シンセトーンを使う


音色の種類 / パッド // もどる
この記事は書きかけです。

いわゆる「シンセの音色」を使うときのコツや注意点。

あくまで「シンセっぽい音をどう使うか」を問題にして、シンセのイジり方自体には触れない(知りたい人は急がば回れのシンセ入門を参照)。


音色の種類

だいたいだが、リード(メロディに使う:管楽器などの発音体を指す「reed」ではなく主導する意の「lead」)やパッド(隙間を埋める伴奏に使う:詰め物の意)などの用途、またはストリングス(弦楽器)やブラス(管楽器)やベース(低音楽器)など代用する楽器名で分類されることが多い(ストリングスとブラスはアンサンブル音色をパッド的に使うのが主で、ストリングパッドとかブラスパッドという音色が入っているシンセもある)。

使いどころなのだが、リードは当然メインメロディに使えるほか、フィルや裏メロっぽいパートにも使える。が、押しの強い音が多いので曲全体が「シンセっぽい」イメージになることが多い。パッドはそのまんまで、広めのヴォイシングで使うのが普通。とくにメインのコード伴奏がアルペジオなど薄めの弾き方の場合に重宝する。ベースは(アコースティック系の音源と)音色で使い分けることが多いだろうが、反復性が高いand/orベースギターでは現実的でないベースラインと相性がよい。

減算系のシンセを模した音は、鋸波や矩形波に代表される倍音が豊富な音色をもとにフィルタでどのくらい切るかでキャラを出している。倍音を切れば切っただけ丸く柔らかい音になるし、そのままタレ流せばハッキリした押しの強い音になる(ホワイトノイズやピンクノイズを混ぜる、微妙なモジュレーションを入れるなどして音程感をぼかすといった手法もある)。


パッド

生楽器が入る曲でも多用されるパッドについてもう少し。

倍音が強い音色で和音を構成すると、独特のクセがある響きになる(理由はオマケを参照)。これを回避したい場合は、鋸波系と矩形波系の音色(クセの出方が違う:矩形波をマイルドにした波形である三角波もアリ)を使い分け、ローパスを強めに、ヴォイシングを広めにするとよい。

ヴォイシングについてはさらに、平行移動系ではなくトップノートの動きが少ない形を心がけると目立ちにくい。筆者の場合、トニックのトップノートをi、ドミナントのトップノートをviiかbviiにして、他のコードもトップノートだけ先に決めることが多い。その他のトーンはメイン伴奏の隙間を伺いつつダブらないよう置いていけばよい(どうせシンセなので、人間が手で押さえられそうにないヴォイシングになっても筆者は気にしていない)。

メイン伴奏とメロディの間だけでなく、ベースとメイン伴奏の間が大きく開いているときも、間を埋めることがあるだろう。このときの注意として、1/2倍音が出る音色を下まで突っ込ませるとベースの身動きがとれなくなる(ベースがルート弾きで一体化させるorベースなしなら問題ない)。たいていの場合、他の楽器と完全に被った音程に音を置く必要はない(パッドなのだから、隙間がないなら黙っていればよい)。ベースが入っていればコードの響きに必要な音は3度音だけだということに注意しよう(厚みを出すパッドはルートand/or5度音を重ね、コード構成を補うパッドは3度を鳴らす)。ただし、音数によって冒頭で触れた「クセ」の出方が変わるので、響きをそろえるためにあえて音を出した方がよい場合もある(音色によるので耳で判断)。

4和音でパッドを入れるのは面倒だが、多くの場合全体は4和音でもパッドはトライアドで問題ない(話が前後するが、パワーコードで間に合うこともある)。あえて4和音にする場合でルートや5度音を省略しないなら、音の間隔が広い場所(シンセの音同士で長2度以下の音程ができない場所:短3度は微妙なので耳で判断)を選ぶか、一番下のオクターブに入れてしまうのが無難だろうか。4和音の3度と7度だけ鳴らす(ルートと5度は省略)のも普通にアリ。

あとは、各パートor小節で何度の音がどのオクターブに必要なのか考慮しつつ、低音の音符を強め、高音の音符を弱めのベロシティで入力してやる(筆者は6thと7thもかなり弱く入れることがある)。アタックが極端に遅い音源の場合、打ち込みの時点で前にずらすこともある(音をカブらせる場合はノートオンとノートオフがクロスしないよう注意:チャンネルを2本使うのも手)。


オマケ(シンセと和音)

シンセで倍音の強い音色を和音で鳴らすと、独特のクセがある響きになる。以下、調律カーブが完全にリニアだという前提で説明を進める(念のため断っただけなので、調律カーブが何なのかわからない人は気にしなくてよい)。

これはインハーモニシティの影響で、とくに長短3度の音が微妙なうなり(音量のゆっくりとした変化)を生じる。たとえば440HzのA音と短3度上523.3HzのC音では、A音の5倍音2200HzとC音の4倍音2093Hzがぶつかる(音程にして86.3セント違い)。また440HzのA音と長3度上554.4HzのC#音では、A音の5倍音2200HzとC#音の4倍音2217Hzがぶつかる(音程にして13.3セント違い)。

メジャーコードにしてもマイナーコードにしても3度の音程は含まれるわけで、倍音の強い音色を使うと引っ掛かりのある音になることがわかる(どう使うかは曲次第)。

完全5度も曲者で、たとえば440HzのA音と完全5度上659.3HzのE音でPowerAを作ると、A音の3倍音1320HzとE音の2倍音1319Hzがぶつかり(有効桁数を多めに取って計算すると、音程にして1.96セント違い)、音程根音は0.50Hzになる。つまり、1320Hz周辺の成分が2秒周期で増減する(結果的には、和音にオーバードライブをかけた場合のうなりと同じ現象)。

生楽器の場合、2セント程度のインハーモニシティは楽器の相互干渉で帳消しになってしまうのだが、シンセの場合はオシレータを使っているので出音にはっきり現れる(生楽器でも、弦1本づつ録音して後から重ねると微妙なインハーモニシティが生じるという例を、急がば回れの録音のページのオマケで紹介した:サンプルファイル)。



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