<この記事は書きかけです>

ちょっと変わった棋譜

通説や序盤のアイディアを元にコンピュータに指させてみたものなど。

穴熊は堅いし遅くない

穴熊について、よく「端攻めに弱い」とか「組むのに手数がかかる」とか「攻めが細くなる」と言われるが、条件付きの話なので実際に試してみたい。

こうしてみると、穴熊の端はかなり強いし、組み上がるのも矢倉よりは早そうである。では上記の説明が間違いかというとそうではなく、穴熊は「下段の飛車」「角の当たり」「歩の連打や桂香の打ち込み」「金駒での接近戦」のうち2つ以上が重なると脆い。そんなことを言ったら脆くない囲いはなさそうでもあるが、ぶっちゃけ単発の攻めでは詰みまで届かないことが多い。また穴熊は一目散に組めばかなり早く完成するが、途中の形が弱いため準備(銀を上げて攻め込まれないようにするなど)が必要になる。攻めの細さも間違いなく、拠点を失うとずるずる押し返されるだけになるが、なにしろ守りが堅いので一気には潰せず間違えれば逆転もある。

このように穴熊は優秀な囲いなのだが、実はもっと大きな欠点がある。穴熊に組むと相手にも穴熊に組まれるのである。振り穴と居飛穴の対抗形は、結論が出るにはまだまだ長そうではあるがひとまずのところ、角が攻守に活躍できることや飛車先が伸びていること、桂香の取り合いになると右辺を狙える居飛車の方が速いことや4筋が争点になったとき桂を跳ねやすくもうひと跳ねで角に当てられることなどから、居飛穴がやや有利と見られている。では居飛穴が万全なのかというとそうではなく、今度は右銀冠での包み込みがライバルになる。銀冠は玉頭からの攻めがしやすく、また端歩を伸ばすと玉が広くなる性質があり、穴熊の向かいに構えられると都合が悪い(穴熊は玉頭付近の歩が上がると脆くなるし、角の睨みと銀桂の上がりを絡めて攻められると窮屈で、おまけに相手の銀冠は手厚く攻めないと逃げ切られることが多い)。銀冠も手数がかかり組むだけだと穴熊より遅いが、右銀冠は左銀冠よりは速い。

もうひとつの欠点は「組めない」ことで、基本的には対抗形の構えである。普通の相居飛車では穴熊に組めないし、相振りでも組める状況はそう多くない。矢倉穴熊は例外といってもよいかもしれないが、これも組み上げる前提で用いるのではなく、組み上がったら作戦勝ちになるのを利用して相手に無理攻めさせるためのものである(例外として、先手が阿久津流急戦矢倉を避けて穴熊に潜る順がある:2014年2月8日の朝日杯将棋オープン戦、先手豊島将之プロ、後手羽生善治プロなど)。後手が飛車先不突の矢倉を志向したときに先手が一目散に居飛穴を目指すパターンもあるが、こちらも後手が飛車を振らざるを得なくなり、結果的に「相居飛車で穴熊」の形にはならない。角換わりの穴熊はどちらかが右四間にすれば出現しなくもないか(稀有な例として、2015年7月14日の第63期王座戦挑決トーナメント、先手佐藤天彦プロ、後手渡辺明プロの対局で、角換わり相穴熊という凄い形が指されている)。対抗形の穴熊にしても、組める状況と組まない方がよい状況があり得る。

相手が急戦に出たとしても「組もうと思えば穴熊に組めるだろう」という状況は、先手番居飛車で相手が四間飛車のとき(先手番だと急戦でも指しやすく微妙)、先手番四間飛車で相手が居飛車のとき(当然後手には居飛穴に組まれる:先手を握っているなら、石田流やゴキゲン中飛車や藤井システムなど、主導権を握れる形が他にある)、一時期流行した角交換振り穴(振り飛車側が手損になるのがほとんどで、居飛車が好形の矢倉や銀冠に組めるため苦しい模様:対抗形の角交換自体は、美濃系(多くは片美濃)に組むなら有望)あたりだろうか。

そのほか、陣形の偏りと攻めの細さが相まって入玉されやすい特徴もある(ただしアマチュアの場合勝ち負けは取り決め次第というのが多そう)。似たような理由で、相手からの大駒交換が厄介なこともある(自分から交換する分には先制できるので「細くても切れない攻め」を目指せるが、相手からの交換だと急所への打ち込みで崩される心配がある)。守りの手抜けなさ(取り込まれた後は1手でも抜くと途端に脆くなる:本美濃などの隙間を利用した遠さとは質が異なる)も欠点のひとつだろう。なお、コンピュータは有力な対策である入玉に無関心なので、穴熊に組ませての入玉狙いや、自分が穴熊に組んで入玉を度外視した寄せをすることで、あっけなく勝てることがある(頓死筋をちゃんと避けられればの話ではあるが)。

穴熊はじっくり攻めれば確実に崩壊させられる陣形なので、攻めの形ができていないと、ゆっくり死ぬだけの「頑丈な棺桶」になる。この局面をShogiGUIに読ませて、駒を動かしてみて欲しい。

後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・v金v桂v玉|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v銀v香|二 | ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三 |v歩 ・ ・ ・v歩v角v歩 ・v歩|四 | ・v歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 金 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六 | 歩 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 歩 ・|七 | ・ ・ ・ ・ 金 ・ 玉 ・ ・|八 | 香 桂 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角
これで先手がいいというのは俄かには飲み込みにくいが、ポイントは後手だけ角を手放している点。仕掛けようがなくなっており、先手は(殴り合いになったらいつでも入玉できるところまで避難しつつ)ゆっくりじっくり押し上げれば、時間切れで囲いに手がつくか、馬ができるか、後手が効果的でない歩の突き捨てでジリ貧になるか、といった展開を期待できる。これはムリヤリ作った局面なので、ちょっと話がうますぎるが、穴熊は攻めの権利を持っていてこそだという例にはなると思う。

上に挙げたような難しさがあるとはいえ、穴熊は手数の割に破格の防御力(おもに玉の遠さ)を誇り、相手が船囲いで自分が穴熊を組み上げてしまえばほとんど作戦勝ちに近い。さらに、悪形の穴熊は「相手が間違えさえしなければ勝ち目がない」状態には違いないが、付け入る隙なく指し続けるのと相手が間違えるのを待ち構えて咎めるのとでは後者が容易で、結果的に持ち時間が短い将棋では「とりあえず組んでしまう」のもかなり有効である。ズブの初心者である筆者の私見に過ぎないが、プロの早指し(とはいえ、NHK杯の予選で20分切れたら30秒、将棋日本シリーズで持ち時間各10分切れたら30秒+考慮時間1分5回と、アマチュアが普通に指す将棋とさほど変わらない:2002年の早指し将棋選手権は、40手目まで各5分切れたら1分、41手目が封じ手で再開後は1手20秒+考慮時間1分3回と例外的に短かったが、この年で終了してしまった)で穴熊の勝率がさほど高くないのは、早指しが苦手な棋士が穴熊を選択する例が多く、プロのレベルだと時間が短くてもそう大きなミスは出ないせいだと思う。それでも採用例が多いのは、早指しが得意な棋士相手に勝つための有効な方法だからだろう。

先手ゴキゲン中飛車に対していろいろと

▲7六歩、△8四歩、▲5六歩の出だしだと、次で角道を開けても5五歩で止められてムリヤリの角交換ができない。真っ向から受けられるならよいが、穴熊に組まれる順などもあってかなり厄介である(相穴熊で突付き合って不利なわけではないようだが)。

2013年12月に調べたプロの棋譜では、▲7六歩、△8四歩、▲5六歩、△8五歩、▲7七角、△5四歩、▲5八飛、△6二銀、▲4八玉、△4二王という出だしが好まれるようで、初手5六歩はそう多くなかった(▲5六歩、△8四歩、▲7六歩で合流する順はある)。

こんな陣形で早い時期に角交換(どちらもあるが後手からがやや多い)が入り、船囲い未満の簡易な守りや、先手はまれに片美濃にも届かない格好で仕掛け合うのが流行のようだ。

角道を開けず升田美濃に囲う順が手にならないか検討してみたのだが、穴熊に組んでくれれば戦えそうなものの片銀冠に構えられるとどうにも仕掛けどころがない模様。先手右桂の軽さと4筋攻めの厳しさでどうにもうまくいかない。

こうなったところで作戦負けの雰囲気。ひっくり返せるだろうか。

船囲いに代えてカニ囲い(というか雁木の出来損ない)で対応する方法は、手元で調べてみた限りそれなりに有望そうだった。

素人考えなのでツッコミどころはいくらでもあると思うが、中央が攻守に手厚く手数もかからないのが特徴。

御先祖様を泣かせたい

居飛車を指す人の中にも「相掛かりなら受けてもよいが先手番で横歩を取らされるのはちょっと」という人は一定数いると思う。横歩取りは後手が主導権を握る戦型で、なんでもできてしまうわりに一発終了の筋がたくさんある。実際筆者もまったく自信がない。

で目についたのが先月行われた「第72期A級6回戦、先手佐藤康光九段、後手三浦弘行九段」の一局。棋譜はまだ確認していないが、横歩模様から15手目に5八玉と指して勝ったらしい。このニュース自体の内容をちゃんと把握していないのではあるが、ひとつ思い当たったことがある。

上図は横歩取りの出だしで、ぱっと見わかるように先後同型である。普通はここから先手が横歩を取らされるわけで、飛車を引いたり端歩を突いたりして断ろうとしても(一局ではあるのだろうが)なんとなく押されがちになる。しかし同型ということは、先手が一手損してしまえば今度は後手が困る番ではないか。佐藤康光プロがどのような考えで指した手かわからないが、筆者はそういう発想を得た(5八玉という手自体は、ノーガード戦法(相掛かりで後手番が金上がりを省略する)からの引き飛車対策として以前からあった)。 もちろんまだまだこれからの指し方で、もしかすると「これは無理筋だね」という咎め方が出現するかもしれないが、ちょっと面白そうではある。

なお、2013年12月に調べた限り、将棋の棋譜でーたべーすに登録されているもっとも古い棋譜は2000年の銀河戦で、しばらく採用が少ない時期を経て2009年からまた増えている。この年からは佐藤康光プロ以外の棋士にも用いられ、平藤眞吾プロが比較的多く指しているほか、自分が後手番のときにこの手を指された棋士が後日自分で指した例も見られる(塚田泰明プロや橋本崇載プロ)。どの分岐がどんな筋になるのか、定跡と言えるほどの情報量にはまだ達していないようだが、後手が浮き飛車で先手が5段飛車の形で角頭を歩打で守り合い、先手は右辺の銀桂を進め機会があれば2九飛、というのがいちおうの指し方のようだ(初期には両者浮き飛車や後手引き飛車も見られたし、後手が横歩を取って角交換になる将棋や16手目4一王に先手が横歩を取った棋譜もある)。後手はさっさと飛車を引かないと先に5段飛車にされ、引き飛車強制から角交換桂跳ねひねり飛車というコースになる模様。

その他いろいろ

もっと変わったもの。

大逆転将棋の順は将棋の棋譜でーたべーすにも登録されており、棋譜番号16409番。

コンピュータに指させてみた変な手順と、コンピュータに指させたら変になった手順。

他の作業をしながら裏で指させているものが多く、悪手を指したからといってKーShogiのせいではない(他が忙しくて処理が間に合わなかっただけの)可能性があることを断っておきたい。

2016年ごろのコンピュータの強さと、その後。

昔は弱かったのになぁ。

オマケ(ネット将棋とソフト指し)

2022年追記:技術の進歩に記事の更新が追いつかなくなったが、根本部分が短期間で変わることはないと思うので・・・とかつては書き出していたのだが、変化のスピードを甘く見すぎていたようだ。

2013年ごろ、このオマケの標題は「ソフト指しに勝つには」だったのが、2016年に「もうムリです」と泣きが入り、2019年に全面改訂したもののすぐまた内容が陳腐化、同じ頃水匠Uという駒落ち特化ソフトが脚光を浴び「ソフトを使っても悪い局面からよくできるわけではない」という前提さえもが崩れた。さらに2021年末には、ほっしーさんという有名プレイヤーがソフト指しでアカウントを失った。これが大事件なのは、当人がアマ強豪レベルの腕前でかつ部分ソフトだったのにバレた(知名度を考えたら、運営側も確信なしにはbanできなかったはず)という点にある。将棋ソフトの指し手が人間の限界を超えて久しいが、おそらく今度は、ソフト指し検出の精度も人間の想像を超えるレベルに達したのだろう(きっとすぐに、不正ユーザーに代わって検出ソフトを掻い潜るソフトが出回り始めるに違いない)。


過去の記事のダイジェスト:
ソフトを使ったインチキ指しについていろいろ言う人はいるが、特定の誰かが100%クロであると示す手段は、現場を押さえる以外にない(強く推定することはでき、常識的にはそれで十分なのだが、まあ世の中いろいろと難しい)。このためネット将棋でのインチキ指しを「間違いなくこれはソフト指しです」と明らかにすることはできない。またたとえ「99.9999%の推定」を以ってアカウント削除などのペナルティを課したとしても、別人に成りすまして舞い戻るのは容易である。このため、ネット将棋のシステムがオープンな状態にあるとき、常に一定割合でインチキは行われている、と考えるのが常識的かつ妥当な判断だということになる。そして、イマドキのソフトの強さを考えたら、ソフト指しをしている相手に勝つのは(操作している人がネット将棋の操作方法を理解していないとか、そういうレベルでない限り)完全に不可能である。だから、たまたま当たったら諦める以外に方法はない(ここの理解はとても重要で「相手に勝つ気がありさえすれば、ソフト指しにはどうやっても勝てない」のだということを、しっかり認識しておきたい)。

上で「推定はできても断定はできない」というのは、たとえばあるサイコロを100万回振って、100万回全部6の目しか出なかったとしても、それが6の100万乗分の1の偶然である(つまりイカサマサイコロでない)可能性は否定されない、ということと原理的には同一である。もちろん反対に、自分がインチキしたのではないかと疑われたときに、たしかにインチキではありませんでしたと証明することも、また不可能である(公式な対面競技の結果などがあれば棋力を示すことはできるかもしれないが、だからと言って誰も見ていない特定の対局でインチキをしていなかった証明にはならないし、ましてこれまでの人生で一度もインチキをしていない証明にはまるでならない)。これもやはり、現場を見せながら対局する以外にどうしようもない。ネット越しに見ず知らずの相手と将棋を指す限り、相手にソフト指しされることも、また自分のソフト指しを疑われたときに完全な潔白を証明できないことも、どうしたところで避けられない。そもそもの話をすれば、顔も見えない相手と指す将棋なんて最初から「その程度のもの」でしかなく、もし少しでも真面目な対局を望むなら、利用者と運営者がともに相応のコストと労力を要する(のをスットボケたまま何を主張しても現実問題は改善しない)。ついでに、労力の面で誤解されがちな点を指摘しておくと、いわゆる「もぐら叩き」や「いたちごっこ」は(効率は悪いが)無効な対応ではない。それどころか、人間の身体が病原菌に対してやっているように、または害虫や害獣の駆除をするときのように、出てきたモグラはその都度叩かないと収集がつかなくなる。BANとリスポーンの押し合いを少しでも助けるという意味で、たとえば、ノータイムで指している自分の時間がどんどん減るのにチンタラ指している相手の時間はちっとも減らないとき、10秒将棋なのに相手が長考しまくっているとき、切れ負けで終盤残り5秒の相手がチョー正確に30手くらい指してきたときに、淡々と「普通の手」を指し続けて「少しでも黒いログ」を残させるというのは、利用者側の貢献として(運営側が適切に拾ってさえくれれば)有効である。

ネット将棋でソフト指しから逃れることはまったく不可能だが、不特定の相手と指すときは必ずオートマッチング(ランダムマッチ)にすること、モグラ叩きを諦めていないサイト(不正ユーザーのアカウント停止報告が定期的に出ているとか)を使うこと、そしてなによりも勝てないと判断できたら投了することとむやみに連戦しないことで被害を軽減できる(どっちも普通っちゃ普通のことなので、リアル指しでも気をつけた方がよい)。なぜか知らないが、チーターはノーチートっぽいユーザーを見つけると(複数アカウントも駆使して)殺到してくる習性がある(特にノーチートらしき相手に負けたときとか)。そんなのに付き合ってはいられないので、勝っても負けても、いったん棋譜を見直して一人感想戦をやるくらいの余裕は、常に持っていなくてはならない。数人(あるいは一人)の「とても情熱的なチーター」が非常に活発な活動をしているサイトでは、その数人がいる時間といない時間で環境が極端に違うこともあるため、場所ごとの時間傾向を把握しておくのも有効だろう。あるいは時間帯を気にせず、たんにランダムで複数のサイトを使い分けてもよい。ただし注意点として、人間が多い対局サイトはチーターにとっても宝の山みたいなもので、チーター達が人間ユーザーを探し求める情熱はノーチートユーザーの比ではないことを考えると、利用するサイトの選択は短時間(理想をいえば1局指すごと)で更新しないと意味がない。いわゆる「規制が厳しいサイト」は手の込んだチーターにとって「監視を潜り抜ければ敵なしの楽園」であり、また「規制が緩いサイト」は原始的なチーターにとって「居心地のよいゆりかご」であることを忘れてはならない。

オートマッチングなら自分のレートが下がるまで負け続けるのも有効で、チーター(とアマ強豪クラス)しか生き残れないレートレンジよりも下に行けば、人間と出会う確率は上がる(インチキしても人間に負けるほど弱いチーターも増えて、それはそれでうっとおしいが、もし上のレンジがチーターしかいないような状況なら、上がるよりは下がった方がずっとマシだろう:ソフトが人間より圧倒的に強い以上、絶滅していなければの話ではあるが、もっともレートの低いレンジはもっとも人間が多く居るレンジになる)。チーターとの遭遇率をなんとしても下げたいなら、低レート帯の対局をいくつか観戦してみるのがよい。たいていのサイトでは、10級相当くらいのユーザーは極端に少なく、ある程度のレートから(アクティブな)ユーザーが増え始める。そういう「普通に手合いがつき始める」レベルの対局で、誰も見たことがないようなしかも少し間違えたら一気に悪くなりそうな序中盤を、ものすごい早さで指し続けて目立った悪手が(最序盤以外に)全然ない、というユーザーがたくさんいたら、そのサイトはすでに全滅している。なぜなら、チーター同士では最弱である「基本がデタラメ指しで、急に強くなっても手遅れで負ける」タイプのチーターが、手合いがつかないようなレート帯まで沈んでいるということだからである。チーター同士が対局すると手指し割合が多い方が負けるという、ほとんど絶対的な法則があるので、この判別法にはかなりの確実性があるはず。またレートの最上位、つまり奨励会経験者とかアマ強豪とか、場合によってもしかしたら現役のプロまたはその経験者がいるゾーンには、サイト運営者も特別な注意を払っており、もしここが壊滅しているようなら、そのサイトのチート対策はすでに破綻している(または対策する気力自体なくなっている)と考えてよいだろう。

最後に、(将棋でないネットワークゲームの)有名なチーターの発言(だと言われているもの)を引用しておこう。句読点と誤字らしき部分を筆者が改めた。

不正行為をして勝って嬉しいのか?などと私に言ってくる人がいるが嬉しいし楽しい。僕は頑張って負けるより楽して勝ちたいからね。それと大手ゲーム会社が何十億もかけて開発した作品を私達が徹底的に破壊出来るのも、たまらない快感を得られるんだ。開発陣が寝る間を惜しんで穴を塞いだとプレイヤーに報告し一息付いたであろう1時間後くらい、僕らは別の所に穴を開けるんだ。少しずつやる。開発者の神経を磨耗させるにはこれが一番だし、正規のプレイヤーをイラつかせるのもこれが一番なんだ。
ノーチートユーザーにはしっかり認識して欲しいのだが、チートがこれだけ常態化した現在もなおアクティブに活動しているのは、エリートのチーターである。彼らは特殊な才能と並外れた精神力を持ち、膨大な尽力も惜しむことがない。考えてもみて欲しい。オートマッチングであれば、チーターだって他のチーターとの対局は避けられず、その不毛さと退屈さたるや想像を絶するものだろう。これに耐えながら、ときにはアカウントを停止されながらも、彼らはチートを続けているのである。上に引いた発言のチーターは、エリートチーターのなかでもさらに特異な、いわば天才チーターであるに違いないが、ネット越しに将棋を指している限り、私たち自身がそのような相手と対局する可能性がいつでもある。追記:脅すようなことを書いたが、チーターといっても全員がブチ切れたイカレ野郎というわけではもちろんない。こんな感じのほのぼのとしたチーターだって、きっと他にもいるはずである(元は将棋ウォーズのスレッドの話らしい:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/bgame/1408635887/、http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/bgame/1410065172/)。


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