MTR


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2021年12月更新。


性能などについて

サンプルレートや可逆圧縮時のビットレートの高さは直接的に音質の高さに結び付くものではないということに注意(基礎知識のページを参照:AD変換などについてもいくつか言及している)。

デジタルMTRの同時録音数について、安価な製品には2ch同時入力8ch同時再生(ミキサで8ch分を混ぜているだけで、実質的には2ch同時入力2tr同時録音8tr同時ミックス2ch同時出力)のものが多い。同時入力数が少ないのはコストを直撃するためだろうが、これは1人録音専用と考えた方がよい(デジピなどを使う場合、楽器をステレオで入れてしまうと弾き語りできないので注意:ギターなどでも、ラインとマイクでギターを録音しながら歌も入れるようなことはできないし、筆者がhgwから借りているAriaのsinsonidoなどは各弦のPANを微妙にずらしてステレオ出力してくれるのだが、これも弾き語りとの併用が面倒になる)。もしパソコンを持っておりかつ自宅でしか録音しないなら、2~4ch録音のデジタルMTRをわざわざ購入する必要はほとんどないと思われる。

ダイナミックマイクを接続する場合、マイクインの規定入力が-55db程度までないとダイナミックレンジを使い切れないことがあるが、デジタル部分のダイナミックレンジ(16bitでも96db)にはかなりの余裕があるため、10dbや20dbの不足であれば後から増幅して補える(マイクアンプを別途用意してもよい)。また、ハイインピーダンス仕様の入力があればエレキギターやエレキベースを直接接続する際に便利だが、普通はアンプを噛ますので、凝った録音法に挑戦したい場合以外は無視してよい。


具体的製品

据え置きは2021年末にZoomのR24が販売終了になったようで、後釜はR20という機種になった。パソコンに対しては8in4outのサウンドユニットとして機能し、おそらくMTR16トラ+PC4トラで「20」なのだろう(R24は8in2outだったから単純な減少ではない)。機能面で面白いのはMIDIノートの記録(MIDI録音)ができることで、FMシンセ音源まで内蔵している。電池駆動はできなくなったが、そういう泥臭い運用はR16でやってくれということなのだろう。久しぶりに、本当に久しぶりにZOOMらしさが溢れる製品が出てきたように思う。その数年前に出たLiveTrakシリーズはラインナップが面白く、ライブ配信向けにオーバーテクノロジーをつぎ込み電池でも動くLiveTrak L-8、モーターフェーダーじゃないデジタルミキサー(設定を読み出すと設定位置を通過するまで物理フェーダーが無効になるそうな)LiveTrak L-12、スマートフォン操作のラックMTRにしてしまった(フロアタイプもあるけど)LiveTrak L-20Rと、なかなかはっちゃけている。

TASCAMは2015年にDP-24SD(と上位機種のDP-32SD)を発売した。構成的にもMTRの老舗であるTASCAMらしさが感じられるし、この時代にMTRを出すうえでのコンセプトをキッチリ練り上げてあるのが好印象。カタログで見る限り、DP-32SDとの違いは、TMSS(より高性能なサンプリングレートコンバーター)の有無とフェーダーが2本増えているのと同時再生トラック数だけのよう。高級機のModelシリーズ、ラックマルチのDA-6400シリーズもラインナップしており「MTRもTASCAM」という時代がまたやってきたかのよう。面白いのはライブ配信向けのMixcast 4で、オーバーテクノロジーをつぎ込んでいるのは上のLiveTrak L-8と同様なのだが、ZOOMの「全部頑張りました、イエーイ」みたいなノリとは違うし、Fosさんが以前コンシューマ製品で何度か見せていた「中身はホンモノです、だってそう書いておいたし」みたいな雰囲気でもなく、なんというか、ガワはガワでソツなく作って(というところが昔と違うけど)、後は黙々と中身を作り込んでいったような、うっすらと狂気を感じさせるコンセプトに見える。設計して実装していったとき、さぞ楽しかっただろう。ポータブルレコーダーPortacapture X8も似たような雰囲気を漂わせている。

そのポータブルレコーダー(と呼んでいいのかどうか不安だけど)は・・・TASCAMのDR-10シリーズやZOOMのF1がスゴい。さすがに「使用マイクはダイナミックマイクのほか、電池駆動が可能なコンデンサーマイクに対応します」らしいが、この手の録音にファンタムマイクなんて必要なかろうし、どうしてもというのであればJTSのTX-9もあるし、その気になれば電池駆動のファンタム電源もある。ポータブルMTRはジャンル自体が小さくなったが、ローランド(BOSS)のMICRO BR BR-80とTASCAMのDP-006がまだ頑張っている。スマートフォン+外部マイクという組み合わせに押されそうなハンディレコーダーよりも、マイクとマイクスタンドがある場所にならサッと持っていって録れるポータブルMTRの方が、どちらかといわれれば長生きしそうな気がする。


昔話

FOSTEXのX-12が2009年まで、TASCAMのMF-P01も2008年か2009年くらいまで頑張っていたが、2009年12月現在、国内で民生品のアナログMTRを新品販売する大手メーカーはなくなったようだ。中古で探すなら、タマ数的にも性能的にもヤマハのMTシリーズが抜群だろう(筆者も現在MT4Xを所有しているし、MT-50にも長らくお世話になった:ちなみにMT4Xは中古、MT-50は新品購入)。

筆者はKORGのD-4をアナログMTRの後釜と見ていたのだが、24bitだの96KHzだのビンテージシミュレータだの無圧縮PCMだのとハッタリ性能を盛り込まなかったのが災いしたのか、カタログ落ちして以来「次」が出てくるまでかなりかかった。紆余曲折あって天下を取ったのは、安くて軽くて何でもできる(電池でも動く)ZOOMのR16、上位機種のR24でさらに機能が充実し、アナログ時代のMT-50とMT4Xのような鉄板チョイスになった。ベリさんはUFX1604で一瞬やる気を見せたがすぐにいなくなった。



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