収録と加工


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<この記事はまったくの書きかけです>

いわゆるPCマイクとオンボードサウンドだけを使う構成と、オンボードサウンドの他にサウンドカードを追加した構成を取り上げる。初心者向けの記述と経験者向けの記述を同じページにまとめてしまったが、1つの項の中に複数の小見出しがある場合、上が初心者向け、下が経験者向けの紹介になっている。「ああなるほど」と思えるところまで読み進めたら、残りの「よくわからない説明」は読み飛ばして差し支えない。

難しそうな説明を読みたくない初心者は、とりあえずマイキング安全確認見様見真似の加工に目を通すのがよいだろう。これらを試して、感覚がわかってから他の項を読んでもまったく遅くない。

筆者の手元にある機材から初心者向けの記事に合いそうなものを選び、US-100とCM5を使うことにした。補助的に、オンボードサウンドに直接接続したECM-PC60も使う。

なお、筆者のサブマシンはオンボードサウンドにライン入力がない。ここはちょっとインチキをしてメインマシン(デスクトップ)のオンボードサウンドを使わせてもらおう(OSもWindows7が入っていて記事の賞味期限が延びそうだし)。ECM-PC60については、断りがない限りサブマシンのオンボードサウンドに直接接続している。


接続と設定

PCマイクならパソコンのマイク入力に接続するだけで終わり。US-100クラスのサウンドユニット(以下面倒なのでこの機種を使うものとして扱う)を追加した場合、当然US-100にマイクを接続するわけだが、ステレオミキサーのページで紹介したように、録音はオンボードサウンドで行う。用途によって2通りのモニタ(チェック用の音声出力)が可能な、ちょっと贅沢な方法である。

1つめはタイミングのズレを最小限(ほぼゼロ)にできる方法で、US-100でパソコンの音を再生しつつマイクの音を混ぜ、それをオンボードサウンドで録音する。欠点はマイクの音声を一切加工できない点だが、US-100のマイク入力は優秀なので、特殊効果を入れたいのでなければあまり問題はない(ノイズレベルを下げるための加工もできないが、最初からある程度ノイズレベルの低い音声が得られるはず)。もう1つはタイミングはズレても構わず加工を重視するやり方で、US-100からReaperに入れた音声を加工してオンボードサウンドに流し、それをステレオミキサーで混ぜて録音する。欠点は加工済みの音声を確認しようとするとかなりタイミングがズレること。

どんなに頑張っても、ソフトウェア加工した音をモニタするとそれなりに音が遅れる。つまり、ソフトウェア加工する前の音をモニタするか遅れのある音をモニタするかの択一は避けようがない。後者を選んだ場合に遅れを「減らす」努力が有用なことはあるが、遅れを(実用上)「なくす」にはハードウェア処理しか方法がない(2011年現在)。

以下ではソフトウェア加工する前の音をモニタする(ダイレクトモニタとかドライモニタと呼ぶこともある:慣例的に、加工前の音をドライ、加工後の音をウェットと呼ぶので覚えておこう)環境を中心に話を進める。


マイキング

標準ブームのマイクスタンドがあれば便利(机の上にマイクスタンドを置かなくて済むって、ステキなことです)なのはわかっているが、導入する人が少なさそうなので、せめて卓上マイクスタンドを使おうと呼びかけておきたい。どうしてもスタンドを導入できない場合は、適当なハコにタオルでも敷いてマイクを乗せよう(落として壊さないように注意:PCマイクには比較的適する設置方法)。

ノイズレベルが比較的高くオンマイク(至近距離にマイクをセットしての収録)にせざるを得ない場合、急がば回れの録音のページで紹介したこのマイキングが便利である。

スタンドの高さが足りない場合はなにかしらのゲタ(テキトーな台)を用意する。多少のコツはあるがうまく設置すれば音の入りはよく、ヘッドセットのマイクなども上図に準じるセッティングになっていることが多いと思う(タイピング音の被りを減らす目的で双指向性(真横からの音を拾いにくい)になっている製品もある)。

ややオフ(25cmくらいの距離)にできるなら、演説マイクのように下から狙ってもよいし、上記リンク先で初心者向けマイキングとして紹介している「耳の穴(左右どちらでも)の正面20cmくらいから口元狙い」でもよいし、単純に上図から距離だけ離してやってもよい。ブーム式でない卓上スタンドを使うなら、口元〜マイク〜パソコン用キーボードが一直線に並ぶように配置すると、タイピング音の被りを減らしつつ声の拾い方も比較的安定させることができる(単一指向性マイクが前提)。

50cmくらいのオフマイク(にできることはあまりないだろうが)なら、話者の目の高さくらいから口元を狙うと音が安定する(ディスプレイの電磁ノイズをマイクが拾わないように注意)。ラジオの収録などでは顔の正面からのマイキングもよくあるが、パソコンの画面が見えなくなるだろうし、話者がドシロウトでマイクが口の真正面だとオフマイクでも吹くことがあるので、あまり需要はないと思う。ブームスタンドが使える場合、ちょっと変わった方法として、額くらいの高さで正面に置く手もある(筆者の繋ぎっぱオフマイクは、スタンド設置ではないがだいたいこのマイキング:ディスプレイの上15cmくらいに置いてある)。いづれにせよ、パソコンのキーボードが前方に置いてある都合上、タイピング音の被りにはあまり強くない。

総合的なバランスを考えると、直線マイキングをまず試して、不都合があれば代替案を検討する形が無難かなという気がする。PCマイクだとオンマイク以外に選択肢がないこともあるだろうが、スタンドが小型な機種が多くぎこちないセッティングになることがある。

マイキングを工夫しても吹かれが問題になるなら、放送用途では「スッキリとした高音」などは必要ない場合がほとんどなので、ウィンドスクリーン(マイクの頭に直接被せるものが便利:数百円で買える)を試してみよう。なお、動作音がやかましいパソコンで収録している場合、単一指向性マイクを使って「マイクの尻をノイズ源に向ける」ことである程度対策できる。


無加工で通す場合

録音してから配信するなら無加工で通す必要はないので、リアルタイムでの放送が前提になる。

US-100クラスの機器と普通のダイナミックマイクを組み合わせるなら、録音レベルにだけ気を付ければ大きな問題はないと思う。音量超過してデジタル歪みが生じると耳障りなので、マイクの音は最大ピーク-18dbFSくらいを狙った方が無難かもしれない(その上で他の音をマイクに合わせて調整する)。

かなり小音量域に振った設定になるが、リミッターが使えない以上ヘッドルームはある程度確保せざるを得ず、しかも他の音との合算で考えなくてはならない都合があって冒険はしにくい(アナログ段にリミッターを入れる手もなくはないが、大掛かりになる)。

いわゆるPCマイクを使ってかつ無加工で頑張るのなら、周波数帯域だけはマイク本体(またはサウンドユニット)で絞っておいた方が無難だろう(カタログスペックで対応周波数の上限が10000Hz前後になっているものを選べばよい)。2011年現在、ノイジーなものがほとんどのようなので帯域を絞らずに使うのはちょっと厳しそうである。

多少のクリップ(音量オーバー)は気にしないのもひとつの案なのだが、ガッチリ加工した音声と比べるとどうしても低い音量になるはずで、どうせリスナー側で調整が必要なら収録でムリをする必要もないかなという気がする。


イフェクト

音楽制作のページでも散々紹介したFISHシリーズやRubyTubeのほか、LoudMaxというピークサプレッサーを使う。

ダイナミクス(音の大きさ)については、たいていの場合「意図的な最小入力と最大入力の差を圧縮する」(差を小さくする)のが目標になるため、コンプ(省けることも多いが)を使うなら「最小入力でギリギリ作動しない」よう設定する。ノイズフロアと最小入力の差も重要だが、ノイズフロアがアンプの性能でほぼ決まる都合上、周波数帯域を絞る、ゲートorエキスパンダーを使う、入力を大きくする、といったあたりがせいぜいになる。最終的なノイズフロアが-40dbくらいに収まっていれば大きな問題はないので、この辺を目標にする。

なおやはり、録音してオフライン編集してから配信するのなら、より細かい音の処理ができる(気に入らなければやり直しつつじっくり加工できるのはもちろん、ソフトもAudacityなどが使えてラクになる)。以下はあくまでリアルタイム処理のための設定である。

その前に安全確認

最初に、ヘッドフォンの出力を確認しよう。万が一ハウリングしても耳へのダメージが心配ないレベルに抑えるべきである。もちろん録音でもハウリングは起こり得るものだが、放送だとヘッドセットやオフめのマイクでリアルタイム処理をする都合上、スピーカを使うPAほどではないがハウリングが起きやすい。

ハウリングで最大出力の音声が暴走した場合、機材も壊れたら懐が痛いが替えがきく。しかし、自分の耳は壊れたらそれっきりなので、安全はキッチリ確認しておこう。また、遠距離にマイクをセットして収録する場合、ヘッドフォンに音を流したままマイクに接近するのはやめよう(マイクかヘッドフォンのどちらか、できれば両方をオフにしてから移動すると安全)。

帯域の項でも触れるが、可聴域の外でハウリングが生じると危険度が高いので、リアルタイムでイジる音は高域をある程度までで切っておくのが無難。少なくとも、30KHzとか40KHzとかいった帯域を蓋もせずに放置するのは、百害あって一利なしである。

見様見真似でやる

編集ソフトはReaperを使う。プラグインは、Reaperの開発元Cockosが配布しているReaEQ(のReaPlugsバージョン:この項で使ったのはバージョン0.5)、LoudMaxというサイトで配布されているLoudMax Plugin(この項で使ったバージョン1.11の配布ページ:2011年7月現在の最新版)、silverspikeが配布しているRubyTubeダウンロードページ)を使う。持っていない人は入手しておこう。

アナウンスやナレーションでの利用が前提だが、楽器の演奏や歌唱をメインにする人でも多少のしゃべりは入れるだろうから、加工方法を覚えておいて損はないと思う。Reaperの操作やインストール方法については触れないので、わからない人は別途調べて欲しい(一足飛びのReaperの設定と操作も、ある程度は参考になるかもしれない:音楽制作を前提とした記事なので、不要なところは適当に読み飛ばそう)。

なお、1人制作の場合リアルタイムで加工状況を把握するのはまずムリなので、必ず録音再生して音のチェックをしたい(一般的な放送の場合、アナウンスとエンジニアリングを同じ人が行うことはほぼない)。完全無加工(Reaperなら、イフェクトをセットしてあっても録音は無加工で行われる)でリハーサル音声をまず録音し、それをループ再生しながらプラグインをイジっていくとラクである。

では加工に入ろう。すでに触れたように、帯域フィルタを最初に入れる。バリエーションについては他の項で後述するが、ここではアナログ電話やISDN電話くらいの品質を目安にした(他の項で軽く触れるソニー製USBヘッドセットやオーディオテクニカ製ヘッドセットのように、ハードウェアの仕様で最初から帯域を絞ってある場合、この作業は必要ないかもしれない)。ReaEQを立ち上げて300Hzで1.90octのHiPassと、

3000Hzで2.26octのLowPassを設定。図では見やすいように3番と4番のbandをRemove bandボタンで消しているが、別に残しておいてもよい。bandはグラフの丸囲み数字をクリックすれば選択できる。ReaEQの分だけは筆者が作成した設定ファイルも用意してあるので、ダウンロードしてプラグイン画面の上にある「load」ボタンで読み込んでもよい。

フィルタの後ろにLoudMaxも入れる。ピークサプレッサーはあまり馴染みのないイフェクトかもしれないが、ぶっちゃけたところ「過大入力がなされたときだけボリュームを絞ってくれる」ソフトである。リリースを上手く設定すればピークコンプでも似たようなことはできるが、専用品だけあって扱いがラクだし、出音も素直なのが特徴。

LoudMaxの画面のままリハーサル(またはリハーサル録音の再生)を行い、右端のメーターが「頻繁に反応するが反応しっぱなしにはならない(瞬間的な反応だけする)」程度までThresh(上のツマミ)を左に動かしてやろう。効果がキツ過ぎると感じたら、メーターが「たまに反応する」程度までツマミを戻す。Output(下のツマミ)はイジらなくてもよいのだが、念のため一応-3dbになるよう動かしておこう。簡易な加工で済ませるならここで終了してもよいだろう。

もっと加工する人は、声のハリや輪郭を強調し音量も安定させるために、ReaEQとLoudMaxの間にRubyTubeをSHAPERモード(下の「SHAPER」ボタンを押す)で入れる。このとき、LoudMaxへの入力レベルが変わってしまうので、RubyTubeをイジったらLoudMaxも設定を見直すようにしておく。

上図くらいの設定をまず試して、必要に応じてSHAPEツマミを回してやろう。入力レベルを変える(ReaEQの右端にあるGainツマミを使うとラクかな)ことでもキャラが変化するが、チューブシミュレーターの設定は多彩なので、最初はあまり深入りしない方がよいかもしれない(入力レベルはイジらず、SHAPEツマミを「9時」〜「ノイズが有意に増える手前」の間くらいにしておけばよい)。

もしRubyTubeを入れても声に元気がなくなるような印象なら、LowPassのBandwidthを1.5(ギリギリまで頑張るとしても1.25くらい)まで下げてみよう。ノイズの問題が出ないなら、けっこう使える設定だと思う。LowPassのFrequencyを7000Hzくらいまで上げる手もそう悪くはないのだが、やはりノイズの乗り方と相談することになる。声の厚みが足りない場合はHiPassを同様にイジる。シェイパーの設定を普通にやれば追加コンプは必須ではないはずだし、フィルタの調整を普通にやればイコライザー(EQ)は不要なはず(コンプもEQも有用なツールではあるが、むやみやたらと振り回す人が多い気がする)。

エキスパンダー(無音のはずの部分に残ったノイズを目立たなくさせる)とディエッサー(サ行など、高音が出過ぎる音をおとなしくさせる)が欲しい人は、ローコスト制作の感想コーナーにあるfish filletsシリーズなどのページを参考にFLOORFISHやSPITFISHを入れよう。順番はLoudMax>FLOORFISH>SPITFISHで、LoudMaxのOutputを-3dbにしておく。

設定が決まったらReaperのプロジェクト保存と、念を入れるなら各プラグインの設定(fxpファイル)書き出しをやっておく。注意点として、プロジェクトを保存してからReaperを終了してまた再開すると、LoudMaxの設定がリセットされてしまう(Reaper0.999で確認)。これが面倒だと感じる人は、フェーダープラグイン(GVSTシリーズのGGainやsonalksisのFreeGなど)でLoudMaxを挟んで、前のフェーダーをThreshの代わりに、後のフェーダーをOutputの代わりに使えばよい(LoudMax本体のツマミは両方右いっぱい)。

力技で押す

US-100クラスの機器ならマイクアンプに十分な性能があるので、RMSコンプをガッチリかけて音量を均す手が使える(ピークの突出はピークサプレッサーで抑える:互いの得意なところだけ使って分業すると効率がよい)。声の大きさやマイクとの距離が多少変わっても、一定の高い出力を維持できるのが利点。

ゲイン調整1(FreeG)、フィルタ(ReaEQ)、コンプ(BLOCKFISH)、ゲイン調整2(FreeG)、シェイパー(RubyTube)、ピークサプレッサー(LoudMax)、エキスパンダー(FLOORDISH)、ディエッサー(SPITFISH)とかけるとこんな感じ(切り貼りやフェードやノーマライズなどを追加してある)。繋ぎ替えが面倒だったのでUS-100ではなくXENYX 1204USBのマイクアンプを使ったが、まあ大差はあるまい。マイキングは5cmくらいの距離から唇の端を狙い、普通に話すくらいの声。

最初のゲイン調整でピークレベルを-12〜-6dbくらいに勘で合わせ、フィルタで300〜3000Hzだけ残し、コンプで潰したら+6dbピークくらいを目安にゲインを上げ、高域の音を補いつつ大音量域を軽く歪ませて、ピークサプレッサーでレベルを落とし、仕上げにエキスパンダーとディエッサーをかけている。クリッピングを気にしないで叩くのがコツといえばコツ。FLOORDISHとSPITFISHで多少ピークが上がる可能性があるので、LoudMaxはOutput-3.0dbで使っている。

フィルタで10db、エキスパンダーで5dbくらいノイズを削れるが、全体で40dbくらい持ち上げているので差し引き25dbくらいノイズフロアが上がり、いわゆるPCマイクだと内蔵プリアンプの性能的にちょっと苦しい。反対に、普通のマイクを普通のマイクアンプで使えるなら、コンプがガッチリかかっている分音が安定する(最終的なノイズフロアを-30dbと期待すると、-55dbくらいのノイズフロアだといい感じ)。

他の収録方法に比べて音声ノイズを比較的強く拾う(というか、小さな声も大きく増幅しているので、小さなミストーンが大きく増幅されるのは仕方ない)ため、マイクを使っていないときにミュートする手段(ただしノイズが出ないこと:ミキサーがあるとこの辺もラクなのだが、まあ贅沢は言うまい)があるとなおよい。またヘッドフォンからの音漏れも当然大きく拾われるので、ハウリングには注意したい。

力技で押せない場合

PCマイクしか使えない場合、ノイズフロアをあまり上げられない。ノイズフロアを上げられないということは結局、ダイナミックレンジを大きく潰せないということなので、低いスレッショルドでユルく潰すのがよさそう。

ゲイン調整1(FreeG)、ハイパスフィルタ(ReaEQ)、コンプ(GComp)、ローパスフィルタ(ReaEQ)、ゲイン調整2(FreeG)、シェイパー(RubyTube)、ピークサプレッサー(LoudMax)、エキスパンダー(FLOORDISH)、ディエッサー(SPITFISH)とかけるとこんな感じ(切り貼りやフェードやノーマライズなどを追加してある)。

ゲイン調整1で0dbFS程度のピークを作り、コンプで6db(スレッショルド-12dbのレシオ2)叩いてから6db持ち上げ、0dbFSを超えた分はピークサプレッサーで吸収する格好。増幅は合計24dbくらいで、差し引き10dbくらいノイズが増えている。コンプをガッチリかけたときに比べて小さい音がやや聴きにくくなるはずだが、まあ文句を言うほどではなさそうに思える。

とことん頑張る

調整のしやすさは捨てて理想を追求する場合。

ゲイン調整1、リミッター、ゲイン調整2、フィルタとかコンプとかピークサプレッサーとか、エキスパンダーorゲート、シェイパーorエキサイター、ディエッサーといった感じか。

ゲイン調整1で-18dbピークに調節。リミッターにRubyTubeを使うならドライブ6dbくらいのリミッターモード。最後にリミッターの手前で-6dbFSだった音声が0dbFSになるようゲインを上げておく(RubyTubeをドライブ6dbで使ったなら4db増幅)。

ハイパスをかけてからRMSコンプで叩き、ピークサプレッサーでゲイン調整してからローパスを通す。低域を遮断してコンプの効きを素直にするのと、RMSコンプが見逃した突出ピークだけをピークサプレッサーで潰すのと、コンプやピークサプレッサーが発生させた高域歪みをローパスで削る目的があるので、この順番は変えられない。

コンプを使う意義はそれほど重大なものではなく、大入力はどうせピークサプレッサーに引っ掛かるので、それより下の領域をコントロールするのが目的である。とくに「意図的な最小入力と平均的な入力の差」を潰すことを意識すべきだろう。

あとは基本どおりだが、ノイズを叩いてからエキサイターに通したいのと、エキサイターが効き過ぎた場合の保険が必要なため、やはり上記の順番が原則になる。音楽用途ならエキスパンダーはコンプの前に入れるが、放送の場合ノイズフロアと意図的な最小音の間は十分に開いているはずなのでここでも問題ない、というか後ろの方が設定がラクなはず(細かい調整に自信があるなら、コンプの前でももちろん差し支えない:キーインにバンドパスフィルタがかかっている場合、エキサイターより後ろにするのは、筆者ならちょっと気分がよくない)。

<ここから先は大幅に書き直し予定なので信用するべからず>

ヘッドルームは18dbくらいか

初段のヘッドルームについて考えてみる。ネイティブのヘッドルームを18db取って、下から6dbが本来のヘッドルーム(グリーンゾーン)その上の6dbがニー(イエローゾーン)、上の6dbはリニアコンプ(レッドゾーン)くらいの配分がいいのかなという気がする。6dbくらいなら、床を上げてもさほど問題はないはず。

もちろん、最初から12dbのヘッドルームでやりくりできるならその方が自然な音になる。低域の音はコンプの動作に与える影響が大きく、またコンプの歪み成分は高音域に出やすいので、ハイパス>コンプ>ローパスの順にするとなおよい。

帯域は絞れ

帯域という言葉にはいろんな意味があるが、ここで言いたいのは「利用する周波数帯域を限定せよ」ということである。帯域を広く取れば取るほどノイズが増えるし、ハウリングにも弱くなる。

何十年もの間アナログ電話(帯域が300〜3400Hz:地味に国際規格)での会話が普通に行われていたことを考えると、何を話しているか伝えるための帯域はその程度で十分だということがわかる。筆者がいろいろ試したところ、300Hzでバタワース(Qが0.707=半値幅が1.90oct)のハイパス/ローカット+3000Hzでベッセル(Qが0.577=半値幅が2.26oct)のローパス/ハイカット(音量を数dbくらい上げておく)というのがスムーズだった。

3000Hzのベッセルで切って3KHz周辺の落ち込みが気になるなら、半値幅を1.25〜1.5octくらいにしてやると1〜3KHzくらいが持ち上がる(EQを使うより、まずはフィルタのQの使い方を覚えた方が便利だと思う)。この場合耳につくノイズが残りやすい副作用があるので、入力の時点である程度ローノイズである必要が出てくるだろう。

もう少し余裕を持ちたい場合、上は5000Hz(普通のAMラジオの上限くらい)、7500Hz(AMラジオの仕様上の上限くらい)、12000Hz(人間の聴覚がとくに敏感な帯域の上限くらい)、15000Hz(FMラジオやアナログテレビの上限くらい)が区切りになるだろうか。変なフィードバック(ソフトウェア上のものを含む)ができて超音波域でハウリングが起きる可能性がゼロではないので、ノイズの問題がなくても20000Hzより上は切っておいた方が無難。

下は、電源ハムの3倍音(意味がわからない人は、とにかく電源由来のノイズだと理解しておけばOK)が東日本で150Hz、西日本で180Hzなので、できれば300Hzくらいで切っておきたいのだが、聴覚上は150Hzくらいまでが重要(ドルビーBでもこの辺から強調が始まる)なので、そのくらいで切った方がよい場合もあるだろう。念を入れるなら200Hzで切って、東日本では150Hzと250Hzにノッチを、西日本では180Hzと300Hzにノッチを入れる案もある。ノッチを入れない場合、東日本で100Hz、西日本で120Hzより下には手を出さないのが無難。

組み合わせとしてはだいたい、200or240〜7500Hzが「リッチなナレーション」や「音楽用の最低ライン」として、150〜12000Hzが「音楽用の無難なライン」として、100or120Hz〜15000Hzが「最大限のライン」として有効だろうか。実際の設定では、低音側は数字をそのままカットオフにしてバタワースで、高音側は数字を1割引きくらいにしてベッセルで切ってやるとよい。筆者の好みに過ぎないが、高域は穏やかに、低域はスパっと切った方が自然な音になりやすい気がする(高域の切り方について、あくまで「上まで出ている音を可聴域で切る」場合の話なので誤解なきよう)。

余談になるが、ソニーの簡易サウンドユニットUAB-350(メーカーは「USBオーディオボックス」と呼んでいる:セパレート式のUSBヘッドセットに付属しているのも多分同等品)はマイク入力の帯域が「200Hz-10,000Hz」とちゃっかり絞ってある。同じく放送分野に強いオーディオテクニカのATH-COMシリーズも帯域はしっかり絞ってあるが、マイクの仕様で帯域を絞るとなぜか売れなくなることをしっかり踏まえていらっしゃるソニーさんは、伊達にコンシューマ商売が長いわけではないらしい。他のメーカーのものにも帯域を絞っている製品はあるが、VAR系のベンダー(エレコムとかサンワサプライとか)は製造元によってバラバラなデザインのものをラインナップしている。

上記製品の仕様を見ると、下は100〜200Hzが下限、上は10〜11KHzくらいが上限の切りどころなのかもしれない(ハードウェアでのカットオフなので、比較的広めの帯域を残してあるはず)。-12db/octのフィルタを-3dbカットオフポイントの指定で使う場合、-10dbカットオフにしたいポイントの0.5オクターブちょっと上下(周波数にすると1.5倍or1.5分の1くらい)で切るとだいたい一致するので、下が150〜300Hzの上が7KHz前後の設定が相当するだろうか(ただしフィルタのQでもかなり音が変わるので、カットオフポイントだけ云々してもあまり実用的ではない:実際の仕様は知らないが、サウンドユニットで切る場合は急峻なフィルタを使っているor併用している可能性もある)。

理想を追求するなら、マイクで拾ってからフィルタで落とすよりも、アマチュア無線の人たち(彼らは「話し声」のエキスパートである)が使うようなセラミックマイクを使って最初から拾わない方がスマートなのだろうが、ハムの場合自分で組んでしまう人が多く完成品は値段が高い。

落とした分を他からデッチ上げる

フィルタの後ろにはオーバードライブ(というかウェーブシェイパー:質感が荒っぽくなければ、真空管アンプシミュレーターでもよい)などを仕込む。フィルタでバッサリと落ちた高域の音声を、ここでデッチ上げるわけである(S/Nの低い帯域の情報をいったん捨てて、S/Nの高い帯域の情報から代わりを捻り出す格好)。

いわゆるエキサイターやエンハンサーの類も、フィルタなどで下処理>オーバードライブなどで歪ませる>減算して歪み成分だけ取り出す>フィルタやらなにやらで加工>ドライに被せる、という仕組みのものが多く、結局似たような効果になる。mp3などの可逆圧縮で落ちた高域を補うと称しているイフェクタも、多くは似たような動作だろう。

出口のリミッターは必須でないのだが、ピーク音圧をコントロールできる分、単純な音量調整(ReaperのフェーダーやGGainやFreeGなど)よりも使いやすい。入口のコンプですでに叩いてあるので、ここで大きく潰す必要はない。Reaper内部では音量オーバーが事実上存在せず、プラグインの仕様(当然だが、リミッター系のプラグインは0dbFSを超える出力を考慮していないものが多い)以外にクリップする要因がほとんどないため、入口はリミッターでなく単純なアンプで差し支えないことが多い。

その他

帯域を狭く使う場合、マイクによってはディエッサーが必要ない。というか、帯域を広く使う場合でも、必要性(サ行で発生する高域の音が耳に刺さるとか)を感じてから導入を検討すればよい。シェイパーがかかるので追加のコンプもいらないことが多そう。

エキスパンダーの直後にゲートを置いて併用する手もある。エキスパンダーのリリース(効き終わり)をやや速く、ゲートのスレッショルドを「エキスパンダーが効ききった状態で作動し始める」ように設定し、アタック(効き始め)を緩やかに、リリースをごく急激にしてやると、完全な無音への移行がスムーズにできる。





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