それなりの格好で、騒音の心配のない、安全なクローズドスペースでやってね。とくに重要なのが広さで、微妙な姿勢になったときにスロットルを開けられる空間的な余裕がある場所で練習しないと、いつまでたっても上達しない。
まずは操作の基本を身につける。ベテランのライダーでも、低速での練習をきちんとやると普段の操作まで見違えることがあるのでバカにせず行う。
直線コースで全力加速>急制動を繰り返す(Iの字)
加速は、ただアクセルを全開にするよりも回転数に合わせて開けていった方が加速がよい。急制動は、ハンドルに体重をかけすぎない(下半身で支える)ようにしながら前輪と後輪がロックしないギリギリの強さを覚える。実際の挙動としては、強いブレーキのときは体重を腕でも支えざるを得ない(でなけりゃGPライダーが腕上がり症になったりはしない:高速度域では、フロントからのフィードバックを増やすために、肘を固定してハンドルに体重をかける方法もある)のだが、意識の上では脚全体でバイクを「持つ」ようなイメージ。
制動に入るときは前後ブレーキを同時に操作する(サスペンションのストロークが違うので、結果的にリア>フロントの順で効く)意識で、クラッチは速度が落ちるまで切らない。クラッチを切ってフロントブレーキだけを使った急制動(思いきり前のめりになるので注意)をやってみるとリアブレーキのありがたみがわかる。フロントブレーキは、サスの沈み具合に合わせてかけ、サスが沈みきるまではフルブレーキをガマン。リアはエンジンブレーキの微調整程度に。停止時は、サスの戻りによる衝撃が来ないようにやさしくブレーキリリースをする(後で重要になる技術なのでしっかりと)。
最初は1速だけを使い、慣れたら2速も使う。慣れないうちは低い速度で行い、制動も控えめに。回転数に合わせたアクセルのあけ方、シフトチェンジのタイミング、急制動時のリアブレーキによる姿勢維持、サスの動きに合わせたブレーキング、適切なブレーキリリースを身につける。
フルハンドルで1方向にひたすら曲がる(oの字)
まずアイドリングを多少高め(2000rpmくらい)にしておく。で、1速アイドリングで直進している状態からハンドルを手の力で切ってゆき、フルハンドルまで曲げる。慣れてきたら速度を上げる。バイクを体ごと傾けると内側に転ぶので、体は常にタイヤの接地面の真上くらいにあるようにして、車体だけを傾ける(極端なリーンアウトになる)。体重はほぼ外足のステップだけにかけるようにする。内側に転ばないためにはアクセルをあけることが必要だが、あけすぎると外に膨らむので、アクセルをわずかに強めにあけてリアブレーキで加速力を調整する。顔は常に「曲がりたい方向」に向ける。
フルハンドルフルバンクで常にステップをガリガリいわせながら回りつづけられるようになるまで、もしくはタイヤのグリップ力の限界までやる。街乗りバイクだとすぐに限界まで達するはず。旋回中の顔向け、アクセルワーク(というかリアブレーキワーク)を身につけ、自分のバイクの限界と、コーナリング中にリアタイヤのトラクション(加速力)が抜けると車体が不安定になるということを身をもって覚える。
Uターンと直線加速を繰り返す(0の字)
2速でやる。直線から急制動の要領でブレーキング、倒し込みを開始(ブレーキの効果で実際には車体が傾かないが問題ない)、やさしくブレーキリリースしながら旋回姿勢に入り、加速して次の直線へ。ハンドルはこじらず勝手に曲がるのに任せる。Iの字とoの字がきちんとできていないと確実に転ぶので注意。ブレーキリリースと車体の傾けを「同期させて」行うのがポイントで、フルバンクになるまでフロントサスが縮みっぱなしで、かつフルバンクになったと同時にブレーキリリースが終了するのが理想。立ちあがりはアクセルをあければ勝手に車体が起きるが、後輪だけの1輪車に乗ったようなイメージで、加速しながらの旋回を体験しておく。
驚くほどパタっと倒れるので、慣れないうちは低い速度で弱めのブレーキからコーナーに入り旋回中のアクセルを強めにあける。急減速急旋回急加速が滑らかに繋がるようになるまでやる。ブレーキを利用したコーナーへの進入と、加速しながらの立ちあがりを身につける。
旋回中に急制動(qの字)
oの字で旋回中にフロントブレーキをかける。Iの字ではサスの沈み具合に合わせてブレーキを強めたが、今度は車体の起き具合に合わせてブレーキする。その他はIの字とほぼ同じ。リアブレーキはリアが暴れない(リアサスが伸びない)程度に使う(同時か、フロントよりもわずかに遅らせる)。
かなり転びやすいので、慣れないうちは緩やかな旋回から緩やかにブレーキする。フルバンクからフルブレーキができるようになるまでやる。フロントブレーキによる車体起こしを身につける。
旋回>ブレーキで車体を起こす>再度旋回(Sの字)
qの字と0字の複合。特に難しいことはない。切り返し時に曖昧な移行をせず、一瞬車体が(ブレーキによって)直立する時間を作ることがポイント。
旋回>立ちあがり加速>切り返し(減速)>旋回の繰り返し(8の字)
ここまでがきちんとできてさえいれば、これもとくに難しいことはない。十分に習熟するまでやる。
基本的に、フルハンドルで多少余裕を持って回れるくらいの間隔でやる(最初はやや広めにしておいてもよい)。ちなみに原付講習でやる8の字はパイロンの間隔が8~10m。広めの間隔だとけっこうなスピードが出るので安全に注意(それはそれで練習にはなるのだが)。
ぜひ必要な練習ではないが、8の字を十分やり込んだらやってみるとよい。
低速での操作がきちんとできない人は挑戦するべからず。サーキット借りて練習すべし。
低速時と違ってかなり力をかけないと車体が寝ない。このとき内足には体重をかけないこと。その他はほぼ低速時と同様。
余談:ハングオフについて根深い誤解があるように思えてならないが、これは「体を横に開く」動作ではなく「体を前下に落とす」技術である。下半身を半ケツくらい(速度が高いほど大きく動くが全ケツまではいかない)、ほぼ平行に(向きは状況によるが、車体よりもややアウト向き~微妙にイン向きくらい)ずらして、顎を(当然、曲がる先の前を見ながら)タンクの横くらいに沈めてやればだいたいできる(内肘は真下くらいに落ちて、内膝がそれに連動するような形)。ただ、外足(腿・膝・足すべて使う)によるグリップが万全なのが前提なので、それらが確実に信頼できるまで習熟しないうちに試すのは危険(とくにステップには「滑らないが自分の好きな時に足を動かせる」という信頼感が不可欠:とくに横方向には絶対滑らないことが求められる)。
前半がきついカーブ、後半がゆるいカーブになっている場合は、アクセルのあけ具合でなんとでもなる。前半がゆるいカーブ、後半がきついカーブになっている場合は、途中で一度ブレーキを当てて車体を起こすとともに減速し、改めて車体を倒す必要がある。体重をイン側に乗せたままブレーキだけで車体を起こすパターンと、身体ごといったん直立して改めて曲がるパターンを、両方試してみるとよい。
極端でないやり方として、曲がる方向と反対に尻(バイクのリアではなく身体的な自分の尻)を出してやるとリーンアウトになり、外膝でタンクを押し込むようにして上半身を曲がる方向へと向けてやれば、低めの速度で鋭く曲がることができる。これまた極端でないやり方として、身体の(ヨー方向の)向きをバイクと平行に保ったままイン側に尻をずらすとリーンインになり、外足でバイクに掴まるようにして顔を曲がる方向へと向けてやれば、内に寄った低い重心で曲がることができる。どちらも基本的に、重力と遠心力の合力がかかっていく先をタイヤの接地面に近付ける技術だと思ってよい(はず)。
タイムを取って8の字をやるだけでも練習になるが、トライカーナもお手軽。クリッピングポイントで出口を向くという原則はここでも有効。浅いターンも練習したければ
こんな形で回ってみてもよい(図のライン取りは適当なので参考にしないこと)。