チューニング


上段は平均律で、A4を440Hzとして、C4(中央のド)を440/1.681793で求め、そこからAまで半音上がるごとに1.059463をかけていって、Aでいったん端数を払ってからBまでまた同じ作業を繰り返し、最後に有効桁数5で四捨五入した。下段は純正律で、Cを261.63Hzとした場合(平均律との差をセント単位で併記してあるが、減5度や短7度の高さは流儀によって異なる)。

CC#
D♭
DD#
E♭
EFF#
G♭
GG#
A♭
AA#
B♭
B
261.63277.18293.66311.13329.63349.23369.99392.00415.30440.00466.16493.88
261.63
0
279.07
+11.7
294.33
+3.9
313.96
+15.6
327.04
-13.7
348.84
-2.0
373.35
-9.8
392.45
+2.0
418.61
+13.7
436.05
-15.6
465.12
-3.9
490.50
-11.7
音叉を使うにしても、調子笛(ピッチパイプ)を使うにしても、たいていは440HzのA音が出るはず(220Hzが出るものや、変り種でC音やG音が出るものもある:高級品の調子笛はセント単位で音程を変更でき、440Hzから7.85セント上げると442Hzになる)。音叉や調子笛の音自体が狂ってしまうと話にならないので、取り扱いは丁寧に(音叉を鳴らすときに硬いものに当てない)。音叉は、耳で音を聞く、柄を楽器のボディに当てるという以外に、こめかみの上や額に当てたり歯でくわえたりして音を骨に響かせる使い方もある(好みの問題)。


ギター族

基本的に、締める(音程を上げる)方向に音を合わせていく(緩めて合わせると狂いやすい)。新品の弦を張った直後は、弦の伸びによってテンションが下がりフラットするのでこまめに再調整をする。弦を使い古すと倍音が薄くなる(エレキベースなどでは、あえて古い弦を使って倍音を殺すことがある)。

ギター(レギュラーチューニング)

基本的に低音から合わせていくので、他の楽器と合わせるならE2をもらえばよい(筆者は、友人のギター弾きがチューニングをするときに、親切のつもりでAをやったら「Eをくれ」と言われたことがある)。チューナーを使う場合は順番を気にする必要はない。

音叉や調子笛はA4が出るものがほとんどなので、5弦の開放か12または5フレハーモニクスで合わせる(好みだが、12フレハーモニクスで合わせるとやりやすい気がする)。その後6弦5フレと5弦開放、5弦5フレと4弦開放、4弦5フレと3弦開放、3弦4フレと2弦開放、2弦5フレと1弦開放、と合わせていき、最後に6弦(の開放か5または12フレハーモニクス)と1弦が合っているかどうか確認する。

また、ギター自体は平均律の楽器(フレットの切り方がそうなっている)だが、6弦5フレハーモニクスと5弦7フレハーモニクス、5弦5フレハーモニクスと4弦7フレハーモニクス・・・と合わせていけば純正律(っぽい)チューニングができる(あまり利点があるとは思えないが)。もしくは、ヴァイオリン風に6弦開放と5弦開放で濁りのないPowerAが鳴るように、5弦開放と4弦開放で濁りのないPowerDが鳴るように、・・・としても同じ結果になる。

カポタストのつけはずしを行うと微妙にテンションが変わる上に狂いも出るので、チューニングを取り直しておく。

ギター(変則チューニング)

まず、すべての弦を半音~全音程度下げるチューニングがある。半音下げがアコギで好まれるほか、Gメジャーの曲を全音下げで演奏するとドミナントのローコード(Dの音だがEのフォームで押さえる)が重くなる(低音側に寄る)効果がある(ドロップDチューニングにも同様の効果はある:ローインターバルリミットの関係でベースの動きが制限されるので注意)。もちろん、テンションが下がっているのでびろろんとした響きになる効果もある。

6弦だけを全音下げたドロップDチューニングは6弦から順にD、A、D、G、B、Eとなるので、ブリッジコードを多用して、4~6弦でパワーコード+1~3弦でメロディといった奏法が可能。発音可能な最低音が低くなっているために重い音が出せるのは半音下げや全音下げと同様。1弦も全音下げてD、A、D、G、B、Dとした場合はダブルドロップDチューニングと呼ばれる。ダブルドロップDから2弦を全音下げたDADGADと呼ばれる変則チューニング(名前の通りD、A、D、G、A、D)もあり、ジミーペイジがカシミールという曲で使った例が有名。

すべての弦を開放で鳴らしたときに任意のコードになるチューニングをオープンチューニングといい、スライドバーを利用する場合に使うことが多い。よく使われるのはオープンG(6弦から順にD、G、D、G、B、D)とオープンD(同じくD、A、D、F#、A、D)で、オープンDは全音下げチューニングと同様Gメジャーのドミナントを重くできる。オープンAやオープンEのほか、稀にオープンC6(C、A、C、G、C、E)が使われることもある。

また、オープンDにチューニングしてGとCは人差し指一本で押さえるというバカ技も存在する(ちゃんとセーハできればの話だが)。ちなみに、マイナーコードは2弦の音を全音上げたメジャーシックススで代用する(さらに5弦と6弦をミュートすれば本当のマイナーコードになる)。キーがD以外の場合は、もちろんカポタストを使う。

この他、CとCmもしくはFとFmの形を基本形にして、フレットの平行移動だけでコードチェンジするという手もある(これはレギュラーチューニングのスライドギターで普通に使える)。これをさらに推し進めて、GDGDのオープンPowerDにチューニングする4弦の楽器(オリジナルの鉄弦楽器が一五一会(いちごいちえ)、廉価版が音来(にらい)、小型化してナイロン弦を採用しさらに安価にしたのが奏生(かない)という名前:三線とギターの長所を取り込んだらしい)もある。

ベース

3弦をA4に合わせるときに3フレハーモニクスを使うことがある以外はギターと同じ。

弦楽器の弦の太さについて

詳しくは音が出る原理のページに譲るが、弦の固有周波数を2倍にする(音を1オクターブ上げる)には、長さを半分にするか、張力(テンション)を4倍にするか、単位長さあたりの質量を4分の1に(材質が同じであれば、弦の直径を2分の1に)、固有周波数を半分にする(音を1オクターブ下げる)には、長さを2倍にするか、テンションを4分の1にするか、単位長さあたりの質量を4倍に(材質が同じであれば、弦の直径を2倍に)する必要がある。

ここで問題になるのは弦の太さなのだが、上記からわかるように、弦の直径が2倍になると(弦の全長はそうそう変えられないだろうから)テンションを4倍にしないと元と同じ音程が保てないし、弦の直径が半分になるとテンションを1/4倍にしないと元と同じ音程が保てない。

ということで、ライトゲージ指定のギターにヘビーゲージを張ったり、その逆をやると楽器が非常に傷む。ただし、問題は太さではなく重さなので、密度の低い(軽い)材質の弦なら太くても比較的低いテンションで同じ音程が出せるし、密度の高い(重い)材料の弦なら細くても比較的高いテンションで同じ音程が出せる。



鍵盤など

自分で調律できるような人がここを読む必要もないだろうし、特性だけ。Sカーブ(単純な平均律と比較して、低域を低め、高域を高めにする)またはLカーブ(単純な平均律と比較して、高域を高めにする)でチューニングされることが多いが、リニア(単純な平均律のまま)にする場合もある。

なお、他の楽器が鍵盤から「音をもらって」チューニングする場合は上記の調律カーブに注意が必要。たいていの場合C4~C5あたりの音は単純な平均律と一致するのでそこで合わせるのが無難(もちろん意図的に端の方に合わせる手もある)。

ピアノ

そう簡単にはチューニングを変えられないので、複数の楽器で演奏する場合にはピアノに合わせるしかない。調律(音程の調整)のほかに、整調(メカニカルな部分の調整)や整音(音色の調整:タッチにも影響)という作業をすることがある。鍵盤打楽器ほどではないが、温度や湿度でチューニングが変わりやすい。

鍵盤打楽器

温度や湿度でチューニングが変わりやすい。高音多湿であるほどフラットする(音板が金属製なら温度、木製なら湿度がより強く影響)。チューニングが大きくズレてしまうと、音板と共鳴管の固有周波数が合わなくなる。マリンバやシロフォンのチューニングは音板を削って、エレピでは内部のスプリングを使って行うが、その他の楽器についてはよくわからない。

ドラムス

テンションを変えたりミュートを変えたりして調整する。シンバルなどは丸ごと取り替えることも。音程感の薄い音(噪音)が多いのでチューナーなどは普通使わないが、スペアナを使ってセッティングする人はいる。スネアドラムのスナッピーなどは、特定のトーンに共鳴するよう調整することが可能。ダブルヘッドのタイコ類は、それぞれのヘッドの合計ピッチに比例して基音が決まり、バターサイド(トップ)が聴覚上のピッチを左右する。

電子楽器

基本的には、オシレーターをはじめとする部品や回路の精度で音程の正確さが決まる。高級機種なら手元でのチューニング変更もできるはず。また、電源が安定していないと「変な音」になることがある。



参考リンク

Making Sound Electronics

Rolandのチューニング豆知識


オマケ(アクシスブルースチューニング)

とりあえずでやってみたが、使いでがあるのかないのかイマイチわかっていないチューニング。

基本的な考えはドロップDと似ており、低音弦3本を中心にしてコードを、高音弦3本を中心にしてメロディを演奏する。チューニングは「6弦=E、5弦=G、4弦=D、3弦=A、2弦=B、1弦=E」で、レギュラーチューニングから5弦を全音下げ、3弦を全音上げた形。ブルース用なので5弦のG音と4弦のD音はやや高めにチューニングする。

低音弦3本(4~6弦)を開放で鳴らすとE7がアクシスヴォイシングで鳴る。メロディには、1弦または6弦開放のE、1弦3フレまたは5弦開放のG、3弦開放のA、2弦開放のB、2弦3フレまたは4弦開放のDを使い、フレットを押さえる音はすべてクォーターチョーキングにする(結局ブルースペンタトニックスケールになる)。普通のストロークを入れたい場合は、3弦をミュートするか2フレで押さえる。

これを平行移動して、Bは7フレセーハ、Aは5フレセーハで演奏するというバカ技なのだが・・・まあそのうち機会があったら何か録音でもしてみようと思う。



もどる

自滅への道トップページ