平成のゲームセンターの噂話

平成も終わりになり、昔の有名プレーヤーの紹介とか、そういう記事をネットでいくつか目にするのだが、筆者も現役で見知った人とか評判だけ聞いた人とか、噂話のタネをいくつか持ってるので、備忘録的にメモっておこうかと思う。筆者が知ってるプレイヤーはほんの一握りの人たちだし、表面的にしか知らない人の方が多く、また記憶違いもあるだろうことを断っておきたい。一部敬称が混乱すると思うが、筆者の記憶やら習慣やらに影響された結果なので大目に見て欲しい。


スト2界隈

いろいろ主張はあるのだろうが、最高のスト2プレイヤーをひとり挙げろと言われたら、筆者は迷わずまやこんさんを推す。最終的にはホークが性に合っていたようだが、ガイルもヤバかった。必ず当たるつもりで出したこちらの技がことごとく届かないのに、はるか遠くにいるはずの相手からガシガシ攻撃が届く。スト2がどうとかそういう枠を超えて、ゲームの上手さで筆者が生涯受けた衝撃の、ぶっちぎりトップを独走する人である。一人だけ別のゲームをやっているかのような異次元の動き。

じゃあ一番凄いプレイヤーを挙げろと言われたら、これも答えが決まっている。コモダさんしかいない。緻密さと大胆さ、精度と思い切り、なぜかやってくるドラマチックな場面、ヒーロープレイヤーというのはこういう人を言うのだろうと思う。最初の闘劇(筆者が現役プレイヤーだったのはこの頃が最後)の決勝なんか本当に凄かったし、リアルタイムでは見ていないがX-mania7の決勝でも意地を見せた。

さらに、一番恐ろしいプレイヤーを挙げろと言われたら、筆者の答えはカッキーさん(Master K)である。「100回やれば負け越す相手だろうけど1回やって勝つのは自分」という信念と、それを実行してしまう胆力の持ち主。どれだけ万全を期しても必ずどこかに穴を開け潜り抜けてくる。


ここからはキャラ別に思い返してみたい。リュウ・ケン・春麗使いは・・・シューティングDさん・兄ケンさん・オトチュンさん。いかにも関西っぽい動き方でガンガン押してくる。筆者が見た中ではちょっと格が違う感じ。本田使いは・・・そりゃもうくすモンドさんしかいないでしょう。初めて「本物の」三角避けやくすモンド乱舞を見たときはぶったまげた。この人は春麗も使えるのだが、対本田の対策が究極で、誰がやってもまず勝てないくらいのレベル。

ガイル使いは・・・ムテキくん(校長の弟子)。いや、たしかにまやこんガイルは凄いのだが、本当の「ガイル使い」というか、このキャラでどうやって勝つかということを突き詰めていたのはムテキくんだと思う。同様の理由でホーク使いも・・・東単騎さんを推したいのだが、動画で見たらまやこんさんホントすごいね。同着ってことで。カッキーさんのザンギとコモダさんのブランカは順当に。最初のMastersはカッキーさん+東単騎さん+ボーナスさんだったが、どうしてムテキくんが外れたのか筆者は知らない。

ダルシム使いは・・・これ自信がないのだが、当時秋葉か大手町(新宿とか渋谷とか、西の方ではなかったと思う、多分)でもの凄い対応力の黒っぽいダルシムを見たことがあって、話を総合するにあれが真ダルシムさんだったようなのだが、確認のしようがない。フェイロン使いは・・・この人もスコアネーム不明だが横浜セブンアイランドにたまに居た人。コンボを絶対ミスらない。バルログ使いは・・・紅石さん。最初の闘劇で筆者とチームを組んでくれた人で、東北から東京まで自転車で遠征してきたタフガイ。身体能力が高い人がバルログを使うとこんなに強いのか、とびっくりした。ディージェイ使いは・・・心当たりがいない。まあそんなに多くのプレイヤーを見たことがあるわけでもないので、ここは欠番にしておきたい。

キャミィ使いとサガット使いは・・・これはもう水無月さんとyayaさんしかいないでしょう、間違いなく。バイソン使いは・・・つーじーさん。この人もガンガン突っ込んで来るタイプで、調子に乗ると手がつけられない。ベガ使いは・・・筆者の記憶にある限り、一番強かったのはウメハラさん。もつれたときに必ず勝つ、ってことはもつれてないんだろうね、きっと。Bet50のチャンピオン。


トッププレイヤーと呼ばれるには何かが足りないのだが、突出した何かを持っている個性派プレイヤーたち。まずは下位キャラキラー:筆者(YOU@Pohwa)、つのっぴさん(つのガイル)、まっつんさん(Mつん)、婿チュンさん。キャラ勝ちしている組み合わせに徹底して強く、ガンガン攻めてくるトッププレイヤーの方が(事故勝ちを望める分)まだ勝ちやすい。総合力では一歩及ばないのかもしれないが、特定の組み合わせで「もっとも勝ちにくい相手」であった人たち。まっつんさんはナミキの人、婿チュンさんはMastersの人、つのっぴさんはとてもいい人。ダルシム使いKKYさんなんかもこっちのグループなのかも。

いろんな事情がある強豪たち:はらひさん、アキシマさん、マサさん(先ヅモのマサ)、ボーナスさん。はらひさんはブランカのパイオニアで、腕前も十分トップレベル・・・なのだが、この人には「スライディングをガードできない」という決定的な弱点がある(もういいよね、バラしても)。どれだけスラをもらっても立ち待ちは捨てたくないらしい。シリアルマウスを愛用する横須賀のドン。アキシマさんは・・・技術だけ見たらトップクラスで間違いないのだが、どういうめぐり合わせなのか大きな試合で勝てない。強いのは間違いないのだが。ナミキの春麗使い。マサさんはMastersのバイソン使い。上手いし強いのだが・・・そんなことが霞んでしまうくらいに天地を喰らう2の黄忠が上手い。ほとんど究極レベル。スト2はそこまで熱心にやってなかったみたい。ボーナスさんは・・・間違いなく実力者なのだが、半引退みたいな状態の期間が長かったみたい。

カメラ屋さんとタナカさん(足タナ)は足払い戦を極めた特異能力者。タナカさんはカメラ屋さんの弟子でナミキにいた人。どっちもリュウの垂直J大Kを常用する。にーあーさんはテクテク投げの大御所。筆者も目からウロコが落ちる思いをした。繰り返しの登場になるが水無月さんも凄かった。キャミィでもあれだけやれる、ということを示した唯一のプレイヤー。この人もナミキの人、と考えると、当時のナミキがいかに濃いメンツだったかがわかる(Mastersも凄いけど)。

そのほか思いつく限り。クラハシさん:有名人だし筆者がいまさら言うこともなさそう。多分世界で一番たくさんのソニックを撃った人。冷凍ガイルさんとは別人なのだがどこで情報が混乱したのか?KEN-Oさん(ジャイアンダルシム):遅咲きだったし周りの状況もいろいろだったろうが、ダルシムで全一だった時期がおそらくあるだろうプレイヤー。ナミキの人。永田さん(永田正月):東京のS本田使い、わりと打撃系で筆者が現役終わり頃に追及していたスタイルと共通するところがある(と思う)。ハマキさん:希少な東京のX本田使い。ナミキの人。ポニーさん(ポニ村):打撃系のザンギ、東京の人。セブンアイランドの本田使い:スコアネーム不明だがかなり上手かった。2号くん(2回転)とUSAさん:ナミキのバイソン2人組。アキバさん(ラーメン小池):コンボマニアだと思われがちだがダルシムからブランカに転向してかなり強くなった。ヨシミさん:ナミキのケン使い。ラルフレくん(ラルフレッド):最初の闘劇のチームメイトのもう一人。うるさい。とにかくうるさい。いちおMasteres。江古田の皆さん:バイソンの人が強かったような記憶がある。ナカムーさん:札幌のブランカ使い。地方の火を守ってる。黄ケンさん:札幌の若手。Heyだったかトライタワーだったか(エスカレーター横で20円だったとこ)の皆さん:本田の人とかケンの人とか。


ヴァンパイアハンター

TKOさん(ハンターおじさん):最強のハンタープレイヤー。持ちキャラが筆者と同じサスカッチで、実は誰なのか知らないころに馬場(Bet50にはハンターなかったはずだし、後でミカドになったとこか、鳳だか白鳥だか?あそこだったかもしれない)で対戦したことがあったのだが、異世界のスキルを見せ付けられることになった。当時すでにセイヴァーが発売されており、逆輸入の形で筆者もショートダッシュは実用化していたし、いんちきアイスバーンも独自に発見して「これって意図的に使えねーのかなー」なんて考えてはいたのだが、本当にレベルが違った。凄い。

柏木ビシャモン:実力者なのだがなぜか全国優勝に縁がなかった。ひとつひとつの動きの精度が違う、が、そこが強みなのでブランク明けだと苦しくなるみたい。川村さん:極まったフォボス使い。キャラ負けを誤魔化す神通力を持つ(フォボスは「どのキャラにも1発狙える」と言われることがあるが、川村さんが無理を通してねじ込んでいるだけだ、と筆者は思う)。ウメハラさん:スト2やってるときとは比べようもないくらい、とにかく効率的に動く印象。トップスリーの一角であるビシャも使えるはずだが、パイロン(モリは楽なんだけど、ビシャとカッチがけっこうキツい)の方が好きなのかも。ゴトーさん(ゴトバス):直接対戦したことは多分ないのだが、すごく「オルバスっぽい」オルバス。有名人なので、ゴトーさんの動きがオルバスっぽい動きになったのかも。平井モリガン:いわゆる純ウマさんで、ツボにハマると手がつけられない。ハラモリさん:調子に乗らないタイプのモリガン使い。カッチ使いにはとても切ない。うしぴーさん:遅咲きのモリガン使い。やっぱり人口多いな。どちらかといえばスキルとセットプレーで勝負するタイプ。まるささん:ハンターの最強プレイヤー。なぜ猫があんなに強いのか、何回負けても理解できない。ビクトルを使わせて世界一強いのも、多分この人。

続いて札幌ローカル。筆者(YOU@Pohwa):またも自分を先頭に持ってくる厚顔さがチャームポイント。北海道最強のカッチ使い(と自分で言っちゃう)。HGW@Pohwa:野生のザベル使い。やられた記憶しかない。狸小路ビシャモン:札幌時代はこの人とやるのが一番楽しかった。とにかくガン攻めKO狙い。王様アナカリス:札幌の駅前レタスの人。身体能力が抜群に高い。全国大会でもいいトコいった人らしい(伝聞)。ねこすけ:札幌のレイレイ使い。強気スタイル。レタス24の皆さん:ドノヴァンの人を中心にみんな強かったしいい人だった。もう少し早く知り合いたかった。片手ガロン:本人がこの呼称をどう思っていたかわからないが、筆者周辺のハンタープレイヤーはみんな、敬意と少しの畏怖を込めて「片手ガロン」と呼んでいた。そこに至るまでにどういう道のりがあったのかは知らないが、しかし彼のガロンは強かったので、当時の札幌のトッププレイヤーたちは全力で勝ちに行った。そしてそれでも全敗はしないくらいに、彼のガロンは強かった。当時札幌でハンターをやっていた人なら誰もが知っているプレイヤー。蛇足:筆者が考案した(のだと思う、他にやってる人見たことないし、多分)スト2X本田の小足百裂の操作(左手の親指で小Kを押す)は、彼のプレイを見ていなければ思いつかなかったに違いない。


オマケ1(そのほか)

バーチャ2は身内が主だったからなぁ。sLy@Pohwaとinu@Pohwa以外だと、やっぱりススキノサラさん(Kさん)。反応速度が尋常ではなく、PKとワンパン投げを、こちらのしゃがみorガードを見てから選んでくる。サイボーグなんじゃないかと疑ったほど。旭川ウルフ(こっちもKさん)も「俺が投げに行ったときは100%投げる」がハッタリじゃないレベルで強かった。なお筆者は2.1で引退。

筆者の周りではバトルテックよりもレッドプラネットが熱かった(オマケ2で詳しく書く)。Clan Pohwaって、筆者(ランナー)、sLy(クラッシャー)、shadow(クラッシャー/ブロッカー)、HGW(クラッシャー)、そんし(補欠)でよかったっけ?筆者は珍しい(というか多分世界で唯一)バグで走るランナーで、ダブルダブルとキル取りを積極的に狙うスタイル(東京で日本代表のチームとやったとき、すっごい面食らってる様子だった:破片にも判定あるのよね、あれ)。

札幌アミュージアムのエースチーム(North Attack Crew)がCATさんfussさんSCYTHE・・・と思って軽くぐぐったら、shadow元々NACだったんか。はー、そうだっけ。shadow抜けたからtona-kingが入ってたんだっけか?なんか最後のほう、筆者、sLy、shadowとSCYTHE、CATさん、fussさんの3on3しかやってなかったような記憶がうっすらとある。avecとpeter(鳳凰堂)とalmerとkumamaでもう1チームかな?psi(綴り自信ないな)はほとんどやってなかったような・・・うーむ、記憶が曖昧。しかしshadowといえば凄かったね、真サムの覇王丸。勝てる気しなかった。

ティンクルスタースプライツは独自にやり込んでいて、自分ではけっこうイケてるつもりでいたのだけれど、ガチな人たちと対戦するチャンスがありボロボロに負けた。いやー、すごいよスプライツのガチ勢。実は対戦ぱずるだまも(筆者とinuの間だけで流行ってたので)相当やったのだけれど、あれにもいるんだろうなぁ、ガチの人たち。この間シングルでやったら3面くらいで終わった。

ガンダムはZDXくらいまでけっこう真面目にやってた。野良専門(固定コンビに狩られている他のシングルプレイヤーを探して救援に入るか、ホントに1人で頑張る:ハイコスト機を使ってオーバーコストも選択肢に入れるものの、さすがに勝ちにくい)だけど出始めの頃はスポット21にわりと定期的に行ってたような。ラル大尉だっけかな、連ジ出た当初よく組んでくれたの。たしかエウティタDXが出た後だったけれど、札幌(だと思う、東京じゃなかったはず)で対戦した生ズゴの人は凄かった。筆者はシャズゴとシャザクバズで開始、タイマン連戦してるうちにどちらともなく生ズゴ縛りに。こっちもズゴック使いではあるものの、本職の生ズゴ使い(だと本人から聞いたわけじゃないけど、あれでサブキャラだったらお手上げだなぁ)は経験値が違った。それなりには盛り返したけど負け越して終わったのだと思う。


オマケ2(レッドプラネット)

上で名前が出て、なんだか懐かしくなったので記憶を頼りに紹介したい。レッドプラネットというのはアーケード版バトルテックの裏ゲーム(同じ筐体とシステムを使い、最大4対4まで)で、筆者がやっていたのは「テスラ版」と呼ばれるバージョンの1つ前のもの. テスラは当時日本に数箇所しかなく、普及する前にバトルテック人気が下火になってしまい、筆者は未プレイ(というか、やれる機会は何度かあったが興味がなかった:トレーラービデオで画面を見ただけの感想だが、全然別物といえるほど中身が変わってた)。

ルール

さて筆者がやっていたバージョンのレッドプラネットは、細長い箱状の(というか筒状というか、長方形断面のトンネルみたいな)コースを、両端のチェックポイントで折り返しながら走る3Dレースゲーム・・・なのだが、相手チームのマシン(ビークル)に体当たりして破壊することができる(破壊されたビークルはコース中央付近にリスポーンしてレースを再開)。4人チームのうち1人を「ランナー」に指定して、このランナーをいかに破壊されずに周回させるかを競う。残りの3人(3on3なら2人)はクラッシャーと呼ばれ、相手ランナーをクラッシュさせる(落とす)役割を担当する。本当は、ランナーを相手クラッシャーから守るブロッカーという役割も選べるのだが、札幌ではブロッカーを入れない編成が普通だった。

余談ながら、デイトナUSAというカーレースゲーム(逆走可能で、最大6人同時にプレイできた)で順走チームと逆走チームの3on3に別れ、互いに妨害しながら各チームのランナーの周回数を競う「レップラごっこ」もできる(平地カーレースと往復3Dレースの違いはあれど、ゲームの雰囲気としては似た感じを出せる)。バトルテックのシステムが日本に十数箇所しかなかったための苦肉の策ではあるのだが、たまたま出先でデイトナの6人台を見つけ、レッドプラネットなんて聞いたこともないであろう地元のプレイヤーを誘ってドツき合うのも、たいへん面白かった。

レッドプラネットに話を戻そう。勝敗決定はスコア評価が標準的で、相手チームのビークルを落とす、ランナーがチェックポイントを通過して周回する、ランナーが高い速度で走る、といった行為でスコアが上がり、ランナーが(たとえ自爆でも)落ちるとスコアが減点される。このほか、ランナーの周回数だけを競うラップ勝負、周回数からランナーが落ちた回数を引くラップデス勝負なんかもあったが、多くのゲームはスコア勝負で行われていた。このように、勝敗基準が取り決めで変わるのは、バトルテック/レッドプラネットの特徴のひとつだろう(バトルテックの場合、スコア勝負よりもキルデス勝負の方が、札幌では盛んだった)。

プレイヤーが使用できるビークルは10種類くらいあったと思うが、実際に使われるのは、タランチュラというデカくて重い機種(クラッシャーはほぼこれしか使わない)、クォークとレプトンという小さくて速い機種(ランナーはたいていこのどちらかを使う:クォークが通常時最速でレプトンがブースター豊富だっけな、使ってなかったから覚えてないや)、ブロッコリーというタランチュラに次ぐサイズなのにブースターを満載した変態機種(タランチュラのブロッカー1+ブロッコリーのクラッシャー2みたいな機種縛りゲームくらいでしか使わないけど)、そして筆者のお気に入りバグ(クォークやレプトンより2倍くらい大きく、走行性能をやや落として丈夫にした「初心者ランナー用」の機種)だけである。ランナーは「バグより大きい機種禁止=クォーク・レプトン・バグの3択」というのが(おそらく世界的な)標準ルール。

タランチュラはクォークやレプトンよりも(見た目の印象で)10倍くらいデカく動きも鈍いため、普通に走ると絶対追いつかないのだが、このゲームの特徴である「ブースター」を使うことで、直進速度を飛躍的に上げることができる。タランチュラとクォークとバグは2つ、ブロッコリーとレプトンは3つのブースターを搭載しており、それぞれのブースターは10回くらい(使い切るまで生き延びることはほとんどないので、回数ちゃんと覚えてない)使えて、ブロッコリーの特権トリプルトリプル(3つのブースターを同時に、2回連続使用する)なんかは、完全に制御不能なほどのスピードをもたらす。そこまでいかずとも、ブースター使用中は上下左右の旋回が制限され、ダブルで焚くとほとんど直進しかできなくなり、減速にもかなりの時間を要する(いったん焚いたブースターは使い切るまでキャンセルできないし、緊急ブレーキみたいな機能がついている機種もあるが、ブースター使用中に使っても焼き切れて無効になる)。

それでも、お互いにダブルでブースターを焚けばタランチュラよりはクォークが速いわけではあるが、クラッシャーは3機(3on3でも2機)いるので、後ろのクラッシャーからブースターで逃げると、正面で待ち構えているクラッシャーを避けるのが難しくなる(1本の筒を往復するコースなので、簡単に先回りできる)。さらに、コース両端のチェックポイント手前は隘路になっていて、周期的に自動で開閉するシャッターまであるため、いくら速くて小回りがきく機種であっても、落とされずに走り続けるのはほとんど不可能になる。

スコア勝負の採点は速度に依存しており、ランナーは速く走っているだけで(雀の涙ではあるが)得点を得られる。相手のランナーを落としたときの得点も、高速でぶつければぶつけるだけハネ上がる。ランナーのチェックポイント通過を(本当は何百点だったと思うが目安として)10点とするなら、低速でのランナー落としが30点とかそのくらい、高速だとラクに100点を超えるようなイメージ(具体的に何点だったかは覚えてないけど)。落とされたランナーへの減点も速度依存で、低速走行中のクラッシュは5点くらいしか減らなくても、高速クラッシュだと何十点も引かれる(単独クラッシュで点数が減るのはランナーだけ:クラッシャーは自爆してもノーペナルティなので、仕留め損ったらさっさと落ちてリスポーンするのが常套手段)。

周回よりもクラッシュの評価がはるかに高いため、ランナーはとにかく落とされないように隅っこの方に隠れるのが点数上有利ではあるのだが、速度が極端に低い状態を続けると「ルーティング」と呼ばれる反則で減点されるし、このペナルティを意図的に掻い潜り減点されない程度の低速で逃げ回るのも禁止行為とされていた(ルーティングすれすれの走り方を多用するプレイヤーは「ルーター」と呼ばれた)。基本的にはチーム同士の紳士協定ではあるのだが、悪質な場合はシステム運営者(実際にはゲームセンターのバトルテック担当者)が注意を与える。この機械採点+人間の審判が補助という構成もバトルテック/レッドプラネットに特有のシステムだが、運用の難しさの一因にもなったかもしれない。

筆者の戦術

ということで、レッドプラネットのランナーは「怒られない程度にチンタラ走ってクラッシャーの攻撃を避ける」のが基本ともいえたのだが、筆者はこれが気に入らなかったのでガンガン走った(団体戦のプレッシャーなんかもあるため他のチームではそういうやり方が難しいこともあったかもしれないが、幸いClan Pohwaは(勝つ気はマンマンだったが個人のやり方については)ユルユルだった)。最初のうちは、チーム全体が初心者だったこともあり全然勝てなかったが、やり込んでいるうちに重要なポイントに気付いた。それは、ランナーがクラッシャーを落とすと莫大な点数が入るというルールである(クラッシャーがランナーを落としたときの5倍以上とか、そういうレベル:そもそもこれに気付いたのは自分が走っているときではなく、ブロッコリーのクラッシャーでトリプルトリプルをぶち当てたのになぜか相手にもの凄い点数が入ってしまったときだったと思う、たしか)。

筆者がランナーをやり始めた当初、とくに後ろから轢かれるシチュエーションで、相手に点数を与えない方法を追求していた。このゲームでは「接触してから一定時間(仕様は知らないけど、体感だと1秒くらいかな)以内に相手ビークルが破壊される」と「落とした」判定になるから、ぶつけられた後1秒くらい耐えれば相手に大きな点数は入らない(キルを取ると自分の筐体のブザーが「ビー」っと鳴ってわかる)。クォークやレプトンだと触られただけで落ちてしまうし、バグでも普通は耐えられないのだが、筆者は他のランナーよりはるかに高い速度で走っていたので、相対速度の小ささと装甲の厚さでギリギリ生き延びられるパターンをいくつか作れた。

この作戦を多用しながらさらにやり込んでいくうちに、たまにとんでもない点数を稼げることに気付き、それが上記の「キルバイランナー」なのだと教わって、活用法を練ったわけである。面白いことに、このゲームでは「クラッシュしてからリスポーンするまでの間画面に転がっているビークルの残骸」にも当たり判定があり、相手クラッシャーが破片を避けられないところで先にクラッシュしてやると、相手クラッシャーが破片に触ってから落ちたときに、こちらが「落とした」扱いになる。バックモニターに相当する画面を見ながら、相手を誘導したり壁との距離を調整したり、練習するうちに必ずキルを取れる「必殺の間合い」みたいなものがわかってきた。

この「破片殺し」は、ランナーが壁で自爆する戦法(ルーティングと同様、意図的に繰り返すと注意の対象になった)には違いなかったが、高い速度で走っていてこそ可能な選択(遅いと壁に届く前に轢き殺される)でもあったし、そもそも筆者は他チームのランナーより断然多く周回するのが常だったので、少なくとも札幌ではどこからも文句は出なかった(「自爆多いんじゃない?」と言われたことくらいはあったかもしれないが「そっちのランナーより周回してるやん」で済んでいた、と思う)。ただまあ後から考えると、クラッシャーと接触してから双方クラッシュするより、先に壁に突っ込んで後から触らせる方が得点が高い(相手のクラッシャーに点数が入らない分)という点には、問題があったかもしれないと思う。

話を戻そう。この戦法をさらに発展させると、リスポーンのために壁に突っ込むクラッシャーが「落ちる前に触る」という大技も可能である(筆者も実戦では数回しか成功していない)。これも元は走るための技術で、後ろからクラッシャーが突っ込んできたときにとにかく前に逃げて、自分を追い越していったクラッシャーが壁にぶつかる前に追いついてケツをチョンと押してやる(相打ちOK)。相手に破片殺しのチャンスを与えることになるのでハイリスクだし、成功率も低いが、明らかな劣勢になったときの選択肢としては悪くないと思う。

こういった戦法を多用し続けた結果、札幌のクラッシャーたちは筆者のバグを後ろから追いかけてこなくなった。高い速度で走っているのだから、正面から落とせば大量得点だと、そういう寸法である。これは正直キツい、が、3on3ならなんとかなる。というのは、隘路をタランチュラ2機(平べったい形をしているので底面を見せるように機体を傾けて面積を稼ぐ)で塞いでも四隅のうち2箇所は空くので、1/2のバクチで突っ込んで読み勝てば、ブーストターン(機体を後ろ向きにしてブーストを焚くことで、高速Uターンをする)からダブルダブルでリスポーンした相手クラッシャーをブッちぎり、さらに周回を稼ぐチャンスにもできるからである。

そうすると相手クラッシャーは、リスポーンしたあと筆者のバグを追わず(追いかけても追いつかずにまた自爆する以外手がなくなるから)、体勢を立て直して隘路から出てくるところを狙う作戦に出てくる。それに対しては、独走してチェックポイントを回ったあと隘路の手前で回避優先の動きをするか、もういちどバクチに出てさらにラップを稼ぐかの選択ができる。隘路手前でレーダーを確認するときに、相手が待ち構えている(=近くにいる)なら反応があり、止まれない速度で突っ込んでくる(=遠くにいる)ならレーダーに反応がない、というのを判断基準にして、こちらの姿を確認してから突っ込んで来るなら抜きにかかり、決め打ちで高速キルを狙っているなら回避でノーチャンスにするのが基本(たまに反対の選択もするけど)。

これらに加えて、チャンスがあれば相手のランナーも狙う。なにしろバグなので、クォークやレプトン相手なら一方的に落とせるチャンスが十分にあり、クラッシャーを落としたときほどではないにしても、お互い速度が高い分それなりの点数が望める。機体が小さいのでよほど運がよくないと当たらない攻撃ではあったが、相手ランナーに回避行動を取らせるだけでも大きな効果(とくに3on3では、クラッシャーが2機から2.5機に増えたような格好になる)だし、隘路の手前でフワフワ浮いてる相手ランナーを見つけたときや、相手ランナーの後ろを取れたとき(なにしろコッチの方が速く走ってるからね)なんかは、積極的に当てに行った。

本当はこうすればよかったんじゃないか、という対策

当時はバラすつもりがなかったが、もう完全に過去のゲームだし、筆者がクラッシャーとして自分のバグを追いかける状況ならこうしたという作戦も紹介しておきたい。

筆者の走り方でどこにリスクがあるかといえば、やはり速度が高く正面衝突が怖い(なにしろ避けられないからねぇ、速いと)。もちろん、NACのクラッシャーも正面狙いはしてきたわけだが、筆者が思うに場所と方法が効率的でなかった。隘路ではなく途中の広い通路で、ギリギリまでブーストを焚かないのがベストではなかったかと考えている。

というのは、前が空いていれば筆者はブーストを焚くわけだから、これを見通しのいい場所で待ち構えれば、ノーブーストのタランチュラの方が旋回性が高く、避けようにも避けられない。ランナーの機影がちょっとでも見えたらブースタースイッチに手が伸びるのがクラッシャーの習性ではあるが、黙っていても相手が速いならコツンと当てるだけで十分なのである。極端な話、正面衝突を狙わず筆者のバグと同じ方向に飛んで追突させるような当て方でも、高得点にはならないが落とすことはできた(タテヨコに離れていても相対速度が小さい分当てやすかった)のではないかと思う。

この作戦を組織的かつ徹底的に実行された経験はないが、一応筆者も対策は考えていた。それは、広い通路を単独で走るときは、高いところか地面近くか、右か左か、見てからでは当てに来られないほど速いかノーブーストか、コースや速度を毎回振ってやるという案である(転ばぬ先の杖で、相手が対策をしてこなくても、単独走行ではそういうコース取りをしていた)。

しかしある程度の振りはできても、高速キルのリスクを常に背負っていることはやはり大きい。ノーブースト当ては1機で十分遂行できる作業なので、2機の波状攻撃(または相手ランナーからの伝達)で飛行位置を確認してから迎撃されていたら、お手上げになっていたかもしれない(インカムなんて使わなくても、肉声で普通に「上」なんて指示が飛ぶのが聞こえたとして、ブースターを焚いてしまったら進路変更のしようがない)。

とまあこのような作戦を用いて、Clan Pohwaは札幌のエースチームだったNACと互角以上の試合をしていた(筆者の贔屓目を差し引いたとしても:まあ向こうはバトルテックが本命だったから、そう自慢にもならないけど)。もちろん、sLyがSCYTHEを(ルーティングすれすれのチンタラ走りをしているにも関わらず)ガスガス落としてくれるのも大きかったし、shadowが気を利かせて相手のクラッシャーを落としてくれるのも(点数には直接関与しないプレイだが、筆者の走り方で相手のリスポーンを読み間違えると「なんでここにいるの~~~」みたいな状況で大量得点を奪われるため)ありがたかった。4on4は3on3ほどはやらなかったが、hgwのムラのある活躍(取るときにはモリモリ取るのよね)やそんしのハンデキャッパーぶり(4on3の方がマシなんじゃないかってほど・・・)も本当に楽しめた。

こうして振り返ってみると、システムの挙動がどーも不審な雰囲気に溢れていたとか、周回数は累進で評価(1ラップ差で10点なら、2ラップ差は40点、3ラップ差は90点とか)するべきじゃなかったかとか、インカム使ってコーチ(ビークルは操作せず全部のモニターを見ながら指示だけ飛ばす人)つきの3+1on3+1なんかもやりたかったとか、欲を言えばキリはないけれど、しかしそれでも濃厚なゲームだったなぁ、レップラ。


オマケ3(実は「楽園」だった札幌アミュージアム)

年寄りが昔を掘り返して言っていることなので話半分にも満たないのではあるが、Clan Pohwaのホームだった札幌アミュージアムは、やはり筆者(と恐らくは他のClanメンバー)にとって特別な場所だった。

Clan Pohwaのもっともよかったところは、ホームである札幌アミュージアムでも、誰一人「特別扱い」を要求しなかったところだと思っている(結果的に特別扱いされたことがなかったと言う気はないし、意図的にではなくそういう行動をしたこともきっとあったろうけど、少なくとも公然とした要求として)。「一見さん歓迎」「非常連が優先」の原則が(常に守れていたと言う気はないけど)明示的に存在していたし、お店もそれに賛同的だった。他のお客さんに影響がない(と自己判断した)範囲では散々「ワガママ」を言ったし、意図的にでなく「やらかし」で他のお客さんに迷惑をかけたことも多々あっただろうが、しかしそれでも、開放的な場所で遊びたいという志向であるとか、余談のページにも少し書いたような「みんなが同じ条件で競い合う」公平さを尊重する空気を共有できていたと信じている。そして、そういう「居心地のよいホーム」があったからこそ、Clanメンバーの誰もが「遠征」に積極的だったし、実際いろんなところに出かけていた。ホームが開放的だからこそ、そこに閉じ籠る動機を誰も持っていなかったし、誰か知らない人と(ホームであれアウェーであれ)出会って「一緒に遊ぶ」ことをワクワクした気持ちで待っていた。

今になって、これは本当に稀有なことだったのではないかと、思えてならない。それが可能だったのは、店長Tona-Kingの采配と寛容、先輩チームNACの理解と配慮、店員さんたちの労力と貢献、他のお客さんたちの好意と友好、その他もろもろの条件が奇跡的に重なった結果なのだろう。そういう類稀な幸運に(当時は気付いていなかったものの)恵まれたことを、今更ながらではあるが感謝したい。ずっと書き残しておきたいと思っていたことを書けるようになったのが、ゲームセンターで見知らぬ人と遊ぶ文化の終わりが見えたときだというのは皮肉ではあるが、しかしこの蛇足を書けてよかったと思う。


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