PAの初心者お助け講座

ミキサの操作 / 音の調整 / 返りを確保する / 演奏中に必要な操作 // もどる

何だかわからないけどPAをやらされることになって、でも長い文章は読みたくないという人のための解説。何よりも大切なことは「機材の取扱説明書をよく読む」ということなので、まだ読んでいない人はこんな解説を読む前にさっさと取扱説明書を読もう。最低でも、ミキサの取扱説明書だけは熟読しておくこと。

ミキサやMTRの操作は製品ごとに異なるし、マニュアルを読めばよい話なのでここでは触れない。とくにYamahaの機器はマニュアルが充実しており、オーディオ関連の知識を得るための読み物としても十分な価値がある。さらに嬉しいことに、マニュアルをオンラインで公開オーディオ製品用の目次)してくれているという太っ腹ぶり(販売終了製品も一部掲載されている)なので、アナログミキサのエントリーモデルMG10/2や4トラアナログMTRのスタンダードモデルMT400のマニュアルには(該当機器を所有していなくとも)ぜひ目を通しておくとよい(レンタル機材の機種がわかっている場合には予習用にも使える)。

ライブハウスなどではなく「〜区民会館」の多目的ホールとか公立学校の体育館とか「〜ホール」(〜にはひらがな3〜4文字が入る)のイベントルームとか、そういった場所でのPAを念頭に置いている。また、オーディオ機器の扱いにはそれなりに慣れているという前提で話を進める。持ち物として、ノート・下敷き・筆記用具・付箋などが必要なので忘れずに用意する。

ここに書いてある解説が間違っていたせいで、大切なライブに失敗したり、機材が壊れたり、壊れた機材が火を吹いてホールが燃えたりしても筆者は責任を持たないのでそのつもりで。筆者も素人なので詳しい情報はSound Engineeringのページトップミラー?)やミュージシャンのためのライブでいい音を出すための講座トップ)などを参照のこと。


ミキサの操作

PAをやるのに必要なものは何か、というと、まずはミキサ(ミキシングコンソール)である。何をする機械かというと、たとえばエレキギター・エレキベース・キーボード・ヴォーカルの4人がバンドで演奏する場合、各楽器からバラバラに出てきた音を混ぜ合わせて(mixして)お客さん用のスピーカ(PAスピーカ)から出してやる必要がある。それを行うのがミキサという機械、というわけ。多目的ホールなどでも、音楽イベントをよく行うところであれば8〜16チャンネルくらいのポータブルミキサをレンタルしていることが多い。アンプとスピーカ(一体型のものも多い)すらない場所だと、演奏を行うこと自体がまず難しいと思われる(ので、ここではアンプとスピーカは備え付けのものがあるという前提で話を進める:ぜひ持っていきたければ自前で用意してもよいが、サイズがサイズなので持ち込みの許可は事前に得よう)。

まず、すべての機器の電源がオフであることを確認し、アンプや楽器を含めすべてのボリュームがゼロになっていることを確かめてから、各楽器をミキサの入力に、アンプをミキサの出力につなぐ。MTRやミキサの入力部分には、ゲインレベル調整(トリム)と一時的なボリューム調整(フェーダー)の2種類がついている(ことが多い)ので、忘れずに両方ゼロにすること。また、ファンタム電源用のスイッチがある場合は必ずオフにしておく(コンデンサマイクを使う場合必要になることがあるが、初心者がPAでコンデンサマイクなんぞ使うな、というのが正しい姿勢)。ファンタム電源のスイッチには、ミキサ電源を切るまで決して触れないこと。

各チャンネルの入力部分にラインとマイクの区別がある場合は、マイクはマイク入力に、マルチイフェクタを通したエレキギターやキーボードの出力などスピーカにつなぐだけで音が出る楽器はラインにつなぐ(わからなければとりあえずラインにしておく)。エレキギターなど一部の機器をミキサーに直接繋ぐにはDI(Direct Injection box:訳すと「直接接続のハコ」)を使って接続しなければならないのだが、ギターはアンプから直に出すかマルチイフェクタを通してからラインで音をもらった方がずっとラクである(アンプを挟んで間接接続するならDIは必要ない)。エレアコはラインレベルにはちょっと弱い程度の出力の機種が多いが、まあそこは何とか上手いことやろう。

PAアンプへは「ステレオアウト」とか「STEREO OUT」とか「ST OUT」といった表記のあるジャックからつなぐが、レンタルの機器だとすでにつながっていることが多い(すでにつながっていたら、このプラグはいじらないでおこう)。「キュー」「CUE OUT」「モニタ」「MONI OUT」「CONTROL ROOM」「C-R OUT」「PRE FADER LISTEN」「PFL OUT」「PHONE」「AUDITION」「AUD OUT」などと書いたジャックにヘッドフォンをつなぐと、モニタ(音の確認)用の出力が得られる(各社表記はバラバラ:それぞれ多少意味が違うが、とにかくモニタ用の出力であることには変わりない)。

電源を入れる前に、各プレイヤーに「(マイクを含め)スイッチのオンオフやプラグの抜き差しは行わない、やむを得ず行うときは一声かける」ことをお願いしておく。ミキサについているイコライザやPANの類いをすべて真ん中にして、もう一度すべてのボリュームがゼロになっていることを確認してから、各楽器>ミキサ>アンプの順に電源を入れていく。不要なチャンネルのボリュームをゼロにしておくことは、ミキサ操作の基本中の基本なので、しっかり確認すること。とくにプラグの抜き差し時にボリュームが上がったままだとアンプやスピーカを傷める可能性がある(やむを得ず途中で機器を入れ替える場合はボリュームをゼロにして行うこと)。

無事すべての機器に火が入ったらミキサのマスターボリューム(の他にマスターに関連するボリュームコントロールがあるならそれも)とアンプのボリュームを「中くらい」にする。音量ツマミのところに「このくらいが標準音量」という目印がついていることが多い。どうしてもわからなければ、ミキサのマスターボリュームは7割くらい、アンプのボリュームは半分くらいにする。

そのうえで、希望のチャンネルの音がステレオアウトとモニタアウトに流れるよう(ミキサの取扱説明書をよく読みながら)どうにかして設定し、各チャンネルごとのボリューム(フェーダーで操作することが多い)を中くらいまで上げ、楽器から音を出しながらゲインレベルを(ゼロから)上げていって、希望の音量が出るよう調整する(ゲインレベルは接続機器との相性調整、ボリュームが通常の音量調整にあたる:普通、演奏中にゲインレベルを変えることはない)。

この時点で音が出ない場合は、電源が入っていること、ボリュームがゼロになっていないこと、各チャンネルの音がステレオアウトやモニタアウトに流れる設定になっていること、ミュート用のスイッチが入っていないことをまず確認、ついでライン/マイクの設定を確認してみる。それでもだめなら、機器別に動作をチェックする。ラジカセのラインアウトやポータブルオーディオのヘッドフォン出力などからアンプに音を流してみて、きちんと鳴るようならアンプは動いている。楽器をラジカセなどのラインインやマイクインにつないでみて、音が出るようなら楽器は壊れていない(楽器やマイクが複数ある場合、すべての機材が同時に故障する確率はかなり低いので、この確認は後回しにしてもよい)。アンプも楽器もOKでそれでもすべてのチャンネルが沈黙したまま、などという場合はミキサ(もしくはミキサの操作)に問題がある可能性が高い。などと問題の切り分けをしていく。


音の調整

まず、各チャンネルのローを音がわずかに変化するところまで削る(録音なら音質優先でもよいが、ライブの場合とにかく余計な音を拾わないことが重要)。ハイパスローカットフィルタ(カットオフ周波数が固定されているモデルもある)がついているミキサなら、低音楽器以外のすべてのパートにかけてしまえばいい(イコライザしかついておらず別途用意することもできなければ仕方ないが、イコライザでの調整はあまりおすすめできない)。ハイも、可能なら音が変わらないラインまでは切っておく。

ポータブルミキサについているイコライザはたいてい、ハイ用が100Hz、ロー用が10KHz周辺をポイントにした±10〜15dbくらいのシェルビングイコライザ(機器により多少差異があり、筆者が所有するYAMAHAのMT4Xだと80Hz/12KHzがポイントで±12db)で、中音域を操作するイコライザもついている場合は1KHzあたりを中心としたピーキングイコライザになっていることが多い。基本的な音作りはここで行うのがラク。

指向性の強いマイクを音源の至近距離で使うPAでは、近接効果という現象で低音が過剰に強くなるため、補正しておこう。あとは高音が出すぎて耳が痛い楽器を適当に引っ込めるのと、ヴォーカルを邪魔している楽器の中音域を削るのと、それでもヴォーカルが隠れる場合に中音域を上げてやる。

音量は、生ドラムか生ピアノが入るならそれを基準に決める。小さなハコでも力一杯ドラムを叩きたいなら、そのほかの楽器もそれに合わせるしかない。生ドラムと生ピアノが両方入っている場合はピアノをアンプに通すだろうから、ドラム基準でいいと思う。両方入っていなければヴォーカルもしくはその他のアコースティック楽器を基準に。電気楽器と電子楽器しかないなら、機材の性能が許す範囲でハコのサイズに合わせて適当に。

最終確認として必ず、客席に座って音のバランスを確認すること(配線の問題などで舞台の袖にしか機材を置けない場合もあるが、客席の前の方にミキサを置けると何かと便利)。


返りを確保する

PAスピーカはプレイヤーより前に置く(ハウリングを防ぐため)のが大原則なので、プレイヤー用のモニタ(返り)はぜひあった方がよい。PAスピーカの背面から音が漏れる場合は(漏れた音をモニタとして使うのはムリなので)何かで塞いでおく。

モニタスピーカーが最初から装備されているならそれを使うのが一番だが、なければラジカセやポータブルスピーカーでの代用を考える。できれば、ヴォーカルマイクなどの真後ろ〜斜め後ろになる位置にモニタスピーカーを置くと音が被りにくい(指向性が非常にキツいマイクを除く:マイクの取扱説明書に指向性のグラフがあるはずなので、感度の低い位置を確認しておこう)。ドラムス(生音がとにかく大きく、エアマイクを複数使い、場所的な余裕もほとんどない)はヘッドフォンを使うのがラク。ヴォーカルやギターでも、イヤフォンでモニタしている人はいる。人数が多いと端子が足りなくなるので、分配器などを間に噛ませるか、フタマタで増やす(フタマタで増やす場合はインピーダンスの変化に注意)。

プレイヤーから「オレの音だけ大きく返して」という非常に厳しいリクエストをもらう場合があるが、ミキサの前にアンプを通しているなら本人のパートだけ別に返してやるのは簡単なので、そのプレイヤー専用にスピーカを1つ増やしてやればよい(音楽用のハコならディストリビューターにExInという端子がついているはずなので簡単)。もっと困る例では、ヴォーカルの人から「コーラスだけ抜いて返して」なんてのがあるがAUX OUTやSEND OUTに必要な音だけ流してやって、欲しい人にだけ送ってやればできなくはない(お前はコーラスを聴かずにどうやってハモるんだという正論は胸の中にそっとしまっておこう)。


演奏中に必要な操作

音の微調整は、まあ好みでやってもやらなくてもよい(客席からバランスを確認してあってもお客さんが入ると音響が変わるので、微調整の必要がないわけではないが、ヘタにイジるとグダグダになる可能性もある:最低限リハーサルのときのバランスをしっかり覚えておくかメモっておくこと)。ハウったときだけは慌ててボリュームを絞る。

一方、楽器の交換やマイクスタンドからのマイクの抜き差しなどでは、タイミングを合わせてボリュームを絞る必要がある。また、一部の曲でしか使わないマイク(コーラス用とか)や楽器があれば、使用の直前までボリュームをゼロにしておいて、やはりタイミングを合わせてボリュームを上げてやる必要がある。

録音設備がない場合、ミキサーのREC OUTなどから出した音を録音しておくとよい。ミキサーの代わりにMTRを使っているなら録音は万全で、チャンネルごとに分離したミックス前の音を録音しておくことができる(当然、後から調整やイフェクト処理をする場合に格段にやりやすい)。とくに必要がなくても、アナログテープのラジカセでよいから、何らかの録音はしておくべきだと思う。録音時間によってはテープやDATの交換が必要なので忘れないように。

あとは、ステージをよく見ていればOK。たまに「オレの楽器の音が出ねぇ」とか「このマイクミュートして」とか、プレイヤーからリクエストが来るのでできる限り対応する。曲の合間にも「チューニング直すから返りくれ」なんてリクエストが来る場合があるので油断しない(チューニング用の返りについては、プレイヤーが手元で操作できるようにしておいた方がラク)。

作業が終わったら、すべてのボリュームをゼロにして「音源から遠い機器」から電源を切っていく。電源プラグはスイッチを切ってから抜くこと。機器やケーブル類の端子部分は軽くカラ拭きしておくとよいが、水拭きしたり強く擦ったりすると故障の原因になるので程々に。


オマケ(楽器の配置)

PAスピーカを使う場合モノラルで出すことが多いのであまり問題にならないが、ギターアンプなども使う場合は位置関係もちょっと考えたい。

1つは、クラシック風に(客席から見て)左が高音楽器/右が低音楽器(各楽器のコントラバスはバスの後ろ)とする方法。これは(奏者から見て)左側に音が飛びやすいヴァイオリンを基準に滑らかな音域変化を狙ったもの(低音楽器は音が回り込むので、どこにいても客席にはあまり関係ない)。アンプラグドでの演奏が前提(=モニタスピーカなどは使わない)なので、打楽器はステージ奥に配置する。クラシックでグランドピアノを使う場合、ピアノは(奏者から見て)右側に音が出ることと、指揮者が見えないと演奏できないことから、必然的に(客席から見て)左側になる(チャーチオルガンなどの場合は鏡を使って指揮者を見ることもあるようだが、ピアノでは普通やらない)。ピアノの独奏でPAを使う場合は、マイクが見えないようにステージ奥に向けて蓋を開ける場合もある。

ヴァイオリンではなくギターの場合、(客席から見て)右側に立った方が、半身になったとき見映えがするだろう。ギタリストがヴォーカリストと同じマイクを使ってコーラスを入れるような場合は、ネックが邪魔なので(奏者から見て)左にギター/右にヴォーカルの方がラクだと思う。ClaptonやJeff Beckあたりは客席から見て左にやたら行きたがるイメージがあるので、どちらでないとダメということもないのだろうが、響きや音域が似ている鍵盤と離す意味でも(客席から見て)右側に配置するのが無難か。ドラムスは中央近くに配置することが多い。

アコピの場合、奏者がステージ奥または手前にやや斜めを向くことが多いだろうか(手元を見せたい場合は客席にやや背中を向けるしかない)。Jazz風に完全に背中を見せる配置もありえる。エレピやデジピは前を向いて演奏することが多いだろうが、この場合客席から見て右側が低音鍵盤、左側が高音鍵盤になる(キーボードアンプなどからステレオで音を出す場合)。鍵盤がバスの領域も担当する場合は低音部を中央に寄せたいだろうから、客席から見て左側に鍵盤を置くことになる。左手がコードを叩きながら右手がヴォーカルと掛け合いをするような使い方なら、右側に置いて右手鍵盤からの音を中央近くに配置してもよいだろう。ギターは鍵盤の反対側に置くことになる(デジピよりもシンセなどでよくやる方法:ドラムスが中央にいるため、ピアノが左に入るとスペース的に右しか空きがなくなるという都合もある)。

ベースはドラマーから見て右(客席から見ると中央やや左)に立つことがやや多い。バスドラ/ベースとハット/リズムギターを合わせたいとか、ギターをドラマーから見て左に置いたらベースは反対に置きたいとか、いろいろ事情はあるのだろうが、ベーシストの好みよりはバンドの都合が優先されることが多い気がする。ドラムスのほかにパーカッション(ドラムスがワンバスセッティング(客席に向かってやや左を向くことになる)の場合はとくに、ドラマーから見て左に置くことが多い)を入れる場合は(両方とアイコンタクトを取れるので)ドラムスとパーカッションの間に入るメリットが大きい(が、Hungateのように構わずドラマーから見て右に立つ人もいる:MikeはSimonが客席に向かって左に寄ったとき以外はほぼ一貫してドラマーの左、Sklarはパーカッションなしでも左だったはず)。

パーカッシブな楽器が客席から見て右、メロディックな楽器が客席から見て左に行きたがる理由として、もしかしたら、右脳(左耳)はメロディに敏感で左脳(右耳)はリズムに敏感という説(自体の信憑性がどれだけあるのか知らないが)が多少は影響しているのかもしれない。




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