TiMidity++とサウンドフォントについて


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<以下は更新・メンテナンスを行っていない記事であり、現在の有用性は不明です>

サウンドフォントの技術的仕様が、creativelabsのサイトで公開されている。


TiMidity++

TiMidity++(Win/Mac/Unix対応:FreeBSDだとaudio/timidity++にportsがある)というMIDIプレイヤー(本来はMIDIファイルを音声ファイルとして録音するソフト)を使うと、メジャーなソフトウェア音源フォーマットであるサウンドフォントを利用できる。バージョンがいろいろあり、上記のリンクは通称saitoさん版と呼ばれるもの(2009年9月現在の安定バイナリとしては、saitoさん版の2.13.0-w32(v2004/3/29)を入れると話が早い:以下これを「本家バージョン」と呼ぶ)。午後のこ~だのDLLをexeファイルと同じフォルダに置けば(今時のコンピュータならwaveで書き出してlameなどでエンコードした方が便利だろうが)MP3の直接出力もできる。

中継機能によりソフトウェアシンセとして機能させることも可能(もとはTWシンセサイザープロジェクトページ)という別のソフトだったのが、本家に統合されたらしい:twsyng.exeというGUIフロントエンドもついている)。ただしTWシンセサイザーの動作はかなり重いので、モニタ用途ならローコストな音楽制作で紹介しているsfzの方がオススメである(設定ファイルをイジらなくても動くので、新規に入手したサウンドフォントのテスト用にもよい)。

現在、TiMidity++の開発はsourceforgeに移っており、ドキュメントもsourceforge内のwikiで公開されている。2006年6月15日現在、TiMidity++本体のmantimidity.cfgのmanはどちらもアクセスできない状況(半年くらい前にはアクセスできた)なので、wikiの(ja)timidity.cfgtimidity.cfg.5.ja、本家サイトのTiMidity++ 設定ファイル詳解などを参照。通称出雲さん版(旧本家:Cygwin版とも呼ばれていたが、現在Cygwinは使っていない模様)やVisual C++版もあれば羽根のあるところというサイトで配布されているカスタムバージョンもある。本家バージョン2.13.0では、まれに読み込めないサウンドフォントがあるほかVienaでプリセットをイジった場合に上手く機能しない場合がある(それほど重大な問題ではないし、前述のsfzならほとんどのサウンドフォントが読めるのでそちらを使ってもよい)。パッチやmanを配布しているサイトもある(その1その2)。

再生に使うと動作の重さがやや気になる(同時発音数が50も100もあるファイルだと、かなりのマシンパワーが必要)が、録音用にはまったく支障がないし、音色のサンプリングや加工が手軽にできるのは非常に便利(オモチャとしても面白い)。また、サウンドフォントも多数公開されており、それを使うだけでも利用価値がある(詳しくはTiMidity++(Win版)インストール解説を参照)。extensionのaltassign(2つの音色を排他的に鳴らす:たとえば、ハイハットペダルを鳴らしたらハイハットオープンの音を止めるとか、トライアングルミュートを鳴らしたらトライアングルオープンを止めるなど)がうまく機能しない場合がある(「#extension altassign 80 81」と「#extension altassign 78 79」を同時に指定し、このサンプルファイルを再生すると、クイーカが鳴るとトライアングルが、トライアングルが鳴るとクイーカが止まって、結果的にクイーカとトライアングルを同時に鳴らせない:バグなのか仕様なのか不明だが、チャンネルを分けるか2ファイルに分けて録音してミックスすればなんとかなる)など、多少都合の悪い点がないではないが、ノンリニア録音は非常に便利(音ずれが発生する余地がない)。

参考までに、設定ファイルのサンプルも用意した。詳しくはパッケージ内のreadme.txtに書いてあるが、timidity.cfgがTiMidity++に直接読ませる設定ファイルで、そこからsample_sound.cfgなどのファイルをインポートする(sample_sound.cfgの方はsample_sound.datなど.cfg以外の拡張子をつけるべきだとも思えるが、.cfgを使うのがTiMidity++の流儀のようなので従った)。サウンドフォントのデフォルト設定をそのまま使う設定になっている(「鳴らしたい音」が先にないとカスタマイズが意味を持たないため、まったく手を入れていない)。

各ファイルの先頭に必ず設定するように書いてある項目(ディレクトリとファイル名の指定)以外は何も設定しなくてもとりあえず音は出るはず。Shift-JIS(CR+LF)で書いてあるので、Windows以外の人は適宜文字コードの変換も必要。あとはTiMidity++本体となにか適当なサウンドフォント(ピアノだけ、とかドラムだけ、というものも多いが、Fluidならすべてそろうはず:ダウンロード用のリンクは次の項目に掲載)があればとりあえず音は出る(きっと)。サウンドフォントだけ使うならGUSパッチは必要ない。

まれにしか起こらない問題だが、Windows版のTiMidity++でファイル出力関係の動作が怪しい場合、いったんTiMidity++を終了してから一息置いて再起動し、(メインメニューの「出力」からではなく)「設定>詳細設定>出力」と選んで出力フォーマットを選び、出力先を「以下のファイル」にして無難そうなディレクトリ(D:\とか)を設定すると、調子がよくなることがある(ような気がする)。設定変更は必ず停止ボタンを押してから行うようにして、cfg強制再読み込みを行った後は一息置いた方がよい(ボリュームを変更している場合は上げて下げるなり下げて上げるなりしていったんツマミを動かす)。

ヘッダなしで音声データのみの「Raw waveform data」(PCM WAVE:PCMはPulse Code Modulation の略で、音の波形を一定時間ごとに区切った整数値で記録する)と、Windows用のヘッダつきwaveファイルである「RIFF WAVE file」が選べるようになっているので注意(ヘッダのない生のwaveファイルは、たいていのアプリケーションで「不正なフォーマット」などとして蹴られるはず)。RIFFというのはローレベルなファイルフォーマットのひとつ(うめっきぃさんという方による詳しい解説があるので、興味がある人はそちらを参照:Mac用のAIFFというフォーマットもあるが、中身がPCM WAVE でさえあれば気にせず再生してくれるソフトが多い)。

Windows上では、KobarinさんのKbMedia Playerkbtimというプラグインを使って、MIDI YOKE などによる中継なしで、直接音源を利用できる(MIDI関係に限らず、KbMedia Player は非常にオススメなプレイヤー)。MIDIファイルの直接録音はできないものの、再生だけならTiMidity++よりも軽くて安定している。

PCUnix上では、プレイヤー/レコーダーとしてTiMidity++が使える(ディレクトリパスの指定方法など、ちょっと手を入れればWindows版用に書いた.cfgファイルを流用できる:GUIのフロントエンドも複数存在するが、筆者は使った経験なし)のはもちろん、リアルタイムシンセサイザーとしてFluidSynth(SoundFont 2 対応)が有名で、QSynthSwami(サウンドフォントエディタが本来の機能)などのフロントエンドがある。サウンドフォントではなくLADSPA(これも後述)を使うものとしてはBEASTが有名。QSynth以外についてはFreeBSDにportsがある。


詳細な設定

設定にはいくつか方法があり、TimidityのGUIから設定>詳細設定と選ぶか、起動時のコマンドラインオプションで指定するか、コンフィグファイルに「#extension opt」という行を書いて設定することになる。GUIからの設定が一番ラクだと思う。ただし、コマンドラインかコンフィグファイルからしかできない設定もある。

補間法の選択は「EFresamp」というオプションで、コマンドラインなら「-EFresamp=L」とか、コンフィグファイルなら「#extension opt -EFresamp=c」などといった具合に選ぶ(他のオプションも指定方法は同じ)。選択可能な補間法は軽い順から、dが補間なし、lが線形補間、cが3次スプライン補間、Lがラグランジュ補間、gがガウス補間、nがニュートン補間。デフォルトがgらしいので特に変更の必要はないと思うが、重かったらLかcを使ってもよいかもしれない。

Vオプションはボリュームカーブで、SMFナイフのボリューム調整機能(ほどは高機能でないが)を音源側で実装したような感じ。「#extension opt -V n」と指定すると、ベロシティがx倍になった場合にピーク音圧がx^n倍になる(普通に設定するならnは1以上2以下:デフォルトは1.661でベロシティ2倍=10db、GS音源などは2に相当、1だとベロシティ2倍=6db、0.5だとベロシティ2倍=3db)。qオプションはキュータイムの変更だがソフトウェアシンセとして使うのでなければデフォルトのままがよいと思う。mはディケイタイムの指定(msec)、-rtsyn-latency(「--rtsyn-latency=5.0」のような形で指定)はビジー時のレイテンシ増加を指定。

音色がおかしい場合に、音色指定に「modpitch=0」「fc=8000」「q=25」などを加えるとよいという解説もある(羽根のあるところ記述を参照:「0 %font MySoundFont.sf2 0 0 pan=0 amp=100 modpitch=0 fc=8000 q=25」のような書き方になる)が、筆者は必要になったことがない。


サウンドフォント

以下、ベースについて「低音域」と言った場合C1~C2あたり、「中音域」と言った場合C2~C3あたりの音域を指す。他の楽器についてはG3~G4周辺を中音域とする。ファイルを配布しているサイトにリンクしてあるが、必ずしも1次配布元ではない。Fluidについては筆者のサーバでも再配布している。「FluidR3122501.zip」が元のアーカイブで「FluidR3.zip」は筆者が展開やコンバートを行ったもの(中に入っているサウンドフォントは同じモノ:sfArkをインストールしたくない人は「FluidR3.zip」の方を選べばよい)。

fluid:なによりもまず、バランスのよさがすば抜けている。Frank Wen という人がメインの作者で、ライセンスはパブリックドメイン。Readmeに「録音したら俺にも聴かせてくれよ!」と書いてあるが、本家サイトは閉鎖されている。Internet Archiveでログを辿ったところ、http://www.geocities.com/fluidfont/は遅くとも2000/10/7に閉鎖されており、2000/10/7、2001/12/14、2002/2/13に移転先として表示されていたhttp://www.powermage.com/fluid/は2002/7/28の更新を最後に2002/8/9以降ログが辿れず、2003/12/19にhttp://www.geocities.com/fluidfont/で移転先として表示されていたhttp://www.fluidfonts.com/は2005/2/14まで機能していた形跡がなく(この前後に筆者も何度か接続を試みたが、決まって「We are Experiencing Technical Difficulties with our servers at the moment」で始まるエラー表示が出た:この表示が出たのは早くとも2004/8/28以降のようで、直前のログである2003/4/6には「Welcome to Tech2Web」というタイトルのエラーページだった)、直後のログである2006/2/28にはドメインが売りに出されたようだ(2009/2/5現在も「This domain name is for sale!」という表示がある)。

とくに1番のグランドピアノが素晴らしく、極端な「厚み」さえ求めなければ非常に高いパフォーマンスを発揮する(単体で数百MBあるブランドピアノのサウンドフォントでも、ピッチが狂っていたり録音状態が悪かったりすれば、結局使い物にならない)。華やかな雰囲気で、重めの音が苦手な代わりに低音域での濁りが少ない。ドラムセットもバスドラムが弱め、金物(とくにハイハットのクローズ)が強めの音量なので、ampをいじってもよい。ハイハットをオープンで叩いた音(46番)がほとんどクローズに近いハーフオープンになっているのと、低音のタムがちょっと荒い音なので、そこだけ他の音源に差し替えるのもひとつの手。B1(キックの1つ下)の音色はややソフトな音。ベースは33番が高音質。34~36番もなかなかだが、音域によって表情が急激に変わる(3つの中では36番がやや高音質か:妙にアタックが遅いものがあるので、打ち込みの時点である程度補正しておくとよい)。37~38番は中音域なら普通に使えるはず。37番はアタックが強く、39番は非常にノイジー。40番は音域による表情変化が激しいものの、低音域で使えるベースとして重宝。44番は中音域で使えばごく普通な印象。29番の音色はかなりミュートしてある(パームミュート:アタック後もずっとミュート)。エレキギター系はもうひとつだが、鍵盤系(冒頭で紹介したグランドピアノはもちろん、2~21番も安定した音色)とドラムセットが使いやすく、ベースも比較的よいものがそろっており、ブラス・コーラス・ストリングスなども安定している。やや厚みに欠ける傾向はあるが、ピアノ(1番)+ベース(33番)+ドラムスを基本にブラスやストリングスを重ねる使い方だと強みが出る。ティンパニーを始めとしてクラシック系の音にはあまり強くない(ブラスやストリングスはポップス系の音色)。高音域の音がうるさければ、Waveにしてからイコライズすればよい。

atomic:派手な音(生ギター系はなぜかおとなしい)。Ross Scott という方が作者だが、本家サイトは閉鎖されている。低音域では濁りが気になるものもあるが、中高音域では伸びがある感じ。ドラムセットも派手(とくにスネア)だが、タムの音はなかなかよい。B1の音色は引き締まった音。46番が控えめなハーフオープンなので、好みによってこちらを使えばよいだろう。ベースは、36番を中音域で使うとなかなかよく鳴る。37番もなかなかよい(低音域でピッチが合わなくなるが音色的にあまり使う音域ではない)し、35番も味がある。好みによっては38番と44番もfluidより使いやすいかもしれない。29番の音色はあまりミュートされていない(サステインをちょっと抑えただけという感じ)。エレキギター系の音が充実しているほか、5~10番・17~21番の音色も厚みがあってよい。ドラムスの音が荒い、処理が重い、鍵盤の伴奏が低域で濁るなど欠点も多いが、厚みのある力強い音色は魅力。1~3番や6番も音色自体はかなりよい(アコピは入っておらず全部エレピだと思って使うとよいだろう)。

Eawpatch:サウンドフォントではなくパッチファイル。角のないやさしい音色。John Capps さんという方がメインの作者で、パッチの一部については商用利用ができない。ボリュームが小さめなので、他の音源と混ぜる場合はampを大きくした方がよいかもしれない。ドラムセットにやや音が荒いものがあるので適宜補ってやるとよい。1番のピアノ(中音域で厚めの音を出すとややスッキリしないのが欠点だが、fluidに匹敵するバランスのよさがある)、25番のアコースティックギター、ドラムスのタムあたりがよい音を出している(その他アコースティックの弦楽器や鍵盤打楽器も全般に高音質)。

SGM-180:軽くてちょっとこもった感じの音。全般におとなしいイメージ。Shanさんという方が作者。ドラムセットはタムや金物の音がよい(とくにタム)。B1の音色はややソフトな音で、ハイハットオープンはフルオープンに近い音。ベースは34番の低音域が比較的使いやすく、39番のノイズの乗り具合もベタでいい感じ。44番も比較的使いやすい。29番の音色は軽くミュートしてある(アタック後に一瞬ミュートしてあとはサステインに任せる形)。キャラ的にEawpatchとかぶる部分があるが、通常の音色はEawpatch中心、ドラムセットはSGM中心にするとバランスがとりやすいかもしれない。全般に地味だが音色に統一感があり、Eawpatchと組み合わせてクラシック系の曲に使うといい感じ。

聴き込んでいないのでコメントは控えるが、上記以外にも、出雲さんのGUSパッチコレクション(33MBパッチとか、出雲パッチなどと呼ばれている)やfreepats.opensrc.orgのfreepatsなどがある。

とくにオススメな音色は、ピアノにfluidの1番、中高音域担当としてatomicの7~10番と17~21番(音色がキツければfluidに戻すかSGM-180を使う)、ベースにfluidの33番と35~36番と39番・SGM-180の34番・atmicの37~38番、25~30番のギターはatmic(29番は好みで適当に)、ブラス・コーラス・ストリングスはfluid、といったあたり。上記以外はfluidを基本にするものの、2~4番が少々悩みどころだが、安定するならやはりfluidか。44番をSGM-180にしてもよい。比較的キツい音になるので、地味めな音が欲しい場合はSGM-180(ギターならfluidでもいいかも)を増やす。通常の音色は番号が1つずれていることに注意:たとえば1番のグランドピアノは.cfgファイルでは0番)。ドラムスはfluidを基本にタム(低音側から41・43・45・47・48・50番)と金物を適宜SGM-180に入れ替える。B1の音色(35番)とハイハットオープン(46番)は好みでどれを入れてもよいだろう(可能なら、クローズの音色とピッチを合わせておく)。ドラムセットについては番号がずれていないのでこれも注意。全般に、SGM-180はおとなしいので、適宜ampを調整しておくとよい。EawpatchとSGMのコンビもアコースティックな曲に強い。

上記以外でとくにオススメなサウンドフォントについては別ファイルにまとめたので、そちらを参照のこと。


その他の音源

一応参考までにMicrosoft GS Wavetable SW Synth についても書いておくと、低音が太い割にスッキリしているのが特徴。とくにC1~C2あたりは上記のサウンドフォントに比べて歯切れがよい。ハイハットのオープンはフットスプラッシュっぽい音になっている。Rolandのロゴ入りだけあってピッチに狂いのある音色はほとんどなく、43番のコントラバスをC6あたりの高音域で使うといった芸当も可能。無難な調整を心がけたのか低音部で音を重ねてもあまり濁らないが、エレキギターの音にやや難があり、サンプルの切り替え時に音色が大きく変わってしまうものがある。ハイハットペダル(44番)の鳴りがおかしいのもきっとバグだろう。上記のサウンドフォントでいうとSGM-180が一番近いが、こもった感じはなく押しも強い。アタックが早く(やけに)歯切れのよい音色が多いのも特徴。良くも悪くも生楽器っぽくない音になっている。全般に、安物のサウンドカードに付属している音源よりはかなり高音質。

おそらく実体は%SYSTEM%\driversにあるswmidi.sys(のはず)。音色ファイルは(多分)gm.dlsで、ModPlug Playerというソフトを使うと、これを使っていろいろと遊べるようだ(解説サイト遊び方の解説:筆者は使った経験なし)。ちなみに、swmidi.sysが出力したPCMデータはportcls.sysというWaveポートドライバ(Waveマッパーの実体なのかな?)に渡される模様。

QuickTimeの音源は、おそらくQuickTimeのインストール先フォルダにあるQuickTimeMusicalInstruments.qtxが音色ファイルだと思われる。バージョンが3とか4だったころは、MIDIOUTとしてQuickTimeのソフトウェアシンセが選べたような気がするのだが、記憶が定かでない。これもハイハットペダル(44番)が妙な鳴り方をするので、ツェッペリン風の左足踏みまくりの音を打ち込むときにかなり面倒。ハイハットペダルを鳴らすちょっと前に、ベロシティ1でハイハットオープン(46番)を鳴らしてやると概ね緩和されるのだが。

Sound_Blaster_PCIのソフトウェアシンセは、音源ファイルがeapci2m.ecw、eapci4m.ecw、eapci8m.ecwと3種類あって(数字はファイルの大きさを示している:もっとあるかも?)、PCI128では2MBのものと8MBのものが選べる。かなり極端なリバーブがかかっており、筆者は風呂場セットと呼んでいる。インストールの方法が面倒(eapci2m.ecwだけは何もしなくても入る)で、ドライバのインストール時に音源ファイルをソースフォルダ(ドライバの圧縮ファイルを解凍してできたフォルダ)に入れておくのだったか、確かそんな感じの作業が必要だったはず(よく覚えていないし、改めて作業したくもない)。

Sound Blaster Audigy LSなどについてくるsoundfont synthはサウンドフォントを読み込めるはずなのだが、筆者はTimidity++を利用しているため使ったことがない(デフォルトの音色はeapciなどと似ている)。ct2mgm.sf2とCT4MGM.SF2というのが正体っぽい(NT系場合system32ディレクトリにある)。デフォルトではct2mgm.sf2を使っている模様。CT4MGM.SF2の素の音色は(ある程度リバーブをかけないとうまく鳴らないが)ファイル容量を考えるとなかなかのものである。

S-YXG-50はヤマハがWindowsUpdateで配っている音源で、MU50とほぼ同等品らしい。インストーラに不具合があるらしく、完全なアンインストールが困難らしい(使わなくなっても放置しておけばよいだけの話だが)。C2より下の音がまともに鳴らない、A#1とB1やG2とG#2などサンプルの変わり目が目立つ、ピアノとドラムス以外の音がショボい(バスドラもちょっとアレ)、急に鳴らなくなることがあるなど難点も目立つが、ピアノだけ比べたらSW Synthよりも筆者好みである。これもリバーブはかなり深いが風呂場っぽくはない。


音源のテスト

テスト用のMIDIファイルも用意してみた。TiMidityのトレーサウィンドウやシーケンサーソフトなどを利用して、どの音色のどの音が鳴っているか確認しながらテストするとよい。

MP3(本当はlameを使いたいが、あまりに手間がかかるのでgogo.dllへの直接出力を利用している)なのでWave出力とは多少音が変わっているが、上記のMIDIをTiMidity++で録音したものも用意した。音源には2005/9/32現在前述のリンク先で入手できる最新版(FluidのバージョンはR3、Atomicのバージョンは1.0、SGMのバージョンは1.5)を利用し、デフォルトでcfgファイルが添付されているものはそれを使用、ないものについては音源デフォルトの音そのままとした。TiMidity++本体の音量調節(アンプ)は100%でイフェクトはkbtimの「高音質高負荷」に準じ(詳細についてはtimpp32g.iniの[TIMIDITY]セクションをini.txtという名前で公開しているのでそちらを参照)、LilithのMPEG Audio Layer-III GainEditor を用いてノーマライズした。音源のダウンロードやインストールをせずに音色を確認したい場合に利用して欲しい(MIDIファイルを見ればどこでどの音が鳴っているのかはわかると思う:freepatsのドラムで鳴っていない音があるのは仕様)。

音源の調整には、Windows用だとsoundblaster.comサウンドフォントのコーナーでvienna soundfont studio(Sound Blaster がインストールされていないと動かない:2005年10月現在、最新版は2.4のはずだが、公開されているのは2.3) というソフトウェアが公開されている。使い方についてはASTRO NOTE というページが参考になる。似たような名前のソフトにsynthfontのvienaというものもあり、こちらはサウンドカードの縛りがない。単純な作業(音色がどのバンクに入っているか確認するとか、複数のサウンドフォントを1つにまとめるとか)なら、E-MU SystemsSoundFont Librarian(システムに負荷がかかった状態だとインストーラがコケることがあるので、他のプログラムを終了してから作業しよう)が手軽だろう。LasT NighTというサイトで公開されているコマンドラインツールミラー)もある(if you need more than Vienna...だそうだ)。PCUnix向けだと前述のSwamiが使えるようだが、今のところLinux上でしか動作確認が取れていないらしい(と公式ページには書いてあるが、FreeBSDにはportsがあるし、筆者の手元でも実際に動いている)。

2ちゃんんねる掲示板の【DTM】 悶絶 ★ 初心者質問スレッドVol.9【3歳児】(隔離スレなので初心者はとくに閲覧注意、知識のある人は下手にマジレスして釣り師を他のスレに散らさないように)にて、再生サンプルとMIDIの掲載許可を頂いたので以下に掲載する。以下のファイルは筆者が作成したものではなく、自滅への道のライセンスは適用されないので注意。

まずはオリジナルのMIDIを手元の音源で鳴らしてみて、その他の音と比較してみるとよいだろう。実際に利用する場合は、各音源に合わせてベロシティの調整などを行うことになる(たとえば筆者が録音したFluidR3のファイルはハイハットがちょっと大きいし、Eawpatchesのものは小さすぎ)が、そうすると個々の音源に特化したMIDIファイルになってしまうため、筆者が録音したものに関してはMIDIファイルに一切手を加えなかった。その他のファイルは録音者の方が公開したものをそのまま掲載。転載を許可してくださった方々に感謝。

おもな音源でピアノのC4(ベロシティ100、テンポ120で全音符)を録音し、Audacityで解析してみた。サンプルファイルの中に、音声ファイルとスペアナの出力がある(MIDIファイルでは開始6秒時点にベロシティ1のノートが入っているが、録音ファイルは5秒まででカットしてある)。サンプルレートはvienaで確認した。

FluidR3

高域は10KHzくらいで切れる。周波数の谷が深く山が鋭いスッキリとした音で、高次倍音も強く華やかさが出ている。サウンドフォントの波形サンプルは32KHz(ピアノ以外の音色では44.1KHzや22.5KHzも混ざっており統一されていない)。

SGM180v1.5

高域は9KHzくらいで切れる。山と谷が曖昧なやわらかい音。倍音が全般に弱く、9倍音がやや目立つ以外は高音域が薄いため、ややこもった丸みのある音色になる。波形サンプルは44.1KHzで統一しているようだ。

Titanic

高域は8KHzくらいで切れる。SGMよりさらに谷が浅くやわらかい音。反面高域もある程度の厚みがあるため透明感がある。波形サンプルは44.1KHzだが、ピアノ以外の音色では一部よくわからない半端なレートが使われている。

CGM301

谷が深く山が鋭い明瞭な音。Fluidよりもなだらかに倍音が減衰する。単品で大音量再生するとビビリノイズが入っているのがわかる(中音域の音のみに入っているようだ)。フィルタで切りながら音色を確認したところ7~8KHz周辺(7500Hzあたりと8050あたりの山が怪しい)に入った音らしく、これはこれでノイジーなピアノとして使えるのだが、本気でクリアな音が欲しいなら波形サンプル自体を加工(C4の音色だと、7600HzピークQ=1~2くらいのノッチフィルタか、0.5オクターブバンドくらいのピーキングイコライザで削ってやるとおさまる)する必要があるだろう。裏技的な使い方だが、鋭いハイパスフィルタで下をバッサリ切ってFluidピアノに混ぜてやるのも一興。

CGrandPiano0

基底音が強い。低音域のみ谷が浅い。波形を見ると右チャンネルの音量が揺れている。ちょっと詰まった感じ。44.1KHzサンプリングだが、高音は5KHzくらいまでしか出ていない。

steinbow

これも中音域の谷が深いが基底音もそんなに強くない。やはり44.1KHzサンプリングだが高音域は5KHzくらいまでしか出ていない。明瞭感はある。

APiano

低域で丸く、高域で鋭い。44.1KHzサンプリングで、高域まで音が入っている。音量が小さい。

Piano

5倍音くらいまでがほとんど減衰なく鼻っ柱が強い。44.1KHzサンプリングで、音は11KHzくらいまで入っている。トーンの後半でやや音がブレる。

JyunPiano

低域でとくに丸く、高域で鋭い。44.1KHzサンプリングで、音は10KHzくらいまで入っている。トレモロっぽい感じになっている。

Rd1000

基底音と中音域で鋭さを出しつつ他でボリューム感を出している。44.1KHzサンプリングで、音は9KHzすぎまで入っている。


参考リンク

TiMidity++ (Experimental version)

TiMidity for MacOS Xトップ

TiMidity++のページ(http://members9.tsukaeru.net/timidity/に移転したらしいが404error)


謝辞

音楽製作上さまざまな音色を手軽に利用できるメリットは計り知れず、フォント作者の方々には感謝の念に尽きない。とくに、汎用音源として大活躍するFluidを制作されたFrank Wen 氏には、重ねてお礼を申し上げたい。

Dear Mr. Wen, I would like to thank you for your exquisite soundfonts. If you should happen to brows this page, I would like you to take a listen to my works with Fluid.


オマケ(ピアノの音色について)

音色について、というよりは、筆者がFluidのピアノを気に入っている理由。

他のページにも何度か出てくるSound Engineeringのページトップミラー?)の解説にもあるが、ピアノの音色に求められるものは場合によって大きく違う。その中で「曲中で色々な楽器が鳴っている場合」に「必要なのは、中高域の音」であり「柔らかいピアノの音は必要とされなくて、歯切れのいいピアノの音が要求される」というコメントが非常に重要である

世の中に「評判のよいピアノサウンド」がいくつかあるが「ピアノの音」にこだわる人にはピアニストが多いので、自然と「ピアニスト好みの音」が人気を呼ぶ。ではそのピアニスト好みの音というのはどんな音かというと、ほぼ間違いなく、グランドピアノを弾いているときに奏者が聞いている音である。

もう一方で「ピアノ音源」にこだわる人には打ち込み中心で制作している人が多いわけだが、中には「ピアノの音をCDなどでしか知らない」人も多い。加工された音しか知らないとどうしても、ポンと鍵盤を押した時点で「そういう音」が出ることを期待してしまいがちである。

ここに落とし穴があるのは言うまでもないわけで、豪華な音を求めると他の楽器と衝突しやすく、ピアニストの着席位置の音は客席に聴こえる音とは違う。また、あまり大胆に音色をイジってあると追加加工の障害になる。このため、一般に評判のよい音色を使用したにも関わらず、他の楽器と合わせるとでしゃばりすぎていたり、編集時に過剰に加工された音になったりする。

その点Fluidのピアノは控えめな味付けで、他の楽器と合わせてよし、加工してよし、ズボラなアレンジで少々音が被っても無難と、実に扱いやすい。とくに初心者が扱うのに適していると思う。たしかに、生ピアノの代替品として見ればFluidピアノの音は貧弱だが、シンセピアノとしては非常に優秀で、生ピアノよりもずっと扱いやすい便利な楽器である。

追記:2008年11月に生まれて初めてグランドピアノを鳴らした(「弾ける」ほどの腕は到底ないので鳴らしただけ)が、鍵盤の目の前にいると(響板経由の音をノーマルに聴くのと比べて)かなり響きがシンプルになる。

生ピアノの音色というのは自分では弾けなくてさえ抗いがたい魅力を持っているので、自分で演奏をする人たちがその魔力に取り付かれる気持ちは理解できる。ただ、生ピアノに特別な思い入れのない人が無理をする必要はないと思う。アレンジの難易度が急激に上がるし、ピアノを中心に音色作りをしていく必要が出てくるので、代償がかなり大きい。

生ピアノには生ピアノにしか出せないニュアンスがあるし、シンセピアノにはシンセピアノにしかできない芸当がある。その辺を意識して音源を選ぶと、音作りの幅が少し広がるのではないか。




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