コピーガード(09/08/05)

何か月か前の、筆者とマーチンの会話。

マ:CDをコピーされるのってさ、確実に防ぐ方法はないの?
筆:あるよ。CD買った人がいたら、家までついていって、コピーしそうになったらグーで殴ればいい。
マ:いや、もうちょい簡単な方法で・・・
筆:買った人に「コピーしないでね」ってお願いするのが一番簡単なんでない?
与太話ではあるのだが、これってけっこう面倒な話である。

実際のところ、カジュアルコピーは問題にならないというか、問題にするよりも取り込み方を工夫すべきだと思える(あくまで、作り手としての筆者の個人的な認識)。たとえば「CD1枚1500円、個人の購入に限り2枚で1900円、3枚で2300円」のような売り方をすれば、カジュアルコピーをするメリットを薄めつつ、従来コピーで済ませていた層を売上に取り込むことができる(手売りならではのやり方ではあるが)。

不特定多数へのコピー配布を「全曲コンプリート、そこそこ以上の音質、短いタイムラグ」という条件をそろえてやられると困ったことになるが、それをやるのは完全に悪意がある人だけなわけだし、そもそも手売り規模のやり取りでは「元気な困ったさん」に付け狙われでもしない限りケアする必要がない。ケアする必要に迫られたとしても、結局「悪意と元気とそこそこ以上の技術」を持った相手を向こうに回すことになるため、コピーガードなんぞやっても無意味である。

コピーに関する限り、悪意と技術と執念がある相手には「後手に回って法的対応」以外の対策はない。元がデジタルの世界なので「技術でなんとかなるのでは」という思い違いをついやってしまうが、実際に技術でなんとかしようとすると、誰も得をしないコピーガードを導入していたずらに混乱を招くことになると思う。

採算や利便性を度外視すれば、たとえば「透かし」でシリアルナンバーを埋め込む(当然、CD1枚ごとに異なるデータを書き込むことになるし、シリアルナンバーと「現在の所有者」の個人情報を紐付けて把握する仕組みも必要になる:音楽の場合アナログ録音してしまうという最終手段があるので、それに耐える透かしでないとダメ)など、不特定多数へのコピー配布を大幅に難しくする方法がないわけではない(コピー自体を制限しても再生できる限りアナログコピーはできるし、ぶっちゃけた話、問題になるのは「デジタルで高音質だから」ではなく「配布が容易で広がり方も速いから」である:ここを取り違えると妙な話になる)。


数学的に美しいマルチコーラスイフェクト(09/08/13)

以前無理数比(に近い)のモジュレーションを利用して「低いウェットレベルでも存在感を出しやすい」マルチコーラスイフェクトを追求したことがあるが、これを高めのウェットレベルで使うとあまり美しくない。そこで高めのウェットレベルで使いやすい形を考えてみたが、結局「円を等分する」のがよいのではないかということに思い至った。

まずモジュレーション(とトレモロ)の速度は統一する。今回はあえてムラを作るのではなく、言うなれば「安定した揺らぎ」を目指すからである。変化速度を統一しないと、効きにムラができる。で、音の幅は位相差で作る。

その位相差だが、円を3等分、つまり120度づつ位相差をつけてやるともっとも美しい。式にすればsin(x)とsin(x-pi*2/3)とsin(x-pi*4/3)ということになるが、これらをすべて合計すると任意のxに対してゼロになる。

90度づつsin(x)とsin(x-pi*1/2)とsin(x-pi*2/2)とsin(x-pi*3/2)でもよいし、60度づつsin(x)とsin(x-pi*1/3)とsin(x-pi*2/3)とsin(x-pi)とsin(x-pi*4/3)とsin(x-pi*5/3)でもよい。180度でsin(x)とsin(x-pi)というのもありえるが、これは「音程差がゼロになる瞬間」ができてしまうため「ムラのない感じ」にしにくい。

で、これらをステレオ(2ch)に配置してやるわけだが、PANも等間隔にしてやる。奇数で等分した場合センターにもウェットを持っていくことになる。または、6等分して偶数奇数で左右いっぱいに振る(1・3・5の出力を左いっぱい、2・4・6の出力を右いっぱいなど)手もある。

これを、1小節分(たとえばテンポ120で4分の4拍子なら2秒)で半周期(この例だと都合0.25Hz)くらいのモジュレーションと組み合わせて、20centくらいの幅で振ってやるとどうかなと、現在試行錯誤中。とりあえずag-worksのコーラスで頑張ってはいるが、単機能かつ高性能(とはいっても、LFOの周期と初期位相と振幅が設定できて、普通にFMしてくれればそれでよいのだが)なモジュレーションってないものだろうか。



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