンダのOEMになっているらしい。


2023年にちょっと真面目に中古車を探してみた感想

安いカテゴリでよく目にするのは、ZZ-R250(07年が最終型なのでさすがに古い)、Ninja250(初代のNinja250RはJBK-EX250Kで12年が最終型、2代目のNinja250はJBK-EX250Lで14年が最終型、現行のNinja250は 2BK-EX250Pで18年発売(23年2月にマイナーチェンジで8BK-EX250Yが出る)、シングルのNinja250SL(JBK-BX250A)はタマが乏しいよう:Ninja ZX-25Rは別物)、CBR250R(シングル化したJBK-MC41は14年が最終型で11~17年の販売:直4キャブのMC17やMC19とは別物で、現行のCBR250RRも直4)、TWとボルティ、VTRとかGSR250とか、Ninja400(10年発売のEBL-ER400Bが650ccベースのNinja400R、13年発売のEBL-EX400Eがマイナーチェンジ版のNinja400、18年にフルモデルチェンジして250ccベースの2BL-EX400G、22年にマイナーチェンジして8BL-EX400L、のはず)、150cc機種、といったところ。

ふむ、この中でとなるとRが取れたNinja250(JBK-EX250L)かシングルのCBR250R(JBK-MC41)になるのかなぁ。直接比べると、Ninjaの方が重くやや高出力で高回転傾向(そりゃそうだ)、長めのホイールベースと大きめのキャスター角と少なめのトレールを組み合わせたカワサキっぽい構成、CBRはその反対。燃費はCBRがよさそうだがタンクはNinjaがデカく、NinjaはセパレートシートでCBRはセミセパレート、実は全幅はCBRの方が太い(といっても5mm差だけど)。ただまあNinja同士で比べれば、年式の低い250R(アナログメーターで、ウインカーが埋め込みでなく、初期は1眼ライト)の方が価格は安く、エンジンとフレームをリニューアルしたとはいうがもっと大きいのはタイヤサイズかもしれない。Ninja250(JBK-EX250L)とCBR250R(JBK-MC41)はフロント110/70-17のリア140/70-17(全部17インチなので以下省略)、Ninja250R(JBK-EX250K)は110/70の130/70、さらにNinja250SL(JBK-BX250A)は100/80の130/70で、あのスパーダ(100/80の140/70)よりさらに細い(タイヤに関していうとジクサーSF250も変わっていて、110/70Rの150/60Rとラジアルでやや太い)。

でそのCBR250Rが走ってる感じはどうかなと動画を漁ってみたのだが・・・んー、なんだろこれ。たしかにシングルはマルチよりエンストしやすい。排気量が少ないとなおさらに。しかしそんなこと言ったらカブとかモンキーとかどうやって走るんだろうか。遅けりゃ遅いほどエンストしやすいわけだし、50ccだよアレ。たしかにニーハンはぶん回せるのが特徴ではある。しかしそれはクローズドな場所ならシロウトでも最大出力回転数(車種にもよるがノーマルスパーダの1速で55km/hくらい、2速だと80km/h弱)で全開を当てられるという意味であって、街乗りの低速域で半クラのままブンブカ回すという意味ではない(ただまあニーハンシングルをツインと比べると、6速を省いて離れたローギアを追加したようなミッションになっているので、1速で多少引っ張った方がいいことには同意できる)。そして250ccに限らず、市販ノーマルのオンロードバイクがスムーズに加速できるのは4速最大出力回転数(スパーダで115km)よりちょい上くらいまでが普通で、高速道路みたいな真っ直ぐな道でも、そこから「一気に6速」ではなく「5速である程度引っ張る」のが妥当な乗り方だろう(たとえリッターバイクでも、4速全開から一気に6速ではモタつくはず:速度域はぜんぜん違うけど)。

なお80km/hくらいから上の速度域では仕事(率)に対して速度が3乗で効くので、出力が半分になっても速度は2.5割くらいしか落ちない。もちろん最高速はエンジンの出力だけでは決まらないが、たとえばスパーダクラスで30KW≒40psの単車が(長い直線で思い切り頑張って)160km/hの最高速なら、セロークラスで15KW≒20psの単車は120km/hくらい、昔のナナハンより微妙に高出力な60KW≒80psなら200km/hちょい、120KW≒160psくらいだと300km/hは出ない(2006年発売でノーマル300km/hを謳った初代GSX1300R隼が175馬力)、といった感じになる(出力がカタログ通りに出てるのかとか、軸出力だけ論っても後輪出力は別じゃないかとか、メーター読みか実速かとか、路面は本当に水平で滑らかなのかとか、乗ってる人間がデカいか小さいかとか、他に考慮すべき条件はいろいろありえるけど目安として)。最高速度を考えるなら単車で40馬力というのは十分な数字で、大きく変わるのは中間の加速、それもレッドゾーン近くまで引っ張ってかつ全開を当てていたときの話である(抵抗増加を無視できる範囲の低速域では、車体に与えた運動エネルギー(速度の2乗に比例)をほぼ仕事の全量と考えてよいから、もし馬力が4倍だと加速度が2倍になり、同じ時間で2倍の速度に、あるいは半分の時間で同じ速さに到達できる:この領域だと質量もけっこう効くが、車体重量ではなくライダー込みの質量なのである程度薄まる)。まあリッターバイクとかで本当に1速全開を当てるとタイヤがスリップするかウイリーするので、加速力も馬力だけで伸ばせるものではなかったりする(電制システムなりライダーの腕なりでホイールスピンやウイリーを回避しなければならない)のだが。

余談:
いやーしかし、高くなったなぁ、中古の単車。新車価格はむしろ下がってるように思うんだけれど、安い価格帯のラインナップが減った気がする(スズキのジクサー250とかなら、新車乗り出しが45万前後で出てるんだけど、中古のギアつき250が軒並み30万円オーバーで、わざわざ中古で買うメリットがまったくないように見える)。レッドバロン(旧ヤマハオートセンター)なんてすっかり高級中古車店になってるし、原チャリや2種原チャといったローエンドがとくに高い(ネットで眺める限り、中型車は首都圏から順に落ち着き始めているように見える)。コロナ騒ぎ以来の新車の供給不足がまだ続いているというニュースは見たが、今年(2023年)に入って小排気量車は普通に店頭に並んでいる(4輪車も軽から順に供給が戻りつつあるみたい:特殊な部品を使わない車種が多いかららしい)し、新車不足だからといってローエンドの中古車がそうそう値上がりするものなのだろうか(オマケで触れるように法改正の影響もあった模様:むしろローエンドの値上がりはこっちの方がデカいんじゃないのと、思いはするものの確認のしようがない)。

維持費は昔とそんなに変わらない・・・と思って調べてみたら、なんか変な説明をしているサイトばっかり見つかった。なぜガソリン代を「維持」費に入れるんだ。なぜ消耗品費を一律で計算するんだ(バイクでオイルとフィルタ類以外の消耗品といったら、タイヤ、ブレーキパッド、チェーン、スプロケだが、リッターバイクと原付2種じゃ値段がぜんぜん違う:用具のページで触れたように、250ccクラスだと1キロ走るごとに5円ちょいで、走行距離が大きな要因になる)。250ccと125ccで大きく違うのは駐車場(値段も違うが数も圧倒的に違う)と任意保険、250ccとそれ以上で大きく違うのは車検の費用(車検つきの中古だと4年で車検1回>下取りのつもりで計算することもよくある)で、車種と使い方によって異なる消耗品費と燃料代が上に乗っかるイメージの方が現実に近いと思う(2023年現在、税金と自賠責は125ccで6000円くらい、リッタークラスでも12000円ちょいなので、ここでは大差は出ない)。車体以外の消耗品(ヘルメットとか車体カバーとか)も、もしガソリンを維持費扱いするなら計算に入れなきゃおかしいと思う。それから、ある程度距離を走る人だと車体も消耗品というか、どこかで大きく費用をかけないとエンジンが持たなくなる(オーバーホールなしで10万キロ走れば大したもの:そんだけ走ったならフロントフォークとブレーキもオーバーホールしておくべき)。


オマケ1(軽飛行機のエンジン)

1940年代後半にセスナが作っていた120という軽飛行機がある。WikipediaJP(2012年12月現在の記述)からおもな仕様を拾うと以下の通り。
空虚重量: 349kg
最大離陸重量: 658 kg
エンジン: 1× Continental C-86-12
出力 85 hp (63 kW)
最大速度: 203 km/h
巡航速度: 174 km/h
失速速度: 72 km/h
タイヤとプロペラという構造の違いはあれど、85psの出力があれば600kg超の機体で空を飛べるらしい(離陸速度は100km/h前後だそうな)。1977年型のセスナ150Mでも出力は100psで、空虚重量504kgの最大離陸重量730 kgである。

なお、小型ヘリコプターの代表機種であるロビンソンR22は、空虚重量417kg、最大重量622kg、出力124ps(93kW)。こちらは、あまり軽いとオートローテーションがうまくいかない都合もあって、極端な小型機は稀。地上を走るトラックのエンジンだと、いわゆる中型トラック(車両総重量だと8トン車や10トン車)で210~240ps(154~177KW)くらい、25トンの大型トラックで400ps(294KW)前後の模様。


オマケ2(4輪車)

小型車の主流はすっかり直列3気筒+CVTになった。デザイン上まず問題になるのはレイアウトで、小型化には横置きFFが有利となれば(660ccでもシングルでは苦しいだろうから)インラインしか選択肢はなく、燃費や出力やトルク特性や重量やコストなどのバランスを取れば直3という選択肢は必然だろう(ターボで出力を稼ぐフィアットのツインエアなんかは面白い試みだし、いわゆるスポーツカーなら直4もアリなのだろうが、vs直3で考えたときのトレードオフが難しいものになりがち:2気筒が燃費面で有望なのは間違いなく、ダイハツのパラツイン試作モデルや、スズキのパラツインディーゼルE型などの試みもある)。走行性能を考えると3速ATは苦しく、重量やコストの面から多段ATも現実的でないとなると4速ATvsCVTになり、実用燃費や利便性の面からCVTが採用されるのも妥当なところ(巡航燃費だけ考えれば4速ATにも優位性はあり、初代パッソのFF車なんかは、平らな道を燃費性能に優れたタイヤでアクセサリに電気を使わず少なめの燃料を積み絶妙のスロットルで走らせると、下道実走でも25km/Lを超える)。

直3の欠点である低回転時の振動(パラツインほどではないけど)は、アイドリングストップなどを使い力技でなかったことにしてしまうのが主流のよう(アクティブマウントにして偶力を打ち消す振動を積極的にぶつけてやるアイディアもあるらしい)。回生ブレーキが使えるというハイブリッドのキモだけ抜き出した簡易型のハイブリッドや、走行アシストではなく電装品への電力供給にだけ回生エネルギーを使うさらに簡易なタイプも増えており、合理的な選択だと思う。以前はABSやビスカス4WDやESCなどの品質がお粗末だった軽自動車も、2010年くらいからはしっかりした基本性能を備えつつある。それでも筆者としては、軽自動車の660ccという制限は性能的に足かせで、燃費の面からも1000ccくらいのクラスを優遇するのが現実的なのではないかと思えてならない(いっそのこと、1500cc未満は全部軽自動車扱いにしちゃえばいいのに)。しかしまあ、単車の250ccカテゴリと同様に、普通にやると「走らない」サイズであるからこそ、そこをなんとかしようと各メーカーが技術を競っているのが面白くもあるのだが(個人的には、ダイハツのミラとスズキの軽トラのどこまでも伸びるエンジンが印象的:他のメーカーにもOEMで出してるはずだけど、なぜかエンジンが元気だよね、スズキとダイハツ)。

ハイアマチュアがサーキットでタイムを出すには2000cc前後クラスがホットスポットらしく、鈴鹿サーキットGコースの2017年公式タイムアタックのリザルトを眺めると、38秒を切った12台のうち2300cc以上は1台だけ(13位以下はダンゴ状態、トップは35秒台)、1~4位はターボ車だが上位12台で見るとノンターボも4台顔を出している。1600ccクラス(ロータリーエンジン除く)のトップは38秒台に2台。1300ccでもターボ車で40秒を切っている人がいるが、2位以下が大きく離れているのでドライバーの技量が突出していたのかもしれない。小型車では、レースベース車のストーリアX4(713cc)でも、40秒の壁は破れていない。660ccはトップ勢が42秒台。

2018年現在、1500cc前後は微妙なレンジで、直3、マルチ、コンパクトディーゼルなどが入り乱れている。本当に趣味性のあるレンジって実はこの辺なんじゃないの、という気はするものの、4輪車に趣味性を求める人の数が減っていることもまた事実で、商売的には難しいのだろうな、と想像できる。筆者自身、4輪車に趣味性を求めるつもりはまったくないし、そういう趣味のある人が身の周りにほとんどいない。しかしそれでも、4輪車にエンジンを乗せて走らせることにロマンを求めるなら、やっぱりここがスイートスポットなんじゃないかと思えてならない。1300cc周辺に生き残っているSUVやオープンカーなんかのミニマムクラスが、もう少し主張できる環境になればよいのだろうが。個人的には、実用品と趣味のオモチャに同じ規制を被せる発想がそもそも乱暴なんじゃないかと思える。乗用車として考えると、1800ccくらいのディーゼルにはもう少しポテンシャルがあるんじゃないかな、という気もする。

筆者は職業ドライバーではないし大きな車を所有したこともないが、これまで仕事で大きな車(免許区分では普通~中型)を運転することはそれなりにあった。その限定的な印象からすると、2トン車や4トン車はもちろん、バンなんかもディーゼルの方が落ち着く(レンタルで借りたATのハイエースバンなんかが非常に好印象:ちなみにディーゼルはドイツのディーゼルさんが発明した圧縮着火機関のことで、燃料は必ずしも軽油とは限らず、船舶用にはC重油を使うものも普通にあるし、水素ディーゼルも一部で研究されているそうな)。乗用車ならガソリンハイブリッドもアリなのだろうが・・・ディーゼルで多段AT(ステップAT(トルコン遊星ギアAT)なら6速までは普通に可能で、重く大きくなってもいいなら10速とかにもできる)にした方が「高級車」っぽいかな、と(自分で所有したいという気持ちはまったくないが)少し思う。どうせハイブリッドにするなら、シリーズハイブリッドにしてしまうのが潔いのではないか。最近はロングのトラックも取り回しがよくなっており、以前仕事で使ったいすゞの2トン車なんかは、ロングボディとは思えないほど運転しやすかった。トラックにオートマは・・・ぜひ欲しいとは思わないが、以前ホームセンターで荷運び用に借りた軽トラ(AT限定免許の人にも貸し出せるようオートマにしてあるのだと思う)には「なるほど」と思った。2023年追記:いすゞが「AMT(自動変速式マニュアルトランスミッション)として9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の『ISIM(Isuzu Smooth Intelligent TransMission)』を 新開発」したそうな。トルコン遊星ギアでなくAMT(クラッチペダルのないセミオートマ:トルコンを使っていないというだけで、ギアチェンジが自動化されているものもある)なのがトラックらしいところ。

2023年に「ほぼ新車」のヤリスを2か月ほど常用する機会があったのだが・・・すごいねTHS2(トヨタ式のスプリット(シリーズパラレル併用)ハイブリッドなんだそうな)。高速道路でずーっと定速巡航したらどうかわからないが、郊外の下道くらいの走り方ならガソリン車と遜色ないし、当然ながら街中に入ると断然好燃費(気密性というか断熱性というか、エアコンの効きに無駄がないのも、燃料の節約に一役買っているように思える)。モーターとエンジンの繋がり方もまったく違和感がない。回生ブレーキとディスクブレーキの繋がりは、気になる場面がないではないが十分許容範囲。装置が多い分なのかちょっとボンネットが長く、ピラー(柱部分)の配置を含め視界はあまりよくないと感じるものの、短所というほどは気にはならない。カーナビ(純正なんだかレンタル会社のオプションなんだか知らない)には辟易したが、これは筆者の好みが特殊なのでしゃあない(筆者にとって「よいカーナビ」とは、電源を完全にOFFできるもの(これが最高のナビ、レンタル品でさえなければ電源の線をニッパーで切ってやることでどんな機種でも最高のナビにできる)、音声と画像を完全にOFFできるもの、音声だけでも完全にOFFできるものの順で、世間とは評価基準が異なるだろうと思う:画像は、分割表示して、左にノースアップ(北が上)の小縮尺、右にヘディングアップ(進行方向が上)の大縮尺と並べられるのであれば、ONでも構わないかなと思う)。

ただ運転サポート機能があまりに酷い。ちょっと狭い道を走ると、連ジの波平ばりに「右です」「左です」「味方が攻撃を受けています」と騒ぎ立てられるし、たまたま寄った先で駐車場の草が伸びてると「ブレーキ!」とか喚かれるし、渋滞で止まったときに脇道から出てくる車がいたから前にどうぞと待っていると「前車発進」などと急かされる。さらに酷いのがハンドル介入。2車線の左側を走行中すごい勢いで後ろから大型が迫ってきて、吸い込まれても嫌だから少し左に寄っておくかとハンドルを切ると「ピー」という音とともにハンドルを右に切られる(殺す気か?)。2車線の右側を走行中、すごい勢いで真ん中を抜けてくる2輪車が迫ってきて、当たっても嫌だから少し右に寄っておくかとハンドルを切ると「ピー」という音とともにハンドルを左に切られる(殺す気か!)。真ん中に導流帯(ゼブラゾーン)がある2車線の左側、前の方に右折しそうな車がいるので少し左に(以下略)。そしてこの機能は(少くとも筆者が探した限り)OFFにできないうえ、雨の薄暮れなど本当にガイドして欲しいときにはなぜかビーともプーともいわない。車両の個体差(あるいは何かが故障していただけ)かもしれないし、筆者がたまたま特殊な環境にいた可能性も否定はしないし、世の中にはこの機能を便利に安全に活用できている人もいるのかもしれないが、筆者自身はこういう車には極力乗りたくない(まあ今は技術革新のペースが早いから、数年したらめっちゃ賢い運転サポートに生まれ変わってるのかもしれないけど)。


オマケ3(法改正と中古車のラインナップ)
重要な情報
以下はあくまで筆者の素人判断です。具体的な判断に際しては専門家の助言を仰いでください。

上で中古バイクのローエンド価格が上がっていることを話題にしたが、どうやら、令和2年4月1日の民法改正で消費者保護が手厚くなったことも影響しているらしい。ポイントは「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」になったこと。法的にどういう意味なのか、正確な情報は専門家の解説を当たってもらうとして、一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会の説明を抜粋するとこのようになっている。

(前略)前使用者の通常の使用により生じる損耗・不具合とはいえない欠陥・不具合については、契約内容とは異なる商品を引き渡したと判断され、債務不履行(契約不適合責任。民法改正前では瑕疵担保責任。)となるのが原則です(例外は後記のとおり、当該欠陥・不具合を消費者に説明していた場合など)。(中略)販売店は不具合があることを知らなかったとしても、当然に免責されません。このような不具合は保証契約の有無とは切り離して考える必要があり、現状販売、保証なし販売であっても対応する必要があります。(中略)整備をせずに販売することは、このようなリスクを販売店が負うということを理解しておく必要があります。
(https://www.jucda.or.jp/soudan/kisochishiki/05.html:略と強調は筆者による)
まだ新しい(この項の執筆は2023年だから、施行から3年しか経っていない)法律なので、具体的にどの範囲が債務不履行に認定されるのか判例の積み重ねが十分ではないのだろうが、基本的には「単に使っていただけでそうなるとは普通考えられない」欠陥について売り手が担保しなければならないようになった、と理解してよさそう(これねぇ、中古でバイク(クルマでもいいけど)を買う人みんなに知って欲しい情報なんだけど、2023年にざっと見回してみた限り「中古バイクを買うときのポイントを教えます!」みたいなサイトでしっかり言及してるトコはすっごく少ない、ような気がしてならない:後述のハンドルストッパーのチェックも然り)。

もちろん、不具合があることを事前に明示すれば販売店の責任ではなくなるのだが、これまでの商習慣(販売店は不具合について言いたがらないし、消費者も不具合を納得して購入するという行為に慣れていない)が法改正でスパっと一気に改まるわけではないので、勢い、少々高価でも瑕疵のない車両を扱いたがる販売店が増え、買う側もそういう商品を歓迎する雰囲気が高まって、結果的にローエンドの価格帯が上がったのではないかと推測できる(裏付けはまったくないけど)。追記:どうやら、ものすごくゴチャゴチャして見づらい(というのは主観評価に過ぎないが)「状態説明書」だの「コンディションシート」だの「査定書」だのを用意して、考えられる限りの不具合が「ある」と記載してしまう売り方が、一部の販売店で常套化しているようだ。(事実を確認していなくても)状態が悪いと宣言することで品質保証責任を回避すること自体は、責められたことではない(いつそのような不具合が起きてもおかしくない状態だ、という判断だと解釈できなくもない)のかもしれないが、それをやるなら購入を検討する人誰にでもはっきり伝わる形で情報を伝える責任が、店舗にはあるのではないかと思う(不動産の重要事項説明書ほど厳密にしなくても、客の側で「説明を受けた」という文書を作らないと説明したことにならないようにすべきだと思う)。

なおこの法律の施行前から、いわゆる「修復歴」(二輪自動車公正競争規約集第12条第1項第9号に定める「メインフレームの修正及び交換歴」ないし「フレームの修復歴」)について「販売業者は、一般消費者に販売する目的で店頭に展示する中古車には、規則で定めるところにより、見やすい場所に、次に掲げる事項を邦文で明りょうに表示しなければならない」という定めがある。この「メインフレームの修正及び交換歴」は「中古車に関する施行規則」で「規約第12条第1項第9号の『メインフレーム』には、ハンドルストッパー、シートレール等を含むものとする。」と定義されており、もしハンドルストッパーを修復したら「修復歴あり」と明示しないと法律違反になる。なので、フロントから突っ込む形の衝突でダメージを受けやすいハンドルストッパーのチェックは、以前から中古車選びの最重要ポイントのひとつだった(バイクが追突される事故もないではないが、その場合、車体が軽いため飛ばされて前にもぶつかることが多いはずだし、シートレールも歪むはず)。また2023年現在4輪車も含めて、前使用者が乗車中に死亡していたような場合でも、いわゆる心理的瑕疵に関する告知義務はない(まぁ賃貸住宅ですらリセットルールあるくらいだから、しゃあないのだろう)。

話を戻そう。短期的に中古車の底辺価格が上がったとしても、より適正な商習慣が生まれるのであれば、販売者にとっても消費者にとってもメリットが上回るのではないかと思う。ただそのためには「みんなが」法律を守り法律に守られる環境が整わなくてはならないし、「法律なんて破った者勝ち」という態度を改めない人たちには、「法律を破った方が負け」を強制するか、あるいは一定以上の効率での排除がなされなければならない(ゲーム理論でいう、協調ゲーム、調整ゲーム、ないし進化ゲームの理論を当て嵌めると面白い)。ここがひとつ、道交法という「破った者勝ち」になりがちな法規と日常的に接するライダー・ドライバーの弱いところで、そういうところから少しづつ、コンプライアンスが育つ土壌を作っていかなければならないのだと思う(あらゆる法規を常に完璧に守れと要請しているのではなく、繰り返しになるが「法を守ることで法に守られる」意識を持ちたい、という願いを表明したに過ぎない:改めて「正直に言う」必要すらないと思うが、筆者だって交通違反はしたことがあり、切符を切られたことも何度かあるし、バレていないだけの違反はその数倍どころではない)。



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