いろいろな炒飯を作ろう


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前回やったプレーン炒飯がなんとか作れるようになった、という前提で話を進める。炒めに必要な技術の半分近くはすでに習得できているので、知識や経験を補うことでどんどん幅を広げられるはず。いろいろな種類の炒飯を作りながら、中華の基本的な調理方法をいくつか紹介したい。



蛋花塩炒飯

いきなりだが最初は具を減らす。技術的な事項の確認のためである。

卵がメインを張る(他は薬味のネギくらい)炒飯を一般に蛋花炒飯(タンホワチャオファン:ちなみに卵スープは蛋花湯、エビタマは蛋花蝦仁)というのだが、ここではさらに突き詰めて、飯と卵と油と塩だけで作る(蛋花塩炒飯という名前は筆者がさっき付けた:本来なら塩は鹽と書くはず)。ぶっちゃけうまい料理ではまったくないが、ちゃんと炒めればまずくもならないし、炒めに失敗するとすぐにわかる(卵の香りが出ずにゆで卵みたいな匂いになる)。上手く作れなかった人は反省してプレーン炒飯から練習し直そう(腕が伴わないうちに卵だけ炒飯に挑戦すると、失敗の方が多くなって心が折れると思う)。

あんかけ炒飯の飯部分や、作り置きの炒飯種がこれと似たような構成だったりする。塩味はかなり薄めにしておこう。



大蝦炒飯

エビが入った炒飯を作るのだが、大蝦というのはブラックタイガー系のエビ(大正エビとか)のことで、対蝦ともいうらしい。単に蝦炒飯と呼ばずわざわざ断っているのは、桜花蝦炒飯(櫻花蝦炒飯)という桜エビを使った別のメニューと区別するため。まあようするに日本人が「エビ炒飯」と聞いてイメージするあのエビ炒飯である。

ここで初めて上漿(シャンジャン:下ごしらえのことで、略してチャンとも)が出てくるわけだが、実は、エビのチャンはけっこう上級の技術である(正直に言うと、筆者は仕事でやったことがなかったりする:まかないで大蝦炒飯を作ったことは何度かある)。肉や魚介の上漿を極限まで抽象化すると「洗って絞って酒を吸わせる」というコンセプトで、食材に合わせて、洗うところで塩や片栗を使ったり、酒を吸わせるところでネギや生姜など香味野菜を使ったりといった工夫をする。油通しをするときは下味を薄く付けて卵と片栗の衣も付ける。なお、上漿粉(シャンジャンフェン)とかいう唐揚粉みたいなものも市販されているらしいが、筆者は実物を見たことがない。

材料は飯と卵とエビとネギで、エビは大きい方がよい。火力がものをいうメニューで、中華レンジでないと難しいかもしれない。


大蝦の上漿と油通し

凍っている場合は解凍する。臭みが強いエビの場合はここで飽和食塩水や重曹を使うこともある(が、日本で売っているエビなら袋ごと水に漬けて差し支えないと思う)。背開きにして背ワタを抜き、塩もみして、ぬめりが出たら片栗粉と水を加えてもみ、しっかり水洗いして氷水で締め、布巾やキッチンペーパーなどで水分を搾り取り、塩コショウ酒(薄味に)をもみこみ、ぬめりが出たら(薄くまとわりつくくらいの量の)卵白を加え、馴染んだら片栗粉を(最終的にヨーグルトくらいの粘りになるよう)少しづつ加え、仕上げにサラダ油を垂らし、ひと混ぜ(ホントに軽く)して冷蔵庫で10分くらい寝かせる。卵と片栗を入れ過ぎると天ぷらみたくなるので注意(中が透けて見えるくらいの薄衣を目指す)。

馴染みのない作業が多いかもしれないが、エビのチャンには中華料理のコンセプトがよく表れている。というのは、味が抜けてもいいからまず臭みを徹底的に抜いて、風味が不足したら後から追加しようというものである。現在伝わっている北京料理なんかは元が宮廷料理なので、食材の使い方も富豪的だったりする。肉を水洗いして使ったりするのも、きっとそういう発想から来ているのだろう。

ポイントは、臭みがしっかり抜けるよう十分に塩もみすることと、氷水にさらした後(身が崩れない範囲で)キッチリと水分を搾り取ること、酒を十分に吸わせて水分とうまみを再補充すること。酒を吸わせた後に汁気が(残らないように心がけるが)残っていたら、捨ててから卵や粉を入れた方が無難。なお中華屋では、解凍や血抜きのために食材を水に晒す場合、ボウルに入れて水を細く注ぎっぱなしにするか、水を張ったボウルに放しては両手でザルに掬う作業を繰り返すことが多い(水で戻した乾燥キクラゲを洗うときなんかも同様:水の中で汚れをほろい落とすようなイメージで、カスが舞い上がらないようやさしく掬う)。

エビが落ち着いたら水分を吐き出す前に油通し。やや低めの温度で表面の水分だけを飛ばし吸い込んだ水分とうまみを閉じ込める(中を半生にしたいので大きいエビの方がラク)。金ザルかジャーレンに上げて油を切ったら高温の油でサっと炒めて表面を香ばしく仕上げ、また金ザルかジャーレンに上げておく。炒めた油はあとで使うので、水分を飛ばして器に取る。油通しができないorしたくない場合は、オイルスプレーで薄く油を付けてオーブンで焼けば似たような仕上がりになる。


炒める

この炒飯を上手く作るには、大蝦の上漿と鍋の手入れが非常に重要である。比較的低い温度で炒めるため、鍋の状態が悪いと仕上がりが悪くなる。反対に、下ごしらえをちゃんとやって鍋をしっかり焼けば半分勝ったようなものだったりする。

油を返したら少なめの油(皿に取っておいたもの)をやや低めの温度にして、やや少なめの溶き卵を鍋に(少なめとか低めと書いたのは、あくまで「プレーン炒飯よりは」という意味:油の温度は煙が少し出る程度)。膨らむのを待たずすぐに飯を入れ手早くほぐしたらひたすら鍋を煽る。中華料理にあまり馴染みのない人がぱっとイメージするような、煽りっぱなしの炒め方をするのだが、鍋を火から離さずに煽らないと(ガンガン煽っているわけだし)温度が下がりすぎてベチャベチャになる。マンジュウの手前の部分を支点にして、鍋を五徳から浮かせないようにするのがポイント。

飯の表面の水分が飛んだらネギとエビを入れてやや薄味に味付け、また煽って馴染ませる。エビは別で味をつけてもよいのだが、塩分で引き出された水気を飛ばさなければならないので一緒の方が話が早い。仕上げ油はネギ油あたりがよいと思うがごま油でも差し支えない。盛り付けるときはエビをお玉で拾って、上に炒飯を被せて、皿に返すとてっぺんにエビを持っていける。


エビ油を作る(オマケ)

エビの殻と頭が残っていると思う。これを使って蝦油(シャーユ)を作ろう。作り方は簡単で、鍋にエビの殻と頭を入れ、浸るくらいの油(サラダ油でよい)を注ぎ、泡が弱く出てくるくらいまで熱したらそのままの温度をキープ、エビがカリカリになって香ばしくなるまで煮出すような感じにするだけ(加熱が終わったらゆっくり冷ましてから漉す)。だんだんと水分が少なくなっていくので、焦げすぎないよう火加減は適宜調整する。

エビ油は仕上げ油として有用で、炒め物全般に使える。もちろんエビ炒飯に使っても悪くないのだが、エビの押しが強くなりすぎるというか、クドい感じになると嫌なので筆者は使わない(不思議なことに、カニ炒飯に使うとものすごく合う)。野菜炒めや、あんかけの仕上げ(化粧油)なんかにも使える。

同様の作り方でネギ油(ツォンユ)も作れるし、鳥の脂身とネギを(他の油を足さずに)じっくり加熱すると鶏油(チーユ:鳥油)も作れる(鳥油はタンメンの仕上げにちょうどよい)。ネギ鳥エビあたりの油は既製品も売っているが、自分で作った方が風味よく仕上がるし、せっかくエビの頭が残っているのだから使った方がお得だと思う(ただねぇ、普通に作ると多すぎるんだよねぇ)。



醤油炒飯

これはたしか福建の人の店で出していたものだったか、正確には覚えていないがとにかく筆者が修行しているときにどこかの店で食べたもの(を筆者が想像で再現したレシピ)である(醤油はジャンユーと読む)。

準備はプレーン炒飯と同じでよいが、塩の代わりに醤油を使う。だいたい、醤油大匙1で塩小さじ半分くらいの塩分だが、風味が強い調味料なのでやや量を控えめにする(中国醤油を使った方が仕上がりがよいのかもしれないが、普通の醤油でも差し支えない)。これも強い火力が必要なメニュー(だってしょうがないじゃない、中華屋で作ってるメニューをパクって紹介してるんだから:家庭でも、4.2KWクラスのコンロと小さめの中華鍋と少しの技術があればモドキは作れる)。肉を少し多くするとボリュームが出る。


炒める

この炒飯は卵を溶かずに使う。油を返したらプレーン炒飯と同じように油を熱して、お玉に割り入れた卵を鍋に入れ、手早く卵黄を壊して混ぜすぐに飯、ほぐして炒めて、温度が上がったら煽って温度を下げ、また温度を上げては煽ることを数回繰り返す。少しパサっとしてきたところで具を入れて、醤油を(鍋肌ではなく飯に)さっとまぶして煽る。醤油を鍋肌から入れないのは焦げ過ぎるからで、中華鍋と中華レンジを使っている限り、わざわざ鍋肌から入れなくてもちゃんと焦がし醤油になる。醤油の水分が飛んだら白コショウをかけてひと混ぜ、仕上げ油はごま油でもよいが、エビ油を使うと風味が出る。醤油にグルタミン酸が含まれているので、味の素は必須でない。入れるとしてもプレーン炒飯よりさらに控えめに使おう。

油が切れる手前(完全に切れていると飯が醤油を弾かない)と醤油を入れるタイミングを一致させるのがポイントで、仕上げ油でトドメをさす。醤油を入れる瞬間に、水分は少なく、油分は飯の表面を薄くコーティングするくらい、温度は高め(あまりに温度が低いと醤油を入れたとたんに鍋にくっつくし、醤油の水分を飛ばすのにモタつくと粘りが出る)になっているよう調整する。軽い食感とやや濃いめの風味が両立できれば勝ち。醤油はお玉から入れないと混ぜるまでにモタついて一部の飯にだけ染みてしまうので注意(前のページで練習したのと同様、お玉に醤油を入れたまま混ぜ始めるような意識で:外側>中心>外側と往復する渦巻きの動きにするとやりやすいかも)。

黒っぽい色に仕上がるので、紅しょうがを添えたり、お好みによってはドライパセリなんかを振っても面白いと思う。炒飯とビールという(ちょっとゲテモノにも思える)組み合わせが好きな人にはもってこいだろう。醤油の風味がキツ過ぎると感じる人は、醤油を減らして塩を入れるか、風味の穏やかな醤油を使おう。



気合炒飯

名前の通り、気合が入った炒飯である。


限界に挑戦

材料も作り方もプレーン炒飯と変わらない。ただ、温度管理を限界まで厳しくして、油が黒くなる寸前の温度をずっとキープし、なおかつ極力煽らないで作る。言葉で書くと簡単だが、生半可なことではなく相当難しい(これをいわゆる「半チャーハン」でやろうと思うともっと難しい)。火力は強すぎない方が無難で、1人前なら中華レンジの最大火力は必要ない(頑張れば最大火力でも作れるが、頑張ってもメリットがないと思う:よく手入れしたコンロで39cm鍋に2人前作るときで最大火力がちょうど快適なくらい)。

鍋の温度を高く保つと、それだけ蒸発する油が増える。すると最初に入れる油の量を多くでき、溶媒が増えると(絶対量に対する濃度が下がり)溶け出す溶質も増え、風味を濃厚にできる。さらに、いったん卵に吸わせた油をしっかり焼き飛ばすことにより、多めの卵を使ってもクドさを抑えられる。筆者は最初ラードを使うレシピで習ったが、慣れたら大豆白絞かこめ油を使って肉から出る油が混ざるようにする。

なぜ煽らないのかというと水分を飛ばさないためで、煽ると油分よりも水分が先に蒸発してしまう(鍋を返すことまでは禁じ手にしない)。油が切れる寸前に具材と調味料を入れて混ぜ、わっと煽って塩分で引き出された水気を飛ばし、ごま油で仕上げる。

とにかく、卵の風味を油に移して、それを濃縮することに一点集中する。これを習得するには、何度も炒飯を焦がさなくてはならない(焦がして初めて「焦げる寸前」のラインがどこにあるのかわかる)。当然ながら、鍋と油の管理は万全である必要があるし、鍋の面積を有効活用してできるだけ多くの食材を高温に保たなければならない(狭い面積で熱すると、鍋肌に触れていない食材の温度が下がる)。鼻と目と耳に神経を集中させて、鍋に気合を注ごう。


思い出話(オマケ)

実は、筆者が最初に習った炒め物がこの炒飯だった。今にして思えばとんでもないスパルタだが、苦労に見合う収穫は得られたつもりでいる。目鼻がつくまで何度炒飯を焦がしたか覚えていないし、当時は夢にまで炒飯が出てきたものだが、いい先輩に出会えて本当に幸せだった。

別の(チャーハンがメニューにあるが中華屋ではない)店での話だが、筆者が元中華屋であることを承知の上で「チャーハンを作るときはねぇ、煙が出てくるくらいまで油を熱くしてから炒め始めるといいんだよ」と教えてくれた、たいへん親切な人もいる(いちおう断っておくが、ジョークで言っている雰囲気はまったくなく、真顔でこう言われた)。モノを識らないというのは本当に恐ろしいことだし、勉強しなくて済む環境に身を浸すと誰でもそうなってしまう可能性がある。

ともあれ、この炒飯を作れるようになる頃には、食材の香りや炒めるときの音に敏感になっているはずで、他の店で炒飯を食べると(厨房が見えない店でも)作り方がなんとなくわかるようになる。うまいものに出会ったら自分用の賄い(中華屋はルーズなので様子を伺いながらなら割といろいろできる)で試して、うまくいったらほかの人にも食べてみてもらって、どんどん幅を広げることができる。



燴炒飯

あんかけにすることを燴(ホイまたはフイ)という(滷もあんかけだが、酢豚のようにソースっぽく使うものを指し、ちょっと異なる)。炒めてスープを入れて水溶き片栗粉で固めればよいのだが、これも中華に独特のやり方がある。ベースとなる卵炒飯は先に作っておく(卵を少し多めに:アッサリした風味を重視するなら、全卵5:卵白1くらいの割合で卵白を微妙に増やしてもよい)。


肉の上漿と油通し

具は、牛肉と青い野菜、シーフードと野菜(八宝菜みたいな感じにする)、カニ、小さめのエビなどいろいろあり得る。塩味が基本ではあるが、変わったところでは豚の角煮とか、マーボー豆腐やマーボー茄子をそのままかけたり、四川風にトマトなんてのもある。とりあえず牛肉(こま切れ)でやってみようか。

チャンのポイントはエビのときと同様なので思い出しておこう。まず、赤い汁が(目立つほどは)出なくなるまで肉を水で洗い(というか、すすいでは水替えを繰り返す:ボウルに水を細ーーーく注ぎながら放置する手もある)、身が崩れない範囲でしっかりと水分を搾る。酒と醤油と酢を3:3:1くらいで混ぜて肉に吸わせ、卵(卵白でもよいし、牛肉は元が色黒なので全卵でもよい)をあえて片栗でコーティングし、油で仕上げ少し寝かせる。パイナップルの汁や刻んだタマネギで肉を柔らかくすることもあるし、エビと同様重曹で洗うこともあるが、こま切れ肉なら必要ないと思う。薄切り肉なら酒を吸わせる時間は15分くらいでよく、卵と片栗を入れすぎないようによりいっそう注意したい。

あとは揚げて油を切るだけ(薄い肉は油が切れにくいので、揚げ物シートみたいなもので吸い取ってもよい)。野菜も油通しをしておいた方が仕上がりがよいが、肉よりは低めの温度で揚げる。半分くらい火を通せばよく、余熱も合わせて7分目くらいの仕上がりになる。


あんかけを作る

まず炒めるのだが、炒飯を作るときよりは炒め始めの油温を低めにする。卵と違い野菜には自由水になる水分が多いので、温度が高すぎると燃え上がる。食材にはすでに火が通っており炒め時間が極端に短いので、油は少なめに使う(蒸発しないから)。また香爆をしておいた方が風味がよい。

ということで、油を返して少し煙が立ってきたらネギと生姜と叩いたにんにくを入れ、香りが立ったら食材を入れ、表面を焼いたらスープ(熱いもの)を加え、塩と酒で味をつけ、沸騰したら水溶き片栗粉を入れる。香味野菜を取り出すタイミングは好みだが、食材を入れる前の方がトラブルが少ないと思う(取り出さない、という人も中国人を中心に一定数いる:筆者も自分しか食べないときは取り出さないことが多い)。

片栗粉はボウルに入れておき、左手で溶いて使うのが中華屋のやり方。水溶き片栗粉というよりは水が乗った片栗粉の状態で冷蔵しておき、溶くのは使う直前。3回くらいに分けて鍋に入れるのがポイントで、入れるたびに鍋を返しつつお玉でくるりと混ぜる(のだが、上手い人はお玉で混ぜなくてもキレイに仕上げる:筆者には真似できない芸当)。片栗でもココアでもホットケーキミックスでも、粉を使うときは少しづつ液体と混ぜるのが基本である。餡はほんの少しユルめにしておき、沸騰させて水分を飛ばすことで硬さを調整する(ただし、あまりしつこく沸騰させるとグズグズになる)。

ちなみに、左手で片栗や粉末調味料を取った後はお玉で水を掬ってレンジの上で洗う(というか漱ぐ)のが一連の動作になっているが、今になってよくよく考えると、片栗や粉末調味料を取る前に手を洗う人はまずいない。うーんまあ、左手は食材と鍋と調味料くらいしか触らないし、それ以外のものを触ったら石鹸で手洗いするし、生食する食材や作り置きする食材を触るときはやっぱり手を洗うし、どうせアホみたいな超高温で加熱調理するし、まあ大丈夫なんじゃないかと思う、きっと。

ともあれ、程よい硬さになったら仕上げ油(化粧油)をたらしてひと混ぜ。やはりごま油が万能に使えるがエビ油も捨てがたく、シーフード系のあんかけには特に合う。ネギ油あたりを仕上げに使い乾燥桜エビなんかを乾煎りして乗せても、汁気のある餡とカリっとした食感の組み合わせが面白い。ごま油で作ったラー油なんかもありだろう。スープが入るため使える調味料の幅が広く、醤油味にもできるし、オイスターソースやXO醤を使うこともできる。



揚州炒飯

いわゆる五目炒飯であり、高級メニューでもあるが、正直なところ筆者はちゃんとした作り方を知らない。だったら取り上げるなと言いたいところだろうが、面白い調理方法なので眉に唾をつけて読んで欲しい。


作り方が変わっている

本当は長粒のインディカ米を使うが、固めのジャポニカ米(ただし普通の水加減)でもまあよいだろう。卵は錦糸卵にする(とはいっても日本の錦糸卵とは異なり、熱した揚げ油に細く卵液を流し込んで作り、ザルにあげて油を切っておく)。具材は、小エビ、蒸し鶏、戻した干しシイタケが必須、ナマコやアワビやホタテ貝柱を干して戻したものや、蝦子(シャーズ:エビの卵の干物)や中華ハム(金華火腿は高いので中華っぽいハムで我慢しよう)があれば入れたいが、普通の店にはそんなもの置いてないと思う(中華屋だって、ない店の方が多い)。小エビ以外は小さく切る。

作り方は、まず戻し汁にスープを足して小エビ以外の具材を、煮含めるような感じで煮る(味は塩と酒が中心で風味付けに醤油を足す程度)。ここからしてこれまでの炒飯とはぜんぜん違う。エビを炒めて、汁を切った具材を加え、卵も加え、油が回ったら(=全体に馴染んだら)煮汁を加え、飯も投入。水分を飛ばして味を調えたら出来上がりとなる。

どうしてよくわかってもいないメニューを紹介したのかというと「悪い固定観念」を払拭するためである。炒飯といえば汁気を嫌ってパラリと炒め上げるもの、という考えは完全な間違いではないが、なにしろ中国は広いので、スープを使って仕上げる炒飯だって普通にあるし、高級料理として立派に認められており、現にうまい。基本となる調理方法はあるし、それを通して習得すべき技術もあるが、技術の使い方は自由である。もちろん、基本を外すからには工夫が必要で、卵の風味を出しにくいことを細さで補ったり、水分が染み込みにくいよう固めの米を使ったりする。


それがアリならこれもアリなんじゃない?

日本人が好きなタマネギとニンジンのみじん切りが入った炒飯なんかは、プレーン炒飯でいう肉の投入タイミングで一緒に混ぜると仕上がりがよい(もちろん、あらかじめ火は通しておく)。カニ炒飯(混ぜるタイプ)やホタテ炒飯も同様のタイミングが適する。具材を入れた後にコンソメスープとか料理酒なんかを少量ふりかけて、水分を飛ばして作る炒飯も変り種としては面白い(食材を鍋の中に広げてまんべんなく振り掛けるのがコツ:粘りが少ない液体なら霧吹きを使ってもよい)。

キノコ炒飯を作るときなんかは、上記に倣って煮込んでから使う手もあるし、あらかじめ(小さく刻んで)多めの油で炒め揚げにしておき、飯をほぐしたくらいのタイミングで入れるのも一案。油を吸う食材なので、卵と並列で調理するわけである。ヒラタケは炒めて、シイタケは煮て、マッシュルームは薄切り(片)の炒めにして仕上げに乗せて、といった具合にキノコづくしにしても面白い。

卵抜きの鶏炒飯にケチャップ(使いにくければ酒かスープで軽く伸ばしてもよい)で味をつけるとチキンライス的なものができる。これに卵焼き(中華では、プレーン炒飯の作り方と同様にして飯を入れる前に形を整え皿に取るような感じにする:エビ玉とかムースーローの卵はこの作り方)を乗せると中華風のオムライスが作れる(中華屋の気風として、洋食っぽいものや和食っぽいものは得意気に作るのが常である:実際楽しいしね、中華っぽくない料理作るの)。ソース味の炒飯にも挑戦してはみたが、筆者の腕ではうまくいかなかった(そばめしなんてものがあるくらいだから、やってやれないことはないのだろう)。



卵について(オマケ1)

卵には鶏卵規格取引要綱が定める規格があって、大小は重さで決められている。
LL赤色70g以上76g未満
L橙色64g以上70g未満
M緑色58g以上64g未満
MS青色52g以上58g未満
S紫色46g以上52g未満
SS茶色40g以上46g未満
卵の大きさ自体は鶏の体格で決まるようで、卵黄の大きさはM玉くらいを境にぐっと伸びで伸び悩む(なんでも生後8か月で器官の発達が止まるのだとか)。M玉は卵黄の割合が大きいと言われることがあるが、S玉とかSS玉みたいな小さい卵でなければ気にするほどは違わない。パック詰めの小売卵にはそのような分類がない(と思う、多分)が、業務用の箱詰卵には生食用の1級と加熱用の2級がある(特級は1級ベースで、より優れた品質のものが8割以上という基準だそうな)。

保存は鋭部(尖った方)を下にして冷蔵庫に入れるのが基本。凍らせると卵黄が固くなり全体にベチャっとした感じになるので、凍らせない方がよい(冷気がキツイ場所に置いてしまいがちなので冷蔵庫でも注意)。溶き卵は冷凍できるようだが家庭の冷凍庫では衛生上やらない方がいいらしい(と日本卵業協会のサイトに書いてあった)。冷蔵~常温の場合は一般に、ハンフリーの式と呼ばれる数式(86.939-4.109*温度+0.048*温度^2:サルモネラ菌が卵内部に混入していた場合に食中毒が起きるレベルまで増殖するまでの時間を基準にしている)で生食可能日数を計算する(10度で57日間、20度で30日間、30度で13日間)。



塩分について(オマケ2)

塩分の「効き」にはだいたいの段階があって、全体が100gに対して食塩相当量で0.9g(生理食塩水と同じ濃度)というのが、単品で量を食べられる目安になる。たとえば炒飯とかトーストとか、単品で食べることがある味付きの料理(味付き主食)のラインである。焼き魚のように主食と合わせて食べる前提の料理、カレーのルーやスパゲティのミートソースのようにかけて食べるタイプのものは、2倍の1.8gくらいが目安になる。

塩分の重量濃度が2%(食塩水100gのうち塩が2g)を超えたくらいからデンプンの糊化に影響を与え、パスタ類を茹でるときは2.5%くらいの濃度にするという(パスタ100gに対して水1Lとして、2.5%なら25gちょい=大匙2弱、というか大匙山盛り1くらい:ただし熱湯洗いで塩分を取り除く前提、そのまま使うなら1%くらいが限度)。海水の塩分は3%程度、平均的には食塩2.65gにマグネシウム塩0.53gくらい。魚介類の下茹でなどで「海水くらいの塩水」という場合、水3Lに対しにがり入りの塩を100gくらい使う(30:1)。

塩分の重量濃度が10%くらいを超えると保存料として機能するようになるが、そのままだとさすがに塩辛いので塩抜きが必要(市販の梅干が10%前後の塩分で、昔ながらの製法だと20%ちょっとらしい)。中華屋で塩抜きするものといえばメンマとザーサイで、メンマは鍋で茹で、ザーサイは切って洗って真水に漬けて絞る。一般に「呼び塩」と呼ばれるのは塩分を引き出すための塩ではなく、食品内部に過剰な水分が移動しないようゆっくりと塩分濃度を下げるための手法。

食塩水の飽和量(溶解度)は0~100度で重量濃度26~28%くらい(水100gに対して35gちょっと)。アルコールほどは親水性が高くないらしく、飽和食塩水にエタノールを加えると食塩が析出する。油脂やエタノールにはほとんど不溶。



炒飯の値段(オマケ3)

仕事でやってた頃は気にしたことがなかったわけだが、どのくらいかかるんだろうか。2016年現在の相場で計算してみたい。

前提として、飲食店のキャッシュフローは、家賃が売り上げの4分の1(都会の場合)だとか、家賃水道光熱費と人件費と材料費で1:1:1(「中小企業の経営指標」あたりがこれに近い数字)だとか言われる。地域による差異も大きいだろうが、ざっくりとしたところで、人件費以外の固定費1:人件費1:変動費1(1日5万円を25日売り上げて月125万円の年1500万円として、それぞれ年500万円)で原価率30%を想定してみよう。けっこう儲かりそうに見えるかもしれないが、パートさん1人に年100万円(扶養家族から外れるちょい手前)払うと自分の給料が400万円しかなく、そんなに繁盛している状態の数字ではない(サラリーマンと違い手取りがかなり目減りすることに注意:客単価500円で100食、800円でも62.5食ってのは、そんなに簡単じゃないと思う)。

なお上記はあくまで平均原価率で、大衆飲食店のメニューは単価が上がるほど原価率が高くなる傾向がある。というのは、安いメニューを注文した客も高いメニューを注文した客も受けるサービス(席の占有とか食器やオシボリの使用とか会計の手間とか)には変わりがないため、原価率を下げないと利益が確保できない(ハンバーガーショップのように、膨大な席数を用意して回転率をガンガン上げられるのならまた話が変わってくるのだと思う)。筆者の想像に過ぎないが、中国人が経営する大衆中華でタンメン500円、チャーハン500円、タンメンとチャーハンのセット(両方フルサイズ)650円みたいなゴムタイな価格設定の店が多いのは、回転率を問題にしているからなのだろう(実際、フルサイズ2発のセットを注文する客は、単品で注文する客と同じくらいの時間で帰る)。ここでは、安いメニューで25%、高いメニューで50%くらいを想定してみよう。

まずプレーン炒飯から。米が30kgで9000円とすると1kgが300円、1人前が米120gで飯250gだとすると36円。卵10kg(L玉で150個、M玉で160個くらい)が4000円なら1kg400円だけど殻で差っ引いて450円くらい、70g使うと31.5円。肉とネギも30円ちょいなのかな、と勝手に想像して、燃料(1升炊いても高くて数十円とかのレベル)とか油とか調味料とか全部ひっくるめて、廃棄ロスも多少あると計算して、小椀でスープをつけ紅生姜を添えると原価110円ちょっとのものを450円くらいで出せる計算(ショバ代がバカ高い都心はともかく、ほどよく都会な地域だと、プレーン炒飯相当のメニューをこのくらいの値段で出している店はけっこうある)。

価格を直撃するのはやはり米で、そこそこのものが30kg12000円だとすると+12円、ちょっといいものを使って15000円だと+24円のコスト増になる。卵の相場はよくわからないが、ちょっといいものだと+10円くらいなんだろうか。米と卵で+35円として油や調味料もちょっとグレードアップすると原価が150円、これで気合炒飯を600円くらいで出せたら、店もお客さんも幸せなのだろうと思う(そればっかり注文が入ったら作るのツライけど)。米のグレードはライスの価格にも左右されるし、高単価のご飯ものも出そうと思うならあまり酷いものは使えないので、仕入れのポイントの1つになると思う。

筆者が思うに、炒飯で1000円ってのはよほどの高級店でないと出せない数字である。カニとか干し魚介とか高そうな(実際高いけど)材料が入って950円、エビ炒飯なら850円くらいがせいぜいではないだろうか。650~850円くらいのメニューなら原価は200~350円くらいだろうから、価格に見合ったベース食材(米とか卵とか)が上記の150円だとして、50~150円くらいの予算でいかに豪華な具材を仕入れられるかがメニュー作りのキモになりそうな感じ。



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