英詩の基礎知識 meter:詩脚、歩格(footで数えることもある) iambic:弱強格(ないし短長格、以下の格に同様) trochaic:強弱格 anapestic:弱弱強格 dactylic:強弱弱格 amphibrachic:弱強弱格 spondaic:強強格 couplet:二行連 triplet:三行連 quatrain:四行連 catalectic:韻脚不完全 alliteration:頭韻 assonance:類韻 rhyme:脚韻 feminine rhyme:女性韻(仏詩では意味が違い無声のeによる押韻を指す) feminine ending:女性終止(音楽でも弱拍での終止を同様に呼ぶ) blank verse:無韻詩(暗黙のうちにiambic pentameterを前提とすることが多い) run-on line:句またがり(enjambment)する行 end-stopped line:修辞的休止を持つ(句またがりしない)行 caesura:中間休止 final rhyming couplet:場面切り替えを示す押韻された2行 oxymoron:撞着語法 high vowel:高舌母音(low sonority) low vowel:低舌母音(high sonority) acrostic:折句 portmanteau:かばん語 ペトラルカ風(イタリア式)ソネット:Petrarchan sonnet(Italian sonnet) abab abab cde cdeまたはabab abab cdc cdc (後にabba abbaの前半とcdc dcdの後半が出現する) シェイクスピア風(イギリス式)ソネット:Shakespearean sonnet abab cdcd efef gg スペンサー風(伊英折衷式)ソネット:Spenserian sonnet abab bcbc cdcd ee スペンサー連:Spenserian stanza ababbcbcc(c);最終行はアレクサンドル格(alexandrine) アレクサンドル格:alexandrine 本来は休止(caesura)のある12音節(ないし弱強六歩格)の詩行(多くの場合6音+休止+6音)を指す。英詩では、弱強五歩格をベースに弱強六歩格を付け足し(ないし挟み)、その六歩格の部分をアレクサンドランと呼ぶことも多い(上のスペンサー連のように)。 帝王韻律:rhyme royal ababbcc イングランドと英語の大まかな歴史 前5cころ ケルト人(ローマで「ガリア人」と捉えられていた人たちと大部分が一致するが、細かく考えると、前者はケルト語派に属すこと、後者はケルト語の一派であるガリア語を話すことを前提にした言い方なので、概念としては同じでない:インド・ヨーロッパ語族ケルト語派には、現在のアイルランド語やウェールズ語などが含まれる)がブリテン島に侵入。これ以前に先住民がいたのかどうかはっきりせず、先住民が大陸の影響でケルト化されただけという可能性もある。 前58~51年 ガリア戦争。前55年と54年にカエサルがブリタンニアに遠征するが、征服には至らなかった。 43年 クラウディウス帝の遠征により属州ブリタンニアとなり、ケルト人(ブリトン族、古ブリトン人)はローマ化してゆく。 375年 ゲルマン民族大移動が始まる。 5c初頭 アングル人、サクソン人、ジュート人(これらが同化してアングロサクソンになる:サクソン人の言語である低地ザクセン語は、英語が属するアングロ・フリジア語群との共通点を多く持つ)やアイルランド人(アングロサクソンと違いゲルマン語派西ゲルマン語群ではなく、ケルト語派)などの侵入が相次ぎ、ローマがイングランドの支配を実質的に放棄。アングロサクソン(デンマーク~ドイツ北部あたりから侵入した複数の部族が同化したもの)がイングランドの支配的勢力になってゆく。 481年 クロヴィス1世がフランク統一、フランク王国成立。 597年 グレゴリウス1世が修道士を派遣し、カトリックが正式な布教を開始。この頃が七王国時代の始まりと言われる。 1013年 デンマーク王スヴェン1世がイングランド王となり、デーン朝が始まる。息子クヌーズ大王の代(1016年)に北海帝国が成立するが、短期間で衰退。デーン人が話す古ノルド語(北ゲルマン語群)の語彙がさらに英語に流入したか。 1066年 ノルマンコンクエスト。ノルマンディ公ギヨーム2世がヘイスティングズの戦いに勝利、ウィリアム1世としてノルマン朝を開いた。通常はこのときを境に古英語と中英語を分類する。 15c初頭 大母音推移の開始。強勢のある長母音の舌の位置が一段ずつ高くなり、それ以上高くなれない母音は二重母音化していった。中英語の末期と重なる。 1476年 ウィリアムカクストンが印刷を開始、15年ほど遅れてロンドンでも印刷が始まり、活字時代が幕を開ける。この前後は中英語が近代英語に変化してゆく時期で、初期近代英語という独立した区分を与えることが多い(そうしない場合は1500年前後を中英語と近代英語の境目とする)。 17c前半 大母音推移が完了。初期近代英語を別枠で設けた場合、ここから20世紀までが近代英語の括りになる。 第1回十字軍(1096-1099)、百年戦争(1337-1453)、薔薇戦争(1455-1485ないし1455-1488)、英国国教会の成立(1534)、テューダー朝(1485-1603)とエリザベス1世在位(1558-1603)、清教徒革命(1642-1649ないし1642-1660)、名誉革命(1688-1689)、スコットランド併合(1707)、ステュアート朝王政復古時代(1660-1714)、ワットの蒸気機関(1769)、アメリカ独立宣言(1776)、アイルランド併合(1800)、ナポレオン戦争(1803-1815)、ハノーヴァー朝(1714-1901)とヴィクトリア女王在位(1837-1901)あたりは合わせて覚えておきたい。 古英語 アングル人とサクソン人が話していた言葉。古ドイツ語の一派である古低ドイツ語と近縁。デーン人の古ノルド語ともしばしば接触した。男性・中性・女性の3性、単数と複数の2数、主格・属格・与格・対格の4格などを特徴とし、否定副詞neを動詞の前に置いて否定文を作った。ゲルマン語としての骨格がしっかり残っていた時代。 中英語 ノルマン語の語彙が流入。それまで影響の強かったウェストサクソン系の英語に代わって、ロンドン周辺の英語が勢力を増した。まだ中性代名詞が残っており、否定はne+動詞+notとフランス語風になった。上流階級から順にフランス化してゆく時代。 初期近代英語 現代英語の人称代名詞がだいたい出揃う(thouやyeなども初期には残っている)。二人称単数現在の語尾(e)stがあり、三人称単数現在の語尾も(e)thであった。否定のneが次第に消失し「迂言的do」(つまりdo+not+動詞の形)が出現するが、単に動詞+notとする例も多い。欽定訳聖書、シェイクスピア、ミルトンなどに代表される時代。 近代英語(ないし後期近代英語) 現代の英語とほぼ変わらない形ができあがる。