レース

ケニー・ロバーツ(アメリカ)、フレディ・スペンサー(アメリカ:85年にも一発かましている)から引き続いて84年から92年までの4強:安定感のエディ・ローソン(アメリカ)、パワフルで豪快なワイン・ガードナー(オーストラリア)、独走逃げ切りのウェイン・レイニー(アメリカ)、レイトブレーキの差し馬ケビン・シュワンツ(アメリカ)には輝きがあった。さらにマイケル・ドゥーハン(89年デビューで90年3位)が割って入った1991年は本当に豪華なシーズンだった。

その後ドゥーハン時代とロッシ時代が続き、ようやくニッキー・ヘイデン(アメリカ)がひっくり返したが800cc化で失速する。2007年から2012年までの4強は、バレンティーノ・ロッシ(イタリア)、ケーシー・ストーナー(オーストラリア)、ホルヘ・ロレンゾ(スペイン:2008年デビュー)、ダニ・ペドロサ(スペイン)。このメンバーでのベストシーズンはやはりロッシが元気だった2007〜2009年だろう。勝負勘やセンスといった部分ではもちろん互いに遜色はないが、技量でマシンを操るロッシとストーナーに対し、ある程度マシンに任せて性能を引き出すロレンゾとペドロサと、世代の違いのようなものがある(2010年以降のレースでは後者の乗り方が強く、またスペイン出身のライダーが得意とするスタイルでもある)。

2007年はドゥカティとストーナーが噛み合い、2008年と2009年はロッシが盛り返す。2010年は第4戦イタリアGPのフリー走行で右足を骨折したロッシをロレンゾ(前年2位)が置き去りにした年で、2011年はストーナーがホンダに移って勝利(どうやら、2009年シーズン途中に体調を崩したらしく、最終的に乳糖不耐症と判明するのだがこの時点では原因不明で、チームともいろいろあった模様)、さらに2012年にはロレンゾが盛り返す、と目まぐるしい。いっぽうのペドロサは、その6年間に2位3回3位2回4位1回と微妙に勝ち切れない。ロッシはドゥカティに移った2011年以降苦戦する(2年間で優勝が1度もない)が、ヘイデンよりはポイントを取っており、少なくともストーナーと比べて技量が衰えたというわけではない模様。

面白いのはヘイデンの成績で、2007年の800cc化以来、年に1回か2回表彰台に上がりつつ終わってみると1桁順位の後ろの方、というシーズンが2012年までずっと続いている(チャンピオン獲得直後の2007年は表彰台が3回、ドゥカティ移籍直後の2009年は13位、2012年は最高順位4位と、多少の波はある)。2013年からは、同じような傾向でやや成績のよいドヴィツィオーゾがチームメイトになる。


耐久レースといえば鈴鹿(初回開催1978年)だが、1980年からFIM世界耐久選手権に組み入れられた(第3戦)。鈴鹿で勝っているイメージが強いのはやはりホンダだが、近年の世界選手権全体ではスズキが強かったりする。2003年から2012年まで、スズキが7勝でヤマハが3勝、ホンダは2001年が最後(同じ期間に鈴鹿では8勝しているので、ワークスを突っ込めば競争力がないわけではないらしい:カワサキは耐久にあまり熱心でないらしく、鈴鹿での優勝は1993年の伊藤ハムレーシング・カワサキだけ)。

2012年の世界耐久選手権は、スズキ、BMW、ヤマハ、ホンダ、カワサキ、以下日本メーカーの車両となっており、スーパーバイクに積極的なイタリアメーカーも耐久にはあまり熱心でないようだ。

トライアルは日本人がチャンピオンになったことのあるレアなジャンル。フジガスこと藤波貴久は、1999年から2010年までの12年間で、チャンピオン1回、2位7回、3位4回を記録している。チャンピオンが一時代を築く傾向が強いようで、1997年から2010年まで4人しかチャンピオンになっていない。

ラリーレイドではKTMが圧倒的に強く、シリル・デプレとマルク・コマが10年近くマッチレースをやっている。こちらも21世紀に入って排気量制限が変わり、2011年からは450ccが上限になった(エンジン交換にペナルティタイムが課されるようになったのも2011年から)。


MotoGPはストーナーが2012年限りで引退(ワクワクしながらバイクに乗ることができなくなったという旨の発言をしている)、2013年のシーズン前半をペドロサロとレンソが引っ張っている。ロッシとヘイデンは苦戦、間にマルケス、クラッチロー、ドヴィツィオーゾが割り込んだ格好。ヤマハに復帰したロッシはロレンゾから、引き続きドゥカティに乗るヘイデンはドヴィツィオーゾから、エースライダーの座を奪回できていない。余談だが、ストーナー(85年生れ)、ペドロサ(85年)、クラッチロー(85年)、ドヴィツィオーゾ(86年)、ロレンゾ(87年)は同年代。ロッシ(79年)とヘイデン(81年)がベテランでマルケス(93年)が若手といった構成。ロレンゾ、ペドロサ、マルケスとスペイン出身ライダーの活躍が目覚しい。

ペドロサを除くMotoGPチャンピオン未経験者の中では、2012年のMoto2チャンピオン(スッター)マルケスの健闘が顕著(ルーキーライダーがサテライトチームからしか参戦できない「ルーキールール」ってどうなったんだろう?ストーナーが怒ってたからやめたのか?)。第4戦フランスを終了した時点で、チームメイトでポイントリーダーのペドロサに1ポイント差に迫っていた。次戦イタリアでは終盤でそのペドロサをかわし、2位フィニッシュ目前となったところで転倒リタイア。クラッチローはスーパーバイク出身で、サテライトチーム(テック3)ながら安定した成績。フランスとイタリアの連続表彰台でドヴィツィオーゾとロッシをやや引き離し、リタイアしたマルケスに迫った。2014年の復帰を目指すスズキがエースドライバーとして有力視しているなんていう話もあったが、結局ヘイデンが抜けるドゥカティに決まった模様。

ペドロサやロレンゾに追いつけないのはともかく、ロッシがクラッチローにやられっぱなしというのはあまり見たくない。イタリアでクラッシュに巻き込まれ1週目で終わってしまったのが痛いが、怪我はなかったようなので今後に期待。ドゥカティはどうなんだろうねぇ。前年まで安定してヘイデンより好成績だったドヴィツィオーゾが今年はトントンくらいの活躍なのを見るに、ホンダとヤマハに対してビハインドがあるのは間違いなさそう。


随時書き足し:
ペドロサは相変わらず安定しているので、ホンダ有利なサーキットでマルケスがロレンゾのポイントを削る場面がどれだけあるか、ということがチャンピオン争いの鍵になるかもしれない。イタリア終了まで、1位獲得はペドロサとロレンゾが各2回、マルケスが1回、それ以外で表彰台に上がっているのはクラッチローとロッシだけ。

と思ったらペドロサとロレンゾが怪我をしている間にマルケスが2連勝、第9戦ラグナ・セカ終了時点でポイントリーダーのマルケスを、16点差のペドロサと26点差のロレンゾが追う形になった。開催間隔が短いところで負傷した間の悪さはあるが、両者ともこのまま黙っているとは思えず、巻き返して混戦になれば面白い。第7戦で復活優勝したロッシはロレンゾとの差が20点ありもう少し我慢が必要か。クラッチローとの差も1点とあってないようなもの。ヘイデンは今期でドゥカティを離れる模様、ポイントではドヴィツィオーゾが先行。

結局マルケスが逃げ切った。イタリアでのリタイヤとオーストラリアでの失格以外全部表彰台という、本来ならペドロサがやるはずの勝ちパターンで見事総合優勝。ロレンゾはイギリスから最終戦まで、2連勝、2位、3位、3連勝と怒涛の追い上げをしたが4ポイント差で届かず、結局ドイツでの欠場が響いた形になった(優勝8回はマルケスの6回よりも多い)。ペトロサは優勝3回、2位7回、3位3回と堅調だったがロレンゾに30ポイント及ばず。ロッシはトップ3以外で唯一の優勝(オランダ)を記録し、18戦のうち4位以内が14回、表彰台6回と食らいついたものの、5位のクラッチローとも3位のペドロサともけっこうポイント差がついた。10戦めのインディアナポリス以降ほとんど上位4人のレースで、表彰台はもちろん、誰かがリタイヤしたり失格になったりということなく他のライダーが4位以内に入ったのは、ロッシが6位になった日本グランプリだけ(そのロッシは、インディアナポリス以降の9戦で4位6回、ペドロサがリタイアしたスペインとマルケスが失格になったオーストラリアで3位と、今期を象徴するような成績)。端っこの方ではART(エスパルガロが93ポイントを稼いだ)がマニュファクチャラーズで99ポイントを獲得、155ポイントのドゥカティ(ドヴィツィオーゾが140ポイント、ヘイデンが126ポイント)の背中が見えた。ヘイデンが失速しつつあるように見えるが、もう1発くらいかましてほしいところ。

ロッシはヤマハに戻ってまずまずの復調ぶり。昔から「環境が変わったら1年準備して2年目から勝負」というスタイルなので、来期に期待できそう。長年手にできなかったチャンピオンシップを1発で持っていかれたペドロサは心中穏やかでないだろうが、マルケスの前に出られなかったわけではない(どちらもリタイヤや失格にならなかったレースでは4勝9敗)し、ロッシの前はまずまず確保していた(同じく11勝3敗)ので、来期のチーム戦略次第といったところか。ロレンゾは(とくにシーズン終盤で)ホンダの方が速かったようなコメントがありつつも十分競争力を示しており、大きなアクシデントがなければ来期も主役の一人だろう。現在の環境での力量としては4人の中で頭ひとつ抜けているかもしれない。マルケスは「全ツッパ全通し」で勝ってしまったわけだが、不調になっても強気を維持できれば間違いなく強い(本来こういうタイプは「無冠の帝王」を長くやって忘れた頃にチャンピオンになるものなのだが、今年は勢いが勝った)。レギュレーションやらレースディレクションやらで、ストーナーのいう「ワクワクするようなレース」とはどんどん離れていっている気もするが、ともかく来期も面白いレースを期待したい。

2014年はマルケスが開幕10連勝で早々にシーズンを終わらせてしまった。ロッシはひとまず2位を確保。十分に戦える位置には来たが、不調が伝えられるロレンゾと右腕にトラブルを抱えるペドロサが精彩を欠いただけとも取れる。4強を追うのはドヴィツィオーゾ、続いてエスパロガロ弟。復帰を目指していたスズキは最終戦のみの参加で結果はリタイア。

2015年はロッシが前半をリード、ロレンゾも復調したといってよさそうで、4〜7戦の4連勝で食らいつき、ペナルティでロッシが最後尾スタートになった最終戦で逆転、5点差で年間チャンピオンを獲得。ホンダは大いに苦戦。マルケスは1位と2位を4回づつ(ちなみにロッシは1位4回2位3回)獲得し遅いわけではないが、リタイア6回は痛すぎた。ペドロサはシーズン中の手術に踏み切り、復帰後徐々に調子を戻しドイツで2位までは来た、が失速して年間4位。後半はけっこう速かったがマルケスの前でゴールしたのが1回だけとやや寂しい。ドゥカティも健闘、開幕から3戦連続2位を取ったドヴィツィオーゾが失速してもイアンノーネが盛り返し、9戦終了時点ではギリギリ粘ってマルケスの前の総合3位、17〜18戦でリタイアしたのが響きペドロサにかわされ最終的には18点差の年間5位だった。ヤマハサテライトのスミスも追い上げたが届かず7点差の年間6位、ドゥカティワークスが面目を保った。本格復帰したスズキはエスパルガロ兄が105点取ったのでまずまずだろう。挑戦が噂されたカレックス(ドイツのフレームサプライヤー、Moto2で大活躍)は参戦せず。

2015年終盤のモメごと(ロッシが「八百長」と呼んでいる事態)は残念ではあるが、個人的にはペドロサ(2006年のポルトガルでヘイデンに突っ込んだ経験からか、ライダー同士の不和には控え目な立場を取っている模様:この人もスペイン人なんだけどね)の言われようがカワイソウである。ロレンゾ曰く「ヴァレンティーノ、ケーシー、マルクの3人は、最強の、21世紀におけるトップライダー」だとか、ロッシ曰く「終盤はダニでさえ2秒も縮めてる(のにマルケスがダラダラ走ってる)」だとか、酷い言われよう。まあ年間チャンピオン取ってないし仕方ないと言えば仕方なくもあるが。腕も治ったようだし、本人も復調を実感してるみたいだし、奮起を期待したい。



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