かけた方がよい手間


モニタのチェック

大げさなことをする必要はないと思うが、微妙な作業をする前にサインスイープくらいは確認しておいた方がよい(急がば回れの加工のページにファイルと使い方を掲載している)。

2009年4月24日の日記にも筆者の失敗談を書いたが、スピーカやヘッドフォンには高速で運動する部品があって必ず劣化する(ヘタる)し、人間の聴力も年齢とともに衰える。短期的に見ても体調などの影響があるため、念を入れるなら毎日作業前にチェックしてもよいくらいだと思う。

なお日記に書いたとおり、自分の耳が高音に鈍くなってきたのがはっきりわかったのはショックだったが、文句を言っても仕方のない話なので、情報のインプットが途絶えても経験でカバーできるよう耳は若いうちに鍛えておくべきである(もちろん、ケアによって性能を保つのも大切)。


モニタリング

イフェクトをかけたら、必ずその都度頭から通して聴いてみた方がよい。飛び飛びにモニタリングすれば時間は節約できるが、思いがけず印象が変わっている個所があったりする。チャンネルイフェクト(1つのトラックにのみかけるイフェクト)の場合、各種作業が完了して仮ミックスと合わせた後、もう1度モニタリングしておくべきである。

REAPERなどDAWと呼ばれるソフトやプラグインチェイナーを使えば複数のイフェクトを一気に適用することも可能なのだが、ステップバイステップの作業で思い通りの音が作れない人は手を出すべきでない(少なくともデモ作成に限定すべきである:2~3回通して作業をやってみると、このことの意味がわかるはず)。そういう筆者もWavosaurにチェーンを読んでファイルを再生しながらパラメータを軽く調整、などということをよくやるが、それはデモや日記系の記事に掲載する音源の作成に限定しているし、チェーンの設定もそれなりに練り上げてある。

余談だが、筆者はごく簡単なモニタすらせずにイフェクトを適用して、間違ったチェーンを選択したのに気付かないままファイルを上書き保存したことがある。デモファイルの送信前に念のためと思って再生してみたところ、ほんのりとリバーブをかけるはずがズブズブのリバーブになっていたことに気付き、録音し直す元気もなかったため、エキスパンダとイコライザで誤魔化してデモを提出した。そこまで迂闊なことをやる人はそういないにしても、手間を惜しみすぎるとロクなことがないのは間違いない。


パラ出し

イフェクトではなく録音のパラ出し。

真面目に編集するなら、楽器別のパラ出しをするのはもちろん、ドラムスは最低限バスドラムとそれ以外に分けてファイル化するべきである。MIDIからの録音の場合、スネアと金物をいっしょにするのは止めないが、バスドラムだけでも別ファイルにしておくと作業が断然やりやすい(ちなみに筆者はバスドラ、スネア、シンバル、その他の4本で作業している)。生録音なら、バスドラムとスネアとステレオオーバーヘッドで4トラック(ツーバスツースネアなら6トラック)が最低ライン(ごちゃごちゃいじくり回すのでなければこれで十分な作業ができる:オフマイク2本だけという手もないではないが、やはりバスドラムだけは別に録っておいた方がよいと思う)。ドラムス以外は、鍵盤がステレオを使うくらいで、あとはモノラルでも大丈夫。

凝った編集をするなら、バスドラム(音色を2つ使うなら2本)、スネア(音色を2つ使うなら2本)、ハイハット、ライド、その他のシンバル(ステレオ)、フロアタム、タム(ステレオ)、その他で10本前後出しておきたい。生録音なら上記4~6トラックにハイハット(と使うならライド)を足して、トラック数に余裕があればこだわりのある部分にいくつか追加しておけばよいだろう(徹底的に凝るなら、タム1つに1本マイクを使ったり、バスドラムの前後で合計2本使ったり、オフマイクを追加してもよい)。若干卑怯だが、タムを単音で一通り別録音しておくと、後から切り貼りでフィルなどをイジれる(アナログ時代には音色作りにも必要だったらしいが、デジタルなら必須ではないと思う)。

ドラムスとアコピ以外の生楽器はせいぜい2~4トラックくらいで足りると思われる。デジピやシンセは、MIDIデータを同時出力できるなら記録しておくと何かの役に立つかもしれない。タッチノイズを入れたいなら手元にマイクをセット(できればモノラルで2本)。エレアコギターなどはマイクとピックアップからパラ出ししておくとよいだろう。エレキギター/ベースもライン録りとアンプ録りで2本使う手があるし、各ピックアップからパラ出しできるならそれを活用してもよい。アコギでオンマイクとオフマイクを併用するのも有効。ヴォーカルで複数トラックを使うことはあまりないが、コーラスを1人1本で録音する(または並んでステレオマイクで録音する)というのはアリだろう。

ただし、録音するかどうかと混ぜるかどうかはまた別の話で、同時使用するマイクの本数が増えれば増えるほど、ディレイがかかった音が重なってコムフィルタ様の効果に悩まされることになる。執念深く集めて気前よく捨てる方針でやるのがよいと思う。


オーバーシュートのチェック

可逆圧縮時、とくにリミッターやコンプを強くかけた音源はオーバーシュートを起こしやすい。ダイナミックレンジを使い切りたいなら、まず-2dbくらいのノーマライズでエンコード>デコード>波形確認を行い、それから本番のエンコードをするべきである。

音圧に強く執着しクリッピングを忌み嫌う人たちの中に、この手間をかけていないと思われる人が少なからず見受けられるのは非常に奇妙なのだが、こだわって作業するなら最後まで気を抜くべきではない。

ただし、多少のクリッピングは聴覚上問題がないことも多いし、数デシベル単位で音圧を稼ぐことに興味がなければ-3dbくらいにノーマライズしてからエンコードすればこの手間はかからない(多少のクリッピングを気にしないとしても、0dbにノーマライズして非可逆圧縮するのだけは避けよう)。



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