ベリさんのサウンドユニット(13/09/02)

ローエンドフロアミキサーがベリさんの独壇場になって久しいが、パソコン用のサウンドユニットもリニューアルしてやる気マンマンに見える。迎撃の中心はTASCAMか。

まずはやはりUM2だろう。いくらなんでも「そのツマミはマズイんじゃないの」と思わずにいられないが、同価格帯はUS-100が堅実に守っているので一気の突破はひとまずないか。UMC22はツマミの位置が違うだけなのかな(未確認)。UMC202とUMC204はちょっと及び腰だったか。他の2in2out勢(もともと、POD STUDIOやUSB Dual Pre Project Seriesのような特色でもないなら、存在価値が希薄なクラスではあった)の首根っこは押さえたかもしれないが、USシリーズとの直接対決だと苦しそうに見える。まあXenixQシリーズがあるので、ベリさん的にはムキになる必要はないのかもしれない。

そして真打ちFCA610。なにも赤く塗らなくてもよかったんじゃないかという気がしてならないが、FireWireとUSB2.0の両対応で6in10out(コンボ2+アナログライン2+コアキシャルデジタル入力、アナログライン8+コアキシャルデジタル出力、ヘッドフォン2系統)と面白いレイアウト。この価格帯にヘッドフォン出力2発モデルを投入してきたのはさすが。アナログラインを2(ステレオ1系統)にしたのが吉と出るか凶と出るか。発売直後でもう2万円を切っているが、US-366はさらに4千円くらい安く、PRESONUSのFireStudio Mobileも割と近い価格。

手薄なところに切り込んだFCA1616はやはり赤い。ADAT(しかも入出力両方)とインサートにも対応してレイアウトは万全。他がどうこうよりも「ラックマウントのローエンド」という需要自体がどれだけあるか。あるいはこの製品で需要が掘り起こされるかもしれない。FOCUSRITEも健闘しており、ベリさんほどの価格押しはできないだろうが、Scarlett 6i6、Saffire PRO 24 DSP、Saffire PRO 40あたりのレイアウトはわかっていらっしゃる感じ(6i6を8in4outにしたらもっと筆者好みなのだが)。

今年の冬あたりに情勢がどうなっているか見もの。


個性派エレキ弦(13/09/07)

SGもどきにThomastik-Infeld stringsのIN110というのを張ってみた。ヴァイオリン弦で有名なメーカーらしい(公式サイトのトップにグラサン+革ジャンのオッサンがででんと控えており、オーストリアで有名なミュージシャンなのかと思ったら創業者らしい)。プラパッケージ(PET)の中に紙袋で個別包装されているのだが、止めているシールの貼り方がテキトーなうえ、開けると手でなんとなく丸めたような状態で収納されている(乱雑な感じではないが、大手メーカーの弦に慣れているとビックリする)。

微妙に気後れしながら弦を取り出すと手触りでまた驚く(初めて買った人はぜひ6弦から取り出してみよう)。とてもフニャフニャしており、エレキギターの弦とは思えない。違うゲージの弦が間違って入っていたのかと思い外したEXL110と比べてみたがやはりライトゲージで間違いない。巻き線に特殊な合金を採用したというのが売り文句なのだが、どう考えても芯線が普通のエレキ弦と違う。プレーン弦も柔らかめで細く感じるがワウンド弦ほど極端ではなく、柔らかさの割にチョーキングへの反応が敏感でまた驚く(曲がりやすく伸びにくいということなのだろうか)。

サウンドハウスの説明文によると「全周波数帯でバランスの良い明瞭なサウンド」らしく、鳴らしてみるとハイミッドがグチャっと混雑した押しの強い音が出た。低音もけっこう強めで、ゲインが高いというのはどうやらその通りのようだ。ピックの種類による音の変化が激しく、クリーンだとTUSQ(ハイミッドが抑えめでハイが伸びる特徴と合わさって比較的ノーマルな鳴りになる)やポリアセタール(もともと地味な音色なので合計のキャラがほどよい暴れ方になる)やポリカーボネート(開き直ってガシガシの音色にする)などが合うようだ。指弾きも引っ込みがちな帯域が強調されているせいか気分よくできる。反応が敏感な割にプリング(左手のプリングオフではなく右手のプル)などの極端な音色はあまり暴れないのが不思議。

パッケージを見ると「perfect for heavy effects users」とあるし、まずはドライブサウンドを試してみるとこれがものすごくよい。弦自体がナチュラルなチューブスクリーマーというか、適当なドライブアンプに繋いだらあとはピックとピッキングとギター本体の設定だけで押し切れてしまいそうな勢い。ウルテムでもトーテックスでも厚めでも薄めでも丸くても尖っていても、それぞれの個性が出て変化を楽しめるし、ピッキングで音色を変えるのも簡単。クリーンコーラスは少し野暮ったくなることがあるが、直球サワヤカ系以外は普通にこなせそう。フェイザーとの相性がよく、キンキンしないので使える設定の範囲が広がる。なぜか、生音がやたら爽快に鳴る。

大手メーカーの中ではアーニーのスリンキーとキャラが近いが、筆者好みなのは大差でIN110。SGもどきは透明感のある音色を重視したいのでストラトもどき用にミディアムゲージを、と探したら、011、013、020w、030、042、052という変態的なセット(ジャズギター用のエクストラライトを3弦ワウンドのままソリッドエレキ用にカスタムして、さらに少しヘビーボトム気味にした感じではあるが、やっぱり11-52で2弦013というのは細いと思う)でどうしようか悩み中。シングルコイルと合わせたら面白そうなキャラには違いないのだが。


参考になるサイトのメモ(13/09/11)

あるエンジニアの回想録というブログのフィルタ解説がわかりやすい。


IN110その後(13/09/17)

張ってから10日ほど経ったわけだが、ヘタってきた音色がまたいい感じ。ドライブトーンの押しの強さはやや引っ込んだものの、クリーントーンがサラっと鳴るようになった。STUBBYの3mmでシャリっと弾いても、薄くて丸いデルリンでモコっとさせても、ザラっとしたウルテムで枯れさせてもいい。


リファレンス(13/09/19)

この間ハーマン(AKG)がK712PROとK612PROを国内発売した(国外の発売は4月だったはず)。筆者はK700系の機種を持っていないし欲しいとも思わないが、正直「それはないんじゃないのハーマンさん」「K702はリファレンスモニタだったんじゃないの」と思わずにいられない。

K702の発売がたしか2008年(K701は2005年発売で日本は2006年から)で、ちょうど5年後というのはいかにもタイミングが悪い。しかもそのK702には、ちょっと前に仕様変更が入っている。リファレンスモニタというのは「売れ行き悪いからモデルチェンジでテコ入れ」なんてことをやっていいカテゴリではない(やるのはメーカーの勝手だが、ユーザーには不便と混乱しかもたらさない)。

AKG自体は、何十年も前の製品の保守部品を作り続け、モデルチェンジで不評を買ったこともあるがラインナップの維持もそれなりに頑張ってきたメーカーで、ハーマンも業務用製品の扱い方は知っているはず。ローエンドでの暴れっぷりは頼もしいが、もうちょっと慎重にやった方がいいカテゴリもあるように思う。


また個性派エレキ弦(13/09/24)

今度はR.CoccoのRC10を試してみた。このメーカーはイタリアの老舗らしく、ラベラの親会社みたいな立場にもあるらしい(筆者は詳細を知らないが、SadowskyさんがLaBella is owned by Richard Cocco Jr.. Eric Cocco is his sonと言っていたので多分そうなのだろう:わりと有名なギター屋さんなのだが、気さくな人なのかしらね)。

箱を開けるとジッパーつきのビニール袋に個別包装されており、けっこううっとおしい。保管に万全を期したのだろうが、ダダリオやGHSやSITなんかのやり方の方が筆者は好き。IN110ほどではないが柔らかめのワウンド弦と、ツルツルカッチリ系で微妙に細く感じるプレーン弦。メッキが違うのだろうか(ダダリオのEXPのプレーン弦に似ているような気もする)。

最初に気付く特徴は巻きやすいこと。なぜかマーチン巻き(巻き返し)が作りやすい。鳴らしてみると、音程が明確でハキハキしており、高域低域とも目立ったピークディップがなくどこまでも伸びる。また、とくに嬉しい特徴ではないが、クリスタルクリーンの気持ちよさが群を抜いている。生音はシャリンシャリン。歪ませると荒っぽくなりがちなのだが、キャビネットシミュレータを通すと大化けする。クリーンコーラスはキレがあってサワヤカ。パッケージから出音に至るまで、キッチリカッチリ隙なく淀みなくが徹底されている感じ。

やはりピックの違いは顕著に現れるが、ピッキングの違いにはそんなに敏感でない。ピッキングの傾向が現れやすい中高域が持ち上がっているIN110に対して、高域が上まで伸び切ってピックのキャラが反映されやすいRC10、ということなのかもしれない。キツい音色になりすぎた場合も、キャビネットモデルだけ選んでやればおとなしくなる。


RC10その後(13/09/30)

張ってから1週間ほど経ったわけだが、少しヘタらせた方が扱いやすいかもしれない。音色やタッチに(クセはあるものの)飛び抜けた魅力があるわけではないが、基本性能の部分で「ぞんざいに扱っても耐える」能力は驚くほど高い。チューニングの安定性には巻きやすさも大いに影響していると思う。こういう意味の「高級品」があってもいいな、と思った(自動車にだって、運動性能や運搬力を度外視した「高級車」はあり、一定のニーズとユーザーを得ている)。

追記:1ヶ月以上張りっぱなしにしてしまったのだが、錆びが出てこないのはもちろん、ハイが削れてもハイミッドが粘る感じで、枯れた音色になるというよりは芯が残る感じ。デザイン全体に、バランスや限界性能は無視して、とにかく有り余るほどのマージンを設けたような印象がある。気に入ってはいるが鳴らす頻度はあまり高くないギターなどによさそう。

追記:結局4ヶ月ちょっと無交換のままだった。週に1回くらいは弾いていたし完全にノーメンテだったが、驚くべきことに普通にチューニングできて音もそれなりに出る。錆は浮いているが目立つほどではなく、比べるのもナンだが、2月23日の日記で触れた「新品のMTR-10」よりはるかにマシな状況。長寿命を期待するなら下手なコーティング弦より断然こちらだと思い、ストラトもどき用に3弦プレーンのミディアムゲージ(RC97:011、014、018p、028、038、050で、EH-11と同じく筆者の理想ゲージ)を買った。SGもどき用はもうちょっと種類を試すつもり。



もどる / 音楽メモの目次にもどる

自滅への道トップページ