イフェクトセッティングの項で、たとえば「a; b: c; d」とあるのは「aとb、またはcとd」という意味。括弧書きしてあるのはレンダリングまたはミキシング時に行う加工の候補(サンプルの段階でやってしまうのがダメというわけではないが、アレンジが決まらない段階でやってしまっても支障がなさそうなものを分けておいた)。 「hpf」は「ハイパス/ローカットフィルタ」、「lpf」は「ローパス/ハイカットフィルタ」、「hsh」は「ハイシェルビングEQ」(数値はスロープの中点)、「ph-rev」は位相反転(Audacityだと「上下を反転」)、カンマで区切ってあるのはピーキングEQ、その他は書いてあるまま。hpfとlpfは断りがない限りカットオフ周波数が-3.01db変化で-12db/octスロープのバタワースを想定(AudacityならQを0.7にしてかければよい:リニアフェイズのものを使うと結果が妙になるので注意)。サンプル名の下にあるハイフンで繋いだ数字は、採用したサンプルの番号(ベロシティ順)。 RM Fを使う場合、各サンプルが勝手にノーマライズされて、それからサンプラーの音量調整が反映されるようだ。その場合、スネアは+3db、シンバルは-6db、ハットは-9dbくらいの音量調整を入れてやるとモニタしやすい(音色にもよるのであくまで目安:筆者の好みを反映した設定なので、スネアはもう少し下げた方が一般的なバランスに近いかもしれない)。オーバードライブやバスドラのハイ上げ加工などはとくに、音量感が大きく変わるので後から調整する(筆者の場合、バスドラが-5db、ハットとシンバルが-10db、その他はプラマイ1〜2dbくらいになることが多い)。 オクターブではなくQで設定するタイプのEQやフィルタを使う場合、Q=0.577で半値幅2.26oct(ベッセル)、Q=0.707で半値幅1.9oct(バタワース)、Q=1.414で半値幅1oct、Q=2.871で半値幅0.5octという関係になる。Google電卓用のプリセットは、 半値幅がa(オクターブ)のときのQ: (2^(a / 2)) / ((2^(a / 2))^2 - 1) = Qがaのときの半値幅(オクターブ): (log(((1 / a + ((1 / a^2 + 4)^(1/2))) / 2)^2) / log(2)) = になる。 BD_Pearl 4と7、9と10がややクローズっぽい。1と2は半分ゴースト用にして、メインのベロシティレイヤーは4サンプルで組むことにした。 op:1-2-3-5-6-8 cl:4-7-9-10 EQをもっとも派手にぶん回すバスドラの音作り。200Hz(40〜50Hzあたりを大きく持ち上げる予定があるなら250Hz)と550Hzを削って低音の渋滞をスッキリさせ、1700Hzも削って中抜き、低域を濁らせないためにゲートをかけておく(手作業推奨、生っぽくするためにあえてかけないのもアリ:リリースの長いコンプを強めにかけるとゲートの代用になるので、その予定なら必須ではない)。これだけでも使える音になるが、追加で高域を持ち上げるとアタック感が、40Hzを持ち上げるとボリューム感が出る。コンプでもかなり音を変えられるが、どの時点でかけるのかちょっと悩ましい。サンプルにかければ音量に関わらず効果が出るし、録音した音にかければ音量に従って潰れるが、この辺はおいおい煮詰めていきたい。裏技的だが、100Hzくらいでハイパス/ローカットを入れてやると、パスパスした軽い音も作れる。 200Hz,-12db,1oct; 550Hz,-9db,1oct; 1700Hz,-9db,2oct; gate (900Hz-hsh,+6db,12db/oct; 16000Hz,+6db,1oct; 16000Hz-lpf: 40Hz,+3db,1oct: 8000Hz,+6db,1oct) (comp) バリエーションを重視した別の方法。まずサンプルをコピー、24000Hzをカットオフにしたハイパス/ローカットフィルタ(ローパス/ハイカットではない)、位相反転、24db増幅する。これがエキサイタ(というかシェルビングEQ)の役割を果たすのだが、高域に大量のノイズが乗るので、6000Hzと12000Hzのローパス/ハイカットフィルタを「ドライとウェット両方のサンプルに」重ねがけして、エキサイタサンプルはアタック部分を残して(全体のゲートとは別に)ゲートをかける。ドライサンプルの音量を3db下げ、さらにEQで250Hzを1oct幅12dbくらい削ってやる(両方)と、エキサイタサンプルの音量調整(15〜39dbくらいの範囲:すでに差し引き27db増幅してあるので、プラマイ12dbで調整)や追加EQ(両方)などでかなり自由な音作りができる。エキサイタサンプルの音量を大きく下げたときは、800Hzあたりを削っておくとよい。追加EQの候補は下記を参照(増幅系の調整は0dbFを超えないように注意)。アコギが入る曲でバスドラの高域を強調すると、アタック音がぶつかることがあるので覚えておこう。 24000Hz-hpf; ph-rev; amp9-45db; 6000Hz-lpf; 12000Hz-lpf; gate; 250Hz,-12db,1oct (40Hz,+3db,0.5oct; 120Hz,-9db,2oct; 1000Hz,-3db,1oct: 2000Hz,+3db,2oct: 40Hz,+3db,1oct; 400Hz,-6db,1oct: 100Hz,+6db,1oct: 250Hz-12db,2oct: 500Hz-lpf: 800Hz,-4.5db,1oct) (comp) SN_LudwigAcro_V 7と11は微妙にリムがかかっている気がする。10と11はアクセントショットとして使いたいので別トーンにした(ついでに弱いベロシティでリムショットもどきとしても使用:普通にレイヤーを組んでも悪くないと思う)。ゴーストは(もし入れるなら)独立させずに弱いベロシティの音として入れてしまった方が便利だと思う。ベロシティレイヤーは、ゴースト用、フラムとラフ用、弱いショット、普通のショット、強いショット、ごく強いショットくらいの意識で組んでいる。 head:1-2-(3)-5-6-8-9 o-rim1:(cs1)-(cs2)-10 o-rim2:(7)-11 hl:1-2-3-4-5-6 snp:1-2-3-5-6-8-9 (c-rim:rim1-rim2-rim4) 最初に音量を下げないとクリップするので注意。1000Hzを2octで削って中抜きすると2000Hzも削れるので補正、4000Hzを持ち上げて「ピシッ」という音を強調するが、ほかの音とぶつかる場合は控えめに。リムショットは大音量前提でベロシティレイヤーを組むことになる。オーバードライブ(後でかける)はRubyTubeを0.65でかけるといい感じ。リバーブはプレートでも悪くはないのだが、筆者はランダムディレイ系のデジタルリバーブやドラムブース系のルームリバーブの方が好きである。スネアは微妙な調整で大きく音色が変わるので、バスドラのように「基本の音色+分岐の加工」ではなく曲ごとに作り込みをした方がよいだろう。とくに、700Hzあたりの「コン」という音や300Hzあたりの「トン」という音をあえて出す場合は、最初からそのつもりでイジった方が早いと思う(重心が変わってまったく別のバランスになる)。2000〜8000Hzあたりのどこを強調するかで「ピシ」という音の質感が変わる。 1000Hz,-6db,2oct; 2000Hz,+3db,1oct; 4000Hz +3,1oct (overdrive; 900Hz,+1.5db,1oct: 3000Hz,-3db,1oct: 12000Hz-hsh,+6db,6db/oct) (reverb) 実はVがついていない収録サンプルがよくわからない。まず「br」がブラシで「snp」がスナッピーなのはすぐわかる。「Hl」で悩んだのだが、本家サイトに「Hotlots」とあったので多分「Hot Rods」のことだと思う(細い棒を束ねてスティックの代わりに使う「ささら」を細くゴツくしたようなもので、Pro-Markの「Rods」シリーズの代表製品:一般名称としては「マルチロッド」と呼ばれ、ラテンパーカッション用のバケッタにもやや似ている)。すると「M」はマレット(クラシックパーカッションに使う先が丸いスティック)だろうか。「Mt」は何の略かわからないが「強さの変化で倍音のニュアンスだけ変化するキー」だろう(音量と位相を調整してVのつくサンプルに重ねてやると面白い音を作れるが、本来の使い方は不明:同様に、スナッピーオフの音を重ねてやると「表マイク」の音をデッチ上げられる)。Csはクロススティック、「Rm」はリムショット、「Rl」はロールで問題なさそうだが、オープンリムショット(単にリムショットとも)とクローズリムショット(クロススティックまたはサイドスティックとも)のファイル名が反対になっているようだ(SN_PearlBrsも同様)。ちなみに「Sc」はスクラッチ(ブラシスイープ)で、「SN_GHORST」に入っているサンプルは4以外ロールである。 SN_PearlBrs_V head:1-2-4-6-7-8 hl:1-2-3-5-6-7-9 snp:1-2-6-7-8-9 (c-rim:rim1-rim2-rim4) HH_Zldjn_Acstm14 ハットがだんだん開く。おそらく1〜3がクローズ、5〜9がハーフオープン、10〜12がオープン、13がフルオープンなのだと思うが、サイトの説明に「6種類のどのハットにもフットHH×2、クローズキーに3段」とあるから4はハーフオープンなのだろうか(ベロシティが大きいクローズとして使った方がしっくりきそうに思える)。 基本はハイパス/ローカットだけかけておけばよい。細かい調整はバスドラとスネアの音が決まってからになる(同時に鳴らすことが非常に多いのと、ハットは調整自体簡単で比較的自由に音が作れるため)。5000Hz周辺の「キ」という硬い音は「刻み感」を出すのに使えるが、落としてもそのままでもよいと思う。1000Hz周辺を削るとサラサラのドライな音になる(ある程度以上ブーストすると「コン」という響きになる)。邪道かもしれないが、オーバードライブ(RubyTubeだと0.7くらい)をかけるのも面白い。非常に基本的なことだが、クローズ/オープン/ペダルなどで同じ加工を使い回す場合、ボロが出ているサンプルがないかチェックを怠らないようにしよう。また(このキットに限らず)アレンジ次第で高域がうるさくなるので、様子を見ながら調整する。ディエッサー(SPITFISHだと、12000Hz中心のdepth15くらいかな)を使う場合はノーマライズしてからかけるか、音量調整プラグインでディエッサープラグインを挟むとラク。裏技だが、5000Hzを1octで12dbほど持ち上げてやるとか、4〜10kHzあたりのどこかでバンドパスフィルタをかけてやるとか、ハイパスを700Hzくらいに入れてやるとか、変わった音を作る方法もいろいろとある。500Hz前後は「重み」を決める要素として、1000〜3000Hzあたりは音量を下げたときに「残る」成分としても重要なので、他とのバランスをよく検討したい。 200Hz-hpf (1000Hz,+3db,1oct; 5000Hz,-3db,1oct; 12000Hz,+3db,2oct: overdrive; 4500Hz,-6db,2oct; 1200Hz,+3db,1oct: overdrive; 13000Hz,-1.5db,1oct: 1000Hz,+3db,1oct; 6000Hz-hsh,-4db,2db/oct; 12000Hz,-1db,1oct; 16000Hz,-3db,1oct: 1000Hz,+3db,1oct; 5000Hz,-3db,1oct; 500Hz,+1.5db,1oct) (de-esser) 今回はとりあえずノーマルサンプルだけを使ったが、Hがついているサンプル(多分「強いハット」というのがこれなんだと思う)は、1〜3がクローズ、4〜8がハーフオープン、9〜11がフルオープンだと思う。クローズは1<2<3と踏みがタイトになっているような気がする。かえって、地味めの音作りに便利かもしれない。 シンバルとタム 刻み用のライド以外のシンバルは、好みでハイパスだけかけておいてミキシングのときにイジればよいと思う。タムは曲ごとに加工すれば問題ないだろう。ライド2種類は数字が一番大きいものがクラッシュ、クラッシュ2種類は数字が一番小さいものがピンのようだ。ライドのピンは1-2と3-(4)で定位感や質感がやや違うので、別のトーンに入れてもよいだろう。モノラルにして調整後改めてPanを振るなら、定位の問題は無視できる。 FTOM_Pearl 1-2-3-4-5-8 LTOM_Pearl 1-2-3-4-6-10 HTOM_Pearl 1-2-3-4-6-7 余談というか感想 フットスプラッシュはやっぱり欲しかったかなぁ。バスドラのオープン/クローズも、もう少し本格的に分けてあったらありがたかった。シンバルのベロシティレイヤーが薄めなのはそれほど気にならない。タムのリムショットもいいや。ハットクローズのピンは、あればあったで便利だったと思う。スネアはリムショットのベロシティレイヤーがもう少し厚ければよかったかもしれない(リム先やセンター外しの音はなくてもまあなんとか)。 加工は抜群にしやすい。生音にかなり近い音源なので当然と言えば当然なのだが、「欲しい音」にたどり着くまでの道のりを明確にできる。バスドラのハイは(リアルな音ではなく加工素材としての使いでを考えると)もう少し入っていてもよさそうに思えるが、これは方針の問題だろう。ハットクローズはHがつくサンプルを「ルーズ踏みのクローズ」として使えそうだ。