道具を揃えよう


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いまさら断るまでもなく筆者もオッサンなのであるが、自炊したいorしなければならなくなったが要領がわからんというオッサンは世の中に数多いと思う(確認したわけではないがきっとそうである)。そのような人たちの案内になれば幸いである。なお、若い女性などはオッサン臭い調理方法が身につくと不幸になるので真似しない方がよいし、あくまで「自分しか食べない」前提のため家庭の主婦or主夫の参考にもならないと思う。

さてでは手始めに道具を揃える。そう、オッサンは道具を揃えるのが好きだからである。



食器

これはまあ好みなのだが、数はあまり増やさない方がよい。深皿、鉢、丼、飯椀、汁椀、小皿くらいがあれば足りる。これだけで満足した人は次の項まで読み飛ばそう。筆者は磁器っぽい素材が好きで、ウレタン塗装の食器は嫌い、滑らかなシェイプが好きでカドや凹凸のある食器は嫌い、つまり水に漬けっぱなしても痛まず食品の保存にも使い回せて手早く洗える食器が好きである。余談ながら日本の磁器では、伊万里・有田・備前、瀬戸の新製、九谷・砥部などが有名(基本的には全部有田の派生)。

大きさの目安として、安物の電子レンジの回転皿が25cmくらい、庫内は29cmくらいで、普通に回せるサイズは28cmくらいが限界(皿は3cm刻みが多いので、27cmまでならレンジで回せる計算になる:当然ながら角皿の場合対角線が29cmまで、完全な正方形なら1辺20.5cm、普通は丸みをつけてあるだろうから23cmくらいまではイケるはずで、筆者が持っている21cmの角皿は余裕で回る)。小型の台所ラックは幅20〜30cmくらいのものが多く、大皿は四角い方が収納しやすい。大型ガステーブルの魚焼きグリルで30cmちょいなので、それよりデカい魚はバーベキューコンロでも使わないと焼けない(魚焼き器は25cmくらいのものが多いか)。

深皿は大きいのがあった方がラク。深皿とはいうものの鉢みたいなものではなく、一般にパスタプレートとかカレープレートと呼ばれているものから、平らな部分ができるだけ広いものを選びたい。使い勝手を考えると22cm前後の角皿がよいと思う(電子レンジに入れることはほぼないと思うので、収納場所の都合を考えるのがよさそう)。焼き魚なんかにもこれを使い、朝をパン食にするならトースト(普通サイズなら13cm前後の正方形)2枚にベーコンエッグにポテトサラダくらいは乗る。20cmくらいの平皿がもう1枚あっても悪くないが、枚数が増えると面倒なので必要になってから買えばよい。

鉢はメインディッシュ用。野菜炒めも麻婆豆腐も魚の煮付けも全部これで食べる。こだわりがあるメニューに専用皿を用意するのはもちろん差し支えないが、使い回せるところは使い回した方がラクなのは言うまでもない。筆者はスパゲティもカレーもこれに入れてしまう。深さはある程度あった方がよく、楕円(オーバルまたはリーフ)の方が使いやすいかなという気はするが、メインで使うものなので好みで選ぶのがよさそう。普通の大鉢、深めのパスタボウル、浅めのベーカー皿あたりから選ぶのが無難だろうか。魚だけはデカい皿に盛りたいという場合は35cmくらいの長皿を用意すればよろしかろう。

丼は悩ましい。家庭用のラーメン丼が満水1000cc前後で、このくらいあると使い回しの幅が広がるのだが、口が広いものが多く筆者はあまり好きでない(いわゆる反丼とか切立丼も形が嫌い)。玉形丼なんかは16cm前後のもので1200ccくらい入り形も上品だと思うのだが、今度は湯麺や広東麺なんかに使いにくい。さぬき丼は容量があるものの形が浅く、深口丼は形がいいものの容量の大きいものが少なく、たまによさそうなものを見つけたと思うと樹脂製だったりする。こればっかりは数を当たらないとダメっぽい(筆者もかなり探し回った:アヤさんありがとう)。ステンレス製の断熱丼なんかもあるらしいが、残った料理の保存(深い器の方が場所を取らない)なんかにも使うなら陶磁器の方が便利だと思う(異なるシェイプで2つ持つともっといいかな)。

飯椀は自分が食べる分量に合わせて。自炊だと飯は1回で盛ってしまう人が多いと思う。満水で500ccくらいあれば1合飯を盛っても見苦しくならない。汁椀は陶器が少ないし容量が小さいものが多いため中華の湯椀を使うのが便利。味噌汁を湯椀に入れるのはちょっとという人は木か樹脂のものを別に用意すればよろしかろう。小皿はまあ何枚かあればよい。小さくて深い器(多用椀とか多用丼とか呼ばれるものの小さいやつ)がいくつかあると付けあわせを入れるのに便利だし、オーブンに入れられる皿も1つくらいはあるとよい(アマゾンが扱っているk-aiというブランドがオーブン対応食器を豊富に揃えている:が、筆者は使ったことがなく耐熱ガラスの長皿を使用している)。筆者の場合、食器としてではなく調理器具として、小さい茶碗(卵を溶いたり下ごしらえした食材を寝かせたり)と深い小皿(片栗を溶いたり合わせ調味料を入れたり)を使っている(ステンレスでもいいのだが、酢とか重曹なんかを使う場合に陶磁器の方が安心感がある)。



熱源と燃費

光熱費の計算に興味がない人は次の項まで読み飛ばそう。結論から言うと、都市ガスが使えるならガスだけ使っているのが一番安く、瞬間最大火力でもそう見劣りしない。都会でもプロパンよりは電気の方が安いが、ガスでサポートした方が効率的。田舎のプロパンはカセットガスと大差ない単価で、できるだけ電気を使った方が安い。以下費用の計算は2016年現在の料金を元にする。またあくまで費用把握のための目安であって、省エネとか光熱費節減みたいなものを目的としていない(余談ではあるが、もし資源の節約を云々するなら、真っ先に冷凍再加熱をやめるべきである:いったん加熱したものを冷やしてまた温めるなんて、エネルギーの無駄以外の何者でもない)。

燃料費は地域によって価格が大きく違う。たとえばLPガス(以下プロパンと呼ぶ)は、東京なら10m^3(1ギガジュールくらい)使っても基本料金込みで8000円を切ることがあるが、北海道なんかでは12000円を超えることがある。13Aの都市ガス22m^3と同じ熱量だとして、東京だと3500円くらいだろうか。カセットガス(ブタン:20kgで1ギガジュールくらい)は、イワタニの250g缶3本セットが安いところで500円くらいだから1ギガジュールで13000円ちょっと。IHの熱効率比がガスの1.5倍だとすると185KWhくらいだから、東京電力の従量電灯B30Aの基本料金+1段2段階料金で5000円くらい。ガスは使えば使うほど料金が安くなるが、電気は使えば使うほど料金が高くなる(3段階料金になったり契約アンペアで基本料金が増えたり)こと、調理用の契約で従量電灯Bよりは少し割り引かれること、ガスの基本料金は調理以で外使わなければ(=オール家電とかなら)不要だが電気の基本料金はどのみち払うことに注意。

これだけ見ると、都市ガス<電気<都会のプロパン<田舎のプロパン≦カセットガスなのだが、全体の効率はカタログ上の熱効率だけでは決まらない。たとえば大きな寸胴にお湯を沸騰させたいとき、温度が上がってくると鍋から周囲への放熱が増え、火力が弱く時間がかかると無駄な熱がどんどん逃げる。つまり、ラストスパートの部分で火力が強いほど無駄なエネルギーを使わなくて済む。家庭用の大型機種だと、200VIHは3KW、ガスは4.2KWの機種が多いため、熱効率を考えると最大火力ではIHが少し上回るが、IHの火力維持は排熱との戦いで常に最大出力をキープできるわけではない(内部の温度が上がりすぎるとパワーダウンする:ラストスパートにこそ火力が必要なのに)。卓上だからビルトインだから100Vだから200Vだからという問題ではなく、どんなIHでも内部が熱くなったら負けである(サイズに制限がある卓上タイプの方が排熱能力に劣る傾向はある)。これらのことから、プロパンとIHを併用する場合、スタートダッシュとラストスパートだけIHにやらせて途中をガスにした方が効率がよいことがある(休ませている間も冷却ファンは回るので、けっこう冷えてくれる)。

なお、IH調理器に適する鍋はガス火に適さないし、ガス火に適する鍋はIH調理器に適さないので、火力の比較をしたいならそれぞれに合った別の鍋を使わないと適切でない。IH用の鍋は、一番下が磁性体(普通はステンレス)になっており、その上に厚いアルミの層がある(表面上ステンレス鍋でも、底にはアルミを仕込んであるものが多い:鉄鍋は例外)。IHはコイルの上だけがドーナツ状に加熱されるので、温度を横に伝えるために厚い鍋底が必要になる(熱の伝達効率は断面積に比例する)。ガス火の場合は面積が大きい方が有利で、杉山金属のエコラインなんかは120L寸胴で湯沸し時間が3分の2くらいになるそうなのだが、2015年にリコールがあった影響なのか家庭用の鍋はラインナップから消えてしまった。

さらに、熱効率という言葉にも注意が必要で、ガス器具ならメーカーの表示はJIS S 2103 : 2010(規定の鍋で水を初温から50度上昇させ、いわゆる余熱も加味する)という規格に従っているはずである。IHの熱効率(鍋の温度上昇も含まれる計算方法らしいのだが、JISの何番なのかわからなかった:これだけの性能ですと売り文句にするなら、計算根拠くらい明示するのが当然だと思うのだが)は90%くらいを謳っているが、ガスと同じ試験方法だと80%にも届かないとかなんとか。いっぽうで、この規格は最大出力に応じて使う鍋の大きさが変わりそもそもが公平でないとかいう話も聞く。なんだかどこの誰に聞いても非現実的な数字が飛び交っているばかりでうんざりするが、筆者はとりあえず、ガスが50%くらいでIHが75%くらいなんじゃないのと勝手に納得したうえで、IH1.5倍段(ガスと比較するときは出力を1.5扱いする)でお茶を濁している(電子レンジもガスとそう変わらない感じだが、最大出力が小さい)。

そのうえさらに、そもそも火力を上げられるのかという問題もある。多くの「IH対応鍋」(業務用含む)には「200VのIH調理器でも使えます(ただし弱火でなら)」と書いてある。というか、200VのIHで強火全開にして大丈夫だと書いてある鍋を筆者は見たことがない。いっぽう、4.2KWクラスのガス火(外炎式)をちゃんと受け止めようと思ったら、寸胴シェイプで26cmくらいの径は必要になる(少なくともそれくらいというだけで、26cmで十分かどうか筆者は知らない)。底面積も大きい方がよく、IH対応鍋に多いのっぺりしたなべ底だと効率が落ちる。内炎式のバーナーは鍋が小さいときに真価を発揮し、強火にできる>時間短縮>無駄に熱を捨てる時間が減るという寸法で燃費改善につながる(ただし家庭用は、ガスレンジへの安全センサー設置義務化で絶滅してしまった)。IHも小さい鍋が得意な器具。なお「200VのIH調理器はパワーがあるため鍋の変形が云々」という説明は、間違ってはいないが正確でない。というのも、もし火力だけが問題なら中華鍋(業務用中華レンジの出力は普及品で23KWくらい、ほぼ常に火力全開で使われる)なんてとっくに熱溶解している。平らな底を局部的に加熱するから歪むのである。

ちなみに灯油は27リットルくらいで総熱量が1ギガジュール、ガスor灯油ボイラーの熱効率が(通常型で80%、潜熱回収型で95%くらいのカタログスペックだから)70%程度だとすると、20リットルくらいでプロパン10m^3相当だから、リッター150円でも都市ガスより安い(1.5〜2KWくらいのものだが、石油コンロというコンロもコロナやトヨトミが作っている:JIS1号灯油(ようするに普通の灯油)しか使わないんだから「灯油コンロ」と呼べばいいのに、「石油ストーブ」もそうだが名前変えた方がいいんじゃないか)。



加熱調理機器の選択

2016年現在の筆者の判断としては、ガス・IH・電子レンジ・オーブンはそれぞれ別の加熱調理機器であり、種類をたくさん持っていた方が便利である(ついでに言うと、料理用のガスバーナーもあるともっと便利)。何を当たり前のことをと言われそうではあるが、たとえ都市ガスが入っていてガスコンロが一番安いとわかっていても電子レンジは便利だし、田舎の超高級プロパンガスでも中華鍋で炒めをやるなら使わざるを得ない。すでに加熱料理機器を持っている人は次の項まで読み飛ばそう。

じゃあメインの熱源を何にするんだと考えると、これはもう住宅設備の都合に合わせるしかない。ガスが入っているなら普通にガステーブルと、卓上のIH調理器があると便利。小さい鍋が得意で瞬発力のあるIH調理器はガスコンロのいい補完になる。ガスが入っていない場合は(契約で禁止されていないなら)カセットコンロを用意するのがよいだろうが、マキネッタ(エスプレッソやかん)みたいな極小の器具は内炎式で使いたいし、炒めに使うなら強火力タイプが欲しいし、悩ましいところ。

家の中での調理では、煙が出る焼き物がけっこう面倒。真面目に考えると熱源が下にあるのが問題、つまり食材から出た油が落ちて熱源に触れるから燃えたり煙が出たりする。これを解決するにはもちろん上から加熱してやればよく、実際テーブルコンロなどの魚焼きグリルはそういう構造になっている。この手の機器はたいてい密閉式で、上からの加熱を開放式でやるサークルロースターとかいう機器もあるが、調理台が燃えない範囲の設定しかできないので火力に制限がある。開放式だと、昔からあるガスの卓上ロースターのように熱源とずれた位置から油が落ちるようにしたもの、カセットガス式グリルの一部に見られる斜め下から加熱するものなどもある。どちらにしても油は落ちるし落とさないと仕上がりがよくないわけで、七輪のようにあえて燃やしてしまうのでなければ汁受けは必要になる(というか汁や油が落ちないならオーブントースターでも焼ける)。汁受けに水を入れたりガス(燃焼すると水と二酸化炭素になる)を使うと水蒸気量が増えて蒸しに近い焼きになり、七輪のように水分が出ない燃料を使い食材も密閉しなければ純粋な焼きに近付く。

いろいろ検討した結果筆者は、ガスコンロ用の魚焼き器(下から順に、鉄板、発熱用セラミック網、焼き網と重なっているもの:セラミック網の上にゼオライトを入れてみたところ、使い勝手が微妙に向上した)で魚を焼くことにした。ポイントは火力調整と油のふき取りで、最初は強火で表面を焼き固め、滴るくらい油が出たらひっくり返してキッチンペーパーでふき取り、裏面も同様に焼き付け、ひっくり返す前に弱めの中火に落とし、表返して油をふき取り火を通し、裏面も同様に焼き火が通ってきたらまた強火、最後に両面とも強火で短時間焼いて仕上げる(ようするに、強火>中火>強火を両面でやる)。ちょっと鈍臭いやり方ではあるが、どうせ油は出るし落ちるので、燃えて煙にならないようにするには手で取り除いてやる以外にない。下に水を入れるタイプの電気ロースターも買おうかとは思っているが、テーブルでものを焼いて食べるという習慣自体にあまり馴染みがないし、加熱調理はやっぱり換気扇の下でやりたいという気もする。

炊飯器はガスでも電気でも大差なく、炊いた後保温ジャーとして使える電気式が便利ではある。土鍋での炊飯は筆者も何年かやっていたが、少量の場合に向く一方、ガスコンロが1口塞がるのと面倒を見なければならないのがネック。どの場合も容量と実際に炊く量を合わせるのがポイントで、1〜2合炊きの炊飯土鍋は容量いっぱい、たいていの3〜4合炊き炊飯器は3合炊くのがもっとも仕上がりがよい。半端な量を炊くよりは余った分を冷凍した方が(すでに触れたようにエネルギーは無駄に消費するが、労力や仕上がりも含めて総合的に考慮すると)効率がよいと思う。大量に炊くときは圧力鍋(筆者が持っているパール金属のクイックエコは、3.5Lが5合の5.5Lが8合まで炊けるが、3.5Lで5合炊くのが扱いやすいと思う)を使うとラク。米の炊き方については土鍋でご飯を炊くのページを参照(圧力鍋炊飯の紹介もここ:オマケの項を参照)。



結論から言うと、樹脂加工のIH対応16cm片手鍋、IH対応21〜22cm寸胴(できるだけ深いもの)、27cm中華鍋と揃えれば基本的なことはほぼできる。ガスをメインにするつもりでも、片手鍋はIH対応の方が便利。ガスが使えない場合中華鍋はムリなのでフライパンかなにか用意しよう。寸胴はお好みで樹脂加工でもステンレスでも(酸やアルカリに弱いのでアルミは避けた方が無難)。これだけで満足した人は次の項まで読み飛ばそう。

前提知識

鍋のサイズは内径の一番大きいところを表示するのが普通で、円柱に近いシェイプの鍋でも鍋底の平らな部分の直径(底径)は表示サイズよりも1〜2割小さい。内径と高さがほぼ等しい円柱シェイプの両手鍋を寸胴と俗称し、高さが内径よりもあきらかに大きければ深寸胴、高さが内径の3分の2くらいなら半寸胴と呼ばれる。普通の片手or両手鍋で深鍋と呼ばれるのも半寸胴と似たようなサイズで、高さが内径の3分の1くらいだと浅鍋に分類される(これらの中間が普通サイズ)。IH調理器は機種ごとに鍋の大きさの制限があり、それを外すと動かない。ガスの場合、小さすぎると鍋が焼損するし、大き過ぎると一酸化炭素中毒事故の恐れがあり、通常タイプのコンロでは五徳からはみ出るような鍋を使ってはならない(生命に関わる問題なので、実際に使用するときはコンロの取扱説明書を確認すること)。

20cm鍋だと3.5KWくらいのバーナーでも炎が無駄になることがある(筆者が持っている21cm寸胴(底径19cmくらい)は3.5KWバーナーでギリギリ炎がはみ出ない程度:ガスの火は最外周の見えない部分が一番高温なのではみ出さないだけでは十分でない)。底広ケトルとか省エネやかんと呼ばれるやかんが底径22cm前後なので、その辺が強火で使えるラインになっているのかもしれない(当て推量)。ただし大きければよいというものではなく、鍋が大きくなると少量調理に向かなくなるし、放熱量が増えて効率も落ちる。IH調理器を使う場合、鍋底13〜24cmくらいが無難に使える範囲になる(ただし揚げ鍋やオールメタルIHはサイズ制限がもっと厳しい)。調理可能なサイズでも、あまり小さいと加熱効率が落ちるようだ(コイルをフル稼働できないためだと思う、多分)。2016年現在の筆者の認識では、21〜22cm寸胴をもっとも効率よく加熱できるのは内炎式のガスだろうと思う(安全センサーの設置義務化で家庭用据え置きタイプは全滅したため、イワタニのエコプレミアムなどカセットガスしか選べない:ドリップケトルや片手鍋などにも適するので、あれば便利ではある)。

鍋の厚さは熱の広がり方に関与する。厚いと鍋全体が均一な温度になりやすく、薄いと加熱された場所に偏って高温になる。とくに底の厚さは熱源との兼ね合いがあり、すでに紹介したようにIH調理器などは過熱される箇所が偏っているため厚い底にしないと均一に火が回らない。反対に中華鍋などは、ガス火で丸い鍋底全体が加熱されるため極薄のチタン鍋なんかも使える。厚いと鍋自体を熱くする(余熱)ための時間が延びるため、短時間調理には薄いものの方が効率的。長時間調理であれば最初に1分やそこら違っても大差にならないし、温度の安定性(保温力)も高まるため厚いものが向く。

家庭で中華鍋(他の鉄鍋の事情は知らない)を使う場合、2度洗いで手入れするとキレイに使える。使ったらササラかタワシでざっと湯洗いして、鍋を焼き、本格的に湯洗いしてからまた焼く。毎日使う鍋なら、月に1回くらいは金属タワシをかけて、年に1回くらいはクレンザーも使って鍋の表面を均しておくと、より使いやすくなると思う。何日か使わない場合は、キッチンペーパーなどで薄く油を引いておく(「塗る」ほど大量の油は必要ない)。

基本の3種

片手鍋は14cm1.2L前後のものと24cm(普及品の最大サイズで、普通の深さだと3.5Lくらい、深鍋シェイプのもので5〜6L)のものがあると合理的に使えるのだが、14cmだと袋入りの即席めんを茹でるときに入り切らないし、機種によってはIH調理器にはじかれることもあると思う(筆者が持っている16cmの片手鍋で底径13.5cm)。24cmでも底径は20〜22cmくらいで、3.5KWの外炎式ガスバーナーがギリギリ強火で使えるくらい、小さいものはIH調理器の方が相性がよい(軽いとひっくり返りやすいし熱容量も稼げるのではり底のIH対応鍋が便利)。筆者の場合、少量の揚げ物や1人前くらいのパスタ茹で(ロングパスタは折る)も片手鍋でやってしまう。片手鍋でできないことをどうカバーするかという考え方で他の鍋を揃えるのが合理的だと思う。熱源が対応しているなら、12〜13cmくらいの極小鍋(ソースパンとかミルクパンという名前が多く、たいていホーロー)があるとさらに便利。

両手鍋は用途によって必要なものが異なるが、比較的万能に使えるのは、内径20〜24cmくらいの寸胴または深寸胴だろうと思う。容量が多いのでIH調理器(100V卓上型の場合、高火力を持続できる時間がかなり短い)よりはガス(瞬間的な火力はさほど出ないが、比較的高い出力を長時間持続できる)を使いたいのだが、外炎式バーナーだと炎がはみだす場合もあると思う(26cmの寸胴は家庭用のものが少なく、売れ筋は21〜22cmの模様)。水の量が多いと加熱に必要な時間も増えること、スパゲティ(ロングパスタ)を茹でるときにそれなりの高さが欲しいことから、細めで深めのものを探すのがよいと思う。いわゆる文化鍋だとかシチュー鍋みたいなものは、寸胴さえあれば必要ないだろう。

中華鍋は家庭で使うなら27cmがベストだと思う(とくに4.2KWクラスのガスコンロと組み合わせる場合:自分で持ってるのは30cmだけど)。少量の炒めに特化するなら24cmの方が火力を出せるが、応用範囲の広さも中華鍋の魅力のひとつなので、ちょっともったいない。中華鍋が使えない場合フライパンが必要だろうが、これはけっこう悩ましい。樹脂加工は急冷に弱く連続使用(使ってすぐ洗ってまた使う)がしにくい。かといって鉄鍋は手入れが面倒なので増やしたくない。ここはひとつ、少量の弱火〜中火調理は片手鍋に任せてしまい、24cmの鉄鍋を仕入れてみるのはどうだろうか(といいつつ筆者は20cmのを使っている)。いわゆるイタメ鍋とかディープパンとかいったものは中途半端で使いにくいと思う(というか、中華屋の目には中華鍋の出来損ないにしか見えない)。

あると便利なもの

揚げ鍋はあった方が便利で、口が広い方が使いやすく、揚げ油1.45L(1300gのサラダ油1本相当)くらいは使える容量が欲しい(取扱説明書の適正油量表示に従うが、普通のシェイプだと満水容量の1/3〜2/5くらい)。油の持ちを考えると、シリコン焼付塗装、アルミ、ホーローの3択だが、入手性を考えるとシリコン焼付塗装(揚げ物は、磨耗に弱いが高温に強い特性が活きる用途だと思う)が妥当か。中華鍋を揚げ物に使う場合、27cmで満水3L強なので、油は1000gくらいにしておくのが無難だろうか(鍋の形状と容量による)。一度に揚げられる量、というのも揚げるものによって異なるが、油の半分くらい(1.45L=1300gの油なら650gくらい)までにしておくのが無難。

圧力鍋はとても便利である。自炊用なら小さいもので十分だが、筆者はは5.5Lと3.5Lを両方買ってしまった(パール金属のクイックエコ:本当は5.5Lでなく7Lくらいのものが欲しかったのだが高かったので妥協した)。煮込み料理(角煮とか煮付けとか)がラクにできるメリットはもちろん、圧力鍋で蒸すとものすごく濃厚なスープが取れる(常に高温高圧の蒸留水に触れるのだから当たり前)。たいていの具材はカラカラの出汁がらになり何の味も残らないほど。ただし魚出汁などは臭みも(圧抜き後しばらく沸騰させると多少飛ばせるが)完全抽出されるのであまり向かないし、昆布のように過熱するとえぐみが出るものにも向かない(鳥や貝などに向き、生姜湯も作れる)。このスープはそのまま使うと濃すぎるので、カツオや昆布など普通の出汁で割って使っている(どちらも製氷皿で凍らせて保存)。

筆者は保温鍋(パール金属のエコックの一番小さい3.2L)も買ってしまったが、出番はそれほど多くないものの茹豚作りにはたいへん便利である。茹豚以外の用途では、中身が少ないと保温効率が落ちるのが悩みどころ。5.5Lの圧力鍋や30cmの中華鍋との相性はよいのだが、ぶっちゃけ1人だとそんなに作っても余る。スープポット(和平フレイズのFLR-6865:400mL)も買ったが、これだと調理用には小さい(保存用にはちょうどいいけど)。1.3Lくらいのステンレスボトルで口が広いものを調理用に買ってしまおうか悩み中。



包丁など調理器具

包丁は、ペティ(12cm)、牛刀18cm、牛刀24cmで3本揃えるとよい。ぶっちゃけ牛刀18cmだけあればたいていのことができる。中華包丁が欲しいなら30号サイズがオススメ(これがあれば牛刀24cmは省いてもよい)。まな板は大きいに越したことがないが、小さいのも用意しておくと便利。手入れがラクなので筆者は皮むき(ピーラー)をセラミック刃のものにしており、ペティもセラミックでよかったかもなぁと少し思う。大きな魚を捌くなら出刃はあった方がラクだが、中華包丁でもやれないことはない。おろしがねは普通の穴あきプラが結局使い勝手がよいと思う(セラミックのツブツブ皿も便利だけど収納でかさばるのよねぇ、アレ)。

鉄鍋を使うなら中華お玉が断然よいが、手入れが面倒なのでプラもあると便利。灰汁取り、カス揚げ、味噌漉し、すくい網、菜箸、計量カップ、計量スプーン、しゃもじあたりはまあ普通のものを。油やスープを漉すときに20cmくらいの巨大漏斗(米とか豆とかに使うのが本来だそうな)とすくい網を併用すると、なかなか便利である。筆者はこの辺の調理器具をほとんどダイソーで買った。フライ返し、木ベラ、ゴムベラ、泡立て器、トングあたりは、必要になってから買っても遅くない。お玉や菜箸は、中華鍋や片手鍋などと一緒に換気扇のフードにマグネットフック(「超強力」と書いてあるやつ)をつけて吊るしている。

油入れはホームセンターで買ったガラスビンを使っている。油は光を嫌うが台所の下なら暗いし、金気も嫌うのでビンの方がいいかなぁと。雑用油は大きめの急須(茶漉しがステンレスのやつ)に入れた。調味料入れは平凡なデザインのものの方が使いやすいと思う。砂糖、片栗、塩をケースに入れた上に香辛料を乗せているが、使用頻度が低いものは冷暗所に保管した方がよい。プラスチックのストッカーケースは地味に便利で、冷蔵庫の中に嘘野菜室を作ったりもできる。密閉容器については次のページでもまた触れる。

挽臼はちょっと注意が必要。油が出るものや香りが強いものには専用のミルを使いたいところだが、あまり数を増やすのも考え物である。そこで、ゴマとコショウだけ専用のミル(保管容器を兼ねるやつ:どっちもセラミック臼がいいと思う)を用意して、それ以外のものはプロペラ刃のコーヒーミル(安い奴でいい)を使い回し、どうしても挽きにくいものだけすり鉢を使うのが妥当だと思う。使い回すときはとくに清掃のしやすさが重要なので、カッター系(コニカル刃とか)や臼系(いわゆるグラインダー)など閉鎖度が高いものは使いにくい。すり鉢は究極のフルオープン形式(まな板2枚で挟んでハンマーで叩くとか、そういう反則系を除けば)だが、汁や油が染み込まない素材のものが無難(この用途であれば)。焙烙(焙煎土鍋のことで「ほうろく」または「ほうらく」と読む:形状はさまざまで浅いミニ北京鍋みたいな感じのものから注ぎ口とフタがない急須のようなものまである)は、ほうじ茶でも作るのでなければ中華鍋かフライパンで代用できる。

製氷皿はダイソーで買った5個タイプ(いちばんデカい氷ができるやつ)を飲み物用に、容量が一番大きかったもの(氷1個がちょうど25ccで重宝している)をダシ用に使っている。密閉容器はセブンイレブンとホームセンターで買った。密閉度が高く蓋を外さないとレンジにかけられないタイプと、密閉度が低くそのままレンジにかけられるものを使い分けると効率的。密閉度が高い容器は、冷凍庫に入れる前に荒熱を取ったら蓋をあけて閉め直しておくとよい(冷やすと脆くなるので、吸い付きすぎると割れることがある)。



台所(オマケ1)

「こうなってるとよい」なんて言われてもどうしようもない話ではあるが、しかしこうなっているとよいやり方はあるので触れておきたい。以下右利きであることを前提に話を進める。

配置は、左に加熱調理器、真ん中に調理台、右にシンクが原則である。鍋から器に料理を移すとき右側に食器を置いておくのが自然な配置だし、シンクの左端にくずかごがあれば調理台から切れ端を捨てるのもスムーズである。贅沢をいえるならシンクの右側にも台(なければ電子レンジラックかなにかくっつける)があると理想的。なお、加熱調理器は部屋の隅に置くべきだというのが筆者の主張で、端から離れたレイアウトの部屋にも住んでいたことがあるが、調理の煙が部屋中に広がって最悪だった。キッチンにカウンターを作りたいならシンクや加熱調理器の反対側に置けばいいのに、と思う。

冷蔵庫・冷凍庫には直冷式(庫内の壁が冷却器になっている)と間冷式(ファン式)がある。直冷式は静粛性やエネルギー効率に優れるが霜取りの手間がかかり、間冷式は自動霜取りだが霜取り作動時に庫内温度が上がる。容量はまあ使い方次第なのだが、冷蔵庫のドアポケットは大きい方がよい。個人的には合計170L(125L+45L)クラスのファン式冷凍冷蔵庫+100Lクラスの直冷式上開き冷凍ストッカーというのが理想(ストッカーがあれば冷凍冷蔵庫の冷凍室は小さくて大丈夫だが、ちょっとした冷凍物は手が届きやすいところに置きたいし、霜取り時のバックアップにも使いたいので、ないよりはあった方がよい)だと思うのだが、なにしろ置き場所に困る。国内主要メーカーのものは合計170Lを境にリサイクル料金が変わるのでいちおうチェックしておこう。

ドアポケットの容量は意外と重要で、筆者は冷蔵94L+冷凍44Lのファン式を使っているのだが、ドアポケットには水、麦茶、牛乳、オレンジジュースのパックを置いたらいっぱいで、醤油、酢、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、中華味噌やオイスターソース、チューブ入り練り調味料、4.2Lプラケース(嘘野菜室を作るためのもの)などが下段を占領しており、上段に卵と梅干と香味油を入れると、完成品の料理は丼で2つくらいが限界(元は4段式だが、1段抜いて、中段を目いっぱい狭くして、2段式に近い状態で使っている)。本当は料理酒や味醂も冷蔵したいし、生姜水なんかも作っておきたいのだが。冷凍庫には、氷、ダシとか蒸汁とか(これが場所を取る)ご飯、、茹豚、ボイルニンジン、香味野菜各種、パンあたりが入っており、7割方は常に埋まっている状態。

細かい話だが、腐敗する生ゴミはポリ袋(保存用に使った余りで十分)に入れ密閉して捨てた方が、ゴミ箱が臭くならない。空気は漏れるが湿気は抜けない程度の半密閉を保つとたいへん臭くなる。三角コーナーはステンレスのを使いたいのだがシンクが錆びるのも嫌だし、悩ましい。家のシンクは狭いので、中華鍋を洗うときにプラの三角コーナーを焦がさないかハラハラする。



料理の取り方(オマケ2)

まあ「食べやすいように食べればよい」という考えにも一利なくはないし、犬のエサを入れる皿に口をつけて掻き込んでも食事ができないわけではないが、普通の屋内で座って食事をするときは、ある程度「一般的な取り方」に倣った方がよいと筆者は考える。また外国の料理を真面目に作る場合、食べ方にも注意を払った方がよい。外国人がどんなに上手に寿司を握っても、それを握り箸で突き刺して食べているのを見れば、日本人は「わかってねーな」と思うはずである(ちなみに筆者は、さすがに散らし寿司を手では食べないが、握り寿司や巻き寿司なら許される限り手で食べたい派:とくに長巻きを箸で食べるのには、オニギリを箸で食べるのに匹敵する違和感がある、と思う)。

どんなジャンルの料理にも共通する大前提として、同じ文化圏の成人であって「人間並みのものの食べ方を知っているような奴ではない」と思われていない限り、マナー違反は故意だと受け取られる行為である。まずは食事を出す(もてなす)側に「きれいに食べられるように盛り付ける」義務があり、キレイに食べられない盛り付けで食事を出すと「お前は人間未満だからエサでも食ってろ」という侮蔑の意を示すことができる。反対に、汚い食べ方をすると「これは人が食べるようなものではない」という、これまた軽侮のメッセージになる。またカジュアルな食事にガチガチのフォーマルマナーを持ち込むと、強烈な嫌味を伝えることができる。

人の感性の深いところに作用するのか、食事を通じた侮蔑のメッセージには、ものすごい威力がある。とくに飲食店で賄いを汚く食べると激しい怒りを買う(厨房の人間は料理の盛り付け方や食べ方を知っているのが建前で、また料理を大切に扱わなければならないという意識があって当然だという前提があり、実際には客に食い散らかされても文句が言えないフラストレーションもある:ホールの人間にも当てはまる事情ではあるが、仕事の場所がやや遠いので、厨房の人がやったときほどは怒られないことが多い)。とはいえチンタラ食べているとそれはそれで睨まれるため、飲食店の下っ端にとって素早くキレイに食べる技術は必須といえる。

話を戻そう。盛り付けられた料理は、原則として、手前からor左からor上から取ってゆく。和食の場合食器の上を跨ぐor跨がせる(袖越しとか渡し箸とか)のはよくない。魚を食べるとき、身はひっくり返さない。一汁三菜で配膳するときは、手前列が左から飯、香物、汁、奥列が左から副菜、副々菜、主菜になる(主菜の皿は持ち上げずに食べる前提:流儀によって多少の差異あり)。

中華食器の散蓮華(レンゲ)は、人差し指を上から窪みに沿わせて、親指と中指で支えて3本指で持つのが本来(左手で粉末の調味料を取るときと似たような格好)。中華以外にも使われる食器なので必ずこの持ち方でないといけないことはないが、正しい持ち方がしにくいレンゲは他人に出さない方がよい。取り分けるときは別として、食べるときに器は持ち上げない。

ナーンやチャパーティ(パラーター)を手で食べるときは、右手で食べる(ヒンドゥーとイスラームで左手に対する意識が違うし、他の文化圏の人たちが同じメニューを違う食べ方で食べることはもちろんあるが、少なくとも、左手で食べるよりはナイフで切ってフォークで食べた方がまだ見やすいと思う)。ヨーロッパ式のピザ(1人1枚で、切れていないものが出てくる)も座って食べるときはナイフとフォークを使うのが普通。筆者自身は、自分の文化圏のやり方で食べるのは悪いことではないと考えており、洋食でも箸で食べることが多い。



すごい刃物屋さん(オマケ3)

ネットで見つけた面白い刃物屋さんに有限会社トヨクニという会社があり、メーカーと問屋と小売をごちゃまぜにしたような雰囲気で、商品ラインナップがとても凝っている。

筆者自身は最初、杉本やミソノの製品を扱っている小売店として見つけたのだが、包丁各種はもちろん、日本式の山刀や輸入物のナイフ、プロ用の斧鎌鉈鋤鍬に、果ては(なぜか)そうめん流し器まで取り揃える、意味がわからないほど手広い刃物屋さんだった。

どうも日本刀の技術がウリの会社らしく、模造刀も扱っているし、一部の製品には職人さんが赤熱した鋼を叩いている写真とともに「在庫切れの場合は、十日前後かかります」の注意書きがある。こんなに気合が入っているのに、ナニワのチョコレー砥や中京のサビトールみたいな製品も普通に売っているのがまた、味わい深い。



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