鑑賞の作法


もっとも基本的な方法は作品の作用に注目することである。たとえばある詩を読んで物悲しい気分になったとしよう。その物悲しさを味わうことが、鑑賞の初歩にして奥義といえる。創作の心得の最後で紹介した異物感とのつながりを見出し、どのような技術に支えられてどんな姿をあらわしているか意識を凝らす鑑賞方法と、それらをすべて忘れて無心に味わいを追う鑑賞方法の両方を試してみるとよい。

やや変わっているが、ライブ前提の作品(落語、演劇、一部の音楽など)では呼応に注目した鑑賞方法もある。ある演者または総体としての舞台について、どのような入力と出力があるのかを見極め、その応答を感じ取るのである。鑑賞者としての自分が入力ないし出力の一端を担っている意識があるとなお幅が広がる。

もう一端にある根本的な考え方として、主体としての参加が挙げられる。どのような芸術も芸能も、日常の所作ないし非日常の祭りを起源として持つ。いづれも、被服、飲食、性交、歌唱、舞踏、呪術などあらゆる要素を含んだ総合的な行為であり、どの鑑賞者にも主体として参加する余地がある。今日の創作はそれらの中からいくつかの要素を取り出し特化することで発展を遂げたものが多いが、どこまでいっても元のつながりというのは消えることがない。

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