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ごく一部で「使いにくい」と大評判の「ゼロとの交差部分を見つける」機能。好みは人それぞれなので評価もいろいろあるだろうが、動作を誤解しているらしい人がいる。
まず「ゼロクロスポイント選択」は普通「音圧ゼロサンプル選択」ではない。というか、音圧ゼロのサンプルだけを狙うと、出現頻度が低すぎて話にならない。どのくらいレアかというと、16bit/48KHzで完全なランダムノイズを記録してあった場合1.365秒、32bit/48KHzだと24.855時間に1回くらいの確率になる(192KHzでサンプリングしてあれば4倍早く見つかるが、24時間が6時間に短縮されたところであまり嬉しくない)。
また、たとえばナイキスト周波数の無理数倍(ただし1未満)の純音を記録したような場合、音圧がゼロになる瞬間は(DCオフセットさえなければ)無数にあるが、ゼロとクロスする「サンプル」は選択できない(サンプルとサンプルの「間で」ゼロとクロスしているから)。
で結局、現実的なサンプル数の中から「ゼロクロスに近い」サンプルを選ぶわけだが、Audacityではかなり「本当のゼロクロスに近い」サンプルだけを選ぶようになっている。実際問題「ゼロクロスとはかなり遠いが編集の都合上ここで切りたい」といったポイントを選ぶときは、目と耳を使いながら手でやった方が無難で早いわけで、作業効率を考えると理に適っている。
これが商用ソフトとなるとマーケティングの都合(甘い基準で波形をぶった切られたことに気付く人の割合より、わけもわからず「機能がおかしい」と騒ぐ人の割合の方がはるかに多く、前者は放っておいても必要に応じて手作業してくれる)があるため、甘めの基準で選択するソフトが多いのだと思う。
-78dbFSくらいの残留ノイズを16bitリニアPCMで記録してやると、けっこう荒っぽい波形になる。ダイナミックレンジで考えると、96-78=18dbで、ピンクノイズを3bit記録した(またはビットクラッシャーで3bitまで潰した)のとだいたい同じ結果になるわけだが、なめらかに記録したければもう1bitくらいは欲しいところ。
が、残留ノイズをなめらかにするためにわざわざ20bit記録などに手を出すメリットはほとんどない(そもそも、最大音量100dB SPLで再生しても22dB SPLにしかならない成分で、環境ノイズに埋もれて人間には間違いなく知覚できない)。
ただ、たとえばデータに24bit使って、音声にそのうち20bit回し、残り4bitを他で転用するような使い方は便利だと思う(うまくエンコードすればMIDI信号なんかも送れそうだし、1~2bitくらい使ってヘッドルームもどきを作っておくのも一興)。